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  • 特開-プラスチックの分解方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021482
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】プラスチックの分解方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 1/10 20060101AFI20250205BHJP
   B01J 29/70 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
C10G1/10
B01J29/70 Z ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124728
(22)【出願日】2023-07-31
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)サイエンス&テクノロジー株式会社主催のセミナー(主催 サイエンス&テクノロジー株式会社)、令和4年9月8日公開 (2)CMCリサーチウェビナー(主催 株式会社シーエムシー・リサーチ)、令和4年9月5日公開 (3)高分子学会高分子同友会第143回研究開発部会(主催 高分子学会高分子同友会)、令和4年9月2日公開 (4)合成樹脂工業協会環境・リサイクル研究部会(主催 合成樹脂工業協会環境・リサイクル研究部会)、令和5年3月13日公開 (5)株式会社TH企画セミナーセンター主催のセミナー(主催 株式会社TH企画セミナーセンター)、令和5年1月11日公開 (6)技術トレンドレポート「環境配慮型材料」vol.5 第1章 第1節 第1頁~第7頁(発行 株式会社AndTech)、令和5年1月31日発行 (7)第131回触媒討論会特別シンポジウム(主催 一般社団法人触媒学会)、令和5年3月17日公開 (7b)第131回触媒討論会特別シンポジウムの予稿集(講演要旨集)のウェブサイト、令和5年3月3日公開 https://catsj131.infotecs.jp/mypage https://catsj131.infotecs.jp/mypage_limit
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (8)石油学会 第65回年会(主催 公益社団法人石油学会)、令和5年5月30日公開(開催期間 令和5年5月29日~5月30日) (8b)石油学会 第65回年会の予稿集(講演要旨集)のウェブサイト、令和5年5月25日公開 https://confit.atlas.jp/guide/event/jpi2023/proceedings/list https://sstore-confit.atlas.jp/jpi/jpi2023/pdf/proceedings/ja/jpi2023_all_20230530.pdf?Policy=eyJTdGF0ZW1lbnQiOiBbeyJSZXNvdXJjZSI6Imh0dHBzOi8vc3N0b3JlLWNvbmZpdC5hdGxhcy5qcC9qcGkvanBpMjAyMy9wZGYvcHJvY2VlZGluZ3MvamEvanBpMjAyM19hbGxfMjAyMzA1MzAucGRmIiwiQ29uZGl0aW9uIjp7IkRhdGVMZXNzVGhhbiI6eyJBV1M6RXBvY2hUaW1lIjoxNjkzMTk3NjEyfSwiSXBBZGRyZXNzIjp7IkFXUzpTb3VyY2VJcCI6IjAuMC4wLjAvMCJ9fX1dfQ__&Signature=BJZoZ~irm0gGSd4vvDht3xQByVaXmj1okAz5qNY-uA-4Qn0btw9FZ-8E9QkUbaKaM7k11oAHtIurzX5oovnY5fvru4oUA20jgSfeNm9JAa5tCdojgmueDcqqcjC9RnpbAEI3lszjf7f3u9nToLcX4MgPzefcPLhcMBOceH7QwYUT1TqFpJ9Yyl5mbAMsrRHHEMMEmxTfzYf0X8oi~6qSWP1UeYXC3Adzhv0nHrCeu4plinTW53NY9QKXTrm4Vd4Mm8tdTApG0t3JTpB7ice4eC-CM2P0I25cw-c6CvRifv0qI~Ueo4emodl2k~JMGYhtuc7mlE1LZdeeMnmbh-1GMA__&Key-Pair-Id=APKAIG732Q7COSRHPYNA
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (9)石油学会 第65回年会(主催 公益社団法人石油学会)、令和5年5月30日公開(開催期間 令和5年5月29日~5月30日) (9b)石油学会 第65回年会の予稿集(講演要旨集)のウェブサイト、令和5年5月25日公開 https://confit.atlas.jp/guide/event/jpi2023/proceedings/list https://sstore-confit.atlas.jp/jpi/jpi2023/pdf/proceedings/ja/jpi2023_all_20230530.pdf?Policy=eyJTdGF0ZW1lbnQiOiBbeyJSZXNvdXJjZSI6Imh0dHBzOi8vc3N0b3JlLWNvbmZpdC5hdGxhcy5qcC9qcGkvanBpMjAyMy9wZGYvcHJvY2VlZGluZ3MvamEvanBpMjAyM19hbGxfMjAyMzA1MzAucGRmIiwiQ29uZGl0aW9uIjp7IkRhdGVMZXNzVGhhbiI6eyJBV1M6RXBvY2hUaW1lIjoxNjkzMTk3ODcxfSwiSXBBZGRyZXNzIjp7IkFXUzpTb3VyY2VJcCI6IjAuMC4wLjAvMCJ9fX1dfQ__&Signature=TZtLx-9NDjlB3~KU2xUbWqtXEp5Pwv4~0aKkmTg2VCsVnN8g1cfpPiaktcOtV5OGmPJIh0o~YlIOu34P66J2QfgHWNd91mE-adjEPWpRdXyy0jzOXqAOFdruMoSxD8KqkbqGSdw22e3clqtrqZaWkIKHlzZC2soL799U7HJ9G23e2koE4bGn0MzuuaRYkLp9YkpLqN5RljLUgSmqTLFNLrLp8FhxtM5UeDrbjWtJVc2mBbnUhXHyV2Z8MtiNYewklGhPdcE4lAzGgrk6pmTUlRuwXIAtfRcXbI-ApPIuqKbP1awVmKrKM69273TmkgqfceXqgDZ9EvFbaw04xFYrng__&Key-Pair-Id=APKAIG732Q7COSRHPYNA
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (10)2023年度JPECフォーラム(主催 一般財団法人石油エネルギー技術センター)、令和5年5月10日公開 (10b)2023年度JPECフォーラムに用いる発表資料のウェブサイト、令和5年4月25日公開 https://www.pecj.or.jp/forum2023/ https://www.pecj.or.jp/wp-content/uploads/2023/04/JPECForum_2023_program_034.pdf
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (11)石油学会 第65回年会(主催 公益社団法人石油学会)、令和5年5月30日公開(開催期間 令和5年5月29日~5月30日) (11b)石油学会 第65回年会の予稿集(講演要旨集)のウェブサイト、令和5年5月25日公開 https://confit.atlas.jp/guide/event/jpi2023/proceedings/list https://sstore-confit.atlas.jp/jpi/jpi2023/pdf/proceedings/ja/jpi2023_all_20230530.pdf?Policy=eyJTdGF0ZW1lbnQiOiBbeyJSZXNvdXJjZSI6Imh0dHBzOi8vc3N0b3JlLWNvbmZpdC5hdGxhcy5qcC9qcGkvanBpMjAyMy9wZGYvcHJvY2VlZGluZ3MvamEvanBpMjAyM19hbGxfMjAyMzA1MzAucGRmIiwiQ29uZGl0aW9uIjp7IkRhdGVMZXNzVGhhbiI6eyJBV1M6RXBvY2hUaW1lIjoxNjkzMTk3ODcxfSwiSXBBZGRyZXNzIjp7IkFXUzpTb3VyY2VJcCI6IjAuMC4wLjAvMCJ9fX1dfQ__&Signature=TZtLx-9NDjlB3~KU2xUbWqtXEp5Pwv4~0aKkmTg2VCsVnN8g1cfpPiaktcOtV5OGmPJIh0o~YlIOu34P66J2QfgHWNd91mE-adjEPWpRdXyy0jzOXqAOFdruMoSxD8KqkbqGSdw22e3clqtrqZaWkIKHlzZC2soL799U7HJ9G23e2koE4bGn0MzuuaRYkLp9YkpLqN5RljLUgSmqTLFNLrLp8FhxtM5UeDrbjWtJVc2mBbnUhXHyV2Z8MtiNYewklGhPdcE4lAzGgrk6pmTUlRuwXIAtfRcXbI-ApPIuqKbP1awVmKrKM69273TmkgqfceXqgDZ9EvFbaw04xFYrng__&Key-Pair-Id=APKAIG732Q7COSRHPYNA
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (12)長野大会(第52回石油・石油化学討論会)(主催 公益社団法人石油学会)、令和4年10月27日公開(開催期間 令和4年10月27日~10月28日) (12b)長野大会(第52回石油・石油化学討論会)の予稿集(講演要旨集)のウェブサイト、令和4年10月25日公開 https://confit.atlas.jp/guide/event/jpi2022f/proceedings/list https://sstore-confit.atlas.jp/jpi/jpi2022f/pdf/proceedings/ja/jpi2022f_27_20221027.pdf?Policy=eyJTdGF0ZW1lbnQiOiBbeyJSZXNvdXJjZSI6Imh0dHBzOi8vc3N0b3JlLWNvbmZpdC5hdGxhcy5qcC9qcGkvanBpMjAyMmYvcGRmL3Byb2NlZWRpbmdzL2phL2pwaTIwMjJmXzI3XzIwMjIxMDI3LnBkZiIsIkNvbmRpdGlvbiI6eyJEYXRlTGVzc1RoYW4iOnsiQVdTOkVwb2NoVGltZSI6MTY5MzE5ODM4Mn0sIklwQWRkcmVzcyI6eyJBV1M6U291cmNlSXAiOiIwLjAuMC4wLzAifX19XX0_&Signature=G-YvWP0NG6N1y3ETanNURdCkiLpcAIcHO0CyeBoTZlirqB7Quf7yD6xhU3Ezzm~rsV7G5GqYfIeVetYJywTDs5Da43XlbAbRwOX7jo7lvA7ds2KTYWA~RzrbQUzyMf6lZp~S9IGD7Pp9tOFDHRK0QvarqKu29HLJROmz5dkKvR337U9hf2pNCpIgeoNNNdoWfHVxkv60AjpXzsZxOCHDaUczSBlrBh92uRfxT6EBFog6QOWobI9nqufTAv~zer4D75ATkbu1H9W2wIWALEveBVSXK6IBuIzOdZlrBq1D2wKcOvyBKGWq1CY8wnDdPsbPsN6z~W-S7kTMgcash5ySpg__&Key-Pair-Id=APKAIG732Q7COSRHPYNA
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (13)長野大会(第52回石油・石油化学討論会)(主催 公益社団法人石油学会)、令和4年10月27日公開(開催期間 令和4年10月27日~10月28日) (13b)長野大会(第52回石油・石油化学討論会)の予稿集(講演要旨集)のウェブサイト、令和4年10月25日公開 https://confit.atlas.jp/guide/event/jpi2022f/proceedings/list https://sstore-confit.atlas.jp/jpi/jpi2022f/pdf/proceedings/ja/jpi2022f_27_20221027.pdf?Policy=eyJTdGF0ZW1lbnQiOiBbeyJSZXNvdXJjZSI6Imh0dHBzOi8vc3N0b3JlLWNvbmZpdC5hdGxhcy5qcC9qcGkvanBpMjAyMmYvcGRmL3Byb2NlZWRpbmdzL2phL2pwaTIwMjJmXzI3XzIwMjIxMDI3LnBkZiIsIkNvbmRpdGlvbiI6eyJEYXRlTGVzc1RoYW4iOnsiQVdTOkVwb2NoVGltZSI6MTY5MzE5ODM4Mn0sIklwQWRkcmVzcyI6eyJBV1M6U291cmNlSXAiOiIwLjAuMC4wLzAifX19XX0_&Signature=G-YvWP0NG6N1y3ETanNURdCkiLpcAIcHO0CyeBoTZlirqB7Quf7yD6xhU3Ezzm~rsV7G5GqYfIeVetYJywTDs5Da43XlbAbRwOX7jo7lvA7ds2KTYWA~RzrbQUzyMf6lZp~S9IGD7Pp9tOFDHRK0QvarqKu29HLJROmz5dkKvR337U9hf2pNCpIgeoNNNdoWfHVxkv60AjpXzsZxOCHDaUczSBlrBh92uRfxT6EBFog6QOWobI9nqufTAv~zer4D75ATkbu1H9W2wIWALEveBVSXK6IBuIzOdZlrBq1D2wKcOvyBKGWq1CY8wnDdPsbPsN6z~W-S7kTMgcash5ySpg__&Key-Pair-Id=APKAIG732Q7COSRHPYNA
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (14)第38回ゼオライト研究発表会(主催 一般社団法人日本ゼオライト学会)、令和4年12月1日公開(開催期間 令和4年12月1日~12月2日) (14b)第38回ゼオライト研究発表会講演予稿集 第53頁(発行 一般社団法人 日本ゼオライト学会)、令和4年12月1日発行 (15)第38回ゼオライト研究発表会(主催 一般社団法人日本ゼオライト学会)、令和4年12月1日公開(開催期間 令和4年12月1日~12月2日) (15b)第38回ゼオライト研究発表会講演予稿集 第52頁(発行 一般社団法人 日本ゼオライト学会)、令和4年12月1日発行 (16)化学工学会第88年会(主催 公益社団法人化学工学会)、令和5年3月17日公開(開催期間 令和5年3月15日~3月17日) (16b)化学工学会第88年会の予稿集(講演要旨集)のウェブサイト、令和5年3月1日公開 http://www3.scej.org/meeting/88a/pages/jp_abstract.html (17)第12回 JACI/GSCシンポジウム(主催 公益社団法人新化学技術推進協会)、令和5年6月14日公開(開催期間 令和5年6月13日~6月14日) (17b)第12回 JACI/GSCシンポジウムの予稿集のウェブサイト、令和5年5月29日公開 https://jaci-gsc.com/12th_web/ https://www.jaci-gsc.com/years/2023/front/poster/all.pdf (18)欧州ゼオライト協会第9会議(FEZA 2023)(主催 欧州ゼオライト協会)、令和5年7月3日~7月4日公開(開催期間 令和5年年7月2日~7月6日) (18b)欧州ゼオライト協会第9会議(FEZA 2023)の予稿集のウェブサイト、令和5年7月公開 https://feza2023.org/en/ https://feza2023.org/ParticipantPanel/login.asp?q=no_req_no (19)JPIセミナー(主催 株式会社JPI(日本計画研究所)、令和4年12月2日公開 (20)長野大会(第52回石油・石油化学討論会)(主催 公益社団法人石油学会)、令和4年10月27日公開(開催期間 令和4年10月27日~10月
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2020年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「革新的プラスチック資源循環プロセス技術開発/石油化学原料化プロセス開発」委託研究、産業技術力強化法17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】100115842
【弁理士】
【氏名又は名称】秦 正則
(72)【発明者】
【氏名】松方 正彦
(72)【発明者】
【氏名】加茂 徹
(72)【発明者】
【氏名】酒井 求
(72)【発明者】
【氏名】三浦 えり
(72)【発明者】
【氏名】松下 真大
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA11
4G169AA14
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BE17C
4G169CB35
4G169CB62
4G169CC40
4G169DA08
4G169EA01Y
4G169EA02Y
4G169EA04Y
4G169EB18Y
4G169EC04Y
4G169EC06Y
4G169FA01
4G169FB30
4G169ZA19A
4G169ZA19B
4G169ZB08
4G169ZD10
4G169ZE03
4G169ZE10
4H129AA01
4H129AA03
4H129BA04
4H129BB04
4H129BC08
4H129BC13
4H129BC14
4H129KA17
4H129KB02
4H129KC17X
4H129KC17Y
4H129NA24
(57)【要約】
【課題】廃プラスチックを含むプラスチックを高い分解率で分解でき分解能が高いとともに、石油化学原料として使用できる成分を高収率で得ることができるプラスチックの分解方法を提供すること。
【解決手段】本発明に係るプラスチックの分解方法は、廃プラスチックを含むプラスチックを、ゼオライト触媒と溶媒として軽油を用いて混合、加熱して反応させて分解するようにしている。よって、ゼオライト触媒がプラスチックの分解を促進し、溶媒として軽油を使用することで、分解対象のプラスチックの流動性が上がり、プラスチックを加熱して融かした際に高粘度となるという問題を解消でき、その結果、プラスチックを速やかに均一に加熱し、高い分解率で分解でき分解能が高いとともに、石油化学原料として使用できるC~C成分を高収率で得ることができる。本発明は、分解対象を廃プラスチックとした、廃プラスチックを分解する方法として最適である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱塩基処理及び/または水素化処理された軽油を溶媒とし、当該溶媒にプラスチック(廃プラスチックを含む。)とゼオライト触媒を入れて混合し、加熱して反応させることを特徴とするプラスチックの分解方法。
【請求項2】
前記ゼオライト触媒が10員環または12員環であることを特徴とする請求項1に記載のプラスチックの分解方法。
【請求項3】
前記ゼオライト触媒が12員環のBetaゼオライト触媒であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプラスチックの分解方法。
【請求項4】
前記軽油がLGO(Light Gas Oil:軽質軽油)であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプラスチックの分解方法。
【請求項5】
前記ゼオライト触媒がアルカリ処理されたものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプラスチックの分解方法。
【請求項6】
前記加熱における温度が350~450℃であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプラスチックの分解方法。
【請求項7】
前記プラスチックが廃プラスチックであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプラスチックの分解方法。
【請求項8】
前記プラスチックの分解率が80%以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプラスチックの分解方法。
【請求項9】
~C成分の収率が50%以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプラスチックの分解方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックの分解方法に関する。さらに詳しくは、廃プラスチックを含むプラスチックを高い分解率で効率よく分解し、石油化学原料として使用できるC~C成分を高収率で得ることができるプラスチックの分解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大量に排出される廃プラスチックの処理が社会的な問題となっている。例えば、日本で排出される廃プラスチックは約820万トンであるが、廃プラスチックのリサイクル手段として、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルで再資源化されている量はそれぞれ約21%及び約4%に過ぎず、約62%はエネルギーリカバリー(エネルギー回収)であり、残りの約13%は単純焼却や埋め立て処理されている。
【0003】
ここで、マテリアルリサイクル(Material Recycle:MR)は、廃プラスチックを物理的に細かくして、製品原料として利用する手段である。また、ケミカルリサイクル(Chemical Recycle:CR)は、廃プラスチックを化学的に分解して、製品原料として利用する手段である。さらに、エネルギーリカバリー(Energy Recovery:ER)は、廃プラスチックを焼却する際に生じる熱エネルギーを回収して利用する手段であり、日本ではサーマルリサイクル(Thermal Recycle)とも呼ばれている。
【0004】
廃プラスチックのリサイクル手段としては、前記したようにエネルギーリカバリーが大部分を占める一方、エネルギーリカバリーでは、プラスチックを資源として利用することができないことや、日本国内ではサーマルリサイクルと呼ばれるものの欧米ではリサイクルとみなされていない等という問題があった。また、バーゼル法により廃プラスチックの輸出が制限され、廃プラスチックはそれを生成した国内で処理しなければならないという制約もあった。
【0005】
以上の点や、地球温暖化ガスの排出量の削減、及び炭素循環を促進させるため、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルの技術開発が積極的に進められている。これらは、廃プラスチックを製品の原料に変換して再利用可能であるため、資源の循環的利用により、限りある天然資源の消費を抑制し、埋め立て処理量を減少させる等、環境負荷軽減の観点から望ましい。かかる背景から、プラスチックを分解する種々の手段が提案されている(例えば、特許文献1ないし特許文献3等を参照。)。
【0006】
ケミカルリサイクルの分野においては、これまでは、セメント製造時の焼却灰としての利用や、高炉還元剤・コークス炉化学原料としての利用等が実施されていた。一方、これらの技術では廃プラスチックは最終的に二酸化炭素となるため、資源循環性の観点から問題があった。また、近年、廃プラスチック材料の更なる有効利用のための方策として、よりプラスチック材料に近い物質を生産する、燃焼を伴わない油化、ガス化、原料モノマー化等のようなケミカルリサイクル技術の重要性も高まっている(例えば、特許文献4等を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2018-520247号公報
【特許文献2】特表2018-524448号公報
【特許文献3】特許第6130358号公報
【特許文献4】特許第7258270号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ケミカルリサイクルは、特に、比較的低品質な廃プラスチックからも石油化学原料(例えば、C~C成分等。)を製造できるという期待から、ゼロカーボンを目指す持続可能な社会において重要であり、世界的に技術開発が進められている。一方、廃プラスチックは熱伝導性が低く、熱を加えて融かした際に高い粘度になることや、熱分解のみではプラスチックの分解率(転化率)が低く、また、石油化学原料の収率を高くすることが難しいという問題があった。
【0009】
本発明は、前記に鑑みてなされたものであって、廃プラスチックを含むプラスチックを高い分解率で分解でき分解能が高いとともに、石油化学原料として使用できるC~C成分を高収率で得ることができるプラスチックの分解方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を解決するために、本発明に係るプラスチックの分解方法は、
脱塩基処理及び/または水素化処理された軽油を溶媒とし、当該溶媒にプラスチック(廃プラスチックを含む。)とゼオライト触媒を入れて混合し、加熱して反応させることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るプラスチックの分解方法は、前記した本発明において、前記ゼオライト触媒が10員環または12員環であることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るプラスチックの分解方法は、前記した本発明において、前記ゼオライト触媒が12員環のBetaゼオライト触媒であることを特徴とする。
【0013】
本発明に係るプラスチックの分解方法は、前記した本発明において、前記軽油がLGO(Light Gas Oil:軽質軽油)であることを特徴とする。
【0014】
本発明に係るプラスチックの分解方法は、前記した本発明において、前記ゼオライト触媒がアルカリ処理されたものであることを特徴とする。
【0015】
本発明に係るプラスチックの分解方法は、前記した本発明において、前記加熱における温度が350~450℃であることを特徴とする。
【0016】
本発明に係るプラスチックの分解方法は、前記した本発明において、前記プラスチックが廃プラスチックであることを特徴とする。
【0017】
本発明に係るプラスチックの分解方法は、前記した本発明において、前記プラスチックの分解率が80%以上であることを特徴とする。
【0018】
本発明に係るプラスチックの分解方法は、前記した本発明において、C~C成分の収率が50%以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るプラスチックの分解方法によれば、廃プラスチックを含むプラスチックを、ゼオライト触媒と溶媒として軽油を用いて混合、加熱して反応させてプラスチックを分解するようにしている。よって、ゼオライト触媒がプラスチックの分解を促進するとともに、溶媒として軽油を使用することで、分解対象のプラスチックの流動性が上がり、プラスチックを加熱して融かした際に高粘度となるという問題を解消でき、その結果、廃プラスチックを含むプラスチックを速やかに均一に加熱し、高い分解率で分解でき分解能が高いとともに、石油化学原料として使用できるC~C成分を高収率で得ることができる。本発明に係るプラスチックの分解方法は、分解対象を廃プラスチックとした、廃プラスチックを分解する方法として最適である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】外表面積と分解率の関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一態様について説明する。
【0022】
本発明に係るプラスチックの分解方法は、
脱塩基処理及び/または水素化処理された軽油を溶媒とし、当該溶媒にプラスチック(廃プラスチックを含む。)とゼオライト触媒を入れて混合し、加熱して反応させること、
を基本構成として含む。
【0023】
本発明に係るプラスチックの分解方法(以下、単に「本発明に係る分解方法」や「分解方法」とする場合がある。)において、分解の対象となるプラスチックは、ポリエチレンやポリプロピレンに代表されるポリオレフィン系プラスチックで、ポリ塩化ビニルを含み、基本的には、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を除く概念であり(なお、分解対象が廃プラスチックや廃プラスチックを含有する場合には、意図しない熱硬化性樹脂が混入する場合もあり、その場合は含まざるを得ない。)、かかる分解対象のプラスチックは、廃プラスチックも含む概念である。また、プラスチックの形状は任意であり、原料(ペレット)の状態でも、成形された成形体の状態等でも問題はない。
【0024】
プラスチックは、その1種を単独の状態のほか、2種以上が組み合わされた状態でも構わない。なお、廃プラスチックを分解の対象とする場合は、1種で構成される場合もあるが、2種以上で構成される場合がほとんどであると考えられる。
【0025】
対象となるプラスチックとしては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、プロピレンエチレンコポリマー、ポリスチレン(PS)、ポリブテン、エチレンオリゴマー、ブテンオリゴマー、スチレンオリゴマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、及びナイロン等が挙げられる。この中で、ポリエチレンとしては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン等が挙げられる。
【0026】
含塩素プラスチックとしては、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、及びポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。前記したように、プラスチックとしては、廃プラスチックも含め、以上に代表されるプラスチックの1種や、これらの2種以上を組み合わせた混合体が対象となる。
【0027】
廃プラスチックを含むプラスチックは、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレンエチレンコポリマー、ポリスチレン、ポリブテン、エチレンオリゴマー、ブテンオリゴマー、及びスチレンオリゴマー等)に由来するプラスチックの少なくともいずれかを含むことが好ましい。
【0028】
また、分解対象となるプラスチックは、廃プラスチック(廃プラ)を含むが、一般に、廃プラスチックは、前記したもののうち、3P(ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)のこと。)を含むことが多く、さらに、ポリ塩化ビニル(PVC)やポリエチレンテレフタレート(PET)等のプラスチック材料が混入している場合もある。
【0029】
使用される触媒としては、固体酸触媒であるゼオライト触媒を使用する。ゼオライト触媒は、安価で工業的にも広く利用されており、強酸点や形状選択性等を有するといった利点もある。ポリプロピレン等のプラスチックは、溶媒中で膨潤されて溶融し、反応時にゼオライト触媒の外表面や細孔内に入り込んで分解し(なお、プラスチックの分子が直線的な形状でなく、球状に近い場合は、ゼオライト触媒の細孔と比較して断面積が大きすぎて細孔には入り込めない場合もある。)、分子鎖が短くなり、更に切断された分子鎖がゼオライト触媒の細孔に進入し、強い酸点を有し、かつ、外表面よりも反応場となる細孔表面積が圧倒的に大きい細孔内で、石油化学原料として使用できるC~C成分が高収率で生成されると考えられる。
【0030】
ゼオライト触媒としては、特に制限はないが、10員環または12員環のゼオライト触媒を使用することが好ましい。具体的には、10員環としては、例えば、ZSM-5、フェリエライト等、12員環としては、例えば、Beta(ベータ)型、USY(ウルトラステーブルY)、EMT、Y型、モルデナイト、MTW等を使用することができ、10員環と12員環に属するものとしては、例えば、CIT-1等を使用することができる。これらのゼオライト触媒は、その1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0031】
ゼオライト触媒は、12員環のBeta(ベータ)型のもの(Betaゼオライト触媒)を使用することが特に好ましい。Betaゼオライト触媒は、市販される合成ゼオライトを用いてもよいし、フッ化物法を用いて得られるゼオライト触媒を用いてもよい。
【0032】
なお、フッ化物法とは、フュームドシリカ(SiO)に対してフッ化アンモニウム(NHF)、フッ化ナトリウム(NaF)等のフッ化物を用いてゼオライト触媒を合成する方法であり、例えば、フュームドシリカ(SiO)、水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH)、フッ化アンモニウム(NHF)、水酸化アルミニウム(Al(OH))等を混合し、撹拌、エイジング等を施した後、水熱合成させて、生成物を濾過、乾燥、焼成等することにより簡便に実施することができる。
【0033】
また、市販される合成ゼオライトとしては、例えば、ハイシリカゼオライトHSZ(登録商標)(HSZ-900 931HOA(Si/Al=15.1)(東ソー株式会社製))や、CP814E(Si/Al=12.5)(ZEOLYST社製)等を用いることができる。
【0034】
ゼオライト触媒のSi/Al比(シリカ/アルミナ比)は、活性点の数はSi/Al比が1に近づくほど多くなるが、本発明にあっては、概ね、Si/Al=1~100とすることが好ましく、2~40とすることが特に好ましい。
【0035】
ゼオライト触媒の形状は、特に制限はなく、粒状(粒子状)、粉状、球状等の各種形状のものを使用することができる。ゼオライト触媒の粒径(平均粒径)は、これも特に制限はないが、0.1~50μmとすることが好ましく、0.1~10μmとすることが特に好ましいが、特にこの範囲には限定されない。なお、ゼオライト触媒は、分級して(平均)粒径を揃えるようにしてもよい。また、ゼオライト触媒を工業的に使用する場合には、アルミナ等のバインダー等を加えて焼成して成形して用いられる(例えば、0.5μmの粒子状のゼオライト触媒を球状に成形して70μmとする等。)。この場合には触媒粒子の粒子径は、数十μm~数cmとなる場合がある。粒径の特定は、顕微鏡観察等で確認し、適当数の平均値を平均粒径等してもよい。
【0036】
ゼオライト触媒は、アルカリ処理を施すことが好ましい。ゼオライト触媒にアルカリ処理を施すことにより、ゼオライト触媒の外表面積が増加し、プラスチックの分解が効率よく行われることになる。
【0037】
ゼオライト触媒のアルカリ処理の方法は、特に制限はなく、従来公知のアルカリ処理の方法を用いることができる。すなわち、塩基性の溶液であるアルカリ水溶液にゼオライト触媒を浸漬させることにより、簡便に実施することができる。
【0038】
アルカリ水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、アンモニア(NH)水、有機アミン等のアルカリ水溶液にゼオライト触媒を浸漬させて、例えば、20~800℃といった温度に加熱した状態で撹拌することにより簡便に実施することができる。アルカリ水溶液のモル濃度としては、特に制限はないが、例えば、0.01M~1Mとすることが好ましい。
【0039】
また、このようにアルカリ処理されたゼオライト触媒は、アルカリ塩(水溶液として水酸化ナトリウム水溶液を用いた場合はナトリウム塩となる。)となっているので、濾過、乾燥後、イオン交換処理を行うことが好ましい。
【0040】
イオン交換処理を行う場合、アルカリ処理として前記の水酸化ナトリウム水溶液を用いた場合、例えば、硝酸アンモニウム(NHNO)、塩酸(HCl)、硝酸(HNO)、硫酸(HSO)等の各水溶液を用いることができ、アルカリ処理されたゼオライト触媒を浸漬させて、20~90℃といった温度に加熱した状態で撹拌することにより簡便に実施することができる。イオン交換処理を行うための水溶液のモル濃度としては、特に制限はないが、例えば、0.1M~5Mとすることが好ましい。
【0041】
アルカリ処理の後、イオン交換処理がなされたゼオライト触媒は、乾燥後、特に制限はないが、例えば、温度を400~700℃として焼成処理することが好ましい。焼成のための時間は、特に制限はないが、2~20時間とすることが好ましい。
【0042】
なお、アルカリ処理するゼオライト触媒は、結晶化度が高い(結晶性が良好な)ものを用いることが好ましい。この点、前記したフッ化物法を用いて得られたゼオライト触媒は結晶化度が比較的高いため、アルカリ処理を施すための対象としては好ましい(合成物や前記したような市販物については、アルカリ処理を施すと構造が崩壊する場合が多い。)。
【0043】
一方、Betaゼオライト触媒に、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ性の水溶液処理を用いてアルカリ処理を施して活性の向上を図る場合には、もとのゼオライトの結晶化度が高く(結晶性が良好で)ないと構造が壊れてしまう場合がある。よって、アルカリ処理を施す対象となるゼオライト触媒としては、結晶化度が高いBetaゼオライト触媒が合成されるフッ化物法を用いて得られたものを使用することが好ましい。
【0044】
また、ゼオライト触媒の外表面積はアルカリ処理することによって増大し、アルカリ処理されたゼオライト触媒も含めて、外表面積の大きさに対応して、分解対象のプラスチック、及び溶媒の分解率(転化率とも呼ばれる。以下同じ。)が高くなる傾向がある。
【0045】
プラスチックを分解するための溶媒としては、石油精製プラントから供給される石油留分であるLGO(Light Gas Oil:軽質軽油)、LCO(Light Cycle Oil:分解軽油)、VGO(Vacuum Gas Oil:減圧軽油)等のパラフィン系炭化水素化合物(以下、単に「パラフィン」や「パラフィン分」とする場合もある。)を多く含む軽油(軽油留分)を使用することができる。溶媒となるこれらの軽油は、その1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用することもできる。これらの溶媒を用いることで、分解対象のプラスチックの流動性が上がり、プラスチックを加熱して融かした際に高粘度となるという問題を解消できる。
【0046】
本発明にあって、使用される溶媒は、石油精製によって得られる炭化水素系溶媒を想定し、前記のLGO(軽質軽油)、LCO(分解軽油)、VGO(減圧軽油)等の各種軽油留分を採用している。
【0047】
なお、使用される溶媒としては、本発明の分解方法で得られるプラスチック分解油(下記分解された成分における(3))を再度溶媒として用いることもできる。これらは前記の軽油(軽油留分)であるLGOやVGO等と組成を類似する炭化水素系溶媒となると想定できる(プラスチックの分解生成物のうち、凡そ炭化数が20以上の成分がそのような組成となると考えられるためである。)。
【0048】
軽油からなる溶媒は、全体に対して、沸点が比較的高い(例えば、280℃以上等。)とされるパラフィン(パラフィン分、飽和分)が多い溶媒を多く含むことが好ましく、例えば、C10~C30の直鎖パラフィンや分岐したパラフィンを含むことが好ましい。これらのパラフィンも含め、使用される溶媒は、特に制限はないが、パラフィン(パラフィン分)を全体に対して50%以上含むことが好ましく、70%以上含むことが特に好ましい。なお、パラフィンを多く含むという点等に鑑みて、溶媒としてはLGOを使用することが好ましい。LGOとは、一般に、原油から蒸留した240~360℃辺りの留分であり、パラフィン分70%、アロマ分25~30%(うち3環以上のアロマ分は数%であり、大体は2環アロマである。)、硫黄分約1%、窒素分0.01~0.02%である。硫黄分はベンゾチオフェン/ジベンゾチオフェン類となり、窒素分は5員環Nが2/3、6員環Nが1/3となる。
【0049】
本発明にあって、これらの軽油は、脱塩基処理や水素化処理(水素化脱硫処理)を施す必要がある。脱塩基処理により溶媒から塩基を除く(脱着させる。)ことや、水素化処理により溶媒から硫黄、窒素、酸素、金属等の不純物を含む化合物等を分解除去することにより、触媒の活性低下が抑制され、結果としてプラスチックの分解率が向上する。脱塩基処理や水素化処理は、溶媒に対してその一方を施してもよいし、両方を施してもよい。
【0050】
脱塩基処理は、例えば、アモルファスシリカアルミナ等の固体酸を、例えば、LGO等といった対象となる溶媒に対して1~20質量%の割合となるように添加し、0.5~10時間撹拌して、塩基性物質を固体酸に吸着させることにより、簡便に実施することができる。
【0051】
また、水素化処理は、水素化脱硫処理とも呼ばれ、例えば、所定の高温・高圧下で、石油留分をニッケルやモリブデンあるいはコバルト等を使った触媒に、対象媒体を水素と一緒に接触させることにより、不純物(例えば、硫黄、窒素、酸素、金属等。)を含む化合物等を分解して除去する処理のことである。通常、LGO等には硫黄分が0.5~6質量%程度含まれるため、水素化脱硫処理によりかかる硫黄成分等の不純物を確実に除去するようにする。水素化処理されたLGO(脱硫LGO)は、LGO中の硫黄分を10ppm以下に水素化脱硫したものである。その際に窒素はほとんど消失し、アロマは水添されて20%以下となり、ナフテンも増えることになる。
【0052】
本発明に係る分解方法では、かかる溶媒にプラスチックとゼオライト触媒を入れて混合し、加熱して反応させる。かかる加熱における温度(加熱温度)は、分解対象のプラスチックの種類や量、使用する固体酸触媒や炭化水素溶媒の種類や量、及び後記する加熱時間等によって適宜調整することができるが、概ね300℃以上とすることが好ましく、330~500℃とすることがさらに好ましく、350~450℃とすることが特に好ましい。
【0053】
また、加熱するための時間(加熱時間:前記加熱温度に達してからの時間)も、分解対象のプラスチックの種類や量、使用するゼオライト触媒や溶媒の種類や量、及び前記した反応温度等によって適宜調整することができるが、加熱時間を概ね10分以上とすることが好ましく、20~90分とすることがさらに好ましく、30~60分とすることが特に好ましい。
【0054】
なお、本発明は、加熱して反応させてプラスチック等の分解を進行させるが、プラスチック、溶媒及び触媒の種類(あるいはそれらの組み合わせ。)の選択によって、反応の進行は前記の温度(加熱温度)に達する前に進行し、かかる温度に達した時には反応のある程度からほとんどが進行している場合もある。よって、前記した加熱温度及び加熱時間は、例えば、バッチ(回分)式で実施した場合のあくまでも目安であり、例えば、加熱時間としては、それまでの昇温(予熱)時間が前記の加熱時間程度である場合等には、加熱温度と考えられる所定(所望)の温度に到達後0~60分としてもよい。また、工業的には、バッチ(回分)式でなく、連続的にプラスチック、触媒等の原料が供給され、連続的に反応生成物を取り出す場合には、加熱時間は装置のオペレーションの時間となる場合もある。この場合も、(加熱温度に設定した)装置内部での滞留時間の範囲を1~90分(より好ましくは、1~60分。)としてもよい。すなわち、加熱温度及び加熱時間は、プラスチック(及び溶媒(軽油))をゼオライト触媒で分解するための温度及び時間として、その状況等に応じて適宜決定すればよく、前記の範囲はその中の一例に過ぎない。
【0055】
反応は、窒素パージ下で行うことが好ましい。窒素パージの条件としては、圧力は、0.1~2.0MPa等で行うことが好ましいが、かかる範囲には限定されない。
【0056】
分解対象のプラスチックに対して、使用される溶媒や触媒の質量比としては、プラスチックを1とした場合、溶媒の質量を2~10、触媒の質量を0.05~0.4とすることが好ましい。
【0057】
なお、反応が終了したら、室温まで冷却することが好ましい。冷却後、分解された下記の成分について、必要により分離することが好ましい。
【0058】
本発明に係る分解方法にあっては、プラスチックが、概ね下記(1)~(14)の14成分に分解されると考えられる。
【0059】
(分解された成分)
(1)Carbon Residue:炭素残渣
(2)Residue+Catalyst:固体残渣(残渣+触媒)
(3)Solvent:溶媒
(4)C~C Aliphalic:C~C脂肪族
(5)C~C Aliphalic: C~C脂肪族
(6)C~C Aliphalic:C~C脂肪族
(7)C~C Monocyclic:C~C単環式
(8)C10~C16 Aliphalic: C10~C16脂肪族
(9)C17~C19 Aliphalic: C17~C19脂肪族
(10)C<Monocyclic :C<単環式
(11)Dicyclic:二環式
(12)Tricyclic~:三環式~
(13)C29~C44:C29~C44
(14)C44<:C44
【0060】
なお、これらの各成分(気体生成物、液体生成物、固体生成物(残渣と触媒を指す。))等に分離するための手段としては、後記する[実施例]に載せた手段等を用いることができるが、これには限定されず、それ以外でも、従来公知の分離手段を用いて、気体生成物、液体生成物、固体生成物等に分離することができる。
【0061】
石油化学原料としては、一般に、C~C成分である(5)C~C脂肪族、(6)C~C脂肪族、(7)C~C単環式(石油化学原料としては、特に、(6)C~C脂肪族が好ましい。)が使用できると考えられている。
【0062】
(III)発明の効果:
以上説明した本発明に係るプラスチックの分解方法によれば、廃プラスチックを含むプラスチックを、ゼオライト触媒と溶媒として軽油を用いて混合、加熱して反応させてプラスチックを分解するようにしている。よって、ゼオライト触媒がプラスチックの分解を促進するとともに、溶媒として軽油を使用することで、分解対象のプラスチックの流動性が上がり、プラスチックを加熱して融かした際に高粘度となるという問題を解消でき、その結果、廃プラスチックを含むプラスチックを速やかに均一に加熱し、高い分解率で分解でき分解能が高いとともに、石油化学原料として使用できるC~C成分を高収率で得ることができる。
【0063】
本発明に係る分解方法によれば、廃プラスチックを含むプラスチックの分解率(転化率)として80%以上(より好ましくは90%以上。)、石油化学原料として使用することができるC~C成分である前記(5)~(7)の成分の収率を50%以上とすることが期待できる。
【0064】
本発明に係るプラスチックの分解方法は、分解対象を廃プラスチックとした、廃プラスチックを分解する方法として最適である。すなわち、分解対象のプラスチックを廃プラスチックとして、使用する溶媒を石油精製から得られる炭化水素系溶媒であるLGO等の軽油を用いてゼオライト触媒で分解することで、廃プラスチックを高い分解率で分解し、石油化学原料として使用できるC~C成分を高収率で得るというケミカルリサイクルが簡便に実施されることになる。
【0065】
加えて、使用する溶媒である軽油は、石油精製によって得られる炭化水素系溶媒として入手することができ、本発明の分解方法で得られるプラスチック分解油も、LGOやLCO等といった軽油溶媒と組成を類似する炭化水素系溶媒となると想定できるため、溶媒もリサイクル品から提供できる可能性もあり、これらによるケミカルリサイクルシステムを構築することも可能である。
【0066】
(IV)実施形態の変形:
なお、以上説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の構成を備え、目的及び効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。また、本発明を実施する際における具体的な構造及び形状等は、本発明の目的及び効果を達成できる範囲内において、他の構造や形状等としても問題はない。本発明は前記した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形や改良は、本発明に含まれるものである。
【0067】
例えば、前記した説明では、ゼオライト触媒のアルカリ処理、溶媒の脱塩基処理や水素化処理等を所定の方法を例に挙げて説明したが、ゼオライト触媒のアルカリ処理、溶媒の脱塩基処理や水素化処理等に相当し、本発明の目的及び効果を妨げない範囲において、かかる例に挙げた所定の方法以外の方法を用いて実施するようにしても問題はない。
【0068】
同様に、ゼオライト触媒を合成する手段であるフッ化物法について所定の方法を例に挙げて説明したが、本発明の目的及び効果を妨げない範囲において、かかる例に挙げた所定の方法以外の方法を用いて実施するようにしても問題はない。
その他、本発明の実施の際の具体的な構造及び形状等は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。
【実施例0069】
以下、本発明を下記実施例及び参考例等に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0070】
なお、以下に載せる[試験例1]は、主としてパラフィン系溶媒と芳香族系溶媒のプラスチックの分解能及び各成分の収率の違いを載せた参考例であり、[試験例3]も、主としてパラフィン系溶媒を用いて、ゼオライト触媒に対するアルカリ処理の有無によるプラスチックの分解能及び各成分の収率の違いを載せた参考例である。
【0071】
[試験例1]
プラスチックの分解(1):
以下の方法を用いて、プラスチック(ポリプロピレン:PP)を分解した(なお、以下の操作を「基本操作」とする。)。
【0072】
20.0gの溶媒(試験例1で使用した溶媒は下記(溶媒1)及び(溶媒2)を参照。)が入った容量が100mlの回分反応器(反応器)にプラスチックとして5.0gのポリプロピレン(M=370000:JPEC)と1.0gのゼオライト触媒として粒状(粒子状)のBetaゼオライト触媒(合成ゼオライト(ハイシリカゼオライトHSZ(登録商標) HSZ-900 931HOA Si/Al=15.1、東ソー株式会社製、平均粒径:0.933μm)(触媒1)を入れて混合して混合溶液とした。なお、使用したBetaゼオライト触媒は、三次元方向に12員環の細孔を有する12員環のゼオライト触媒である。
【0073】
得られた混合溶液を、0.1MPaで窒素パージして窒素雰囲気とした。この状態で、昇温速度を約10℃/分として加熱して400℃まで達するようにし、温度が400℃となった状態で60分維持して反応を進めた。なお、反応中は、400rpmで撹拌した。
【0074】
(試験例1で使用した溶媒)
溶媒1:パラフィン系溶媒(n-ヘキサデカン)(表2等、n-C16と記載したところもある。)
溶媒2:芳香族系溶媒(1-メチルナフタレン)(表2等、1-MNと記載したところもある。)
【0075】
なお、使用した触媒1のBET比表面積(SBET)、外表面積(SExternal)、ミクロ孔容積(Vmicro)、メソ孔容積(Vmeso)を表1に示す。
【0076】
(BET比表面積等(触媒1))
【表1】
【0077】
(各成分の分離)
反応終了後、室温まで冷却し、下記の方法で気体成分、液体成分及び固体生成物(残渣と触媒を指す。以下同じ。)に分離して、それぞれの成分等を分析して、プラスチックの分解率(転化率)及び生成物の評価を行った。
【0078】
室温まで冷却した反応終了後の混合溶液(混合物)について、まず、気体生成物を水上置換で回収し、ガスクロマトグラフィー水素炎イオン化検出器(GC-FID)で各成分の濃度を測定した。
【0079】
また、気体回収後の混合物を、CやCの気化を防ぐため反応器ごと-10~10℃に冷却して内部標準試料とした。この内部標準試料についてミニザルトを用いて濾過して、液体生成物とそれ以外の固体生成物に分離した。
【0080】
液体生成物は回収して、GC-FIDにより溶媒分解率を算出する。また、GC-MS及び蒸留GCにより、生成物分布を測定した。一方、固体生成物は、吸引濾過した後、固体生成物を回収、溶媒置換(n-ペンタン(n-C)を用いた。)し、一晩乾燥した後、質量(MSP)を測定した。次に乾燥させた固体生成物をo-ジクロロベンゼンに溶解させた後に濾過し、回収された不溶解物を乾燥させた。更に乾燥させた不溶解物を空気中600℃で30分保持し、質量減少量から触媒に析出した炭素残渣の質量(MCR)(g:ほかについての質量も同様。)を求めた。
【0081】
(分解率と収率の算出)
分離された各成分(前記した「分解された成分」の(1)~(14)に相当。)の質量測定結果をもとに、炭素残渣(MCR)、残渣(M)の質量を算出した。なお、本試験では、プラスチック及び溶媒のそれぞれが触媒(ゼオライト触媒)によって分解されてしまうため、得られた生成物(気体生成物及び液体生成物)原料を特定することは不可能である。
炭素残渣(MCR)=不要物の初期質量-空気中600℃×30分で加熱処理した後の質量
残渣(M)=固体生成物の質量(MSP)-炭素残渣(MCR)-触媒質量(M
【0082】
溶媒中におけるプラスチック由来の分解生成物を調べるため、溶媒とプラスチックとを用いた場合と、溶媒のみ反応させた場合の各成分の収率を求め、各成分の収率の差からプラスチック由来の生成物の収率を求めた。下記の方法を用いて、分解率と収率を算出した。
【0083】
分解率(転化率)は、使用したプラスチック(ポリプロピレン)の質量(M)と、反応後に室温で回収した固体生成物の質量(MSP)から使用した触媒の質量(M)と触媒に析出した炭素残渣の質量(MCR)を減じ、下記式(X)を用いて算出した。なお、プラスチックが分解しても、回収時に固体生成物として回収されれば未分解と解釈した(以下、質量%を、単に「%」とする場合もある。)。なお、溶媒の分解率は、ガスクロマトグラフィー(GC)で液体生成物を定量し、その増減から質量の差を確認し、同様に算出した。
分解率[%]=(100-(MSP-M-MCR)/M)×100 …… (X)
【0084】
各成分の収率[%]は、反応後の各成分の全体に対する割合(質量%)から反応前の各成分の全体に対する割合(質量%)を減じて増減量Δw(質量%)を求め、かかる増減量Δw(質量%)をΔwの合計(溶媒1であれば、表3にある23.940(質量%)が相当する。)で除し、パーセント表記とする(100を乗する。)ことにより算出される(下記式(Y)を参照。)
収率[%]=(Δw/Δwの合計)×100 …… (Y)
【0085】
なお、Δwの算出にあっては、溶媒(20.0g)+触媒(1.0g)の合計である21.0gを分母として収率を計算した。ポリプロピレン無し(溶媒のみ)の場合は、合計が、(21.0g/21.0g)×100(%)=100%となる。一方、ポリプロピレン有りの場合は、合計が、(21.0g+5.0g(ポリプロピレンの質量)/21.0g)×100(%)=(24.0g/21.0g)×100(%)≒124%となる。
【0086】
(結果:試験例1(分解率)
【表2】
【0087】
(結果:試験例1(収率))
【表3】
【0088】
溶媒1(n-ヘキサデカン(n-C16)(パラフィン系溶媒))を使用した場合、表2に示すように、ポリプロピレン(表2等、「PP」とするところもある。ほかについても同じ。)の分解率は97.9%、溶媒の分解率は96.9%で、表3に示すように、石油化学原料となるC~C脂肪族の収率は59.4%、C~C成分の合計は57.7%であった(なお、本欄やほかの欄での説明における収率の値は、表に載せた値に対して有効数字を小数点第一位まで(小数点第二位を四捨五入した。)として載せたところもある。)。
【0089】
また、ポリプロピレンを用いなかった場合のn-ヘキサデカンの分解率は97.7%で、ポリプロピレンの有無による溶媒の分解については、顕著な違いは見られなかった。なお、ポリプロピレンの有無によって溶媒の分解率に大きな差がないということは、ポリプロピレンと溶媒は触媒の存在下でそれぞれ独立して分解され、ポリプロピレンと溶媒のそれぞれの相互作用が小さいことを示すことになる。
【0090】
一方、溶媒2(1-メチルナフタレン(芳香族系溶媒))を用いた場合、表2に示すように、ポリプロピレンの分解率は68.2%、溶媒の分解率は72.6%に過ぎず、表3に示すように、石油化学原料となるC~C脂肪族の収率は24.7%、C~C成分の合計は44.8%であった。
【0091】
また、ポリプロピレンを用いなかった場合のn-ヘキサデカンの分解率は、表2に示すように48.2%で、ポリプロピレンの有無による溶媒の分解について、顕著な差異が認められた。
【0092】
なお、試験例1において、溶媒1(n-ヘキサデカン)と溶媒2(1-メチルナフタレン)を混合して、配合比を溶媒1/溶媒2=7/3と3/7とした場合についての試験を実施し、同様に結果を確認した。試験例1の結果(溶媒1のみ、溶媒2のみ。)とあわせて表4に示す。
【0093】
(結果:試験例1(溶媒1と溶媒2の配合比との関係))
【表4】
【0094】
表4の結果より、ポリプロピレンの分解率は、溶媒中のn-ヘキサデカン(パラフィン系溶媒)の配合割合が増加するに伴って増加することが確認できた。
【0095】
以上より、パラフィン系溶媒であるn-ヘキサデカンを用いると、芳香族系溶媒である1-メチルナフタレンを用いた場合と比較してポリプロピレンの触媒分解能が向上し(90%以上となり)、また、石油化学原料となるC~C成分(特に、C~C成分)の収率が高く、50%を超えることが確認できた。
【0096】
[試験例2]
プラスチックの分解(2):
溶媒として、石油精製プラントから供給される石油留分であるLGO(Light Gas Oil:軽質軽油)を用いた場合、溶媒中の塩基性物質を脱塩基処理により除去、あるいは溶媒を水素化処理するとプラスチックの分解率を高めることができると考えられ、本試験ではそれを確認した。
【0097】
試験例2では、炭化水素溶媒として下記溶媒3、溶媒4及び溶媒5を用いた以外は、試験例1と同じ操作を用いて、プラスチック(ポリプロピレン)を分解した。なお、溶媒4と溶媒5は共通する溶媒の軽油であるLGO(Light Gas Oil:軽質軽油)(溶媒3として参考例として評価している。)に対して、溶媒4は脱塩基処理、溶媒5は水素化処理がそれぞれ施されたものである(溶媒3を用いたプラスチック(ポリプロピレン)の分解方法は参考例、溶媒4及び溶媒5を用いたプラスチック(ポリプロピレン)の分解方法は実施例となる。)。
【0098】
(試験例2で使用した炭化水素溶媒)
溶媒3:LGO(Light Gas Oil:軽質軽油)
溶媒4:溶媒3を脱塩基処理
溶媒5:溶媒3を水素化処理
【0099】
(脱塩基処理)
固体酸であるアモルファスシリカアルミナ(N632-L:日揮触媒化成株式会社製)をミリングして、粒径が250~500μmとなるように分級した。このアモルファスシリカアルミナを、対象となる溶媒(本試験では溶媒3であるLGO)に対して5質量%の割合となるように添加した。添加後、回転数を300rpmとして48時間撹拌して、塩基性物質を固体酸に吸着させた。吸着後、濾過して、脱塩基処理されたLGO(RBC(Removal of Basic Compounds)-LGO)を得た。
【0100】
(水素化処理)
以下の条件により、溶媒3のLGOを従来公知の水素化処理方法に準じて水素化処理(水素化脱硫処理)して、水素化処理されたLGO(HDS(Hydrodesulfurization)-LGO)を得た。
【0101】
(水素化処理の条件)
・触媒:コバルト-モリブデン(Co-Mo)系脱硫触媒
・水素圧力:4.9MPa
・温度:350℃
・液空間速度(LHSV):0.93/時間
(LHSV:Liquid Hourly Space Velocity)
・H/オイル比:260NL/L
【0102】
使用した溶媒であるLGOの性状を表5、LGO、RBC-LGO及びHDS-LGOの組成を表6、結果を表7(分解率)及び表8(収率)に示す。
【0103】
(LGOの性状)
【表5】
【0104】
(LGO、RBC-LGO及びHDS-LGOの組成)
【表6】
【0105】
(結果:試験例2(分解率))
【表7】
【0106】
(結果:試験例2(収率))
【表8】
【0107】
溶媒3(未処理のLGO)については、表7に示すように、ポリプロピレンの分解率は50.9%となり、溶媒1(n-ヘキサデカン)を溶媒とした場合に比べて大きく低下した。また、表8に示すように、石油化学原料となるC~C脂肪族の収率は-14.2%、C~C成分の合計は-36.4%であった。
【0108】
一方、溶媒として、溶媒3を脱塩基処理した溶媒4(RGO-LGO)を用いた場合、表7に示すように、ポリプロピレンの分解率は97.0%となり、溶媒3に対して大きく向上した。また、表8に示すように、石油化学原料となるC~C脂肪族の収率は73.8%、C~C成分の合計は73.5%であり、こちらも溶媒3に対して顕著に増加した。
【0109】
また、溶媒として、溶媒3を水素化処理(水素化脱硫処理)した溶媒5(HDS-LGO)を用いた場合、表7に示すように、ポリプロピレンの分解率は98.9%となり、溶媒3に対して大きく向上した。また、表8に示すように、石油化学原料となるC~C脂肪族の収率は52.6%、C~C成分の合計は62.4%であり、こちらも溶媒3に対して顕著に増加した。
【0110】
以上より、脱塩基処理を施した溶媒(溶媒4:RBC-LGO)を用いたプラスチックの分解方法及び水素化処理を施した溶媒(溶媒5:HDS-LGO)を用いたプラスチックの分解方法については、これらの処理を施さない溶媒(溶媒3:LGO)を用いた場合と比較してポリプロピレンの触媒分解能が向上し(90%以上となり)、また、石油化学原料となるC~C成分(特に、C~C成分)の収率が高く、50%を超えることが確認できた。
【0111】
[試験例3]
プラスチックの分解(3):
触媒として2.0gの触媒1に代えて0.5gの下記の触媒2~触媒4を用い、炭化水素溶媒として溶媒1を用いて、加熱する温度を400℃から380℃とした以外は、試験例1と同じ操作を用いて、プラスチック(ポリプロピレン)を分解した。
【0112】
なお、触媒3と溶媒4は、下記の方法(フッ化物法)で製造された触媒2について、下記の方法のアルカリ処理を施したものである。
【0113】
(試験例3で使用した触媒)
触媒2:下記方法(フッ化物法)で製造したBetaゼオライト触媒
(外表面積(SExternal):101m/g)、Si/Al:24.6)
触媒3:触媒2に下記アルカリ処理(1)でアルカリ処理を施したゼオライト触媒
(外表面積(SExternal):139m/g)、Si/Al:21.8)
触媒4:触媒2に下記アルカリ処理(2)でアルカリ処理を施したゼオライト触媒
(外表面積(SExternal):212m/g)、Si/Al:20.0)
【0114】
(フッ化物法によるBetaゼオライト触媒の製造)
PTFE製ビーカー(ビーカーA)に8.0gのフュームドシリカ(SiO)、13.86605gの水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH)、2.5169gのフッ化アンモニウム(NHF)を入れた。また、もう1つのPTFE製のビーカー(ビーカーB)に13.86605gの水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH)と0.2706gの水酸化アルミニウム(Al(OH))を入れ、室温で0.5時間(30分)撹拌した。
【0115】
撹拌したビーカーBの溶液をビーカー1に入れ、さらに撹拌した後(撹拌後の合成ゲル組成は下記のとおりである。)、40℃で3時間エイジングした。エイジング後、150℃で96時間水熱合成させ、濾過した後、60℃で一晩乾燥させた。乾燥して得られたアンモニウムイオン(NH )交換型Betaゼオライト触媒を550℃で10時間焼成させることにより、水素イオン(プロトンH)交換型Betaゼオライト触媒(触媒2)を得た。
【0116】
(合成ゲル組成)
SiO/Al/NHF/TEAOH/HO=1.00/0.0125/0.50/0.50/7.6(Si/Al=40)
【0117】
(アルカリ処理(1))
PTFE製ビーカーに60℃の0.03Mの水酸化ナトリウム水溶液400mlを入れ60℃に加熱し、この中にフッ化物法で合成した触媒2(Betaゼオライト触媒)4.0gを入れて浸漬させ、10分間400rpmで攪拌して混合物とした。
【0118】
この混合物を、洗浄液が中性になるまで蒸留水で洗いながら減圧濾過した後、回収した固体を70℃のオーブン中で一晩乾燥させた。さらにこのゼオライト粉末の全量を、80℃とした1.0Mの硝酸ナトリウム水溶液(120ml)に入れ、この温度で撹拌した状態で1時間保持してイオン交換を行った後に減圧濾過した。この操作を2回繰り返した後、70℃で一晩乾燥した。乾燥後の試料をマッフル炉で550℃まで5℃/分で昇温させ、550℃で10時間保持することにより、触媒2にアルカリ処理したBetaゼオライト触媒(触媒3)を得た。
【0119】
(アルカリ処理(2))
前記アルカリ処理(1)において、0.03Mの水酸化ナトリウム水溶液400mlの代わりに、0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液400mlを使用した以外は、アルカリ処理(1)と同様な方法を用いて、触媒2にアルカリ処理を施したBetaゼオライト触媒(触媒4)を得た。
【0120】
使用した触媒2~触媒4のBET比表面積(SBET)、外表面積(SExternal)、ミクロ孔容積(Vmicro)、メソ孔容積(Vmeso)を表9に、結果を表10(分解率)及び表11(収率)に示す。なお、触媒2~触媒4の平均粒径は、3~5μmであった。
【0121】
(BET比表面積等(触媒2~触媒4))
【表9】
【0122】
(結果:試験例3(分解率)
【表10】
【0123】
(結果:試験例3(収率))
【表11】
【0124】
表10に示すように、触媒2を用いた場合、ポリプロピレンの分解率及び溶媒の分解率は、それぞれ9.0%及び62.1%であった。また、表11に示すように、石油化学原料となるC~C脂肪族の収率は31.7%、C~C成分の合計は34.8%であった。
【0125】
ゼオライト触媒として酸密度が同程度(Si/Alが20程度)のものを用いることで、酸量ではなくアルカリ処理による外表面積の増大効果がポリプロピレンの分解に与える影響を確認することができると考えている。触媒2をアルカリ処理した触媒3を用いた場合、ポリプロピレンの分解率及び溶媒の分解率は、それぞれ13.6%及び80.5%であった。また、石油化学原料となるC~C脂肪族の収率は35.3%、C~C成分の合計は44.6%であった。
【0126】
また、触媒2をアルカリ処理した触媒4を用いた場合、ポリプロピレンの分解率及び溶媒の分解率は、それぞれ54.0%及び80.2%であった。また、石油化学原料となるC~C脂肪族の収率は49.1%、C~C成分の合計は59.5%であった。
【0127】
以上より、フッ化物法で製造したBetaゼオライト触媒をアルカリ処理すると、プラスチック(ポリプロピレン)の分解を向上させることができるとともに、石油化学原料となるC~C成分の収率も向上することが明らかになった。
【0128】
なお、図1は、外表面積と分解率の関係を示した図である。Betaゼオライト触媒の外表面積はアルカリ処理により増加し、図1より、外表面積の増大は溶媒よりもポリプロピレンの分解を効果的に促進しているように考えられる。ポリプロピレンやパラフィン系溶媒である溶媒1(n-ヘキサデカン)の分解率は、Betaゼオライト触媒の外表面積が大きくなるに従って増加し、特に、ポリプロピレンの分解率は、Betaゼオライト触媒の外表面積の増加に対応して大きくなることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン等を含む廃プラスチックを簡便に分解し、石油化学原料となるC~C成分を高収率で得ることができる方法を提供する手段として有利に利用することができ、産業上の利用可能性は高い。
図1