(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002150
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】リポソームビタミンC入りゼリーの製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/127 20250101AFI20241226BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20241226BHJP
A61K 31/375 20060101ALI20241226BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20241226BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20241226BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20241226BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20241226BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20241226BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20241226BHJP
A23L 33/15 20160101ALI20241226BHJP
A23L 21/10 20160101ALI20241226BHJP
【FI】
A61K9/127
A61P3/02 107
A61K31/375
A61K47/26
A61K47/22
A61K47/44
A61K47/36
A61K47/42
A61K47/46
A23L33/15
A23L21/10
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102106
(22)【出願日】2023-06-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】523018782
【氏名又は名称】株式会社ミラーリッチ
(74)【代理人】
【識別番号】100177231
【弁理士】
【氏名又は名称】鴨志田 伸一
(72)【発明者】
【氏名】田上 悠女
【テーマコード(参考)】
4B018
4B041
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB08
4B018LB10
4B018LE06
4B018MD09
4B018MD18
4B018MD20
4B018MD25
4B018MD32
4B018MD42
4B018MD45
4B018MD52
4B018MD94
4B018ME14
4B018MF02
4B018MF04
4B018MF05
4B041LC10
4B041LD02
4B041LK07
4B041LK09
4B041LK12
4B041LK16
4B041LK19
4B041LK30
4B041LK50
4B041LP01
4B041LP22
4B041LP23
4C076AA09
4C076AA19
4C076BB01
4C076CC24
4C076DD38T
4C076DD61T
4C076DD69T
4C076EE37
4C076EE43
4C076EE57
4C076EE58
4C076FF52
4C076FF68
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA18
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA24
4C086MA28
4C086MA52
4C086NA09
4C086NA10
4C086ZC28
(57)【要約】
【課題】本発明は、極めて強い苦味を感じさせ難いリポソームビタミンC入りゼリーの製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】本発明のリポソームビタミンC入りゼリーの製造方法S100は、容器110内に水及びリポソームビタミンCを入れ、水を撹拌させて、第1液体を準備する準備工程S10と、第1液体に、少なくともゲル化剤及び甘味剤を含む粉体を入れ、容器110を75℃以上95℃未満の温度に加熱しながら第1液体を撹拌させて、第1液体を第2液体にする粉体撹拌工程S20と、容器110内の第2液体に、果汁及びリポソームビタミンCに対する重量比で1%以上2%未満の量の精油を入れ、容器110を75℃以上95℃未満の温度に維持しながら第2液体を撹拌させて、第2液体を第3液体にする果汁撹拌工程S40と、第3液体を常温となるように冷却してゼリーにするゲル化工程S70と、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温の容器内に常温の水を入れ、前記容器内に前記水に対する重量比で30%以上100%未満の量のリポソームビタミンCを入れ、前記水を撹拌羽根で撹拌させて、第1液体を準備する準備工程と、
前記準備工程の終了後に、前記容器内の前記第1液体に、少なくともゲル化剤及び甘味剤を含む粉体を入れ、前記容器を75℃以上95℃未満の温度に加熱しながら前記第1液体を前記撹拌羽根で撹拌させて、前記第1液体を第2液体にする粉体撹拌工程と、
前記粉体撹拌工程の終了後に、前記容器内の前記第2液体に、前記水に対する重量比で5%以上15%未満の量の果汁及び当該果汁の元となる果物の精油であって前記リポソームビタミンCに対する重量比で1%以上2%未満の量の精油を入れ、前記容器を75℃以上95℃未満の温度に維持しながら前記第2液体を前記撹拌羽根で撹拌させて、前記第2液体を第3液体にする果汁撹拌工程と、
前記果汁撹拌工程の終了後に、前記第3液体を常温となるように冷却して前記第3液体をゲル化させてゼリーにするゲル化工程と、
を含む、
リポソームビタミンC入りゼリーの製造方法。
【請求項2】
前記準備工程における、前記水を撹拌羽根で撹拌させる期間に、前記水に消泡剤を添加する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記甘味剤の量は、前記水に対する重量比で5%以上15%未満の量であり、
前記甘味料は、エリスリトール、アセスルファムカリウム及びステビアを含む、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記粉体は、更に、メロンプラセンタ粉末、パイナップル抽出物、コラーゲンパウダー及びヒアルロン酸を含み、
前記メロンプラセンタ粉末、前記パイナップル抽出物、前記コラーゲンパウダー及び前記ヒアルロン酸の量は、前記リポソームビタミンCに対する重量比で0.5%以上1%未満の量である、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記粉体撹拌工程の終了後かつ前記果汁撹拌工程の開始前に行われ、前記容器内に前記水に対する重量比で5%以上10%未満の量の液体であってクエン酸を含む水を入れて、前記撹拌羽根で前記第2液体を撹拌させる工程、
を含む、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記粉体撹拌工程は、30分以上60分未満の時間内で、前記撹拌羽根を毎分15回転以上25回転未満の回転速度で回転させながら行う、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記果汁撹拌工程は、前記粉体撹拌工程の終了後に前記容器を75℃以上95℃未満の温度に維持して10分経過以降に開始する、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記果汁撹拌工程では、前記第2液体に前記果汁及び前記精油を入れることで、前記第3液体における、水素イオン濃度を4.0以上4.5以下かつ糖度を27.0以上40.0以下にする、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記リポソームビタミンCは、単層型リポソームの内部にビタミンCが配置されている単層型リボソームビタミンCと、多層型リポソームの内部にビタミンCが配置されている多層型リボソームビタミンCとを含む、
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リポソームビタミンC入りゼリーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビタミンCが美容や健康にとって有効であること、具体的には体内の活性酸素を消去する抗酸化作用を持つ栄養素であることは、すでに従来から知られている。ビタミンCは、水に溶け易い性質を有するため、人体に取り入れられると容易に血液に溶けて血液とともに全身に運ばれる。そして、血液とともに全身に運ばれたビタミンCのうち各部位で吸収されなかったビタミンCは、体内でその効能を発揮することなく尿として人体から排出されてしまう。
【0003】
このような背景のもと、体内に取り入れられたビタミンCをより長期に体内に留めておくために、ビタミンCをリポソーム化することが開発されている(例えば、特許文献1を参照)。ここで、リポソーム化したビタミンCをリポソームビタミンCと呼ぶことにする。リポソームビタミンCとは、人工的に作られた脂溶性のカプセルの空洞部分にビタミンCを閉じ込めたものである。つまり、水溶性を有するビタミンCを脂溶性の壁(リン脂質の層)で覆った粒状体である。リポソームビタミンCは、ビタミンC単体に比べて血液に溶ける速度が遅いため、ビタミンC単体に比べて血液中に長期に留めることができる利点がある。つまり、リポソームビタミンCを体内に取り入れることは、ビタミンC単体を体内に取り入れることに比べて、体内に長期的にビタミンCを留める点で有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のとおり、リポソームビタミンCを体内に取り入れること、一例として口から体内に取り入れること(飲食すること)は人体にとって大きな利点があるが、多くの人間が液体又は粉体のリポソーム化したビタミンCを口から取り入れる(飲食する)際に、極めて不自然な味、具体的に極めて強い苦味を感じるという課題がある。これは、リポソームビタミンCは、前述のとおり、ビタミンCを覆う壁がリン脂質で形成されていることによる。
このような背景を鑑みて、本願の発明者は、上記課題を解決又は改善したリポソームビタミンC入りゼリーの製造試験を行い、その開発に成功した。
【0006】
本発明は、上記課題を解決又は改善したリポソームビタミンC入りゼリーの製造方法の提供、具体的には、極めて強い苦味を感じさせ難いリポソームビタミンC入りゼリーの製造方法の提供を目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様のリポソームビタミンC入りゼリーの製造方法は、
常温の容器内に常温の水を入れ、前記容器内に前記水に対する重量比で30%以上100%未満の量のリポソームビタミンCを入れ、前記水を撹拌羽根で撹拌させて、第1液体を準備する準備工程と、
前記準備工程の終了後に、前記容器内の前記第1液体に、少なくともゲル化剤及び甘味剤を含む粉体を入れ、前記容器を75℃以上95℃未満の温度に加熱しながら前記第1液体を前記撹拌羽根で撹拌させて、前記第1液体を第2液体にする粉体撹拌工程と、
前記粉体撹拌工程の終了後に、前記容器内の前記第2液体に、前記水に対する重量比で5%以上15%未満の量の果汁及び当該果汁の元となる果物の精油であって前記リポソームビタミンCに対する重量比で1%以上2%未満の量の精油を入れ、前記容器を75℃以上95℃未満の温度に維持しながら前記第2液体を前記撹拌羽根で撹拌させて、前記第2液体を第3液体にする果汁撹拌工程と、
前記果汁撹拌工程の終了後に、前記第3液体を常温となるように冷却して前記第3液体をゲル化させてゼリーにするゲル化工程と、
を含む。
【0008】
第2態様のリポソームビタミンC入りゼリーの製造方法は、
第1態様に記載の方法において、
前記準備工程における、前記水を撹拌羽根で撹拌させる期間に、前記水に消泡剤を添加する。
【0009】
第3態様のリポソームビタミンC入りゼリーの製造方法は、
第1態様又は第2態様に記載の方法において、
前記甘味剤の量は、前記水に対する重量比で5%以上15%未満の量であり、
前記甘味料は、エリスリトール、アセスルファムカリウム及びステビアを含む。
【0010】
第4態様のリポソームビタミンC入りゼリーの製造方法は、
第1~第3態様のいずれか一態様に記載の方法において、
前記粉体は、更に、メロンプラセンタ粉末、パイナップル抽出物、コラーゲンパウダー及びヒアルロン酸を含み、
前記メロンプラセンタ粉末、前記パイナップル抽出物、前記コラーゲンパウダー及び前記ヒアルロン酸の量は、前記リポソームビタミンCに対する重量比で0.5%以上1%未満の量である。
【0011】
第5態様のリポソームビタミンC入りゼリーの製造方法は、
第1~第4態様のいずれか一態様に記載の方法において、
前記粉体撹拌工程の終了後かつ前記果汁撹拌工程の開始前に行われ、前記容器内に前記水に対する重量比で5%以上10%未満の量の液体であってクエン酸を含む水を入れて、前記撹拌羽根で前記第2液体を撹拌させる工程、
を含む。
【0012】
第6態様のリポソームビタミンC入りゼリーの製造方法は、
第5態様に記載の方法において、
前記粉体撹拌工程は、30分以上60分未満の時間内で、前記撹拌羽根を毎分15回転以上25回転未満の回転速度で回転させながら行われる。
【0013】
第7態様のリポソームビタミンC入りゼリーの製造方法は、
第1~第6態様のいずれか一態様に記載の方法において、
前記果汁撹拌工程は、前記粉体撹拌工程の終了後に前記容器を75℃以上95℃未満の温度に維持して10分経過以降に開始する。
【0014】
第8態様のリポソームビタミンC入りゼリーの製造方法は、
第1~第7態様のいずれか一態様に記載の方法において、
前記果汁撹拌工程では、前記第2液体に前記果汁及び前記精油を入れることで、前記第3液体における、水素イオン濃度を4.0以上4.5以下かつ糖度を27.0以上40.0以下にする。
【0015】
第9態様のリポソームビタミンC入りゼリーの製造方法は、
第1態様~第7態様のいずれか一態様に記載の方法において、
前記リポソームビタミンCは、単層型リポソームの内部にビタミンCが配置されている単層型リボソームビタミンCと、多層型リポソームの内部にビタミンCが配置されている多層型リボソームビタミンCとを含む。
【発明の効果】
【0016】
第1~第9態様のリポソームビタミンCゼリーの製造方法によれば、極めて強い苦味を感じさせ難いリポソームビタミンC入りゼリーを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態(本発明の実施をするための形態)のリポソームビタミンCゼリーの製造方法により製造された袋入りリポソームビタミンCゼリーの写真である。
【
図2】本実施形態のリポソームビタミンCゼリーの製造方法の工程図である。
【
図3】本実施形態のリポソームビタミンCゼリーを製造するために使用される斜軸撹拌機の概略図である。
【
図4】本実施形態のリポソームビタミンCゼリーに含まれる単層型リポソームビタミンCゼリーの断面図である。
【
図5】変形例のリポソームビタミンCゼリーに含まれる多層型リポソームビタミンCゼリーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
≪概要≫
以下、本実施形態及びその複数の変形例について説明する。各変形例の説明においては、参照するすべての図面では同様の機能を有する構成要素に同様の符号を付し適宜説明を省略する。
【0019】
≪本実施形態≫
以下、本実施形態について説明する。まず、本実施形態のリポソームビタミンCゼリー(
図1参照)の製造方法S100(
図2参照)を実施するにあたり、そのほとんどの工程で使用される斜軸撹拌機100(
図3参照)の構成及び機能について説明する。次いで、本実施形態の単層型リポソームビタミンC(以下、SLVCという。)について
図4を参照しながら説明する。次いで、本実施形態のリポソームビタミンCゼリーの製造方法S100(以下、本製造方法S100という。)の各工程及び効果について
図2等を参照しながら説明する。
【0020】
<斜軸撹拌機の構成及び機能>
図3は、本実施形態のリポソームビタミンCゼリーを製造するために使用される斜軸撹拌機100の概略図である。斜軸撹拌機100は、一例として、容器110と、斜軸羽根部120と、カッター部130と、コントローラー140とを備えている。
【0021】
容器110は、一例として、下方側が半球状の筒である。容器110は、筒本体112と、筒本体112の外周面を全体的に覆う覆い部114とを有する。筒本体112はその内部に撹拌される対象物(液体、粉体等)を収容する機能を有する。当該内部の容積は、一例として300リットル(0.3m
3)である。覆い部114は筒本体112との間に形成された隙間に水を収容し加熱源(不図示)からの熱により筒本体112の温度を調整する機能を有する。ここで、
図3における符号AXは、容器110の軸を示している。容器110は、軸AXに対して略対称の構成を有し、軸AXは上下方向に垂直(設置される床(不図示)に対して垂直)となっている。
【0022】
斜軸羽根部120は、シャフト122と、モーター124と、撹拌羽根126とを有する。斜軸羽根部120は、容器110の内部に収容された対象物(液体及び粉体又は液体及び他の液体)を撹拌させて、液体に粉体(又は他の液体)を分散させる機能を有する。シャフト122は、軸AXに対して傾斜して配置されている。モーター124と撹拌羽根126とは、それぞれシャフト122の両端側に取り付けられている。撹拌羽根126は、一例としてC字状に形成されている。
【0023】
カッター部130は、シャフト132と、モーター134と、小型羽根136とを有する。シャフト132は、軸AXに沿って配置されている。モーター134と小型羽根136とは、それぞれシャフト132の両端側に取り付けられている。小型羽根136は、一例として矩形状に形成されている。
【0024】
コントローラー140は、モーター124、134を制御して、斜軸羽根部120及びカッター部130のそれぞれの軸周りの回転動作を制御する機能を有する。
【0025】
以上が、斜軸撹拌機100の構成及び機能についての説明である。
【0026】
<SLVCの構成及び機能>
図4は、本実施形態のリポソームビタミンCゼリーに含まれる単層型リポソームビタミンC(SLVC)の断面図である。SLVCは、リポソーム製球状壁と、ビタミンCとを有する。
【0027】
リポソーム製球状壁は、放射線状に並ぶ複数のリン脂質分子で構成されている。リン脂質分子は、棒状であり、その両端がそれぞれ親水基を示し中央が疎水基を示す。そして、複数のリン脂質分子は、それぞれの軸方向を放射線状に向けた姿勢で並んで、リン脂質二重膜となりナノサイズ(直径が約100nm~200nm)のカプセルを形成している。つまり、リポソーム製球状壁の内部には空洞が形成されている。
ビタミンCは、当該空洞に収容されている。ビタミンCは、リポソーム製球状壁を構成する複数のリン脂質分子の一部がリポソーム製球状壁から剥がれる(分離する)ことでできる開口からリポソーム製球状壁の外部に放出される。
【0028】
以上が、SLVCの構成及び機能についての説明である。
【0029】
<本製造方法の各工程>
図2は、本製造方法S100の工程図である。本製造方法S100は、準備工程S10と、粉体撹拌工程S20と、pH調整工程S30と、果汁撹拌工程S40と、水補充工程S50と、ろ過工程S60と、ゲル化工程S70とを含んでおり、各工程はこれらの記載順で実施される。
以下、本製造方法S100の各工程の具体的な内容について説明する。
【0030】
(準備工程)
準備工程S10とは、常温(又は室温)の容器110(
図3参照)内に常温の水を入れ、常温の水が収容されている容器110内にSLVCを入れ、水を撹拌羽根126で撹拌させて、水にSLVCが拡散された液体(第1液体)を準備する工程である。
【0031】
具体的には、準備工程S10は、一例として、以下のように行われる。
まず、容器110内に水を入れる。
次に、水が収容されている容器110内に粉体のSLVCを入れる。この場合、カッター部130の小型羽根136を一例として1000回転/分で回転させながら、小型羽根136及びその周囲に粉体のSLVCを入れる。
次に、水が収容されている容器110内に消泡剤を入れる。この場合、カッター部130の小型羽根136を一例として1000回転/分で回転させながら、小型羽根136及びその周囲に消泡剤を入れる。消泡剤は食品用のものであればよいが、一例としてシリコーンオイルを水性エマルジョンとしたもの等でよい。
次に、斜軸羽根部120の撹拌羽根126を一例として20回転/分で回転させながら、SLVC及び消泡剤が入れられた水を一例として5分以上10分以下の期間撹拌させる。
【0032】
本実施形態では、一例として、容器に入れる水の量を43.748kgとし、粉体のSLVCの量を37.1kgとする。別の見方をすれば、容器に入れる水の量は43.748%、粉体のSLVCの量は37.1%である。水の量に対する粉体のSLVCの量は、重量比で30%以上100%未満であればよい。この理由はゼリーの触感の良好性を確保するためである。
【0033】
(粉体撹拌工程)
粉体撹拌工程S20は、
図2に示されるように、準備工程S10の終了後に行われる。粉体撹拌工程S20は、容器110内の第1液体に、少なくともゲル化剤及び甘味剤を含む粉体(以下、ゲル化剤含有粉体という。)を入れ、容器110を75℃以上95℃未満の温度に加熱しながらゲル化剤含有粉体が入れられた第1液体を撹拌羽根126で撹拌させて、第1液体を第2液体にする工程である。
【0034】
ここで、ゲル化剤含有粉体のせイブンは、一例として、以下の表1のとおりである。
【0035】
【0036】
ここで、ゲル化剤は、一例として、HMペクチン、LMペクチン、カッパカラギナン、イオタカラギナン、酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチン等のうちから2種類を選択して混合した粉体である。
また、甘味剤である、アセスルファムカリウム及びステビアの量は、水に対する重量比で5%以上15%未満の量であればよい。
また、メロンプラセンタ粉末、パイナップル抽出物、コラーゲンパウダー及びヒアルロン酸の量は、準備工程S10で容器110内に入れられる粉体のSLVCに対し、重量比で0.5%以上1%未満の量である。
【0037】
まず、加熱源(不図示)により覆い部114を加熱して筒本体112の温度を一例として、容器110内の第1液体の温度を75℃以上95℃未満、好ましくは80℃以上90℃未満にする。この場合、斜軸羽根部120の撹拌羽根126を一例として20回転/分で回転させることで、容器110内の第1液体の温度を略均一にする。
次に、第1液体が上記温度に加熱されてから一定の期間が経過した後に(一例として30分の期間が経過した後に)、第1液体が収容されている容器110内にゲル化剤含有粉体を入れる。この場合、カッター部130の小型羽根136を一例として1000回転/分で回転させながら、小型羽根136及びその周囲に粉体のゲル化剤含有粉体を入れる。
次に、斜軸羽根部120の撹拌羽根126を一例として15回転/分以上25回転/分未満、好ましくは20回転/分の回転速度で回転させながら、ゲル化剤含有粉体が入れられた第1液体を一例として30分以上60分未満の期間撹拌させる。この場合、容器110内の第1液体の温度は、上記温度に維持されている。また、カッター部130の小型羽根136は、1000回転/分よりも大きい回転速度、一例として3000回転/分で回転させ続ける。
【0038】
(pH調整工程)
pH調整工程S30は、
図2に示されるように、粉体撹拌工程S20の終了後かつ後述する果汁撹拌工程S40の開始前に行われる。pH調整工程S30は、容器110内に準備工程S10で容器110に入れられる水に対して重量比で5%以上10%未満の量の液体であってクエン酸を含む水を入れて、撹拌羽根126で第2液体を撹拌させる工程である。
【0039】
ここで、クエン酸を含む水(以下、クエン酸水という。)の成分は、一例として以下の表2のとおりである。
【0040】
【0041】
まず、第2液体を粉体撹拌工程S20時の温度のまま一定の期間が経過した後に(一例として10分の期間が経過した後に)、第2液体が収容されている容器110内にクエン酸水を入れる。この場合、カッター部130の小型羽根136を一例として1000回転/分で回転させながら、小型羽根136及びその周囲にクエン酸水を入れる。
次に、斜軸羽根部120の撹拌羽根126を一例として20回転/分以上30回転/分未満、好ましくは25回転/分の回転速度で回転させながら、クエン酸水が入れられた第2液体を一例として3分以上15分未満の期間撹拌させる。この場合、容器110内の第2液体の温度は、上記温度(粉体撹拌工程S20時の温度)に維持されている。また、カッター部130の小型羽根136は、3000回転/分よりも小さい回転速度、一例として1000回転/分で回転させ続ける。
そして、本工程が終了すると、クエン酸水を含む第2液体のpH(水素イオン濃度)は、4.0以上4.5以下に調整される。
【0042】
(果汁撹拌工程)
果汁撹拌工程S40は、
図2に示されるように、pH調整工程S30の終了後、すなわち、粉体撹拌工程S20の終了後に行われる。果汁撹拌工程S40は、容器110内のクエン酸水を含む第2液体に、(1)準備工程S10の際に容器110に入れられる水に対する重量比で5%以上15%未満の量の果汁及び(2)当該果汁の元となる果物の精油であって準備工程S10の際に容器110に入れられる粉体のSLVCに対する重量比で1%以上2%未満の量の精油を入れ、容器110を75℃以上95℃未満の温度、好ましくは80℃以上90℃未満の温度に維持しながらクエン酸水を含む第2液体を撹拌羽根126で撹拌させて、クエン酸水を含む第2液体を第3液体にする工程である。
【0043】
ここで、前述の果汁及び精油の成分は、一例として以下の表3のとおりである。
【0044】
【0045】
まず、クエン酸水を含む第2液体を粉体撹拌工程S20時の温度のまま、第2液体が収容されている容器110内に前述の果汁及び精油を入れる。この場合、カッター部130の小型羽根136を一例として2000回転/分で回転させながら、小型羽根136及びその周囲に前述の果汁及び精油を入れる。
次に、斜軸羽根部120の撹拌羽根126を一例として20回転/分以上30回転/分未満、好ましくは25回転/分の回転速度で回転させながら、前述の果汁及び精油が入れられた第2液体を一例として3分以上15分未満の期間撹拌させる。この場合、容器110内の前述の果汁及び精油が入れられた第2液体の温度は、上記温度(粉体撹拌工程S20時の温度)に維持されている。また、カッター部130の小型羽根136は、1000回転/分よりも大きい回転速度、一例として2000回転/分で回転させ続ける。
そして、本工程が終了すると、クエン酸水並びに前述の果汁及び精油を含む第2液体のpH(水素イオン濃度)は4.0以上4.5以下かつ糖度が27.0以上40.0以下に調整される。
【0046】
(水補充工程)
水補充工程S50は、
図2に示されるように、果汁撹拌工程S40の終了後に行われる。水補充工程S50は、準備工程S10の開始時に容器110に入れた水のうち果汁撹拌工程S40の終了時までに蒸発した水を補充する工程である。
実は、本実施形態の斜軸撹拌機100は、容器110の重量を測定する秤(不図示)を備えている。そのため、当該秤の値から蒸発した水の量を計算できるため、本工程では、蒸発分の水を容器110内に入れる。この場合、斜軸羽根部120の撹拌羽根126を一例として20回転/分以上30回転/分未満、好ましくは25回転/分の回転速度で回転させつつ、カッター部130の小型羽根136は、1000回転/分よりも大きい回転速度、一例として2000回転/分で回転させ続ける。
【0047】
(ろ過工程)
ろ過工程S60は、
図2に示されるように、水補充工程S50の終了後に行われる。ろ過工程S60は、水補充工程S50の終了後に容器110内に収容されている水が補充された第3液体を、マグネットトラップ(不図示)を通過させて準備工程S10から水補充工程S50までに水が補充された第3液体内の不純物(一例として金属粉等)を除去する工程である。
【0048】
(ゲル化工程)
ゲル化工程S70は、
図2に示されるように、ろ過工程S60の終了後に行われる。ゲル化工程S70は、水が補充され、ろ過工程S60によりろ過された第3液体を自然冷却してゲル化(ゼリー化)する工程である。本実施形態では、密閉前の開口した収容袋(
図1参照)に第3液体を入れて第3液体を自然冷却する。
その後、定められた量の第3液体が収容された収容袋の封をして、当該収容袋を一例として0℃に冷却すると、収容袋に収容されたリポソームビタミンC入りゼリーが完成する。
【0049】
以上が、本製造方法S100の各工程についての説明である。
【0050】
<効果(複数の比較例との比較)>
(評価方法)
次に、本実施形態の効果について説明する。本実施形態の効果については、本製造方法S100と、以下に説明する複数の比較例の製造方法とを比較して行う。具体的には、以下の表4に示されるように、複数の比較例(比較例1~5)及び複数の実施例(実施例1~6)により各サンプル(リポソームビタミンCゼリー)を製造し、10名の被験者に試食して不快な苦味を感じるかについての官能評価を行った。この官能表は、(1)不快な苦味を感じる(1ポイント)、(2)不快な苦味を若干感じる(2ポイント)、(3)不快な苦味を一切感じない(3ポイント)、という3つの選択肢から1つを選択することとした。そして、各サンプルに対して10人の被験者のポイントを合計し、合計ポイントが26ポイント以上を合格とする評価を行った。例えば、10人とも(1)不快な苦味を感じると評価されたサンプルは10ポイントとなり、10人とも(3)不快な苦味を一切感じないと評価されたサンプルは30ポイントとなる。
【0051】
【0052】
以下、比較例1~5の特徴(前述の実施形態とは異なる点のみを記載)と、実施例1~6の特徴とを示す。
(比較例1~5)
比較例1のリポソームビタミンCゼリーの製造方法では、果汁撹拌工程S40にグレープフルーツオイル(精油)を入れなかった。
比較例2のリポソームビタミンCゼリーの製造方法では、果汁撹拌工程S40に入れるグレープフルーツオイル(精油)の量が準備工程S10時に容器110内に入れられる粉体のSLVCの量の0.5%であった。
比較例3のリポソームビタミンCゼリーの製造方法では、果汁撹拌工程S40に入れるグレープフルーツオイル(精油)の量が準備工程S10時に容器110内に入れられる粉体のSLVCの量の0.9%であった。
比較例4のリポソームビタミンCゼリーの製造方法では、果汁撹拌工程S40の期間の第2液体の温度が70℃であった
比較例5のリポソームビタミンCゼリーの製造方法では、果汁撹拌工程S40の期間の第2液体の温度が74℃であった。
(実施例1~6)
実施例1のリポソームビタミンCゼリーの製造方法では、果汁撹拌工程S40に入れるグレープフルーツオイル(精油)の量が準備工程S10時に容器110内に入れられる粉体のSLVCの量の1.0%であった。
実施例2のリポソームビタミンCゼリーの製造方法では、果汁撹拌工程S40に入れるグレープフルーツオイル(精油)の量が準備工程S10時に容器110内に入れられる粉体のSLVCの量の1.5%であった。
実施例3のリポソームビタミンCゼリーの製造方法では、果汁撹拌工程S40に入れるグレープフルーツオイル(精油)の量が準備工程S10時に容器110内に入れられる粉体のSLVCの量の1.9%であった。
実施例4のリポソームビタミンCゼリーの製造方法では、果汁撹拌工程S40の期間の第2液体の温度が75℃であった。
実施例5のリポソームビタミンCゼリーの製造方法では、果汁撹拌工程S40の期間の第2液体の温度が80℃であった。
実施例6のリポソームビタミンCゼリーの製造方法では、果汁撹拌工程S40の期間の第2液体の温度が90℃であった。
【0053】
(評価結果1)
比較例1~3は、表4に示されるとおり、精油が入っていない又は入っていても1.0%未満であった。そして、被験者の全員又はほぼ全員が(1)不快な苦味を感じると評価した。
これに対して、実施例1~3は、精油の量が1.0%以上2.0%未満であった。そして、被験者の全員が(1)不快な苦味を感じると評価しなかった。
以上より、果汁撹拌工程S40において、精油の量が1.0%以上2.0%未満であることで不快な苦味を感じさせることを解決することができた。
【0054】
(評価結果2)
比較例4及び5は、表4に示されるとおり、果汁撹拌工程S40における第2液体の温度が70℃又は74℃、すなわち、75℃未満であった。そして、比較例4の場合、被験者10人のうちの2人が(1)不快な苦味を感じると評価した。また、比較例5の場合、被験者全員が(1)不快な苦味を感じるとは評価しなかったが、半分の5人は(2)不快な苦味を若干感じると評価した。
これに対して、実施例4~6は、果汁撹拌工程S40における第2液体の温度が75℃以上又90℃以下であった。そして、被験者の全員が(3)不快な苦味を一切感じないと評価した。
以上より、果汁撹拌工程S40における第2液体の温度が75℃以上又90℃以下であることで不快な苦味を感じさせることを解決することができた。
【0055】
(考察)
比較例1~3の場合に不快な苦味に関する課題を解決できなかった理由は、精油の量が足りていないためと考えられる。
では、精油の量が不足すると課題が解決できなかった原因は、恐らく、リボソーム製球状壁(
図4参照)の大部分が疎水基、すなわち、親油性を有するため、第2液体中に分散されている複数のSLVCのリボソーム製球状壁にほどよく精油が付着して苦味を相殺できなかったと考えられる。
これに対して、実施例1~6の場合に不快な苦味に関する課題を解決できた理由は、精油の量が足りていたためと考えられる。
【0056】
また、比較例4及び5の場合に不快な苦味に関する課題を解決できなかった理由は、精油の量は足りているものの、精油を分散させる際の第2液体の温度が低いためと考えられる。
では、第2液体の温度が低いためと課題が解決できなかった原因は、恐らく、比較例4及び5の場合の第3液体及び精油の温度では、第2液体中に分散されている複数のSLVCのリボソーム製球状壁にほどよく精油が付着できるような拡散エネルギーが不十分であったと考えられる。
これに対して、実施例1~6の場合に不快な苦味に関する課題を解決できた理由は、精油の量が足りているとともに果汁撹拌工程S40における第3液体の温度下では複数のSLVCのリボソーム製球状壁に対して精油が十分かつ平均的に付着できたためと考えられる。
なお、上記の評価試験では、果汁撹拌工程S40時における精油の量が2.0%以上の場合を行っていないが、ある程度の量になると精油によりリボソーム製球状壁が壊れる(リン脂質分子が剥がされる)ので限界があると予想される。今回は当該限界が明確にはなっていないが、少なくとも2.0%以上であることは間違いないといえる。
【0057】
以上が、本実施形態の効果についての説明である。
【0058】
≪複数の変形例≫
以上のとおり、本発明について前述の実施形態を一例として説明したが、本発明には以下の複数の変形例も含まれる。
【0059】
例えば、前述の実施形態では、準備工程S10で使用される(水に撹拌される)リポソームビタミンCは
図4に示されるような単層型リボソームビタミンC(SLVC)であるとしたが、リポソームの内部にビタミンC配置されていれば単層型リボソームビタミンC(SLVC)でなくてもよい。例えば、
図5に示されるような多層型リボソームビタミンC(MLVC)であってもよい。この変形例によれば、前述の実施形態の場合よりもより長期的に体内にビタミンCを留めることができる点で有効である。
なお、
図5に示される多層型リポソームビタミンCのシェル数は3つであるが、2つ又は4つ以上であってもよい(以下、同様に適用のこと)。
【0060】
また、例えば、準備工程S10で使用される(水に撹拌される)リポソームビタミンCは、
図4に示される単層型リボソームビタミンC(SLVC)と、
図5に示される多層型リボソームビタミンCとの混合物であってもよい。
【0061】
また、例えば、前述の実施形態の果汁撹拌工程S40では、果汁の元となる果物をグレープフルーツとしたが、これを別の果物としてもよい。例えば、レモン、オレンジその他の果物としてもよい。
【符号の説明】
【0062】
100 斜軸撹拌機
110 容器
112 筒本体
114 覆い部
120 斜軸羽根部
122 シャフト
124 モーター
126 撹拌羽根
130 カッター部
132 シャフト
134 モーター
136 小型羽根
140 コントローラー
AX 軸
MLVC 多層型リポソームビタミンC
SLVC 単層型リボソームビタミンC
S100 本製造方法(リポソームビタミンC入りゼリーの製造方法)
S10 準備工程
S20 粉体撹拌工程
S30 調整工程
S40 果汁撹拌工程
S50 水補充工程
S60 ろ過工程
S70 ゲル化工程