(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021575
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】シート状基材への塗布装置および塗布方法
(51)【国際特許分類】
B05C 5/02 20060101AFI20250206BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20250206BHJP
B05C 11/00 20060101ALI20250206BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20250206BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20250206BHJP
B05D 3/04 20060101ALI20250206BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
B05C5/02
B05C11/10
B05C11/00
B05D7/00 A
B05D1/26 Z
B05D3/04 Z
B05D3/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125365
(22)【出願日】2023-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西野 聡
(72)【発明者】
【氏名】藤内 俊平
【テーマコード(参考)】
4D075
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4D075AC02
4D075AC80
4D075AC88
4D075AC91
4D075BB24Z
4D075BB33Z
4D075BB57Y
4D075BB91Y
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA04
4D075DB18
4D075DB20
4D075DC18
4D075DC19
4D075DC22
4D075DC38
4D075EA05
4D075EA06
4D075EB19
4F041AA12
4F041AB01
4F041BA05
4F041BA12
4F041CA03
4F041CA16
4F041CA22
4F042AA22
4F042BA06
4F042BA25
4F042DB02
4F042DD34
4F042DF19
4F042DF23
(57)【要約】
【課題】
どのような塗布液や塗布条件であっても、シート状基材に薄い塗布膜を品質よく形成可能な塗布装置および塗布方法を提供する。
【解決手段】
本発明の塗布装置は、連続して搬送されるシート状の基材に塗布膜を形成する塗布装置であって、シート状基材の幅の方向を幅方向として、シート状基材の搬送機構と、幅方向に延びるスリット状の塗布液の吐出口が形成された吐出面を有し、上記吐出面が上記シート状基材に対向するように配置されるダイと、上記シート状基材を介して上記ダイと対向する位置に配置され、上記吐出面の方向にエアを吹き付けるエアノズルであって、当該エアノズルから吹き付けられるエアの上記シート状基材の面での幅方向の吹き付け幅が上記塗布液の吐出口の幅方向の長さの80%以上であるエアノズルと、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続して搬送されるシート状の基材に塗布膜を形成する塗布装置であって、
シート状基材の幅の方向を幅方向として、
シート状基材の搬送機構と、
幅方向に延びるスリット状の塗布液の吐出口が形成された吐出面を有し、前記吐出面が前記シート状基材に対向するように配置されるダイと、
前記シート状基材を介して前記ダイと対向する位置に配置され、前記吐出面の方向にエアを吹き付けるエアノズルであって、当該エアノズルから吹き付けられるエアの前記シート状基材の面での幅方向の吹き付け幅が前記塗布液の吐出口の幅方向の長さの80%以上であるエアノズルと、
を有する、シート状基材への塗布装置。
【請求項2】
前記エアの吹き付け幅が前記塗布液の吐出口の幅方向の長さの90%以上110%以下である、請求項1のシート状基材への塗布装置。
【請求項3】
前記エアノズルが幅方向に延びるスリット状のエアの吐出口を有する、請求項1のシート状基材への塗布装置。
【請求項4】
前記ダイが、前記エアノズルから前記シート状基材へのエアの吹き付けを停止した状態において、前記吐出面と前記シート状基材が接触しない位置に設置されている、請求項1のシート状基材への塗布装置。
【請求項5】
前記ダイに塗布液を供給する供給機構および制御部を有し、
前記制御部は、
前記エアノズルからのエアの吹き付けと前記供給機構からの塗布液の供給を制御するものであり、
前記供給機構からの塗布液の供給と停止を繰り返しつつ、塗布液の供給を停止している間の少なくとも一部で前記エアノズルからのエアの吹き付けを停止するように制御する、
請求項1のシート状基材への塗布装置。
【請求項6】
連続して搬送されるシート状の基材に塗布膜を形成する塗布方法であって、
シート状基材の幅の方向を幅方向として、
幅方向に延びるスリット状の塗布液の吐出口が形成された吐出面を有するダイを、前記塗布液の吐出口がシート状基材に対向するように配置し、
前記塗布液の吐出口から搬送されている前記シート状基材に塗布液を吐出しながら、
前記シート状基材の前記ダイが配置されている側とは反対側から、前記ダイの吐出面の方向に、前記シート状基材の面での幅方向の吹き付け幅が前記塗布液の吐出口の幅方向の長さの80%以上となるように、前記シート状基材へエアを吹き付ける、
シート状基材への塗布方法。
【請求項7】
前記エアの吹き付け幅が前記塗布液の吐出口の幅方向の長さの90%以上110%以下である、請求項6のシート状基材への塗布方法。
【請求項8】
エアが前記シート状基材にスリット状に吹き付けられる、請求項6のシート状基材への塗布方法。
【請求項9】
エアが前記シート状基材に吹き付けられていない状態において、前記ダイの吐出面が前記シート状基材と接触しない、請求項6のシート状基材への塗布方法。
【請求項10】
前記シート状基材に間欠的に塗布膜を形成する塗布方法であって、
前記塗布液の吐出口からの塗布液の吐出と停止を繰り返しつつ、塗布液の吐出を停止している間の少なくとも一部でエアの吹き付けを停止させる、
請求項6のシート状基材への塗布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシート状基材に塗布膜を形成する塗布装置および塗布方法に関し、特に塗布膜が薄膜であっても品質よく形成可能な塗布装置および塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムや金属箔、紙、織物、不織布などのシート状基材に機能性塗布膜を形成する塗布技術は、機能性フィルム、紙製品、布製品、膜製品、電池、電化製品部材、半導体部材などさまざまな分野に用いられている。特に塗布膜の膜厚均一性が要求される用途には、スリット状の吐出口を有する塗布用ダイが好適に用いられる。ダイを用いた塗布装置には種々のものがあるが、塗布膜が薄膜の場合には特許文献1や特許文献2のように、シート状基材にダイの吐出面を押し当てながら塗布液を吐出するエクストルージョン塗布装置が開示されている。エクストルージョン塗布装置では、ダイから吐出される塗布液の圧力とシート状基材の搬送張力の釣り合いにより、シート状基材の厚みムラや搬送ローラの偏心の影響を受けることなく、ダイの吐出面とシート状基材の間に一定の厚みの液溜りが維持され、薄い塗布膜を安定して形成することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-36761号公報
【特許文献2】特許第2754038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に開示されている方法では、シート状基材の搬送張力に対しダイから吐出される塗布液の圧力が極端に小さい場合、具体的には塗布液の粘度が低い、塗布膜の厚みが極端に薄い、シート状基材の搬送速度が遅いなどの場合に、シート状基材の搬送張力によってダイの吐出面とシート状基材の間の液溜りの一部が潰れ、塗布膜にスジやかすれ、膜厚ムラなどの塗布欠陥を生じる問題がある。シート状基材の搬送張力はシート状基材のシワ、蛇行、巻き崩れを防止する観点から容易には下げられず、上記の塗布欠陥を生じた場合には塗布液の粘度や塗布条件の変更を余儀なくされる。
【0005】
そこで本発明は、どのような塗布液や塗布条件であっても、シート状基材に薄い塗布膜を品質よく形成可能な塗布装置および塗布方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1] 上記課題を解決する本発明のシート状基材への塗布装置は、連続して搬送されるシート状の基材に塗布膜を形成する塗布装置であって、
シート状基材の幅の方向を幅方向として、
シート状基材の搬送機構と、
幅方向に延びるスリット状の塗布液の吐出口が形成された吐出面を有し、上記吐出面が上記シート状基材に対向するように配置されるダイと、
上記シート状基材を介して上記ダイと対向する位置に配置され、上記吐出面の方向にエアを吹き付けるエアノズルであって、当該エアノズルから吹き付けられるエアの上記シート状基材の面での幅方向の吹き付け幅が上記塗布液の吐出口の幅方向の長さの80%以上であるエアノズルと、を有する。
【0007】
また、本発明のシート状基材への塗布装置は、以下の[2]~[5]のいずれかの態様であることが好ましい。
[2] 上記エアの吹き付け幅が上記塗布液の吐出口の幅方向の長さの90%以上110%以下である、上記[1]のシート状基材への塗布装置。
[3] 上記エアノズルが幅方向に延びるスリット状のエアの吐出口を有する、上記[1]または[2]のシート状基材への塗布装置。
[4] 上記ダイが、上記エアノズルから上記シート状基材へのエアの吹き付けを停止した状態において、上記吐出面と上記シート状基材が接触しない位置に設置されている、上記[1]~[3]のいずれかのシート状基材への塗布装置。
[5] 上記ダイに塗布液を供給する供給機構および制御部を有し、上記制御部は、上記エアノズルからのエアの吹き付けと上記供給機構からの塗布液の供給を制御するものであり、上記供給機構からの塗布液の供給と停止を繰り返しつつ、塗布液の供給を停止している間の少なくとも一部で前記エアノズルからのエアの吹き付けを停止するように制御する、上記[1]~[4]のいずれかのシート状基材への塗布装置。
【0008】
[6] 上記課題を解決する本発明のシート状基材への塗布方法は、連続して搬送されるシート状の基材に塗布膜を形成する塗布方法であって、
シート状基材の幅の方向を幅方向として、
幅方向に延びるスリット状の塗布液の吐出口が形成された吐出面を有するダイを、上記塗布液の吐出口がシート状基材に対向するように配置し、
上記塗布液の吐出口から搬送されている上記シート状基材に塗布液を吐出しながら、
上記シート状基材の上記ダイが配置されている側とは反対側から、上記ダイの吐出面の方向に、上記シート状基材の面での幅方向の吹き付け幅が上記塗布液の吐出口の幅方向の長さの80%以上となるように、上記シート状基材へエアを吹き付ける。
【0009】
また、本発明のシート状基材への塗布方法は、以下の[7]~[10]のいずれかを行うことが好ましい。
[7] 上記エアの吹き付け幅が上記塗布液の吐出口の幅方向の長さの90%以上110%以下である、上記[6]のシート状基材への塗布方法。
[8] エアが上記シート状基材にスリット状に吹き付けられる、上記[6]または[7]のシート状基材への塗布方法。
[9] エアが上記シート状基材に吹き付けられていない状態において、上記ダイの吐出面が上記シート状基材と接触しない、上記[6]~[8]のシート状基材への塗布方法。
[10] 上記シート状基材に間欠的に塗布膜を形成する塗布方法であって、上記塗布液の吐出口からの塗布液の吐出と停止を繰り返しつつ、塗布液の吐出を停止している間の少なくとも一部でエアの吹き付けを停止させる、上記[6]~[9]のいずれかのシート状基材への塗布方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のシート状基材への塗布装置および塗布方法によれば、ダイから吐出される塗布液の圧力とエアノズルから吐出されるエアの吹き付け圧力が釣り合うことで、ダイの吐出面とシート状基材の間に一定の厚みの液溜りを形成する。どのような塗布液や塗布条件であっても、エアの吹き付け圧力を自由に調整することで、シート状基材の搬送張力の影響を受けずに、シート状基材に薄い塗布膜を品質よく形成可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態のシート状基材への塗布装置100を示す概略断面図である。
【
図2】
図1のダイ20とエアノズル30を拡大した詳細断面図である。
【
図3】
図2のダイ20とエアノズル30をX方向から見た詳細断面図である。
【
図4】
図1のダイ20とエアノズル30を拡大した詳細断面図である。
【
図5】本発明の別の実施形態のシート状基材への塗布装置101を示す概略断面図である。
【
図6】
図5のダイ20とエアノズル30を拡大した詳細断面図である。
【
図7】本発明とは異なる塗布装置を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の望ましい実施形態について、以下で説明する。なお、以下の説明は発明の実施形態を例示するものであり、本発明はこれに限定して解釈されるものではなく、本発明の目的・効果を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0013】
図1は本発明の一実施形態のシート状基材への塗布装置100を示す概略断面図である。シート状基材1は巻出装置10から巻き出され、搬送ローラ11~14を通って巻取装置15に向かって
図1の矢印の方向に搬送されている。シート状基材1の表面にはダイ20によって塗布液が塗布され、必要に応じて後処理装置90で塗布液を固化して塗布膜が形成される。シート状基材1を介してダイ20の対向する位置にはエアノズル30が設置され、ダイ20の吐出面に向かってエアを吹き付けている。ダイ20には塗布液供給装置21が、エアノズル30にはエア供給装置31がそれぞれ接続されている。
【0014】
図2は
図1のダイ20とエアノズル30を拡大した詳細断面図である。ダイ20から吐出された塗布液は、ダイ20の吐出面22とシート状基材1の表面との間に液溜り23を形成し、その後シート状基材1に塗布されて塗布膜2となる。さらにエアノズル30からダイ吐出面22に向かって、
図2の破線の向きにエアが吹き付けられ、シート状基材1の裏面に作用するエア吹き付け圧P3によって、シート状基材1はダイ吐出面22の方向に押し付けられている。このとき、ダイ20から吐出される塗布液の圧力P2と、エア吹き付け圧P3の釣り合いにより、液溜り23の厚み、すなわちダイ吐出面22とシート状基材1の表面の隙間の大きさが決定される。具体的には、エア吹き付け圧P3を強くするとシート状基材1がダイ吐出面22に近づき、液溜り23の厚みが薄くなる。このとき、ダイ20から吐出される塗布液は狭い液溜り23を通過して塗布されるため、塗布液がシート状基材1を押し付ける圧力、すなわちダイ20から吐出される塗布液の圧力P2が高くなり、最終的にエア吹き付け圧P3と釣り合う位置までシート状基材1が移動する。反対にエア吹き付け圧P3を弱くすると、上記と反対のメカニズムで液溜り23の厚みは厚くなる。
【0015】
ダイ20から吐出される塗布液の圧力P2は、塗布液の粘度とダイ20から吐出される塗布液の流量に比例する。よって塗布液の粘度が低いほど、塗布膜2の厚みが薄いほど、またシート状基材1の搬送速度が小さいほど、塗布液の圧力P2が低くなるため、液溜り23の厚みが薄くなって潰れやすくなり、塗布膜2にスジやかすれ、膜厚ムラなどの塗布欠陥を生じやすくなる。しかし本発明の塗布装置100によれば、エア吹き付け圧P3を適切に調整することで、液溜り23の厚みを維持し、上記の塗布欠陥を防止することが可能となる。
【0016】
図3は
図2のダイ20とエアノズル30をX方向から見た詳細断面図である。ダイ20にはシート状基材1の幅方向を長手方向とするスリット状の吐出口24が形成されており、吐出口24からは幅W2の範囲で塗布液が吐出されている。エアノズル30からは
図3の破線の向きにエアが吹き付けられている。このときシート状基材1の裏面(
図3の下面)におけるエアの吹き付け幅W3は、シート状基材1の幅方向にわたって均一な厚みの液溜り23を形成する観点から、塗布液の吐出幅W2の80%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上である。エアの吹き付け幅W3は塗布液の吐出幅W2より広くても良いが、液溜り23の無い領域にエアを吹き付けると、シート状基材1が幅方向にたわんでダイ20と衝突する懸念があることから、エアの吹き付け幅W3は塗布液の吐出幅W2の110%以下であることが好ましい。
【0017】
エアノズル30のエア吐出口の形状は、シート状基材1の裏面に均一なエア吹き付け圧を付与できるものであればよく、シート状基材1の幅方向を長手方向とするスリット形状や、シート状基材1の幅方向に複数の穴が配列された多孔形状を例示することができる。ただし、エアノズル30とシート状基材1の距離が近い場合は、エアノズル30の吐出口を多孔形状とすると塗布膜2に穴ピッチに応じた塗布スジが生じることがある。エアノズル30とシート状基材1の距離が離れていれば、エアノズル30の吐出口が多孔形状であっても、個々の孔から吐出されたエアがシート基材1に到達するまでに広がり穴ピッチの影響は小さくなるが、エアノズル30とシート状基材1の距離が離れているため、シート状基材1の裏面に作用するエア吹き付け圧P3が小さくなってしまい、ダイ20から吐出される塗布液の圧力P2と釣り合いのとれる塗布条件範囲が狭くなってしまう。エアノズル30の吐出口がスリット形状であれば、エアノズル30とシート状基材1の距離が近くても、シート状基材1の幅方向にわたって均一にエアを吹き付けられるので、エアノズル30の吐出口はスリット形状とするのがより好ましい。
【0018】
図4は
図1でエアノズル30からシート状基材1へのエアの吹き付けを停止した状態における、ダイ20とエアノズル30を拡大した詳細断面図である。シート状基材1へのエアの吹き付けを停止した状態においては、シート状基材1の搬送経路は搬送ローラ11と搬送ローラ12の外周を結んだ接線上となる。このとき、ダイ20は
図4のように、吐出面22がシート状基材1と接触しない位置に設置されていることが好ましい。これはダイ20からの塗布液の吐出を停止した際、エアノズル30からのエアの吹き付けも停止させることで、ダイの吐出面22とシート状基材1が離間し、シート状基材1の塗布膜を形成しない領域に擦過傷や塗布液汚れを生じさせないためである。ダイの吐出面22とシート状基材1の距離Cは、ダイの吐出面22の塗布液汚れの状態やシート状基材1の搬送バタツキを考慮して決定すればよいが、概ね5mm以下が好ましく、より好ましくは1mm以下である。
【0019】
図1の後処理装置90は、塗布膜の固化が必要な場合にのみ設置すればよく、ワニス含浸プリプレグなど塗布膜が液体の状態で巻き取られる製品においては設置しなくてもよい。後処理装置90は塗布膜の性質に応じて選定すればよく、熱風乾燥装置や赤外線照射装置、UV照射装置、凝固槽を例示することができる。
【0020】
図5は本発明の別の実施形態のシート状基材への塗布装置101を示す概略断面図である。塗布液供給装置21とエア供給装置31に制御装置40が接続されている以外は、
図1の塗布装置100と同じである。
図6は
図5の塗布装置101を用いて、シート状基材1に間欠的に塗布膜2を形成する際の、ダイ20とエアノズル30を拡大した詳細断面図である。本発明の塗布装置101によれば、シート状基材1に塗布膜2を形成したい領域においては、
図6(A)のようにダイ20からの塗布液の吐出とエアノズル30からのエアの吹き付けが同時に行われるよう、制御装置40で塗布液供給装置21とエア供給装置31を制御し、反対にシート状基材1に塗布膜2を形成しない領域においては、
図6(B)のようにダイ20からの塗布液の吐出とエアノズル30からのエアの吹き付けを停止するよう、制御装置40で塗布液供給装置21とエア供給装置31を制御することで、シート状基材1に間欠的に塗布膜2を形成することが可能となる。特に
図6(B)においては、エアノズル30からのエアの吹き付けを停止することで、シート状基材1がダイの吐出面22から速やかに離間するため、塗布膜2の塗布終端部の液切りを確実に行って外観良好な間欠塗布を行うことが可能となる。なお、ダイ20への塗布液の供給とエアノズル30へのエアの供給は必ずしも同時に開始または停止する必要はなく、塗布膜2の形成状況に応じて時間差を設けて実施してもよい。ただし、上記のとおり塗布膜2の塗布終端部の液切りを確実に行う観点から、ダイ20への塗布液の供給を停止している間の少なくとも一部では、エアノズル30へのエアの供給を停止することが好ましい。
【実施例0021】
本発明の具体的な実施例および本発明とは異なる比較例を以下に示す。ただし本発明は以下に示す実施例に限定して解釈されるものではなく、本発明の目的・効果を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0022】
[実施例1]
図1に示す本発明の塗布装置100を用いて、シート状基材1に塗布膜を形成した。シート状基材としては厚み38μm、幅250mmのPETフィルムを用いた。シート状基材に塗布する塗布液は、粘度200mPa・sに調製したポリビニルアルコール(PVA)水溶液を用いた。ダイ20としては吐出幅100mmのステンレス製のスロットダイを用い、塗布液供給装置21にはシリンジポンプを用いた。エアノズル30としてはエアの吹き付け幅が100mm、吐出口が直径1mm、穴ピッチ3mmの多孔形状である樹脂製エアノズルを用いた。エア供給装置31としてはコンプレッサー、圧力タンク、レギュレータ、グローブバルブ、流量計で構成された装置を用いた。後処理装置90としては温度を100℃に制御した熱風乾燥装置を用いた。
【0023】
シート状基材の搬送速度は5m/分、シート状基材の搬送張力は60N/m、シート状基材に塗布する塗布膜の乾燥前厚みは5μm、エアの吹き付けを行わない状態におけるダイ吐出面とシート状基材の距離Cは1mm、エアノズルとシート状基材の距離は10mm、エアノズルからのエア吐出量は20~100L/分の範囲で調整した。
【0024】
本実施例で形成した塗布膜は幅100mmの一様な厚みの膜であり、スジなどの塗布欠陥が存在せず、塗布膜の外観は良好であった。
【0025】
[比較例1]
本発明とは異なる塗布方法として、
図7(A)に示すように、ダイ20を搬送ローラ11に近接させるスロットダイ塗布方式で塗布膜の形成を実施した。ダイ20の設置場所が異なる点、およびエアノズル30を用いていない点以外は、実施例1と同じ構成、塗布条件とした。ダイの吐出面22とシート状基材1の表面の距離は50μmとした。
本実施例で形成した塗布膜は断続的なスジ状となり、一様な厚みの塗布膜が形成できなかった。ダイの吐出面とシート状基材の表面の距離をさらに近づけたところ、ダイの吐出面の一部とシート状基材が擦過し、シート状基材が破断して搬送不可となった。
【0026】
[比較例2]
本発明とは異なる塗布方法として、
図7(B)に示すように、ダイの吐出面22をシート状基材1に押し込みながら塗布を行うエクストルージョン塗布方式で塗布膜の形成を実施した。ダイ20の設置場所が異なる点、およびエアノズル30を用いていない点以外は、実施例1と同じ構成、塗布条件とした。ダイの吐出面22をシート状基材1に押し込む深さは0.1~5mmの範囲で調整した。
本実施例で形成した塗布膜は、幅方向の両端部では一様な厚みの塗布膜になったものの、幅方向の中央部ではスジ状の塗布欠陥が発生した。
【0027】
[実施例2]
本発明の実施例1において、エアノズル30とシート状基材の距離を2mmに変更して塗布膜の形成を実施した。
本実施例で形成した塗布膜は幅方向にピッチ3mmの薄い膜厚ムラが生じていたが、幅100mmのほぼ一様な厚みの膜であった。
【0028】
[実施例3]
エアノズル30の吐出口の形状をスリット状に変更し、エアノズル30とシート状基材の距離を実施例2と同じく2mmとした以外は、実施例1と同じ条件で塗布膜の形成を実施した。
本実施例で形成した塗布膜は幅100mmの一様な膜であり、スジなどの塗布欠陥が存在せず、塗布膜の外観は良好であった。
本発明のシート状基材への塗布装置および塗布方法は、機能性フィルム、紙製品、布製品、膜製品、電池、電化製品部材、半導体部材などさまざまな用途に広く適用することができる。