(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021518
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】移動式クリーンルーム
(51)【国際特許分類】
E04H 5/02 20060101AFI20250206BHJP
【FI】
E04H5/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125257
(22)【出願日】2023-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【弁理士】
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100227455
【弁理士】
【氏名又は名称】莊司 英史
(72)【発明者】
【氏名】阿部 公揮
(72)【発明者】
【氏名】冨田 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】矢野 慧一
(57)【要約】
【課題】任意の設置場所で即時に稼働することを可能とする移動式クリーンルームを提供する。
【解決手段】移動式クリーンルーム1は、作業空間となる清浄室20を形成するクリーンルーム本体2と、清浄室20内の空気環境を管理する清浄室環境管理ユニット3と、電力コネクタ80を介して接続される外部電源12から、清浄室環境管理ユニット3及び清浄室20内で使用される作業機器11への電力供給を制御する電力制御ユニット8と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能な移動式クリーンルームであって、
作業空間となる清浄室を形成するクリーンルーム本体と、
前記清浄室内の空気環境を管理する清浄室環境管理ユニットと、
電力コネクタを介して接続される外部電源から、前記清浄室環境管理ユニット及び前記清浄室内で使用される作業機器への電力供給を制御する電力制御ユニットと、を備える、
移動式クリーンルーム。
【請求項2】
前記電力制御ユニットは、
前記清浄室環境管理ユニット及び前記作業機器にて消費される電力量を検出する電力量センサと、
前記電力量センサにより検出された前記電力量を記憶する記憶部と、を備える、
請求項1に記載の移動式クリーンルーム。
【請求項3】
前記クリーンルーム本体は、
道路を走行する車両に積載又は牽引可能に構成され、
前記電力制御ユニットは、
前記電力コネクタに接続された前記車両から前記清浄室環境管理ユニット及び前記作業機器への電力供給を制御し、
前記クリーンルーム本体が前記車両により移動中の場合、前記清浄室環境管理ユニット及び前記作業機器への電力供給量を制限する、
請求項1に記載の移動式クリーンルーム。
【請求項4】
前記クリーンルーム本体は、
電車線から電力供給を受けて鉄道線路を走行する電気車に積載又は牽引可能に構成され、
前記電力制御ユニットは、
前記電力コネクタに接続された前記電車線から前記清浄室環境管理ユニット及び前記作業機器への電力供給を制御し、
前記クリーンルーム本体が前記電気車により移動中の場合、前記清浄室環境管理ユニット及び前記作業機器への電力供給量を制限する、
請求項1に記載の移動式クリーンルーム。
【請求項5】
前記清浄室環境管理ユニット及び前記作業機器への電力供給可能な内部電源を備え、
前記電力制御ユニットは、
前記電力コネクタに前記外部電源が接続されていない場合、前記内部電源から前記清浄室環境管理ユニット及び前記作業機器への電力供給を制御する、
請求項1に記載の移動式クリーンルーム。
【請求項6】
前記クリーンルーム本体は、
前記クリーンルーム本体の揺れを減衰する免振機構を備える、
請求項1に記載の移動式クリーンルーム。
【請求項7】
前記クリーンルーム本体は、前記清浄室への出入口となる扉を備え、
前記扉に密閉状態で接続される外部通路を形成し、前記外部通路の長さを調整可能な蛇腹状の外部通路ユニットをさらに備える、
請求項1に記載の移動式クリーンルーム。
【請求項8】
前記クリーンルーム本体は、
前記清浄室への出入口となる扉を備え、
前記扉に密閉状態で接続される外部通路を形成する外部通路ユニットと、
前記外部通路内の空気環境を管理する外部通路環境管理ユニットと、をさらに備える、
請求項1に記載の移動式クリーンルーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式クリーンルームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、病院、医薬品や半導体等の製造工場、再生医療、食品衛生、動植物、微生物等の実験施設等では、室内の空気環境が管理されたクリーンルームが使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたクリーンルームは、建物内の部屋の1つとして設置されたものである。そのため、建物とは切り離すことができず、クリーンルームが必要とな場所に簡単に設置することはできなかった。また、災害発生時、市場の需要変動時、クリーンルームの故障時やバリデーション時等を理由に、クリーンルームの新設、増設、代替施設の確保等の要求があったときに、即時にその要求に応えることが困難であった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、任意の設置場所で即時に稼働することを可能とする移動式クリーンルームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであって、本発明の一実施形態に係る移動式クリーンルームは、
移動可能な移動式クリーンルームであって、
作業空間となる清浄室を形成するクリーンルーム本体と、
前記清浄室内の空気環境を管理する清浄室環境管理ユニットと、
電力コネクタを介して接続される外部電源から、前記清浄室環境管理ユニット及び前記清浄室内で使用される作業機器への電力供給を制御する電力制御ユニットと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一実施形態に係る移動式クリーンルームによれば、クリーンルーム本体が移動されて設置された設置場所において外部電源に接続されることで、清浄室環境管理ユニットにより清浄室内の空気環境が管理されるとともに、清浄室内で使用される作業機器に電力供給が行われる。したがって、移動式クリーンルームは、任意の設置場所で即時に稼働することができる。
【0008】
上記以外の課題、構成及び効果は、後述する発明を実施するための形態にて明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る移動式クリーンルーム1の一例を示す概略斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る移動式クリーンルーム1の一例を示す概略正面図である。
【
図3】本実施形態に係る移動式クリーンルーム1の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る移動式クリーンルーム1の一例を示す概略斜視図である。
図2は、本実施形態に係る移動式クリーンルーム1の一例を示す概略正面図である。
図3は、本実施形態に係る移動式クリーンルーム1の一例を示すブロック図である。
【0012】
移動式クリーンルーム1は、車両や電気車に積載又は牽引可能に構成されることで、任意の設置場所に移動されて使用されるクリーンルームである。移動式クリーンルーム1の設置場所は、例えば、駐車場、空地、仮設テント内等であり、これらに限られない。
【0013】
車両は、道路を走行するものであり、例えば、コンテナトラック、トレーラ等が挙げられる。電気車は、電車線から電力供給を受けて鉄道線路を走行するものであり、例えば、貨物車や専用車等が挙げられる。なお、移動式クリーンルーム1を移動するための移動手段は、上記の車両や電気車に限られない。また、移動式クリーンルーム1は、自走式であってもよい。
【0014】
移動式クリーンルーム1は、例えば、医療用の診断室、治療室、出術室、医薬品や半導体等の製造室、再生医療、食品衛生、動植物、微生物等の実験室等として使用される。その際、移動式クリーンルーム1は、
図1に示すように、既存の建物10と連結されるとともに、複数の移動式クリーンルーム1が連結されて使用される。これにより、移動式クリーンルーム1の増設が容易である。なお、移動式クリーンルーム1は、既存の建物10と連結されずに使用されてもよいし、単体で使用されてもよい。
【0015】
移動式クリーンルーム1は、その主要な構成要素として、作業空間となる清浄室20を形成するクリーンルーム本体2と、清浄室20内の空気環境を管理する清浄室環境管理ユニット3と、給水及び排水を制御する給排水制御ユニット4と、クリーンルーム本体2の扉22に密閉状態で接続される外部通路を形成する外部通路ユニット5と、外部通路内の空気環境を管理する外部通路環境管理ユニット6と、移動式クリーンルーム1の各部への電力供給可能な内部電源7と、移動式クリーンルーム1の各部への電力供給を制御する電力制御ユニット8とを備える。
【0016】
作業機器11は、清浄室20内で使用される各種の機器であり、例えば、診断機器、治療機器、製造機器、計測機器、貯蔵機器、作業用ロボット等が挙げられる。なお、作業機器11には、電力だけでなく、水が供給されてもよい。
【0017】
クリーンルーム本体2は、清浄室20を形成する壁、床、天井等の構造体21と、清浄室20への出入口となる扉22と、クリーンルーム本体2の揺れを減衰する免振機構23とを備える。
【0018】
クリーンルーム本体2の形状や大きさは適宜変更することができる。その際、複数の形状や大きさが異なるクリーンルーム本体2で構成される複数の移動式クリーンルーム1を連結してもよい。扉22は、密閉式の構造を有し、扉22の内側にエアシャワー室が設置されていてもよい。扉22の数や位置は適宜変更することができる。免振機構23は、例えば、床下に配置されたダンパーやゴム等で構成され、アクチュエータ等を適宜組み合わせてもよい。免振機構23は、移動式クリーンルーム1の移動時だけ取り付けられてもよい。
【0019】
清浄室環境管理ユニット3は、清浄室20の空気環境として、例えば、空気清浄度、温度、湿度、気流、空間差圧を管理するユニットである。清浄室環境管理ユニット3は、例えば、空調モジュール、フィルタモジュール、冷暖房モジュール、加湿モジュール、除湿モジュール、配管、ダクト等で構成される。清浄室20の空気清浄度(例えば、クラス1000やクラス10000等)、温度、湿度、気流、空間差圧は、清浄室20内で行われる作業の内容に応じて、例えば、ユーザにより設定されることで、その設定された設定値を維持するように、清浄室環境管理ユニット3が動作する。
【0020】
給排水制御ユニット4は、清浄室環境管理ユニット3、外部通路環境管理ユニット6、作業機器11等に対する給水処理と、使用済みの排水処理とを制御するユニットでる。給排水制御ユニット4は、バルブ、ポンプ、水処理モジュール等で構成される。なお、給排水制御ユニット4は、上水道(水供給源)や下水道に接続されてもよい。
【0021】
外部通路ユニット5は、例えば、外部通路の長さを調整可能な蛇腹状に形成されて、
図1に示すように、建物10や他の移動式クリーンルーム1に接続される。なお、外部通路ユニット5は、クリーンルーム本体2とは別体のユニットとして、クリーンルーム本体2に着脱自在に構成されてもよく、後付けされてもよい。また、外部通路ユニット5は、省略されてもよく、その場合には、建物10や他の移動式クリーンルーム1に直接接続されてもよい。
【0022】
外部通路環境管理ユニット6は、外部通路の空気環境として、例えば、空気清浄度、温度、湿度、気流、空間差圧を管理するユニットである。外部通路環境管理ユニット6は、清浄室環境管理ユニット3と同様に、例えば、空調モジュール、フィルタモジュール、冷暖房モジュール、加湿モジュール、除湿モジュール、配管、ダクト等で構成される。なお、外部通路環境管理ユニット6は、その全部又は一部が清浄室環境管理ユニット3と兼用されてもよい。また、外部通路ユニット5が省略された場合には、外部通路環境管理ユニット6も省略されてもよい。
【0023】
内部電源7は、例えば、蓄電モジュール及び発電モジュールの少なくとも一方で構成される。蓄電モジュールは、例えば、二次電池であり、外部電源12や発電モジュールからの電力により充電される。蓄電モジュールは、交換可能に構成されていてもよい。発電モジュールは、太陽光発電、燃料電池、人工光合成、内燃機関による発電等を利用したものであり、適宜組み合わせてもよい。
【0024】
電力制御ユニット8は、内部電源7、又は、電力コネクタ80を介して接続される外部電源12から、清浄室環境管理ユニット3、外部通路環境管理ユニット6及び作業機器11等の電力供給先への電力供給を制御する。電力制御ユニット8は、例えば、電力変換モジュール、各種のセンサ、制御盤等で構成される。
【0025】
電力制御ユニット8は、各種のセンサの1つとして、電力供給先にて消費される電力量を検出する電力量センサ81を備える。電力制御ユニット8の制御盤は、例えば、任意のコンピュータやコントローラ(マイコン、プログラマブルロジックコントローラ、シーケンサを含む)等で構成されて、電力量センサ81により検出された電力量を記憶する記憶部82を備える。これにより、電力供給先で消費された電力量を把握することができるので、例えば、省エネルギーに向けた対応案を検討したり、その効果を確認することができる。
【0026】
外部電源12は、例えば、車両や電車線(電気車でも可)でもよいし、商用の交流電源(100V、200V)でもよいし、外部に設置された発動モジュールでもよい。電力コネクタ80は、例えば、商用のコンセントや専用のコネクタでもよいし、制御盤に設けられた端子でもよい。
【0027】
電力制御ユニット8は、例えば、電力コネクタ80に接続された車両から電力供給先への電力供給を制御する。その際、クリーンルーム本体2が車両により移動中の場合、電力供給先への電力供給量を制限する。
【0028】
また、電力制御ユニット8は、例えば、電力コネクタ80に接続された電車線から電力供給先への電力供給を制御する。その際、クリーンルーム本体2が電気車により移動中の場合、電力供給先清への電力供給量を制限する。
【0029】
車両や電車線から電力供給を受けながら移動中の場合の電力供給量の制限量は、例えば、清浄室20の空気環境を維持できる程度の電力供給量である。これにより、移動式クリーンルーム1の移動時の省エネルギーを図りつつ、移動式クリーンルーム1が設置場所に設置された後に即時に稼働させることができる。
【0030】
さらに、電力制御ユニット8は、電力コネクタ80に外部電源12が接続されていない場合、内部電源7から電力供給先への電力供給を制御する。これにより、設置場所に外部電源12がない場合や停電のような災害時であっても、移動式クリーンルーム1を稼働させることができる。
【0031】
上記の構成を有する移動式クリーンルーム1によれば、クリーンルーム本体2が移動されて設置された設置場所において外部電源12に接続されることで、清浄室環境管理ユニット3により清浄室20内の空気環境が管理されるとともに、清浄室20内で使用される作業機器11に電力供給が行われる。したがって、移動式クリーンルーム1は、任意の設置場所で即時に稼働することができる。
【0032】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、移動式クリーンルーム1は、建物10等の外部施設から清浄空気、水、ガス等の供給を受けるための配管を備えるものでもよい。
【符号の説明】
【0033】
1…移動式クリーンルーム、2…クリーンルーム本体、3…清浄室環境管理ユニット、
4…給排水制御ユニット、5…外部通路ユニット、6…外部通路環境管理ユニット、
7…内部電源、8…電力制御ユニット、
10…建物、11…作業機器、12…外部電源、
20…清浄室、21…構造体、22…扉、23…免振機構、
80…電力コネクタ、81…電力量センサ、82…記憶部