IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧 ▶ 株式会社日本自動車部品総合研究所の特許一覧

<>
  • 特開-動力伝達装置 図1
  • 特開-動力伝達装置 図2
  • 特開-動力伝達装置 図3
  • 特開-動力伝達装置 図4
  • 特開-動力伝達装置 図5
  • 特開-動力伝達装置 図6
  • 特開-動力伝達装置 図7
  • 特開-動力伝達装置 図8
  • 特開-動力伝達装置 図9
  • 特開-動力伝達装置 図10
  • 特開-動力伝達装置 図11
  • 特開-動力伝達装置 図12
  • 特開-動力伝達装置 図13
  • 特開-動力伝達装置 図14
  • 特開-動力伝達装置 図15
  • 特開-動力伝達装置 図16
  • 特開-動力伝達装置 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021435
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/18 20060101AFI20250205BHJP
   F16K 31/04 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
F16K11/18 Z
F16K31/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024113013
(22)【出願日】2024-07-15
(31)【優先権主張番号】P 2023125011
(32)【優先日】2023-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】弁理士法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 貴郁
(72)【発明者】
【氏名】井上 博登
(72)【発明者】
【氏名】佐原 琢郎
(72)【発明者】
【氏名】竹内 徳久
(72)【発明者】
【氏名】大石 繁次
(72)【発明者】
【氏名】川島 弘之
(72)【発明者】
【氏名】福嶋 一貴
(72)【発明者】
【氏名】川戸 晃一
(72)【発明者】
【氏名】大内 理功
(72)【発明者】
【氏名】松田 三起夫
(72)【発明者】
【氏名】草田 享
【テーマコード(参考)】
3H062
3H067
【Fターム(参考)】
3H062AA02
3H062AA12
3H062BB30
3H062CC01
3H062EE04
3H067AA32
3H067BB08
3H067BB14
3H067CC32
3H067DD03
3H067DD12
3H067DD32
3H067GG23
3H067GG24
(57)【要約】
【課題】1つの駆動源で生じた駆動力の出力先を、複数の出力軸から選択された1つに切り替えて出力可能な動力伝達装置を提供する。
【解決手段】動力伝達装置1は、入力軸20と、第1出力軸40と、第2出力軸50と、出力軸切替部25と、を有する。入力軸20は駆動力の入力によって回転する。第1出力軸40は、入力軸20から伝達された駆動力によって回転する。第2出力軸50は、第1出力軸40と異なる位置に配置され、入力軸20から伝達された駆動力によって回転する。出力軸切替部25は、第1出力状態と、第2出力状態とに切り替える。第1出力状態は、駆動力による第2出力軸50の回転を制限すると共に、駆動力による第1出力軸40の回転を許容する。第2出力状態は、駆動力による第1出力軸40の回転を制限すると共に、駆動力による第2出力軸50の回転を許容する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力の入力によって回転する入力軸(20)と、
前記入力軸から伝達された駆動力によって回転する第1出力軸(40)と、
前記第1出力軸と異なる位置に配置され、前記入力軸から伝達された駆動力によって回転する第2出力軸(50)と、
駆動力による前記第2出力軸の回転を制限すると共に、駆動力による前記第1出力軸の回転を許容する第1出力状態と、駆動力による前記第1出力軸の回転を制限すると共に、駆動力による前記第2出力軸の回転を許容する第2出力状態とに切り替える出力軸切替部(25)と、を有する動力伝達装置。
【請求項2】
前記入力軸は、予め定められた極数を有する入力側磁石(21)を備え、
前記入力側磁石は、駆動力の入力による前記入力軸の回転に伴って、前記入力軸と一体に回転し、
前記第1出力軸は、前記入力側磁石と対向するように配置され、前記入力側磁石と異なる極数で構成された出力側磁石(45)を有し、
前記出力側磁石は、前記第1出力軸の回転に伴って、前記第1出力軸と一体に回転し、
前記第2出力軸は、前記入力側磁石と前記出力側磁石の間において、複数の磁性部(55A)を並設して構成され、前記入力側磁石と前記出力側磁石の間に作用する磁束を変調させる磁束変調部(55)を有し、
前記磁束変調部は、前記第2出力軸の回転に伴って、前記第2出力軸と一体に回転する請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項3】
前記第1出力軸及び前記第2出力軸は、前記入力軸が配置されている空間に対して区画された収容空間(35)の内部にそれぞれ配置されている請求項1又は2に記載の動力伝達装置。
【請求項4】
前記出力軸切替部は、前記収容空間の外部に配置されており、
前記収容空間の内部に対して磁力を作用させて、前記第1出力軸、前記第2出力軸の何れか一方の回転を制限することにより、前記第1出力状態と前記第2出力状態を切り替える請求項3に記載の動力伝達装置。
【請求項5】
前記出力軸切替部は、前記収容空間の内部に対する磁力の作用により、前記第1出力軸、前記第2出力軸の径方向に荷重を発生させることによって、前記第1出力状態と前記第2出力状態を切り替える請求項4に記載の動力伝達装置。
【請求項6】
前記出力軸切替部は、前記第1出力軸、前記第2出力軸の何れか一方に対して、回転を阻害する磁場を形成することによって、前記第1出力状態と前記第2出力状態を切り替える請求項4に記載の動力伝達装置。
【請求項7】
前記出力軸切替部は、前記収容空間の内部に対する磁力の作用により、前記第1出力軸、前記第2出力軸の軸方向に荷重を発生させることによって、前記第1出力状態と前記第2出力状態を切り替える請求項4に記載の動力伝達装置。
【請求項8】
前記収容空間の内部に配置され、接触により抗力を発生させる抗力発生部(85)を有し、
前記出力軸切替部は、前記収容空間の内部に対する磁力の作用によって、前記第1出力軸、前記第2出力軸の軸方向に関して、前記第1出力軸、前記第2出力軸の何れか一方と、前記抗力発生部の相対位置を変化させ、
前記第1出力軸、前記第2出力軸の何れか一方と、前記抗力発生部との間に生じた抗力の作用によって、前記第1出力状態と前記第2出力状態を切り替える請求項7に記載の動力伝達装置。
【請求項9】
前記抗力発生部は、前記収容空間の内部において、前記第1出力軸、前記第2出力軸の軸方向に沿って変位可能に配置されており、
前記出力軸切替部からの磁力の作用によって軸方向に変位して、前記第1出力軸、前記第2出力軸の何れか一方に接触する請求項8に記載の動力伝達装置。
【請求項10】
前記第1出力軸及び前記第2出力軸は、前記収容空間の内部において、前記第1出力軸、前記第2出力軸の軸方向に沿って変位可能に配置されており
前記抗力発生部は、前記出力軸切替部からの磁力の作用によって軸方向に変位した場合に、前記第1出力軸、前記第2出力軸の何れか一方に接触する位置に配置されている請求項8に記載の動力伝達装置。
【請求項11】
前記第1出力軸、前記第2出力軸の表面において、前記抗力発生部に対して、前記第1出力軸、前記第2出力軸の軸方向に関して対向する面を対向面とした場合に、
前記抗力発生部及び前記対向面の何れか一方には、前記第1出力軸、前記第2出力軸の軸方向に突出した凸部(85A、86A、87A)が形成され、
前記抗力発生部及び前記対向面の何れか他方には、前期第1出力軸、前記第2出力軸の軸方向に窪んで、前記凸部と嵌合する凹部(85B、86B、87B)が形成されている請求項8に記載の動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、1つの駆動源で生じた駆動力を出力軸に出力可能な動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体回路には、回路を流れる流体の流れを制御する為に、複数の電動弁が配置されている。電動弁としては、一般的に、1つの駆動源で出力された駆動力を特定の1つの出力軸に伝達するように構成されている。このような電動弁に関する技術として、特許文献1に記載された技術が知られている。
【0003】
特許文献1の電動弁は、冷凍サイクルにおける除湿制御弁や電子膨張弁として用いられており、駆動源としてのステッピングモータで生じた駆動力を、種々の部材を介して、ニードル弁に伝達して、弁開度を調整している。即ち、特許文献1に記載された技術では、1つの駆動源で生じた駆動力は、特定の1つの出力先(つまり、ニードル弁)に出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-34140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1においても、1つの流体回路(即ち、冷凍サイクルシステム)には、複数の電動弁が配置されている。近年、流体回路の搭載スペースの小型化が望まれている。特許文献1の技術の場合、複数の電動弁ごとに、1つの駆動源と1つの出力先(弁体)を備える構成となってしまう為、流体回路の搭載に関して省スペース化を図りがたい。
【0006】
この点に鑑みると、流体回路の搭載に関する省スペース化を実現する為の方策として、駆動源を共通利用可能な統合弁を流体回路に用いる構成が検討されている。換言すると、1つの駆動源で生じた駆動力を複数の出力先に切り替えて出力可能な動力伝達装置の開発が望まれている。
【0007】
本開示は、上記点に鑑みて、1つの駆動源で生じた駆動力の出力先を、複数の出力軸から選択された1つに切り替えて出力可能な動力伝達装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る動力伝達装置は、入力軸(20)と、第1出力軸(40)と、第2出力軸(50)と、出力軸切替部(25)と、を有する。入力軸は駆動力の入力によって回転する。第1出力軸は、入力軸から伝達された駆動力によって回転する。第2出力軸は、第1出力軸と異なる位置に配置され、入力軸から伝達された駆動力によって回転する。出力軸切替部は、第1出力状態と、第2出力状態とに切り替える。第1出力状態は、駆動力による第2出力軸の回転を制限すると共に、駆動力による第1出力軸の回転を許容する。第2出力状態は、駆動力による第1出力軸の回転を制限すると共に、駆動力による第2出力軸の回転を許容する。
【0009】
従って、動力伝達装置によれば、出力軸切替部によって、第1出力状態と第2出力状態に切り替えることで、1つの駆動源で発生した駆動力の出力先を、第1出力軸、第2出力軸に適宜切り替えることができる。つまり、1つの駆動源によって、第1出力軸、第2出力軸での出力をそれぞれ実現することができるので、動力伝達装置を用いた構成の小型化を図ることができる。
【0010】
又、出力軸切替部の第1出力状態では、駆動力による第2出力軸の回転を制限すると共に、駆動力による第1出力軸の回転を許容し、第2出力状態では、駆動力による第1出力軸の回転を制限すると共に、駆動力による第2出力軸の回転を許容する。
【0011】
つまり、第1出力状態、第2出力状態の何れの場合も、回転するか否かは別にして、第1出力軸及び第2出力軸に対して駆動力が伝達された状態になっている。この為、動力伝達装置によれば、出力軸切替部による切替が生じた場合でも、第1出力軸、第2出力軸の出力態様を高い精度で制御することができる。
【0012】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係る動力伝達装置を適用した統合弁の構成図である。
図2】統合弁を含む冷凍サイクルの構成図である。
図3図1におけるIII-III断面の断面図である。
図4図1におけるIV-IV断面の断面図である。
図5】第1実施形態に係る統合弁の第1出力状態を示す説明図である。
図6】第1実施形態に係る統合弁の第2出力状態を示す説明図である。
図7】第2実施形態に係る動力伝達装置を適用した統合弁の構成図である。
図8】第2実施形態に係る出力軸切替部を構成するに関する説明図である。
図9】第3実施形態に係る動力伝達装置を適用した統合弁の構成図である。
図10】第4実施形態に係る動力伝達装置を適用した統合弁の構成図である。
図11図10におけるXI-XI断面の断面図である。
図12】第4実施形態に係る抗力発生部の構成を示す説明図である。
図13】第4実施形態における抗力発生部を示す断面図である。
図14】第4実施形態に係る統合弁の第1出力状態を示す説明図である。
図15】第4実施形態に係る統合弁の第2出力状態を示す説明図である。
図16】本開示における抗力発生部の第1変形例を示す断面図である。
図17】本開示における抗力発生部の第2変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各実施形態において、先行する実施形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の実施形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0015】
(第1実施形態)
本開示に係る動力伝達装置を適用した一実施形態について、図1図6を参照して説明する。第1実施形態においては、本開示に係る動力伝達装置を、流体回路における複数の弁装置を統合した統合弁Vに適用している。図1に示すように、統合弁Vは、動力伝達装置1により、駆動モータ11で出力された駆動力の出力先を、第1減圧部VA側と第2減圧部VB側とに切り替えて伝達するように構成されている。
【0016】
図2に示すように、第1実施形態における第1減圧部VA及び第2減圧部VBは、蒸気圧縮式の冷凍サイクルである冷凍サイクル100において、相互に並列に接続されている2つの膨張弁を統合した機能を有する統合弁Vを構成している。
【0017】
具体的に、第1実施形態に係る冷凍サイクル100の構成について、図2を参照して説明する。冷凍サイクル100は、圧縮機110と、凝縮器111と、第1減圧部VAと、第2減圧部VBと、第1蒸発器113と、第2蒸発器114と、を有している。
【0018】
第1実施形態において、圧縮機110は、冷媒を吸入して圧縮し吐出する電動圧縮機である。冷凍サイクル100は、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界サイクルであり、蒸気圧縮式冷凍サイクルを循環する冷媒としては、フロン系冷媒(例えば、R134a)が採用されている。
【0019】
凝縮器111は、圧縮機110から吐出された冷媒の熱を放熱させて、冷媒を凝縮させる。凝縮器111の冷媒出口側には、冷媒分岐部112が配置されている。冷媒分岐部112は、凝縮器111から流出した冷媒の流れを、第1減圧部VA側へ向かう冷媒の流れと、第2減圧部VB側へ向かう冷媒の流れに分岐させる。
【0020】
第1減圧部VAは、第1実施形態に係る統合弁Vの一部を構成し、凝縮器111で凝縮された冷媒の一部を減圧させる。第1減圧部VAにおける冷媒流れの下流側には、第1蒸発器113が接続されている。第1蒸発器113は、第1減圧部VAにて減圧された冷媒に外部の熱を吸熱させて冷媒を蒸発させる。
【0021】
そして、第2減圧部VBは、第1減圧部VAと同様に統合弁Vの一部を構成し、凝縮器111で凝縮された冷媒の他の一部を減圧させる。第2減圧部VBにおける冷媒流れの下流側には、第2蒸発器114が接続されている。第2蒸発器114は、第2減圧部VBにて減圧された冷媒に外部の熱を吸熱させて冷媒を蒸発させる。
【0022】
第1蒸発器113の冷媒流れ下流側及び第2蒸発器114の冷媒流れ下流側には、冷媒合流部115が接続される。冷媒合流部115は、第1蒸発器113から流出した冷媒の流れと、第2蒸発器114から流出した冷媒の流れを合流させて、圧縮機110の吸入口側に流出させる。
【0023】
図2に示すように、第1実施形態に係る統合弁Vは、冷凍サイクル100における冷媒分岐部112の流入口側から、第1減圧部VA及び第2減圧部VBの流出口側までの部分を統合して構成されている。即ち、統合弁Vは、冷媒分岐部112の機能、第1減圧部VAの機能、第2減圧部VBの機能を有している。
【0024】
次に、第1実施形態に係る統合弁Vの具体的構成について、図面を参照して説明する。図1に示すように、統合弁Vは、駆動力を発生させる駆動部10と、第1減圧部VA、第2減圧部VBを含む冷媒の流路を有する本体部30とを有しており、本開示に係る動力伝達装置1を含んでいる。動力伝達装置1は、駆動部10で発生する回転駆動力を、磁力を用いて、第1減圧部VA側、第2減圧部VB側の何れかに切り替えて伝達する。
【0025】
ここで、統合弁Vは、冷凍サイクル100において、縦置き配置されている。縦置き配置とは、第1減圧部VA及び第2減圧部VBにおける弁体の軸方向が重力方向と略平行となり、かつ駆動部10が本体部30に対して上方側になるような配置のことである。
【0026】
図1に示すように、駆動部10は、統合弁Vにおける上側部分を構成しており、本体部30の上面に隣接している。駆動部10は、電力の供給によって回転駆動力を発生させる駆動モータ11と、駆動モータ11で発生した駆動力が入力される入力軸20と、入力軸20から入力された駆動力の出力先を切り替える為の出力軸切替部25とを有している。
【0027】
駆動モータ11は、位置フィードバック制御によって駆動可能なモータであり、ロータ12、ステータ13およびシャフト14を有している。駆動モータ11としては、例えば三相ブラシレスモータやステッピングモータ等を採用することができる。
【0028】
シャフト14は、統合弁Vの上面を構成するモータ保持板15によって回転可能に支持されている。シャフト14にはロータ12が取り付けられており、ロータ12と一体に回転する。シャフト14は駆動モータ11の出力軸であると共に動力伝達装置1における入力軸の一部を構成している。
【0029】
ステータ13は、図示しないモーターケース又はモータ保持板15に固定されており、ステータコイルを有している。ロータ12は円筒状に構成されており、ロータ12の内部にステータ13が配置されている。そして、ロータ12には、N極及びS極からなる一対の磁石が円周方向に沿って複数組配置されている。例えば、ロータ12の円周面には、N極及びS極は各4個ずつ配置されているものとし、ロータ12の極数Prを8とすることができる。ステータ13及びロータ12は、シャフト14を回転させる駆動力を電磁力によって出力する。
【0030】
統合弁Vの上側部分にて、円環状に配置される出力軸切替部25の中央部分には、モータ保持板15が配置されている。上述したように、モータ保持板15は、駆動モータ11のシャフト14を回転可能に支持している。
【0031】
尚、駆動部10には、図示しない回路部が収容されている。回路部は、駆動モータ11を制御する為の複数の電子部品を搭載した回路基板を有している。更に、回路部は、統合弁Vにおける出力軸の切替動作に係る制御(即ち、出力軸切替部25の制御)を実行することができる。
【0032】
駆動モータ11のシャフト14の下端側には、入力軸20が接合されている。入力軸20は、シャフト14の回転軸芯の延長線上に軸芯が一致するように取り付けられている。従って、入力軸20は、駆動モータ11の駆動によって、ロータ12及びシャフト14と一体に回転する。
【0033】
入力軸20の下端には、入力側磁石21が形成されている。上述したように、入力軸20は、駆動モータ11で発生した回転駆動力が入力されることで、ロータ12等と共に回転する。入力側磁石21は、入力軸20と一体に形成されている為、駆動モータ11で生じた回転駆動力の入力に伴って回転する。
【0034】
図1図3に示すように、入力側磁石21は、入力軸20の下端に円盤状に形成されており、その側面(即ち、円盤形状の外周面)には、N極21N及びS極21Sからなる一対の磁石が円周方向に沿って少なくとも一組配置されている。本例では、N極21N及びS極21Sは各1個であるので、入力側磁石21の極数Pinは2である。
【0035】
統合弁Vの上側部分においては、出力軸切替部25が、駆動モータ11の周囲を囲むように配置されている。出力軸切替部25は、上述したように、駆動モータ11で生じた回転駆動力の出力先を、第1出力軸40、第2出力軸50の何れかに切り替える為の構成であり、切替用コイル26と、切替用ヨーク27を有している。
【0036】
切替用コイル26は、統合弁Vの上面を構成する隔壁36上において、円環状に配置された直流コイルである。切替用コイル26は、予め定められた方向へ電流を流す場合と、その逆方向へ電流を流す場合とを切り替えることができる。
【0037】
切替用ヨーク27は、円環状の切替用コイル26の内径側及び外径側を、切替用コイル26の上部を介して接続するように構成された磁性体製のヨークである。切替用ヨーク27は、下側が解放された溝形状を有する鉄製の環状部材ということもできる。この場合、溝形状の内部には、切替用コイル26が配置される。
【0038】
このように構成された切替用コイル26に直流電流を流して磁界を発生させると、切替用ヨーク27の内径側の端部及び外径側の端部には、それぞれ異なる極の磁力が発生する。以下の説明では、切替用コイル26における外径側の端部を、第1磁力発生部27Aといい、切替用コイル26における内径側の端部を、第2磁力発生部27Bという。
【0039】
切替用コイル26に電流を流した場合、切替用コイル26に生じた磁界によって、第1磁力発生部27A、第2磁力発生部27Bに、それぞれ磁力が発生する。第1磁力発生部27A、第2磁力発生部27Bに発生する磁力の極性は、切替用コイル26に流れる電流の向きによって制御される。
【0040】
例えば、切替用コイル26に対して予め定められた所定方向に電流を流した場合、第1磁力発生部27Aに発生する磁力はS極を示し、第2磁力発生部27Bに発生する磁力はN極を示す。そして、切替用コイル26に対して、所定方向と逆向きに電流を流した場合、第1磁力発生部27Aに発生する磁力はN極を示し、第2磁力発生部27Bに発生する磁力はS極を示す。
【0041】
又、第1磁力発生部27A及び第2磁力発生部27Bは、それぞれ隔壁36の上面に接するように取り付けられている為、隔壁36の下方に対して、切替用コイル26への通電によって生じた磁力を作用させることができる。
【0042】
図1に示すように、駆動モータ11、入力軸20、出力軸切替部25を含む駆動部10の下方には、隔壁36が配置されている。隔壁36は、統合弁V及び動力伝達装置1における駆動部10側の空間と、第1出力軸40等を含む本体部30側の空間を区画すると共に、本体部30側の空間を封止する封止部材である。
【0043】
本体部30側の空間には、統合弁Vにおいて冷凍サイクル100を循環する冷媒が流通する空間が含まれている為、隔壁36は、本体部30側を流通する冷媒(高圧冷媒)が駆動部10側の空間に漏れ出すのを防止している。
【0044】
隔壁36は、例えば、非磁性体又は所定の透磁率を有する部材として構成されている。具体的には、隔壁36は、SUS304、アルミニウムまたはSUS305等のオーステナイト系のステンレス鋼を加工硬化によってマルテンサイトへ変質させて磁性を付与したステンレス鋼によって形成されている。
【0045】
上述したように、隔壁36は、本体部30の上面に結合されており、本体部30の内部に形成された空間を密閉している。即ち、隔壁36及び本体部30は、耐圧性を備える圧力容器を形成している。
【0046】
図1に示すように、隔壁36は、中央部が下方に向かって凹んだ円盤状に形成されており、封止円筒部36Aと、封止底面部36Bと、封止外縁部36Cとを有している。第1実施形態に係る隔壁36は、耐圧性を向上させるために、封止円筒部36A、封止底面部36B及び封止外縁部36Cが一体成形されている。
【0047】
封止円筒部36Aは、隔壁36の中央部において下方に向かって凹んだ部分の側面部を構成する円筒状の部分である。封止円筒部36Aは、図1図3に示すように、入力側磁石21の外径側に位置している。
【0048】
封止底面部36Bは、入力側磁石21の下方側に位置しており、封止円筒部36Aの下方を塞いでいる。これにより、封止円筒部36Aの内部空間は、本体部30側の空間から区画される。封止外縁部36Cは、封止円筒部36Aの上端部において、径方向外側へ向かって拡がるように形成された板状部である。封止外縁部36Cは、本体部30の上面に対して固定されている。
【0049】
尚、封止底面部36Bを、中央部が下方に向かって湾曲した円板状に形成してもよい。又、封止円筒部36Aと封止底面部36Bとの境界をなす角部についても、直角ではなく、所定の曲率半径で丸められた形状にしてもよい。これらの形状及び加工を採用することで、隔壁36の耐圧性を高めることができる。
【0050】
図1に示すように、統合弁Vの下側部分を構成する本体部30は、第1減圧部VA、第2減圧部VBの減圧機能を実現する為の各種機構を収容する機構収容部35と、冷凍サイクル100の冷媒が流通する冷媒流路が形成された流路形成部60とを有している。機構収容部35は、本体部30における上側部分に配置され、流路形成部60は、本体部30における下側部分を構成している。本体部30に形成された内部空間(即ち、機構収容部35及び隔壁36)は、収容空間の一例に相当する。
【0051】
統合弁Vの機構収容部35には、上述したように、第1減圧部VAの減圧機能を実現する為の各種部材と、第2減圧部VBの減圧機能を実現する為の各種部材がそれぞれ収容されている。
【0052】
第1減圧部VAの減圧機能を実現する為の各種部材には、第1出力軸40と、第1軸受部材47と、第1ねじ部材48と、第1弁体49が含まれている。又、第2減圧部VBの減圧機能を実現する為の各種部材には、第2出力軸50と、第2軸受部材57と、第2ねじ部材58と、第2弁体59が含まれている。
【0053】
第1実施形態に係る統合弁Vの第1出力軸40は、駆動部10で発生した回転駆動力によって回転し、第1減圧部VAを構成する第1弁体49に対して、回転駆動力を出力する為の出力軸である。
【0054】
図1に示すように、第1出力軸40は、上述したシャフト14、入力軸20の回転軸の延長線上に回転軸を有するように配置されており、大径部41と、小径部42とを有している。尚、第1出力軸40の回転軸は、環状に形成された出力軸切替部25の中心とも一致するように配置されている。
【0055】
大径部41は、円筒状に形成されており、第1出力軸40の上側部分を構成している。従って、大径部41は、本体部30における機構収容部35内に収容されている。そして、大径部41の内径寸法は、少なくとも、隔壁36の封止円筒部36Aの外径寸法よりも大きく形成されている。又、大径部41の径寸法は、出力軸切替部25における第1磁力発生部27Aと同じ径寸法になるように形成されている。
【0056】
大径部41の上側部分には、出力側磁石45が配置されている。図1図3に示すように、出力側磁石45は、大径部41と同様に円筒形状に形成されており、N極45N及びS極45Sからなる一対の磁石を円周方向に沿って略等間隔に複数個配置して構成されている。本例では、N極45N及びS極45Sは各20個であるので、出力側磁石45の極数Pfは40である。出力側磁石45は、入力側磁石21と異なる極数であり、入力側磁石21よりも極数の多い多極磁石ということができる。
【0057】
上述したように、隔壁36における封止円筒部36Aの内径側には、入力軸20の入力側磁石21が配置されている。出力側磁石45は、封止円筒部36Aの外径側に配置される。図1図3に示すように、出力側磁石45は、隔壁36の封止円筒部36Aを介して、入力側磁石21に対向するように配置されている。従って、入力側磁石21と出力側磁石45の間に作用する磁力によって、入力軸20に入力された回転駆動力を第1出力軸40に伝達することができる。
【0058】
そして、大径部41の上端面には、第1切替用磁石46が配置されている。第1切替用磁石46は、上方側がS極、N極の何れかの極性(例えば、S極)を示すように配置されており、大径部41と同じ径寸法を示す環状をなしている。従って、図1に示すように、大径部41の上端に配置された第1切替用磁石46は、隔壁36の封止外縁部36Cを介して、出力軸切替部25の第1磁力発生部27Aに対向する。これにより、出力軸切替部25の第1磁力発生部27Aに生じた磁力を、第1切替用磁石46に作用させることができる為、第1出力軸40の動作を制御することができる。
【0059】
第1出力軸40の小径部42は、大径部41よりも小径の円筒形状に形成されており、大径部41の下側部分から下方へ伸びている。小径部42の内部には、後述する第2出力軸50等が配置される。
【0060】
小径部42の下端部には、第1弁体49が配置されている。第1弁体49は、第1減圧部VAにおける弁体に相当し、小径部42の内径よりも小さな外径寸法に形成された円筒形状に形成されている。
【0061】
図1図4に示すように、小径部42の下端部には、溝部43が形成されている。溝部43は、円筒形状の小径部42における内側表面を溝状に窪ませて構成されており、小径部42の下端縁から上方に向かって伸びている。
【0062】
そして、第1弁体49の上端側には、突条部49Aが形成されている。突条部49Aは、円筒形状の第1弁体49における外側表面を径方向外側に突出させて形成されており、第1弁体49の上端縁から下方に向かって伸びている。又、突条部49Aの外径寸法は、溝部43の内側寸法よりも小さく形成されている。従って、小径部42の溝部43に対して、第1弁体49の突条部49Aを嵌合させることができる。この時、溝部43の内側表面と、突条部49Aの外側表面の間には、一定の間隔が設けられる。
【0063】
これにより、溝部43と突条部49Aの協働によって、第1出力軸40の回転動作につれて、第1弁体49を回転させることができ、第1出力軸40に伝達された回転駆動力を第1弁体49に伝達することができる。又、溝部43と突条部49Aとの協働によって、第1弁体49に対して、第1出力軸40を回転軸方向(即ち、上下方向)に移動させることができる。
【0064】
図1に示すように、本体部30に形成された機構収容部35の下部には、第1軸受部材47が配置されている。第1軸受部材47は、本体部30の機構収容部35の下部に固定されており、第1出力軸40を回転可能に支持している。又、第1軸受部材47は、第1出力軸40の上下方向への移動を予め定められた範囲で許容している。
【0065】
第1軸受部材47の下方には、第1ねじ部材48が配置されている。第1ねじ部材48は、本体部30の流路形成部60を構成する第1弁室65内に固定されており、ねじ孔を有している。第1ねじ部材48のねじ孔の内部には、雌ねじ形状が形成されており、第1弁体49の外周面には、雄ねじ形状が形成されている。
【0066】
第1弁体49の雄ねじは、第1ねじ部材48に形成されたねじ孔に螺合していてねじ機構を構成している。これにより、第1弁体49が回転すると、第1弁体49は回転軸方向に移動可能となる為、第1減圧部VAにおける開度調整が可能となる。
【0067】
そして、統合弁Vの第2出力軸50は、駆動部10で発生した回転駆動力によって回転し、第2減圧部VBを構成する第2弁体59に対して、回転駆動力を出力する為の出力軸である。
【0068】
図1に示すように、第2出力軸50は、上述したシャフト14、入力軸20の回転軸の延長線上に回転軸を有するように配置されており、円筒部51と、軸部52とを有している。尚、第2出力軸50の回転軸は、環状に形成された出力軸切替部25の中心とも一致するように配置されており、第1出力軸40の回転軸とも一致している。
【0069】
円筒部51は、円筒状に形成されており、第2出力軸50の上側部分を構成している。円筒部51は、第2出力軸50の内径側に配置されており、隔壁36の封止円筒部36Aの外径側に位置している。従って、円筒部51は、本体部30における機構収容部35内に収容されている。円筒部51の径寸法は、出力軸切替部25における第2磁力発生部27Bと同じ径寸法になるように形成されている。
【0070】
円筒部51の上側部分には、磁束変調部55が配置されている。磁束変調部55は、入力側磁石21と出力側磁石45との間で磁束を変調させる磁気変調部であり、第2出力軸50と一体に形成されている。
【0071】
図1図3に示すように、磁束変調部55は、円筒部51と同様に円筒形状に形成されており、複数個の磁性部55A及び複数個の非磁性部55Bを有している。磁性部55A及び非磁性部55Bは扇台形状であり、磁性部55Aが円周方向に沿って略等間隔に並設されている。非磁性部55Bは、磁性部55A同士の間に配置されている。例えば、磁性部55Aは軟磁性体(例えば鉄系金属)で形成されており、非磁性部55Bは非磁性体(例えばステンレスまたは樹脂)で形成されている。
【0072】
磁束変調部55の極数Ppは、入力側磁石21の極数Pinと出力側磁石45の極数Pfとの合計と同じ個数になっている。第1実施形態では、入力側磁石21の極数Pinは2であり、出力側磁石45の極数Pfは40であるので、磁束変調部55の極数Ppは42である。即ち、磁束変調部55は、各21個の磁性部55A及び非磁性部55Bを用いて構成されている。
【0073】
上述したように、隔壁36における封止円筒部36Aの内径側には、入力軸20の入力側磁石21が配置されている。第2出力軸50の磁束変調部55に対して径方向外側には、第1出力軸40の出力側磁石45が配置される。図1図3に示すように、磁束変調部55は、隔壁36の封止円筒部36Aを介して、入力側磁石21及び出力側磁石45に対向するように配置されている。従って、磁束変調部55は、入力側磁石21と出力側磁石45の間に作用する磁束を変調させることができる。
【0074】
そして、第2出力軸50の回転を停止させた場合、入力側磁石21、出力側磁石45及び磁束変調部55の間に作用する磁力によって、入力軸20に入力された回転駆動力を第2出力軸50に伝達できる。
【0075】
そして、円筒部51の上端面には、第2切替用磁石56が配置されている。第2切替用磁石56は、上方側がS極、N極の何れかの極性(例えば、S極)を示すように配置されており、円筒部51と同じ径寸法を示す環状をなしている。第2切替用磁石56の上面が示す極性は、第1切替用磁石46の上面と同じ極性を示すように配置されている。
【0076】
図1に示すように、円筒部51の上端に配置された第2切替用磁石56は、隔壁36の封止外縁部36Cを介して、出力軸切替部25の第2磁力発生部27Bに対向する。これにより、出力軸切替部25の第2磁力発生部27Bに生じた磁力を、第2切替用磁石56に作用させることができる為、第2出力軸50の動作を制御することができる。
【0077】
第2出力軸50の軸部52は、円筒部51の下部から下方に伸びる軸状の部分であり、円筒部51と一体に形成されている。上述したように、軸部52は、円筒形状に形成された第1出力軸40の小径部42の内側に挿通されている。軸部52の下端部には、第2弁体59が配置されている。第2弁体59は、第2減圧部VBにおける弁体に相当し、いわゆるニードル弁の弁体を構成している。
【0078】
図1に示すように、軸部52の下端部には、挿通孔52Aが形成されている。挿通孔52Aは、第2出力軸50の回転軸を含むように、軸部52の下端から上方に向かって軸方向に伸びるように穿設されている。
【0079】
そして、第2弁体59の上端側には、突出片59Aが形成されている。突出片59Aは、第2弁体59の回転軸に沿って、第2弁体59の上端から上方に向かって伸びるように突出している。突出片59Aの外径寸法は、軸部52に形成された挿通孔52Aの内径よりも小さく形成されている。従って、軸部52における挿通孔52Aの内部に対して、第2弁体59の突出片59Aを挿入させて、軸部52の挿通孔52Aに第2弁体59の突出片59Aを噛み合わせることができる。この時、挿通孔52Aの内側表面と、突出片59Aの外側表面との間に、所定の間隔を設けることができる。
【0080】
これにより、挿通孔52Aと突出片59Aの協働によって、第2出力軸50の回転動作につれて、第2弁体59を回転させることができ、第2出力軸50に伝達された回転駆動力を第2弁体59に伝達することができる。又、挿通孔52Aと突出片59Aとの協働によって、第2弁体59に対して、第2出力軸50を回転軸方向(即ち、上下方向)に移動させることができる。
【0081】
図1に示すように、本体部30に形成された機構収容部35の下部であって、第1軸受部材47の上方には、第2軸受部材57が配置されている。第2軸受部材57は、第1出力軸40と第2出力軸50の間において、本体部30に対して固定されており、第2出力軸50を回転可能に支持している。又、第2軸受部材57は、第2出力軸50の上下方向への移動を予め定められた範囲で許容している。
【0082】
第2軸受部材57、第1軸受部材47及び第1ねじ部材48の下方には、第2ねじ部材58が配置されている。第2ねじ部材58は、第1弁室65の下方に位置する第2弁室67内に固定されており、ねじ孔を有している。第2ねじ部材58のねじ孔の内部には、雌ねじ形状が形成されており、第2弁体59の外周面には、雄ねじ形状が形成されている。
【0083】
第2弁体59の雄ねじは、第2ねじ部材58に形成されたねじ孔に螺合していてねじ機構を構成している。これにより、第2弁体59が回転すると、第2弁体59は回転軸方向に移動可能となる為、第2減圧部VBにおける開度調整が可能となる。
【0084】
図1に示すように、統合弁Vの本体部30における下側部分には、流路形成部60が配置されている。流路形成部60は、統合弁Vにおける第1減圧部VA及び第2減圧部VBに対して、冷凍サイクル100を循環する冷媒を流入、流出させる為の冷媒流路62が形成された部分である。
【0085】
尚、第1実施形態に係る本体部30は、統合弁Vにおけるボディ部(即ち、筐体の一部)を構成しており、Al-Si‐Mg系のアルミニウム合金を用いた鋳造材(例えば、AC4C)により形成されている。
【0086】
本体部30の流路形成部60には、流入口61と、第1流出口63と、第2流出口64が形成されており、これらを接続するように冷媒流路62が形成されている。本体部30の左側側面には、流入口61が形成されている。図2に示すように、第1実施形態に係る統合弁Vでは、流入口61は、冷凍サイクル100の凝縮器111における流出口側に接続されている。
【0087】
そして、本体部30の右側側面には、第1流出口63と、第2流出口64が形成されている。本体部30の右側側面において、第1流出口63は、第2流出口64の上側に形成されている。図2に示すように、第1流出口63は、冷凍サイクル100における第1蒸発器113の冷媒入口側に接続されており、第2流出口64は、冷凍サイクル100における第2蒸発器114の冷媒入口側に接続されている。
【0088】
図1に示すように、本体部30において、流入口61と、第1流出口63及び第2流出口64との間には、第1弁室65及び第2弁室67が形成されている。第1弁室65は、第1減圧部VAを構成する第1弁体49等が収容される弁室であり、機構収容部35の下方に形成されている。第1弁室65は、上方に位置する機構収容部35と連通している。
【0089】
第1弁室65には、第1ねじ部材48が固定されている。従って、第1弁体49は、第1ねじ部材48と協働して構成されるねじ機構によって、第1弁室65の内部で回転軸方向に移動する。
【0090】
第1弁室65の下部には、上下移動する第1弁体49と接触可能な第1弁座66が形成されている。統合弁Vは、第1弁座66に対する第1弁体49の相対的な位置関係を調整することで、第1減圧部VAにおける絞り開度を調整することができる。第1弁室65における第1弁座66の近くには、第1流出口63へ向かって伸びる冷媒流路62が接続されている。
【0091】
そして、第2弁室67は、第2減圧部VBを構成する第2弁体59等が収容される弁室であり、第1弁室65の下方に形成されている。第2弁室67は、上方に位置する第1弁室65と連通している。
【0092】
第2弁室67には、第2ねじ部材58が固定されている。従って、第2弁体59は、第2ねじ部材58と協働して構成されるねじ機構によって、第2弁室67の内部で回転軸方向に移動する。
【0093】
第2弁室67の下部には、上下移動する第2弁体59と接触可能な第2弁座68が形成されている。統合弁Vは、第2弁座68に対する第2弁体59の相対的な位置関係を調整することで、第2減圧部VBにおける絞り開度を調整することができる。第2弁室67における第2弁座68の近くには、第2流出口64へ向かって伸びる冷媒流路62が接続されている。
【0094】
尚、統合弁Vにおいては、第1弁室65と第2弁室67が連通している部分によって、冷凍サイクル100における冷媒分岐部112が構成されている。
【0095】
このように構成された統合弁Vでは、動力伝達装置1によって、第1出力軸40を介して第1減圧部VAの減圧量を調整可能な第1出力状態と、第2出力軸50を介して、第2減圧部VBの減圧量を調整可能な第2出力状態を切り替えて、減圧量の調整を行う。
【0096】
以下、統合弁Vの第1出力状態、第2出力状態への切替動作と、減圧量の調整動作について、図面を参照して説明する。
【0097】
先ず、統合弁V及び動力伝達装置1における第1出力状態について、図5を参照して説明する。第1出力状態は、駆動モータ11及び出力軸切替部25の動作制御によって、第1出力軸40による駆動力の出力を許容すると同時に、第2出力軸50による駆動力の出力を制限した状態である。
【0098】
具体的に、第1出力状態に切り替える場合には、出力軸切替部25の切替用コイル26に対して、予め定められた所定方向へ直流電流を通電させる。所定方向に直流電流を流すことで、切替用コイル26には磁界が発生して、出力軸切替部25における切替用ヨーク27の両端にはそれぞれ磁力が生じる。第1出力状態の場合、第1磁力発生部27Aに生じる磁力の極性はS極を示し、第2磁力発生部27Bに生じる磁力の極性はN極を示す。
【0099】
第1磁力発生部27A及び第2磁力発生部27Bに生じた磁力は、隔壁36の封止外縁部36Cを介して、機構収容部35の構成部品に作用する。図1等に示すように、第1磁力発生部27Aは、封止外縁部36Cを介して、第1切替用磁石46に対向し、第2磁力発生部27Bは、封止外縁部36Cを介して、第2切替用磁石56に対向している。
【0100】
上述したように、第1切替用磁石46は、上方側がS極を示すように第1出力軸40に取り付けられている。この為、第1出力状態では、第1磁力発生部27Aに磁力が生じると、磁力に反発して、第1出力軸40等の軸方向に沿って、出力軸切替部25から離れるように下方向に移動する。
【0101】
一方、第2切替用磁石56についても、上方側がS極を示すように第2出力軸50に取り付けられている。この為、第1出力状態では、第2磁力発生部27Bに磁力が生じると、第2出力軸50磁力によって引き寄せられ、第2出力軸50は、第2出力軸50等の軸方向に沿って上方向に移動する。これにより、第2出力軸50の上端面は、第2磁力発生部27Bの磁力によって、隔壁36の封止外縁部36Cに密着することになる。
【0102】
この状態で駆動モータ11を駆動させると、駆動モータ11で生じた回転駆動力は、入力側磁石21、磁束変調部55、出力軸切替部25の間における磁気的相互作用により、第1出力軸40及び第2出力軸50に伝達される。
【0103】
第1出力状態においては、第2磁力発生部27Bに生じた磁力により、第2出力軸50は、出力軸切替部25側に引き寄せられ、隔壁36に密着している。この為、駆動モータ11から第2出力軸50に伝達された回転駆動力の抗力として、第2磁力発生部27Bに生じた磁力と、隔壁36と第2出力軸50の間に生じる摩擦力が作用する。
【0104】
ここで、第1出力状態では、第2出力軸50に伝達される駆動力と、出力軸切替部25等に起因する抗力の関係は、出力軸切替部25等に起因する抗力が、第2出力軸50に伝達される駆動力よりも大きくなるように定められている。従って、第1出力状態における第2出力軸50は、駆動モータ11で生じた駆動力は伝達されている状態であるが、出力軸切替部25等に起因する抗力によって、その回転が妨げられている状態となる。
【0105】
一方、第1出力状態においては、第1磁力発生部27Aに生じた磁力により、第1出力軸40は、出力軸切替部25側から遠ざけられ、隔壁36から離間している。この為、駆動モータ11から第1出力軸40に伝達された回転駆動力の抗力として、磁力や摩擦力が作用することはない。
【0106】
この為、第1出力状態では、第1出力軸40に伝達される駆動力による回転が、出力軸切替部25等に起因する抗力によって妨げられることはない。従って、第1出力状態における第1出力軸40は、駆動モータ11で生じた駆動力が伝達され、出力先である第1弁体49に対して出力可能な状態となる。
【0107】
そして、図5に示す第1出力状態で、駆動モータ11を駆動させると、駆動モータ11で生じた回転駆動力は、入力側磁石21、磁束変調部55、出力軸切替部25の間における磁気的相互作用により、第1出力軸40及び第2出力軸50に伝達される。この時、第2出力軸50は、出力軸切替部25の磁力等により停止したままの状態となるが、第1出力軸40は、駆動モータ11の回転に対して予め定められた減速比で減速して回転する。第1実施形態では、入力側磁石21、磁束変調部55、出力側磁石45の構成から、減速比は20を示す。
【0108】
このように、第1実施形態に係る統合弁Vによれば、第1出力状態で駆動モータ11を動作させることで、第1出力軸40及び第1弁体49を移動させることができる。即ち、第1出力状態で駆動モータ11の回転方向を制御することにより、第1弁体49を第1弁座66に対して近接、離間させることができ、第1減圧部VAの絞り開度の調整を実現することができる。
【0109】
次に、統合弁V及び動力伝達装置1における第2出力状態について、図6を参照して説明する。第2出力状態は、駆動モータ11及び出力軸切替部25の動作制御によって、第2出力軸50による駆動力の出力を許容すると同時に、第1出力軸40による駆動力の出力を制限した状態である。
【0110】
具体的に、第2出力状態に切り替える場合には、出力軸切替部25の切替用コイル26に対して、第1出力状態の場合における所定方向とは逆方向へ直流電流を通電させる。直流電流を流すことで、切替用コイル26には磁界が発生して、出力軸切替部25における切替用ヨーク27の両端にはそれぞれ磁力が生じる。第2出力状態の場合、所定方向と逆方向に直流電流を流している為、第1磁力発生部27Aに生じる磁力の極性はN極を示し、第2磁力発生部27Bに生じる磁力の極性はS極を示す。
【0111】
第1出力状態にて説明したように、第1磁力発生部27A及び第2磁力発生部27Bに生じた磁力は、隔壁36の封止外縁部36Cを介して、第1切替用磁石46及び第2切替用磁石56に作用する。
【0112】
上述したように、第1切替用磁石46は、上方側がS極を示すように第1出力軸40に取り付けられている為、第2出力状態では、第1磁力発生部27Aに磁力が生じると、磁力によって、出力軸切替部25側に引き寄せられる。これにより、第1出力軸40の上端面は、第1磁力発生部27Aの磁力によって、第1出力軸40の軸方向に従って移動して、隔壁36の封止外縁部36Cに密着することになる。
【0113】
一方、第2切替用磁石56についても、上方側がS極を示すように第2出力軸50に取り付けられている為、第2出力状態では、第2磁力発生部27Bに磁力が生じると、磁力に反発して、軸方向に従って出力軸切替部25から離れる方向に移動する。
【0114】
第2出力状態においても駆動モータ11を駆動させると、駆動モータ11で生じた回転駆動力は、入力側磁石21、磁束変調部55、出力軸切替部25の間における磁気的相互作用により、第1出力軸40及び第2出力軸50に伝達される。
【0115】
第2出力状態においては、第1磁力発生部27Aに生じた磁力により、第1出力軸40は、出力軸切替部25側に引き寄せられ、隔壁36に密着している。この為、駆動モータ11から第1出力軸40に伝達された回転駆動力の抗力として、第1磁力発生部27Aに生じた磁力と、隔壁36と第1出力軸40の間に生じる摩擦力が作用する。
【0116】
そして、第2出力状態では、第1出力軸40に伝達される駆動力と、出力軸切替部25等に起因する抗力の関係は、出力軸切替部25等に起因する抗力が、第1出力軸40に伝達される駆動力よりも大きくなるように定められている。従って、第2出力状態における第1出力軸40は、駆動モータ11で生じた駆動力は伝達されている状態であるが、出力軸切替部25等に起因する抗力によって、その回転が妨げられている状態となる。
【0117】
一方、第2出力状態においては、第2磁力発生部27Bに生じた磁力により、第2出力軸50は、出力軸切替部25側から遠ざけられ、隔壁36から離間している。この為、駆動モータ11から第2出力軸50に伝達された回転駆動力の抗力として、磁力や摩擦力が作用することはない。
【0118】
この為、第2出力状態では、第2出力軸50に伝達される駆動力による回転が、出力軸切替部25等に起因する抗力によって妨げられることはない。従って、第2出力状態における第2出力軸50は、駆動モータ11で生じた駆動力が伝達され、出力先である第2弁体59に対して出力可能な状態となる。
【0119】
そして、図6に示す第2出力状態で、駆動モータ11を駆動させると、駆動モータ11で生じた回転駆動力は、入力側磁石21、磁束変調部55、出力軸切替部25の間における磁気的相互作用により、第1出力軸40及び第2出力軸50に伝達される。この時、第1出力軸40は、出力軸切替部25の磁力等により停止したままの状態となるが、第2出力軸50は、駆動モータ11の回転に対して予め定められた減速比で減速して回転する。第1実施形態では、入力側磁石21、磁束変調部55、出力側磁石45の構成から、減速比は21を示す。
【0120】
このように、第1実施形態に係る統合弁Vによれば、第2出力状態で駆動モータ11を動作させることで、第2出力軸50及び第2弁体59を移動させることができる。即ち、第2出力状態で駆動モータ11の回転方向を制御することで、第2弁体59を第2弁座68に対して近接、離間させることができ、第2減圧部VBの絞り開度の調整を実現することができる。
【0121】
図5図6に示すように、第1実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1によれば、第1出力軸40に出力する第1出力状態、第2出力軸50に出力する第2出力状態に切り替えて、1つの駆動モータ11で発生した駆動力を出力することができる。これにより、統合弁V及び動力伝達装置1は、駆動源としての1台の駆動モータ11で、第1減圧部VA、第2減圧部VBの2つの弁装置に相当する動作を実現することができる。
【0122】
この結果、第1実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1によれば、図2に示す冷凍サイクル100のような、複数の温度状態(例えば、第1蒸発器113、第2蒸発器114の冷媒温度)を必要とする流体回路の弁装置を、1つの駆動源で実現することができる。又、複数の弁装置の駆動源を共通化した統合弁Vとして実現することで、各弁装置を個別に設ける場合よりも占有スペースを小さくすることができ、流体回路の占有スペースに関して小型化を図ることができる。
【0123】
第1実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1によれば、第1出力状態、第2出力状態の何れについても、入力側磁石21、磁束変調部55、出力側磁石45から構成される磁気ギヤを介して、回転駆動力の伝達が行われている。磁気ギヤを介することで、それぞれの出力状態に定められた減速比で、駆動モータ11で生じた回転駆動力が減速されて出力軸側に伝達される。この結果、統合弁V及び動力伝達装置1は、駆動モータ11で生じた回転駆動力に関して、それぞれに定められた減速比で減速させつつ、トルクを増大させた状態で、第1弁体49又は第2弁体59に出力させることができる。
【0124】
図5に示す第1出力状態、図6に示す第2出力状態において、第1出力軸40及び第2出力軸50の何れに対しても、駆動モータ11で発生した回転駆動力が伝達されている。換言すると、第1出力軸40、第2出力軸50において回転が許容されているか、回転が制限されているかに関わらず、駆動モータ11で発生した回転駆動力が何れの出力軸に作用している。
【0125】
つまり、回転が制限されている側の出力軸に対しても駆動力が継続して伝達される為、当該出力軸の回転が許容されたタイミングでの位置ずれが生じることを抑制することができ、第1減圧部VA及び第2減圧部VBに係る開度制御の精度を高めることができる。
【0126】
又、この状態において、切替用コイル26に流す直流電流の向きを変更することで、第1出力状態と第2出力状態を切り替えることができる。この為、統合弁V及び動力伝達装置1によれば、第1減圧部VAの開度調整と、第2減圧部VBの開度調整を迅速に切り替えることができ、流体回路の運転切替に関する即応性を高めることができる。
【0127】
図1等に示すように、統合弁V及び動力伝達装置1を構成する入力軸20は、駆動部10に配置されており、第1出力軸40及び第2出力軸50は、本体部30の機構収容部35内に配置されている。本体部30の機構収容部35は、隔壁36を介して、駆動部10から区画されており、機構収容部35は、本体部30の流路形成部60を構成する空間と連通している。
【0128】
即ち、統合弁V及び動力伝達装置1において、第1出力軸40及び第2出力軸50は、冷凍サイクル100を流れる高圧冷媒が流通する空間に配置され、駆動部10側とは隔壁36によって区画されている。従って、隔壁36を用いた冷媒封止構造を実現することができるので、駆動部10の動作に対する冷媒の影響を抑制することができる。又、本体部30に対して隔壁36を取り付ける構成を採用することで、高圧冷媒に対する耐圧性を高めることができる。
【0129】
以上説明したように、第1実施形態に係る動力伝達装置1によれば、入力軸20、第1出力軸40、第2出力軸50を有しており、出力軸切替部25の切替動作により、第1出力状態と第2出力状態とを切り替える。第1出力状態は、駆動力による第2出力軸50の回転を制限すると共に、駆動力による第1出力軸40の回転を許容する。第2出力状態は、駆動力による第1出力軸40の回転を制限すると共に、駆動力による第2出力軸50の回転を許容する。
【0130】
従って、統合弁V及び動力伝達装置1によれば、出力軸切替部25によって、第1出力状態と第2出力状態に切り替えることで、1つの駆動源で発生した駆動力の出力先を、第1出力軸、第2出力軸に適宜切り替えることができる。つまり、1つの駆動源によって、第1出力軸40、第2出力軸50での出力をそれぞれ実現することができるので、動力伝達装置1を用いた構成(統合弁V及び冷凍サイクル100)の小型化を図ることができる。
【0131】
又、出力軸切替部25の第1出力状態では、駆動力による第2出力軸50の回転を制限すると共に、駆動力による第1出力軸40の回転を許容している。そして、第2出力状態では、駆動力による第1出力軸40の回転を制限すると共に、駆動力による第2出力軸50の回転を許容する。
【0132】
つまり、第1出力状態、第2出力状態の何れの場合も、回転するか否かは別にして、第1出力軸40及び第2出力軸50に対して駆動力が伝達された状態になっている。この為、動力伝達装置1によれば、出力軸切替部25による切替が生じた場合でも、出力先の位置ずれを抑制して、第1出力軸40、第2出力軸50の出力態様を高い精度で制御することができる。
【0133】
又、図1等に示すように、統合弁V及び動力伝達装置1において、入力軸20は入力側磁石21を有し、第1出力軸40は、出力側磁石45を有している。そして、第2出力軸50は、磁束変調部55を有している。入力軸20、出力側磁石45、磁束変調部55は、所謂、磁気ギヤを構成している。このように構成することで、統合弁V及び動力伝達装置1は、入力軸20に入力された駆動力を第1出力軸40から出力する場合と、第2出力軸50から出力する場合に、それぞれに定められた減速比で出力することができる。
【0134】
更に、統合弁V及び動力伝達装置1によれば、第1出力軸40及び第2出力軸50は、本体部30の機構収容部35内に配置され、機構収容部35は、入力軸20が配置されている駆動部10から、隔壁36によって区画されている。
【0135】
これにより、動力伝達装置1及び統合弁Vによれば、第1出力軸40及び第2出力軸50側の環境に対して、入力軸20側の環境を独立させることができる。例えば、入力軸20側に駆動部10が配置されている場合であっても、第1出力軸40、第2出力軸50側の環境の影響を受けることなく、駆動部10の動作及び入力軸20に対する駆動力の入力を実現することができる。
【0136】
そして、出力軸切替部25は、収容空間に相当する機構収容部35の外部に配置されており、機構収容部35の内部に配置された第1出力軸40、第2出力軸50に対して磁力を作用させて、第1出力軸40、第2出力軸50の何れか一方の回転を制限している。即ち、磁力を介することで、収容空間の内部に配置された第1出力軸40、第2出力軸50の動作を非接触で制御することができ、機構収容部35内部の圧力環境に影響を及ぼすことなく、第1出力状態、第2出力状態を切り替えることができる。
【0137】
図5図6に示すように、第1実施形態においては、出力軸切替部25と、第1出力軸40の第1切替用磁石46及び第2出力軸50の第2切替用磁石56にて、磁力を各出力軸の軸方向に作用させて、第1出力状態、第2出力状態を切り替えている。又、第1出力軸40及び第2出力軸50は、同じ回転軸における径方向の内側と外側に配置されている。この為、出力軸切替部25で第1出力状態、第2出力状態を切り替える際に、第1出力軸40、第2出力軸50の動作に干渉しないように、磁力に起因する荷重を作用させることができる。
【0138】
(第2実施形態)
次に、上述した実施形態と異なる第2実施形態について、図7、8を参照して説明する。第2実施形態では、第1出力軸40、第2出力軸50及び出力軸切替部25の構成が、第1実施形態と相違している。即ち、統合弁V及び動力伝達装置1におけるその他の構成(例えば、駆動部10、本体部30等)については、第1実施形態と同様である。この為、以下の説明においては、第2実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1のうち、第1実施形態との相違点について詳細に説明し、他の部分についての説明を省略する。
【0139】
第2実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1において、第1出力軸40は、シャフト14、入力軸20の回転軸の延長線上に回転軸を有するように配置されており、第1弁体49に対して、回転駆動力を出力する。第2実施形態に係る第1出力軸40は、第1切替用磁石46を有していない点を除いて、上述した第1実施形態と同様の構成である。従って、第2実施形態に係る第1出力軸40は、第1実施形態と同様に、出力側磁石45が配置された大径部41と、溝部43が形成された小径部42を有している。
【0140】
又、第2実施形態に係る第2出力軸50は、シャフト14、入力軸20の回転軸の延長線上に回転軸を有するように配置されており、磁束変調部55が配置された円筒部51と、挿通孔52Aが形成された軸部52とを有している。
【0141】
図7に示すように、第2実施形態に係る第2出力軸50において、円筒部51の上端面には、第2切替用磁石56が配置されていない。そして、第2実施形態に係る第2出力軸50の円筒部51において、磁束変調部55は、軸方向に係る寸法に関して、第1実施形態よりも長く形成されている。即ち、第2実施形態に係る磁束変調部55は、出力側磁石45に重複しない領域(図7における磁束変調部55の上側部分)が生じるように形成されている。
【0142】
第2実施形態に係る磁束変調部55の下側部分に対して径方向外側には、第1出力軸40の出力側磁石45が配置される。磁束変調部55の下側部分は、圧力容器37を介して、入力側磁石21及び出力側磁石45に対向するように配置されている。従って、第2実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1によれば、磁束変調部55の下側部分、入力側磁石21及び出力側磁石45の協働によって、入力軸20に伝達された駆動力を、第1出力軸40、第2出力軸50に伝達することができる。
【0143】
図7に示すように、第2実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1では、第1実施形態と異なり、流路形成部60の上面を覆うように、有底筒状に形成された圧力容器37が配置されている。圧力容器37は、流路形成部60の上方部分と協働して、機構収容部35の外殻を構成する。
【0144】
圧力容器37は、第1実施形態の隔壁36と同様に、例えば、非磁性体又は所定の透磁率を有する材料によって構成されている。具体的には、圧力容器37は、SUS304、アルミニウムまたはSUS305等のオーステナイト系のステンレス鋼を加工硬化によってマルテンサイトへ変質させて磁性を付与したステンレス鋼によって形成されている。
【0145】
図7に示すように、第2実施形態においては、第1出力軸40の出力側磁石45に対する径方向外側には、圧力容器37の壁面が配置されている。又、第2出力軸50における磁束変調部55の上側部分に対しても、その径方向外側には、圧力容器37の壁面が配置されている。
【0146】
ここで、第2実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1には、出力軸切替部25として、第1固定用コイル70Aと、第2固定用コイル70Bが配置されている。第1固定用コイル70A及び第2固定用コイル70Bは、いわゆる、クローポール型の固定コイルにより構成されており、圧力容器37における径方向外側にて環状に配置されている。
【0147】
第1固定用コイル70Aは、圧力容器37の側壁部分を介して、第1出力軸40の出力側磁石45と対向するように配置され、通電制御に伴って、第1出力軸40の回転を阻害する磁場を発生させる。
【0148】
第2固定用コイル70Bは、圧力容器37の側壁部分を介して、第2出力軸50における磁束変調部55の上側部分と対向するように配置されており、通電制御に伴って、第2出力軸50の回転を阻害する磁場を発生させる。
【0149】
ここで、第1固定用コイル70A、第2固定用コイル70Bの構成について、図8を参照して詳細に説明する。尚、図8では、第1固定用コイル70Aの一部を図示しているが、第2固定用コイル70Bについても同様の構成である。
【0150】
第1固定用コイル70Aは、コイル本体71と、歯型鉄心72を有している。第1固定用コイル70Aのコイル本体71は、環状に巻かれた直流コイルである。第2固定用コイル70Bのコイル本体71は、第1固定用コイル70Aのコイル本体よりも小さな径で構成されている点を除いて、同様の構成である。
【0151】
第1固定用コイル70Aの歯型鉄心72は、板金加工により形成され、円環状のコイル本体71の径方向外側から内側に向かって包み込むように配置される。図8に示すように、第1固定用コイル70Aの径方向内側には、歯型鉄心72の端部によって形成される複数組の上側歯部72U及び下側歯部72Lが配置される。
【0152】
複数の上側歯部72Uは、歯型鉄心72を構成する板材料の一端側を櫛型に加工して構成されており、コイル本体71の径方向外側から上側を介して、径方向内側に配置される。一方、複数の下側歯部72Lは、歯型鉄心72を構成する板材料の他端側を櫛型に加工して構成されており、コイル本体71の径方向外側から下側を介して、径方向内側に配置される。
【0153】
図8に示すように、第1固定用コイル70Aにおける上側歯部72Uと下側歯部72Lの間には、予め定められた間隔が形成されており、上側歯部72Uと下側歯部72Lが間隔を介して噛み合うように組み合わされている。上側歯部72U及び下側歯部72Lに係る構成は、第2固定用コイル70Bにおいても同様である。
【0154】
このように構成された第1固定用コイル70Aでは、コイル本体71に通電することで、例えば、上側歯部72UはN極を示し、下側歯部72LはS極を示す。従って、第1固定用コイル70Aの径方向内側には、N極とS極が周方向へ交互に並んで配置される。こうして発生した磁力は、圧力容器37の側壁部分を介して、第1出力軸40の出力側磁石45に作用する。換言すると、第1固定用コイル70Aでは、コイル本体71への通電により、第1出力軸40の回転を妨げる磁場が発生する。
【0155】
同様に、第2固定用コイル70Bでは、コイル本体71に通電することで、例えば、上側歯部72UはN極を示し、下側歯部72LはS極を示す。従って、第2固定用コイル70Bの径方向内側には、N極とS極が周方向へ交互に並んで配置される。こうして発生した磁力は、圧力容器37の側壁部分を介して、第2出力軸50の磁束変調部55に作用する。換言すると、第2固定用コイル70Bでは、コイル本体71への通電により、第2出力軸50の回転を妨げる磁場が発生する。
【0156】
尚、第1固定用コイル70Aと第2固定用コイル70Bでは、上側歯部72U及び下側歯部72Lの総数が相違している。第1固定用コイル70Aにおける上側歯部72U及び下側歯部72Lの総数は、上側歯部72U及び下側歯部72Lによる磁極の数が、第1出力軸40における出力側磁石45の極数と等しくなるように定められる。
【0157】
従って、第1固定用コイル70Aの上側歯部72U及び下側歯部72Lと、第1出力軸40の出力側磁石45との間には、例えば、S極に起因する引力と、N極に起因する斥力が回転方向に作用する。そして、第1固定用コイル70Aと出力側磁石45における極数は上述の関係を満たしている為、第1出力軸40の回転を阻害して、第1出力軸40の回転を停止させることができる。
【0158】
一方、第2固定用コイル70Bにおける上側歯部72U及び下側歯部72Lの総数は、第2出力軸50の磁束変調部55における磁性部55Aの総数と等しくなるように定められている。
【0159】
従って、第2固定用コイル70Bの上側歯部72U及び下側歯部72Lと、第2出力軸50の磁束変調部55における磁性部55Aとの間には、引力が回転方向に作用する。上述したように、第2固定用コイル70Bにおける上側歯部72U及び下側歯部72Lの総数と、第2出力軸50における磁性部55Aの数が同数である為、第2出力軸50の回転を阻害して、第2出力軸50の回転を停止させることができる。
【0160】
次に、上述のように構成された第2実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1の第1出力状態について説明する。上述したように、第1出力状態は、駆動モータ11から伝達された駆動力を用いた第2出力軸50の回転を制限すると共に、駆動力による第1出力軸40の回転を許容する状態である。
【0161】
上述した実施形態と同様に、統合弁V及び動力伝達装置1では、駆動モータ11の運転開始により駆動力が生じると、入力側磁石21、出力側磁石45、磁束変調部55の協働によって、駆動力は、入力軸20から第1出力軸40、第2出力軸50に伝達される。
【0162】
ここで、第1出力状態を実現する為には、第2出力軸50の回転を阻害する必要がある。第2実施形態の場合には、出力軸切替部25を構成する第2固定用コイル70Bのコイル本体71に対する通電を行う。
【0163】
これにより、第2固定用コイル70Bの上側歯部72U及び下側歯部72Lと、第2出力軸50の各磁性部55Aの間には、第2出力軸50の回転を阻害する磁場が発生する。この為、第2固定用コイル70Bの通電制御によって、駆動モータ11からの駆動力に抗して、第2出力軸50の回転を停止させることができる。
【0164】
この時、第1固定用コイル70Aに対する通電は行われておらず、第1固定用コイル70Aと出力側磁石45の間に磁場は生じていない。この為、第1出力軸40は、駆動モータ11からの駆動力に従って回転して、第1弁体49を移動させることができる。
【0165】
即ち、第2実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1は、第2固定用コイル70Bのコイル本体71に通電することで、第2出力軸50の回転を阻害すると同時に、第1出力軸40の回転を許容して、第1出力状態を実現することができる。
【0166】
又、第2実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1によれば、第1出力状態を実現する際に、第2出力軸50の回転を阻害する為の磁場を発生させており、第2出力軸50に対して他の部材を物理的に接触させていない。この為、第2実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1によれば、第1出力状態への切替に関する応答性を向上させることができる。
【0167】
続いて、第2実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1の第2出力状態について説明する。上述したように、第2出力状態は、駆動モータ11から伝達された駆動力を用いた第1出力軸40の回転を制限すると共に、駆動力による第2出力軸50の回転を許容する状態である。
【0168】
ここで、第2出力状態を実現する為には、第1出力軸40の回転を阻害する必要がある。第2実施形態の場合には、出力軸切替部25を構成する第1固定用コイル70Aのコイル本体71に対する通電を行う。
【0169】
これにより、第1固定用コイル70Aの上側歯部72U及び下側歯部72Lと、第1出力軸40の出力側磁石45の間には、第1出力軸40の回転を阻害する磁場が発生する。この為、第1固定用コイル70Aの通電制御によって、駆動モータ11からの駆動力に抗して、第1出力軸40の回転を停止させることができる。
【0170】
この時、第2固定用コイル70Bに対する通電は行われておらず、第2固定用コイル70Bと磁束変調部55の磁性部55Aとの間に磁場は生じていない。この為、第2出力軸50は、駆動モータ11からの駆動力に従って回転して、第2弁体59を移動させることができる。
【0171】
即ち、第2実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1は、第1固定用コイル70Aのコイル本体71に通電することで、第1出力軸40の回転を阻害すると同時に、第2出力軸50の回転を許容して、第2出力状態を実現することができる。
【0172】
又、第2実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1によれば、第2出力状態を実現する際に、第1出力軸40の回転を阻害する為の磁場を発生させており、第1出力軸40に対して他の部材を物理的に接触させていない。この為、第2実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1によれば、第2出力状態への切替に関する応答性を向上させることができる。
【0173】
以上説明したように、第2実施形態に係る動力伝達装置1によれば、第1出力状態、第2出力状態への切替に際して、回転を阻害する磁場を発生させる態様であっても、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を得ることができる。
【0174】
又、第2実施形態によれば、第1出力状態、第2出力状態への切替に際して、出力軸に対して他の部材を物理的に接触させることなく、回転を阻害する磁場を発生させている。この為、第2実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1は、第1出力状態、第2出力状態の切替に関して、高い応答性を発揮させることができる。
【0175】
(第3実施形態)
続いて、上述した実施形態と異なる第3実施形態について、図9を参照して説明する。第3実施形態では、出力軸切替部25の構成が、上述した実施形態と相違している。即ち、第3実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1におけるその他の構成(駆動部10、本体部30、第1出力軸40、第2出力軸50、流路形成部60等)については、上述した第2実施形態と同様である。この為、以下の説明においては、第3実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1の構成のうち、上述した実施形態との相違点について詳細に説明し、他の部分についての説明を省略する。
【0176】
図9に示すように、第3実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1において、出力軸切替部25は、第1電磁石75Aと、第2電磁石75Bを有している。第1電磁石75Aは、直流コイルと、磁性体製のヨークを有しており、圧力容器37の側面を介して、第1出力軸40の出力側磁石45と対向するように配置されている。
【0177】
第1電磁石75Aは、圧力容器37の側面を介して、出力側磁石45の径方向外側となる範囲において、周方向の一部分に配置されている。従って、直流コイルに通電して、第1電磁石75Aで磁力を発生させた場合、第1電磁石75Aで生じた磁力は、圧力容器37を介して、第1出力軸40に配置された出力側磁石45の一部に作用する。
【0178】
この結果、第1出力軸40は、第1電磁石75Aと出力側磁石45の一部との間に生じた磁力の作用によって、第1電磁石75Aで磁力を発生させていない通常の状態から、第1電磁石75Aへ近づく方向又は遠ざかる方向へ偏心する。この結果、第1出力軸40の偏心によって、第1出力軸40は、第1軸受部材47に接触して摩擦力を発生させることができ、摩擦力によって、第1出力軸40の回転を阻害することができる。
【0179】
そして、第2電磁石75Bは、第1電磁石75Aと同様に、直流コイルと、磁性体製のヨークを有しており、圧力容器37の側面を介して、第2出力軸50の磁束変調部55における上側部分と対向するように配置されている。
【0180】
第2電磁石75Bは、圧力容器37の側面を介して、磁束変調部55の上側部分に対して径方向外側となる範囲において、周方向の一部分に配置されている。周方向における第2電磁石75Bが配置されている範囲は、第1電磁石75Aが配置されている範囲に関わらず定めることができる。
【0181】
従って、直流コイルに通電して、第2電磁石75Bで磁力を発生させた場合、第2電磁石75Bで生じた磁力は、圧力容器37を介して、第2出力軸50に配置された磁束変調部55の一部に作用する。より具体的には、第2電磁石75Bで生じた磁力は、磁束変調部55における磁性部55Aの上側部分に作用する。
【0182】
この結果、第2出力軸50は、第2電磁石75Bと磁束変調部55の一部との間に生じた磁力の作用によって、第2電磁石75Bで磁力を発生させていない通常の状態から、第2電磁石75Bへ近づく方向へ偏心する。この結果、第2出力軸50の偏心によって、第2出力軸50は、第2軸受部材57に接触して摩擦力を発生させることができ、摩擦力によって、第2出力軸50の回転を阻害することができる。
【0183】
即ち、第3実施形態においては、出力軸切替部25を構成する第1電磁石75A、第2電磁石75Bの何れか一方により、第1出力軸40、第2出力軸50の何れかに磁力を作用させて偏心させることができる。第1出力軸40、第2出力軸50には、偏心に伴い他の部材と接触して摩擦力が作用する為、第1出力軸40、第2出力軸50の内、偏心した出力軸の回転は、他の部材との間に生じた摩擦力によって阻害される。
【0184】
換言すると、第3実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1によれば、出力軸切替部25を構成する第1電磁石75A、第2電磁石75Bの内、径方向に磁力を発生させる電磁石を選択することで、第1出力状態と、第2出力状態を切り替えることができる。
【0185】
次に、上述のように構成された第3実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1の第1出力状態について説明する。上述したように、第1出力状態は、駆動モータ11から伝達された駆動力を用いた第2出力軸50の回転を制限すると共に、駆動力による第1出力軸40の回転を許容する状態である。
【0186】
第3実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1においては、駆動モータ11の運転開始により駆動力が生じると、入力側磁石21、出力側磁石45、磁束変調部55の協働によって、駆動力は、入力軸20から第1出力軸40、第2出力軸50に伝達される。
【0187】
ここで、第1出力状態を実現する為には、第2出力軸50の回転を阻害する必要がある。第3実施形態の場合には、出力軸切替部25を構成する第2電磁石75Bの直流コイルに対する通電を行う。
【0188】
これにより、第2電磁石75Bと、第2出力軸50における磁束変調部55の磁性部55Aの間には、磁力が発生して、第2出力軸50を第2電磁石75Bに近づく方向に偏心させる。第2出力軸50の偏心に伴って、第2出力軸50は、他の部材(例えば、第2軸受部材57)と接触する為、第2出力軸50の回転が阻害される。この為、第2電磁石75Bの通電制御によって、駆動モータ11からの駆動力に抗して、第2出力軸50の回転を停止させることができる。
【0189】
この時、第1電磁石75Aの直流コイルに対する通電は行われておらず、第1電磁石75Aと出力側磁石45の間に磁力は生じていない。この為、第1出力軸40は、駆動モータ11からの駆動力に従って回転して、第1弁体49を移動させることができる。
【0190】
即ち、第3実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1は、第2電磁石75Bの直流コイルに通電することで、径方向に磁力を作用させて、第2出力軸50の回転を阻害すると同時に、第1出力軸40の回転を許容して、第1出力状態を実現することができる。
【0191】
又、第3実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1によれば、第1出力状態を実現する際に、第2出力軸50に対して径方向に磁力を発生させて摩擦力を利用する為、第2電磁石75Bを周方向における一部分に配置している。この為、第3実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1によれば、上述した実施形態のように、周方向全域にわたって出力軸切替部25を配置する構成と比較して小型化した構成で、第1出力状態への切替を実現することができる。
【0192】
続いて、第3実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1の第2出力状態について説明する。上述したように、第2出力状態は、駆動モータ11から伝達された駆動力を用いた第1出力軸40の回転を制限すると共に、駆動力による第2出力軸50の回転を許容する状態である。
【0193】
ここで、第2出力状態を実現する為には、第1出力軸40の回転を阻害する必要がある。第3実施形態の場合には、出力軸切替部25を構成する第1電磁石75Aの直流コイルに対する通電を行う。
【0194】
これにより、第1電磁石75Aと、第1出力軸40における出力側磁石45の一部との間には、磁力が発生して、第1出力軸40を第1電磁石75Aに近づく方向又は遠ざける方向に偏心させる。第1出力軸40の偏心に伴って、第1出力軸40は、他の部材(例えば、第1軸受部材47)と接触する為、第1出力軸40の回転が阻害される。この為、第1電磁石75Aの通電制御によって、駆動モータ11からの駆動力に抗して、第1出力軸40の回転を停止させることができる。
【0195】
この時、第2電磁石75Bの直流コイルに対する通電は行われておらず、第2電磁石75Bと磁束変調部55における磁性部55Aの一部との間に磁力は生じていない。この為、第2出力軸50は、駆動モータ11からの駆動力に従って回転して、第2弁体59を移動させることができる。
【0196】
即ち、第3実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1は、第1電磁石75Aの直流コイルに通電することで、径方向に磁力を作用させて、第1出力軸40の回転を阻害すると同時に、第2出力軸50の回転を許容して、第2出力状態を実現することができる。
【0197】
又、第3実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1によれば、第2出力状態を実現する際に、第1出力軸40に対して径方向に磁力を発生させて摩擦力を利用する為、第1電磁石75Aを周方向における一部分に配置している。この為、第3実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1によれば、上述した実施形態のように、周方向全域にわたって出力軸切替部25を配置する構成と比較して小型化した構成で、第2出力状態への切替を実現することができる。
【0198】
以上説明したように、第3実施形態に係る動力伝達装置1によれば、第1出力状態、第2出力状態への切替に際して、径方向に磁力を作用させる態様であっても、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を得ることができる。
【0199】
そして、第3実施形態においては、第1出力状態、第2出力状態の切替の際に、第1出力軸40又は第2出力軸50に対して径方向に磁力を発生させて偏心させて、偏心した出力軸との間に生じる摩擦力を利用している。この為、第3実施形態に係る出力軸切替部25を構成する第1電磁石75A、第2電磁石75Bは周方向における一部分に配置されている。
【0200】
この結果、第3実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1によれば、上述した実施形態のように、周方向全域にわたって出力軸切替部25を配置する構成と比較して小型化した構成で、第1出力状態、第2出力状態への切替を実現することができる。
【0201】
(第4実施形態)
続いて、上述した実施形態と異なる第4実施形態について、図10図15を参照して説明する。第4実施形態では、第1出力状態、第2出力状態を切り替える出力軸切替部25の構成として、切替用部材80を有している点で、上述した実施形態と相違している。即ち、統合弁V及び動力伝達装置1におけるその他の構成(駆動部10、本体部30、第1出力軸40、第2出力軸50、流路形成部60等)については、上述した実施形態と同様である。この為、以下の説明においては、第4実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1の構成のうち、上述した実施形態との相違点について詳細に説明し、他の部分についての説明を省略する。
【0202】
第4実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1における出力軸切替部25は、圧力容器37の外側面に沿って配置された切替用コイル26及び切替用ヨーク27と、機構収容部35の内部に配置された切替用部材80によって構成されている。
【0203】
図10に示すように、第4実施形態において、出力軸切替部25を構成する切替用部材80は、機構収容部35の内部に配置されており、第1出力軸40等の軸方向に沿って移動可能に配置されている。切替用部材80は、第1回転規制部80Aと、第2回転規制部80Bと、を有する円筒形状に形成されている。
【0204】
図11に示すように、円筒形状を為す切替用部材80の内径は、圧力容器37の最大外径よりも小さく、且つ、第1出力軸40の大径部41における外径寸法よりも大きく定められている。従って、第4実施形態において、切替用部材80は、機構収容部35の内部において、圧力容器37と第1出力軸40の間を通って、出力軸の軸方向に沿って移動することできる。
【0205】
切替用部材80の下部には、第1回転規制部80Aが配置されている。第1回転規制部80Aは、円筒形状の切替用部材80における下端部から、径方向内側に向かって伸びるように形成された円環状の部分である。第1回転規制部80Aは、第1出力軸40における大径部41よりも下方に位置している。
【0206】
第4実施形態においては、第1回転規制部80Aの上面は、切替用部材80の上下移動に伴って、第1出力軸40における大径部41の下面に対して接近、離間する。即ち、第4実施形態においては、切替用コイル26に対する通電制御を行うことで、第1出力軸40の大径部41における下面に対して、第1回転規制部80Aの上面を接触させることができる。
【0207】
そして、第1回転規制部80Aの外径側に位置する側面には、部材側磁石81が配置されている。部材側磁石81は、S極、N極の何れか一方の極(例えば、N極)が径方向外側に面するように配置されている。
【0208】
図10に示すように、第4実施形態における切替用コイル26及び切替用ヨーク27は、圧力容器37の側壁を介して、切替用部材80の部材側磁石81に対向するように配置されている。切替用コイル26に対する電流の向きを制御することで、切替用ヨーク27で発生する磁極(S極、N極)を切り替えることができる。
【0209】
切替用ヨーク27における磁極の種類を切り替えて、切替用部材80の部材側磁石81との間で磁力を作用させることで、機構収容部35内部において、切替用部材80を上下に移動させることができる。
【0210】
そして、切替用部材80の上部には、第2回転規制部80Bが配置されている。第2回転規制部80Bは、円筒形状の切替用部材80における上端部から、径方向内側に向かって伸びるように形成された円環状の部分である。第2回転規制部80Bは、第1出力軸40の大径部41における上面及び第2出力軸50の円筒部51における上面よりも上方に位置している。
【0211】
第4実施形態においては、第2回転規制部80Bの下面は、切替用部材80の上下移動に伴って、第2出力軸50における円筒部51の上面に対して離間、接近する。即ち、第4実施形態においては、切替用コイル26に対する通電制御を行うことで、第2出力軸50の円筒部51における上面に対して、第2回転規制部80Bの下面を接触させることができる。
【0212】
図10に示すように、切替用部材80の第1回転規制部80A及び第2回転規制部80Bには、抗力発生部85が形成されている。第1回転規制部80Aの抗力発生部85は、第1回転規制部80Aにおいて、第1出力軸40における大径部41の下面に対向する部分に形成されている。
【0213】
第2回転規制部80Bの抗力発生部85は、第2回転規制部80Bにおいて、第2出力軸50における円筒部51の上面に対向する部分に形成されている。第1回転規制部80A及び第2回転規制部80Bにおける抗力発生部85は、円筒形状を為す切替用部材80の中心及び第1出力軸40、第2出力軸50の回転軸の位置を中心とした円環状に形成される。
【0214】
第1回転規制部80A及び第2回転規制部80Bにおいて、抗力発生部85は、円環状に形成されており、円環の周方向に沿って複数の凸部85A及び複数の凹部85Bが交互に配置されている。図12に示すように、抗力発生部85における凸部85A及び凹部85Bは、円環状をなす抗力発生部85の中心位置から放射状に伸びるように形成されている。
【0215】
ここで、第1回転規制部80Aの抗力発生部85は、第1出力軸40における大径部41の下面に対向しており、切替用部材80の上下移動に伴って、大径部41の下面に接触可能に配置される。第1出力軸40における大径部41の下面は、対向面の一例に相当する。図10等に示すように、第1出力軸40における大径部41の下面には、複数の凸部86A及び凹部86Bを有する抗力発生部86が形成されている。
【0216】
第1出力軸40側の抗力発生部86は、第1回転規制部80Aの抗力発生部85と同様に、円環状に形成されている。第1出力軸40側の抗力発生部86においても、円環の中心から放射状に、複数の凸部86A及び凹部86Bが伸びており、凸部86A及び凹部86Bは、周方向に交互に配置されている。
【0217】
これにより、第1回転規制部80Aを第1出力軸40における大径部41の下面に接触させた場合、図13に示すように、凸部85Aと凹部86B、凹部85Bと凸部86Aが噛み合った状態で接触させることができる。ここで、切替用部材80は、出力軸の軸方向に移動可能であるが、出力軸の軸を中心に回転しないように配置されている。この為、第1回転規制部80Aの抗力発生部85と、第1出力軸40側の抗力発生部86とを噛み合わせることで、第1出力軸40の回転駆動力に対する抗力を発生させることができ、第1出力軸40の回転を阻害して停止させることができる。
【0218】
そして、第2回転規制部80Bの抗力発生部85は、第2出力軸50における円筒部51の上面に対向しており、切替用部材80の上下移動に伴って、円筒部51の上面に接触可能に配置される。第2出力軸50における円筒部51の上面は対向面の一例に相当する。図10等に示すように、第2出力軸50における円筒部51の上面には、複数の凸部87A及び凹部87Bを有する抗力発生部87が形成されている。
【0219】
第2出力軸50側の抗力発生部87は、第2回転規制部80Bの抗力発生部85と同様に、円環状に形成されている。第2出力軸50側の抗力発生部87においても、円環の中心から放射状に、複数の凸部87A及び凹部87Bが伸びており、凸部87A及び凹部87Bは、周方向に交互に配置されている。
【0220】
これにより、第2回転規制部80Bを第2出力軸50における円筒部51の上面に接触させた場合、図13に示すように、凸部85Aと凹部87B、凹部85Bと凸部87Aが噛み合った状態で接触させることができる。上述したように、切替用部材80は出力軸の軸を中心に回転しないように配置されている。この為、第2回転規制部80Bの抗力発生部85と、第2出力軸50側の抗力発生部87とを噛み合わせることで、第2出力軸50の回転駆動力に対する抗力を発生させることができ、第2出力軸50の回転を阻害して停止させることができる。
【0221】
次に、上述のように構成された第4実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1の第1出力状態について説明する。上述したように、第1出力状態は、駆動モータ11から伝達された駆動力を用いた第2出力軸50の回転を制限すると共に、駆動力による第1出力軸40の回転を許容する状態である。
【0222】
第4実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1においては、駆動モータ11の運転開始により駆動力が生じると、入力側磁石21、出力側磁石45、磁束変調部55の協働によって、駆動力は、入力軸20から第1出力軸40、第2出力軸50に伝達される。
【0223】
ここで、第1出力状態を実現する為には、第2出力軸50の回転を阻害する必要がある。第4実施形態の場合には、切替用コイル26に対する通電に起因して生じた磁力によって切替用部材80を移動させ、第2出力軸50の回転を停止させる。
【0224】
具体的には、切替用コイル26に所定方向の直流電流を通電させることで、切替用ヨーク27の下側端部において、切替用部材80の外側面に位置する部材側磁石81の極性と異なる極性の磁力を発生させる。これにより、切替用コイル26の下側端部と、切替用部材80の部材側磁石81との間には、引き合うように磁力が作用する。
【0225】
この結果、図14に示すように、切替用部材80は、磁力の作用により軸方向に沿って下方に移動し、第2回転規制部80Bを第2出力軸50における円筒部51の上面に接触させる。この時、第2回転規制部80Bの抗力発生部85と、第2出力軸50側の抗力発生部87が噛み合うため、第2出力軸50の回転を阻害する抗力を発生させることができ、第2出力軸50の回転を停止させることができる。
【0226】
尚、第2回転規制部80Bと第2出力軸50における円筒部51の上面が接触した段階で、切替用コイル26に対する通電を停止することができる。切替用コイル26の通電を停止すると、切替用ヨーク27からの電磁力は停止するが、切替用部材80の部材側磁石81における磁力は、切替用ヨーク27の下側端部に引力として作用している。従って、切替用コイル26に対する通電を停止した状態でも、第2回転規制部80Bによって、第2出力軸50の回転を停止した状態を維持することができる。
【0227】
そして、切替用部材80を軸方向に沿って下方向に移動させることで、第1回転規制部80Aは、第1出力軸40における大径部41の下面から離間する。これにより、第1出力軸40は、切替用部材80によって阻害されることなく、入力軸20から伝達される駆動力によって回転可能な状態となる。
【0228】
即ち、第4実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1は、切替用コイル26に所定方向の直流電流を通電することで、切替用部材80を移動させて、第2出力軸50の回転を阻害すると同時に、第1出力軸40の回転を許容して、第1出力状態を実現できる。
【0229】
又、第4実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1によれば、第1出力状態を実現する際に、機構収容部35外部の切替用コイル26及び切替用ヨーク27からの磁力によって、機構収容部35内部の切替用部材80を移動させている。この為、第4実施形態によれば、機構収容部35の内部環境(即ち、高圧環境)を損なうことなく、第1出力状態への切替を実現することができる。
【0230】
そして、第4実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1によれば、切替用部材80は、第1出力軸40等の軸方向に沿って移動して、第2出力軸50に対して軸方向の荷重を加えて、第2出力軸50の回転を阻害している。そして、第1出力軸40及び第2出力軸50は、同一の中心軸上にて内側、外側に配置されている。この為、第2出力軸50に対して軸方向に荷重を作用させた場合に、第1出力軸40の回転動作に及ぼす影響を抑えることができる。
【0231】
更に、第4実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1において、切替用部材80の第2回転規制部80Bには、抗力発生部85が配置され、第2出力軸50の円筒部51における上面には、抗力発生部87が配置されている。第1出力状態を実現する際に、切替用部材80側の抗力発生部85は、第2出力軸50側の抗力発生部87に接触して、第2出力軸50の回転を阻害する為の抗力(摩擦力)を発生させる。
【0232】
抗力発生部85及び抗力発生部87は、それぞれ回転中心から放射状に伸びる複数の凹部及び凸部を有している。従って、抗力発生部85と抗力発生部87を接触させた場合に、凸部85Aと凹部87B、凹部85Bと凸部87Aを夫々噛み合わせた状態で接触させることができる。これにより、第2出力軸50の回転を阻害する為の抗力を増大させることができ、第4実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1は、確実に第1出力状態を実現させることができる。
【0233】
続いて、第4実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1の第2出力状態について説明する。第2出力状態は、駆動モータ11から伝達された駆動力を用いた第1出力軸40の回転を制限すると共に、駆動力による第2出力軸50の回転を許容する状態である。
【0234】
ここで、第2出力状態を実現する為には、第1出力軸40の回転を阻害する必要がある。第4実施形態の場合には、切替用コイル26に対する通電に起因して生じた磁力によって切替用部材80を移動させ、第1出力軸40の回転を停止させる。
【0235】
具体的には、切替用コイル26に所定方向の直流電流を通電させることで、切替用ヨーク27の上側端部において、切替用部材80の外側面に位置する部材側磁石81の極性と異なる極性の磁力を発生させる。つまり、切替用コイル26には、第1出力状態の場合とは逆向きの直流電流が流される。これにより、切替用コイル26の上側端部と、切替用部材80の部材側磁石81との間には、引き合うように磁力が作用する。
【0236】
この結果、図15に示すように、切替用部材80は、磁力の作用により軸方向に沿って上方に移動し、第1回転規制部80Aを第1出力軸40における大径部41の下面に接触させる。この時、第1回転規制部80Aの抗力発生部85と、第1出力軸40側の抗力発生部86が噛み合うため、第1出力軸40の回転を阻害する抗力を発生させることができ、第1出力軸40の回転を停止させることができる。
【0237】
尚、第1回転規制部80Aと第1出力軸40における大径部41の下面が接触した段階で、切替用コイル26に対する通電を停止することができる。切替用コイル26の通電を停止すると、切替用ヨーク27からの電磁力は停止するが、切替用部材80の部材側磁石81における磁力は、切替用ヨーク27の上側端部に対して引力として作用している。従って、切替用コイル26に対する通電を停止した状態でも、第1回転規制部80Aによって、第1出力軸40の回転を停止した状態を維持することができる。
【0238】
そして、切替用部材80を軸方向に沿って上方向に移動させることで、第2回転規制部80Bは、第2出力軸50における円筒部51の上面から離間する。これにより、第2出力軸50は、切替用部材80によって阻害されることなく、入力軸20から伝達される駆動力によって回転可能な状態となる。
【0239】
即ち、第4実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1は、第1出力状態時とは逆向きの直流電流を切替用コイル26に通電することで、切替用部材80を移動させ、第2出力軸50の回転を阻害すると同時に、第1出力軸40の回転を許容させることができる。換言すると、第4実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1は、切替用コイル26に対する直流電流を制御して、第2出力状態を実現することができる。
【0240】
又、第4実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1によれば、第2出力状態を実現する際に、機構収容部35外部の切替用コイル26及び切替用ヨーク27からの磁力によって、機構収容部35内部の切替用部材80を移動させている。この為、第4実施形態によれば、機構収容部35の内部環境(即ち、高圧環境)を損なうことなく、第2出力状態への切替を実現することができる。
【0241】
そして、第4実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1によれば、切替用部材80は、第1出力軸40等の軸方向に沿って移動して、第1出力軸40に対して軸方向の荷重を加えて、第1出力軸40の回転を阻害している。そして、第1出力軸40及び第2出力軸50は、同一の中心軸上にて内側、外側に配置されている。この為、第1出力軸40に対して軸方向に荷重を作用させた場合に、第2出力軸50の回転動作に及ぼす影響を抑えることができる。
【0242】
更に、第4実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1において、切替用部材80の第1回転規制部80Aには、抗力発生部85が配置され、第1出力軸40の大径部41における下面には、抗力発生部86が配置されている。第2出力状態を実現する際に、切替用部材80側の抗力発生部85は、第1出力軸40側の抗力発生部86に接触して、第1出力軸40の回転を阻害する為の抗力(摩擦力)を発生させる。
【0243】
抗力発生部85及び抗力発生部86は、それぞれ回転中心から放射状に伸びる複数の凹部及び凸部を有している。従って、抗力発生部85と抗力発生部86を接触させた場合に、凸部85Aと凹部86B、凹部85Bと凸部86Aを夫々噛み合わせた状態で接触させることができる。これにより、第1出力軸40の回転を阻害する為の抗力を増大させることができ、第4実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1は、確実に第2出力状態を実現させることができる。
【0244】
以上説明したように、第4実施形態に係る動力伝達装置1によれば、電磁力により切替用部材80を移動させて、第1出力状態、第2出力状態を切り替える場合でも、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を得ることができる。
【0245】
第4実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1によれば、第1出力状態、第2出力状態の切替を実現する際に、機構収容部35外部の切替用コイル26及び切替用ヨーク27からの磁力によって、機構収容部35内部の切替用部材80を移動させている。この為、第4実施形態によれば、機構収容部35の外部から物理的に接触させることなく、切替用部材80を移動させているので、機構収容部35の内部環境(即ち、高圧環境)を損なうことなく、第1出力状態、第2出力状態への切替を実現することができる。
【0246】
そして、第4実施形態によれば、切替用部材80は、第1出力軸40等の軸方向に沿って移動して、第1出力軸40、第2出力軸50の何れか一方に対して軸方向の荷重を加えて、荷重が加えられた出力軸の回転を阻害している。そして、第1出力軸40及び第2出力軸50は、同一の中心軸上にて内側、外側に配置されている。この為、第1出力軸40、第2出力軸50の何れか一方に対して軸方向に荷重を作用させた場合に、何れか他方の出力軸の回転動作に及ぼす影響を抑えることができる。
【0247】
更に、第4実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1において、切替用部材80側には、抗力発生部85が配置され、第1出力軸40側、第2出力軸50側には、それぞれ、抗力発生部86、抗力発生部87が配置されている。第1出力状態、第2出力状態の切替を実現する際に、切替用部材80側の抗力発生部85は、出力軸側の抗力発生部86又は抗力発生部87に接触して、出力軸の回転を阻害する為の抗力(摩擦力)を発生させる。
【0248】
抗力発生部85、抗力発生部86及び抗力発生部87は、それぞれ回転中心から放射状に伸びる複数の凹部及び凸部を有している。従って、切替用部材80側の抗力発生部85と、出力軸側の抗力発生部86及び抗力発生部87を接触させた場合に、凸部85Aと凹部86B(凹部87B)、凹部85Bと凸部86A(凸部87A)を夫々噛み合わせた状態で接触させることができる。これにより、第1出力軸40、第2出力軸50の回転を阻害する為の抗力を増大させることができ、第4実施形態に係る統合弁V及び動力伝達装置1は、第1出力状態、第2出力状態の切替を確実に実現させることができる。
【0249】
(他の実施形態)
本開示は上述の実施形態に限定されることなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
【0250】
(a)上述した実施形態においては、入力側磁石21、出力側磁石45、磁束変調部55の相互に作用する磁力を介して、非接触で第1出力軸40又は第2出力軸50に駆動力を伝達する構成であったが、この構成に限定されるものではない。例えば、遊星歯車機構等の機械的構成によって、入力軸20からの駆動力を、所定の減速比で減速して第1出力軸40又は第2出力軸50に伝達する構成を採用することも可能である。
【0251】
(b)又、上述した実施形態においては、図5図6に示すように、出力軸切替部25で生じた磁力を、第1出力軸40、第2出力軸50の夫々に直接的に作用させて、一方の回転を制限すると同時に他方の回転を許容する状態を実現していた。しかしながら、出力軸切替部25による第1出力軸40及び第2出力軸50の切替動作は、この態様に限定されるものではない。例えば、出力軸切替部25で生じた磁力により変位する制動部材を採用し、制動部材の変位を利用して、一方の回転を制限すると同時に他方の回転を許容する状態を実現する構成としてもよい。
【0252】
(c)上述した実施形態においては、図1等に示すように、出力軸切替部25の第1磁力発生部27A及び第2磁力発生部27Bは、隔壁36における封止外縁部36Cの上面部分に配置されていたが、この態様に限定されるものではない。
【0253】
第1磁力発生部27Aの配置は、第1出力軸40の第1切替用磁石46に対して磁力を作用させて、第1出力軸40の回転を制限することが可能であれば、種々の態様を採用することができる。又、第2磁力発生部27Bの配置についても、第2出力軸50の第2切替用磁石56に対して磁力を作用させて、第2出力軸50の回転を制限することが可能であれば、種々の態様を採用することができる。
【0254】
(d)上述した第4実施形態では、第1出力軸40、第2出力軸50側に形成された抗力発生部86、抗力発生部87と接触する部分として、切替用部材80に形成された抗力発生部85を挙げていたが、この態様に限定されるものではない。抗力発生部85は、機構収容部35の内部において、第1出力軸40、第2出力軸50の何れか一方に接触して回転可能に配置されていればよい。
【0255】
例えば、第1実施形態の構成に、第1出力軸40、第2出力軸50側の抗力発生部86、抗力発生部87と、それに対応する抗力発生部85を適用することも可能である。具体的には、第1実施形態における第1出力軸40の上面に抗力発生部86を形成し、第2出力軸50の上面に抗力発生部87を形成する。そして、隔壁36の封止外縁部36Cにおける機構収容部35の内側を構成する面に、それぞれに対向する抗力発生部85を形成する。このように構成することで、第1実施形態に係る構成においても、第1出力軸40、第2出力軸50の何れか一方に対して抗力を作用させることができ、第1出力状態、第2出力状態の切替を確実に実現することができる。
【0256】
(e)上述した第4実施形態において、第1出力軸40、第2出力軸50側に形成された抗力発生部86、抗力発生部87と、切替用部材80に形成された抗力発生部85の形状として図13に示す構成を挙げていたが、この態様に限定されるものではない。例えば、図16に示すように、凹部86B、凹部87Bの底面部分を、各凹部の幅方向中央に向かって窪んだ形状に形成し、切替用部材80の抗力発生部85における凸部85Aの先端を幅方向中央部分に案内するように構成してもよい。これにより、抗力発生部86又は抗力発生部87に切替用部材80側の抗力発生部85を深く噛み合わせることができ、第1出力軸40、第2出力軸50の回転を阻害する抗力を確実に作用させることができる。
【0257】
(f)第1出力軸40、第2出力軸50側に形成された抗力発生部86、抗力発生部87と、切替用部材80に形成された抗力発生部85を噛み合わせることができればよく、両者の接触部分については適宜変更することができる。上述したように、凹部86B、凹部87Bの底面部分に対し、抗力発生部85の凸部85Aにおける先端部分を接触させる構成であってもよい。又、図17に示すように、凹部86B、凹部87Bの内側側面と、凸部85Aにおける側面を接触させて噛み合わせる構成とし、凹部86B、凹部87Bの底面部分から、抗力発生部85における凸部85Aの先端が離間するようにしても良い。
【0258】
本明細書に開示された動力伝達装置の特徴を以下の通り示す。
(項目1)
駆動力の入力によって回転する入力軸(20)と、
前記入力軸から伝達された駆動力によって回転する第1出力軸(40)と、
前記第1出力軸と異なる位置に配置され、前記入力軸から伝達された駆動力によって回転する第2出力軸(50)と、
駆動力による前記第2出力軸の回転を制限すると共に、駆動力による前記第1出力軸の回転を許容する第1出力状態と、駆動力による前記第1出力軸の回転を制限すると共に、駆動力による前記第2出力軸の回転を許容する第2出力状態とに切り替える出力軸切替部(25)と、を有する動力伝達装置。
(項目2)
前記入力軸は、予め定められた極数を有する入力側磁石(21)を備え、
前記入力側磁石は、駆動力の入力による前記入力軸の回転に伴って、前記入力軸と一体に回転し、
前記第1出力軸は、前記入力側磁石と対向するように配置され、前記入力側磁石と異なる極数で構成された出力側磁石(45)を有し、
前記出力側磁石は、前記第1出力軸の回転に伴って、前記第1出力軸と一体に回転し、
前記第2出力軸は、前記入力側磁石と前記出力側磁石の間において、複数の磁性部(55A)を並設して構成され、前記入力側磁石と前記出力側磁石の間に作用する磁束を変調させる磁束変調部(55)を有し、
前記磁束変調部は、前記第2出力軸の回転に伴って、前記第2出力軸と一体に回転する項目1に記載の動力伝達装置。
(項目3)
前記第1出力軸及び前記第2出力軸は、前記入力軸が配置されている空間に対して区画された収容空間(35)の内部にそれぞれ配置されている項目1又は2に記載の動力伝達装置。
(項目4)
前記出力軸切替部は、前記収容空間の外部に配置されており、
前記収容空間の内部に対して磁力を作用させて、前記第1出力軸、前記第2出力軸の何れか一方の回転を制限することにより、前記第1出力状態と前記第2出力状態を切り替える項目3に記載の動力伝達装置。
(項目5)
前記出力軸切替部は、前記収容空間の内部に対する磁力の作用により、前記第1出力軸、前記第2出力軸の径方向に荷重を発生させることによって、前記第1出力状態と前記第2出力状態を切り替える項目4に記載の動力伝達装置。
(項目6)
前記出力軸切替部は、前記第1出力軸、前記第2出力軸の何れか一方に対して、回転を阻害する磁場を形成することによって、前記第1出力状態と前記第2出力状態を切り替える項目4に記載の動力伝達装置。
(項目7)
前記出力軸切替部は、前記収容空間の内部に対する磁力の作用により、前記第1出力軸、前記第2出力軸の軸方向に荷重を発生させることによって、前記第1出力状態と前記第2出力状態を切り替える項目4に記載の動力伝達装置。
(項目8)
前記収容空間の内部に配置され、接触により抗力を発生させる抗力発生部(85)を有し、
前記出力軸切替部は、前記収容空間の内部に対する磁力の作用によって、前記第1出力軸、前記第2出力軸の軸方向に関して、前記第1出力軸、前記第2出力軸の何れか一方と、前記抗力発生部の相対位置を変化させ、
前記第1出力軸、前記第2出力軸の何れか一方と、前記抗力発生部との間に生じた抗力の作用によって、前記第1出力状態と前記第2出力状態を切り替える項目7に記載の動力伝達装置。
(項目9)
前記抗力発生部は、前記収容空間の内部において、前記第1出力軸、前記第2出力軸の軸方向に沿って変位可能に配置されており、
前記出力軸切替部からの磁力の作用によって軸方向に変位して、前記第1出力軸、前記第2出力軸の何れか一方に接触する項目8に記載の動力伝達装置。
(項目10)
前記第1出力軸及び前記第2出力軸は、前記収容空間の内部において、前記第1出力軸、前記第2出力軸の軸方向に沿って変位可能に配置されており
前記抗力発生部は、前記出力軸切替部からの磁力の作用によって軸方向に変位した場合に、前記第1出力軸、前記第2出力軸の何れか一方に接触する位置に配置されている項目8に記載の動力伝達装置。
(項目11)
前記第1出力軸、前記第2出力軸の表面において、前記抗力発生部に対して、前記第1出力軸、前記第2出力軸の軸方向に関して対向する面を対向面とした場合に、
前記抗力発生部及び前記対向面の何れか一方には、前記第1出力軸、前記第2出力軸の軸方向に突出した凸部(85A、86A、87A)が形成され、
前記抗力発生部及び前記対向面の何れか他方には、前期第1出力軸、前記第2出力軸の軸方向に窪んで、前記凸部と嵌合する凹部(85B、86B、87B)が形成されている項目8ないし10の何れか1つに記載の動力伝達装置。
【符号の説明】
【0259】
1 動力伝達装置
20 入力軸
21 入力側磁石
25 出力軸切替部
40 第1出力軸
45 出力側磁石
50 第2出力軸
55 磁束変調部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17