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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021551
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】ロボットシステム
(51)【国際特許分類】
   B25J 3/00 20060101AFI20250206BHJP
【FI】
B25J3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125331
(22)【出願日】2023-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100172362
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達哉
(72)【発明者】
【氏名】東 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】辻森 俊行
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS10
3C707JT05
3C707JT07
3C707JU14
3C707KS28
3C707KS33
3C707LV15
(57)【要約】
【課題】操作者による操作動作と連動してロボットを動作させる場合に、作業性の低下を抑制可能なロボットシステムを提供する。
【解決手段】このロボットシステム100は、操作者による操作動作を検出する操作装置20と、操作装置20により検出された操作動作と連動して動作するロボット10と、ロボット10の動作範囲を、通常範囲から、通常範囲よりも範囲が小さい制限範囲に切り替える制御部29と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者による操作動作を検出する操作装置と、
前記操作装置により検出された操作動作と連動して動作するロボットと、
前記ロボットの動作範囲を、予め設定された通常範囲から、前記通常範囲よりも範囲が小さい制限範囲に切り替える制御部と、を備える、ロボットシステム。
【請求項2】
前記ロボットの動作範囲を切り替える操作を受け付ける切り替え操作部をさらに備え、
前記制御部は、前記切り替え操作部により受け付けられた操作に基づいて、前記ロボットの動作範囲を前記通常範囲から前記制限範囲に切り替える、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記制御部は、前記ロボットに対して設定された制御点の基準位置を設定するとともに、設定された前記基準位置からの前記制御点の動作範囲を制限することによって、前記制限範囲を設定する、請求項1または2に記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記ロボットは、前記ロボットに加えられる接触力を検出する接触センサを含み、
前記制御部は、前記接触センサからの検出結果に基づいて、前記接触力が検出されたタイミングにおける前記制御点の位置を前記基準位置として設定する、請求項3に記載のロボットシステム。
【請求項5】
前記操作装置は、前記操作者により把持される把持部を含み、前記操作者による前記把持部を移動させる操作動作を検出し、
前記ロボットは、前記操作者による前記把持部を移動させる操作動作に連動して動作し、
前記制御部は、前記ロボットにおける前記通常範囲と前記制限範囲との各々の動作範囲に対応して前記把持部の移動範囲を制限する、請求項1または2に記載のロボットシステム。
【請求項6】
前記制御部は、前記ロボットの前記操作装置により検出された操作動作との連動が停止された状態で、前記ロボットの動作範囲を切り替える、請求項1または2に記載のロボットシステム。
【請求項7】
予め設定された前記制限範囲の大きさを記憶する記憶部をさらに備え、
前記切り替え操作部は、前記制限範囲の大きさを変更する操作を受け付け、
前記制御部は、前記切り替え操作部により受け付けられた操作に基づいて、前記記憶部に記憶された前記制限範囲の大きさを変更する、請求項2に記載のロボットシステム。
【請求項8】
前記切り替え操作部は、前記ロボットの動作を教示するための操作を受け付け、
前記制御部は、教示のための操作を受け付ける前記切り替え操作部により受け付けられた動作範囲を切り替える操作に基づいて、前記ロボットの動作範囲を切り替える、請求項2に記載のロボットシステム。
【請求項9】
前記ロボットは、研削加工を行う加工ツールが取り付けられるロボットアームを含み、
前記制御部は、前記ロボットの動作範囲を切り替えることによって、前記加工ツールの移動範囲を切り替える、請求項1または2に記載のロボットシステム。
【請求項10】
前記ロボットは、加工ツールが取り付けられるロボットアームを含み、
前記制御部は、
前記加工ツールの向きを基準としたツール座標系において前記ロボットを動作させることと、前記加工ツールの向きに係わらず絶対的な三次元空間を基準としたベース座標系において前記ロボットを動作させることとを切り替えるとともに、
前記ツール座標系における前記ロボットの動作と前記ベース座標系における前記ロボットの動作との各々において、前記ロボットの動作範囲を、前記通常範囲から前記制限範囲に切り替える、請求項1または2のロボットシステム。
【請求項11】
前記ロボットは、前記ロボットに加えられる接触力を検出する接触センサを含み、
前記操作装置は、前記操作装置を前記ロボットと連動させる操作駆動部を含み、
前記制御部は、前記接触センサにより検出された検出結果に基づいて、前記接触力に連動して前記操作駆動部を動作させる、請求項1または2に記載のロボットシステム。
【請求項12】
前記ロボットは、遠隔制御により前記操作装置により検出された操作動作と連動し、
前記制御部は、遠隔制御により前記操作装置により検出された操作動作と連動する前記ロボットの動作範囲を前記通常範囲から前記制限範囲に切り替える、請求項1または2に記載のロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、ロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スレーブ装置をマスタ装置に追従させるシステムが知られている。たとえば、特許文献1では、操作子を含むマスタ装置と、接触対象物に接触する接触子を含むスレーブ装置とを備える力触覚伝達システムが開示されている。上記特許文献1に開示されているシステムでは、マスタ装置とスレーブ装置との間で動作が追従するバイラテラル制御によって、マスタ装置の操作部に対して操作者が加えた力が、スレーブ装置に伝達される。これにより、操作者により操作子に加えられる力と連動してスレーブ装置が動作する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6964293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の力触覚伝達システムでは、マスタ装置に加えられる操作者による操作動作と連動してスレーブ装置を動作させるため、マスタ装置に対する操作者の操作動作が直接的にスレーブ装置の動作に反映される。そのため、操作者は、スレーブ装置としてのロボットの動作が大きくなりすぎないように、マスタ装置としての操作装置に対する操作動作が大きくなりすぎないように注意する必要がある。これにより、動作範囲に注意しながら操作動作を行うことに起因して、ロボットの操作における作業性が低下する。このため、操作者による操作動作と連動するロボットを動作させる場合に、作業性の低下を抑制することが望まれている。
【0005】
この開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この開示の1つの目的は、操作者による操作動作と連動してロボットを動作させる場合に、作業性の低下を抑制可能なロボットシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この開示の一の局面によるロボットシステムは、操作者による操作動作を検出する操作装置と、操作装置により検出された操作動作と連動して動作するロボットと、ロボットの動作範囲を、通常範囲から、通常範囲よりも範囲が小さい制限範囲に切り替える制御部と、を備える。
【0007】
この開示の一の局面によるロボットシステムは、上記のように、ロボットの動作範囲を、通常範囲から、通常範囲よりも範囲が小さい制限範囲に切り替える制御部を備える。これにより、ロボットの動作範囲を通常範囲よりも範囲が小さい制限範囲に切り替えることによって、ロボットの動作の動作範囲が大きくなりすぎることを制御部により自動的に抑制できる。そのため、動作範囲に注意しながら操作動作を行わずとも、ロボットの動作範囲が大きくなりすぎることを抑制できる。その結果、操作者による操作動作と連動してロボットを動作させる場合に、作業性の低下を抑制できる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、操作者による操作動作と連動してロボットを動作させる場合に、作業性の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態によるロボットシステムの全体構成を示した斜視図である。
図2】一実施形態によるロボットシステムの構成を示したブロック図である。
図3】一実施形態による操作装置の構成を説明するための斜視図である。
図4】通常範囲におけるロボットの動作範囲を模式的に示した図である。
図5】制限範囲におけるロボットの動作範囲を模式的に示した図である。
図6】教示装置のタッチパネルを模式的に示した図である。
図7】ベース座標系とツール座標系との切り替えを説明するための図である。
図8】ロボットシステムによるロボットの動作範囲の切り替え処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示を具体化した本開示の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1から図7までを参照して、本実施形態によるロボットシステム100の構成について説明する。
【0012】
(ロボットシステムの構成)
図1に示すように、ロボットシステム100は、ロボット10および操作装置20を備えている。ロボットシステム100は、マスタスレーブシステムである。ロボット10は、遠隔制御により操作装置20により検出された操作者の操作動作と連動して動作するスレーブ装置である。ロボット10は、ネットワークを介して操作装置20に接続されている。操作装置20は、操作者による操作動作を検出するマスタ装置である。本実施形態では、ロボット10は、たとえば、ワーク101に対してバリ取りなどの研削加工を行う産業用ロボットである。
【0013】
図2に示すように、具体的には、ロボット10は、制御部19を含む。制御部19は、ロボット10の各部の動作を制御する。操作装置20は、制御部29を含む。制御部29は、操作装置20の各部の動作を制御する。ロボットシステム100は、ロボット10の制御部19と操作装置20の制御部29とが互いに信号の送受信を行うことによって、遠隔制御によるマスタスレーブシステムとして動作する。
【0014】
ロボット10は、ロボットアーム11、加工ツール12、および、センサ13を含む。ロボットアーム11は、複数のリンク部材を有する6軸の垂直多関節ロボットアームである。ロボットアーム11の基端は、床面に固定された基台に取り付けられている。ロボットアーム11の先端には、エンドエフェクタである加工ツール12が取り付けられている。加工ツール12は、円盤部材が回転することによりワーク101に対して研削加工を行うグラインダを含む。センサ13は、ロボットアーム11の先端部分において、加工ツール12とロボットアーム11との間に配置されている。すなわち、加工ツール12は、センサ13を介してロボットアーム11に取り付けられている。センサ13は、たとえば、圧電式、光学式、静電容量式、または、ひずみゲージなどによる力覚センサを含む。センサ13は、ロボット10に加えられる接触力を検出する。たとえば、センサ13は、互いに直交する3軸方向に沿う力と、互いに直交する3軸方向周りの回転力との6軸の力を検出する。センサ13は、ロボットアーム11の動作により加工ツール12がワーク101に接触したことによる接触力を検出する。なお、センサ13は、接触センサの一例である。
【0015】
制御部19は、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置と、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)などのメモリと、ハードディスクなどの記憶装置とを含む。制御部19は、記憶装置に記憶されたプログラムおよびパラメータなどに基づいて、演算装置による制御処理を実行する。また、制御部19は、通信モジュールを含む。制御部19は、通信モジュールを介して操作装置20の制御部29から取得された制御信号に基づいて、ロボット10の各部の動作を制御する。制御部19は、センサ13により検出された接触力の検出結果を、制御部29に出力する。また、制御部19は、サーボモータを含む駆動源の動作を制御することによって、ロボットアーム11の関節を回転させて、ロボットアーム11を動作させる。制御部19は、ロボットアーム11を動作させることによって、加工ツール12の位置および傾きを変更させる。また、制御部19は、加工ツール12の動作を制御する。たとえば、制御部19は、ロボット10の動作の全体を制御するメインCPUとサーボモータを含む駆動源に供給される電流の制御を行うサーボCPUとを有する。
【0016】
図3に示すように、操作装置20は、把持部21、リンク部材22、駆動部23、および、センサ24を含む。なお、駆動部23は、操作駆動部の一例である。把持部21は、ロボット10の動作を操作するために操作者により把持される。把持部21は、たとえば、操作者の両手により把持された状態で、操作者による操作動作により位置および傾きが変更される。また、把持部21には、スイッチ21aが配置されている。スイッチ21aは、加工ツール12の動作を操作するための入力操作を受け付ける。たとえば、スイッチ21aは、加工ツール12のグラインダの円盤部材の回転のオンとオフとを切り替える入力操作を受け付ける。リンク部材22は、把持部21が配置されている支持板21bを支持する6つのパラレルリンク構造のアーム部材を有する。
【0017】
リンク部材22では、支持板21bに対して、互いに異なる3方向の各々に向かって、放射状にアーム部材が1対ずつ配置されている。リンク部材22の6つのアーム部材の各々において、2つの棒状部材が関節を介して互いに接続されている。棒状部材を接続する関節は、ボールジョイントなどの自在継手であって、3軸周りに回動する。また、リンク部材22の6つのアーム部材の各々は、先端部において把持部21が配置されている支持板21bに対して、ボールジョイントなどの自在継手である関節部を介して接続されている。駆動部23は、リンク部材22の6つのアーム部材の各々ごとに、1つずつ配置されたサーボモータを含む。駆動部23は、リンク部材22における6つのアーム部材の各々を駆動させる。リンク部材22の6つのアーム部材の各々は、把持部21とは反対側の基端部において、駆動部23のサーボモータの回転軸に対して減速機などを介して接続されている。駆動部23は、リンク部材22を駆動させることによって、リンク部材22に接続された把持部21を駆動させる。また、駆動部23は、サーボモータの軸線周りの回転位置を検出するエンコーダを検出部として含んでいる。本実施形態では、駆動部23は、操作装置20をロボット10と連動させる。操作装置20とロボット10との連動動作の詳細は後述する。
【0018】
センサ24は、ロボット10のセンサ13と同様に、たとえば、圧電式、光学式、静電容量式、または、ひずみゲージなどによる力覚センサを含む。センサ24は、操作者の操作動作により、把持部21に加えられる操作力を検知する。センサ24は、把持部21とリンク部材22との間に配置されている。具体的には、センサ24は、支持板21bに配置されている。たとえば、センサ24は、互いに直交する3軸方向に沿う力と、互いに直交する3軸方向周りの回転力との6軸の力を検出する。
【0019】
図1に示すように、操作装置20は、教示装置25、および、記憶部26を含む。教示装置25は、操作者による入力操作を受け付ける。教示装置25は、タッチパネル25aと複数の操作スイッチ25bとを有している。教示装置25は、タッチパネル25aと複数の操作スイッチ25bとに対する入力操作に基づいて、ロボット10の動作を教示するための操作を受け付ける。すなわち、教示装置25は、ロボット10の動作を制御するための設定値を記憶する入力操作を受け付ける。教示装置25は、いわゆる、ティーチングペンダントである。教示装置25は、制御部29に接続されている。教示装置25は、受け付けられた入力操作に基づく操作信号を制御部29に対して出力する。また、教示装置25は、制御部29からの信号に基づいて、タッチパネル25aにロボットシステム100の状態を示す情報を表示する。なお、教示装置25は、切り替え操作部の一例である。
【0020】
記憶部26は、制御部29により実行されるプログラム、および、制御部29による操作装置20の制御のためのパラメータを記憶している。記憶部26は、ハードディスクなどの記憶装置を含む。制御部29は、CPUなどの演算装置と、メモリとを含んでいる。制御部29は、制御部19と同様に、記憶部26に記憶されたプログラムおよびパラメータなどに基づいて、演算装置による制御処理を実行する。また、制御部29は、通信モジュールを含む。制御部29は、ロボット10を動作させる制御信号を生成するとともに、通信モジュールを介して生成された制御信号をロボット10の制御部19に出力する。制御部29は、駆動部23を動作させる。また、制御部29は、教示装置25からの操作信号を取得する。
【0021】
〈操作装置とロボットとの連動〉
ロボットシステム100は、ロボット10と操作装置20との間において姿勢と力とを互いに追従させるバイラテラル方式の制御を行う。操作装置20の制御部29は、駆動部23の検出部における検出結果と、センサ24による検出結果とを取得する。そして、取得された検出結果に基づいて、操作装置20の制御部29は、操作者による把持部21を移動させる操作動作を検出する。制御部29は、把持部21の位置および角度を含む姿勢と、把持部21に加えられる力とを含む操作動作を検出する。そして、制御部29は、検出された操作動作に基づいて、ロボット10を動作させるための動作信号を生成する。制御部29は、把持部21を移動させる操作動作に連動して、ロボット10を動作させることによって、ロボット10の加工ツール12の位置および角度を変更させる。すなわち、ロボット10は、制御部29からの動作信号に基づいて、操作者の操作動作において変更された把持部21の位置および角度を含む姿勢に追従するように加工ツール12の位置および角度を変更するとともに、把持部21に加えられた操作力に追従するように加工ツール12がワーク101に対して加える力を制御する。たとえば、ロボット10は、操作装置20の把持部21が移動された距離および方向のそれぞれと同等の距離および方向に、加工ツール12を移動させるように動作する。
【0022】
また、本実施形態では、制御部29は、ロボット10のセンサ13により検出された接触力の検出結果に基づいて、検出された接触力に連動して駆動部23を動作させる。具体的には、制御部29は、駆動部23の動作を制御することによって、センサ13により検出された接触力に追従するように駆動部23の出力を制御する。これにより、加工ツール12がワーク101に接触することによる接触力が、把持部21を把持する操作者に伝達される。すなわち、制御部29は、加工ツール12がワーク101に接触することによる接触力が操作者に対してフィードバックされるように、把持部21を動作させる駆動部23の出力を制御する。
【0023】
(動作範囲の切り替え)
図4に示すように、ロボット10の動作範囲として、通常範囲が予め設定されている。ロボット10の動作範囲は、ロボット10に対して設定された制御点を基準として設定されている。たとえば、制御部29は、ロボット10における加工ツール12の先端の位置を、基準となる制御点として設定する。制御部29は、把持部21に対する操作動作を検出することによって、操作動作と連動するように加工ツール12の先端である制御点の位置および傾きを変更させる。ロボット10の動作範囲としての通常範囲は、予め設定された基準位置と、基準位置を基準とした三次元方向の範囲とに基づいて設定されている。たとえば、ロボット10が配置された絶対的な三次元空間を基準とした空間座標系であるベース座標系において、通常範囲における基準位置の座標が予め設定される。そして、ベース座標系における三次元方向の各々の範囲が設定されることによって、通常範囲の位置および大きさが設定される。通常範囲の設定は、予め記憶部26に記憶されている。制御部29は、制御点の位置が通常範囲に含まれるようにロボット10の動作を制御する。また、ロボット10の動作範囲に追従するように、把持部21の移動範囲が制限される。たとえば、操作者が通常範囲を越えてロボット10を動作させるように把持部21を移動させようとした場合には、制御部29は、駆動部23の駆動を制御することにより、操作力に反発するように把持部21に駆動力を生じさせる。
【0024】
図5に示すように、ロボットシステム100では、操作者による入力操作によって、ロボット10の動作範囲が制限される。本実施形態では、教示装置25によって、ロボット10の動作範囲を切り替える操作が受け付けられる。そして、制御部29は、教示装置25によって受け付けられた操作に基づいて、ロボット10の動作範囲を通常範囲から制限範囲に切り替える。制限範囲では、ロボット10の動作範囲が通常範囲よりも小さい。制限範囲の大きさは、予め設定されて記憶部26に記憶されている。
【0025】
ロボット10の動作範囲としての制限範囲は、通常範囲と同様に、予め設定された基準位置と、基準位置を基準とした三次元方向の範囲とに基づいて設定されている。本実施形態では、制御部29は、ロボット10の制御点の制限範囲における基準位置を設定するとともに、設定された基準位置からの制御点の動作範囲を制限することによって、制限範囲を設定する。具体的には、制御部29は、センサ13からの検出結果に基づいて、加工ツール12のワーク101に対する接触による接触力が検出されたタイミングにおける制御点の位置を基準位置として設定する。
【0026】
たとえば、制御部29は、制限範囲の基準位置が設定されていない状態において、ロボット10の動作範囲を通常範囲に設定する。操作者は、加工ツール12の動作を停止した状態でワーク101と加工ツール12の先端とが接触するように把持部21に対して操作動作を行う。制御部29は、操作動作に連動させてロボット10を動作させるとともに、加工ツール12がワーク101に接触することによる接触力がセンサ13により検出された場合に、接触力が検出されたタイミングにおける制御点の位置を基準位置として設定する。そして、制御部29は、ロボット10の動作範囲が制限範囲に切り替えられた場合には、通常範囲の動作と同様に、制御点の位置が制限範囲に含まれるようにロボット10の動作を制御する。このようにして、制御部29は、ロボット10の動作範囲を切り替えることによって、加工ツール12の移動範囲を切り替える。また、制御部29は、ロボット10における通常範囲と制限範囲との各々の動作範囲に対応して操作装置20の把持部21の移動範囲を制限する。すなわち、制御部29は、ロボット10の動作範囲が通常範囲から制限範囲に切り替えられた場合に、切り替えられた動作範囲に対応するように把持部21の移動範囲を制限する。
【0027】
図6に示すように、制御部29は、教示装置25のタッチパネル25aに遠隔制御のオンとオフとを切り替える切り替えボタン31を表示させる。制御部29は、たとえば、教示装置25に対する入力操作に基づいて、把持部21に対する操作動作に連動させてロボット10を動作させる状態と、操作動作に連動させずにロボット10を停止させる状態とを変更する。制御部29は、操作者による切り替えボタン31に対する入力操作が受け付けられた場合に、遠隔制御のオンとオフとを切り替える。そして、本実施形態では、制御部29は、ロボット10の操作装置20により検出された操作動作との連動が停止された状態で、ロボット10の動作範囲を切り替える。遠隔制御がオフの状態では、操作装置20に対する操作動作が行われた場合にも、ロボット10は動作を停止した状態で待機する。制御部29は、遠隔制御がオフの状態においてのみ通常範囲と制限範囲との動作範囲を切り替える操作を受け付ける。言い換えれば、制御部29は、遠隔制御がオンの状態では、動作範囲を切り替える操作を受け付けない。また、制御部29は、教示装置25のタッチパネル25aにロボット10の動作範囲を通常範囲と制限範囲との間で切り替える動作制限ボタン32を表示させる。そして、制御部29は、遠隔制御がオフの状態において、動作制限ボタン32に対する入力操作が受け付けられた場合に、動作制限のオンとオフとを切り替える。なお、動作制限がオンの場合はロボット10の動作範囲が制限範囲となり、動作制限がオフの場合はロボット10の動作範囲が通常範囲となる。
【0028】
〈制限範囲の大きさの変更〉
教示装置25は、予め設定された通常範囲の大きさと、制限範囲の大きさとをタッチパネル25aに表示する。たとえば、ロボット10が配置されたベース座標系において、鉛直方向をZ方向、鉛直方向に直交する水平面内において、互いに直交する2方向を、X方向およびY方向として、X方向、Y方向、および、Z方向の各々における範囲の大きさが設定されることによって、通常範囲および制限範囲の大きさが設定される。タッチパネル25aは、X方向、Y方向、および、Z方向の各々における通常範囲および制限範囲の大きさを表す数値を表示する。たとえば、図6では、Z方向の範囲が、通常範囲では-800mmまでなのに対して、制限範囲では-20mmまでに制限されている例を示している。
【0029】
そして、本実施形態では、教示装置25は、制限範囲の大きさを変更する操作を受け付ける。制御部29は、教示装置25により受け付けられた操作に基づいて、記憶部26に記憶された制限範囲の大きさを変更する。制御部29は、変更された制限範囲の大きさを記憶部26に記憶する。たとえば、制御部29は、ロボット10の操作動作との連動が停止された状態で、教示装置25のタッチパネル25aおよび複数の操作スイッチ25bに対する操作に基づいて、X方向、Y方向、および、Z方向の各々における制限範囲の大きさ定める数値を変更する。
【0030】
(座標系の切り替え)
図7に示すように、本実施形態では、制御部29は、加工ツール12を基準としたツール座標系においてロボット10を動作させることと、加工ツール12の向きに係わらず絶対的な三次元空間を基準としたベース座標系においてロボット10を動作させることとを切り替える。ツール座標系では、加工ツール12の向きを基準とした空間座標系においてロボット10が動作する。したがって、加工ツール12を傾けるように動作させた場合には、傾いた加工ツール12を基準とした加工ツール12に対する垂直方向が、ロボット10の動作範囲におけるZ方向となる。すなわち、ツール座標系では、加工ツール12を傾けた場合には、動作範囲の基準となる向きが加工ツール12の傾きに合わせて変更される。なお、ツール座標系の場合にも、操作装置20は、絶対的な三次元空間を基準とした空間座標系によって動作する。たとえば、図7の右図に示すように、ツール座標系では、ロボット10の動作が加工ツール12に対する垂直方向を基準とした空間座標系となるのに対して、操作装置20の動作は、鉛直方向を基準とした空間座標系となる。したがって、ツール座標系における動作では、加工ツール12が傾いている場合には、把持部21を移動させる方向と実際に加工ツール12が移動する方向とが互いに異なる。一方で、ベース座標系では、ロボット10の動作と操作装置20の動作との両方が、たとえば、鉛直方向を基準とした空間座標系によって動作する。したがって、ベース座標系では、ロボット10が加工ツール12を傾ける動作を行った場合にも、通常範囲と制限範囲との両方のロボット10の動作範囲は、変更されない。
【0031】
制御部29は、操作者による入力操作に基づいて、ツール座標系とベース座標系とを切り替える。たとえば、ロボットシステム100にロボット10を撮像する撮像部と撮像部によって撮像された画像を表示する表示部を配置することによって、表示部の画像を操作者が視認しながら遠隔制御による操作装置20に対する操作動作が行われる場合に、ツール座標系とベース座標系とが切り替えられる。ロボットアーム11などのロボット10本体に配置された撮像部の画像を視認しながら、遠隔制御によるロボット10の操作を行う場合には、ツール座標系での動作が選択される。一方で、ロボット10とは異なる位置に配置された撮像部の画像を視認しながら、遠隔制御によるロボット10の操作を行う場合には、ベース座標系での動作が選択される。また、ロボット10を直接的に視認する場合にもベース座標系での動作が選択される。
【0032】
本実施形態では、制御部29は、ツール座標系におけるロボット10の動作とベース座標系におけるロボット10の動作との各々において、ロボット10の動作範囲を通常範囲から制限範囲に切り替える。すなわち、ツール座標系とベース座標系とのいずれが選択された場合にも、制御部29は、選択された座標系を基準とした動作範囲において、通常範囲と制限範囲とを切り替える。したがって、ツール座標系では、加工ツール12が傾けられる動作が行われるたびに動作範囲の絶対的な空間における向きが変わるため、制限範囲の絶対的な空間における範囲も変更される。
【0033】
(ロボットの動作範囲の切り替え処理)
図8を参照して、本実施形態におけるロボットシステム100によるロボット10の動作範囲の切り替え処理をフローチャートに基づいて説明する。なお、ステップS1からステップS6までの制御処理は、制御部29によって実行される。
【0034】
まず、ステップS1において、ロボット10の動作範囲が通常範囲に設定された状態で操作者による操作動作が検出されることによって、遠隔制御によるロボット10の動作が行われる。具体的には、把持部21に加えられた操作動作が検出されるとともに、検出された操作動作と連動してロボット10を動作させる動作信号が生成され、生成された動作信号がロボット10に出力される。
【0035】
次に、ステップS2において、制限範囲における基準位置が設定されることにより、制限範囲が設定される。具体的には、加工ツール12がワーク101に接触したことによりロボット10のセンサ13によって接触力が検出される。そして、センサ13による接触力の検出結果が取得されるとともに、取得された検出結果に基づいて、接触力が検出されたタイミングにおける加工ツール12の先端である制御点の位置が、制限範囲の基準位置として設定される。設定された基準位置を基準として、予め設定されている制限範囲の大きさに基づいて、制限範囲の空間的な位置、および、大きさが設定される。
【0036】
次に、ステップS3において、ロボット10の操作者による操作動作との連動が停止されたか否かが判断される。すなわち、教示装置25のタッチパネル25aに表示された切り替えボタン31が操作されることにより、遠隔制御がオンの状態からオフの状態に切り替えられたか否かが判断される。ロボット10の操作者による操作動作との連動が停止されたと判断された場合には、ステップS4に進む。ロボット10の操作者による操作動作との連動が停止されたと判断されない場合には、制御処理が待機される。
【0037】
ステップS4では、ロボット10の動作範囲が通常範囲から制限範囲に切り替えられたか否かが判断される。すなわち、教示装置25のタッチパネル25aに表示された動作制限ボタン32が操作されることにより、ロボット10の動作範囲が通常範囲から小さく制限された制限範囲に切り替えられる動作制限が有効にされたか否かが判断される。ロボット10の動作範囲が通常範囲から制限範囲に切り替えられたと判断された場合には、ステップS5に進む。ロボット10の動作範囲が通常範囲から制限範囲に切り替えられたと判断されない場合には、ステップS6に進む。
【0038】
ステップS5では、ロボット10の動作範囲が制限範囲に設定された状態で操作者による操作動作が検出されることによって、遠隔制御によるロボット10の動作が行われる。具体的には、ステップS4においてロボット10の動作範囲が制限範囲に切り替えられた状態で、教示装置25のタッチパネル25aに表示された切り替えボタン31が操作されることにより、遠隔制御がオフの状態からオンの状態に切り替えられてロボット10の動作が遠隔制御される。
【0039】
ステップS6では、ステップS1と同様に、ロボット10の動作範囲が通常範囲に設定された状態で操作者による操作動作が検出されることによって、遠隔制御によるロボット10の動作が行われる。具体的には、ステップS4においてロボット10の動作範囲が切り替えられず通常範囲に設定されたままの状態で、教示装置25のタッチパネル25aに表示された切り替えボタン31が操作されることにより、遠隔制御がオフの状態からオンの状態に切り替えられてロボット10の動作が遠隔制御される。
【0040】
なお、制限範囲の大きさを設定する操作を受け付けるステップが実行されるようにしてもよい。制限範囲の大きさを設定するステップは、ステップS1からステップS6までの間のどのタイミングにおいて実行されてもよいが、たとえば、ステップS3の後、ロボット10の連動が停止された状態で実行されるようにしてもよい。また、ベース座標系とツール座標系とのいずれの座標系においてロボット10を動作させるかを切り替えるステップが実行されるようにしてもよい。座標系を切り替えるステップは、ステップS1からステップS6までの間のどのタイミングにおいて実行されてもよいが、たとえば、ステップS3の後、ロボット10の連動が停止された状態で実行されるようにしてもよい。
【0041】
[本実施形態の効果]
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0042】
ロボットシステム100は、ロボット10の動作範囲を、通常範囲から、通常範囲よりも範囲が小さい制限範囲に切り替える制御部29を備える。これにより、ロボット10の動作範囲を通常範囲よりも範囲が小さい制限範囲に切り替えることによって、ロボット10の動作の動作範囲が大きくなりすぎることを制御部29により自動的に抑制できる。そのため、動作範囲に注意しながら操作動作を行わずとも、ロボット10の動作範囲が大きくなりすぎることを抑制できる。その結果、操作者による操作動作と連動してロボット10を動作させる場合に、作業性の低下を抑制できる。
【0043】
ロボットシステム100は、ロボット10の動作範囲を切り替える操作を受け付ける切り替え操作部としての教示装置25を備える。制御部29は、教示装置25により受け付けられた操作に基づいて、ロボット10の動作範囲を通常範囲から制限範囲に切り替える。これにより、操作者による操作によってロボット10の動作範囲を通常範囲から制限範囲に切り替えることができるので、操作者が意図したタイミングにおいて、ロボット10の動作範囲を切り替えることができる。そのため、操作者の意図しないタイミングにおいてロボット10の動作範囲が小さく制限されることを抑制できる。その結果、ロボット10の操作における作業性の低下をより抑制できる。
【0044】
制御部29は、ロボット10に対して設定された制御点の基準位置を設定するとともに、設定された基準位置からの制御点の動作範囲を制限することによって、制限範囲を設定する。これにより、操作者は、設定された基準位置を把握することによって、小さく制限されたロボット10の動作範囲を容易に把握することができる。そのため、操作者は、ロボット10の動作範囲を制限範囲に切り替えた状態で、ロボット10を容易に操作できるので、ロボット10の操作における作業性の低下をより抑制できる。
【0045】
ロボット10は、ロボット10に加えられる接触力を検出する接触センサとしてのセンサ13を含む。制御部29は、センサ13からの検出結果に基づいて、接触力が検出されたタイミングにおける制御点の位置を基準位置として設定する。これにより、ロボット10に接触力が加えられた位置を基準位置として自動的に設定できるので、ロボット10が対象物であるワーク101と接触した状態を基準として、ロボット10の動作範囲を小さく制限することができる。そのため、ワーク101に対して、加工、搬送、および、組立などのハンドリング作業をロボット10が行う場合に、ロボット10の操作における作業性の低下を効果的に抑制できる。
【0046】
操作装置20は、操作者により把持される把持部21を含み、操作者による把持部21を移動させる操作動作を検出する。ロボット10は、操作者による把持部21を移動させる操作動作に連動して動作する。制御部29は、ロボット10における通常範囲と制限範囲との各々の動作範囲に対応して把持部21の移動範囲を制限する。これにより、把持部21を把持しながらロボット10を操作する操作者は、把持部21の移動範囲が制限されることによって、ロボット10の動作範囲を直感的に容易に認識することができる。その結果、操作者は、ロボット10を直感的に容易に操作できるので、ロボット10の操作における作業性の低下をより抑制できる。
【0047】
制御部29は、ロボット10の操作装置20により検出された操作動作との連動が停止された状態で、ロボット10の動作範囲を切り替える。これにより、ロボット10が停止した状態でロボット10の動作範囲を切り替えることができる。そのため、ロボット10が動作している状態でロボット10の動作範囲が切り替えられる場合と異なり、ロボット10の動作が不安定になることを抑制できる。
【0048】
ロボットシステム100は、予め設定された制限範囲の大きさを記憶する記憶部26を備える。切り替え操作部としての教示装置25は、制限範囲の大きさを変更する操作を受け付ける。制御部29は、教示装置25により受け付けられた操作に基づいて、記憶部26に記憶された制限範囲の大きさを変更する。これにより、操作者の操作によって、ロボット10の動作範囲を小さく制限する制限範囲の大きさを変更できるので、操作者は、ロボット10の適切な動作範囲を容易に設定できる。
【0049】
切り替え操作部としての教示装置25は、ロボット10の動作を教示するための操作を受け付ける。制御部29は、教示のための操作を受け付ける教示装置25により受け付けられた動作範囲を切り替える操作に基づいて、ロボット10の動作範囲を切り替える。これにより、教示のための操作を受け付ける操作部と、ロボット10の動作範囲を切り替えるための操作部とを別個に配置する場合に比べて、ロボットシステム100の構成が複雑になることを抑制できる。
【0050】
ロボット10は、研削加工を行う加工ツール12が取り付けられるロボットアーム11を含む。制御部29は、ロボット10の動作範囲を切り替えることによって、加工ツール12の移動範囲を切り替える。これにより、ロボット10が加工ツール12により研削作業を行う場合に、ロボット10の動作が大きくなりすぎることを効果的に抑制できる。その結果、研削作業において、ロボット10の操作における作業性の低下を抑制できるとともに、ワーク101を削りすぎることを効果的に抑制できる。
【0051】
ロボット10は、加工ツール12が取り付けられるロボットアーム11を含む。制御部29は、加工ツール12の向きを基準としたツール座標系においてロボット10を動作させることと、加工ツール12の向きに係わらず絶対的な三次元空間を基準としたベース座標系においてロボット10を動作させることとを切り替える。また、制御部29は、ツール座標系におけるロボット10の動作とベース座標系におけるロボット10の動作との各々において、ロボット10の動作範囲を、通常範囲から制限範囲に切り替える。これにより、ツールの向きを基準とした主観的なツール座標系においてロボット10を動作させる場合と、三次元空間を基準とした絶対的なベース座標系においてロボット10を動作させる場合との両方において、ロボット10の操作における作業性の低下を抑制できる。そのため、操作者がロボット10を操作しやすい座標系を選択する場合に、ツール座標系とベース座標系とのいずれの座標系が選択された場合にも、ロボット10の操作における作業性の低下を効果的に抑制できる。
【0052】
ロボット10は、ロボット10に加えられる接触力を検出する接触センサとしてのセンサ13を含む。操作装置20は、操作装置20をロボット10と連動させる操作駆動部としての駆動部23を含む。制御部29は、センサ13により検出された検出結果に基づいて、接触力に連動して駆動部23を動作させる。これにより、操作者は、センサ13により検出される接触力を、駆動部23からの駆動力に基づいて認識できる。そのため、操作者は、ロボット10が対象物であるワーク101と接触したか否かを容易に認識できるので、ワーク101と接触する位置に基づいて、動作範囲を切り替えながらロボット10を操作する操作動作を行うことができる。その結果、ワーク101に対する作業を行う場合に、ロボット10の操作における作業性の低下をより一層抑制できる。
【0053】
ロボット10は、遠隔制御により操作装置20により検出された操作動作と連動する。制御部29は、遠隔制御により操作装置20により検出された操作動作と連動するロボット10の動作範囲を通常範囲から制限範囲に切り替える。これにより、遠隔制御によってロボット10を動作させる場合に、ロボット10の操作における作業性の低下を効果的に抑制できる。
【0054】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0055】
たとえば、上記実施形態では、切り替え操作部としての教示装置25により受け付けられた操作に基づいて、ロボット10の動作範囲が通常範囲から制限範囲に切り替えられる例を示したが、本開示はこれに限られない。本開示では、制御部によって自動的に動作範囲が通常範囲から制限範囲に切り替えられるようにしてもよい。たとえば、力覚センサなどの接触センサによってロボットの加工ツールと対象物であるワークとの接触が検出されたタイミングにおいて、ロボットの動作範囲が通常範囲から制限範囲に自動的に切り替えられるようにしてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、加工ツール12の先端部分である制御点の基準位置からの動作範囲を制限することによって、制限範囲が設定される例を示したが、本開示はこれに限られない。本開示では、ロボットアームと加工ツールとを含むロボットに対して複数の制御点が設定されることによって、複数の制御点に基づいてロボットの動作範囲である通常範囲および制限範囲が設定されるようにしてもよい。すなわち、制限範囲を設定する場合に、複数の制御点が制限範囲内に配置されるように、ロボットの動作範囲が制限されるようにしてもよい。また、1つの制御点の動作範囲を、基準位置に基づいて制限することによって制限範囲を設定する場合に、加工ツールではなくロボットアームに対して制御点を設定するようにしてもよい。また、加工ツールおよびロボットアーム自体から離間した空間上の点を制御点として設定するようにしてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、接触センサとしてのセンサ13からの検出結果に基づいて、接触力が検出されたタイミングにおける制御点の位置が基準位置として設定される例を示したが、本開示はこれに限られない。本開示では、操作者による操作に基づいて、基準位置が設定されるようにしてもよい。たとえば、操作者による操作によってロボットの動作範囲が通常範囲から制限範囲に切り替えられたタイミングにおける制御点の位置を、基準位置として設定するようにしてもよい。たとえば、ロボットに配置された接触センサからの検出結果によって、加工ツールがワークに接触している状態であることが検出された場合に、操作者による遠隔制御をオフにする操作が受け付けられる。そして、ロボット10の動作範囲が通常範囲から制限範囲に切り替えられた後に、操作者による遠隔制御をオンにする操作が受け付けられたタイミングにおける制御点の位置を制限範囲の基準位置としてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、操作者による把持部21を移動させる操作動作に連動してロボット10が動作し、ロボット10の動作範囲に対応して把持部21の移動範囲が制限される例を示したが、本開示はこれに限られない。本開示では、把持部とは別個に配置されたセンサなどの検出部によって操作者の操作動作が検出されるようにしてもよい。また、ロボットの動作範囲に対応して把持部の移動範囲が制限されないようにしてもよい。すなわち、ロボットが制限範囲において動作する場合には、把持部に対する操作動作にロボットが連動するとともに、ロボットが制限範囲を越えて動作しようとする場合には、把持部に対する操作動作にロボットが連動しないようにしてもよい。たとえば、ロボットは操作装置により検出された操作動作に連動して動作する一方で、操作装置はロボットの動作に連動しないようにしてもよい。また、ロボットの動作に追従して操作駆動部により把持部を動作させることによって、ロボットの動作範囲が制限範囲に切り替えられた場合に把持部の移動範囲が制限されるのではなく、ロボットの動作範囲が切り替えられた場合に、ロボットの動作に対する追従とは別個に、操作駆動部の動作を制御することによって把持部の移動範囲を制限してもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、操作者による操作動作との連動が停止された状態でロボット10の動作範囲が切り替えられる例を示したが、本開示はこれに限られない。本開示では、ロボットが動作している状態でロボットの動作範囲が切り替えられるようにしてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、ロボット10の動作を教示するための操作を受け付ける切り替え操作部としての教示装置25によって制限範囲の大きさを変更する操作が受け付けられる例を示したが、本開示はこれに限られない。本開示では、制限範囲の大きさを変更する操作を、ロボットの動作範囲を切り替える操作を受け付ける操作部とは別個に配置された操作部によって、受け付けるようにしてもよい。また、ロボットの動作範囲を切り替える操作を、ロボットの動作を教示するための操作を受け付ける教示用の操作部とは別個に配置するようにしてよい。すなわち、制限範囲の大きさを変更する操作、動作範囲を切り替える操作、および、遠隔制御のオンとオフとを切り替える操作の少なくとも1つを、ロボットの動作を教示する教示装置とは異なる操作部により受け付けるようにしてもよい。たとえば、制限範囲の大きさを変更する操作、動作範囲を切り替える操作、および、遠隔制御のオンとオフとを切り替える操作の少なくとも1つを、キーボード、または、マウスなどのポインティングデバイス、または、ディスプレイなどの表示部を兼ねるタッチパネルなどにより受け付けるようにしてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、ロボット10において、研削加工を行う加工ツール12がエンドエフェクタとしてロボットアーム11に配置されており、ロボット10が対象物であるワーク101に対して研削作業を行う例を示したが、本開示はこれに限られない。本開示では、ロボットに配置される加工ツールは、研削加工以外の、穴あけ、切削、研磨などの加工を行うようにしてもよい。また、ロボットを、加工以外の組立、搬送、検査などのハンドリングを行うようにしてもよい。また、産業用ロボットではなく医療用ロボットにおいて、動作範囲を通常範囲から制限範囲に切り替えるようにしてもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、ツール座標系とベース座標系との間でロボット10の動作が切り替えられる例を示したが、本開示はこれに限られない。本開示では、ロボットを、ツール座標系とベース座標系とのいずれか一方のみにおいて動作するようにしてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、操作駆動部としての駆動部23の駆動力によって、操作装置20をロボット10と連動させる例を示したが、本開示はこれに限られない。本開示では、操作装置をロボットと連動させる操作駆動部を配置しないようにしてもよい。また、ロボットの接触が検出された場合に、ディスプレイなどの表示装置に接触が検知されたことを報知する情報を表示するようにしてもよい。また、音声情報の出力、または、LED(Light-Emitting Diode)などの照明装置の点灯または点滅などによって、ロボットの接触が検出されたことを報知するようにしてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、ロボット10が6軸の垂直関節を含み、操作装置20は、パラレルリンク構造のリンク部材22を含む例を示したが、本開示はこれに限られない。本開示では、ロボットが5軸以下または7軸以上の関節を含んでいてもよい。また、水平多関節のロボットを用いてもよい。また、ロボットがパラレルリンク構造、または、直動機構などのシリアルリンク構造のロボットアーム以外の駆動機構を有していてもよい。また、操作装置が、パラレルリンク構造ではなくシリアルリンク構造のリンク部材を含んでいてもよい。すなわち、操作装置が、垂直多関節または水平多関節のロボットを含んでいてもよい。また、操作装置を、複数のスイッチを有する操作部、または、ジョイスティックなどの入力装置を含むようにしてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、ロボット10に対する接触力を検知する接触センサとしてのセンサ13が力覚センサである例を示したが、本開示はこれに限られない。本開示では、接触力を検出する接触センサの替わりに、静電容量センサ、または、光電センサなどを配置することによって、ロボットがワークに接触したことを検出するようにしてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、基準位置を基準として3次元方向の各々における大きさを設定することによって、ロボット10の動作範囲である通常範囲および制限範囲を設定する例を示したが、本開示はこれに限られない。本開示では、3次元方向の各々における大きさのみならず、3次元方向の各々を回転軸線とした回転角度に対しても動作範囲を設定するようにしてもよい。すなわち、3次元方向の各々における大きさと、3次元方向の各々を回転軸線とした回転角度との6つの設定値を設定することによって、制限範囲を設定するようにしてもよい。また、制限範囲の設定値の範囲を、マイナスの値のみならずプラスの値を設定することによって設定するようにしてもよい。また、基準位置からの半径距離を設定することによって、球形のロボットの動作範囲を設定するようにしてもよい。また、複数の基準位置を設定することによって、動作範囲を設定するようにしてもよい。たとえば、鉛直方向下方における下限の基準位置と、鉛直方向上方における上限の基準位置を設定することによって鉛直方向における通常範囲または制限範囲を設定するようにしてもよい。また、互いに異なる3つの基準位置を設定することによって、動作範囲の境界となる面の空間的な位置を設定するようにしてもよい。たとえば、研削加工を行う加工ツールをロボットに配置する場合に、加工対象物であるワークの基準面における3点を基準位置として設定することによって、基準面より突出している部分に対してのみ研削加工が行われるように、制限範囲を設定するようにしてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、ロボット10の動作を制御する制御部19と、操作装置20の動作を制御する制御部29とが、互いに別個に配置されている例を示したが、本開示はこれに限られない。本開示では、ロボットの動作と操作装置の動作とを共通の制御部によって制御するようにしてもよい。
【0068】
本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、および/または、それらの組み合わせ、を含む回路または処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路または回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット、または手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、または、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラムまたは構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段、またはユニットはハードウェアとソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェアおよび/またはプロセッサの構成に使用される。
【0069】
[態様]
上記した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0070】
(項目1)
操作者による操作動作を検出する操作装置と、
前記操作装置により検出された操作動作と連動して動作するロボットと、
前記ロボットの動作範囲を、予め設定された通常範囲から、前記通常範囲よりも範囲が小さい制限範囲に切り替える制御部と、を備える、ロボットシステム。
【0071】
(項目2)
前記ロボットの動作範囲を切り替える操作を受け付ける切り替え操作部をさらに備え、
前記制御部は、前記切り替え操作部により受け付けられた操作に基づいて、前記ロボットの動作範囲を前記通常範囲から前記制限範囲に切り替える、項目1に記載のロボットシステム。
【0072】
(項目3)
前記制御部は、前記ロボットに対して設定された制御点の基準位置を設定するとともに、設定された前記基準位置からの前記制御点の動作範囲を制限することによって、前記制限範囲を設定する、項目1または2に記載のロボットシステム。
【0073】
(項目4)
前記ロボットは、前記ロボットに加えられる接触力を検出する接触センサを含み、
前記制御部は、前記接触センサからの検出結果に基づいて、前記接触力が検出されたタイミングにおける前記制御点の位置を前記基準位置として設定する、項目3に記載のロボットシステム。
【0074】
(項目5)
前記操作装置は、前記操作者により把持される把持部を含み、前記操作者による前記把持部を移動させる操作動作を検出し、
前記ロボットは、前記操作者による前記把持部を移動させる操作動作に連動して動作し、
前記制御部は、前記ロボットにおける前記通常範囲と前記制限範囲との各々の動作範囲に対応して前記把持部の移動範囲を制限する、項目1~4のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【0075】
(項目6)
前記制御部は、前記ロボットの前記操作装置により検出された操作動作との連動が停止された状態で、前記ロボットの動作範囲を切り替える、項目1~5のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【0076】
(項目7)
予め設定された前記制限範囲の大きさを記憶する記憶部をさらに備え、
前記切り替え操作部は、前記制限範囲の大きさを変更する操作を受け付け、
前記制御部は、前記切り替え操作部により受け付けられた操作に基づいて、前記記憶部に記憶された前記制限範囲の大きさを変更する、項目2に記載のロボットシステム。
【0077】
(項目8)
前記切り替え操作部は、前記ロボットの動作を教示するための操作を受け付け、
前記制御部は、教示のための操作を受け付ける前記切り替え操作部により受け付けられた動作範囲を切り替える操作に基づいて、前記ロボットの動作範囲を切り替える、項目2に記載のロボットシステム。
【0078】
(項目9)
前記ロボットは、研削加工を行う加工ツールが取り付けられるロボットアームを含み、
前記制御部は、前記ロボットの動作範囲を切り替えることによって、前記加工ツールの移動範囲を切り替える、項目1~8のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【0079】
(項目10)
前記ロボットは、加工ツールが取り付けられるロボットアームを含み、
前記制御部は、
前記加工ツールの向きを基準としたツール座標系において前記ロボットを動作させることと、前記加工ツールの向きに係わらず絶対的な三次元空間を基準としたベース座標系において前記ロボットを動作させることとを切り替えるとともに、
前記ツール座標系における前記ロボットの動作と前記ベース座標系における前記ロボットの動作との各々において、前記ロボットの動作範囲を、前記通常範囲から前記制限範囲に切り替える、項目1~9のいずれか1項のロボットシステム。
【0080】
(項目11)
前記ロボットは、前記ロボットに加えられる接触力を検出する接触センサを含み、
前記操作装置は、前記操作装置を前記ロボットと連動させる操作駆動部を含み、
前記制御部は、前記接触センサにより検出された検出結果に基づいて、前記接触力に連動して前記操作駆動部を動作させる、項目1~10のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【0081】
(項目12)
前記ロボットは、遠隔制御により前記操作装置により検出された操作動作と連動し、
前記制御部は、遠隔制御により前記操作装置により検出された操作動作と連動する前記ロボットの動作範囲を前記通常範囲から前記制限範囲に切り替える、項目1~11のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【符号の説明】
【0082】
10 ロボット
11 ロボットアーム
12 加工ツール
13 センサ(接触センサ)
19 制御部
20 操作装置
21 把持部
23 駆動部(操作駆動部)
25 教示装置(切り替え操作部)
29 制御部
100 ロボットシステム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8