(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021559
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】拡散板
(51)【国際特許分類】
G02B 5/02 20060101AFI20250206BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20250206BHJP
G02B 1/00 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
G02B5/02 C
G02B3/00 A
G02B1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125341
(22)【出願日】2023-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前澤 功児
(72)【発明者】
【氏名】花島 直樹
【テーマコード(参考)】
2H042
【Fターム(参考)】
2H042BA04
2H042BA19
2H042BA20
(57)【要約】
【課題】斜入射の場合であっても、十分な偏向性能を確保でき、出射光を所望方向に大きな屈曲角で屈曲させる。
【解決手段】
マイクロレンズアレイ型の拡散板1であって、基材10と、前記基材10の少なくとも一方の表面におけるXY平面上に不規則に配置された複数のマイクロレンズ21から構成されるマイクロレンズアレイ20と、を備え、前記マイクロレンズ21の表面形状は、少なくとも3次項を有する非球面式により表される非球面形状である、拡散板1が提供される。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロレンズアレイ型の拡散板であって、
基材と、
前記基材の少なくとも一方の表面におけるXY平面上に不規則に配置された複数のマイクロレンズから構成されるマイクロレンズアレイと、
を備え、
前記マイクロレンズの表面形状は、少なくとも3次項を有する非球面式により表される非球面形状である、拡散板。
【請求項2】
前記マイクロレンズの表面形状は、前記3次項および4次項を有する非球面式により表される非球面形状である、請求項1に記載の拡散板。
【請求項3】
前記3次項は、前記マイクロレンズの表面形状を非対称にするための項であり、
前記4次項は、前記マイクロレンズの表面の断面形状の変曲点を補正するための項である、請求項2に記載の拡散板。
【請求項4】
前記非球面式は、以下の式(10)を満たす、請求項2または3に記載の拡散板。
A4/A3>0 …(10)
A3:前記3次項の非球面係数
A4:前記4次項の非球面係数
【請求項5】
前記非球面式は、以下の式(11)を満たす、請求項4に記載の拡散板。
A4/A3>0.03 ・・・(11)
【請求項6】
前記非球面式は、以下の式(12)を満たす、請求項4に記載の拡散板。
A4/A3<0.5 ・・・(12)
【請求項7】
前記3次項は、前記XY平面におけるX方向の3次項と、Y方向の3次項とを含み、
前記4次項は、前記X方向の4次項と、前記Y方向の4次項とを含み、
前記非球面式は、以下の式(21)および式(22)を満たす、請求項4に記載の拡散板。
A4x/A3x>0 ・・・(21)
A4y/A3y>0 ・・・(22)
A3x:前記X方向の前記3次項の非球面係数
A4x:前記X方向の前記4次項の非球面係数
A3y:前記Y方向の前記3次項の非球面係数
A4y:前記Y方向の前記4次項の非球面係数
【請求項8】
前記非球面式は、以下の式(23)および式(24)を満たす、請求項7に記載の拡散板。
A4x/A3x>0.03 ・・・(23)
A4y/A3y>0.03 ・・・(24)
【請求項9】
前記非球面式は、以下の式(25)および式(26)を満たす、請求項7に記載の拡散板。
A4x/A3x<0.5 ・・・(25)
A4y/A3y<0.5 ・・・(26)
【請求項10】
前記3次項は、前記XY平面におけるX方向の3次項、および、Y方向の3次項の双方を含み、
前記マイクロレンズの表面形状は、対称軸を有する基準表面形状に対して前記X方向および前記Y方向の双方に非対称に歪んだ非球面形状である、請求項1~3のいずれか一項に記載の拡散板。
【請求項11】
前記3次項は、前記XY平面におけるX方向の3次項、または、Y方向の3次項のいずれか一方を含み、
前記マイクロレンズの表面形状は、対称軸を有する基準表面形状に対して前記X方向または前記Y方向のうちのいずれか一方に非対称に歪み、かつ、他方には対称な非球面形状である、請求項1~3のいずれか一項に記載の拡散板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡散板に関する。
【背景技術】
【0002】
光の拡散特性を変化させるために、入射光を所望の方向に拡散させる拡散板が用いられている。拡散板は、例えば、ディスプレイ等の表示装置、プロジェクタ等の投影装置、または各種の照明装置等といった様々な装置に広く利用される。拡散板の表面形状に起因する光の屈折を利用して、入射光を所望の拡散角で拡散させるタイプの拡散板がある。当該タイプの拡散板として、数十μm程度の大きさのマイクロレンズが複数配置されたマイクロレンズアレイ型の拡散板が知られている。
【0003】
かかるマイクロレンズアレイ型の拡散板では、各マイクロレンズからの光の波面が干渉した結果、マイクロレンズ配列の周期構造による回折波が生じ、拡散光の強度分布にむらが生じるという問題がある。このため、マイクロレンズの配置や、レンズ面の形状、開口の形状をばらつかせることにより、干渉や回折による拡散光の強度分布のむらを低減する技術が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ハニカム構造を基本パターンとして、複数のマイクロレンズを不規則に配列することが開示されている。この特許文献1では、各マイクロレンズの面頂点位置が、基本パターンにおける面頂点位置を中心とした所定の円内に位置するように、複数のマイクロレンズが拡散板の表面上に不規則に配置されている。
【0005】
上記特許文献1に記載のような従来の拡散板では、複数のマイクロレンズを、拡散板の表面上(XY平面上)における不規則な位置に配置したり、個々のマイクロレンズの面頂点位置をずらして、光軸を偏心させている。しかしながら、従来の拡散板では、個々のマイクロレンズの光軸は全て、拡散板の表面に対して垂直な方向(法線方向:Z方向)に延びていた。このため、拡散板により拡散される出射光(拡散光)の主光線の方向は、入射光の主光線の方向に対して平行になるので、入射光の光束に対して出射光(拡散光)の光束を、所望の方向に偏向させることができなかった。例えば、従来の拡散板の表面に対して垂直な方向(法線方向:Z方向)にコリメート光を入射する場合、出射光(拡散光)の光束は、法線方向(つまり、マイクロレンズの光軸方向)を中心軸として対称に拡散して出射されていた。このため、出射光(拡散光)の主光線の方向はあくまでも法線方向となるので、出射光の光束を法線方向に対して所望方向に傾けて、入射光の光束に対して偏向させることができなかった。
【0006】
もちろん、従来の拡散板でも、拡散板を透過して拡散される出射光(拡散光)全体のマクロ的な出射方向は、拡散板の屈折作用によって、入射光とは異なる方向に傾斜することはある。しかしながら、上記のように従来のマイクロレンズの光軸は拡散板の法線方向(Z方向)と平行であるため、拡散板の通常の屈折作用とは異なる所望方向に、出射光の光束を偏向させることができなかった。
【0007】
したがって、従来では、例えば、拡散板に対する入射光や出射光の光軸方向の設計自由度の拡張や、光学機器システムの小型化などを図るために、出射光の光束を所望方向に偏向させることが可能なマイクロレンズアレイを備えた拡散板が希求されていた。
【0008】
そこで、例えば、特許文献2には、マイクロレンズの表面形状を対称形状にしたままで、当該マイクロレンズの光軸を、基材の表面に対する法線方向(Z方向)に対して傾斜させることが開示されている。このよう光軸が傾いたマイクロレンズを用いることにより、入射光に対して出射光を屈曲させて、出射光を法線方向に対して傾斜した方向に偏向しつつ、拡散させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4981300号公報
【特許文献2】特開2023-044051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献2の技術では、拡散板の表面の法線方向(Z方向)から光が入射される法線入射の場合、出射光を所望方向に偏向させることができる。しかし、特許文献2の技術では、法線方向に対して傾斜した方向から光が入射される斜入射の場合、法線入射の場合と比較して、出射光の偏向性能が不十分であるという問題があった。特に、入射光に対して出射光を、拡散板の表面の二次元方向(X方向およびY方向)に屈曲させて偏向する場合、屈曲角を大きくすることが困難であり、偏向性能が不十分であるという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、斜入射の場合であっても、十分な偏向性能を確保でき、出射光を所望方向に大きな屈曲角で屈曲させることが可能な拡散板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、
マイクロレンズアレイ型の拡散板であって、
基材と、
前記基材の少なくとも一方の表面におけるXY平面上に不規則に配置された複数のマイクロレンズから構成されるマイクロレンズアレイと、
を備え、
前記マイクロレンズの表面形状は、少なくとも3次項を有する非球面式により表される非球面形状である、拡散板が提供される。
【0013】
前記マイクロレンズの表面形状は、前記3次項および4次項を有する非球面式により表される非球面形状であるようにしてもよい。
【0014】
前記3次項は、前記マイクロレンズの表面形状を非対称にするための項であり、
前記4次項は、前記マイクロレンズの表面の断面形状の変曲点を補正するための項であるようにしてもよい。
【0015】
前記非球面式は、以下の式(10)を満たすようにしてもよい。
A4/A3>0 …(10)
A3:前記3次項の非球面係数
A4:前記4次項の非球面係数
【0016】
前記非球面式は、以下の式(11)を満たすようにしてもよい。
A4/A3>0.03 ・・・(11)
【0017】
前記非球面式は、以下の式(12)を満たすようにしてもよい。
A4/A3<0.5 ・・・(12)
【0018】
前記3次項は、前記XY平面におけるX方向の3次項と、Y方向の3次項とを含み、
前記4次項は、前記X方向の4次項と、前記Y方向の4次項とを含み、
前記非球面式は、以下の式(21)および式(22)を満たすようにしてもよい。
A4x/A3x>0 ・・・(21)
A4y/A3y>0 ・・・(22)
A3x:前記X方向の前記3次項の非球面係数
A4x:前記X方向の前記4次項の非球面係数
A3y:前記Y方向の前記3次項の非球面係数
A4y:前記Y方向の前記4次項の非球面係数
【0019】
前記非球面式は、以下の式(23)および式(24)を満たすようにしてもよい。
A4x/A3x>0.03 ・・・(23)
A4y/A3y>0.03 ・・・(24)
【0020】
前記非球面式は、以下の式(25)および式(26)を満たすようにしてもよい。
A4x/A3x<0.5 ・・・(25)
A4y/A3y<0.5 ・・・(26)
【0021】
前記3次項は、前記XY平面におけるX方向の3次項およびY方向の3次項の双方を含み、
前記マイクロレンズの表面形状は、対称軸を有する基準表面形状に対して前記X方向および前記Y方向の双方に非対称に歪んだ非球面形状であるようにしてもよい。
【0022】
前記3次項は、前記XY平面におけるX方向の3次項、または、Y方向の3次項のいずれか一方を含み、
前記マイクロレンズの表面形状は、対称軸を有する基準表面形状に対して前記X方向または前記Y方向のうちのいずれか一方に非対称に歪み、かつ、他方には対称な非球面形状であるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように本発明によれば、斜入射の場合であっても、十分な偏向性能を確保でき、出射光を所望方向に大きな屈曲角で屈曲させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係る拡散板を模式的に示す平面図と拡大図である。
【
図2】同実施形態に係る拡散板の構成を模式的に示す拡大平面図および拡大断面図である。
【
図3】同実施形態に係るマイクロレンズの境界近傍を模式的に示す拡大断面図である。
【
図4】同実施形態に係る基材の表面に対して垂直な方向からマイクロレンズを平面視した場合のマイクロレンズの平面形状(外形)を模式的に示す平面図である。
【
図5】アナモルフィック形状を有する基準表面形状の平面形状を示す説明図である。
【
図6】アナモルフィック形状を有する基準表面形状の立体形状を示す斜視図である。
【
図7】Y方向の3次項を含み、X方向の3次項を含まない数式(2)に基づくグラフである。
【
図8】Y方向の3次項を含み、X方向の3次項を含まない数式(2)に基づくグラフである。
【
図9】
図8に示す変曲点を補正した場合の数式(3)に基づくグラフである。
【
図10】基準表面形状を有するマイクロレンズによる透過光の拡散機能を示す模式図である。
【
図11】同実施形態に係るマイクロレンズの透過光の拡散機能および偏向機能を示す模式図である。
【
図12】3次項の非球面係数A
3の変化による屈曲度の変化を説明するグラフである。
【
図13】同実施形態に係るマイクロレンズの設計方法を示すフローチャートである。
【
図14】同実施形態に係るマイクロレンズのレンズ中心座標の配置を示す平面図である。
【
図15】同実施形態に係る回転非対称な非球面形状を有するマイクロレンズの配置を示す平面図である。
【
図16】同実施形態に係る拡散板の製造方法を示すフローチャートである。
【
図18】実施例1の拡散板から100mmの距離にあるスクリーンに投影された拡散光の放射輝度分布のシミュレーション結果を示す画像である。
【
図19】実施例1の拡散板から100mmの距離にあるスクリーンに投影された拡散光のX方向の放射輝度断面分布のシミュレーション結果を示す画像である。
【
図20】実施例1の拡散板から100mmの距離にあるスクリーンに投影された拡散光のY方向の放射輝度断面分布のシミュレーション結果を示す画像である。
【
図21】実施例1の拡散板から100mmの距離にあるスクリーンに投影された拡散光の放射輝度角度分布を示す。
【
図23】実施例2の拡散板から100mmの距離にあるスクリーンに投影された拡散光の放射輝度分布のシミュレーション結果を示す画像である。
【
図24】実施例2の拡散板から100mmの距離にあるスクリーンに投影された拡散光のX方向の放射輝度断面分布のシミュレーション結果を示す画像である。
【
図25】実施例2の拡散板から100mmの距離にあるスクリーンに投影された拡散光のY方向の放射輝度断面分布のシミュレーション結果を示す画像である。
【
図26】実施例2の拡散板から100mmの距離にあるスクリーンに投影された拡散光の放射輝度角度分布を示す。
【
図28】実施例3の拡散板から100mmの距離にあるスクリーンに投影された拡散光の放射輝度分布のシミュレーション結果を示す画像である。
【
図29】実施例3の拡散板から100mmの距離にあるスクリーンに投影された拡散光のX方向の放射輝度断面分布のシミュレーション結果を示す画像である。
【
図30】実施例3の拡散板から100mmの距離にあるスクリーンに投影された拡散光のY方向の放射輝度断面分布のシミュレーション結果を示す画像である。
【
図31】実施例3の拡散板から100mmの距離にあるスクリーンに投影された拡散光の放射輝度角度分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0026】
<1.拡散板の概要>
まず、
図1~
図4を参照して、本発明の一実施形態に係る拡散板1の概要について説明する。
【0027】
図1~
図4に示すように、本実施形態に係る拡散板1は、光を均質に拡散する機能を備えたマイクロレンズアレイ型の拡散板である。かかる拡散板1は、基材10と、当該基材10の少なくとも一方の表面(主面)におけるXY平面上に形成されたマイクロレンズアレイ20を有する。マイクロレンズアレイ20は、XY平面上に不規則に配列および展開された複数のマイクロレンズ21から構成される。当該マイクロレンズ21は、光拡散機能を有する凸構造(凸レンズ)または凹構造(凹レンズ)からなり、例えば、数十μm程度の開口幅Dx、Dy(レンズ径、開口径とも称する。)と、数十μm程度の曲率半径Rx、Ryを有する。
【0028】
そして、本実施形態に係る拡散板1では、各マイクロレンズ21の表面形状(三次元的な立体形状)は、非球面形状を有しており、各マイクロレンズ21は、非球面レンズとなっている。さらに、各マイクロレンズ21の表面形状は、所定の基準表面形状に対して、X方向またはY方向の内のいずれか一方または双方に、非対称に歪んだ非球面形状を有している。
【0029】
これにより、拡散板1に対する入射光の入射方向(入射角θin)が、拡散板1の平坦な基材10の表面(XY表面)に対する法線方向(Z方向)である場合(法線入射)であっても、Z方向に対して傾斜する場合(斜入射)であっても、拡散板1を透過して拡散する出射光(拡散光)を、拡散板1が有する通常の屈折作用とは異なる方向に、偏向させることができる。かかる拡散板1の偏向作用により、入射光が法線入射であっても、斜入射であっても、十分な偏向性能を確保でき、出射光を所望方向に大きな屈曲角で屈曲させることができる。したがって、拡散板1に対する入射光の入射方向の自由度と、出射光の出射方向(出射角θout)の自由度を向上できる。よって、拡散板1に対する入射光や出射光の光軸方向の設計自由度を拡張することができ、拡散板1が搭載される光学機器システムを小型化することができる。
【0030】
また、本実施形態によれば、拡散板1の基材10のXY平面上において、複数のマイクロレンズ21が不規則な位置に配置されている。例えば、XY平面上において、相互に隣接する複数のマイクロレンズ21同士の重なり量Ovが、所定の許容範囲内になるように、複数のマイクロレンズ21が相互に重なり合いつつ、不規則な位置に配置されてもよい。さらに、
図2に示すように、基材10のXY平面上において、複数のマイクロレンズ21は相互に隙間なく配置されており、相互に隣接する複数のマイクロレンズ21間の境界に平坦部が存在しないことが好ましい。
【0031】
これにより、拡散板1の表面は、不規則に配置された複数のマイクロレンズ21の凹凸構造で占められて、平坦部が存在しなくなる。したがって、拡散板1に対する入射光は、いずれかのマイクロレンズ21のレンズ面を透過または反射して屈折することになるので、屈折せずに基材10の平坦部をそのまま透過する0次透過光成分を抑制できる。よって、複数のマイクロレンズ21から出射する拡散光に不規則な位相差を付与して、不要な回折光の発生を抑制しつつ、拡散板1で屈折せずに透過する光の発生も防止できる。
【0032】
また、複数のマイクロレンズ21の開口幅Dx、Dy(レンズ径)および曲率半径Rx、Ryが相互に異なるように、各マイクロレンズ21の開口幅Dx、Dyおよび曲率半径Rx、Ryが不規則に変動していてもよい。このとき、各マイクロレンズ21の開口幅Dx、Dyは、所定の基準開口幅Dxk、Dykを基準として、所定の変動率δDx、δDyの範囲内で不規則に変動していてもよい(Dx[μm]=Dxk[μm]±δDx[%]、Dy[μm]=Dyk[μm]±δDy[%])。同様に、各マイクロレンズ21の曲率半径Rx、Ryは、所定の基準曲率半径Rxk、Rykを基準として、所定の変動率δRx、δRyの範囲内で不規則に変動していてもよい(Rx[μm]=Rxk[μm]±δRx[%]、Ry[μm]=Ryk[μm]±δRy[%])。ここで、基準開口幅Dxk、Dykは、マイクロレンズ21の基準表面形状の開口幅であり、基準曲率半径Rxk、Rykは、マイクロレンズ21の基準表面形状の曲率半径である。基準表面形状は、マイクロレンズ21の設計の基準となるレンズ表面形状である。これにより、複数のマイクロレンズ21の表面形状を、基準表面形状を基準としてランダムに変動させて、相互に異なる不規則な形状にすることができる。
【0033】
このように、本実施形態では、複数のマイクロレンズ21の配置や、開口幅Dx、Dy、曲率半径Rx、Ry等を、不規則に変動させてもよい。これにより、XY平面上に展開して配列された複数のマイクロレンズ21の表面形状は、不規則に変動して、相互に異なる形状となる。
【0034】
これにより、不規則性の高いマイクロレンズアレイ20の3次元表面構造を実現できるので、各マイクロレンズ21から出射される拡散光の位相の重合せ状態を制御することができる。したがって、複数のマイクロレンズ21から出射される拡散光の干渉や回折による拡散光の強度分布のむらを低減できるとともに、拡散光を均質に配光することができる。この結果、高透過性の輝度特性を有するとともに、拡散光の配光の均質性を満足しつつ、拡散光の強度分布のカットオフ性を制御することができる。
【0035】
以下では、以上のような特徴を有する本実施形態に係る拡散板1について、詳細に説明する。
【0036】
<2.拡散板の全体構成>
次に、
図1を参照して、本発明の一実施形態に係る拡散板1の全体構成と、マイクロレンズのレイアウトパターンについて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る拡散板1を模式的に示す平面図と拡大図である。
【0037】
本実施形態に係る拡散板1は、基材10上に複数のマイクロレンズ21(単レンズ)からなるマイクロレンズアレイ20が配置された、マイクロレンズアレイ型の拡散板である。かかる拡散板1のマイクロレンズアレイは、
図1に示すように、複数の単位セル3から構成されている。単位セル3は、マイクロレンズ21の基本配置パターンである。個々の単位セル3の表面には、所定のレイアウトパターン(配置パターン)で複数のマイクロレンズ21が配置されている。
【0038】
ここで、
図1では、拡散板1のマイクロレンズアレイ20を構成する単位セル3の形状が矩形、特に正方形である例を示している。しかしながら、単位セル3の形状は、
図1に示した例に限定されるものではなく、例えば、正三角形状または正六角形状などのように、拡散板1の表面(XY平面)上を隙間なく埋めることが可能であれば、任意の形状であってもよい。
【0039】
拡散板1のマイクロレンズアレイ20の表面を複数の単位領域に分割したとき、単位セル3は、個々の単位領域に相当する。
図1の例では、拡散板1の表面上において、正方形の複数の単位セル3が、縦横に繰り返し配列されている。拡散板1を構成する単位セル3の個数は、特に限定されるものではなく、拡散板1が1つの単位セル3から構成されていてもよいし、あるいは、複数の単位セル3から構成されていてもよい。拡散板1においては、互いに異なる表面構造を有する単位セル3が繰り返し配列されてもよいし、あるいは、互いに同一の表面構造を有する単位セル3が繰り返し配列されてもよい。
【0040】
また、
図1中の右側の拡大図に模式的に示したように、単位セル3内に設けられた複数のマイクロレンズ21のレイアウトパターン(配置パターン)は、相互に隣接する複数の単位セル3間で、単位セル3の配列方向(換言すれば、アレイ配列方向)に連続している。相互に隣接する複数の単位セル3間の境界部分においてマイクロレンズ21の表面形状の連続性を保ちながら、単位セル3を隙間なく配列することにより、マイクロレンズアレイ20が構成されている。ここで、マイクロレンズ21の表面形状の連続性とは、相互に隣接する2つの単位セル3、3のうち、一方の単位セル3の外縁に位置するマイクロレンズ21と、他方の単位セル3の外縁に位置するマイクロレンズ21とが、平面形状のずれや高さ方向の段差がなく、連続的に接続されていることを意味する。
【0041】
このように、本実施形態に係る拡散板1では、マイクロレンズアレイ20の単位セル3(基本構造)が、境界の連続性を保って隙間なく配列されることで、マイクロレンズアレイ20が構成されている。これにより、相互に隣接する単位セル3、3間の境界部分において、光の回折、反射、散乱等の意図しない不具合の発生を防止して、拡散板1による所望の配光特性を得ることができる。また、マイクロレンズアレイ20を単位セル3の繰り返し構造とすることにより、マイクロレンズアレイ20の設計効率と生産性を向上できる。
【0042】
<3.拡散板の構成>
次に、
図2~
図4を参照して、本実施形態に係る拡散板1の構成についてより詳細に説明する。
図2は、本実施形態に係る拡散板1の構成を模式的に示す拡大平面図および拡大断面図である。
図3は、本実施形態に係るマイクロレンズ21の境界近傍を模式的に示す拡大断面図である。
図4は、本実施形態に係る基材10の表面に対して垂直な方向からマイクロレンズ21を平面視した場合のマイクロレンズ21の平面形状(外形)を模式的に示す平面図である。
【0043】
図2に示すように、本実施形態に係る拡散板1は、基材10と、基材10の表面に形成されたマイクロレンズアレイ20と、を備える。
【0044】
まず、基材10について説明する。基材10は、マイクロレンズアレイ20を支持するための基板である。かかる基材10は、フィルム状であってもよく、板状であってもよい。また、基材10は、平板状であってもよく、湾曲板状であってもよい。
図2に示す基材10は、例えば矩形平板状を有するが、かかる例に限定されない。基材10の形状や厚さは、拡散板1が実装される装置の形状、構成等に応じて、任意の形状および厚さであってよい。
【0045】
基材10は、光を透過することが可能な透明基材である。基材10は、拡散板1に入射する光の波長帯域において透明とみなすことが可能な材質で形成される。例えば、基材10は、可視光の波長帯域において光透過率が70%以上の材質にて形成されてもよい。
【0046】
基材10は、例えば、ポリメチルメタクリレート(polymethyl methacrylate:PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene terephthalate:PET)、ポリカーボネート(polycarbonate:PC)、環状オレフィン・コポリマー(Cyclo Olefin Copolymer:COC)、環状オレフィンポリマー(Cyclo Olefin Polymer:COP)、トリアセチルセルロース(Triacetylcellulose:TAC)等といった公知の樹脂で形成されてもよい。あるいは、基材10は、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、白板ガラス等といった公知の光学ガラスで形成されてもよい。
【0047】
次に、マイクロレンズアレイ20について説明する。マイクロレンズアレイ20は、基材10の少なくとも一方の表面(主面)に設けられる。マイクロレンズアレイ20は、基材10の表面上に配列された複数のマイクロレンズ21(単レンズ)の集合体である。本実施形態では、
図2に示すように、マイクロレンズアレイ20が、基材10の一方の表面(主面)上に形成されている。しかし、かかる例に限定されず、基材10の両方の主面(表面と裏面)に、マイクロレンズアレイ20が形成されてもよい。
【0048】
マイクロレンズアレイ20が設けられる基材10の表面は、例えば、平坦面であってよい。以下では、当該基材10の平坦な表面を、XY平面と称する場合もある。XY平面におけるX方向およびY方向は、当該基材10の表面に対して平行な方向である。X方向とY方向は相互に垂直である。また、Z方向は、基材10の表面に対して垂直な方向(即ち、法線方向)であり、拡散板1の厚み方向に相当する。Z方向は、XY平面、X方向およびY方向に対して垂直である。
【0049】
マイクロレンズ21は、例えば数十μmオーダーの微細な光学レンズである。マイクロレンズ21は、マイクロレンズアレイ20の単レンズを構成する。マイクロレンズ21は、拡散板1の厚み方向に陥没するように形成された凹構造(凹レンズ)であってもよいし、拡散板1の厚み方向に突出するように形成された凸構造(凸レンズ)であってもよい。本実施形態では、
図2に示すようにマイクロレンズ21が凸構造(凸レンズ)である例について説明するが、かかる例に限定されない。拡散板1の所望の光学特性に応じて、マイクロレンズ21は凹構造(凹レンズ)であってもよい。
【0050】
マイクロレンズ21の表面形状は、非球面形状を有する。本実施形態に係るマイクロレンズ21の表面形状は、対称軸を有する基準表面形状に対して、X方向およびY方向のうちのいずれか一方または双方に非対称に歪んだ非球面形状である。なお、本実施形態に係るマイクロレンズ21の表面形状については、後述する。
【0051】
また、
図2に示すように、複数のマイクロレンズ21は、互いに隙間なく隣接するように密集して配置されることが好ましい。換言すると、互いに隣接する複数のマイクロレンズ21、21間の境界部分に隙間(平坦部)が存在しないように、複数のマイクロレンズ21が相互に重なり合うようにして連続的に配置されることが好ましい。このように、基材10の表面上(XY平面上)に、複数のマイクロレンズ21が隙間なく配置されることが好ましい。つまり、基材10の表面上に占めるマイクロレンズ21の充填率が100%となるように配置されることが好ましい。これにより、入射光のうち、拡散板1の表面で散乱せずにそのまま透過してしまう成分(以下、「0次透過光成分」ともいう。)を、抑制することが可能となる。その結果、複数のマイクロレンズ21が互いに隙間なく隣接するように配置されたマイクロレンズアレイ20により、拡散性能を更に向上させることが可能となる。
【0052】
なお、0次透過光成分を抑制するためには、基材10の上のマイクロレンズ21の充填率は、90%以上であることが好ましく、100%であることがより好ましい。ここで、充填率とは、基材10の表面上(XY平面上)において複数のマイクロレンズ21が占める部分の面積の割合である。充填率が100%であれば、マイクロレンズアレイ20の表面は、曲面成分で形成され、平坦面成分をほぼ含まないことになる。
【0053】
ただし、実際のマイクロレンズアレイ20の製造上では、複数のマイクロレンズ21の曲面を連続的に接続するために、相互に隣接するマイクロレンズ21、21間の境界における変曲点近傍が略平坦となることがあり得る。このような場合、マイクロレンズ21、21間の境界において、略平坦となる変曲点近傍領域の幅(
図3、
図4に示すマイクロレンズ21、21間の境界線24の幅)は、1μm以下であることが好ましい。これにより、0次透過光成分を十分に抑制できる。
【0054】
また、本実施形態に係るマイクロレンズアレイ20では、複数のマイクロレンズ21は、XY平面上において不規則に(ランダムに)配置される。ここで、「不規則」とは、マイクロレンズアレイ20の任意の領域において、マイクロレンズ21の配置に実質的な規則性が存在しないことを表す。ただし、微小領域においてマイクロレンズ21の配置に何らかの規則性が存在したとしても、任意の領域全体としてマイクロレンズの配置に規則性が存在しないものは、「不規則」に含まれるものとする。なお、本実施形態に係るマイクロレンズアレイ20におけるマイクロレンズ21の不規則な配置方法については、後述する。
【0055】
さらに、各マイクロレンズ21の表面形状を決定する開口幅Dx、Dy、曲率半径Rx、Ryなどのレンズパラメータは、マイクロレンズ21ごとに不規則に変動していてもよい。つまり、各マイクロレンズ21の開口幅Dx、Dyおよび曲率半径Rx、Ryは、所定の固定値ではなく、不規則に変動する変動値であってもよい。なお、開口幅Dxは、マイクロレンズ21の開口部のX方向の幅であり、開口幅Dyは、マイクロレンズ21の開口部のY方向の幅であり(例えば、
図5参照。)、マイクロレンズ21のレンズ径に相当する。曲率半径Rxは、マイクロレンズ21の曲面形状のX方向の曲率半径である。曲率半径Ryは、マイクロレンズ21の曲面形状のY方向の曲率半径である。
【0056】
例えば、各マイクロレンズ21の開口幅Dx、Dyは、所定の基準開口幅Dxk、Dykを基準として、所定の変動率δDx、δDyの範囲内で不規則に変動してもよい(Dx=Dxk±δDx%、Dy=Dyk±δDy%)。同様に、各マイクロレンズの曲率半径Rx、Ryは、所定の基準曲率半径Rxk、Rykを基準として、所定の変動率δRx、δRyの範囲内で不規則に変動してもよい(Rx=Rxk±δRx%、Ry=Ryk±δRy%)。これにより、所定の基準開口幅Dxk、Dyk、基準曲率半径Rxk、Rykを中心として、開口幅Dx、Dy、曲率半径Rx、Ryを適切にばらつかせることができる。したがって、拡散板1の所望の光学特性(拡散性能)を維持しつつ、各マイクロレンズ21からの拡散光の干渉や回折による拡散光の強度分布のむら(輝度むら、色むらなど)を低減できる。
【0057】
このように、本実施形態に係るマイクロレンズアレイ20においては、各マイクロレンズ21の曲率半径Rx、Ryおよび開口幅Dx、Dyが、基準曲率半径Rxk、Ryk、基準開口幅Dxk、Dykを中心に所定範囲内で不規則に変動し、ばらつきを有している。各マイクロレンズ21の光学開口の位相分布は、方位によって異なる。さらに、基材10の表面上(XY平面上)において、複数のマイクロレンズ21が互いに重なり合うように密集して連続的に配置され、かつ、個々のマイクロレンズ21は、XY平面上において不規則な位置に配置されている。
【0058】
これにより、各マイクロレンズ21の表面形状(立体的な曲面形状)および平面形状(基材10のXY平面に投影した形状)は、所定の基準形状を基準として、不規則に変動することになる。この結果、各マイクロレンズ21の表面形状や平面形状は、相互に異なる形状となる。したがって、複数のマイクロレンズ21は、
図2に模式的に示したように、様々な平面形状を有するようになり、対称性を有しないものが多くなる。
【0059】
この結果、例えば、
図3に示すように、マイクロレンズ21Aの曲率半径がRx
Aである一方、当該マイクロレンズ21Aに隣接するマイクロレンズ21Bの曲率半径がRx
B(≠Rx
A)であるという状態が生じるようになる。互いに隣接するマイクロレンズ21A、21Bの曲率半径Rx
A、Rx
Bが互いに異なる場合、当該マイクロレンズ21A、21Bの間の境界線24は、直線のみで構成されず、少なくとも一部に曲線を含んで構成されるようになる。
【0060】
具体的には、
図4に示すように、基材10の表面に対して垂直な法線方向(Z方向)からマイクロレンズ21を平面視した場合を考える。この場合、マイクロレンズ21の平面形状の外形線(当該マイクロレンズ21と、隣接する他の複数のマイクロレンズ21との間の境界線24)は、互いに曲率が異なる複数の曲線で構成されることになる。このように、相互に隣接するマイクロレンズ21、21間の境界線24が、互いに曲率が異なる複数の曲線を含む場合、当該マイクロレンズ21、21間の境界の規則性がさらに崩れるため、拡散光の回折成分をさらに低減することができる。
【0061】
<4.マイクロレンズの表面形状と、拡散光の偏向機能>
<4.1.マイクロレンズの表面形状>
次に、本実施形態に係るマイクロレンズ21の表面形状について説明する。本実施形態に係るマイクロレンズ21の表面形状は、対称軸を有する基準表面形状に対して、X方向およびY方向のうちのいずれか一方または双方に非対称に歪んだ非球面形状である。ここでは、まず、基準表面形状について説明し、続いて、本実施形態に係るマイクロレンズ21の表面形状について説明する。
【0062】
本実施形態に係る基準表面形状は、基材10の表面に対して垂直な法線方向(Z方向)に対して回転非対称であり、かつ、異方性を有する非球面形状であるアナモルフィック形状である。
【0063】
図5~
図6を参照して、アナモルフィック形状を有する基準表面形状について説明する。
図5は、アナモルフィック形状を有する基準表面形状の平面形状を示す説明図である。
図6は、アナモルフィック形状を有する基準表面形状の立体形状を示す斜視図である。
【0064】
図5および
図6示す基準表面形状は、アナモルフィック形状の曲面を含む非球面形状である。
図5に示すように、当該基準表面形状の平面形状は、異方性を有する楕円形状である。当該楕円形状のY軸方向の長径がDyであり、X軸方向の短径がDxである。これらDx、Dyは、マイクロレンズ21のX方向およびY方向の開口径に相当する。
図6に示すように、当該基準表面形状は、楕円形状の長軸方向および短軸方向の各々に所定の曲率半径Rx、Ryを有する非球面形状の曲面からなる。かかる基準表面形状は、Y軸方向に異方性を有する非球面形状となっている。
【0065】
ここで、
図6および下記数式(1)を参照して、アナモルフィック形状を有する基準表面形状の設定方法について説明する。
図6に示すアナモルフィック形状の曲面(非球面)は、下記数式(1)で表される。下記数式(1)は、アナモルフィック形状の曲面(非球面)を表す式の一例である。
【0066】
【0067】
なお、数式(1)において、各パラメータは以下のとおりである。
Cx=1/Rx
Cy=1/Ry
Rx:X方向の曲率半径
Ry:Y方向の曲率半径
Kx:X方向のコーニック定数
Ky:Y方向のコーニック定数
【0068】
図6に示すように、上記数式(1)で規定されるアナモルフィック形状の曲面から、XY平面上の楕円形状のX方向の短径がDxとなり、Y方向の長径がDyとなるように、曲面を切り出す。この切り出した一部の曲面形状を、マイクロレンズ21の基準表面形状(アナモルフィック形状)に設定する。ここで、楕円形状の長径Dy、短径Dx、Y方向(長軸方向)の曲率半径Ry、およびX方向(短軸方向)の曲率半径Rxを、マイクロレンズ21ごとに、所定の変動率δの範囲内で不規則に変動させて、ばらつかせる。これにより、相互に異なるアナモルフィック形状からなる複数のマイクロレンズ21の基準表面形状を設定できる。
【0069】
次に、本実施形態に係るマイクロレンズ21の表面形状について説明する。本実施形態に係るマイクロレンズ21の表面形状は、下記数式(2)に示す、少なくとも3次項を有する非球面式により表される非球面形状である。
【0070】
【0071】
なお、数式(2)において、各パラメータは以下のとおりである。
Cx=1/Rx
Cy=1/Ry
Rx:X方向の曲率半径
Ry:Y方向の曲率半径
Kx:X方向のコーニック定数
Ky:Y方向のコーニック定数
A3x:X方向の3次項の非球面係数
A3y:Y方向の3次項の非球面係数
【0072】
3次項は、非球面式に含まれる変数「x」または変数「y」の項のうち、変数「x」または変数「y」の次数が「3」である項である。すなわち、3次項は、上記数式(2)における「A3xx3」の項と、「A3yy3」の項である。また、非球面係数は、非球面式に含まれる3次項の係数「A3x」および「A3y」である。
【0073】
また、非球面式が3次項を含むことは、当該3次項の係数である非球面係数「A3x」または「A3y」の一方もしくは双方がゼロではないことを意味する。例えば、X方向の非球面係数「A3x」がゼロであってとしても(A3x=0)、Y方向の非球面係数「A3x」がゼロでない場合には(A3y≠0)、非球面式は、3次項(すなわち、Y方向の3次項「A3yy3」)を含むことになる。同様に、Y方向の非球面係数「A3y」がゼロであってとしても(A3y=0)、X方向の非球面係数「A3x」がゼロでない場合には(A3x≠0)、非球面式は、3次項(すなわち、X方向の3次項「A3xx3」)を含むことになる。一方、3次項の非球面係数「A3x」および「A3y」の双方がゼロである場合(A3x=0、かつ、A3y=0)、非球面式は、3次項を含まないことになる。
【0074】
例えば、数式(2)において、XY平面におけるX方向の3次項「A3xx3」、または、Y方向の3次項「A3yy3」のいずれか一方を含む場合、マイクロレンズ21の表面形状は、対称軸を有する基準表面形状に対してX方向またはY方向のうちのいずれか一方に非対称に歪み、かつ、他方には対称な非球面形状となる。詳細には、数式(2)において、X方向の3次項「A3xx3」を含み、Y方向の3次項「A3yy3」を含まない場合、マイクロレンズ21の表面形状は、基準表面形状に対してX方向に非対称に歪み、かつ、Y方向には対称な非球面形状となる。また、数式(2)において、Y方向の3次項「A3yy3」のを含み、X方向の3次項「A3xx3」を含まない場合、マイクロレンズ21の表面形状は、基準表面形状に対してY方向に非対称に歪み、かつ、X方向には対称な非球面形状となる。
【0075】
以下に、
図7~
図9を参照して、数式(2)および下記の数式(3)の非球面式で表されるレンズ表面形状の各種の具体例について説明する。
図7~
図8は、数式(2)の非球面式で表されるレンズ表面形状の具体例を示すグラフである。
図7~
図8のグラフは、数式(2)の非球面式で表されるレンズ表面のX方向とY方向の断面形状を示している。
図9は、数式(3)の非球面式で表されるレンズ表面形状の具体例を示すグラフである。
図9のグラフは、数式(3)の非球面式で表されるレンズ表面のX方向とY方向の断面形状を示している。なお、
図7~
図9において、グラフの縦軸のZ方向の距離[μm]は、マイクロレンズ21の頂点の高さを基準(高さゼロ)としたときの、マイクロレンズ21の表面の各位置のZ方向の相対高さ[μm]である。また、グラフの横軸の中心からの距離[μm]は、レンズ中心点30(
図11参照。)を基準(XY平面上の原点)としたときの、マイクロレンズ21の表面の各位置のX方向またはY方向の距離[μm]である。
【0076】
図7は、上記数式(2)がY方向の3次項「A
3yy
3」を含み(A
3y≠0)、X方向の3次項「A
3xx
3」を含まない場合(A
3x=0)における、レンズ表面のX方向とY方向の断面形状を示している。
図7に対応する数式(2)では、A
3x=0、A
3y=0.001、Rx=23mm、Ry=23mm、Kx=0.5、Ky=0.5に設定した。
【0077】
図7に示すように、数式(2)において、A
3y≠0に設定して、Y方向の3次項「A
3yy
3」を含めることにより、レンズ表面形状を基準表面形状に対してY方向に非対称に歪んだ非球面形状とすることができる。一方、数式(2)において、A
3x=0に設定して、X方向の3次項「A
3xx
3」を含めないことにより、基準表面形状に対してX方向に対称な非球面形状とすることができる。これにより、入射光に対して出射光を、Y方向に屈曲させて、出射光を所望方向に偏向させることができる。
【0078】
同様に、数式(2)において、A3x≠0に設定して、X方向の3次項「A3xx3」を含めることにより、基準表面形状に対してX方向に非対称に歪んだ非球面形状とすることができる。また、数式(2)において、A3y=0に設定して、Y方向の3次項「A3yy3」を含めないことにより、基準表面形状に対してY方向に対称な非球面形状とすることができる。これにより、入射光に対して出射光を、X方向に屈曲させて、出射光を所望方向に偏向させることができる。
【0079】
さらに、数式(2)において、A3x≠0、A3y≠0に設定して、X方向の3次項「A3xx3」、および、Y方向の3次項「A3yy3」を含めることにより、基準表面形状に対してX方向およびY方向の双方に非対称に歪んだ非球面形状とすることができる。これにより、入射光に対して出射光を、拡散板1の表面の二次元方向(X方向およびY方向)に屈曲させて偏向することができ、出射光を所望方向に偏向させることができる。
【0080】
ところで、3次項の非球面係数「A3x」、「A3y」が大きすぎる場合、マイクロレンズ21の表面のX方向またはY方向の断面形状において、湾曲方向が変化する変曲点が形成される場合がある。マイクロレンズ21の表面の断面形状に変曲点が存在すると、拡散特性が滑らかにならないという問題がある。このため、マイクロレンズ21の表面の断面形状には、変曲点が含まれない方が好ましい。
【0081】
そこで、数式(2)に示す非球面式で表される非球面形状に変曲点が含まれる場合、3次項に加えて、4次項をさらに有する数式(3)を用いて、3次項により生じる変曲点をなくすことが好ましい。
【0082】
すなわち、本実施形態に係るマイクロレンズ21の表面形状は、下記数式(3)に示す、3次項および4次項を有する非球面式により表される非球面形状であってもよい。
【0083】
【0084】
なお、数式(3)において、各パラメータは以下のとおりである。
Cx=1/Rx
Cy=1/Ry
Rx:X方向の曲率半径
Ry:Y方向の曲率半径
Kx:X方向のコーニック定数
Ky:Y方向のコーニック定数
A3x:X方向の3次項の非球面係数
A4x:X方向の4次項の非球面係数
A3y:Y方向の3次項の非球面係数
A4y:Y方向の4次項の非球面係数
【0085】
3次項は、非球面式に含まれる変数「x」または変数「y」の項のうち、変数「x」または変数「y」の次数が「3」である項である。すなわち、3次項は、上記数式(3)における「A3xx3」の項と、「A3yy3」の項である。また、非球面係数は、非球面式に含まれる3次項の係数「A3x」および「A3y」である。
【0086】
また、非球面式が3次項を含むことは、当該3次項の係数である非球面係数「A3x」または「A3y」の一方もしくは双方がゼロではないことを意味する。例えば、X方向の非球面係数「A3x」がゼロであってとしても(A3x=0)、Y方向の非球面係数「A3x」がゼロでない場合には(A3y≠0)、非球面式は、3次項(すなわち、Y方向の3次項「A3yy3」)を含むことになる。同様に、Y方向の非球面係数「A3y」がゼロであってとしても(A3y=0)、X方向の非球面係数「A3x」がゼロでない場合には(A3x≠0)、非球面式は、3次項(すなち、X方向の3次項「A3xx3」)を含むことになる。一方、3次項の非球面係数「A3x」および「A3y」の双方がゼロである場合(A3x=0、かつ、A3y=0)、非球面式は、3次項を含まないことになる。
【0087】
4次項は、非球面式に含まれる変数「x」または変数「y」の項のうち、変数「x」または変数「y」の次数が「4」である項である。すなわち、4次項は、上記数式(3)における「A4xx4」の項と、「A4yy4」の項である。また、非球面係数は、非球面式に含まれる4次項の係数「A4x」および「A4y」である。
【0088】
また、非球面式が4次項を含むことは、当該4次項の係数である非球面係数「A4x」または「A4y」の一方もしくは双方がゼロではないことを意味する。例えば、X方向の非球面係数「A4x」がゼロであってとしても(A4x=0)、Y方向の非球面係数「A4x」がゼロでない場合には(A4y≠0)、非球面式は、4次項(すなわち、Y方向の4次項「A4yy4」)を含むことになる。同様に、Y方向の非球面係数「A4y」がゼロであってとしても(A4y=0)、X方向の非球面係数「A4x」がゼロでない場合には(A4x≠0)、非球面式は、4次項(すなち、X方向の4次項「A4xx4」)を含むことになる。一方、4次項の非球面係数「A4x」および「A4y」の双方がゼロである場合(A4x=0、かつ、A4y=0)、非球面式は、4次項を含まないことになる。
【0089】
図8は、上記数式(2)がY方向の3次項「A
3yy
3」を含み(A
3y≠0)、X方向の3次項「A
3xx
3」を含まない場合(A
3x=0)における、レンズ表面のX方向とY方向の断面形状を示している。
図8に対応する数式(2)では、A
3x=0、A
3y=0.002、Rx=23mm、Ry=23mm、Kx=0.5、Ky=0.5に設定した。
【0090】
図8に示すように、Y方向の3次項の非球面係数「A
3y」が大きすぎると、Y方向のレンズ表面の断面形状に、曲率の符号が切り換わる変曲点IPが形成される。変曲点IPは、レンズ表面の断面形状が、凹から凸、または、凸から凹へ変化する点である。
図8において、変曲点IPの右側では、レンズ表面のY方向の断面形状が下に凸となり、変曲点IPの左側では、レンズ表面のY方向の断面形状が上に凸である。
【0091】
このように、レンズ表面の断面形状に変曲点IPが含まれる場合、意図しない方向に屈曲する出射光が生じてしまう。これにより、出射光の屈曲が阻害されてしまう。このため、レンズ表面の断面形状には、変曲点IPが含まれない方が好ましい。
【0092】
そこで、3次項を含む数式(2)により表される非球面形状において、X方向およびY方向の断面形状のうちのいずれか一方または双方に変曲点IPが含まれる場合、マイクロレンズ21の表面形状を、変曲点IPを含む方向の4次項を追加した数式(3)により表される非球面形状とすることが好ましい。すなわち、数式(3)において、3次項は、マイクロレンズの表面形状を非対称にするための項であり、4次項は、マイクロレンズの表面の断面形状の変曲点IPを補正するための項である。数式(3)により表される非球面形状とすることにより、マイクロレンズ21の表面の断面形状から変曲点IPをなくすことが可能となる。
【0093】
図9は、上記数式(3)がY方向の3次項「A
3yy
3」を含み(A
3y≠0)、Y方向の4次項「A
4yy
4」を含み(A
4y≠0)、X方向の3次項「A
3xx
3」を含まず(A
3x=0)、X方向の4次項「A
4xx
4」を含まない(A
4x=0)場合における、レンズ表面のX方向とY方向の断面形状を示している。
図9に対応する数式(3)では、A
3x=0、A
4x=0、A
3y=0.002、A
4y=0.0001、Rx=23mm、Ry=23mm、Kx=0.5、Ky=0.5に設定した。
【0094】
図9に示すように、数式(3)において、Y方向の3次項「A
3yy
3」に加えて、Y方向の4次項「A
4yy
4」を含めることにより、
図8に示すグラフとは異なり、Y方向のレンズ表面の断面形状において変曲点IPをなくすことが可能となる。
【0095】
したがって、マイクロレンズ21の表面形状を、数式(3)に示す、3次項および4次項を有する非球面式により表される非球面形状とすることにより、マイクロレンズ21の表面の断面形状において変曲点IPをなくすことができる。これにより、意図しない方向に屈曲する出射光の発生を防止することが可能となる。
【0096】
また、マイクロレンズ21を製造する際に、
図9に示す有効範囲ERで、曲面を切り出してもよい。有効範囲ERは、レンズのピッチ、または、レンズを重ね合わせた場合の境界となる範囲である。
【0097】
<4.2.出射光の偏向機能>
ここで、
図10、
図11を参照して、本実施形態に係るマイクロレンズ21による出射光(拡散光)の偏向機能について、より詳細に説明する。
図10は、基準表面形状を有するマイクロレンズ21による透過光の拡散機能を示す模式図である。
図11は、本実施形態に係るマイクロレンズ21の透過光の拡散機能および偏向機能を示す模式図である。
図10中の上側の図(
図10A)は、XZ断面におけるマイクロレンズ21による透過光の拡散機能を示す。
図10中の下側の図(
図10B)は、YZ断面におけるマイクロレンズ21による透過光の拡散機能を示す。
図11中の上側の図(
図11A)は、XZ断面におけるマイクロレンズ21による透過光の拡散機能および偏向機能を示す。
図11中の下側の図(
図11B)は、YZ断面におけるマイクロレンズ21による透過光の拡散機能および偏向機能を示す。
【0098】
図10、
図11に示すように、拡散板1に対する入射光40として、拡散板1の表面の法線方向(Z方向)に対して傾斜する方向からコリメート光が入射される斜入射の場合を考える。
【0099】
斜入射の場合、例えば、XZ断面における入射光40の入射角θinxを、αx[°](αx≠0°)とすると、入射光40の主光線41の方向42とZ方向との為す角もαxとなる。拡散板1にコリメート光が斜入射されると、拡散板1を透過する光は、マイクロレンズ21によって拡散されるので、出射光50は拡散光となる。
【0100】
ここで、
図10Aに示すように、マイクロレンズ21の表面形状が基準表面形状である場合、XZ断面において、マイクロレンズ21の表面形状は、マイクロレンズ21の頂点28および中心点30を通る光軸25に対して対称となる。このため、基準表面形状を有するマイクロレンズ21を透過する光は、入射光40の主光線41の方向42を中心として対称に拡散される。なお、詳細には、基材10と外気との屈折率の差によって生じる自然屈曲(スネルの法則)により、出射光50の主光線51は、入射光40の主光線41の方向42に対して、自然屈曲角Sだけ屈曲する。このため、出射光50は、入射光40の主光線41の方向42に対して、自然屈曲角Sの分、屈曲した主光線51を中心として対称に拡散する拡散光となる。この結果、XZ断面における出射光50の主光線51の出射角θoutxは、αx+Sとなり、出射光50の主光線51の方向と光軸25との為す角もαx+Sとなる。
【0101】
同様に、例えば、YZ断面における入射光40の入射角θinyを、αy[°](αy≠0°)とすると、入射光40の主光線41の方向42とZ方向との為す角もαyとなる。拡散板1にコリメート光が斜入射されると、拡散板1を透過する光は、マイクロレンズ21によって拡散されるので、出射光50は拡散光となる。
【0102】
ここで、
図10Bに示すように、マイクロレンズ21の表面形状が基準表面形状である場合、YZ断面においてマイクロレンズ21の表面形状は、マイクロレンズ21の頂点28および中心点30を通る光軸25に対して対称となる。このため、基準表面形状を有するマイクロレンズ21を透過する光は、入射光40の主光線41の方向42を中心として対称に拡散される。なお、詳細には、自然屈曲により、出射光50の主光線51は、入射光40の主光線41の方向42に対して、自然屈曲角Sだけ屈曲する。このため、出射光50は、入射光40の主光線41の方向42に対して、自然屈曲角Sの分、屈曲した主光線51を中心として対称に拡散する拡散光となる。この結果、YZ断面における出射光50の主光線51の出射角θoutyは、αy+Sとなり、出射光50の主光線51の方向と光軸25との為す角もαy+Sとなる。
【0103】
一方、
図11に示すように、マイクロレンズ21の表面形状が、基準表面形状に対して非対称に歪んだ非球面形状である場合、拡散板1から出射する出射光50の主光線51は、入射光40の主光線41に対して偏向する。
【0104】
詳細には、
図11Aに示すように、マイクロレンズ21の表面形状が、基準表面形状に対してX方向に非対称に歪んだ非球面形状である場合、拡散板1を透過する光は、入射光40の主光線41の方向42とは異なる偏向方向を中心としてほぼ対称に拡散される。この偏向方向は、入射光40の主光線41に対して出射光50の主光線51が屈曲した方向であり、偏向角βxで表される。
図11Aに示すように、入射光40が拡散板1に対して斜入射する場合(θinx=αx(αx≠0))、出射光50の主光線51の偏向方向は、例えば、入射光40の主光線41の方向42よりも、Z方向との為す角が大きくなる方向となる。なお、マイクロレンズ21の表面形状によっては、出射光50の主光線51の偏向方向が、入射光40の主光線41の方向42よりも、Z方向との為す角が小さくなる方向となる場合もある。この偏向方向を表す偏向角βxは、マイクロレンズ21の表面形状によって定まる。偏向角βxは、曲率半径Rx、非球面係数A
3x、非球面係数A
4x、コーニック定数Kx、および、レンズのピッチに応じて変化する。
【0105】
このように、マイクロレンズ21の表面形状が、基準表面形状に対してX方向に非対称に歪んだ非球面形状である場合、出射光50の光束は、入射光40の光束に対して偏向方向(偏向角βxで表される方向)に偏向され、当該偏向方向を中心としてほぼ対称に拡散する拡散光となる。この結果、出射光50の主光線51の出射角θoutxはαx+S+βxになり、出射光50の主光線51の方向は、入射光40の主光線41の方向42に対して偏向角βx+自然屈曲角Sだけ傾斜した方向となる。
【0106】
同様に、
図11Bに示すように、マイクロレンズ21の表面形状が、基準表面形状に対してY方向に非対称に歪んだ非球面形状である場合、拡散板1を透過する光は、入射光40の主光線41の方向42とは異なる偏向方向を中心としてほぼ対称に拡散される。この偏向方向は、入射光40の主光線41に対して出射光50の主光線51が屈曲した方向であり、偏向角βyで表される。
図11Bに示すように、入射光40が拡散板1に対して斜入射する場合(θiny=αy(αy≠0))、出射光50の主光線51の偏向方向は、例えば、入射光40の主光線41の方向42よりも、Z方向との為す角が大きくなる方向となる。なお、マイクロレンズ21の表面形状によっては、出射光50の主光線51の偏向方向が、入射光40の主光線41の方向42よりも、Z方向との為す角が小さくなる方向となる場合もある。この偏向方向を表す偏向角βyは、マイクロレンズ21の表面形状によって定まる。偏向角βyは、曲率半径Ry、非球面係数A
3y、非球面係数A
4y、コーニック定数Ky、および、レンズのピッチに応じて変化する。
【0107】
このように、マイクロレンズ21の表面形状が、基準表面形状に対してY方向に非対称に歪んだ非球面形状である場合、出射光50の光束は、入射光40の光束に対して偏向方向(偏向角βyで表される方向)に偏向され、当該偏向方向を中心としてほぼ対称に拡散する拡散光となる。この結果、出射光50の主光線51の出射角θoutyはαy+S+βyになり、出射光50の主光線51の方向は、入射光40の主光線41の方向42に対して偏向角βy+自然屈曲角Sだけ傾斜した方向となる。
【0108】
以上説明したように、本実施形態によれば、マイクロレンズアレイ20を構成する各マイクロレンズ21の表面形状は、少なくとも3次項を有する非球面式により表される非球面形状である。つまり、本実施形態に係るマイクロレンズアレイ20を構成する各マイクロレンズ21の表面形状は、基準表面形状に対して、X方向およびY方向のいずれか一方または双方に歪んだ非球面形状である。これにより、入射光40の方向に対して出射光50の方向を屈曲させて、出射光50を所望方向に偏向させることができる。したがって、本実施形態によれば、拡散板1が有する通常の屈折作用による屈折方向とは異なる方向にも、出射光50を偏向させることができる。
【0109】
特に、本実施形態によれば、法線入射である場合であっても、斜入射である場合であっても、入射光に対して出射光の屈曲角を大きくすることができ、偏向性能を向上させることが可能となる。
【0110】
また、本実施形態に係るマイクロレンズアレイ20を構成する各マイクロレンズ21の表面形状を、基準表面形状に対して、X方向に歪んだ非球面形状とすることにより、入射光40の方向に対して出射光50の方向をXZ断面において屈曲させることができる。また、本実施形態に係るマイクロレンズアレイ20を構成する各マイクロレンズ21の表面形状を、基準表面形状に対して、Y方向に歪んだ非球面形状とすることにより、入射光40の方向に対して出射光50の方向をYZ断面において屈曲させることができる。
【0111】
さらに、本実施形態に係るマイクロレンズアレイ20を構成する各マイクロレンズ21の表面形状を、基準表面形状に対して、X方向およびY方向に歪んだ非球面形状とすることにより、入射光40の方向に対して出射光50の方向をXZ断面およびYZ断面の双方において屈曲させることができる。つまり、入射光40に対して出射光50を、拡散板1の表面の二次元方向(X方向およびY方向)に屈曲させて偏向することが可能となる。
【0112】
また、本実施形態に係るマイクロレンズ21の表面形状は、基準表面形状に対して、X方向およびY方向のいずれか一方または双方に歪んだ非球面形状である。このため、マイクロレンズ21の表面形状を大きく屈曲させることが可能となり、マイクロレンズの表面形状を対称形状にしたままで、マイクロレンズの光軸をZ方向に対して傾斜させる技術と比較して、偏向角を大きくすることができる。
【0113】
なお、本実施形態に係る拡散板1に入射される入射光は、例えば、光学系によりコリメートされたコリメート光であってもよいし、1つの点光源から入射される拡散光であってもよいし、拡散板1に対して同一方向に配置された複数の光源から入射される拡散光またはコリメート光などであってもよい。本実施形態に係るマイクロレンズアレイ20は、これらの入射光を好適に偏向することが可能である。
【0114】
<4.3.3次項の非球面係数A
3の好ましい範囲>
図12は、3次項の非球面係数A
3の変化による屈曲度の変化を説明するグラフである。
図12において、縦軸は、屈曲角[°]を示し、横軸は、3次項の非球面係数を示す。また、
図12の上の図は、X方向の3次項の非球面係数A
3xの変化を示し、下の図は、Y方向の3次項の非球面係数A
3yの変化を示す。
【0115】
図12に示すように、3次項の非球面係数A
3(A
3x,A
3y)は、-0.00075以上、+0.00075以下であることが好ましい。3次項の非球面係数A
3が、-0.00075未満であると、変曲点が生じる可能性があるという問題が生じる。また、3次項の非球面係数A
3が、+0.00075を上回ると、変曲点が生じる可能性があるという問題が生じる。
【0116】
<4.4.4次項の非球面係数A4/3次項の非球面係数A3の好ましい範囲>
上記3次項および4次項を有する非球面式は、以下の式(10)を満たすことが好ましい。
A4/A3>0 …(10)
【0117】
また、3次項および4次項を有する非球面式において、以下の式(11)を満たすことがより好ましく、以下の式(12)を満たすことがさらに好ましい。
A4/A3>0.03 ・・・(11)
A4/A3<0.5 ・・・(12)
【0118】
詳細には、数式(3)において、以下の式(21)および式(22)を満たすことが好ましい。
A4x/A3x>0 ・・・(21)
A4y/A3y>0 ・・・(22)
【0119】
なお、数式(3)において、Y方向の3次項「A3yy3」を含まない場合(A3y=0)、式(21)を満たすとよい。また、数式(3)において、X方向の3次項「A3xx3」を含まない場合(A3x=0)、式(22)を満たすとよい。また、数式(3)において、X方向の3次項「A3xx3」を含み(A3x≠0)、かつ、Y方向の3次項「A3yy3」を含む(A3y≠0)場合、式(21)および式(22)を満たすとよい。
【0120】
また、数式(3)において、以下の式(23)および式(24)を満たすことがより好ましく、以下の式(25)および式(26)を満たすことがさらに好ましい。
A4x/A3x>0.03 ・・・(23)
A4y/A3y>0.03 ・・・(24)
A4x/A3x<0.5 ・・・(25)
A4y/A3y<0.5 ・・・(26)
【0121】
なお、数式(3)において、Y方向の3次項「A3yy3」を含まない場合(A3y=0)、式(23)を満たすとよい。また、数式(3)において、X方向の3次項「A3xx3」を含まない場合(A3x=0)、式(24)を満たすとよい。また、数式(3)において、X方向の3次項「A3xx3」を含み(A3x≠0)、かつ、Y方向の3次項「A3yy3」を含む(A3y≠0)場合、式(23)および式(24)を満たすとよい。
【0122】
また、数式(3)において、Y方向の3次項「A3yy3」を含まない場合(A3y=0)、式(25)を満たすとよい。また、数式(3)において、X方向の3次項「A3xx3」を含まない場合(A3x=0)、式(26)を満たすとよい。また、数式(3)において、X方向の3次項「A3xx3」を含み(A3x≠0)、かつ、Y方向の3次項「A3yy3」を含む(A3y≠0)場合、式(25)および式(26)を満たすとよい。
【0123】
式(10)を満たすことにより、マイクロレンズ21の表面の断面形状において変曲点IPをなくすことができる。同様に、式(21)および式(22)のうちのいずれか一方または双方を満たすことにより、マイクロレンズ21の表面の断面形状において変曲点IPをなくすことができる。
【0124】
また、式(11)を満たすことにより、マイクロレンズ21の表面の断面形状において変曲点をなくすことができる。式(23)および式(24)を満たすことにより、マイクロレンズ21の表面の断面形状において変曲点をなくすことができる。
【0125】
また、式(12)を満たすことにより、マイクロレンズ21の頂点の高さが大きくなりすぎる事態を回避することができる。式(25)および式(26)を満たすことにより、マイクロレンズ21の頂点の高さが大きくなりすぎる事態を回避することができる。
【0126】
<5.マイクロレンズの設計方法>
次に、
図13~
図15を参照して、本実施形態に係るマイクロレンズの設計方法について説明する。
図13は、本実施形態に係るマイクロレンズの設計方法を示すフローチャートである。
【0127】
(S10)レンズ中心座標の設定
図13に示すように、まず、マイクロレンズアレイ20の表面上(XY平面上)において、各マイクロレンズ21のレンズ中心座標pnを設定する。レンズ中心座標pnは、各マイクロレンズ21の中心点30(
図11参照。)のXY平面上の座標である。レンズ中心座標pnを設定するとき、XY平面上における複数のレンズ中心座標pn同士の間隔が、予め設定した範囲内に分布するように、複数のレンズ中心座標pnが不規則な位置に設定されることが好ましい。
【0128】
具体的には、
図14に示すように、予めサイズが設定されたマイクロレンズアレイ20の単位セル3のXY平面上に、複数のレンズ中心座標pn(xpn,ypn)を不規則に設定する。なお、nは、マイクロレンズ21の設置数である(n=1,2,3,・・・)。複数のレンズ中心座標pn同士の間隔が、予め設定された範囲となるように、XY平面上に複数のレンズ中心座標pn(xpn,ypn)が不規則に配置される。
【0129】
例えば、
図15に示すように、相互に隣接するマイクロレンズ21、21同士の重なり量Ovの調整処理を行ってもよい。この調整処理により、XY平面上において、相互に隣接するマイクロレンズ21、21同士の重なり量Ovが、予め設定された所定の許容範囲(例えば、所定の所定値以下)になるように、レンズ中心座標pnを調整して、複数のマイクロレンズ21のレンズ中心座標pnが不規則に配置される。
【0130】
具体的には、
図15に示すように、まず、新たに配置されるマイクロレンズ21のレンズ中心座標pnのx座標とy座標、XY平面上におけるレンズ中心座標pnからのX方向の距離dxと、Y方向の距離dyを乱数で決定する。次いで、既に配置されている各マイクロレンズ21の平面形状と、新たに配置されるマイクロレンズ21の平面形状との重なり量Ovを計算する。重なり量Ovは、相互に隣接する2つのマイクロレンズ21、21の平面形状の重なり幅である。
【0131】
このようにして、XY平面上に新たなマイクロレンズ21を配置するとき、既に配置されているマイクロレンズ21との重なり量Ovを計算し、重なり量Ovが、予め設定された許容範囲内であれば、新たなマイクロレンズ21を配置するようにする。逆に、計算した重なり量Ovが許容範囲外である場合(例えば、許容範囲の上限値を超える場合、または、許容範囲の下限値未満である場合)には、新たなマイクロレンズ21を配置しないようにする。許容範囲は、マイクロレンズアレイ20に要求される光学特性等に応じて、予め求めておくことが好ましい。
【0132】
以上のようにして、
図15に示すように、XY平面上にマイクロレンズ21のレンズ中心座標pnを不規則に配置しつつ、重なり量Ovを許容範囲内に調整してもよい。これにより、XY平面上において、複数のマイクロレンズ21を適切な重なり量Ovで相互に重なり合わせつつ、各マイクロレンズ21を不規則な位置に配置できる。したがって、隣接するマイクロレンズ21、21間において、レンズ面にならない平坦部の発生を抑制できるので、拡散板1の平坦部を透過する0次回折光の発生を抑制できる。また、複数のマイクロレンズ21から出射される拡散光の干渉や回折による拡散光の強度分布のむらを低減できる。さらに、マイクロレンズ21、21同士が過度に重なり合っていないので、マイクロレンズアレイ構造の成形性や実現性を損なうこともない。
【0133】
(S12)レンズパラメータの設定
次いで、
図13に示すように、各マイクロレンズ21のレンズパラメータを設定する。レンズパラメータは、マイクロレンズ21の表面形状(レンズ表面形状)を決定するパラメータである。レンズパラメータは、予め設定された変動範囲内で不規則に設定されることが好ましい。
【0134】
詳細には、レンズパラメータとして、数式(2)の各パラメータを設定する。また、数式(2)の各パラメータを不規則に変動させることにより、複数のマイクロレンズ21のレンズ表面形状(回転非対称な非球面形状)を変動させて、相互に異なる非球面形状に設定することができる。
【0135】
なお、レンズパラメータの設定S12において、数式(2)に代えて、数式(3)の4次項の非球面係数A4に0を設定し、その他の各パラメータをレンズパラメータとして設定してもよい。
【0136】
なお、マイクロレンズ21の平面形状は、例えば、
図15に示すように楕円もしくは楕円に近似した形状となる。
【0137】
(S14)変曲点の判定
次いで、
図13に示すように、レンズパラメータの設定S12で、各パラメータを設定した各数式(2)に基づくグラフにおいて、変曲点IPがあるか否かを判定する。その結果、変曲点IPがあるグラフがあると判定した場合(S14におけるYES)、変曲点IPの補正S16に処理を移す。一方、変曲点IPがあるグラフはないと判定した場合(S14におけるNO)、レンズ表面形状の決定S18に処理を移す。
【0138】
(S16)変曲点の補正
次いで、
図13に示すように、変曲点IPがあるグラフについて、数式(3)に、数式(2)に設定した各パラメータを設定し、さらに、4次項の非球面係数A
4をゼロ以外の値に設定する。これにより、各パラメータを設定した各数式(3)に基づくグラフにおいて、変曲点IPをなくす補正をすることができる。
【0139】
(S18)レンズ表面形状の決定
次いで、上記S12またはS16で設定されたレンズパラメータに基づいて、各マイクロレンズ21のレンズ表面形状を決定する。具体的には、上記設定されたレンズパラメータに基づいて、各マイクロレンズ21の表面形状を表すZ座標位置を計算して、マイクロレンズ21のレンズ表面形状を設定する。そして、設定されたレンズ表面形状のXY平面上におけるサイズ(例えば、開口幅Dx、Dy)が、上記S12で設定されたパラメータのサイズ(例えば、上記S12で設定された開口幅Dx、Dy)に合うように、設定されたレンズ表面形状のZ方向の高さ位置を調整する。そして、当該高さ位置を調整した後のレンズ表面形状のXY平面による水平断面を、z=0の位置の断面とする。
【0140】
以上のように、本実施形態に係るマイクロレンズ21の設計方法によれば、マイクロレンズアレイ20を構成する各マイクロレンズ21の表面形状は、少なくとも3次項を有する非球面式により表される非球面形状とする。つまり、本実施形態に係るマイクロレンズアレイ20を構成する各マイクロレンズ21の表面形状を、基準表面形状に対して、X方向およびY方向のいずれか一方または双方に歪んだ非球面形状とする。これにより、
図11に示したように、斜入射である場合であっても、十分な偏向性能を確保でき、マイクロレンズ21に入射する入射光40に対して、出射光50を所望方向に大きな屈曲角で屈曲させ、偏向させることができる。
【0141】
さらに、本実施形態に係るマイクロレンズ21の設計方法によれば、レンズ表面形状を規定するパラメータ(例えば、開口幅Dx、Dy、曲率半径Rx、Ry等)を不規則に変動させる。さらに、複数のマイクロレンズ21は、相互に隙間なく重なり合うように配置され、相隣接するマイクロレンズ21間の境界部分に平坦部が存在しないことが好ましい。これにより、XY平面上に複数のマイクロレンズアレイ20を、相互に隙間なく連続的に配列しつつ、各マイクロレンズ21に対して相互に異なる拡散特性を付与することができる。かかる構成のマイクロレンズアレイ20は、レンズ表面構造に依存するマクロ光量変動や、回折光による光量変化が小さく、均質性の高い多様な配光制御性を有する。
【0142】
<6.マイクロレンズの製造方法>
次に、
図16を参照して、本実施形態に係る拡散板1の製造方法について説明する。
図16は、本実施形態に係る拡散板1の製造方法を示すフローチャートである。
【0143】
図16に示すように、本実施形態に係る拡散板1の製造方法では、まず、基材(マスタ原盤の基材または拡散板1の基材10)が洗浄される(ステップS101)。基材は、例えば、ガラスロールのようなロール状の基材であってもよいし、ガラスウェハまたはシリコンウェハのような平板状の基材であってもよい。
【0144】
次いで、洗浄後の基材の表面上にレジストが形成される(ステップS103)。例えば、金属酸化物を用いたレジストにより、レジスト層を形成することができる。具体的には、ロール状の基材に対しては、レジストをスプレイ塗布またはディッピング処理することにより、レジスト層を形成することができる。一方、平板状の基材に対しては、レジストを各種コーティング処理することにより、レジスト層を形成することができる。なお、レジストとしては、ポジ型光反応レジストを用いてもよいし、ネガ型光反応レジストを用いてもよい。また、基材とレジストとの密着性を高めるために、カップリング剤を使用してもよい。
【0145】
さらに、マイクロレンズアレイ20の形状に対応するパターンを用いて、レジスト層が露光される(ステップS105)。かかる露光処理は、例えば、グレイスケールマスクを用いた露光、複数のグレイスケールマスクの重ね合わせによる多重露光、または、ピコ秒パルスレーザもしくはフェムト秒パルスレーザ等を用いたレーザ露光など、公知の露光方法を適宜適用すればよい。
【0146】
その後、露光後のレジスト層が現像される(S107)。かかる現像処理により、レジスト層にパターンが形成される。レジスト層の材質に応じて適切な現像液を用いることで、現像処理を実行することができる。例えば、レジスト層が金属酸化物を用いたレジストで形成されている場合、無機または有機アルカリ溶液を用いることで、レジスト層をアルカリ現像することができる。
【0147】
次いで、現像後のレジスト層を用いてスパッタ処理またはエッチング処理することにより(S109)、表面にマイクロレンズアレイ20の形状が形成されたマスタ原盤が完成する(S111)。具体的には、パターンが形成されたレジスト層をマスクとして、ガラス基材をガラスエッチングすることで、ガラスマスタを製造することができる。または、パターンが形成されたレジスト層にNiスパッタまたはニッケルめっき(NED処理)を行い、パターンが転写されたニッケル層を形成した後、基材を剥離することで、メタルマスタを製造することができる。例えば、膜厚50nm程度のNiスパッタ、または膜厚100μm~200μmのニッケルめっき(例えば、スルファミン酸Ni浴)等によって、レジストのパターンが転写されたニッケル層を形成することで、メタルマスタ原盤を製造することができる。
【0148】
さらに、上記S111で完成したマスタ原盤(例えば、ガラスマスタ原盤、メタルマスタ原盤)を用いて、樹脂フィルム等にパターンを転写(インプリント)することで、表面にマイクロレンズアレイ20の反転形状が形成されたソフトモールドが作成される(S113)。
【0149】
その後、ソフトモールドを用いて、ガラス基材またはフィルム基材等に対して、マイクロレンズアレイ20のパターンを転写し(S115)、さらに、必要に応じて保護膜、反射防止膜等を成膜することにより(S117)、本実施形態に係る拡散板1が製造される。
【0150】
なお、上記では、マスタ原盤(S111)を用いてソフトモールドを製造(S113)した後に、当該ソフトモールドを用いた転写により拡散板1を製造(S115)する例について説明した。しかし、かかる例に限定されず、マイクロレンズアレイ20の反転形状が形成されたマスタ原盤(例えば無機ガラス原盤)を製造し、当該マスタ原盤を用いたインプリントにより拡散板1を製造してもよい。例えば、PET(PolyEthylene Terephthalate)またはPC(PolyCarbonate)からなる基材に、アクリル系光硬化樹脂を塗布し、塗布したアクリル系光硬化樹脂にマスタ原盤のパターンを転写し、アクリル系光硬化樹脂をUV硬化させることで、拡散板1を製造することができる。
【0151】
一方、ガラス基材自体に対して直接加工を施して、拡散板1を製造する場合には、ステップS107における現像処理に引き続き、CF4等の公知の化合物を用いて基材10に対してドライエッチング処理を施し(S119)、その後、必要に応じて保護膜、反射防止膜等を成膜する(S121)ことにより、本実施形態に係る拡散板1が製造される。
【0152】
なお、
図16に示した製造方法は、あくまでも一例であって、拡散板の製造方法は、上記の例に限定されない。
【0153】
<7.拡散板の適用例>
次に、本実施形態に係る拡散板1の適用例について説明する。
【0154】
以上説明したような拡散板1は、その機能を実現するために光を拡散させる必要がある各種の装置に対して、適宜実装することが可能である。かかる装置としては、例えば、各種のディスプレイ(例えば、LED、有機ELディスプレイ)等の表示装置や、プロジェクタ等の投影装置、各種の照明装置を挙げることができる。
【0155】
例えば、拡散板1は、液晶表示装置のバックライト、拡散板一体化レンズ等に適用することも可能であり、光整形の用途にも適用可能である。また、拡散板1は、投影装置の透過スクリーン、フレネルレンズ、反射スクリーン等にも適用可能である。また、拡散板1は、スポット照明やベース照明等に利用される各種の照明装置や、各種の特殊ライティングや、中間スクリーンや最終スクリーン等の各種のスクリーン等に適用することも可能である。さらに、拡散板1は、光学装置における光源光の拡散制御などの用途にも適用可能であり、LED光源装置の配光制御、レーザ光源装置の配光制御、各種ライトバルブ系への入射配光制御等にも適用できる。
【0156】
なお、拡散板1が適用される装置は、上記の適用例に限定されず、光の拡散を利用する装置であれば、任意の公知の装置に対しても適用可能である。例えば、本実施形態に係る拡散板1は、各種の照明光学系、画像の投影光学系、または計測検出センシング光学系などの光学機器に搭載することができる。
【0157】
<8.まとめ>
以上、本実施形態に係るマイクロレンズアレイ20を備えた拡散板1について説明した。本実施形態によれば、マイクロレンズ21の表面形状は、少なくとも3次項を有する非球面式により表される非球面形状である。
【0158】
さらに、各マイクロレンズ21は、基材10の表面(XY平面)上において、不規則な位置に配置されている。
【0159】
また、各マイクロレンズ21の非球面形状を決定するレンズパラメータ(例えば、開口幅Dx、Dy、曲率半径Rx、Ry)は、所定の基準値(例えば、基準開口幅Dxk、Dyk、基準曲率半径Rxk、Ryk)を基準として、所定の変動率(例えば、変動率δDx、δDy、δRx、δRy)で不規則に変動している。これにより、各マイクロレンズ21の非球面形状は、基準形状を基準として変動しており、複数のマイクロレンズ21の非球面形状は、相互に異なる形状となっている。
【0160】
本実施形態に係るマイクロレンズアレイ20は、上記のように少なくとも3次項を有する非球面式により表される非球面形状である表面形状を有するマイクロレンズ21を最小構造単位としている。そして、相互に非球面形状が異なる複数のマイクロレンズ21が、マイクロレンズアレイ20の面内に、緻密かつ不規則に配置されている。
【0161】
かかる構成のマイクロレンズアレイ20により、法線入射および斜入射において、拡散板1を透過して出射される出射光50(拡散光)を所望方向に大きな屈曲角で屈曲させ、当該出射光50(拡散光)の光束を入射光40に対して所望方向に大きく偏向することができる。
【0162】
この点、従来の一般的な拡散板においては、マクロ的な全体の透過光軸は、拡散板の透過屈折の作用によって決定されていた。これに対し、本実施形態に係る拡散板1によれば、マイクロレンズ21の光軸25自体を傾斜角αで傾斜させて、非球面形状を回転させることにより、出射光50の光束を、通常の透過屈折の作用とは異なる方向に偏向させることが可能である。この偏向作用によって、拡散板1に対する入射光40や出射光50の光軸方向の設計自由度を拡張できるとともに、拡散板1が搭載される光学機器システムの小型化や、視認性などの光学機能の最適化を図ることができる。
【0163】
また、本実施形態に係るマイクロレンズアレイ20は、マイクロレンズの表面形状を対称形状にしたままで、マイクロレンズの光軸をZ方向に対して傾斜させる技術と比較して、変曲点を生じさせないようにしつつ、偏向角をより大きくすることができる。
【0164】
また、本実施形態に係るマイクロレンズ21の表面形状は、3次項および4次項を有する非球面式により表される非球面形状であってもよい。なお、当該非球面式において、3次項は、マイクロレンズ21の表面形状を非対称にするための項であり、4次項は、マイクロレンズの表面の断面形状の変曲点を補正するための項であってもよい。これにより、マイクロレンズ21の表面の断面形状において変曲点IPをなくすことができる。したがって、意図しない方向に屈曲する出射光の発生を防止することが可能となる。
【0165】
また、本実施形態に係る非球面式は、上記式(10)を満たすことが好ましく、詳細には、上記式(21)、式(22)を満たすことが好ましい。これにより、マイクロレンズ21の表面の断面形状において変曲点IPをなくすことができる。
【0166】
また、本実施形態に係る非球面式は、上記式(11)を満たすことが好ましく、詳細には、上記式(23)、式(24)を満たすことが好ましい。これにより、マイクロレンズ21の表面の断面形状において変曲点をなくすことができる。
【0167】
また、本実施形態に係る非球面式は、上記式(12)を満たすことが好ましく、詳細には、上記式(25)、式(26)を満たすことが好ましい。これにより、マイクロレンズ21の頂点の高さが大きくなりすぎる事態を回避することができる。
【0168】
また、3次項は、XY平面におけるX方向の3次項、および、Y方向の3次項の双方を含み、マイクロレンズの表面形状は、対称軸を有する基準表面形状に対してX方向およびY方向の双方に非対称に歪んだ非球面形状であることが好ましい。これにより、入射光40の方向に対して出射光50の方向をXZ断面およびYZ断面の双方において屈曲させることができる。つまり、入射光40に対して出射光50を、拡散板1の表面の二次元方向(X方向およびY方向)に屈曲させて偏向することが可能となる。
【0169】
また、3次項は、XY平面におけるX方向の3次項、または、Y方向の3次項のいずれか一方を含み、マイクロレンズの表面形状は、対称軸を有する基準表面形状に対してX方向またはY方向のうちのいずれか一方に非対称に歪み、かつ、他方には対称な非球面形状であってもよい。これにより、入射光40の方向に対して出射光50の方向を大きな屈曲角で屈曲させることができる。
【0170】
また、複数のマイクロレンズ21による出射光50の偏向方向は、マイクロレンズアレイ20全体で同一方向であってもよいし、マイクロレンズ21の領域ごとに異なる方向であってもよい。同様に、複数のマイクロレンズ21による出射光50の偏向角βx、βyも、マイクロレンズアレイ20全体で同一の角度であってもよいし、マイクロレンズ21の領域ごとに異なる角度であってもよい。
【0171】
偏向方向および偏向角βx、βyが同一であれば、マイクロレンズアレイ20全体として、出射光50の光束を、同一の偏向方向に、同一の偏向角βx、βyで偏向することができる。一方、マイクロレンズアレイ20の領域ごとに、偏向方向および偏向角βx、βyが異なる場合には、マイクロレンズアレイ20の各領域により、出射光50の光束を、異なる偏向方向および偏向角βx、βyで偏向することができる。このように、マイクロレンズアレイ20の同一の面内に、偏向方向や偏向角βx、βyが相互に異なる複数の領域が含まれており、領域ごとに偏向方向や偏向角βx、βyが変化していれば、1つのマイクロレンズアレイ20により多様な偏向態様で出射光を偏向することができる。これにより、例えば、広範囲の拡散光の光束を効率的に利用したり、光学投影系における主光線の制御により、投影画像の視認性を向上したりすることが可能となる。
【0172】
また、本実施形態に係る傾斜非球面形状を有するマイクロレンズ21を備えた拡散板1は、例えば、当該マイクロレンズ21の凹凸構造を備えた原盤を用いたインプリント加工等により、製造することができる。当該原盤は、レーザ光または制御された光源による高精細な精度の描画露光またはステッパ露光と、エッチングなどのフォトリソグラフィー技術とによって製造することができる。例えば、原盤は、リソグラフィーにより成形された構造面を電鋳により転写して製造することも可能であり、ガラスエッチングによる無機デバイスとして製造することも可能である。あるいは、当該原盤は、精密機械加工技術によって製造することもできる。
【0173】
本実施形態に係る拡散板1の製品は、例えば、ガラスエッチングによる無機デバイスとして提供されてもよい。また、拡散板1は、例えば、原盤から複製される有機インプリントフィルムとして提供されてもよい。このように、拡散板1の製品は、転写フィルム品、または部材面転写品として提供することができる。拡散板1の転写品を製造する際、平板原盤またはロール状原盤を使用して、射出成形、溶融転写、もしくはフォトポリマリゼーション法のUVレジン転写などを利用できる。
【実施例0174】
次に、本発明の実施例に係る拡散板について説明する。なお、以下の実施例は、あくまでも本発明に係る拡散板の効果や実施可能性を示すための一例にすぎず、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0175】
マイクロレンズアレイの表面構造を変更しつつ、以下で説明する設計条件により、実施例1~3に係る拡散板を設計した。
【0176】
各マイクロレンズの表面を、数式(3)で表される非球面形状として、実施例1~3に係るマイクロレンズアレイを設計した。このマイクロレンズアレイに対して、入射光を斜入射させたときの、マイクロレンズアレイによる拡散配光の状態をシミュレーションした。
【0177】
以下に、
図17~
図31を参照して、実施例1~実施例3のシミュレーション結果について説明する。
図17~
図21は、実施例1のシミュレーション結果を示し、
図22~
図26は、実施例2のシミュレーション結果を示し、
図27~
図31は、実施例3のシミュレーション結果を示す。
【0178】
図17、
図22、
図27は、非球面式で表されるレンズ表面形状の具体例を示すグラフである。なお、
図17、
図22、
図27において、グラフの縦軸のZ方向の距離[μm]は、マイクロレンズ21の頂点の高さを基準(高さゼロ)としたときの、マイクロレンズ21の表面の各位置のZ方向の相対高さ[μm]である。また、グラフの横軸の中心からの距離[μm]は、レンズ中心点30(
図11参照。)を基準(XY平面上の原点)としたときの、マイクロレンズ21の表面の各位置のX方向またはY方向の距離[μm]である。
【0179】
図18、
図23、
図28は、拡散板から100mmの距離にあるスクリーンに投影された拡散光の放射輝度分布のシミュレーション結果を示す画像である。
図18、
図23、
図28において、グラフの縦軸は、スクリーンの垂直方向の座標位置[mm]を示し、グラフの横軸は、スクリーンの水平方向の座標位置[mm]を示す。
【0180】
図19、
図24、
図29は、拡散板から100mmの距離にあるスクリーンに投影された拡散光のX方向の放射輝度断面分布のシミュレーション結果を示す画像である。
図19、
図24、
図29において、グラフの縦軸は、放射輝度(角度空間)を示し、グラフの横軸は、スクリーンの水平方向の座標位置[mm]を示す。
【0181】
図20、
図25、
図30は、拡散板から100mmの距離にあるスクリーンに投影された拡散光のY方向の放射輝度断面分布のシミュレーション結果を示す画像である。
図20、
図25、
図30において、グラフの縦軸は、放射輝度(角度空間)を示し、グラフの横軸は、スクリーンの垂直方向の座標位置[mm]を示す。
【0182】
図21、
図26、
図31は、拡散板から100mmの距離にあるスクリーンに投影された拡散光の放射輝度角度分布を示す。
図21、
図26、
図31において、0°は、X方向を示し、90°は、Y方向を示す。
【0183】
<実施例1>
実施例1では、数式(3)において、A3x=0、A4x=0、A3y=0.003、A4y=0.001、Rx=23mm、Ry=23mm、Kx=0.5、Ky=0.5を設定した。つまり、A4y/A3y≒0.33とした。
【0184】
図17に示すように、実施例1では、数式(3)において、Y方向の3次項「A
3yy
3」を含める、つまり、A
3y≠0を設定することにより、基準表面形状に対してY方向に非対称に歪んだ非球面形状となる。一方、数式(3)において、X方向の3次項「A
3xx
3」を含めない、つまり、A
3x=0を設定することにより、基準表面形状に対してX方向に対称な非球面形状となる。
【0185】
また、実施例1では、数式(3)において、Y方向の4次項「A4yy4」を含める、つまり、A4y≠0を設定することにより、Y方向において変曲点IPが形成されてしまう事態を回避することができる。
【0186】
また、実施例1として設計したマイクロレンズアレイに対して、入射光を斜入射させたときの、マイクロレンズアレイによる拡散配光の状態をシミュレーションした。
【0187】
実施例1では、入射光の入射角度をX=0°、Y=30°としてシミュレーションした。つまり、X方向において法線入射となり、Y方向において斜入射となる入射光を用いて、シミュレーションした。
【0188】
図18、
図19に示すように、実施例1の拡散板によって拡散された拡散光の放射輝度は、X方向において、ピークに対して左右対称な分布形状であることが確認された。一方、
図18、
図20に示すように、実施例1の拡散板によって拡散された拡散光の放射輝度は、Y方向において、ピークに対してマイナス方向にシフトした分布形状であることが確認された。つまり、実施例1の拡散板は、拡散光をY方向にのみ屈曲できることが分かった。
【0189】
図21に示すように、実施例1の拡散板によって拡散された拡散光の放射輝度は、X方向において、0°近傍にピークが示され、Y方向において、-1°近傍にピークが示されている。上記のように、実施例1では、入射光の入射角度をX=0°、Y=30°としてシミュレーションした。このため、基材10と外気との屈折率の差によって生じる自然屈曲(スネルの法則)を-6°程度として考慮すると、実施例1の拡散板は、出射光(拡散光)を5°程度屈曲させることができることが確認された。
【0190】
<実施例2>
実施例2では、数式(3)において、A3x=0.0006、A4x=0、A3y=0.0005、A4y=0、Rx=23mm、Ry=23mm、Kx=0.5、Ky=0.5を設定した。つまり、数式(2)において、A3x=0.0006、A3y=0.0005、Rx=23mm、Ry=23mm、Kx=0.5、Ky=0.5を設定した。
【0191】
図22に示すように、実施例2では、数式(3)において、X方向の3次項「A
3xx
3」およびY方向の3次項「A
3yy
3」を含める、つまり、A
3x≠0、A
3y≠0を設定することにより、基準表面形状に対して、X方向およびY方向の双方に非対称に歪んだ非球面形状となる。
【0192】
また、実施例2として設計したマイクロレンズアレイに対して、入射光を斜入射させたときの、マイクロレンズアレイによる拡散配光の状態をシミュレーションした。
【0193】
実施例2では、入射光の入射角度をX=0°、Y=30°としてシミュレーションした。つまり、X方向において法線入射となり、Y方向において斜入射となる入射光を用いて、シミュレーションした。
【0194】
図23、
図24に示すように、実施例2の拡散板によって拡散された拡散光の放射輝度は、X方向において、ピークに対してマイナス方向にシフトした分布形状であることが確認された。また、
図23、
図25に示すように、実施例2の拡散板によって拡散された拡散光の放射輝度は、Y方向において、ピークに対してマイナス方向にシフトした分布形状であることが確認された。つまり、実施例2の拡散板は、拡散光をX方向およびY方向に2次元的に屈曲できることが分かった。
【0195】
図26に示すように、実施例2の拡散板によって拡散された拡散光の放射輝度は、X方向において、-3.4°近傍にピークが示され、Y方向において、-5°近傍にピークが示されている。上記のように、実施例2では、入射光の入射角度をX=0°、Y=30°としてシミュレーションした。このため、自然屈曲を-6°程度として考慮すると、実施例2の拡散板は、出射光(拡散光)を1°程度屈曲させることができることが確認された。
【0196】
<実施例3>
実施例3では、数式(3)において、A3x=0.001、A4x=0.0001、A3y=0.001、A4y=0.0001、Rx=23mm、Ry=23mm、Kx=0.5、Ky=0.5を設定した。つまり、A4y/A3y=0.1とした。
【0197】
図27に示すように、実施例3では、数式(3)において、X方向の3次項「A
3xx
3」およびY方向の3次項「A
3yy
3」を含める、つまり、A
3x≠0、A
3y≠0を設定することにより、基準表面形状に対してX方向およびY方向の双方に非対称に歪んだ非球面形状となる。
【0198】
また、実施例3では、数式(3)において、X方向の4次項「A4xx4」およびY方向の4次項「A4yy4」を含める、つまり、A4x≠0、A4y≠0を設定することにより、X方向およびY方向の双方において変曲点が形成されてしまう事態を回避することができる。
【0199】
また、実施例3として設計したマイクロレンズアレイに対して、入射光を斜入射させたときの、マイクロレンズアレイによる拡散配光の状態をシミュレーションした。
【0200】
実施例3では、入射光の入射角度をX=20°、Y=20°としてシミュレーションした。つまり、X方向においてもY方向においても斜入射となる入射光を用いて、シミュレーションした。
【0201】
図28、
図29に示すように、実施例3の拡散板によって拡散された拡散光の放射輝度は、X方向において、ピークに対してマイナス方向にシフトした分布形状であることが確認された。また、
図28、
図30に示すように、実施例3の拡散板によって拡散された拡散光の放射輝度は、Y方向において、ピークに対してマイナス方向にシフトした分布形状であることが確認された。つまり、実施例3の拡散板は、拡散光をX方向およびY方向の双方に2次元的に屈曲できることが分かった。
【0202】
図31に示すように、実施例3の拡散板によって拡散された拡散光の放射輝度は、X方向において、-3.4°近傍にピークが示され、Y方向において、-5°近傍にピークが示されている。上記のように、実施例3では、入射光の入射角度をX=20°、Y=20°としてシミュレーションした。このため、自然屈曲を、-6°程度として考慮すると、実施例3の拡散板は、出射光(拡散光)を1°程度屈曲させることができることが確認された。
【0203】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。