(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002155
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】ピックルボール用パドル
(51)【国際特許分類】
A63B 59/42 20150101AFI20241226BHJP
A63B 102/00 20150101ALN20241226BHJP
【FI】
A63B59/42
A63B102:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102115
(22)【出願日】2023-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】390010917
【氏名又は名称】ヨネックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100120444
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 晋
(57)【要約】
【課題】グリップ部を中心とするねじり剛性を向上でき、設計上の自由度を高め、重心位置をグリップ部の下端に近付け易くすること。
【解決手段】ピックルボール用のパドル(10)は、上下方向に延出するグリップ部(11)と、グリップ部の上端側に設けられ、厚さ方向両側にボールを打撃する打球面(20)を形成するヘッド部(12)とを備えている。ヘッド部とグリップ部との接続部分(B)には、接続部分を補強する補強部(30)が設けられている。補強部の上端(30a)は、パドル全体の上下方向中央位置(C2)より下方に設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延出するグリップ部と、
前記グリップ部の上端側に設けられ、厚さ方向両側にボールを打撃する打球面を形成するヘッド部とを備えたピックルボール用パドルであって、
前記ヘッド部と前記グリップ部との接続部分には、該接続部分を補強する補強部が設けられ、
前記補強部の上端は、前記ピックルボール用パドル全体の上下方向中央位置より下方に設けられることを特徴とするピックルボール用パドル。
【請求項2】
前記グリップ部及び前記ヘッド部は、前記厚さ方向に厚みを有するパネル部材によって形成され、
前記補強部は、前記接続部分における前記パネル部材の前記厚さ方向両側且つ外側にて、該パネル部材の前記厚さ方向両側の形成面に沿って設けられることを特徴とする請求項1に記載のピックルボール用パドル。
【請求項3】
前記補強部は、上下方向にて前記ヘッド部の下端に跨って位置する中央形成部と、
前記中央形成部の左右両側から帯状に延出する側方形成部とを備えていることを特徴とする請求項2に記載のピックルボール用パドル。
【請求項4】
前記補強部は、上下方向にて前記ヘッド部の下端に跨って位置する中央形成部を備えていることを特徴とする請求項2に記載のピックルボール用パドル。
【請求項5】
前記ヘッド部は、前記厚さ方向から見て、下端から左右方向両側に向かって次第に上向きとなる下側傾斜端縁を備え、
前記補強部は、上下方向にて前記ヘッド部の下端に跨って位置する中央形成部と、
前記中央形成部の上側及び左右両側に連なる補強板部とを備え、
前記補強板部は、前記厚さ方向から見て、前記中央形成部の左右両端から前記下側傾斜端縁に沿って延出する一対の側辺と、該一対の側辺の上端に連なって左右方向に延出する上辺とを備えていることを特徴とする請求項2に記載のピックルボール用パドル。
【請求項6】
前記ヘッド部における前記補強部の配置領域は、該配置領域の他の領域に比べて前記パネル部材の厚みが小さく形成されることを特徴とする請求項2に記載のピックルボール用パドル。
【請求項7】
前記グリップ部及び前記ヘッド部は、前記厚さ方向に厚みを有するパネル部材によって形成され、
前記補強部は、前記接続部分における前記パネル部材の端面に沿う外側に設けられ、前記パネル部材を前記厚さ方向両側から挟み込むことを特徴とする請求項1に記載のピックルボール用パドル。
【請求項8】
前記グリップ部及び前記ヘッド部は、前記厚さ方向に厚みを有するパネル部材によって形成され、
前記補強部は、前記接続部分にて前記パネル部材の厚み内に収まるように設けられることを特徴とする請求項1に記載のピックルボール用パドル。
【請求項9】
前記パネル部材は、前記ヘッド部より小さい厚みに形成される芯材と、
前記芯材の前記厚さ方向一側となる表側に積層される薄板状の表側形成層と、
前記芯材の前記厚さ方向他側となる裏側に積層される薄板状の裏側形成層とを備え、
前記芯材は、前記グリップ部、前記接続部分及び前記ヘッド部の下方領域を形成し、且つ、前記補強部を構成する第1形成部と、前記ヘッド部にて前記第1形成部以外の領域を形成する第2形成部とを備え、
前記第1形成部は、前記第2形成部に比べてヤング率が大きい材料によって構成されることを特徴とする請求項8に記載のピックルボール用パドル。
【請求項10】
前記パネル部材は、前記ヘッド部より小さい厚みに形成される芯材と、
前記芯材の前記厚さ方向一側となる表側に積層される薄板状の表側形成層と、
前記芯材の前記厚さ方向他側となる裏側に積層される薄板状の裏側形成層とを備え、
前記芯材は、少なくとも前記接続部分における左右両側の端面を形成し、且つ、前記補強部を構成する第1形成部と、前記第1形成部以外の領域を形成する第2形成部とを備え、
前記第1形成部は、前記第2形成部に比べてヤング率が大きい材料によって構成されることを特徴とする請求項8に記載のピックルボール用パドル。
【請求項11】
前記グリップ部及び前記ヘッド部は、前記厚さ方向に厚みを有するパネル部材によって形成され、
前記補強部は、前記接続部分における前記パネル部材の前記厚さ方向両側且つ厚み内に収まる位置にて、該パネル部材の前記厚さ方向両側の形成面に沿って設けられることを特徴とする請求項1に記載のピックルボール用パドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピックルボール用パドルに関する。
【背景技術】
【0002】
ピックルボールは、バドミントンコートと同じ広さのコートで板状のパドルを使い、穴あきのボールを打ち合うスポーツである。パドルは、プレーヤによって把持されるグリップと、グリップの一端に接続されて概略方形状の打球面を形成するヘッド部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2022/0040937号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パドルは、打球面の中央領域にて打球することで、良好な反発性能を得ることができる。一方、打球面の外周寄りにて打球すると、反発性能が低下してしまい、打球の力強さが損なわれ、打球のコントロールが困難になる。これは、打球時にグリップを中心軸とするトルクが発生し、グリップに対してヘッド部がねじれる方向に変形するためにスイングのエネルギーが吸収されることが原因の一つとなっている。
【0005】
ところで、特許文献1は、フレームを備えたピックルボール用パドルを開示している。かかるフレームは、グリップの形成部分と、該形成部分に連なってヘッド部の外周を形成するループ状部分とを備えている。
【0006】
特許文献1は、フレームのループ状部分によってヘッド部の外周全体を囲わなければならない、という設計上の制約がある。また、特許文献1は、ヘッド部の上端の形成部分にもフレームが配置されるので、パドル全体の重心位置がヘッド部の上端寄りとなり、パドルをスイングする際の重量感が大きくなって操作性が損なわれる、という問題がある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、グリップ部を中心とするねじり剛性を向上でき、設計上の自由度を高め、重心位置をグリップ部の下端に近付け易くすることができるピックルボール用パドルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明におけるピックルボール用パドルは、上下方向に延出するグリップ部と、前記グリップ部の上端側に設けられ、厚さ方向両側にボールを打撃する打球面を形成するヘッド部とを備えたピックルボール用パドルであって、前記ヘッド部と前記グリップ部との接続部分には、該接続部分を補強する補強部が設けられ、前記補強部の上端は、前記ピックルボール用パドル全体の上下方向中央位置より下方に設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ヘッド部とグリップ部との接続部分を補強部で補強できるので、グリップ部を中心とするねじり剛性を向上することができる。しかも、補強部の上端がパドル全体の上下方向中央位置より下方に設けられるので、該中央位置より上方領域の設計の自由度を向上でき、パドル全体の重心位置をグリップ部の下端に近付ける設計を容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施の形態に係るピックルボール用パドルの概略斜視図である。
【
図2】グリップ部の一部構成を省略した
図1の正面図である。
【
図4】第1の実施の形態に係る補強部の拡大概略斜視図である。
【
図5】第2の実施の形態に係るピックルボール用パドルの概略斜視図である。
【
図6】グリップ部の一部構成を省略した
図5の正面図である。
【
図7】第3の実施の形態に係るピックルボール用パドルの概略斜視図である。
【
図8】グリップ部の一部構成を省略した
図7の正面図である。
【
図9】第4の実施の形態に係るピックルボール用パドル部分拡大縦断面図である。
【
図10】第5の実施の形態に係るピックルボール用パドルの概略斜視図である。
【
図11】グリップ部の一部構成を省略した
図10の正面図である。
【
図12】第6の実施の形態に係るピックルボール用パドルの正面断面図である。
【
図13】第7の実施の形態に係るピックルボール用パドルの正面断面図である。
【
図14】第8の実施の形態に係るピックルボール用パドル部分拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、下記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施できるものである。以下の図においては、説明の便宜上、一部の構成を省略することがある。また、以下の実施の形態での各構成の向きは、一例にすぎず、任意の向きに変更することができる。
【0012】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
図1は、第1の実施の形態に係るピックルボール用パドルの概略斜視図である。
図2は、グリップの一部構成を省略した
図1の正面図である。
図3は、
図2のA-A線断面図である。
【0013】
図1及び
図2に示すように、ピックルボール用パドル(以下、「パドル」とする)10はプレーヤに把持されるグリップ部11と、グリップ部11の一端側に設けられて所定の厚みを有するヘッド部12とを備えている。
【0014】
なお、特許請求の範囲及び本明細書の説明において、特に明示しない限り、
図1中矢印にて示すように、グリップ部11の延出方向を上下方向とし、パドル10全体にて、ヘッド部12が位置する側を上側とし、グリップ部11が位置する側を下側とする。よって、グリップ部11の上端側にヘッド部12が設けられる。また、ヘッド部12の厚みに平行な方向を厚さ方向とし、厚さ方向の一側を表側、厚さ方向の他側が裏側とする。従って、厚さ方向は、表裏方向を意味する。更に、上下方向及び厚さ方向に直交する方向を左右方向とし、左側及び右側は、表側を手前にして見たときを基準とする。
【0015】
グリップ部11及びヘッド部12は、1枚のパネル部材Pによって形成される。パネル部材Pは、ヘッド部12と同様に厚さ方向に厚みを有している。パネル部材Pは、グリップ部11の中心軸部分を形成するよう上下方向に細長い形状を有するグリップ形成領域P1と、グリップ形成領域P1の上端に連なってヘッド部12に応じた面形状を有するヘッド形成領域P2とを備えている。
【0016】
図3に示すように、パネル部材Pは、ヘッド部12より小さい厚みに形成される芯材Paと、芯材Paの表側に積層される表側形成層Pbと、芯材Paの裏側に積層される裏側形成層Pcとを備えた積層構造とされる。
【0017】
芯材Paは、本実施の形態ではハニカムコアとされ、ポリプロピレン等の樹脂材料によって形成される。ハニカムコアの比重は0.05~0.2とされ、パドル10全体の軽量化を図っている。表側形成層Pb及び裏側形成層Pcは、薄板状に形成され、本実施の形態では、熱硬化性の繊維強化樹脂(FRP:Fiber Reinforced Plastics)によって形成され、パネル部材Pの剛性及び強度を高めている。
【0018】
なお、パネル部材Pは、上述した構成が好ましいものの、上述した構成以外の種々の構成を採用することができる。例えば、パネル部材Pは、積層構造でなく、無垢材や合板等としてもよい。また、パネル部材Pを積層構造とする場合、芯材Pa、表側形成層Pb及び裏側形成層Pcは、木材、合成樹脂、アルミニウム等の金属、及びそれらの複合材料等としてもよい。
【0019】
図2に示すように、グリップ部11は、上下方向に延出するグリップ芯部14を備えている。グリップ芯部14は、パネル部材Pのグリップ形成領域P1の厚さ方向両側及び左右方向両側に木材や樹脂材、繊維強化複合材を設けることで八角柱状に形成される。また、グリップ部11は、グリップ芯部14の下端に装着されるキャップ15を備え、グリップ部11の下端及びパドル10の下端は、キャップ15によって形成される。なお、グリップ芯部14は、八角柱状に限られず、断面が八角形以外の多角形や、該多角形の角部を円弧状に丸めた形状としてもよい。
【0020】
更に、
図1に示すように、グリップ部11は、グリップテープ16と、止めテープ17とを備えている。グリップテープ16は、合成皮革または天然皮革からなり、グリップ芯部14及びキャップ15(
図3参照)の外周側に螺旋状に巻回される。なお、
図3では、帯状となるグリップテープ16が巻回された状態ではなく、均一な一層として簡略化して図示している。
【0021】
止めテープ17は、グリップテープ16の上端に巻き付けて貼付され、グリップテープ16の巻回が解除されることを規制している。ここで、本実施の形態において、止めテープ17の上端は、グリップ部11の上端、ヘッド部12の下端、及び、グリップ部11及びヘッド部12の接続位置(境界位置)となる。そして、かかる接続位置を挟む所定の上下幅を備えた領域がグリップ部11及びヘッド部12の接続部分Bとされる。
【0022】
ヘッド部12は、厚さ方向両側にボールを打撃する打球面20を形成している。更に述べると、ヘッド部12の打球面20は、パネル部材Pのヘッド形成領域P2における表側形成層Pb及び裏側形成層Pcの露出面によって形成される(
図3参照)。
【0023】
ヘッド部12は、
図2のように厚さ方向から見た状態で、左右幅より上下幅が大きくなる概略長方形状に形成される。更に述べると、ヘッド部12は、左右一対の下側傾斜端縁21と、左右一対の側方端縁22と、上側膨出端縁23とを外周に備えた形状に設けられる。
【0024】
左右一対の下側傾斜端縁21は、厚さ方向から見て、ヘッド部12の下端から左右方向に向かって次第に上向きとなるように延出している。よって、ヘッド部12にて左右一対の下側傾斜端縁21により形成される領域は、下方に向かって左右幅が次第に小さくなる。左右一対の側方端縁22は、左右一対の下側傾斜端縁21の上端から上方に向かって延出している。上側膨出端縁23は、左右一対の側方端縁22の上端を繋ぐように延出し、左右方向中央部が上方に膨らむ形状に設けられている。なお、左右一対の下側傾斜端縁21と左右一対の側方端縁22との連結部分、及び、左右一対の側方端縁22と上側膨出端縁23との連結部分は、丸みを帯びた形状に設けられる。
【0025】
ヘッド部12にて、パネル部材Pにおけるヘッド形成領域P2の外周には1本のエッジガード25が設けられ、エッジガード25により各端縁21~23が形成される。エッジガード25は、ゴムや樹脂材等によって構成される。エッジガード25は、
図3に示すように、延出方向に直交する断面形状がC字状をなし、パネル部材Pの端面及び該端面近傍の表裏各面をカバーし、ヘッド部12を保護している。エッジガード25は、1本に限定されず、ヘッド部12の左側と右側とで分割して2本としたり、3本以上の複数本としてもよい。
【0026】
なお、
図2に示すように、エッジガード25の延出方向両端側は、グリップ部11の上端側における左右両側をカバーしている。また、エッジガード25の延出方向両端側には、グリップ部11の止めテープ17(
図1参照)が巻き付けられる。
【0027】
ここで、パドル10にて、ヘッド部12の左右方向中央位置となり、グリップ部11の中心軸と一致する中心軸C1を
図1及び
図2にて一点鎖線で図示する。パドル10において、グリップ部11とヘッド部12との接続部分Bでは、下方から上方に向かって急激に左右幅が大きくなる。よって、ピックルボールのプレー中、打球面20における中心軸C1から左右方向に離れた位置でボールを打撃し、中心軸C1を中心とするトルクが発生すると、接続部分Bにてグリップ部11に対してヘッド部12がねじれる方向の力が作用する。かかる力によって、仮にヘッド部12がねじれる方向に変形すると、スイングのエネルギーが吸収されて反発性能が低下してしまう。
【0028】
そこで、本実施の形態のパドル10は、ヘッド部12とグリップ部11との接続部分Bに設けられる補強部30を備え、補強部30によって接続部分Bを補強している。補強部30は、接続部分Bにおけるパネル部材Pの厚さ方向両側(表側及び裏側)それぞれに同一構成として設けられる。また、補強部30は、パネル部材Pの外側に設けられ、言い換えると、パネル部材Pに対し外付けされた状態で設けられる。以下、補強部30の構成について説明する。
【0029】
図4は、第1の実施の形態に係る補強部の拡大概略斜視図である。
図4にも示すように、補強部30は、嵌め込み部31と、中央形成部32と、左右一対の側方形成部33とを備えている。
【0030】
嵌め込み部31は、上下方向から見てC字状をなし、パネル部材Pのグリップ形成領域P1を厚さ方向から受容することで補強部30を左右及び厚さ方向に位置決めできるように設けられる。
【0031】
中央形成部32は、嵌め込み部31の上端から上方に向かって突出する片状に形成されている。中央形成部32は、接続部分Bを含む領域に配置され、上下方向にてヘッド部12の下端に跨って位置する。
【0032】
側方形成部33は、中央形成部32の左右両側から帯状に延出している。側方形成部33は、中央形成部32の左右両側から斜め上方に延出し、左右の下側傾斜端縁21に略平行または先端に向かって徐々に左右の下側傾斜端縁21から離れる方向に延出している。
【0033】
側方形成部33の先端は、半円弧状に形成されている。側方形成部33の先端における最も上方に位置する部分が補強部30の上端30aとされる。補強部30の上端30aは、パドル10全体の上下方向中央位置C2より下方に設けられる。言い換えると、上下方向中央位置C2より上方には補強部30が非形成とされる。本実施の形態では、パドル10全体の上下長さを100とした場合、パドル10下端(キャップ15の下端)から補強部30の上端30aまでの上下長さが35以上45以下の範囲に収まるように配置される。また、パネル部材Pの厚さを100とした場合、中央形成部32及び側方形成部33の厚さが7以上40以下の範囲に収まるように形成される。なお、側方形成部33の先端は、半円弧状に限られず、直線状や少なくとも1箇所で屈曲する折れ線状としてもよい。
【0034】
表側の補強部30における中央形成部32及び側方形成部33は、パネル部材Pの表側の形成面に対向する面が平坦となって該形成面に沿って設けられる。裏側の補強部30における中央形成部32及び側方形成部33は、パネル部材Pの裏側の形成面に対向する面が平坦となって該形成面に沿って設けられる。パネル部材Pの表裏の形成面や、該形成面に対向する補強部30の形成面は、平坦とすることに限定されるものでなく、凹凸を備えた形状としてもよい。例えば、パネル部材Pの表裏の形成面に凸部を形成し、該突部に嵌合する凹部を補強部30の形成面に形成してもよい。
【0035】
パネル部材Pに対する補強部30の固定は、種々の方法を採用することができる。例えば、嵌め込み部31がパネル部材Pのグリップ形成領域P1に対し接着等により固定され、中央形成部32及び側方形成部33がパネル部材Pの表裏の形成面に直接面接触しつつ接着しないようにしてもよい。また、嵌め込み部31、中央形成部32及び側方形成部33の全てがパネル部材Pに対し接着剤や粘着テープによって固定されるようにしてもよい。
【0036】
本実施の形態の構成によれば、補強部30によってグリップ部11とヘッド部12との接続部分Bを補強できるので、中心軸C1を中心とするトルクに対するねじり剛性を向上することができる。これにより、打球面20における中心軸C1から左右方向に離れた位置でボールを打撃しても、ヘッド部12がねじれる方向に変形することを抑制でき、スイングのエネルギーを効率良くボールに伝達して反発性能を高めることができる。この結果、打球面20の中心軸C1から離れた位置で打球しても、打球の力強さや、打球のコントロール性能が損なわれることを抑制することが可能となる。
【0037】
しかも、補強部30の上端30aがパドル10全体の上下方向中央位置C2より下方に設けられるので、従来のようにヘッド部の外周全体を囲うフレームをなくすことができる。従って、上下方向中央位置C2より上方の設計の自由度を向上でき、パドル10全体の重心位置をグリップ部11の下端に近付ける設計を容易に行うことができる。これにより、パドル10をスイングする際の重量感を小さくすることができ、プレー中のパドル10の操作性を良好に発揮することが可能となる。
【0038】
また、表裏一対の補強部30がパネル部材Pの厚さ方向両側に外付けされるので、厚さ方向からパネル部材Pを挟み込んでねじり剛性を高めることができる。更に、補強部30が側方形成部33を有するので、中心軸C1を中心とするトルクへの抗力を増大させることができ、ヘッド部12がねじれる方向への変形をより良く抑制することが可能となる。
【0039】
次に、本発明の前記以外の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、説明する実施の形態より前に記載された実施の形態と同一若しくは同等の構成部分については同一符号を用いる場合があり、説明を省略若しくは簡略にする場合がある。
【0040】
[第2の実施の形態]
図5は、第2の実施の形態に係るピックルボール用パドルの概略斜視図である。
図6は、グリップ部の一部構成を省略した
図5の正面図である。
図5及び
図6に示すように、第2の実施の形態の補強部30は、第1の実施の形態の補強部30における側方形成部33を省略した構成とされる。
【0041】
第2の実施の形態における補強部30の上端30aは、中央形成部32の上端によって形成され、パドル10全体の上下方向中央位置C2より下方に設けられる。本実施の形態では、パドル10全体の上下長さを100とした場合、パドル10下端(キャップ15の下端)から補強部30の上端30aまでの上下長さが32以上40以下の範囲に収まるように配置される。
【0042】
第2の実施の形態の構成によっても、第1の実施の形態と同様に、接続部分Bを補強してねじり剛性を向上でき、反発性能を高めることが可能となる。なお、第2の実施の形態は、第1の実施の形態に対し、補強部30によるねじり剛性は小さくなるものの、側方形成部33を省略した分の補強部30の軽量化、コンパクト化を図ることができる。
【0043】
[第3の実施の形態]
図7は、第3の実施の形態に係るピックルボール用パドルの概略斜視図である。
図8は、グリップ部の一部構成を省略した
図7の正面図である。
図7及び
図8に示すように、第3の実施の形態の補強部30は、第1の実施の形態の補強部30における側方形成部33に代え、補強板部35を備えた構成とされる。
【0044】
第3の実施の形態にて、補強部30の補強板部35は、中央形成部32の上側及び左右両側に連なって設けられる。補強板部35は、厚さ方向から見て、中央形成部32の左右両端から下側傾斜端縁21に沿って延出する一対の側辺35aと、一対の側辺35aの上端に連なって左右方向に延出する上辺35bとを備えている。よって、補強板部35は、厚さ方向から見て概略逆三角形状に形成される。
【0045】
第3の実施の形態における補強部30の上端30aは、補強板部35の上辺35bによって形成され、パドル10全体の上下方向中央位置C2より下方に設けられる。本実施の形態では、パドル10全体の上下長さを100とした場合、パドル10下端(キャップ15の下端)から補強部30の上端30aまでの上下長さが32以上43以下の範囲に収まるように配置される。
【0046】
第3の実施の形態の構成においては、第1の実施の形態よりも、補強部30自体の剛性を高めて接続部分Bの補強によるねじり剛性をより向上でき、反発性能を高めることが可能となる。
【0047】
[第4の実施の形態]
図9は、第4の実施の形態に係るピックルボール用パドル部分拡大縦断面図である。
図9に示すように、第4の実施の形態は、第1の実施の形態と同一の補強部30を備え、更に、ヘッド部12における表側及び裏側の補強部30それぞれの配置領域に凹部27を形成している。
【0048】
第4の実施の形態にて、凹部27は、厚さ方向から見て(不図示)、補強部30の外周に沿う形状に形成され、内部に補強部30を受容するように形成される。ヘッド部12における凹部27の形成領域(補強部30の配置領域)は、他の領域に比べてパネル部材Pの厚みが小さく形成される。凹部27の深さ(厚さ方向の幅)は、側方形成部33の厚さと略同一に設定することが例示できる。
【0049】
第4の実施の形態の構成においては、凹部27を形成したので、ヘッド部12にて、補強部30が打球面20と同一面上に位置する領域を拡大したり、補強部30が打球面20より厚さ方向にはみ出る領域を縮小したりすることができる。
【0050】
[第5の実施の形態]
図10は、第5の実施の形態に係るピックルボール用パドルの概略斜視図である。
図11は、グリップ部の一部構成を省略した
図10の正面図である。
図10及び
図11に示すように、第5の実施の形態は、第1の実施の形態に対し、補強部30を省略し、ヘッド部12の下側傾斜端縁21に沿う位置に左右一対の補強部40を備えている。
【0051】
第5の実施の形態は、第1の実施の形態に対し、ヘッド部12におけるエッジガード25の装着領域が変更され、エッジガード25の延出方向両端が中央位置C2より若干下方となるよう装着される。補強部40は、エッジガード25の延出方向両端から接続部分Bに亘る領域に延出するよう設けられる。かかる領域にて、補強部40は、パネル部材Pの端面に沿う外側に設けられる。補強部40は、延出方向に直交する断面形状がC字状をなし、パネル部材Pの端面及び該端面近傍の表裏各面をカバーしつつ厚さ方向両側から挟み込んでいる。また、補強部40は、硬質の樹脂材、繊維強化複合材、金属等によって構成され、装着領域に含まれる接続部分Bを補強している。
【0052】
パネル部材Pに対する補強部40の固定は、種々の方法を採用することができる。例えば、補強部40の弾性変形によってパネル部材Pの端面近傍を厚さ方向から挟み込んでもよいし、補強部40とパネル部材Pとを接着剤や粘着テープによって固定してもよい。補強部40の下端側には、グリップ部11の止めテープ17(
図11では不図示)が巻き付けられる。
【0053】
第5の実施の形態にて、補強部40の上端40aは、パドル10全体の上下方向中央位置C2より下方に設けられる。本実施の形態では、パドル10全体の上下長さを100とした場合、パドル10下端(キャップ15の下端)から補強部40の上端40aまでの上下長さが40以上50以下の範囲に収まるように配置される。
【0054】
第5の実施の形態においては、左右一対の補強部40によって、左右両側から接続部分Bを補強してねじり剛性を向上でき、反発性能を高めることが可能となる。
【0055】
[第6の実施の形態]
図12は、第6の実施の形態に係るピックルボール用パドルの正面断面図である。
図12に示すように、第6の実施の形態では、第1の実施の形態に対し、補強部30を省略し、パネル部材Pの芯材Paが異なる材質となる第1形成部Pa1及び第2形成部Pa2を備えて構成される。
【0056】
第6の実施の形態の芯材Paにおいて、第1形成部Pa1は、グリップ形成領域P1全体、ヘッド形成領域P2の下方領域の一部及びそれらの間の接続部分Bを形成している。第2形成部Pa2は、第1形成部Pa1の上方に隣り合って設けられ、ヘッド形成領域P2にて第1形成部Pa1以外の領域を形成している。
【0057】
第2形成部Pa2は、第1の実施の形態の芯材Paと同様のハニカムコアによって構成される。一方、第1形成部Pa1は、第2形成部Pa2に比べて弾性率(縦弾性係数及び横弾性係数の少なくとも一方)が大きい材料によって構成され、中実となる樹脂材等とすることが例示できる。
【0058】
第1形成部Pa1は、第2形成部Pa2に比べて高い剛性を発揮でき、接続部分B及びヘッド部12の下側傾斜端縁21に沿う領域を補強している。よって、芯材Paの第1形成部Pa1によって補強部50が構成される。芯材Paはパネル部材Pの厚み内に収まるので、補強部50も第1形成部Pa1の形成領域にてパネル部材Pの厚み内に収まるように設けられる。なお、第1形成部Pa1及び第2形成部Pa2の厚さは、同一としてもよいし、異なっていてもよい。第2形成部Pa2により第1形成部Pa1の方が厚みを大きくすることで、補強部50による補強効果を高めつつ、補強している部分を外部から視認し易くすることができる。
【0059】
第1形成部Pa1は、第2形成部Pa2との境界が左右方向両端から中央部が下方に凹む円弧状に形成されている。第6の実施の形態にて、補強部50の上端50aは、第1形成部Pa1の左右の上端位置によって形成され、パドル10全体の上下方向中央位置C2より下方に設けられる。本実施の形態では、パドル10全体の上下長さを100とした場合、パドル10下端(キャップ15の下端)から補強部50の上端50aまでの上下長さが40以上50以下の範囲に収まるように配置される。なお、第1形成部Pa1と第2形成部Pa2との境界の形状は、上述の円弧状に限られず、少なくとも1箇所で屈曲する折れ線状として左右方向中央部が下方に凹む形状としてもよい。
【0060】
第6の実施の形態によっても、補強部50により接続部分Bを補強してねじり剛性を向上でき、反発性能を高めることが可能となる。しかも、補強部50を表出させずに設けることができ、パドル10の外観を変更しなくても接続部分Bを補強することができる。
【0061】
[第7の実施の形態]
図13は、第7の実施の形態に係るピックルボール用パドルの正面断面図である。
図13に示すように、第7の実施の形態は、第6の実施の形態に対し、厚さ方向から見た第1形成部Pa1及び第2形成部Pa2の形状を変更している。
【0062】
第7の実施の形態の第1形成部Pa1は、第6の実施の形態の第1形成部Pa1に対し、上下方向における形成範囲は同一とされ、左右方向における形成範囲を変更している。第7の実施の形態の第1形成部Pa1は、グリップ形成領域P1、ヘッド形成領域P2の下方領域の一部及びそれらの間の接続部分Bにおける左右両側の端面を形成しつつ、該端面に沿う所定幅領域に設けられる。よって、第2形成部Pa2は、左右に離れて形成される第1形成部Pa1の間と、第1形成部Pa1より上方領域とを形成している。
【0063】
第7の実施の形態においても、芯材Paの第1形成部Pa1によって補強部50が構成され、補強部50により接続部分B及びヘッド部12の下側傾斜端縁21に沿う領域を補強している。
【0064】
第7の実施の形態によっても、補強部50により接続部分Bを補強してねじり剛性を向上でき、反発性能を高めることが可能となる。しかも、補強部50を表出させずに設けることができ、パドル10の外観を変更しなくても接続部分Bを補強することができる。
【0065】
[第8の実施の形態]
図14は、第8の実施の形態に係るピックルボール用パドル部分拡大縦断面図である。
図14に示すように、第8の実施の形態は、第1の実施の形態に対し、補強部30を省略し、パネル部材Pが補強部となる補強層Pdを備えている。
【0066】
第8の実施の形態にて、補強層Pdは、表側形成層Pb及び裏側形成層Pcと同一材質で同一厚みの部材を用いることが例示できる。補強層Pdは、芯材Paと表側形成層Pbとの間、及び、芯材Paと裏側形成層Pcとの間に設けられる。よって、補強層Pdは、パネル部材Pの厚さ方向両側に位置し、且つ、パネル部材Pの厚み内に収まる位置に設けられる。また、補強層Pdは、外側に表出しないものの、パネル部材Pの表側の形成面及びパネル部材Pの裏側の形成面に沿って設けられている。
【0067】
補強層Pdの上下方向の形成範囲は、グリップ形成領域P1全体、ヘッド形成領域P2の下方領域の一部及びそれらの間の接続部分Bとされ、補強層Pdによって接続部分Bを補強している。
【0068】
第8の実施の形態にて、補強部となる補強層Pdの上端Pdaは、パドル10全体の上下方向中央位置C2(
図14では不図示、
図3参照)より下方に設けられる。本実施の形態では、パドル10全体の上下長さを100とした場合、パドル10下端(キャップ15の下端)から補強層Pdの上端Pdaまでの上下長さが40以上50以下の範囲に収まるように配置される。
【0069】
第8の実施の形態においても、補強層Pdにより接続部分Bを補強してねじり剛性を向上でき、反発性能を高めることが可能となる。しかも、補強層Pdを表出させずに設けることができ、パドル10の外観を変更しなくても接続部分Bを補強することができる。
【0070】
なお、本発明は上記各実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状、方向などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0071】
第1から第3の実施の形態にて、厚さ方向から見た補強部30の形成位置は、接続部分Bを補強しつつ中央位置C2より上端30aが下方に位置する限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、第1の実施の形態の側方形成部33の傾斜角度を変更したり、第3の実施の形態の補強板部35の形状を方形状や多角形状、円形状としたり、補強板部35の面内に開口を設けたりしてもよい。
【0072】
また、第1から第3の実施の形態にて、嵌め込み部31はパネル部材Pに対して位置決めできる他の形状としたり、嵌め込み部31を省略した補強部30の構成としてもよい。
【0073】
また、第4の実施の形態の補強部30は、第2及び第3の実施の形態の補強部30の構成に変更する等、第1の実施の形態以外の上述した各形状の補強部30に変更してもよく、該形状に応じた深さ及び形状の凹部27を形成すればよい。
【0074】
また、第6及び第7の実施の形態の補強部50は、接続部分Bを補強できる限りにおいて、厚さ方向から見た形状を変更してもよい。例えば、第6の実施の形態の補強部50の上端50aを左右方向と平行に形成したり、第7の実施の形態の補強部50の下端をパネル部材Pの下端より上方位置としてもよい。
【0075】
また、第8の実施の形態の補強層Pdは、表側形成層Pb及び裏側形成層Pcと異なる材質や、異なる厚みの部材を用いてもよい。更に、補強層Pdは、接続部分Bを補強できる限りにおいて、下端をパネル部材Pの下端より上方位置とする等、形成位置を変更してもよい。
【0076】
また、上記各実施の形態にて、厚さ方向から見たヘッド部12の形状は、円形や楕円形、多角形にする等、特に限定されるものでない。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、穴あきのボールを打ち合うピックルボールで使用されるパドルであり、グリップ部を中心とするねじり剛性を向上しつつ、設計上の自由度を高め、重心位置をグリップ部の下端に近付けることができるピックルボール用のパドルに関する。
【符号の説明】
【0078】
10 :パドル
11 :グリップ部
12 :ヘッド部
20 :打球面
21 :下側傾斜端縁
30 :補強部
30a :上端
32 :中央形成部
33 :側方形成部
35 :補強板部
35a :側辺
35b :上辺
40 :補強部
40a :上端
50 :補強部
50a :上端
B :接続部分
C2 :上下方向中央位置
P :パネル部材
Pa :芯材
Pa1 :第1形成部
Pa2 :第2形成部
Pb :表側形成層
Pc :裏側形成層
Pd :補強層(補強部)
Pda :上端