(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021499
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】液化ガス貯蔵タンクの運用方法及び液化ガス貯蔵タンク
(51)【国際特許分類】
F17C 9/00 20060101AFI20250206BHJP
F17C 3/04 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
F17C9/00 B
F17C3/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125222
(22)【出願日】2023-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲夫
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA06
3E172BB03
3E172BB12
3E172BB17
3E172BD05
3E172CA10
3E172DA14
3E172DA90
3E172EB02
3E172HA04
(57)【要約】
【課題】液化ガス貯蔵タンクのホットアップの際に粉体断熱材が圧密されるのを防止する。
【解決手段】液化ガスを貯留する内槽(4)と、保冷層(13)を介して内槽(4)を収容する外槽(3)と、外槽(3)の屋根(33)との間に隙間が生じる状態で保冷層(13)に充填された粉体断熱材(15)と、を備えた液化ガス貯蔵タンク(1)を運用する方法であって、内槽(3)から液化ガスを抜いて内槽(3)の温度を常温に近づけるホットアップを行うこと、及び、このホットアップの際に、保冷層(13)にガスを供給し、供給した当該ガスによって粉体断熱材(15)を流動化させる粉体流動化とを行うことを含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスを貯留する内槽と、保冷層を介して前記内槽を収容する外槽と、当該外槽の屋根との間に隙間が生じる状態で前記保冷層に充填された粉体断熱材と、を備えた液化ガス貯蔵タンクを運用する方法であって、
前記内槽から液化ガスを抜いて前記内槽の温度を常温に近づけるホットアップを行うこと、及び、
前記ホットアップの際に、前記保冷層にガスを供給し、供給した当該ガスによって前記粉体断熱材を流動化させる粉体流動化とを行うことを含む、液化ガス貯蔵タンクの運用方法。
【請求項2】
請求項1に記載の液化ガス貯蔵タンクの運用方法において、
前記粉体流動化では、前記保冷層に対し、周方向に離れた複数箇所から前記ガスを供給する、液化ガス貯蔵タンクの運用方法。
【請求項3】
請求項1に記載の液化ガス貯蔵タンクの運用方法において、
前記粉体流動化では、前記保冷層に対し、高さ方向に離れた複数箇所から前記ガスを供給する、液化ガス貯蔵タンクの運用方法。
【請求項4】
請求項3に記載の液化ガス貯蔵タンクの運用方法において、
前記粉体流動化では、前記ガスの供給箇所の高さが低いほど前記ガスの供給開始を遅くするように、前記供給箇所の高さによって前記ガスの供給開始タイミングを異ならせる、液化ガス貯蔵タンクの運用方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の液化ガス貯蔵タンクの運用方法において、
前記粉体流動化では、前記内槽から前記外槽の外部に吸い出したガスを前記保冷層に供給するとともに、供給した当該ガスを、前記内槽を貫通する連通部を介して前記保冷層から前記内槽に戻す、液化ガス貯蔵タンクの運用方法。
【請求項6】
液化ガスを貯留する内槽と、
保冷層を介して前記内槽を収容する外槽と、
前記外槽の屋根との間に隙間が生じる状態で前記保冷層に充填された粉体断熱材と、
前記粉体断熱材を流動化させるためのガスを前記保冷層に供給可能なガス供給装置とを備えた、液化ガス貯蔵タンク。
【請求項7】
請求項6に記載の液化ガス貯蔵タンクにおいて、
前記ガス供給装置は、前記保冷層の内部に、前記ガスの出口となる複数の噴孔を有する供給リングを含む、液化ガス貯蔵タンク。
【請求項8】
請求項7に記載の液化ガス貯蔵タンクにおいて、
前記ガス供給装置は、前記保冷層の内部の異なる高さに配設された複数の前記供給リングを含む、液化ガス貯蔵タンク。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の液化ガス貯蔵タンクにおいて、
前記内槽は、その内部と前記保冷層とを連通する連通部を含み、
前記ガス供給装置は、前記供給リングと、前記ガスを圧送するブロワーと、前記内槽の内部と前記ブロワーとを繋ぐ上流配管と、前記ブロワーと前記供給リングとを繋ぐ下流配管とを含む、液化ガス貯蔵タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、外槽と内槽との間の保冷層に粉体断熱材が充填された液化ガス貯蔵タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
上記液化ガス貯蔵タンクは、例えば下記特許文献1に記載のとおり、メンテナンス等のために開放される場合がある。具体的に、特許文献1では、液化ガス貯蔵タンク(低温タンク)を開放する前に、内槽内の残液を排出する工程と、この残液の排出後に、外部から供給される窒素ガス等の不活性ガスによって燃焼性ガス(ボイルオフガス)をタンクから排出する工程と、同様の不活性ガスを用いて内槽を昇温させる工程と、内槽の昇温後に当該内槽に外気を導入する工程とが行われる。これにより、作業員が入れる環境がタンク内につくり出され、タンクのメンテナンスが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、液化ガス貯蔵タンクを開放する場合には、事前に内槽を昇温させる処理が必要になる。以下では、このような処理のことをホットアップと称する。ホットアップが行われると、タンク運用中に液化ガスと同程度の温度にまで低下していた内槽の温度が常温付近まで上昇する。このことは、内槽の膨張を引き起こし、内槽と外槽との間の保冷層の容積を縮小させる。保冷層の容積が比較的大きく縮小するようなケースでは、保冷層に充填されている粉体断熱材が圧密されて、内槽を座屈させるような大きな圧力が内槽に加わるおそれがある。
【0005】
本開示は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、液化ガス貯蔵タンクのホットアップの際に粉体断熱材が圧密されるのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためのものとして、本開示の一局面に係る運用方法は、液化ガスを貯留する内槽と、保冷層を介して前記内槽を収容する外槽と、当該外槽の屋根との間に隙間が生じる状態で前記保冷層に充填された粉体断熱材と、を備えた液化ガス貯蔵タンクを運用する方法であって、前記内槽から液化ガスを抜いて前記内槽の温度を常温に近づけるホットアップを行うこと、及び、前記ホットアップの際に、前記保冷層にガスを供給し、供給した当該ガスによって前記粉体断熱材を流動化させる粉体流動化とを行うことを含むものである。
【0007】
また、本開示の他の局面に係る液化ガス貯蔵タンクは、液化ガスを貯留する内槽と、保冷層を介して前記内槽を収容する外槽と、前記外槽の屋根との間に隙間が生じる状態で前記保冷層に充填された粉体断熱材と、前記粉体断熱材を流動化させるためのガスを前記保冷層に供給可能なガス供給装置とを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、液化ガス貯蔵タンクのホットアップの際に粉体断熱材が圧密されるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態に係る液化ガス貯蔵タンクを概略的に示す断面図である。
【
図3】タンク本体をホットアップする手順(その1)を示す断面図である。
【
図4】タンク本体をホットアップする手順(その2)を示す断面図である。
【
図5】タンク本体をホットアップする手順(その3)を示す断面図である。
【
図6】タンク本体をホットアップする手順(その4)を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて、本開示の液化ガス貯蔵タンクの実施形態について詳細に説明する。本開示の液化ガス貯蔵タンクは、低温の液化ガスを貯蔵するタンクである。貯蔵される液化ガスは、例えば液化水素、液体ヘリウム、液体窒素、液化天然ガス、または液化石油ガスなどである。以下の実施形態では、液化ガス貯蔵タンクの一例として、収容される液化ガスが液化水素である、平底円筒型の二重殻タンクを例示する。もちろん、本開示は、平底円筒型以外の二重殻タンク、または三重殻等の多重殻タンクにも適用可能である。
【0011】
[液化ガス貯蔵タンクの構造]
図1は、本開示の一実施形態に係る液化ガス貯蔵タンク1を概略的に示す断面図である。本図に示すように、液化ガス貯蔵タンク1は、極低温の液化ガスである液化水素(LH2)を貯蔵するタンクであって、タンク基礎10上に立設された地上据え置き式のタンク本体2と、タンク本体2にガスを供給するガス供給装置5と、タンク本体2内のガスを置換するガス置換装置6を備える。
【0012】
タンク本体2は、平底円筒型の二重殻タンクであって、外槽3と、外槽3の内部に収容された内槽4とを備える。外槽3及び内槽4は、それぞれ上面視で円形状に形成され、かつ同心円状に配置されている。液化水素は、内槽4の内側に画成された貯留空間に貯蔵されている。
【0013】
外槽3は、炭素鋼等の金属で構成された密閉体であり、タンク基礎10の上面に敷設された円板状の外槽底板31と、外槽底板31の周縁から立設された円筒状の外槽側板32と、外槽側板32の上面開口を塞ぐ外槽屋根33とを含む。外槽屋根33は、上側に凸の球面を呈するドーム型の屋根である。
【0014】
内槽4は、オーステナイト系ステンレス鋼、ニッケル鋼、またはアルミニウム合金等の低温鋼により構成されており、外槽3の内部に収容されている。内槽4は、外槽底板31よりも径の小さい円板状の内槽底板41と、内槽底板41の周縁から立設された円筒状の内槽側板42と、内槽側板42の上面開口を塞ぐ内槽屋根43とを含む。内槽屋根43は、上側に凸の球面を呈するドーム型の屋根である。
【0015】
内槽4内の上層部は気相部SGとされる。気相部SGは、液化水素から蒸発した水素ガス(GH2)で満たされる空間であり、内槽屋根43と液化水素(LH2)の液面S1との間に形成されている。
【0016】
内槽底板41とタンク基礎10との間には、底部保冷層11が介設されている。底部保冷層11は、タンク基礎10から内槽底板41への入熱を抑制するための断熱性の層である。底部保冷層11は、例えば、泡ガラスや軽量気泡コンクリート等の個体断熱材の積層体により構成することができる。
【0017】
外槽3と内槽4との間には、保冷層13が形成されている。保冷層13は、内槽4と外槽3との間に形成された所定幅の隙間(空間)である。すなわち、保冷層13は、外槽側板32と内槽側板42との間の円筒リング状の側部保冷層13aと、外槽屋根33と内槽屋根43との間のドーム状の屋根部保冷層13bとを含む。保冷層13は、外気から内槽側板42及び内槽屋根43への入熱を抑制する機能を有する。
【0018】
保冷層13には、保冷性を高めるための粉体断熱材15が充填されている。粉体断熱材15は、パーライトやグラスバブルズ等の粒子物の集合体からなる、流動性をもった断熱材である。言い換えると、外槽3は、粉体断熱材15が充填される保冷層13を介して内槽4を収容している。
【0019】
粉体断熱材15は、外槽屋根33に接する屋根部保冷層13bの一部の領域を除いて、保冷層13の大部分を占めるように充填されている。すなわち、屋根部保冷層13bには、粉体断熱材15が存在しない非充填空間NSが形成されている。
図1の例において、非充填空間NSは、外槽屋根33の周縁部と粉体断熱材15の上面との間に画成されたリング状の空間である。言い換えると、粉体断熱材15は、外槽屋根33との間に隙間(非充填空間NS)が生じる状態で保冷層13に充填されている。
【0020】
非充填空間NSは、液化ガス貯蔵タンク1の施工時に自然に形成される。すなわち、液化ガス貯蔵タンク1の施工時は、外槽3及び内槽4が構築された後、外槽3に形成された図外のマンホール等から粉体断熱材15が保冷層13に充填される。このとき、外槽3及び内槽4は常温であるから、その後に内槽4内に液化水素が導入されて内槽4が冷却されると、当該冷却に伴って内槽4が収縮する。この内槽4の収縮は、保冷層13の容積を拡大させる。このため、内槽4が収縮する前に粉体断熱材15が保冷層13を略隙間なく埋めていたとしても、保冷層13の一部には自ずと非充填空間NSが形成される。なお、粉体断熱材15は重力によって下に集まるから、非充填空間NSが形成されるのは、保冷層13の上端部、つまり外槽屋根33に接する屋根部保冷層13bの一部の領域に限定される。このように、液化ガス貯蔵タンク1は、その構造ないし施工上の理由から、屋根部保冷層13bに必ず非充填空間NS(隙間)を有する。
【0021】
保冷層13にはシールガスが充填されている。具体的に、保冷層13には、シールガスとして、内槽4内の液体(液化水素)に対応するガス、つまり水素ガスが充填される。本実施形態において、シールガスは、内槽4の気相部SGから供給される水素ガスである。すなわち、気相部SGから後述する連通管45を通じて保冷層13に導入された水素ガスが、当該保冷層13のシールガスとして利用される。
【0022】
内槽側板42を囲む側部保冷層13aの内周部には、樹脂系断熱材17が配置されている。樹脂系断熱材17は、タンク本体2の径方向に所定の厚みを有する綿状の断熱材である。樹脂系断熱材17としては、例えばグラスウールやロックウールが好適である。樹脂系断熱材17は、内槽側板42に接触するとともに、側部保冷層13aの径方向内側の一部に限定して配置されている。側部保冷層13aにおける樹脂系断熱材17の外側領域は、粉体断熱材15によって占められている。
【0023】
内槽屋根43には、内槽4の内部と保冷層13とを連通する連通管45(連通部)が設けられている。連通管45は、上下方向の軸長が比較的短い円管であり、ドーム状の内槽屋根43の頂部を貫通するように設けられている。連通管45の上端には、通気性のフィルタ46が取り付けられている。フィルタ46は、水素ガス等のガスの流通を許容しつつ粉体断熱材15の流通を阻止することが可能な材質により構成されている。このような連通管45は、保冷層13の圧力と内槽4の気相部SGの圧力とをバランスさせる役割を果たす。
【0024】
ガス供給装置5は、保冷層13にガスを供給することで粉体断熱材15を流動化させる装置である。ガス供給装置5は、メンテナンス等のためにタンク本体2をホットアップする際に使用される。ホットアップとは、内槽4から液化水素を抜いて内槽4の温度を常温に近づける処理のことである。なお、ホットアップの詳細については後述する。
【0025】
ガス供給装置5は、液化水素の気化により生じた水素ガスつまりボイルオフガスをタンク本体2の内外で循環させつつ保冷層13に供給することにより、粉体断熱材15を流動化させる。具体的に、ガス供給装置5は、タンク本体2の外部に設けられたブロワー51と、側部保冷層13aに上下多段に配置された複数の供給リング52と、内槽4の内部とブロワー51とを繋ぐ上流配管53と、ブロワー51と各供給リング52とを繋ぐ下流配管54とを備える。
【0026】
図2は、供給リング52の構造を示す概略平面図である。
図1及び
図2に示すように、供給リング52は、側部保冷層13aの最外周部に配置されたリング状の配管である。すなわち、供給リング52は、外槽側板32の内面に近接する位置において当該内面に沿って延びるように形成されている。供給リング52には、水素ガスの出口となる多数の噴孔h1が形成されている。噴孔h1は、供給リング52の内外周に沿う矢印A1で示す方向、換言すればタンク本体2の周方向に所定の間隔を空けつつ並ぶように配置されている。言い換えると、噴孔h1は、側部保冷層13aにおける周方向に離れた複数箇所に水素ガスが噴出されるように、供給リング52の周面各所に分散配置されている。また、噴孔h1は、供給リング52を断面視した場合の円の周方向、つまり矢印A1と直交する方向にも分散配置されている。噴孔h1を通じて供給リング52の内部に粉体断熱材15が入り込まないように、各噴孔h1は、グラスウール等からなる通気性のフィルタによって覆われている。
【0027】
図1に示すように、本実施形態では、複数の供給リング52として、第1~第5供給リング52A~52Eからなる5つの供給リングが用意されている。第1~第5供給リング52A~52Eは、上下方向に等間隔に並ぶ状態で側部保冷層13aに配置されている。具体的に、第1供給リング52A、第2供給リング52B、‥‥第5供給リング52Eは、この順に高さが低くなるように配置されている。言い換えると、第1~第5供給リング52A~52Eは、第1供給リング52Aの高さが最も高く、かつ第5供給リング52Eの高さが最も低くなるように、側部保冷層13a内の異なる高さにそれぞれ分散して配置されている。なお、以下の説明において、第1~第5供給リング52A~52Eを区別せずに指す場合には、単に供給リング52という。
【0028】
上流配管53は、内槽屋根43及び外槽屋根33を貫通する配管である。すなわち、上流配管53は、内槽4の内部から内槽屋根43及び外槽屋根33を貫通しつつ外槽3の外部に導出され、外槽3の外部においてブロワー51に接続されている。
【0029】
上流配管53には、上流バルブ55が設けられている。上流バルブ55は、上流配管53を開閉するためのバルブであり、タンク本体2の外部に配置されている。液化水素がタンク本体2に貯蔵される通常運用時、上流バルブ55は閉状態に維持される。
【0030】
下流配管54は、ブロワー51から下流側に延びる本管54aと、本管54aから分岐して各供給リング52に至る複数の枝管54bとを含む。各枝管54bは、それぞれ外槽側板32を貫通して本管54aと各供給リング52とを接続している。なお、本実施形態では5つの供給リング52(第1~第5供給リング52A~52E)が用意されているから、これに対応して5本の枝管54bが用意されている。
【0031】
各枝管54bには、それぞれ下流バルブ56が設けられている。すなわち、本実施形態では、5つの供給リング52につながる各枝管54bを開閉するために、供給リング52と同数(5つ)の下流バルブ56が用意されている。言い換えると、複数の下流バルブ56は、第1供給リング52A用の枝管54bを開閉する第1下流バルブ56Aと、第2供給リング52B用の枝管54bを開閉する第2下流バルブ56Bと、第3供給リング52C用の枝管54bを開閉する第3下流バルブ56Cと、第4供給リング52D用の枝管54bを開閉する第4下流バルブ56Dと、第5供給リング52E用の枝管54bを開閉する第5下流バルブ56Eとを有する。なお、以下の説明において、第1~第5下流バルブ56A~56Eを区別せずに指す場合には、単に下流バルブ56という。
【0032】
ブロワー51は、水素ガスを圧送する装置であり、タンク本体2の内外で水素ガスを循環させる圧力源として機能する。後述する
図4に示すように、ブロワー51は、内槽4内の水素ガスを上流配管53を介して外槽3の外部に吸い上げるとともに、吸い上げた水素ガスを下流配管54を介して各供給リング52(第1~第5供給リング52A~52E)へと圧送する。各供給リング52は、その噴孔h1から側部保冷層13aに水素ガスを噴出させる。噴出された水素ガスは、側部保冷層13aから屋根部保冷層13bへと移動し、さらに連通管45を通って屋根部保冷層13bから内槽4の内部へと移動する。内槽4内の水素ガスは、ブロワー51によって再び外槽3の外部に吸い出される。このように、ブロワー51は、内槽4の内部から外槽3の外部に出て再び内槽4へと戻る水素ガスの循環流を生成する。
【0033】
上記のような水素ガスの循環流は、保冷層13にある粉体断熱材15を流動化させる。すなわち、循環流の生成中、各供給リング52における多数の噴孔h1から保冷層13に対し水素ガスが噴出されることにより、当該保冷層13内の粉体断熱材15が浮遊懸濁化し、液体のような流動性を有する状態に変化する。
【0034】
ガス置換装置6は、タンク本体2のメンテナンス時にタンク本体2内のガスを安全なガスに置換するための装置である。ガス置換装置6は、タンク本体2の外部に配置された置換ガスの供給源61と、供給源61と内槽4の内部とを連通する導入配管62と、屋根部保冷層13bから外槽3の外部に導出された導出配管63と、導入配管62に設けられた開閉可能な第1バルブ64と、導出配管63に設けられた開閉可能な第2バルブ65とを備える。液化水素がタンク本体2に貯蔵される通常運用時、第1バルブ64及び第2バルブ65は閉状態に維持される。
【0035】
供給源61から供給される置換ガスは、不活性ガスであればその種類を問わないが、本実施形態では窒素ガスが用いられる。供給源61から供給された窒素ガスは、導入配管62を通じて内槽4の内部に導入される。導入された窒素ガスは、内槽4内に残っている水素ガス(ボイルオフガス)を、連通管45を通じて保冷層13に追いやり、さらに導出配管63を通じて外槽3の外部に排出する。これにより、内槽4内のガスが水素ガスから窒素ガスに置換される。
【0036】
タンク本体2には、当該タンク本体2から液化水素を払い出すための払い出し配管71が接続されている。払い出し配管71は、内槽4の底部付近から外槽3の外部に導出されている。払い出し配管71には、開閉可能な第3バルブ72が設けられている。第3バルブ72は、タンク本体2の通常運用中、閉状態に維持される。
【0037】
[ホットアップの手順]
次に、タンク本体2をホットアップする手順について説明する。ホットアップは、メンテナンス等のために内槽4から液化水素を抜いて内槽4を常温化する処理のことであり、次のような手順で行われる。
【0038】
まず、
図3に示すように、タンク本体2から液化水素(LH2)を払い出す。すなわち、第3バルブ72を開くことにより、内槽4内にある液化水素を払い出し配管71を通じてタンク本体2の外部に払い出す。これにより、内槽4から液化水素がなくなり、内槽4の内部はボイルオフガス、つまり液化水素の気化によって生じた水素ガス(GH2)で占められるようになる。
【0039】
次に、
図4に示すように、ガス供給装置5を用いて、タンク本体2の内外で水素ガス(GH2)を循環させる。すなわち、上流バルブ55を開くとともに、第1~第5下流バルブ56A~56Eの少なくとも1つを開き、その状態でブロワー51を作動させる。これにより、内槽4から上流配管53を通じて外槽3の外部に水素ガスが吸い上げられるとともに、吸い上げられた水素ガスが下流配管54及び供給リング52を通じて保冷層13に導入される。保冷層13に導入された水素ガスは、連通管45を通じて内槽4の内部に戻される。このようにして、内槽4の内部から外槽3の外部に出て再び内槽4へと戻る水素ガスの循環流が生成される。
【0040】
水素ガスを循環させる上述した動作は、保冷層13に充填されている粉体断熱材15を流動化させる。すなわち、下流配管54から供給リング52に導入された水素ガスが、供給リング52の多数の噴孔h1から保冷層13の噴出されることにより、粉体断熱材15が流動化(浮遊懸濁化)する。詳細は後述するが、このような粉体断熱材15の流動化は、ホットアップに伴う内槽4の膨張から引き起こされ得る粉体断熱材15の圧密を防止する役割を果たす。
【0041】
ここで、本実施形態では、粉体断熱材15が上から順に流動化するように、高さの異なる複数(5つ)の供給リング52から順次水素ガスの噴出を開始する。すなわち、側部保冷層13aの高い位置から低い位置へと順に水素ガスの供給が開始されるように、第1下流バルブ56A、第2下流バルブ56B、‥‥第5下流バルブ56Eをこの順に開弁させる。このとき、開いているバルブの数が時間経過とともに増えるように、2番目以降のバルブの開弁時は、その前に既に開弁されているバルブを引き続き開状態に維持する。これにより、第1供給リング56A、第2供給リング56B、‥‥第5供給リング52Eから、この順に水素ガスの噴出が開始されて、最終的には
図5に示すように、全ての供給リング56A~56Eから水素ガスが噴出されるようになる。このように、高い位置にある供給リング52ほど早めに水素ガスの噴出を開始させることにより、粉体断熱材15が上から順に流動化され、最終的には粉体断熱材15が全体的に流動化される。
【0042】
また、上述したガス供給装置5による水素ガスの循環は、水素ガスの温度を徐々に上昇させる。すなわち、水素ガスの循環の過程で、水素ガスはブロワー51により繰り返し圧縮される。また、水素ガスは、タンク本体2の外部にある配管、つまり上流配管53の下流側の一部と下流配管54とをそれぞれ通る際に、外気からの入熱を受ける。このようなブロワー51による圧縮と外気からの入熱とによって、水素ガスの温度は徐々に上昇する。水素ガスの温度が上昇することで、内槽4の温度が上昇し、タンク本体2のホットアップが達成させる。
【0043】
以上のように、ガス供給装置5による水素ガスの循環は、粉体断熱材15を流動化させつつ内槽4を昇温させる作用をもたらす。水素ガスの循環は、内槽4の温度が十分に上昇して常温に近づくまで継続され、常温に近づいた時点で停止される。例えば、循環する水素ガスの温度を検出する温度センサがガス供給装置5に設けられている場合、この温度センサにより検出された水素ガスの温度が常温に近い所定の閾値まで上昇した時点で、水素ガスの循環を停止することが考えられる。なお、水素ガスの循環を停止するには、ブロワー51の作動を停止させるとともに、上流バルブ55並びに第1~第5下流バルブ56A~56Eをいずれも閉弁させる。
【0044】
水素ガスの循環が停止されると、次に
図6に示すように、ガス置換装置6を用いてタンク本体2内のガスを水素ガス(GH2)から窒素ガス(GN2)に置換する。すなわち、第1バルブ64及び第2バルブ65をそれぞれ開いた状態で、供給源61から導入配管62を通じて内槽4に窒素ガスを供給する。供給された窒素ガスは、内槽4に存在していた水素ガスを内槽4から連通管45を通じて保冷層13へと押し出す。また、保冷層13内の水素ガスは、窒素ガスによって導出配管63へと押し出され、当該導出配管63を通じてタンク本体2の外部に排出される。これにより、内槽4及び保冷層13内のガスが水素ガスから窒素ガスに置換される。
【0045】
以上のようにしてタンク本体2内のガスが窒素ガスに置換されることで、タンク本体2を開放してメンテナンスを行うことが可能になる。例えば、外槽3に設けられたマンホールを開き、当該マンホールを通じてタンク本体2の内部に空気を導入する。これにより、タンク本体2の内部に作業員が立ち入れるようになり、タンク本体2のメンテナンスが可能になる。
【0046】
[作用効果]
以上説明したとおり、本実施形態では、タンク本体2のホットアップの際に、ガス供給装置5を用いて保冷層13に水素ガスが供給されることにより、保冷層13内の粉体断熱材15が流動化される。このような構成によれば、ホットアップの際に粉体断熱材15が圧密されるのを防止できるという利点がある。
【0047】
液化水素がタンク本体2に貯蔵される通常運用時、液化水素に触れている内槽4は、液化水素の温度に近い極低温の状態にある。この状態からホットアップが行われると、内槽4の温度は常温に近い温度まで大幅に上昇し、これによって内槽4が膨張する。一方、外気に触れている外槽3は、ホットアップの前後のいずれにおいても常温に近い状態にある。このため、ホットアップにより内槽が膨張すると、その分だけ外槽3と内槽4との間の保冷層13の容積が縮小し、当該保冷層13にある粉体断熱材15が圧密されるおそれがある。これに対し、本実施形態では、ホットアップの際に保冷層13に水素ガスが供給されて粉体断熱材15が流動化されるので、内槽4の膨張により保冷層13の容積が縮小しても、当該保冷層13内の圧力が高いところから低いところへと粉体断熱材15を逃がすことができ、粉体断熱材15が圧密されるのを防止することができる。また、粉体断熱材15の圧密が防止されることで、当該圧密に伴う大きな応力が内槽4に加わるのを防止でき、例えば当該応力が内槽4を座屈させる等の事態を防止することができる。
【0048】
また、本実施形態では、側部保冷層13aに樹脂系断熱材17が配置されるので、この樹脂系断熱材17による緩衝効果が粉体断熱材15の圧力を緩和する結果、粉体断熱材15の圧密をより高い確率で防止することができる。
【0049】
また、本実施形態では、保冷層13(側部保冷層13a)内で上下多段に配置された複数の供給リング52がガス供給装置5に備えられ、かつ水素を噴出するための多数の噴孔h1が各供給リング52に形成されている。このような構成によれば、高さ方向及び周方向に離れた多数の箇所から保冷層13に水素ガスを供給することができ、当該保冷層13内の粉体断熱材15を適切に流動化させることができる。
【0050】
特に、本実施形態では、各供給リング52につながる枝管54bにそれぞれ下流バルブ56が設けられるとともに、高い位置にある供給リング52から順に水素ガスの噴出が開始されるように各下流バルブ56が制御される。このような構成によれば、保冷層13内の粉体断熱材15を上から順に流動化させることにより、広い範囲の粉体断熱材15を均一に流動化させることができる。
【0051】
保冷層13の下部にある粉体断熱材15は、保冷層13の上部にある粉体断熱材15に比べて、自重による圧力が大きい。このため、粉体断熱材15は、保冷層13の上部よりも下部において流動化し難い。一方、保冷層13の上部にある粉体断熱材15は、自重による圧力が小さい上に、外槽屋根33の近傍に形成される粉体断熱材15の非充填空間NSに近いから、相対的に流動化が容易である。このような状況において、高さの異なる複数の供給リング52から水素ガスを同時に噴出し始めた場合には、保冷層13の上部でのみ粉体断熱材15が流動化して、保冷層13の下部では粉体断熱材15が流動化しないおそれがある。例えば、保冷層13の下部では、粉体断熱材15内に蟻の巣のようなガスの通り道ができるチャネリングと呼ばれる現象が起きるおそれがある。チャネリングが起きると、ガスの通り道が固定化するので、粉体断熱材15を流動化させることができなくなる。
【0052】
これに対し、本実施形態では、高い位置にある供給リング52から順に水素ガスの噴出が開始されるので、流動化が起き易い保冷層13の上部から順に粉体断熱材15を流動化させることができる。保冷層13の上部において粉体断熱材15が流動化すれば、この流動化領域の下側に隣接する粉体断熱材15も流動化し易くなる。したがって、本実施形態のように粉体断熱材15を上から順に流動化させるようにすれば、上述したチャネリングのような現象が起きるのを防止しつつ、粉体断熱材15の流動化範囲を徐々に広げて最終的に粉体断熱材15の大部分を均一に流動化させることができる。
【0053】
また、本実施形態では、保冷層13に水素ガスを供給するガス供給装置5として、保冷層13に配置された上記供給リング52と、タンク本体2の外部に配置されたブロワー51と、ブロワー51と内槽4の内部とを繋ぐ上流配管53と、ブロワー51と供給リング52とを繋ぐ下流配管54と、を含む装置が用いられる。このような構成によれば、内槽4から外槽3の外部に吸い出した水素ガスを保冷層13に供給するとともに、供給した当該水素ガスを、内槽4を貫通する連通管45を介して保冷層13から内槽4に戻すことができる。このように、内槽4の内部から外槽3の外部に出て再び内槽4へと戻る水素ガスの循環流を生成した場合には、粉体断熱材15を流動化させるためのガスをタンク本体2の外部から別途供給することが不要になる。また、水素ガスを循環させる過程で当該水素ガスの温度が上昇するので、粉体断熱材15の流動化とタンク本体2のホットアップとを並行して進めることができる。
【0054】
[変形例]
以上、本開示の好ましい実施形態について説明したが、本開示は上述した実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0055】
例えば、ガス供給装置5における上流配管53又は下流配管54に、水素ガスを加温するヒーターを追加してもよい。ヒーターを追加すれば、タンク本体2の内外を循環する水素ガスの昇温速度を速めることができ、タンク本体2のホットアップに要する期間を短縮することができる。
【0056】
上記実施形態では、タンク本体2の内外を循環する水素ガスの循環流を生成することにより、粉体断熱材15を流動化させつつ内槽4を昇温(ホットアップ)させたが、流動化及びホットアップのために使用するガスは、水素ガスに限られない。例えば、内槽4の内部温度が窒素の沸点(約-196℃)以上になった状況では、窒素ガスを用いて流動化及びホットアップを行ってもよい。
【0057】
保冷層13(側部保冷層13a)に配置される樹脂系断熱材17は省略してもよい。ガス供給によって粉体断熱材15を十分に流動化させることができる場合には、樹脂系断熱材17がなくても粉体断熱材15の圧密を防止することができる。
【0058】
上記実施形態では、外槽3及び内槽4を有する二重殻の液化ガス貯蔵タンク1に本開示を適用した例について説明したが、本開示は、外槽の外側にもう一槽追加された液化ガス貯蔵タンク、つまり内槽と、内槽を収容する外槽と、外槽を収容する最外槽と、を備えた三重殻タンクにも適用可能である。このような三重殻タンクにおいても、内槽と外槽との間の保冷層内の粉体断熱材がホットアップ時に圧密されるのを防止する目的で、本開示を適用することが可能である。
【0059】
[まとめ]
上記実施形態及びその変形例には、以下の開示が含まれる。
【0060】
本開示の第1の態様に係る運用方法は、液化ガスを貯留する内槽と、保冷層を介して前記内槽を収容する外槽と、当該外槽の屋根との間に隙間が生じる状態で前記保冷層に充填された粉体断熱材と、を備えた液化ガス貯蔵タンクを運用する方法であって、前記内槽から液化ガスを抜いて前記内槽の温度を常温に近づけるホットアップを行うこと、及び、前記ホットアップの際に、前記保冷層にガスを供給し、供給した当該ガスによって前記粉体断熱材を流動化させる粉体流動化とを行うことを含む。
【0061】
この第1の態様によれば、タンクのホットアップの際に保冷層にガスが供給されて粉体断熱材が流動化されるので、ホットアップに伴う内槽の膨張により保冷層の容積が縮小しても、当該保冷層内の圧力が高いところから低いところへと粉体断熱材を逃がすことができ、粉体断熱材が圧密されるのを防止することができる。また、粉体断熱材の圧密が防止されることで、当該圧密に伴う大きな応力が内槽に加わるのを防止でき、例えば当該応力が内槽を座屈させる等の事態を防止することができる。
【0062】
第2の態様に係る運用方法は、前記第1の態様において、前記粉体流動化では、前記保冷層に対し、周方向に離れた複数箇所から前記ガスを供給する。
【0063】
この第2の態様によれば、周方向の複数箇所から供給されるガスを利用して粉体断熱材を適切に流動化させることができる。
【0064】
第3の態様に係る運用方法は、前記第1又は第2の態様において、前記粉体流動化では、前記保冷層に対し、高さ方向に離れた複数箇所から前記ガスを供給する。
【0065】
この第3の態様によれば、高さ方向の複数箇所から供給されるガスを利用して粉体断熱材を適切に流動化させることができる。
【0066】
第4の態様に係る運用方法は、前記第3の態様において、前記粉体流動化では、前記ガスの供給箇所の高さが低いほど前記ガスの供給開始を遅くするように、前記供給箇所の高さによって前記ガスの供給開始タイミングを異ならせる。
【0067】
保冷層の上部にある粉体断熱材は、保冷層の下部にある粉体断熱材に比べて流動化が起き易い。また、保冷層の上部において粉体断熱材が流動化すれば、この流動化領域の下側に隣接する粉体断熱材も流動化し易くなる。したがって、第4の態様のように、粉体断熱材を上から順に流動化させるようにした場合には、粉体断熱材の流動化範囲を徐々に広げて最終的に粉体断熱材の大部分を均一に流動化させることができる。
【0068】
第5の態様に係る運用方法は、前記第1~第4の態様において、前記粉体流動化では、前記内槽から前記外槽の外部に吸い出したガスを前記保冷層に供給するとともに、供給した当該ガスを、前記内槽を貫通する連通部を介して前記保冷層から前記内槽に戻す。
【0069】
この第5の態様のように、内槽の内部から外槽の外部に出て再び内槽へと戻るガスの循環流を生成した場合には、粉体断熱材を流動化させるためのガスをタンクの外部から別途供給することが不要になる。また、ガスを循環させる過程で当該ガスの温度が上昇するので、粉体断熱材の流動化とタンクのホットアップとを並行して進めることができる。
【0070】
本開示の第6の態様に係る液化ガス貯蔵タンクは、液化ガスを貯留する内槽と、保冷層を介して前記内槽を収容する外槽と、前記外槽の屋根との間に隙間が生じる状態で前記保冷層に充填された粉体断熱材と、前記粉体断熱材を流動化させるためのガスを前記保冷層に供給可能なガス供給装置とを備える。
【0071】
この第6の態様によれば、タンクのホットアップの際にガス供給装置を用いて保冷層内の粉体断熱材を流動化させることができ、ホットアップに伴う内槽の膨張がもたらし得る粉体断熱材の圧密を防止することができる。
【0072】
第7の態様に係る液化ガス貯蔵タンクは、前記第6の態様において、前記ガス供給装置は、前記保冷層の内部に、前記ガスの出口となる複数の噴孔を有する供給リングを含む。
【0073】
この第7の態様によれば、保冷層内に配置された供給リングにおける複数の噴孔から噴出されるガスによって粉体断熱材を適切に流動化させることができる。
【0074】
第8の態様に係る液化ガス貯蔵タンクは、前記第7の態様において、前記ガス供給装置は、前記保冷層の内部の異なる高さに配設された複数の前記供給リングを含む。
【0075】
この第8の態様によれば、例えば高い位置ある供給リングから順にガスの噴出を開始することにより、粉体断熱材を上から順に流動化させて、最終的に粉体断熱材の大部分を均一に流動化させることができる。
【0076】
第9の態様に係る液化ガス貯蔵タンクは、前記第7又は第8の態様において、前記内槽は、その内部と前記保冷層とを連通する連通部を含み、前記ガス供給装置は、前記供給リングと、ガスを圧送するブロワーと、前記内槽の内部と前記ブロワーとを繋ぐ上流配管と、前記ブロワーと前記供給リングとを繋ぐ下流配管とを含む。
【0077】
この第9の態様によれば、ブロワーを作動させることにより、内槽から外槽の外部にガスを吸い出して保冷層に供給するとともに、供給した当該ガスを、内槽を貫通する連通部を介して保冷層から内槽に戻すことができる。すなわち、内槽の内部から外槽の外部に出て再び内槽へと戻るガスの循環流を生成することができる。
【符号の説明】
【0078】
1 液化ガス貯蔵タンク
3 外槽
4 内槽
5 ガス供給装置
13 保冷層
15 粉体断熱材
45 連通管(連通部)
51 ブロワー(圧力源)
52 供給リング
53 上流配管
54 下流配管
h1 噴孔