(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002157
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】水処理施設の更新方法および膜分離装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20230101AFI20241226BHJP
C02F 3/12 20230101ALI20241226BHJP
C02F 1/00 20230101ALI20241226BHJP
【FI】
C02F1/44 A
C02F3/12 S
C02F1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102117
(22)【出願日】2023-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢次 壮一郎
(72)【発明者】
【氏名】永江 信也
【テーマコード(参考)】
4D006
4D028
【Fターム(参考)】
4D006GA02
4D006HA41
4D006HA93
4D006JA31Z
4D006KA31
4D006KA44
4D006KB23
4D006KC14
4D006PA01
4D006PB08
4D028BC17
4D028BD17
4D028BD21
(57)【要約】
【課題】浸漬型の膜ユニットの台数を少なくしても、膜ユニットによる処理効率を良好に保つことができる水処理施設の更新方法を提供する。
【解決手段】第1散気装置23を備えた複数の処理槽7~9を有する水処理施設1の更新方法であって、更新対象以外の少なくとも1つの処理槽8に浸漬型の膜ユニット31を設置し、更新対象以外の処理槽8に供給された被処理液2の一部を膜ユニット31によって固液分離して処理槽8の外部へ排出するとともに、上記被処理液2の残りを第1散気装置23で散気した後に処理槽8の外部へ排出する第1工程と、更新対象の処理槽7の第1散気装置23を停止した状態で、更新対象の処理槽7を更新する第2工程と、更新後に更新対象以外の処理槽8から膜ユニット31を撤去する第3工程とを有し、第1工程において、膜ユニット31の側方周囲を囲い体32で取り囲んで固液分離し、第1工程を実施しながら第2工程を実施する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1散気装置を備えた複数の処理槽を有する水処理施設の更新方法であって、
更新対象以外の少なくとも1つの処理槽に浸漬型の膜ユニットを設置し、更新対象以外の処理槽に供給された被処理液の一部を膜ユニットによって固液分離して処理槽の外部へ排出するとともに、上記被処理液の残りを第1散気装置で散気した後に処理槽の外部へ排出する第1工程と、
更新対象の処理槽の第1散気装置を停止した状態で、更新対象の処理槽を更新する第2工程と、
更新後に更新対象以外の処理槽から膜ユニットを撤去する第3工程とを有し、
第1工程において、膜ユニットの側方周囲を囲い体で取り囲んで固液分離し、
第1工程を実施しながら第2工程を実施することを特徴とする水処理施設の更新方法。
【請求項2】
第1工程において、更新対象以外の処理槽の第1散気装置を用いて散気を行いながら、膜ユニットを用いて被処理液を固液分離することを特徴とする請求項1に記載の水処理施設の更新方法。
【請求項3】
囲い体は、下端が処理槽内の液面下に没し、上端が液面の上方に突出することを特徴とする請求項1に記載の水処理施設の更新方法。
【請求項4】
液面下において囲い体の内側と外側とに連通する連通部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の水処理施設の更新方法。
【請求項5】
囲い体の内側の被処理液を外側に排出する排出装置が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の水処理施設の更新方法。
【請求項6】
排出装置を用いて囲い体の内側の被処理液のMLSS濃度を調節することを特徴とする請求項5に記載の水処理施設の更新方法。
【請求項7】
膜ユニットは、膜エレメントと、膜エレメントに沿って上下方向に旋回する旋回流を発生させる第2散気装置とを有し、
囲い体は、膜ユニットの側方周囲を取り囲む周壁と、周壁の下部に設けられて膜ユニットの下方を覆う底壁とを有し、
底壁は処理槽の第1散気装置よりも上方に位置することを特徴とする請求項1に記載の水処理施設の更新方法。
【請求項8】
更新後の処理槽の第1散気装置を作動させて更新後の処理槽の運転を再開する第4工程を有し、
第1工程を実施しながら第2工程を実施した後、第3工程と第4工程とを同時に或いは時間を前後させて行うことを特徴とする請求項1に記載の水処理施設の更新方法。
【請求項9】
上記請求項1に記載の水処理施設の更新方法で使用される膜ユニットと囲い体とを備えた膜分離装置であって、
膜ユニットと囲い体とが支持フレーム体に設けられ、
支持フレーム体は、処理槽内の液面下に没する水没部と、液面上に露出する露出部とを有し、
支持フレーム体の露出部は処理槽に支持される被支持部を有し、
支持フレーム体に浮力を発生させる浮き体が設けられていることを特徴とする膜分離装置。
【請求項10】
処理槽内の被処理液に浸漬された状態で被処理液を固液分離する膜ユニットと、膜ユニットを支持する支持フレームとを有する膜分離装置であって、
支持フレーム体は、処理槽内の液面下に没する水没部と、液面上に露出する露出部とを有し、
支持フレーム体の露出部は処理槽に支持される被支持部を有し、
支持フレーム体に、浮力を発生させる浮き体と、膜ユニットの側方周囲を取り囲む囲い体とが設けられ、
囲い体は、下端が処理槽内の液面下に没し、上端が液面の上方に突出することを特徴とする膜分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散気装置を備えた複数の処理槽を有する水処理施設を更新する際の更新方法および膜分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の水処理施設の更新方法としては、例えば、
図12に示すように、既設の散気装置121を備えた複数の既設の好気槽122~124のいずれか一つの所定の好気槽122に、浮上式の浸漬型膜分離装置126を複数台投入して、所定の好気槽122を、浮上式の浸漬型膜分離装置126を使用した好気槽として運転する第1工程と、浮上式の浸漬型膜分離装置126が投入されていない他の好気槽123,124に貯留される被処理液127を好気槽123,124の外部に排出し、空になった他の好気槽123,124を更新した後、他の好気槽123,124に被処理液127を供給して、他の好気槽123,124を運転する第2工程と、第1工程において浮上式の浸漬型膜分離装置126を投入した所定の好気槽122から浮上式の浸漬型膜分離装置126を撤去する第3工程と、を有するものがある。
【0003】
尚、浮上式の浸漬型膜分離装置126は、浮上手段を備えて被処理液127中に浮かんだ状態で、膜ユニットによって被処理液127を固液分離する。
【0004】
上記のような水処理施設の更新方法は例えば下記特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記の従来形式では、
図12に示すように、所定の好気槽122に供給される被処理液127の全量を浸漬型膜分離装置126で膜分離処理して好気槽122の外部へ排出するため、浸漬型膜分離装置126の台数が増加した。これに伴って膜ユニットの台数も増加するため、イニシャルコストやランニングコストが増加するといった問題がある。また、膜分離処理に要する動力も増加するため、電源の確保も難しくなる。
【0007】
尚、上記特許文献1に記載されているように、改造後、最終的に膜分離装置を本設備として継続的に使用する場合は、膜ユニットの台数の増加は最終形態に到達するために必要な投資であるため、特に問題にはならないが、更新後の処理方式として、膜分離活性汚泥処理(MBR)以外の処理方式を採用する場合、使用する膜ユニットの台数を極力少なくすることが望ましい。
【0008】
本発明は、浸漬型の膜ユニットの台数を少なくしても、膜ユニットによる処理効率を良好に保つことができる水処理施設の更新方法および膜分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本第1発明は、第1散気装置を備えた複数の処理槽を有する水処理施設の更新方法であって、
更新対象以外の少なくとも1つの処理槽に浸漬型の膜ユニットを設置し、更新対象以外の処理槽に供給された被処理液の一部を膜ユニットによって固液分離して処理槽の外部へ排出するとともに、上記被処理液の残りを第1散気装置で散気した後に処理槽の外部へ排出する第1工程と、
更新対象の処理槽の第1散気装置を停止した状態で、更新対象の処理槽を更新する第2工程と、
更新後に更新対象以外の処理槽から膜ユニットを撤去する第3工程とを有し、
第1工程において、膜ユニットの側方周囲を囲い体で取り囲んで固液分離し、
第1工程を実施しながら第2工程を実施するものである。
【0010】
これによると、第1工程において、更新対象以外の処理槽に供給される被処理液の一部を膜ユニットによって固液分離して処理槽の外部へ排出するとともに、上記被処理液の残りを第1散気装置で散気した後に処理槽の外部へ排出する。このため、更新対象以外の処理槽に供給される被処理液の全量を膜ユニットによって固液分離して処理槽の外部へ排出する場合に比べて、膜ユニットの台数を少なくすることができる。
【0011】
また、第1工程において、膜ユニットの側方周囲を囲い体で取り囲んで固液分離するため、囲い体の内側の被処理液が濃縮され、囲い体の内側の被処理液中の浮遊物質の濃度が囲い体の外側の被処理液中の浮遊物質の濃度よりも高くなる。これにより、囲い体の内側の被処理液中の浮遊物質の濃度を膜分離処理に適した濃度に高めることができ、膜ユニットによる処理効率を良好に保つことができる。
【0012】
本第2発明における水処理施設の更新方法は、第1工程において、更新対象以外の処理槽の第1散気装置を用いて散気を行いながら、膜ユニットを用いて被処理液を固液分離するものである。
【0013】
これによると、第2工程において更新対象の処理槽を更新している際、水処理施設の処理能力が一時的に低下するのを防止することができる。
【0014】
本第3発明における水処理施設の更新方法は、囲い体は、下端が処理槽内の液面下に没し、上端が液面の上方に突出するものである。
【0015】
本第4発明における水処理施設の更新方法は、液面下において囲い体の内側と外側とに連通する連通部が設けられているものである。
【0016】
本第5発明における水処理施設の更新方法は、囲い体の内側の被処理液を外側に排出する排出装置が設けられているものである。
【0017】
これによると、排出装置で囲い体の内側の被処理液を外側に排出することにより、囲い体の外側の被処理液が連通部を通って囲い体の内側に流入する。このため、囲い体の内側の被処理液中の浮遊物質の濃度を膜分離処理に適した濃度に調節することができる。
【0018】
本第6発明における水処理施設の更新方法は、排出装置を用いて囲い体の内側の被処理液のMLSS濃度を調節するものである。
【0019】
これによると、囲い体の内側の被処理液のMLSS濃度を膜分離活性汚泥処理に適した濃度に保つことができる。
【0020】
本第7発明における水処理施設の更新方法は、膜ユニットは、膜エレメントと、膜エレメントに沿って上下方向に旋回する旋回流を発生させる第2散気装置とを有し、
囲い体は、膜ユニットの側方周囲を取り囲む周壁と、周壁の下部に設けられて膜ユニットの下方を覆う底壁とを有し、
底壁は処理槽の第1散気装置よりも上方に位置するものである。
【0021】
これによると、第2散気装置を作動させて散気を行うことにより、囲い体の内側において、膜エレメントに沿って旋回流が発生し、膜エレメントの表面が洗浄される。
【0022】
この際、膜ユニットの下方は囲い体の底壁で覆われているため、処理槽の第1散気装置を作動させて散気を行ったとき、第1散気装置から放出された気泡が下方から囲い体の内側へ大量に侵入するのを抑制することができる。
【0023】
これにより、第1散気装置から放出された気泡が囲い体の内側へ大量に侵入して旋回流の円滑な流れが妨害されるといった不具合を防止することができ、膜エレメントの洗浄効率を良好に保つことができる。
【0024】
本第8発明における水処理施設の更新方法は、更新後の処理槽の第1散気装置を作動させて更新後の処理槽の運転を再開する第4工程を有し、
第1工程を実施しながら第2工程を実施した後、第3工程と第4工程とを同時に或いは時間を前後させて行うものである。
【0025】
本第9発明は、上記第1発明に記載の水処理施設の更新方法で使用される膜ユニットと囲い体とを備えた膜分離装置であって、
膜ユニットと囲い体とが支持フレーム体に設けられ、
支持フレーム体は、処理槽内の液面下に没する水没部と、液面上に露出する露出部とを有し、
支持フレーム体の露出部は処理槽に支持される被支持部を有し、
支持フレーム体に浮力を発生させる浮き体が設けられているものである。
【0026】
これによると、第1工程において、膜ユニットを処理槽に設置した際、膜分離装置の支持フレーム体の被支持部が処理槽に支持される。この状態で、支持フレーム体に設けられた浮き体によって浮力が発生するため、支持フレーム体の被支持部を介して処理槽に作用する膜分離装置の荷重(自重)が浮力の分だけ軽減される。これにより、処理槽の補強工事を不要にしたり、或いは、補強工事を大幅に縮小することができる。
【0027】
本第10発明は、処理槽内の被処理液に浸漬された状態で被処理液を固液分離する膜ユニットと、膜ユニットを支持する支持フレームとを有する膜分離装置であって、
支持フレーム体は、処理槽内の液面下に没する水没部と、液面上に露出する露出部とを有し、
支持フレーム体の露出部は処理槽に支持される被支持部を有し、
支持フレーム体に、浮力を発生させる浮き体と、膜ユニットの側方周囲を取り囲む囲い体とが設けられ、
囲い体は、下端が処理槽内の液面下に没し、上端が液面の上方に突出するものである。
【発明の効果】
【0028】
以上のように本発明によると、第1工程において、膜ユニットの台数を少なくすることができる。さらに、囲い体の内側の被処理液中の浮遊物質の濃度を膜分離処理に適した濃度に高めることができ、膜ユニットによる処理効率を良好に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の第1の実施の形態における水処理施設の平面図である。
【
図3】同、水処理施設を更新する際に使用される膜分離装置の図である。
【
図4】同、水処理施設の更新方法を説明するための平面図である。
【
図6】同、水処理施設の更新を行う際に、膜分離装置の囲い体の内側に発生させる旋回流を示す図である。
【
図7】本発明の第2の実施の形態における水処理施設を更新する際に使用される膜分離装置の図である。
【
図8】本発明の第3の実施の形態における水処理施設を更新する際に使用される膜分離装置の図である。
【
図9】本発明の第4の実施の形態における水処理施設を更新する際に使用される膜分離装置の図である。
【
図10】本発明の第5の実施の形態における水処理施設を更新する際に使用される膜分離装置の平面図である。
【
図11】本発明の第6の実施の形態における水処理施設を更新する際に使用される膜分離装置の図である。
【
図12】従来の水処理施設の更新方法を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0031】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態では、
図1,
図2に示すように、1は例えば下水又は産業排水等の被処理水2(原水)を標準活性汚泥法により生物処理する既設の水処理施設である。
【0032】
水処理施設1は、並列に並んだ複数(例えば
図1では3つ)の既設の好気槽7~9(処理槽の一例)と、好気槽7~9の上流に設けられた最初沈殿池10と、好気槽7~9の下流に設けられた最終沈殿池11と、最終沈殿池11の下流に設けられた消毒槽12とを有している。
【0033】
被処理水2は最初沈殿池10から供給経路14を流れて好気槽7~9に供給される。好気槽7~9内で好気処理された被処理水2は、処理水3として、排出経路15に排出されて最終沈殿池11に送られる。最終沈殿池11から排出された処理水3は、消毒槽12に送られて消毒された後、消毒槽12から河川又は海洋等に放出される。
【0034】
水処理施設1には、最終沈殿池11内に沈殿した汚泥を好気槽7~9に返送する返送経路16が設けられている。
【0035】
好気槽7~9は、左右一対の側壁20と、底壁22とを有している。好気槽7~9内の底部にはそれぞれ、既設の第1散気装置23が複数設置されている。
【0036】
通常運転時においては、被処理水2が最初沈殿池10から各好気槽7~9に供給され、各好気槽7~9の第1散気装置23によって散気され、その後、処理水3として各好気槽7~9から最終沈殿池11に送られる。
【0037】
水処理施設1を更新する際、
図3に示すように、浸漬型の膜分離装置30が使用される。膜分離装置30は、被処理水2を固液分離する複数組の膜ユニット31と、これら膜ユニット31の側方周囲を取り囲む囲い体32と、支持フレーム体33とを有している。
【0038】
膜ユニット31は、支持フレーム体33に設けられており、ケース35内に収納された複数の膜エレメント36と、膜エレメント36に沿って上下方向に旋回する旋回流37(
図6参照)を発生させる第2散気装置38と、膜エレメント36の上方に設けられた集水管39とを有している。
【0039】
膜エレメント36は濾板に濾過膜を装着したものである。濾過膜を透過した被処理水2は濾過水40として集水管39内に集められる。第2散気装置38は膜エレメント36の下方に設けられている。
【0040】
囲い体32は、支持フレーム体33に設けられており、平面視において四角筒状に形成された周壁41によって形成されており、下端部が好気槽7~9内の水面4下に没し、上端部が水面4の上方に突出する。囲い体32の上端部と下端部とはそれぞれ開口しており、これにより、囲い体32の下端には、水面4下において囲い体32の内側と外側とに連通する連通口34(連通部の一例)が設けられている。
【0041】
支持フレーム体33は、好気槽7~9に懸垂されて固定可能であり、上部横フレーム43と、上部横フレーム43から垂下された左右一対の縦フレーム44と、両縦フレーム44の下端部間に設けられた下部横フレーム45とを有している。
【0042】
また、支持フレーム体33は、好気槽7~9内の水面4下に没する水没部47と、水面4上に露出する露出部48とを有している。上部横フレーム43は、露出部48に含まれており、その両端部には、好気槽7~9の側壁20の上端部に支持される被支持部43aを有している。
【0043】
上部横フレーム43には、濾過水40を消毒槽12の下流側に送る濾過水排出管50と、第2散気装置38に空気を供給する送気管51とが支持されている。濾過水排出管50は第1接続管52を介して集水管39に接続されている。送気管51は第2接続管53を介して第2散気装置38に接続されている。
【0044】
囲い体32は上部横フレーム43に取り付けられている。下部横フレーム45には、支持フレーム体33に浮力を発生させる浮き体55(フロート)が設けられている。下部横フレーム45と浮き体55とは水没部47に含まれている。
【0045】
囲い体32の下端と好気槽7~9の底壁22との間には、被処理水2が流れる下部スペース58が形成される。また、囲い体32の外周面と好気槽7~9の側壁20との間には、被処理水2が流れる側部スペース59が形成される。
【0046】
以下に、膜分離装置30を用いて水処理施設1を更新する更新方法について説明する。
【0047】
例えば好気槽7を更新対象の処理槽とし、それ以外の好気槽8,9を更新対象以外の処理槽とする。
【0048】
更新方法は以下のような第1~第4工程を有する。
【0049】
図4,
図5に示すように、第1工程において、更新対象以外の好気槽8,9のうちのいずれかの好気槽8(又は好気槽9でもよい)に、膜ユニット31を有する膜分離装置30を設置する。そして、更新対象以外の好気槽8,9の第1散気装置23から気泡60を放出して散気を行いながら、好気槽8の膜ユニット31によって被処理水2を固液分離する。これにより、処理槽8に供給された被処理水2の一部が膜ユニット31によって固液分離されて処理槽8の外部へ排出されるとともに、処理槽8に供給された被処理水2の残りが第1散気装置23で散気された後に処理水3として処理槽8から最終沈殿池11に排出され、且つ、好気槽9に供給された被処理水2の全量が第1散気装置23で散気された後に処理水3として処理槽9から最終沈殿池11に排出される。
【0050】
この際、
図3,
図5に示すように、膜エレメント36の濾過膜を透過した被処理水2は濾過水40として集水管39内に集められ、集水管39から第1接続管52と濾過水排出管50を通って消毒槽12の下流側に送られ、河川又は海洋等に放出される。
【0051】
また、膜分離装置30の第2散気装置38から気泡61を放出して散気を行うことにより、
図6に示すように、膜エレメント36に沿って旋回流37が発生し、旋回流37によって膜エレメント36の濾過膜が洗浄される。
【0052】
第2工程において、最初沈殿池10から更新対象の処理槽7への被処理水2の供給を停止するとともに、更新対象の処理槽7の第1散気装置23を停止した状態で、処理槽7内の被処理水2を外部に排出して、処理槽7を空にし、処理槽7を更新する。更新の内容としては、例えば、処理槽7の第1散気装置23を新しいものと取り換えたり、或いは、処理槽7に第1散気装置23を増設したり、処理槽7に付帯する機械、電気設備や処理槽7の側壁20又は底壁22の保守点検、修理等を行う。
【0053】
第3工程において、第1工程で好気槽8に設置した膜分離装置30を撤去する。
【0054】
第4工程において、被処理水2を最初沈殿池10から更新後の好気槽7内に供給し、更新前と同様に、
図1に示すように好気槽7の第1散気装置23を作動させて好気槽7内の被処理水2を散気し、更新後の好気槽7の運転を再開する。
【0055】
更新方法では、第1工程を実施しながら第2工程を実施し、第2工程が終了した後(すなわち処理槽7を更新した後)、第3工程と第4工程とを同時に実施する。
【0056】
上記実施の形態では、第1工程を実施しながら第2工程を実施し、第2工程が終了した後、第3工程と第4工程とを同時に実施しているが、第3工程と第4工程とを、時間を前後させて行ってもよい。すなわち、第3工程を先に実施した後、第4工程を実施してもよく、或いは、第4工程を先に実施した後、第3工程を実施してもよい。
【0057】
上記実施の形態では、好気槽7を更新対象の処理槽とし、好気槽8,9を更新対象以外の処理槽としたが、好気槽8を更新対象の処理槽とし、好気槽7,9を更新対象以外の処理槽とする場合、又は、好気槽9を更新対象の処理槽とし、好気槽7,8を更新対象以外の処理槽とする場合も同様に、上記第1工程~第4工程を行えばよい。これにより、複数の好気槽7~9を順次更新することができる。
【0058】
上記のような更新方法によると、第1工程において、
図4,
図5に示すように、更新対象以外の処理槽8,9のうちの処理槽8に供給される被処理液2の一部を膜ユニット31によって固液分離して濾過水40として消毒槽12の下流側(処理槽8の外部の一例)へ排出するとともに、処理槽8に供給される被処理液2の残りを第1散気装置23で散気した後に処理水3として最終沈殿池11(処理槽8の外部の一例)に排出する。このため、更新対象以外の処理槽8に供給される被処理液2の全量を膜ユニット31によって固液分離して濾過水40として消毒槽12の下流側へ排出する場合に比べて、膜ユニット31の台数を少なくすることができる。
【0059】
また、第1工程において、膜ユニット31の側方周囲を囲い体32で取り囲んで固液分離するため、囲い体32の内側の被処理液2が濃縮され、囲い体32の内側の被処理液2の汚泥濃度が囲い体32の外側の被処理液2の汚泥濃度よりも高くなる。これにより、囲い体32の内側の被処理液2の汚泥濃度を膜分離活性汚泥処理に適した所定の濃度に高めることができ、膜ユニット31の個数を少なくしても、膜ユニット31による処理効率を良好に保つことができる。また、膜ユニット31の設計フラックスを高くすることができる。
【0060】
尚、一例として、囲い体32の外側のMLSSは約2000mg/Lに保たれ、囲い体32の内側のMLSSは約10000mg/Lに保たれるが、これらの数値に限定されるものではない。
【0061】
また、第1工程において、更新対象以外の好気槽8,9の第1散気装置23によって散気を行いながら、好気槽8の膜ユニット31によって被処理水2を固液分離するため、第2工程において更新対象の処理槽7を空にして更新している際、水処理施設1の処理能力が一時的に低下するのを防止することができる。また、更新対象以外の好気槽8,9から最終沈殿池11に流入する処理水3のMLSS濃度は、従来と同等の濃度に維持されるため、最終沈殿池11における水面積負荷の変更が不要になり、最終沈殿池11による固液分離処理も並行して実施することが可能となる。
【0062】
また、第1工程において、
図4,
図5に示すように膜ユニット31を好気槽8に設置した際、
図3に示すように、膜分離装置30の支持フレーム体33の被支持部43aが好気槽8の側壁20に支持される。この状態で、浮き体55によって支持フレーム体33に浮力が発生するため、支持フレーム体33の被支持部43aを介して処理槽8の側壁20に作用する膜分離装置30の荷重(自重)が浮力の分だけ軽減される。これにより、処理槽8の側壁20の補強工事を不要にしたり、或いは、補強工事を大幅に縮小することができる。
【0063】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態では、
図7に示すように、膜分離装置30は、囲い体32の内側の被処理液2を外側に排出するエアリフト装置65(排出装置の一例)と、囲い体32の内側のMLSSを計測するMLSS濃度計66とを有している。
【0064】
エアリフト装置65は、囲い体32の内側下部に設けられた第3散気装置67と、囲い体32の内側で且つ第3散気装置67の上方に設けられた排出管68とを有している。排出管68は、上下が逆のL形状の管であり、下端に流入口69を有するとともに、上端に流出口70を有している。流入口69は水面4下に没した状態で囲い体32の内側に開口し、流出口70は水面4と同じ高さで囲い体32の外側に開口する。
【0065】
以下、上記構成における作用を説明する。
【0066】
MLSS濃度計66によって囲い体32の内側のMLSS濃度を計測し、計測値が最適な濃度(例えば10000mg/L)よりも高い場合、第3散気装置67を作動して、第3散気装置67から気泡62を放出する。これにより、第3散気装置67の上方に被処理液2の上向流が発生し、囲い体32の内側の被処理液2が気泡62と共に(気泡62に連行されて)流入口69から排出管68内を流れて流出口70から囲い体32の外側に排出される。
【0067】
これにより、囲い体32の外側の被処理液2が囲い体32の下端の連通口34を通って囲い体32の内側に流入するため、囲い体32の内側のMLSS濃度が次第に低下し、計測値が最適な濃度になったときに、第3散気装置67を停止する。これにより、囲い体32の内側の被処理液2が排出管68から囲い体32の外側に排出されることはなく、囲い体32の内側のMLSS濃度を膜分離活性汚泥処理に適した所定の濃度に調節することができる。
【0068】
上記第2の実施の形態では、排出装置の一例として、エアリフト装置65を用いているが、エアリフト装置65に限定されるものではなく、水中ポンプ等を用いて囲い体32の内側の被処理液2を外側に排出してもよい。
【0069】
上記第2の実施の形態では、最適なMLSS濃度(例えば10000mg/L等)を基準にしているが、最適なMLSS濃度範囲(例えば9000~11000mg/L等)を基準にしてもよい。
【0070】
上記第2の実施の形態では、囲い体32の内側にMLSS濃度計66を設けているが、囲い体32の内側にDO計(溶存酸素計)を設けてもよい。囲い体32の内側の被処理水2の溶存酸素濃度(DO)が低くなると、硝化不良が発生し、膜ユニット31の膜濾過性能が低下し、膜エレメント36が膜間閉塞したり処理水質が悪化することがある。
【0071】
このため、DO計によって囲い体32の溶存酸素濃度を計測し、計測値が最適な濃度よりも低い場合、第3散気装置67を作動して、第3散気装置67から気泡62を放出する。これにより、第3散気装置67の上方に被処理液2の上向流が発生し、囲い体32の内側の被処理液2が気泡62と共に流入口69から排出管68内を流れて流出口70から囲い体32の外側に排出される。
【0072】
これにより、囲い体32の外側の被処理液2が囲い体32の下端の連通口34を通って囲い体32の内側に流入するため、囲い体32の内側の溶存酸素濃度が次第に上昇し、計測値が最適な溶存酸素濃度になったときに、第3散気装置67を停止する。これにより、囲い体32の内側の被処理液2が排出管68から囲い体32の外側に排出されることはなく、囲い体32の内側の溶存酸素濃度を膜分離活性汚泥処理に適した所定の濃度に調節することができる。
【0073】
尚、最適な溶存酸素濃度を基準にしているが、最適な溶存酸素濃度範囲を基準にしてもよい。
【0074】
また、MLSS濃度計66とDO計との両者を囲い体32の内側に設けてもよい。
【0075】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態では、
図8に示すように、囲い体32は、周壁41と、周壁41の下端部に設けられて膜ユニット31の下方を覆う底壁75とを有する。底壁75は好気槽7~9の第1散気装置23よりも上方に位置する。
【0076】
底壁75には、水面4下において囲い体32の内側と外側とに連通する連通口34(連通部の一例)が設けられている。底壁75は周壁41の下端から連通口34に向かって下方に傾斜している。連通口34は、水平面内において、囲い体32の内側と外側とに開口している。
【0077】
以下、上記構成における作用を説明する。
【0078】
第1工程において、更新対象以外の好気槽8,9の第1散気装置23から気泡60を放出して散気を行っている際、好気槽8の膜分離装置30の第2散気装置38から気泡61を放出して散気を行うことにより、膜エレメント36に沿って旋回流37が発生し、旋回流37によって膜エレメント36の濾過膜が洗浄される。
【0079】
このとき、膜ユニット31の下方は囲い体32の底壁75で覆われているため、第1散気装置23から放出された気泡60が下方から囲い体32の内側へ大量に侵入するのを抑制することができる。
【0080】
これにより、第1散気装置23から放出された気泡60が囲い体32の内側へ大量に侵入して旋回流37の円滑な流れが妨害されるといった不具合を防止することができ、膜エレメント36の洗浄効率を良好に保つことができる。
【0081】
尚、第1散気装置23から放出された気泡60の一部が連通口34を通って囲い体32の内側へ侵入する可能性はあるが、このようにして囲い体32の内側へ侵入する気泡60は非常に少量であるため、旋回流37の円滑な流れを妨害するまでには至らない。
【0082】
また、底壁75は周壁41の下端から連通口34に向かって下方に傾斜しているため、第1散気装置23から放出された気泡60は底壁75の傾斜に沿って上昇しながら周壁41の外側へ案内される。これにより、第1散気装置23から放出された気泡60は、滞留することなく、円滑に囲い体32の外側へ流れる。
【0083】
上記第3の実施の形態では、連通口34を囲い体32の底壁75に設けているが、周壁41の下部に設けてもよい。
【0084】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態では、
図9に示すように、連通口34は、鉛直面内において、囲い体32の内側と外側とに開口している。
【0085】
これによると、第1散気装置23から放出された気泡60の一部が連通口34を通って囲い体32の内側へ侵入する可能性を大幅に低減することができる。
【0086】
(第5の実施の形態)
先述した第1の実施の形態では、
図4に示すように、囲い体32の周壁41を平面視において四角形状に形成しているが、この形状に限定されるものではなく、例えば、第5の実施の形態として、
図10に示すように、周壁41を平面視において舟型状に形成してもよい。
【0087】
すなわち、周壁41は、その幅Wが被処理液2の上流側と下流側ほど次第に狭くなるように形成されている。
【0088】
これによると、OD法(オキシデーションディッチ法)を採用している水処理施設1では、好気槽7~9内の被処理水2の流速が速い。これに対して、上記のように囲い体32の周壁41を舟型状に形成することで、被処理水2の流れの抵抗が減り、膜分離装置30の支持フレーム体33に作用する外力が軽減される。
【0089】
(第6の実施の形態)
先述した第1の実施の形態では、
図3に示すように、膜分離装置30の浮き体55を、膜ユニット31の下方に設けて、水面4下に完全に没した状態にしているが、以下に説明する第6の実施の形態では、
図11に示すように、浮き体55を、膜ユニット31の上方に設けて、水面4に浮いた状態にしてもよい。
【0090】
浮き体55は、内部に空気を貯留する貯留部78を有するとともに、下面に開口部79を有しており、第2散気装置38から放出される気泡61を、開口部79を通じて貯留部78に貯留することで、浮力を得る。
【0091】
これによると、先述した第1の実施の形態と同様に、第1工程において、膜ユニット31を例えば好気槽8に設置した際、膜分離装置30の支持フレーム体33の被支持部43aが好気槽8の側壁20に支持される。この状態で、浮き体55によって支持フレーム体33に浮力が発生するため、支持フレーム体33の被支持部43aを介して処理槽8の側壁20に作用する膜分離装置30の荷重(自重)が浮力の分だけ軽減される。これにより、処理槽8の側壁20の補強工事を不要にしたり、或いは、補強工事を大幅に縮小することができる。
【0092】
上記各実施の形態では、
図1に示すように、水処理施設1に3つの好気槽7~9を設けているが、2つ又は4つ以上の複数設けてもよい。
【0093】
上記各実施の形態では、
図4に示すように、第1工程において、更新対象以外の好気槽8,9のうちの好気槽8又は好気槽9に、膜分離装置30を設置しているが、好気槽8と好気槽9との両方にそれぞれ膜分離装置30を設置してもよい。
【0094】
尚、図面は、構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる。また、上記の各実施形態で示す各構成要素の形状、数値等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の構成から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0095】
1 水処理施設
2 被処理水(被処理液)
4 水面(液面)
7~9 好気槽(処理槽)
23 第1散気装置
30 膜分離装置
31 膜ユニット
32 囲い体
33 支持フレーム体
34 連通口(連通部)
36 膜エレメント
37 旋回流
38 第2散気装置
41 周壁
43a 被支持部
47 水没部
48 露出部
55 浮き体
65 エアリフト装置(排出装置)
75 底壁