(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021576
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】顔料組成物、感光性組成物、ならびに有機EL表示装置
(51)【国際特許分類】
H10K 59/122 20230101AFI20250206BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20250206BHJP
H10K 59/173 20230101ALI20250206BHJP
H10K 50/86 20230101ALI20250206BHJP
H10K 59/80 20230101ALI20250206BHJP
H10K 85/30 20230101ALI20250206BHJP
【FI】
H10K59/122
G03F7/004 505
H10K59/173
H10K50/86
H10K59/80
H10K85/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125366
(22)【出願日】2023-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石川 暁宏
(72)【発明者】
【氏名】杉原 充
【テーマコード(参考)】
2H225
3K107
【Fターム(参考)】
2H225AE05P
2H225AF05P
2H225AM66P
2H225AM74P
2H225AM80P
2H225AM86P
2H225AM99P
2H225AN24P
2H225AN38P
2H225AN54P
2H225AN57P
2H225AN82P
2H225AN88P
2H225AN94P
2H225AN96P
2H225BA02P
2H225BA16P
2H225BA33P
2H225CA24
2H225CB05
2H225CC03
2H225CC21
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC32
3K107CC33
3K107CC45
3K107DD89
3K107DD97
3K107EE54
3K107FF14
(57)【要約】
【課題】ハーフトーン加工により一括形成された画素分割層およびスペーサー層の形成膜厚が厚い場合であっても、画素分割層およびスペーサー層形成時における基板の中央部に配置された発光画素の正常な点灯を維持しつつ、該基板の端部に配置された発光画素の非点灯が抑制された有機EL表示装置を得ることを可能とする、顔料組成物を提供すること。
【解決手段】
(a)-NHCO-基および/または-COO-基と、トリフェノジオキサジン骨格を分子内に有する顔料と、(b)式(1)で表される化合物および/または式(2)で表される化合物を含有する顔料組成物。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)-NHCO-基および/または-COO-基と、トリフェノジオキサジン骨格を分子内に有する顔料と、(b)式(1)で表される化合物および/または式(2)で表される化合物を含有する顔料組成物。
【化1】
(式(1)中、-R
1および-SO
2NHR
2R
3は、ベンゼン環を構成する炭素原子と結合した置換基を表す。m
1およびm
2は整数であり、それぞれ独立に、0~2を表す。m
1とm
2の合計は1または2である。R
1は-SO
3Hまたは-SO
3
-を表す。R
2は単結合または炭素数1~3のアルキレン基を表す。R
3は-SO
3H、-SO
3
-、-COOHおよび-COO
-からなる群より選択される1つの基が置換したフェニル基、または-COOH、または-COO
-を表す。)
【化2】
(式(2)中、MはV=O、Ti=OまたはZnを表す。-R
4、-SO
2NHR
5R
6、-Brおよび-Clは、ベンゼン環を構成する炭素原子と結合した置換基または原子を表す。
n
1およびn
2は整数であり、それぞれ独立に、0~2を表す。n
3は整数であり、0~14を表す。n
4は整数であり、0~5を表す。
n
1とn
2とn
3とn
4の合計は1~16であり、n
1とn
2の合計は0~2である。
n
1とn
2の合計が0のとき、MはZnであり、n
3は8~14である。R
4は-SO
3Hまたは-SO
3
-を表す。R
5は単結合または炭素数1~3のアルキレン基を表す。R
6は-SO
3H、-SO
3
-、-COOHおよび-COO
-からなる群より選択される1つの基が置換したフェニル基、または-COOH、または-COO
-を表す。)
【請求項2】
前記(b)成分が式(28)で表される化合物および/または式(29)で表される化合物を含有する請求項1に記載の顔料組成物。
【化3】
(式(28)中、-R
51は、ベンゼン環を構成する炭素原子と結合した置換基を表す。m
3は整数であり、1または2である。R
51は-SO
3Hまたは-SO
3
-を表す。)
【化4】
(式(29)中、-R
52、-Brおよび-Clは、ベンゼン環を構成する炭素原子と結合した置換基または原子を表す。n
5とn
6とn
7の合計は1~16である。n
5は整数であり、0~2を表す。n
6は整数であり、0~14を表す。n
7は整数であり、0~5を表す。n
5が0のとき、n
6は8~14である。R
52は-SO
3Hまたは-SO
3
-を表す。)
【請求項3】
高周波誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)により定量されるCu原子の含有量が顔料組成物の固形分中、100質量ppm以下である請求項1に記載の顔料組成物。
【請求項4】
さらに、(c)ベンゾイミダゾール骨格とペリレン骨格を分子内に有する顔料を含有する請求項1に記載の顔料組成物。
【請求項5】
さらに、(d)樹脂を含有し、該(d)樹脂が式(43)で表される繰り返し単位を有する樹脂および/または式(44)で表される繰り返し単位を有する樹脂を含有する請求項1に記載の顔料組成物。
【化5】
(式(43)中、R
69は水酸基が1つ置換したフェニル基、無置換のフェニル基または水素原子を表す。pは整数であり、0~2を表す。*は結合部位を表す。)
【化6】
(式(44)中、R
70は水素原子またはメチル基を表す。R
71は単結合または-COO-基を表す。*は結合部位を表す。)
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の顔料組成物に加えて、(d)樹脂、(e)有機溶剤、(f)感光剤を含有する感光性組成物。
【請求項7】
前記(f)成分が光酸発生剤を含有し、ポジ型感光性を有する請求項6に記載の感光性組成物。
【請求項8】
画素分割層およびスペーサー層を具備する有機EL表示装置であって、該画素分割層および該スペーサー層が、請求項6に記載の感光性組成物の硬化物を含有する有機EL表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料組成物、感光性組成物、ならびに有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多様な有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置が開発されており、従来はパネル前面部に配置されていた厚い偏光板を具備しない構造とすることで、偏光板による輝度のロスを無くし、消費電力の低減や表示装置としての製品寿命の向上が期待されている。有機EL表示装置の発光素子には各発光画素を隔てるため、画素分割層または画素定義層と呼ばれる絶縁層の機能を有するパターンが配置されている。偏光板の機能を代替するためには、太陽光などの外光反射を抑制する機能を付与する必要があり、遮光性を有する色材を含有させて画素分割層に遮光性を付与する技術が注目されている。また、視認性を向上して表示装置としての価値を高める上で、画素分割層の遮光性の向上が求められている。
【0003】
ところで、パネル生産時の歩留まりを大幅に向上する目的で、画素分割層の開口部に発光層をパターン蒸着する際、画素分割層の表面の一部に凸状のスペーサー層を形成し、蒸着マスクと画素分割層との接触面積を少なくして欠陥部の発生を抑制する技術が知られている。画素分割層とスペーサー層を形成する方法としては、全透過部、半透過部および遮蔽部を面内に有するハーフトーン露光マスクを介して、少なくとも近紫外線を含む露光光を照射する露光工程を含むフォトリソグラフィ法により画素分割層とスペーサー層を一括して形成する技術(ハーフトーン加工)が知られている。ハーフトーン加工は、画素分割層を形成後、さらにスペーサー層を積層形成する二層加工と比べてプロセスコストを大幅に下げることができ、有機EL表示装置を経済的に有利に製造することができる。
【0004】
遮光性を有する画素分割層とスペーサー層を一括形成するための材料としては、ハーフトーン加工性に優れ、高い露光感度と高い保存安定性を兼ね備えたポジ型感光性組成物が特許文献1に開示されている。該ポジ型感光性組成物には、近赤外線透過率、遮光性、耐熱性および絶縁性の高い有機顔料である、トリフェノジオキサジン系顔料やベンゾイミダゾール骨格を有するペリレン系顔料が適用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1で開示されたポジ型感光性組成物を用いて、より膜厚が厚くなるように形成することで遮光性が高められた画素分割層(例えば、膜厚2.5μm以上)およびスペーサー層(例えば、膜厚1.5μm以上)を具備する有機EL表示装置を駆動させたとき、画素分割層およびスペーサー層形成時における基板の中央部の領域に配置された発光画素は全て正常に点灯するが、該基板の端部の領域に配置された発光画素の少なくとも一部が点灯しないという課題が新たに見出された。一方、該基板の端部に発光画素を配置せずに済むように、基板サイズを大きくし、画素分割層およびスペーサー層を一括形成後、該基板の端部をカットして廃棄した場合、有効に利用できる面積の多大なロスに繋がり、経済的に不利となってしまう。
以上から、ハーフトーン加工により膜厚が厚くなるように形成されて遮光性が高められた画素分割層およびスペーサー層を具備する有機EL表示装置において、画素分割層およびスペーサー層形成時における基板の中央部に配置された発光画素の正常な点灯を維持しつつ、該基板の端部に配置された発光画素の非点灯を抑制する技術が切望された。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明は、次の構成を有する。
[1](a)-NHCO-基および/または-COO-基と、トリフェノジオキサジン骨格を分子内に有する顔料と、(b)式(1)で表される化合物および/または式(2)で表される化合物を含有する顔料組成物。
【0008】
【0009】
式(1)中、-R1および-SO2NHR2R3は、ベンゼン環を構成する炭素原子と結合した置換基を表す。m1およびm2は整数であり、それぞれ独立に、0~2を表す。m1とm2の合計は1または2である。R1は-SO3Hまたは-SO3
-を表す。R2は単結合または炭素数1~3のアルキレン基を表す。R3は-SO3H、-SO3
-、-COOHおよび-COO-からなる群より選択される1つの基が置換したフェニル基、または-COOH、または-COO-を表す。
【0010】
【0011】
式(2)中、MはV=O、Ti=OまたはZnを表す。-R4、-SO2NHR5R6、-Brおよび-Clは、ベンゼン環を構成する炭素原子と結合した置換基または原子を表す。
n1およびn2は整数であり、それぞれ独立に、0~2を表す。n3は整数であり、0~14を表す。n4は整数であり、0~5を表す。
n1とn2とn3とn4の合計は1~16であり、n1とn2の合計は0~2である。
n1とn2の合計が0のとき、MはZnであり、n3は8~14である。R4は-SO3Hまたは-SO3
-を表す。R5は単結合または炭素数1~3のアルキレン基を表す。R6は-SO3H、-SO3
-、-COOHおよび-COO-からなる群より選択される1つの基が置換したフェニル基、または-COOH、または-COO-を表す。
[2]前記(b)成分が式(28)で表される化合物および/または式(29)で表される化合物を含有する[1]に記載の顔料組成物。
【0012】
【0013】
式(28)中、-R51は、ベンゼン環を構成する炭素原子と結合した置換基を表す。m3は整数であり、1または2である。R51は-SO3Hまたは-SO3
-を表す。
【0014】
【0015】
式(29)中、-R52、-Brおよび-Clは、ベンゼン環を構成する炭素原子と結合した置換基または原子を表す。n5とn6とn7の合計は1~16である。n5は整数であり、0~2を表す。n6は整数であり、0~14を表す。n7は整数であり、0~5を表す。n5が0のとき、n6は8~14である。R52は-SO3Hまたは-SO3
-を表す。
[3]高周波誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)により定量されるCu原子の含有量が顔料組成物の固形分中、100質量ppm以下である[1]または[2]に記載の顔料組成物。
[4]さらに、(c)ベンゾイミダゾール骨格とペリレン骨格を分子内に有する顔料を含有する[1]~[3]のいずれかに記載の顔料組成物。
[5]さらに、(d)樹脂を含有し、該(d)樹脂が式(43)で表される繰り返し単位を有する樹脂および/または式(44)で表される繰り返し単位を有する樹脂を含有する請求項[1]~[4]のいずれかに記載の顔料組成物。
【0016】
【0017】
(式(43)中、R69は水酸基が1つ置換したフェニル基、無置換のフェニル基または水素原子を表す。pは整数であり、0~2を表す。*は結合部位を表す。)
【0018】
【0019】
(式(44)中、R70は水素原子またはメチル基を表す。R71は単結合または-COO-基を表す。*は結合部位を表す。)
[6][1]~[5]のいずれかに記載の顔料組成物に加えて、(d)樹脂、(e)有機溶剤、(f)感光剤を含有する感光性組成物。
[7]前記(f)成分が光酸発生剤を含有し、ポジ型感光性を有する[6]に記載の感光性組成物。
[8]画素分割層およびスペーサー層を具備する有機EL表示装置であって、該画素分割層および該スペーサー層が、[6]または[7]に記載の感光性組成物の硬化物を含有する有機EL表示装置。
【発明の効果】
【0020】
本発明の顔料組成物によれば、ハーフトーン加工により一括形成された画素分割層およびスペーサー層の形成膜厚が厚い場合であっても、画素分割層およびスペーサー層形成時における基板の中央部に配置された発光画素の正常な点灯を維持しつつ、該基板の端部に配置された発光画素の非点灯が抑制された有機EL表示装置を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】画素分割層およびスペーサー層形成時の基板面内における中央部の領域と、端部の領域の位置関係を示す模式図である。
【
図2】1つの基板上に複数台の有機EL表示装置を製造した一例を示す模式図である。
【
図3】実施例1で得られた必要最小露光量評価用基板の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した撮像である。
【
図4】全ての実施例および比較例における、画素分割層とスペーサー層の形成工程を含む有機EL表示装置の作製工程である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について詳細に説明する。「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。画素分割層とは、有機EL表示装置が具備する画素分割層のことを意味し、有機EL表示装置および液晶表示装置のブラックマトリクスは包含しない。ここでいうブラックマトリクスとは、表示装置の光取り出し側に配置されるカラーフィルター基板上に、レッド、グリーン、ブルーなどのカラーフィルターを隔てるために配置される遮光層を意味する。可視光線とは波長380nm以上780nm未満の領域の光を意味し、近紫外線とは200nm以上380nm未満の領域の光を意味する。遮光とは、硬化膜に対して垂直方向に入射した光の強度に対して透過した光の強度を低下させる機能を意味し、遮光性とは、可視光線を遮蔽する程度のことをいう。透過率とは、光透過率のことを意味する。
【0023】
固形分とは、顔料組成物またはポジ型感光性組成物中、水および有機溶剤を除いた成分の割合(質量%)を意味する。顔料組成物とは、水および有機溶剤を除いた成分が、顔料が少なくとも含まれる複数種の化合物を含有し、かつ固形分70~100質量%であるものを意味する。本明細書中において樹脂とは、重量平均分子量(Mw)が1000以上であり、かつ有機基を含む繰り返し単位を有し、該繰り返し単位の数が1分子内に3つ以上の化合物を意味する。重量平均分子量(Mw)とは、テトラヒドロフランをキャリヤーとするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で分析し、標準ポリスチレンによる検量線を用いて換算した値である。
【0024】
本発明者らは、画素分割層およびスペーサー層を形成するための感光性組成物中に含有する様々な構成成分のうち、特に顔料に着目して鋭意検討を行った結果、特定構造のトリフェノジオキサジン系顔料と、特定構造のフタロシアニン誘導体を含有する顔料組成物が、前述の課題の解決にあたり格別顕著な効果を奏することを見出した。
【0025】
すなわち、本発明の第一の態様である顔料組成物は、
(a)-NHCO-基および/または-COO-基と、トリフェノジオキサジン骨格を分子内に有する顔料と、(b)式(1)で表される化合物および/または式(2)で表される化合物を含有する顔料組成物、である。
【0026】
【0027】
式(1)中、-R1および-SO2NHR2R3は、ベンゼン環を構成する炭素原子と結合した置換基を表す。m1およびm2は整数であり、それぞれ独立に、0~2を表す。m1とm2の合計は1または2である。R1は-SO3Hまたは-SO3
-を表す。R2は単結合または炭素数1~3のアルキレン基を表す。R3は-SO3H、-SO3
-、-COOHおよび-COO-からなる群より選択される1つの基が置換したフェニル基、または-COOH、または-COO-を表す。
【0028】
【0029】
式(2)中、MはV=O、Ti=OまたはZnを表す。-R4、-SO2NHR5R6、-Brおよび-Clは、ベンゼン環を構成する炭素原子と結合した置換基または原子を表す。
n1およびn2は整数であり、それぞれ独立に、0~2を表す。n3は整数であり、0~14を表す。n4は整数であり、0~5を表す。
n1とn2とn3とn4の合計は1~16であり、n1とn2の合計は0~2である。
n1とn2の合計が0のとき、MはZnであり、n3は8~14である。R4は-SO3Hまたは-SO3
-を表す。R5は単結合または炭素数1~3のアルキレン基を表す。R6は-SO3H、-SO3
-、-COOHおよび-COO-からなる群より選択される1つの基が置換したフェニル基、または-COOH、または-COO-を表す。
【0030】
本発明の顔料組成物は、ハーフトーン加工により一括形成された画素分割層およびスペーサー層の形成膜厚が厚い場合であっても、画素分割層およびスペーサー層形成時における基板の中央部に配置された発光画素の正常な点灯を維持しつつ、該基板の端部に配置された発光画素の非点灯(以下、「端部の非点灯」と略記する場合がある。)を抑制する効果を奏し、有機EL表示装置の価値を高めることができる。
【0031】
ここでいう形成膜厚が厚いとは、画素分割層の膜厚が2.5μm以上であり、かつスペーサー層の膜厚が1.5μm以上(すなわち、画素分割層とスペーサー層の膜厚の合計が4.0μm以上)であることを意味する。画素分割層の膜厚を2.5μm以上とすることで高い遮光性を得て視認性を向上でき、最終的に得られる有機EL表示装置の価値を高めることができる。また、スペーサー層の膜厚を1.5μm以上とすることで画素分割層の開口部に発光層をパターン蒸着する際、発光素子の欠けや損傷を防止して、パネル生産時の歩留まりを向上することができる。後述するハーフトーン加工性を向上する上で、画素分割層とスペーサー層の膜厚の合計は10.0μm以下が好ましい。ここでいう画素分割層およびスペーサー層形成時における基板の中央部とは、
図1中、1に示す領域のことを意味する。画素分割層およびスペーサー層形成時における基板の端部とは、
図1中、2に示す領域のことを意味する。
【0032】
図1中、W
1は基板の長辺の長さ、W
2は基板の短辺の長さを表す。W
3はW
1に対して20%に相当する端部の長さを表す。W
4はW
2に対して20%に相当する端部の長さを表す。
【0033】
端部の非点灯を抑制するという技術的効果は、1つの基板上に複数台の有機EL表示装置を製造する場合においても経済的に有利な価値をもたらす。
図2に実施形態の1例を示す。
図2中、破線で囲まれた1つの領域は、1台の有機EL表示装置が配置される領域を表し、1つの基板上に合計16台を作製した後に小片状に切り出される。本発明により、端部に配置された12台の有機EL表示装置の不良率を低減することができる。
【0034】
本発明の顔料組成物は、(a)-NHCO-基および/または-COO-基と、トリフェノジオキサジン骨格を分子内に有する顔料(以下、(a)成分という場合がある。)を必須成分として含有する。ここでいう-NHCO-基は式(3)で表される基を意味し、-COO-基は式(4)で表される基を意味する。トリフェノジオキサジン骨格とは、式(5)で表される骨格を意味する。トリフェノジオキサジン骨格はトリフェンジオキサジン骨格とも呼ばれる。したがって、本明細書中において、トリフェノジオキサジン(Triphenodioxazine)骨格を分子内に有する顔料は、トリフェンジオキサジン(Triphendioxazine)骨格を分子内に有する顔料と同義であると定義する。(a)成分は赤味または青味がかった暗紫色を呈する顔料である。
【0035】
【0036】
式(3)および式(4)中、*は結合部位を表す。
【0037】
【0038】
(a)成分は、後述する感光性組成物に優れたハーフトーン加工性を与えるとともに、画素分割層に遮光性を与える効果を奏する。ここでいう優れたハーフトーン加工性とは、所望の開口幅の開口部を有する画素分割層とスペーサー層を一括形成したとき、画素分割層の開口部の表面に生じうる現像残渣が抑制されることをいう。また、(a)成分は可視光領域における高い遮光性と近赤外線領域における高い透過性を兼ね備え、近赤外線カメラを用いた露光アライメントを簡便に行うことができ、露光マスクの基板に対する位置精度を高めることによりパネル生産の歩留まりを向上できる。
【0039】
(a)成分としては、ハーフトーン加工性と遮光性を向上する上で、式(6)で表される顔料および/または式(7)で表される顔料が好ましい。
すなわち、本発明の顔料組成物は、(a)成分が式(6)で表される顔料および/または式(7)で表される顔料を含有することが好ましい。
【0040】
【0041】
式(6)中、R7およびR8は、それぞれ独立に、炭素数1~8のアルキル基を表す。R9およびR10は、それぞれ独立に、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキル基が置換したフェニル基または無置換のフェニル基を表す。R11およびR12は、それぞれ独立に、-NH-または酸素原子を表す。R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21およびR22は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基または炭素数1~4のアルコキシ基を表す。R23およびR24は、-CONH-を表す。
【0042】
なお、式(6)中、-CONH-基が有するカルボニル基の炭素原子は、トリフェノジオキサジン骨格を構成する炭素原子と結合していてもよく、置換基を有していてもよいフェニル基を構成する炭素原子と結合していてもよい。
【0043】
【0044】
式(7)中、R25およびR26は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~8のアルキル基を表す。R27およびR28は、それぞれ独立に、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキル基が置換したフェニル基または無置換のフェニル基を表す。R29およびR30は、それぞれ独立に、-NH-または酸素原子を表す。
【0045】
(a)成分としては、端部の非点灯を抑制する上で、式(8)で表される顔料および/または式(9)で表される顔料を含有することがより好ましい。同観点から、式(8)で表される顔料がさらに好ましい。
すなわち、本発明の顔料組成物は、(a)成分が式(8)で表される顔料および/または式(9)で表される顔料を含有することがより好ましい。
【0046】
【0047】
式(8)中、R31、R32、R33およびR34は、それぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基を表す。
R35、R36、R37、R38、R39、R40、R41、R42、R43およびR44は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基または炭素数1~4のアルコキシ基を表す。
R45およびR46は、-CONH-を表す。
式(8)中、-CONH-基が有するカルボニル基の炭素原子は、トリフェノジオキサジン骨格を構成する炭素原子と結合していてもよく、置換基を有していてもよいフェニル基を構成する炭素原子と結合していてもよい。
【0048】
【0049】
式(9)中、R47、R48、R49およびR50は、それぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基を表す。
【0050】
(a)成分の具体例としては、式(10)で表される顔料、式(11)で表される顔料、式(12)で表される顔料、式(13)で表される顔料、式(14)で表される顔料、式(15)で表される顔料、式(16)で表される顔料、式(17)で表される顔料、式(18)で表される顔料、式(19)で表される顔料、式(20)で表される顔料、式(21)で表される顔料が挙げられる。
(a)成分は1種であってもよく、2種以上を混合した顔料または混晶顔料であってもよい。
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
(a)成分の合成方法は特に限定されないが、例えば、仏国特許出願公開第1269107号に記載の方法を参照することができる。また、式(10)で表される顔料を合成する方法を具体例として挙げ、本発明に好ましく採用できる(a)成分の合成方法について以下に説明する。
【0056】
第一の工程として、溶媒中、クロラニル1molに対して水酸化アンモニウムを好ましくは2~3mol添加して攪拌する。好ましくは液温30~100℃で1~6時間反応させ、クロラニル中の4つの塩素原子のうちの2つを1級アミノ基に変換した生成物、すなわち2,5-ジアミノ-3,6-ジクロロ-1,4-ベンゾキノンを得て、濾別する。溶媒としては、例えば、酢酸2-メトキシ-1-メチルエチル、酢酸2-メトキシエチル、酢酸3-メトキシブチルを用いることができる。
【0057】
第二の工程として、前述の生成物を無水酢酸の中に添加し、好ましくは液温10~60℃で1~24時間攪拌して反応させてアセトアニリドとし、式(22)で表される中間体を得て濾別する。反応率を高める上で、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などの有機酸を加えてもよい。第一の工程で得られる生成物または第二の工程で得られる中間体は東京化成工業(株)製の市販品を用いてもよい。
【0058】
【0059】
第三の工程として、溶媒中、式(22)で表される中間体1molに対して、芳香族一級アミンとして式(23)で表される化合物を好ましくは2~3mol添加し攪拌する。好ましくは液温70~130℃で5~10時間攪拌して反応させ、式(24)で表されるトリフェノジオキサジン前駆体を得る。反応率を高める上で、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミンなどの3級アミンを用いてもよい。溶媒としては、例えば、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、3-メトキシトルエン、4-メトキシトルエン、メチルフェニルエーテル、エチルフェニルエーテル、ノナン、デカン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジプロピル-2-イミダゾリジノンが挙げられる。
【0060】
【0061】
第四の工程として、閉環助剤として酸化剤を添加し、好ましくは液温140~200℃で5~10時間攪拌し、式(24)で表されるトリフェノジオキサジン前駆体の閉環を行い、オキサジン環を形成した前述の式(10)で表される化合物が、顔料クルードとして得られる。必要に応じて再結晶操作を行い、一次粒子の形状を制御してもよい。酸化剤としては、例えば、ベンゼンスルホニルクロリド、p-トルエンスルホニルクロリド、m-ニトロベンゼンスルホニルクロリド、p-ニトロベンゼンスルホニルクロリド、p-クロロベンゼンスルホニルクロリド、p-トルエンスルホン酸が挙げられる。
【0062】
第五の工程として、100℃以下まで冷却後、水洗および濾別を繰り返し、必要に応じてエタノール、ブタノール、アセトンなどの溶剤を用いて精製し、(a)成分の純度を高めてもよい。次いで、加熱または減圧乾燥した後に乾式粉砕処理により微粒化し、暗紫色の式(10)で表される顔料が得られる。
【0063】
以上の合成方法に基づき、(a)成分に属する種々の顔料を得ることができる。例えば、第三の工程で芳香族一級アミンとして3-アミノ-9-エチルカルバゾールを用いることで、式(13)で表される顔料が得られる。また、第一の工程において水酸化アンモニウムに替えて水酸化ナトリウムを用いてカルボン酸エステル結合を有する化合物、すなわち2,5-ジクロロ-3,6-ジヒドロキシ-p-ベンゾキノンを生成させ、かつ第三の工程において芳香族一級アミンとして3-アミノ-9-ヘキシルカルバゾールを用いて閉環させることで、式(15)で表される顔料が得られる。
【0064】
また、前述の合成方法における第三の工程以降の工程を以下の方法に変えることにより、例えば、式(16)で表される顔料が得られることについて以下に具体例を説明する。
【0065】
第三の工程として、溶媒中、前述の式(22)で表される中間体1molに対して2-エトキシ-4-アミノ安息香酸を好ましくは2~3mol添加し、好ましくは液温70~130℃で5~10時間攪拌して反応させ、式(25)で表されるトリフェノジオキサジン前駆体を得る。溶媒としては、例えば、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、3-メトキシトルエン、4-メトキシトルエン、メチルフェニルエーテル、エチルフェニルエーテル、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジプロピル-2-イミダゾリジノンが挙げられる。
【0066】
【0067】
第四の工程として、酸化剤を添加し、好ましくは液温140~200℃で5~10時間攪拌して、式(23)で表されるトリフェノジオキサジン前駆体を閉環させてオキサジン環を形成し、式(26)で表される化合物を得る。酸化剤としては、前述の酸化剤と同じ化合物の群を利用することができる。
【0068】
【0069】
次いで、第五の工程として、ジカルボン酸である式(26)で表される化合物1molを10~15molの塩化チオニル中に添加し、好ましくは液温40~70℃で5~10時間攪拌して、水酸基が塩素原子に変換された酸塩化物が得られる。さらに、芳香族一級アミンとして2~3molのアミノベンゼンを添加して5~10時間攪拌し、100℃以下まで冷却後、水洗、濾別してウェットケーキを得る。次いで、加熱または減圧乾燥した後に乾式粉砕処理により微粒化し、暗紫色の式(16)で表される顔料が得られる。
【0070】
以上の合成方法に基づき、(a)成分に属する種々の顔料を得ることができる。例えば、第五の工程で芳香族一級アミンとして4-エチルアニリンを用いれば、式(17)で表される顔料が得られる。
【0071】
(a)成分の他、後述する(b)成分、(c)成分、ならびに本発明の顔料組成物を製造する際の乾式粉砕処理は、ボールミルおよび/またはジェットミルを用いることができる。ボールミルとしては、例えば、BM-15(エイシン(株)製)が挙げられる。ジェットミルとしては、例えば、“ナノジェットマイザー”(登録商標)((株)アイシンナノテクノロジーズ製)、流動層式対向型ジェットミル“100AFG”(ホソカワミクロン(株)製)が挙げられる。
【0072】
本発明の顔料組成物は、(b)式(1)で表される化合物および/または式(2)で表される化合物(以下、(b)成分という場合がある。)を必須成分として含有する。(b)成分は、(a)成分との相乗効果により、最終的に得られる有機EL表示装置において、画素分割層およびスペーサー層形成時における基板の端部の領域に配置された発光画素の非点灯を抑制するという異質な効果を奏する。
【0073】
【0074】
式(1)中、-R1および-SO2NHR2R3は、ベンゼン環を構成する炭素原子と結合した置換基を表す。m1およびm2は整数であり、それぞれ独立に、0~2を表す。m1とm2の合計は1または2である。R1は-SO3Hまたは-SO3
-を表す。R2は単結合または炭素数1~3のアルキレン基を表す。R3は-SO3H、-SO3
-、-COOHおよび-COO-からなる群より選択される1つの基が置換したフェニル基、または-COOH、または-COO-を表す。
【0075】
【0076】
式(2)中、MはV=O、Ti=OまたはZnを表す。-R4、-SO2NHR5R6、-Brおよび-Clは、ベンゼン環を構成する炭素原子と結合した置換基または原子を表す。
n1およびn2は整数であり、それぞれ独立に、0~2を表す。n3は整数であり、0~14を表す。n4は整数であり、0~5を表す。
n1とn2とn3とn4の合計は1~16であり、n1とn2の合計は0~2である。
n1とn2の合計が0のとき、MはZnであり、n3は8~14である。R4は-SO3Hまたは-SO3
-を表す。R5は単結合または炭素数1~3のアルキレン基を表す。R6は-SO3H、-SO3
-、-COOHおよび-COO-からなる群より選択される1つの基が置換したフェニル基、または-COOH、または-COO-を表す。
【0077】
ここでいうベンゼン環を構成する炭素原子とは、1つの無金属フタロシアニン骨格中、特定位置の16個の炭素原子を意味し、より具体的には、式(27)中、位置番号1~16でマークされた炭素原子を意味する。式(1)において、ベンゼン環を構成する炭素原子と結合した置換基の結合位置は特に限定されない。すなわち、当業者の技術常識に基づき、式(1)は、炭素原子との結合位置が単一の化合物である場合と、炭素原子との結合位置が異なる複数種の化合物の混合物である場合の両方を包含して意味する。式(1)で表される化合物以外の(b)成分についても、それらの化学構造を表す式に同様の観点が適用される。
【0078】
【0079】
(b)成分としては、端部の非点灯を抑制する上で、式(28)で表される化合物および/または式(29)で表される化合物を含有することが好ましい。少なくとも式(29)で表される化合物を含有することがより好ましい。
すなわち、本発明の顔料組成物は、(b)成分が式(28)で表される化合物および/または式(29)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0080】
【0081】
式(28)中、-R51は、ベンゼン環を構成する炭素原子と結合した置換基を表す。m3は整数であり、1または2である。R51は-SO3Hまたは-SO3
-を表す。
【0082】
【0083】
式(29)中、-R52、-Brおよび-Clは、ベンゼン環を構成する炭素原子と結合した置換基または原子を表す。n5とn6とn7の合計は1~16である。n5は整数であり、0~2を表す。n6は整数であり、0~14を表す。n7は整数であり、0~5を表す。n5が0のとき、n6は8~14である。R52は-SO3Hまたは-SO3
-を表す。
【0084】
(b)成分の具体例としては、式(30)で表される化合物、式(31)で表される化合物、式(32)で表される化合物、式(33)で表される化合物、式(34)で表される化合物、式(35)で表される化合物、式(36)で表される化合物、式(37)で表される化合物が挙げられる。
(b)成分は1種であってもよく、2種以上の混合物または混晶であってもよい。
【0085】
【0086】
【0087】
(b)成分を得る方法は特に限定されないが、例えば、無金属フタロシアニン、バナジルフタロシアニン、チタニルフタロシアニンまたは亜鉛フタロシアニンを出発原料として用い、所望の置換基または原子を導入して簡便に合成することができる。ここでいうバナジルフタロシアニンとはオキソバナジウムフタロシアニンと同義であり、チタニルフタロシアニンとはオキソチタニウムフタロシアニンと同義である。これらフタロシアニン化合物は、昇華精製された高純度品をSigma-Aldrich社や東京化成工業(株)から入手可能である。また、顔料化された微粒状の無金属フタロシアニン、すなわちC.I.ピグメントブルー16を用いることもでき、α型、β型、γ型、η型などいずれの結晶形であっても用いることができる。
【0088】
(b)成分である、式(1)中、-R1で表される置換基を有する化合物は、例えば、以下の方法で得ることができる。
【0089】
出発原料として無金属フタロシアニンを、10~50質量%発煙硫酸、または70~90質量%濃硫酸に溶解させ、液温を30~80℃の範囲で調整して3~8時間攪拌してスルホン化反応を進行させ、無金属フタロシアニン骨格のベンゼン環にスルホ基を導入する。液温を30℃以上とすることで出発原料の未反応分の残留を抑制でき、80℃以下とすることで出発原料の分解を抑制でき、スルホン化物の純度を高めることができる。次いで、出発原料に対して100倍以上の質量の水、好ましくは氷水の中に滴下して青緑色のスラリーを得る。エタノールなどのアルコールで洗浄した後、イオンクロマトグラフィ(以下、「IC」という場合がある。)で定量される硫酸イオンの残存量が好ましくは50質量ppmを下回るまで繰り返し水洗と濾過を行い、ウェットケーキを得て、60~80℃減圧下で10時間以上乾燥させ、乾式粉砕処理により微粒化する。目的生成物の1分子あたりのスルホ基の導入数およびその分布は、発煙硫酸の濃度に応じた液温、反応時間などで制御することができ、1段階または2段階以上の反応条件としてもよい。スルホ基が3つ以上導入された副生成物は水に対する溶解度が高いため、水洗回数を調整して前述の硫酸イオンとともに除去すればよい。反応終点の決定および化学構造の同定は、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)、飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)を用いることができる。また、必要に応じてシリカゲルクロマトグラフィーを用いた精製処理を行うことにより、特定範囲の数のスルホ基が導入された化合物の純度を高めることもできる。
【0090】
以上の操作により、式(1)で表される化合物に相当する、式(30)で表される化合物と式(31)で表される化合物の混合物が得られる。
前述と同様の方法で、例えば、無金属フタロシアニンに替えて、出発原料としてバナジルフタロシアニン、チタニルフタロシアニンまたは亜鉛フタロシアニンを用いることで、式(2)中、MがV=O(バナジル)、Ti=O(チタニル)またはZnであり、R4が-SO3H、n1が1または2である化合物が得られる。
【0091】
一方、(b)成分である、式(1)中、-SO2NHR2R3で表される置換基を有する化合物は、例えば、以下の方法で得ることができる。
【0092】
出発原料として無金属フタロシアニンをクロロスルホン酸に溶解させ、塩化チオニルを滴下し、液温10~30℃で1~10時間攪拌する。次いで、出発原料に対して10倍以上の質量の水、好ましくは氷水の中に滴下して青緑色のスラリーを得て濾過、水洗を行い、無金属フタロシアニンスルホクロリドを含むウェットケーキ得る。5~30%水酸化ナトリウム水溶液に、モノアミンとして3-アミノプロピオン酸を添加し、さらに無金属フタロシアニンスルホクロリドを含むウェットケーキを添加して液温0~5℃で1~3時間攪拌し、さらに液温20~70℃で1~5時間攪拌し反応を進行させる。必要に応じて、低い液温で穏やかに反応を進行させることにより、スルホ基の副生成を抑え、スルホンアミド基のみ導入された生成物の純度を高くすることもできる。次いで、攪拌を維持しながらpH2~4となるまで5~30%塩酸水溶液を滴下し、エタノールなどのアルコールで洗浄した後、ICで定量される塩素イオンの残存量が好ましくは50質量ppmを下回るまで繰り返し水洗と濾過を行い、ウェットケーキを得て、60~80℃減圧下で10時間以上乾燥させ、乾式粉砕処理により微粒化する。
【0093】
以上の操作により、式(32)で表される化合物と式(33)で表される化合物の混合物が得られる。同様の方法で、例えば、3-アミノプロピオン酸に替えて、モノアミンとしてo-アミノベンゼンスルホン酸、m-アミノベンゼンスルホン酸またはp-アミノベンゼンスルホン酸を用いることで、式(1)中、R2が単結合であり、R3が、-SO3Hが1つ置換したフェニル基である化合物が得られる。
【0094】
(b)成分である、式(2)中、-Brおよび-Clを有する化合物は、例えば、以下の方法で得ることができる。
【0095】
出発原料である亜鉛フタロシアニンに、臭素、塩化スルフリル、塩化ナトリウムおよび塩化アルミニウムを混合して、120~150℃で10~50時間加熱し、臭素原子および塩素原子を導入する。次いで、出発原料に対して100倍以上の質量の水に投入し、緑色のスラリーを得て、濾過、水洗を行う。エタノールで洗浄した後、ICで定量される塩素イオン、臭素イオンの残存量がそれぞれ、好ましくは50質量ppmを下回るまで繰り返し水洗と濾過を行い、ウェットケーキを得て、60~80℃減圧下で10時間以上乾燥させ、乾式粉砕処理により微粒化する。
【0096】
以上の操作により、式(37)で表される化合物が得られる。目的生成物の1分子あたりに導入される臭素原子および/または塩素原子の数は、ハロゲン化剤である臭素および塩化スルフリルの処方量により簡便に制御できる。前述と同じ方法で、例えば、亜鉛フタロシアニンに替えて、出発原料としてバナジルフタロシアニンまたはチタニルフタロシアニンを用いて、式(2)中、MがV=O(バナジル)またはTi=O(チタニル)であり、n3が1~14であり、n4が1~5である化合物が得られる。臭素原子および/または塩素原子を導入後、前述と同じ方法で、-R4で表される置換基および/または-SO2NHR5R6で表される置換基をさらに導入してもよい。
【0097】
本発明の顔料組成物は、(b)成分による端部の非点灯を抑制する効果を高める上で、Cu原子の含有量が顔料組成物中、100質量ppm以下であることが好ましく、50質量ppm以下であることがより好ましい。ここでいうCuの含有量は、高周波誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)により定量される含有量を意味する。
すなわち、本発明の顔料組成物は、高周波誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)により定量されるCu原子の含有量が顔料組成物の固形分中、100質量ppm以下であることが好ましい。Cu原子の存在形態としては、例えば、(b)成分を合成するための原料を由来とする銅イオンや、銅フタロシアニン骨格を有する化合物が挙げられる。
【0098】
本発明の顔料組成物は、端部の非点灯を抑制する上で、(a)成分と(b)成分が、点状、線状および/または面状に接する部位を有することが好ましい。点状および/または線状に接する部位を有する場合の具体例としては、(a)成分から成る一次粒子と(b)成分から成る一次粒子が接するように凝集して成る二次粒子、該二次粒子がさらに凝集して成る三次凝集体以上の高次凝集体、(a)成分のみから成る二次粒子と、(b)成分のみから成る二次粒子とが凝集して成る三次凝集体以上の高次凝集体、およびそれらが混在した形態が好ましく挙げられる。面状に接する部位を有する場合の具体例としては、(a)成分の表面の少なくとも一部が(b)成分で被覆された形態、(b)成分の表面の少なくとも一部が(a)成分で被覆された形態が挙げられる。
【0099】
前述の(a)成分と(b)成分が接する原理は特に限定されないが、(a)成分が有するトリフェノジオキサジン骨格と、(b)成分が有するフタロシアニン骨格のπ-π相互作用を由来とし、それら平面骨格同士の強固な吸着形態によるものであることが好ましい。そのような強固な吸着形態は、(a)成分と(b)成分を共存させ、後述するソルベントソルトミリング法により本発明の顔料組成物を製造することで得ることができる。
【0100】
本発明の顔料組成物は、端部の非点灯を抑制する上で、さらに、(c)ベンゾイミダゾール骨格とペリレン骨格を分子内に有する顔料(以下、「(c)成分」という場合がある。)を含有することが好ましい。ここでいうベンゾイミダゾール骨格とは、式(38)で表される構造を意味する。(c)成分は(a)成分と同様に画素分割層に遮光性を与えるとともに、(b)成分の、端部の非点灯を抑制する効果をより一層向上させる効果を奏する。(c)成分は暗紫色を呈する顔料である。
【0101】
【0102】
(c)成分としては、例えば、式(39)で表される顔料、式(40)で表される顔料が挙げられる。
【0103】
【0104】
式(39)および式(40)中、R53、R54、R55、R56、R57、R58、R59、R60、R61、R62、R63、R64、R65、R66、R67およびR68は、それぞれ独立に、水素原子、臭素原子、炭素数1~6のアルキル基または炭素数1~6のアルコキシ基を表す。)
中でも、(b)成分の、端部の非点灯を抑制する効果をより一層向上させる効果に優れる点で、式(41)で表される顔料、式(42)で表される顔料が好ましい。(c)成分の合成方法は特に限定されないが、例えば、特許文献1に記載の方法を参照することができる。
【0105】
【0106】
本発明の顔料組成物が後述する(c)成分を含有しない場合、(a)成分の含有量は、ハーフトーン加工性を向上する上で、(a)成分と(b)成分の合計100.0000質量部中、80.0000質量部以上が好ましく、85.0000質量部以上がより好ましく、90.0000質量部以上がさらに好ましい。端部の非点灯を抑制する上で、99.9999質量部以下が好ましく、99.9900質量部以下がより好ましく、99.0000質量部以下がさらに好ましい。
【0107】
一方、本発明の顔料組成物が(c)成分を含有する場合、(a)成分と(c)成分の含有量の合計は、ハーフトーン加工性を向上する上で、(a)成分と(b)成分と(c)成分の合計100.0000質量部中、80.0000質量部以上が好ましく、85.0000質量部以上がより好ましく、90.0000質量部以上がさらに好ましい。端部の非点灯を抑制する上で、99.9999質量部以下が好ましく、99.9900質量部以下がより好ましく、99.0000質量部以下がさらに好ましい。
【0108】
本発明の顔料組成物が後述する(c)成分を含有しない場合、(b)成分の含有量は、端部の非点灯を抑制する上で、(a)成分と(b)成分の合計100.0000質量部中、0.0001質量部以上が好ましく、0.0100質量部以上がより好ましく、1.0000質量部以上がさらに好ましい。ハーフトーン加工性を向上する上で、20.0000質量部以下が好ましく、15.0000質量部以下がより好ましく、10.0000質量部以下がさらに好ましい。
【0109】
本発明の顔料組成物が(c)成分を含有する場合、(b)成分の含有量は、端部の非点灯を抑制する上で、(a)成分と(b)成分と(c)成分の合計100.0000質量部に対して、0.0001質量部以上が好ましく、0.0100質量部以上がより好ましく、1.0000質量部以上がさらに好ましい。ハーフトーン加工性を向上する上で、20.0000質量部以下が好ましく、15.0000質量部以下がより好ましく、10.0000質量部以下がさらに好ましい。
【0110】
また、(a)成分と(b)成分と(c)成分の含有量の合計は、顔料組成物の固形分の質量あたりの遮光性およびハーフトーン加工性を向上し、かつ端部の非点灯を抑制する上で、顔料組成物の固形分100.0000質量部中、80.0000~100.0000質量部が好ましい。
【0111】
本発明の顔料組成物が(c)成分を含有する場合、(a)成分と(c)成分の含有比率は、端部の非点灯の抑制と、ハーフトーン加工性を両立する上で、(a)成分:(c)成分=質量比10:90~90:10が好ましく、40:60~85:15がより好ましい。
【0112】
本発明の顔料組成物は、さらに、(d)樹脂を含有していてもよく、(d)樹脂としては、(b)成分の、端部の非点灯を抑制する効果をより一層向上させる上で、式(43)で表される繰り返し単位を有する樹脂および/または式(44)で表される繰り返し単位を有する樹脂を含有することが好ましい。
すなわち、本発明の顔料組成物は、さらに、(d)樹脂を含有し、該(d)樹脂が式(43)で表される繰り返し単位を有する樹脂および/または式(44)で表される繰り返し単位を有する樹脂を含有することが好ましい。
【0113】
【0114】
式(43)中、R69は水酸基が1つ置換したフェニル基、無置換のフェニル基または水素原子を表す。pは整数であり、0~2を表す。*は結合部位を表す。
【0115】
【0116】
式(44)中、R70は水素原子またはメチル基を表す。R71は単結合または-COO-基を表す。*は結合部位を表す。
【0117】
式(43)で表される繰り返し単位を有する樹脂は、フェノール類とアルデヒド類を酸触媒下で反応させて得られる。フェノール類としては、例えば、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、2,3-ジメチルフェノール、2,4-ジメチルフェノール、2,5-ジメチルフェノール、2,6-ジメチルフェノールが挙げられる。アルデヒド類としては、例えば、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒドが挙げられる。市販品としては、TR4020G、TR4080G、TR4000B、TR40B40G、TRM30B20G、TRR5010G(以上、いずれも旭有機材(株)製)が挙げられる。
【0118】
式(44)で表される繰り返し単位を有する樹脂は、例えば、ラジカル重合性モノマーであるp-ヒドロキシスチレンおよび/または(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシフェニルを、熱重合開始剤の存在下でラジカル重合させて得られる。また、その他モノマー成分として、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸などを追加して共重合させてもよい。市販品としては、VP-2500、VP-3500、VP-8000(以上、いずれも日本曹達(株)製)が挙げられる。
【0119】
その他の(d)樹脂としては、エポキシ樹脂を含有させてもよい。エポキシ樹脂としては、大気圧下/25℃において固体のものが好ましく、例えば、NC-3000、NC-3000Lなどのビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、XD-1000、XD-1000-2L、XD-1000-Hなどの脂環式骨格を有するエポキシ樹脂(以上、いずれも日本化薬(株)製)、OGSOL PG-100、同CG-500などのビスアリールフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂(以上、いずれも大阪ガスケミカル(株)製)が挙げられる。
【0120】
(d)樹脂の重量平均分子量(Mw)は、端部の非点灯を抑制する上で、2000~20000が好ましい。また、(d)樹脂の含有量は、端部の非点灯を抑制する上で、(a)成分と(c)成分の合計100.0000質量部に対して、1.0000~10.0000質量部が好ましい。
【0121】
本発明の顔料組成物は、(e)有機溶剤(以下、「(e)成分」という場合がある。)および/または水を含有していてもよい。(e)成分としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、「PGME」)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、乳酸メチル、乳酸エチル、3-メトキシブチルアセテート、メチルエチルケトン、γ-ブチロラクトン(以下、「GBL」)、γ-バレロラクトン、N-メチルピロリドン(以下、「NMP」)、o-ジクロロベンゼン、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートが挙げられる。
【0122】
本発明の顔料組成物は、画素分割層の分光反射率スペクトルを調整する目的で、さらに、必要に応じて(a)成分、(b)成分、(c)成分以外の、その他の顔料を含有していてもよい。その他の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ13、36、43、60、61、62、64、71、72などの有機橙色顔料、C.I.ピグメントレッド122、123、149、178、177、179、180、189、190、202、209、254、255、264などの有機赤色顔料、C.I.ピグメントブルー16、25、56、57、60、61、64、65、66、75、79、80などの有機青色顔料、C.I.ピグメントバイオレット19、29、32などの有機紫色顔料が挙げられる。ここでいうC.I.は、カラーインデックスを意味する。
【0123】
本発明の顔料組成物の性状は25℃/大気圧下においてウェットケーキ状であってもよく、微粉状または顆粒状であってもよい。本発明の顔料組成物は固形分70~100質量%であり、後述する顔料分散液の製造時において粒度分布を制御しやすくする上で、固形分90~100質量%であることが好ましい。10.0gの顔料組成物を大気圧下、120℃2時間加熱した後の残分の質量(g)を測定し、加熱前の顔料組成物の質量10.0で除した値に100を乗じ、小数点第一位を四捨五入した値を顔料組成物の固形分(質量%)とみなすことができる。
【0124】
本発明の顔料組成物の平均一次粒子径は、ハーフトーン加工性を向上する上で10nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましい。同観点から、100nm以下が好ましく、80nm以下がより好ましい。ここでいう平均一次粒子径とは、画像解析式粒度分布測定装置を用いた粒度測定法により算出した、一次粒子径の数平均値をいう。画像の撮影には、TEMを用いることができ、倍率50,000倍の条件で一次粒子が100個以上撮影された画像から無作為に選択した50個の一次粒子を解析して平均一次粒子径を算出することができる。真球状でない場合は、その長径の平均値の小数点第一位を四捨五入した値を一次粒子径(nm)とする。画像解析には、画像解析式粒度分布ソフトウェアMac-View(マウンテック社製;JIS8827-1準拠;粒子径解析-画像解析法)を用いることができる。
【0125】
本発明の顔料組成物の平均アスペクト比は、ハーフトーン加工性を向上する上で1.0以上が好ましく、1.3以上がより好ましい。同観点から、3.0以下が好ましく、2.5以下がより好ましい。ここでいう平均アスペクト比とは、平均一次粒子径を算出するために無作為に選択した前述の50個の一次粒子それぞれについて、同TEM画像で観測された一次粒子の長径および短径を測長し、長径を短径で除した値の平均値を算出して小数点第二位を四捨五入した値を意味する。
【0126】
本発明の(a)成分、(b)成分、(c)成分および(d)成分に属する化合物の化学構造は、本発明の顔料組成物を分析試料として、飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)、飛行時間質量分析(TOF-MS)、液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)、蛍光X線分析(XRF)、高周波誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)、粉末X線回析などの公知の分析手法を組み合わせて解析することができる。(a)成分、(b)成分および(c)成分の一次粒子径分布のうち、特に微粉に相当する成分は結晶性が低く、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドンなどのアミド系有機溶剤に対して僅かに溶解する場合があり、顔料組成物をアミド系有機溶剤中に添加、攪拌したスラリーを遠心分離装置にかけ、サンプリングした上澄み液を分析試料として用いてもよい。
【0127】
(a)成分と(b)成分が接する部位、および(c)成分と(b)成分が接する部位は、光学顕微鏡による各成分の色相の違いや、前述のTOF-SIMSの他、顕微-赤外分光光度計(μ-FT-IR)を用いて検知することができる。さらに透過型電子顕微鏡(TEM)を組み合わせてもよい。微小部をTEMで観測する場合、機械的せん断をかけずに顔料組成物を2液硬化型透明樹脂などに埋め込んだ試料を作成し、集束イオンビーム加工装置(FIB)を用いて膜厚100nmの薄片に加工したものを観測試料として断面を観測する。TEM-EDX(エネルギー分散型X線分光法)による元素マッピングを用いてもよい。
【0128】
本発明の顔料組成物の製造方法は特に限定されないが、例えば、以下のソルベントソルトミリング法を好ましく適用できる。ソルベントソルトミリング法により、(a)成分の高次凝集体中、または(a)成分および(c)成分の高次凝集体中に、巨視的に観て、(b)成分の一次粒子および/または二次粒子を偏在無く均一に組み込ませることができ、(b)成分が微量であっても、端部の非点灯を抑制する効果を高めることができる。
【0129】
(a)成分、(b)成分、水溶性摩砕材および水溶性有機溶剤を混合し、湿式混練機を用いて好ましくは20~100℃下、より好ましくは40~90℃下、5~10時間高粘度ペースト状で摩砕処理を行うことにより、(b)成分の少なくとも一部を(a)成分の表面の少なくとも一部に吸着させながら、(a)成分および(b)成分の平均一次粒子径を小さくする。さらに、(c)成分および/または(d)樹脂を共存させて摩砕処理を行ってもよい。水溶性摩砕材の硬度を高く維持して微細化度を向上する上で、水溶性摩砕材、(a)成分、(b)成分および(c)成分は、摩砕処理を行う前に、予め100~250℃で30分間~2時間の加熱処理を行い、水分率を低くしておくことが望ましい。次いで、多量の水、好ましくは温水に投入して1~3時間攪拌し、顔料スラリーを得る。水溶性摩砕材、水溶性有機溶剤を水洗、除去した濾物を乾燥させ、1.0μm以上の領域の測定精度に優れたレーザー回折式粒度分布測定において、体積を基準とした粉体粒度D90(以下、「粉体粒度」という場合がある。)が、3.0~20.0μmとなるように乾式粉砕処理により微粒化し、本発明の顔料組成物を得る。
D90は累積粒度分布曲線において、小さい粒子径の側を基点(0%)として、大きい粒子径の側へ累積して90%に相当する粒子径(nm)を意味する。(b)成分が-SO3H基を有する場合、顔料組成物中に残存した水分によってプロトンが解離し、-SO3
-基となっていてもよい。
【0130】
湿式混練機としては、例えば、ニーダー((株)井上製作所製)を用いることができる。水溶性摩砕材としては、平均一次粒子径0.1~50.0μmの微粒状の水溶性無機塩が好ましく、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウムまたは硫酸カリウム(以上、いずれも赤穂化成(株)製)が挙げられる。水溶性有機溶剤としてはグリコール系溶剤が好ましい。グリコール系溶剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールが挙げられる。
【0131】
他の方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
(a)成分、水溶性摩砕材および水溶性有機溶剤を混合し、湿式混練機を用いて好ましくは20~100℃下、より好ましくは40~90℃下、5~10時間高粘度ペースト状で摩砕処理を行い、(a)成分の平均一次粒子径を小さくする。さらに、(c)成分および/または(d)樹脂を共存させて摩砕処理を行ってもよい。次いで、多量の水、好ましくは温水に投入して1~3時間攪拌し、顔料スラリーを得る。(b)成分を強アルカリ水溶液に溶解させた混合液を顔料スラリー中に添加して攪拌し、次いで強酸水溶液を徐々に滴下して中和し、(a)成分の表面の少なくとも一部、または、(a)成分および(c)成分の表面の少なくとも一部を、析出させた(b)成分で被覆する。アルカリ水溶液としては、例えば、5~30質量%水酸化ナトリウム水溶液を用いることができる。強酸水溶液としては、例えば、5~30質量%塩酸水溶液を用いることができる。水溶性摩砕材、水溶性有機溶剤を水洗、除去した濾物を乾燥させ、粉体粒度が3.0~20.0μmとなるように乾式粉砕処理により微粒化し、本発明の顔料組成物を得る。
【0132】
また、前述の、(b)成分を強アルカリ水溶液で溶解させた混合液に替えて、(d)樹脂を強アルカリ水溶液で溶解させた混合液を用い、同じ操作を行うことにより(d)樹脂で被覆する方法もまた好ましく挙げられる。
【0133】
本発明の顔料組成物を製造する別の方法としては、乾式粒子複合化装置“ノビルタ”(登録商標)NOB-130(ホソカワミクロン(株)製)を用いた、(a)成分と(b)成分の複合化工程を含む方法が挙げられる。
【0134】
本発明の第二の態様は、本発明の顔料組成物に加えて、(d)樹脂、(e)有機溶剤、(f)感光剤(以下、「(f)成分」という場合がある。)を含有する感光性組成物である。(d)樹脂および(e)有機溶剤は第一の態様と共通する成分である。
【0135】
第二の態様における(d)樹脂は、本発明の顔料組成物を画素分割層およびスペーサー層中に分散させ、ガラス、平坦化層および/または電極の表面に固定化するためのバインダーとしての機能を奏する。
【0136】
(d)樹脂としては、例えば、アルカリ可溶性ポリイミド前駆体、アルカリ可溶性ポリイミド樹脂、アルカリ可溶性ポリベンゾオキサゾール前駆体、アルカリ可溶性シロキサン樹脂、アルカリ可溶性エポキシアクリレート樹脂、アルカリ可溶性マレイミド樹脂などが挙げられる。ここでいうアルカリ可溶性樹脂とは、カルボキシル基および/または水酸基を有する繰り返し単位を有し、かつ重量平均分子量(Mw)が1000~100000の樹脂を意味する。
【0137】
第二の態様における(e)成分は、本発明の顔料組成物を分散させるための分散媒であり、かつ感光性組成物の塗布性を高める効果を奏する。(e)成分としては、第一の態様と共通の溶剤を好ましく用いることができる。
【0138】
本発明の感光性組成物は、ネガ型感光性またはポジ型感光性のいずれか一方を有する。透過部および遮蔽部を有する露光マスクを介して、少なくとも近紫外線を含む露光光をパターン露光し、露光部の膜のアルカリ溶解性を、未露光部の膜のアルカリ溶解性と比べて相対的に低くすることで、アルカリ現像液により未露光部の膜を除去してパターン形成する、ネガ型感光性を有していてもよい。または、透過部および遮蔽部を有する露光マスクを介して、少なくとも近紫外線を含む露光光をパターン露光し、露光部の膜のアルカリ溶解性を、未露光部の膜のアルカリ溶解性と比べて相対的に高くすることで、アルカリ現像液により露光部の膜を除去してパターン形成する、ポジ型感光性を有していてもよい。
【0139】
本発明の感光性組成物がネガ型感光性を有する場合、(f)成分はラジカル重合性基を分子内に2つ以上有する化合物、および光重合開始剤を意味する。両成分は露光光に感光してラジカル重合反応により光硬化して露光部の膜のアルカリ溶解性を低くする効果を奏し、ネガ型のフォトリソグラフィによるパターン形成を可能とする。ラジカル重合性基としては、例えば、ビニル基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基が挙げられる。光重合開始剤としては、例えば、オキシムエステル系光重合開始剤が挙げられる。
【0140】
本発明の感光性組成物がポジ型感光性を有する場合、(f)成分は光酸発生剤を意味する。光酸発生剤は露光光に感光して化学構造の変化により、酸を生じて露光部の膜のアルカリ溶解性を高くする効果を奏し、ポジ型のフォトリソグラフィによるパターン形成を可能とする。生じる酸としては、カルボン酸、スルホン酸が好ましく挙げられる。
【0141】
全透過部、半透過部および遮蔽部を面内に有するハーフトーン露光マスクを用いたハーフトーン加工において、画素分割層に多数配置された開口部の開口幅の面内均一性に優れる点で、(f)成分が光酸発生剤を含有し、ポジ型感光性を有することが好ましい。
すなわち、本発明の感光性組成物は、(f)成分が光酸発生剤を含有し、ポジ型感光性を有する感光性組成物であることが好ましい。
【0142】
光酸発生剤としては、例えば、ナフトキノンジアジド化合物、オキシムスルホネート化合物、イミドスルホネート化合物が挙げられる。中でも、未露光部の膜に優れた溶解抑止効果を発現し、露光部と未露光部のアルカリ溶解速度の差をより大きくすることができ、i線(波長365nm)を含む露光光に対する露光感度に優れる点から、ナフトキノンジアジド化合物が好ましい。
【0143】
ナフトキノンジアジド化合物としては、フェノール性水酸基を分子内に2つ以上有する化合物と1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-4-スルホニルクロリドを反応させて得られる4-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物、フェノール性水酸基を分子内に2つ以上有する化合物と1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホニルクロリドを反応させて得られる5-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物が好ましく挙げられる。
【0144】
(f)成分の具体例としては、5-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物である式(45)で表される化合物が好ましく挙げられる。
【0145】
【0146】
式(45)中、Qは、それぞれ独立に、水素原子、式(46)で表される基を表す。ただし、1分子内において少なくとも1つのQが式(46)で表される基である。
【0147】
【0148】
式(46)中、*は酸素原子との結合部位を表す。
【0149】
(f)成分の市販品としては、i線に感光して酸を発生するナフトキノンジアジド化合物であるPA-28(ダイトーケミックス(株)製)、i線に感光して酸を発生するオキシムスルホネート化合物であるPAG103、PAG203(以上、いずれもBASF社製)、i線に感光して酸を発生するイミドスルホネート化合物であるNIT、NIN、ILP-110(以上、いずれもHeraeus社製)が挙げられる。
【0150】
本発明の感光性組成物は、画素分割層の開口部の開口幅の面内均一性と露光感度を高め、かつ感光性組成物を貯蔵後の露光感度の低下を抑制する上で、特許文献1に記載のペリレン系色素誘導体の群のうち、少なくとも1種を含有させることが好ましい。
【0151】
本発明の感光性組成物は、画素分割層の分光反射率スペクトルを調整する目的で、特許文献1に記載の波長350~780nmの領域において、加熱前は波長350~500nmの領域に極大吸収波長を有さず、加熱により波長350~500nmの領域に極大吸収波長を有する化合物に変換される化合物を含有させても構わない。
【0152】
本発明の感光性組成物を調製する方法としては、例えば、セラミックビーズをベッセルに充填したビーズミルを用いた湿式メディア分散処理により、本発明の顔料組成物、(d)樹脂、および(e)成分を含有する顔料分散液を予め調製し、次いで、(e)成分および(f)成分の混合液に顔料分散液を添加、撹拌し、必要に応じてフィルタ濾過を行う方法が挙げられる。
【0153】
動的光散乱法により測定される、光散乱強度を基準とする感光性組成物中の粒子成分の粒度分布におけるD90(累積90%粒子径)は、貯蔵安定性を向上する上で150nm以上が好ましい。一方で、ハーフトーン加工性を向上する上で、300nm以下が好ましい。
D90は、粒度分布測定試料を測定した値のことをいう。粒度分布測定試料とは、感光性組成物:希釈溶剤=1:99(質量比)となるよう、3回に分けて等分の希釈溶剤を感光性組成物に混合して10分間シェーカー上で攪拌した測定対象物のことをいう。希釈溶剤としては、感光性組成物が含有する(e)成分と同一組成の有機溶剤を用いる。ここでいう粒度分布とは、動的光散乱法の粒度分布測定装置SZ-100((株)堀場製作所製)で測定することができる。D90は累積粒度分布曲線において、小さい粒子径の側を基点(0%)として、大きい粒子径の側へ累積して90%に相当する粒子径(nm)を意味する。
【0154】
本発明の第三の態様は、画素分割層およびスペーサー層を具備する有機EL表示装置であって、該画素分割層および該スペーサー層が、本発明の感光性組成物の硬化物を含有する有機EL表示装置である。ここでいう感光性組成物の硬化物とは、感光性組成物を大気圧下、実温200℃以上400℃以下の温度で10分間以上加熱する工程を経て得られたものを意味する。本発明の技術的効果を損なわない範疇で、その他成分を含有しても構わない。その他の成分としては、例えば、吸着水が挙げられる。その他成分の合計量は、画素分割層およびスペーサー層100.0000質量部中、1.0000質量部以下が好ましい。
【0155】
画素分割層の膜厚1.0μmあたりの光学濃度(Optical Density)は、外光反射を抑制して表示装置としての価値を高める上で0.7以上が好ましい。ハーフトーン加工性の観点から、1.3以下が好ましい。
【0156】
光学濃度は、透明基板上に画素分割層を形成し、光学濃度計X-Rite 361T(X-Rite社製)を用いて測定することができる。光学濃度が高いほど遮光性が高いことを示す。透明基材としては、透明ガラス基板である「テンパックス(AGCテクノグラス(株)製)」を用いることができる。
【0157】
本発明の有機EL表示装置は、ハーフトーン加工により一括形成された画素分割層およびスペーサー層の形成膜厚が厚い場合であっても、画素分割層およびスペーサー層形成時における基板の端部に配置された発光画素の非点灯が抑制された有利な効果を奏する。また、前述の通りハーフトーン加工による一括形成により、経済的に有利であるという特徴をも有する。実施形態としては、例えば、基板、第一電極、画素分割層、スペーサー層、発光画素および第二電極を具備する有機EL表示装置が挙げられる。さらに、平坦化層を有していてもよい。より具体的には、特許文献1の
図2で示された有機EL表示装置の構成が挙げられる。
【0158】
画素分割層およびスペーサー層を一括形成する方法としては、感光性組成物を塗布して塗布膜を得る塗布工程と、塗布膜を加熱してプリベーク膜を得るプリベーク工程と、ハーフトーン露光マスクを介して少なくとも近紫外線を含む露光光をパターン露光して露光部、半露光部および未露光部とを面内に有する露光膜を得る露光工程と、アルカリ現像液を用いて現像して現像膜を得る現像工程と、加熱により熱硬化させて硬化膜を得るキュア工程とを含む方法が好ましい。
【0159】
塗布工程で用いる塗布装置としては薄膜塗布性に優れる点で、スピンコーターまたはスリットコーターを好ましく用いることができる。塗布後はピンギャッププリベークあるいはコンタクトプリベークを行ってもよい。
【0160】
プリベーク工程におけるプリベーク温度は50~150℃が好ましく、プリベーク時間は30秒間~5分間が好ましい。プリベーク膜の膜厚は5.0~10.0μmが好ましい。
【0161】
露光工程で用いる露光装置としては、例えば、ステッパー、ミラープロジェクションマスクアライナー(MPA)、パラレルライトマスクアライナー(PLA)が挙げられる。露光時に照射する近紫外線としては、超高圧水銀灯のj線(波長313nm)、i線(波長365nm)が好ましく、さらにh線(波長405nm)、またはh線およびg線(波長436nm)を含む混合線がより好ましい。ハーフトーン露光マスクは、全透過部、半透過部および遮蔽部を基板面内に有し、全透過部における露光量を100%、遮蔽部の露光量を0%としたとき、半透過部における露光量が10~50%となるように設計されたマスクを用いることが好ましい。露光膜における露光部とは露光マスクの全透過部を介してパターン露光された部位を意味し、半露光部とは露光マスクの半透過部を介してパターン露光された部位を意味し、未露光部とは露光マスクの遮蔽部により露光されなかった部位を意味する。同一面内における露光量の違いに起因する、露光部、半露光部および未露光部のアルカリ現像液に対する時間あたりの溶解速度の違いが、ハーフトーン加工による画素分割層とスペーサー層の一括形成を可能とする。
【0162】
現像工程における現像方式としては、例えば、シャワー、ディッピング、パドルなどの方式が挙げられ、露光膜を10秒~3分間浸漬する方法が挙げられる。ハーフトーン加工性を高める上でパドル方式が好ましい。アルカリ現像液としては、0.4~2.5質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(以下、「TMAH」)が挙げられ、2.38質量%TMAHが好ましい。脱イオン水のシャワーによる洗浄処理、エアー噴射による水切り処理を加えても構わない。
【0163】
キュア工程においては、加熱により現像膜を熱硬化させるとともに、膜中に残存した現像液や水分などを揮散させて硬化膜を得る。加熱装置としては、例えば、熱風オーブン、IRオーブンなどが挙げられ、加熱雰囲気は窒素または空気下が挙げられる。加熱温度は大気圧下200~350℃が好ましく、220~280℃がより好ましい。
【実施例0164】
以下に本発明を、その実施例および比較例を挙げて詳細に説明するが、本発明の態様はこれらに限定されるものではない。
まず、各実施例および比較例における評価方法について説明する。
【0165】
<必要最小露光量の測定(露光感度)>
縦150mm/横150mmの無アルカリガラス基板の表面に、スパッタ法により銀合金(99.00質量%の銀と、1.00質量%の銅からなる合金)を全面成膜した。さらに、スパッタ法によりITO(インジウム-錫酸化物)膜を全面成膜し、無アルカリガラス基板の表面の全面に銀合金膜/ITO膜を具備するガラス基板を得た。
【0166】
実施例1~15、および比較例1~5で得られたポジ型感光性組成物1~20を、スピンコーターを用いて、後述するキュア工程後に得られる画素分割層の膜厚が2.9~3.1μmであり、かつスペーサー層の膜厚が2.4μm(すなわち、画素分割層とスペーサー層の膜厚の合計が5.3~5.5μm)となるように回転数を調節して、銀合金膜/ITO膜を具備するガラス基板のITO表面にそれぞれ塗布し、塗布膜を得た。さらに、ホットプレートを用いて、塗布膜を大気圧下110℃で120秒間プリベークして、プリベーク膜を得た。ポジ型ハーフトーン露光マスク(縦:30.0μm、横:30.0μmの正方形の全透過部が220個配列し、全透過部における露光量を100%、遮蔽部の露光量を0%としたとき、半透過部における露光量が15%となるように設計されたマスク)を介して、両面アライメント片面露光装置を用いて、40~200(mJ/cm2:i線換算値)の範囲内で10mJごとに段階的に露光量を変えて、超高圧水銀灯のg、h、i混合線をプリベーク膜にパターン露光し、露光部、半露光部および未露光部を面内に有する露光膜を得た。なお、パターン露光はポジ型ハーフトーン露光マスクをプリベーク膜の表面に接触させて行った。
【0167】
次いで、現像工程として、フォトリソグラフィ用小型現像装置(AD-1200;滝沢産業(株)製)と、アルカリ現像液である2.38質量%TMAHとを用いてパドル方式で現像した。ここでいうパドル方式とは、露光膜の表面にアルカリ現像液を10秒間シャワー塗布した後、所定の現像時間に達するまで静置させて現像する方式のことをいう。なお、現像時間は60~120秒の範囲内で、現像工程における膜減り(μm)が0.8μmとなる時間とした。ここでいう現像工程における膜減りとは、プリベーク膜の膜厚から、現像後における画素分割層の膜厚とスペーサー層の膜厚の合計を差し引いた値を意味する。さらに、脱イオン水を用いて30秒間シャワー方式でリンスした後に200rpmで30秒間の条件で基板を空回しして乾燥させ、現像膜を得た。
【0168】
次いで、キュア工程として、高温イナートガスオーブン(INH-9CD-S;光洋サーモシステム(株)製)を用いて現像膜を空気下250℃で1時間加熱して、画素分割層およびスペーサー層を具備する必要最小露光量評価用基板を得た。参考として、実施例1で得られた必要最小露光量評価用基板の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した撮像を
図3に示す。
図3中、5は画素分割層であり、6はスペーサー層である。
【0169】
FPD検査顕微鏡(MX-61L;オリンパス(株)製)を用いて画素分割層の開口部を観察し、各露光量の領域における開口部10箇所の開口部の平均値が30.0±0.1μmの範囲内となるように開口した露光量の最小値を、必要最小露光量(mJ/cm2:i線換算値)とした。
【0170】
(1)硬化膜の遮光性(OD/μm)の評価
実施例1~15、および比較例1~5で得られた膜厚3.0μmの硬化膜を形成した遮光性評価用基板について、光学濃度計(X-Rite社製;X-Rite 361T)を用いて、膜面側から面内3箇所において全光学濃度(Total OD値)を測定した値を平均した平均値を算出し、さらに3.0で除した値の小数点第二位を四捨五入した値を、膜厚1.0μmあたりのOD値、すなわち硬化膜の遮光性(OD/μm)とした。遮光性が高いほど優れた硬化膜であるとの基準で評価を行った。硬化膜を形成していないテンパックスのOD値を別途測定した結果、0.00であったため、遮光性評価用基板の全光学濃度を、硬化膜の全光学濃度とみなした。硬化膜の膜厚は、触針式膜厚測定装置(東京精密(株);サーフコム)を用いて面内3箇所において測定した値を平均した平均値を算出し、小数点第二位を四捨五入した値とした。
【0171】
(2)有機EL表示装置の評価(非点灯画素の発生個数)
実施例1~15、および比較例1~5で得られた有機EL表示装置の中央部と端部をそれぞれ電圧4Vで駆動させ、中央部に配置された発光画素100箇所と、端部に配置された発光画素100箇所それぞれについて、倍率100倍でモニター上に拡大表示させて観察し、発光が認められない画素、すなわち非点灯画素の発生個数を数え、発生個数が少ないほど優れた有機EL表示装置であると評価した。なお、1つの発光画素内の面積100%中、非発光の部位が50%を超えた発光画素は非点灯画素とみなして評価した。
以下の基準に基づいて評価し、AAおよびA~Cを合格、D~Eを不合格とした。中央部に配置された発光画素と、端部に配置された発光画素の両方が合格である場合のみ、有機EL表示装置としての判定を合格とした。いずれか一方が不合格である場合、有機EL表示装置としての判定を不合格とした。なお、全ての実施例および比較例においてダークスポット(発光画素内で不均一に配列した粒状の局所的な非発光部位)の発生は観られなかったため、非点灯画素の発生個数を正確に数えることが可能であった。
AA:非点灯画素が全く観られない。
A:非点灯画素が1~2箇所観られる。
B:非点灯画素が3~4箇所観られる。
C:非点灯画素が5~9箇所観られる。
D:非点灯画素が10~14箇所観られる。
E:非点灯画素が15箇所以上観られる。
【0172】
(合成例1:トリフェノジオキサジン顔料Bの合成)
1500.00gの無水酢酸(東京化成工業(株)製)をフラスコに入れ、500.00g(2.42mol)の2,5-ジアミノ-3,6-ジクロロ-1,4-ベンゾキノン(東京化成工業(株)製)および20.00gのベンゼンスルホン酸(東京化成工業(株)製)を添加し、液温30℃に維持して10時間攪拌して反応させて、式(47)で表される化合物を得て、濾別した。
【0173】
【0174】
次いで、5365.05gの1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(東京化成工業(株)製)をフラスコに入れ、684.04g(2.35mol)の式(47)で表される中間体と、
1037.73g(4.94mol)の3-アミノ-9-エチルカルバゾール(東京化成工業(株)製)を添加し、液温30℃で30分間攪拌した。さらに、5.00gのトリエチルアミンを添加して液温40℃で7時間攪拌し、トリフェノジオキサジン前駆体を生成させた。さらに、酸化剤として190.22g(1.00mol)のp-トルエンスルホン酸一水和物(東京化成工業(株)製)を添加し、液温180℃に昇温して6時間攪拌を維持してトリフェノジオキサジン前駆体の閉環を行い、顔料クルードを含むスラリーを得て、50℃まで冷却して濾別してウェットケーキを得た。ウェットケーキを1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンで1回洗浄し、エタノールで2回洗浄した後に水洗、濾過を3回繰り返し行い、濾物を回収した。100℃の真空乾燥機で48時間乾燥させた後、ナノジェットマイザー((株)アイシンナノテクノロジーズ製)を用いて乾式粉砕処理を行い、式(48)で表されるトリフェノジオキサジン顔料Bを得た。
【0175】
【0176】
(合成例2:トリフェノジオキサジン顔料Cの合成)
1500.00gのペンタン酸無水物(東京化成工業(株)製)をフラスコに入れ、505.73g(2.42mol)の2,5-ジクロロ-3,6-ジヒドロキシ-p-ベンゾキノン(東京化成工業(株)製)および20.00gのベンゼンスルホン酸(東京化成工業(株)製)を添加し、液温30℃に維持して10時間攪拌して反応させて、式(49)で表される化合物を得て、濾別した。
【0177】
【0178】
次いで、5365.05gの1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンをフラスコに入れ、886.44g(2.35mol)の式(49)で表される中間体と、1037.73g(4.94mol)の3-アミノ-9-エチルカルバゾールを添加し、液温30℃で30分間攪拌した。さらに、5.00gのトリエチルアミンを添加して液温40℃で7時間攪拌し、トリフェノジオキサジン前駆体を生成させた。さらに、酸化剤として190.22g(1.00mol)のp-トルエンスルホン酸一水和物を添加し、液温を180℃に昇温して6時間攪拌を維持してトリフェノジオキサジン前駆体の閉環を行い、顔料クルードを含むスラリーを得て、50℃まで冷却して濾別してウェットケーキを得た。ウェットケーキを1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンで1回洗浄し、エタノールで2回洗浄した後に水洗、濾過を3回繰り返し行い、濾物を回収した。100℃の真空乾燥機で48時間乾燥させた後、ナノジェットマイザー((株)アイシンナノテクノロジーズ製)を用いて乾式粉砕処理を行い、式(50)で表されるトリフェノジオキサジン顔料Cを得た。
【0179】
【0180】
(合成例3:色素Bの合成)
特許文献1の合成例9に基づく以下の方法で、ペリレン系色素誘導体である色素Bを合成した。
【0181】
50.00gのC.I.ピグメントレッド178を、500.00gの80質量%濃硫酸に溶解させて加熱し、液温70℃で6時間攪拌を行い、スルホン化反応を進行させた。次いで、5kgの氷水の中に投入して析出物を含むスラリーを得て濾過を行った。次いで、濾物をエタノールで洗浄した後に、ICで定量される硫酸イオンの残存量が50質量ppmを下回るまで繰り返し水洗を行い、減圧下80℃で24時間乾燥させた。さらに、ナノジェットマイザーを用いた乾式粉砕処理により微粒化し、ステンレス製ふるい濾過器(開口径50μm)にかけて粗大分を除去し、式(51)で表される化合物:式(52)で表される化合物:式(53)で表される化合物=質量比率25:65:10の混合物である、色素Bを得た。色素Bの構造はLC-MSおよびTOF-SIMSで分析した。
【0182】
【0183】
(合成例4:ポリイミド前駆体Bの合成)
特許文献1の合成例1~2に基づく以下の方法で、ポリイミド前駆体Bを合成した。
【0184】
18.3g(0.05mol)の2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンを、100mLのアセトン、17.4g(0.3mol)のプロピレンオキシドに溶解させ、-15℃に冷却した。ここに0.11mol(20.4g)の3-ニトロベンゾイルクロリドを、100mLのアセトンに溶解させた溶液を滴下した。滴下終了後、-15℃で4時間反応させて、その後室温に戻した。析出した白色固体を濾別し、50℃で真空乾燥した。固体30gを300mLのステンレスオートクレーブに入れ、メチルセロソルブ250mLに分散させ、5%パラジウム-炭素を2g加えた。ここに水素を風船で導入して、還元反応を室温で行なった。約2時間後、風船がこれ以上しぼまないことを確認して反応を終了させた。反応終了後、濾過して触媒であるパラジウム化合物を除き、ロータリーエバポレーターで濃縮し、ヒドロキシル基含有ジアミン化合物Aを得た。
【0185】
乾燥窒素気流下、31.0g(0.10mol)の3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物を、500gのNMPに溶解させた。45.35g(0.075mol)のヒドロキシル基含有ジアミン化合物Aと、1.24g(0.005mol)の1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンを、50gのNMPとともに加えて、20℃で1時間反応させ、次いで50℃で2時間反応させた。末端封止剤として、4.36g(0.04mol)の4-アミノフェノールを、5gのNMPとともに加え、50℃で2時間反応させた。その後、28.6g(0.24mol)のN,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタールを滴下した。投入後、50℃で3時間撹拌した。撹拌終了後、溶液を室温まで冷却した後、溶液を3Lの水に投入して白色沈殿を得た。以上の操作を5回繰り返して得られた白色沈殿を濾物として集め、水で5回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で24時間乾燥させ、ポリイミド前駆体Bを得た。ポリイミド前駆体Bの重量平均分子量(Mw)は25,000であった。
【0186】
(合成例5:キノンジアジド化合物aの合成)
特許文献1の合成例6に基づく以下の方法で、キノンジアジド化合物aを合成した。
【0187】
乾燥窒素気流下、21.22g(0.05mol)のTrisP-PA(本州化学工業(株)製)と、36.27g(0.135mol)の5-ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリドを、450gの1,4-ジオキサンに溶解させ、室温にした。ここに、15.18gのトリエチルアミンを、50gの1,4-ジオキサンに溶解させた液を、系内が35℃以下となるように滴下した。滴下後30℃で2時間攪拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、濾液を水に投入した。その後濾過を行い、析出した沈殿物を集めた。この沈殿物を真空乾燥機で乾燥させ、式(54)で表されるキノンジアジド化合物aを得た。
【0188】
【0189】
式(54)中、*は酸素原子との結合部位を表す。
【0190】
(合成例6:キノンジアジド化合物bの合成)
特許文献1の合成例7に基づく以下の方法で、キノンジアジド化合物bを合成した。
【0191】
36.27g(0.135mol)の5-ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリドに替えて、36.27g(0.135mol)の4-ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリドを用いた以外は合成例5と同じ方法で合成を行い、式(55)で表されるキノンジアジド化合物bを得た。
【0192】
【0193】
式(55)中、*は酸素原子との結合部位を表す。
【0194】
(合成例7:フタロシアニン誘導体Aの合成)
50.00gの無金属フタロシアニン(昇華精製品、Sigma-Aldrich社製)を、500.00gの10質量%発煙硫酸に添加して液温20℃で1時間攪拌後、液温40℃で8時間攪拌し、スルホン化反応を進行させた。次いで、5kgの氷水の中に投入して析出物を含むスラリーを得て濾過を行った。次いで、濾物をエタノールで洗浄した後、ICで定量される硫酸イオンの残存量が50質量ppmを下回るまで繰り返し水洗を行い、減圧下80℃で24時間乾燥させた。さらに、ナノジェットマイザーを用いた乾式粉砕処理により微粒化し、式(30)で表される化合物:式(31)で表される化合物=質量比率87:13の混合物である、フタロシアニン誘導体Aを得た。フタロシアニン誘導体Aの構造はLC-MSおよびTOF-SIMSで分析した。ICP-MSでCu原子を定量した結果、検出下限未満(1質量ppm未満)であった。
【0195】
(合成例8:フタロシアニン誘導体Bの合成)
50.00gのバナジルフタロシアニン(昇華精製品、Sigma-Aldrich社製)を、500.00gの30質量%発煙硫酸に添加して液温60℃で6時間攪拌し、スルホン化反応を進行させた。以降は合成例7と同じ操作を行い、式(56)で表される化合物:式(57)で表される化合物=質量比率45:55の混合物である、フタロシアニン誘導体Bを得た。フタロシアニン誘導体Bの構造はLC-MS、TOF-SIMSおよびXRFで分析した。ICP-MSでCu原子を定量した結果、検出下限未満(1質量ppm未満)であった。
【0196】
【0197】
(合成例9:フタロシアニン誘導体Cの合成)
バナジルフタロシアニンに替えて、亜鉛フタロシアニン(昇華精製品、Sigma-Aldrich社製)を用いた以外は合成例8と同じ方法で、式(58)で表される化合物:式(59)で表される化合物=質量比率54:46の混合物である、フタロシアニン誘導体Cを得た。フタロシアニン誘導体Cの構造はLC-MS、TOF-SIMSおよびXRFで分析した。ICP-MSでCu原子を定量した結果、検出下限未満(1質量ppm未満)であった。
【0198】
【0199】
(合成例10:フタロシアニン誘導体Dの合成)
100.00gの亜鉛フタロシアニン(昇華精製品、Sigma-Aldrich社製)に、203.70gの臭素、333.33gの塩化スルフリル、51.85gの塩化ナトリウム、および388.89gの塩化アルミニウムを混合して、140℃で15時間加熱した。次いで、10kgの水に投入して1時間攪拌し、濾過、水洗を行い、エタノールで洗浄してウェットケーキを得た。5回繰り返し水洗と濾過を行って濾別し、80℃減圧下で48時間乾燥させ、ナノジェットマイザーを用いた乾式粉砕処理により微粒化し、式(37)で表されるフタロシアニン誘導体Dを得た。フタロシアニン誘導体Dの構造はTOF-SIMSおよびXRFで分析した。ICP-MSでCu原子を定量した結果、検出下限未満(1質量ppm未満)であった。
【0200】
(合成例11:フタロシアニン誘導体Eの合成)
100.00gの亜鉛フタロシアニン(昇華精製品、Sigma-Aldrich社製)に、767.00gの臭素、303.00gの塩化スルフリル、50.000gの塩化ナトリウム、および363.00gの塩化アルミニウムを混合して、140℃で15時間加熱した。以降の工程は合成例10と同じ方法で、式(60)で表されるフタロシアニン誘導体Eを得た。フタロシアニン誘導体Eの構造はTOF-SIMSおよびXRFで分析した。ICP-MSでCu原子を定量した結果、検出下限未満(1質量ppm未満)であった。
【0201】
【0202】
(合成例12:フタロシアニン誘導体Fの合成)
4660.80gのクロロスルホン酸と、1070.73gの塩化チオニルを混合し、576.40gのチタニルフタロシアニン(昇華精製品、東京化成工業(株)製)を添加して溶解させる。この溶液を液温20℃で20時間攪拌し、3kgの氷水に投入して1時間攪拌し、濾過、水洗を行い、ウェットケーキを得た。1kgの氷水に、865.95gの3-アミノベンゼンスルホン酸、および666.67gの30質量%水酸化ナトリウム水溶液を添加し、さらにウェットケーキを全量投入し、液温5℃で3時間攪拌し、さらに液温50℃に昇温して3時間攪拌後、20℃に冷却してpH2となるまで10質量%塩酸水溶液を徐々に滴下した。3回繰り返し水洗と濾過を行って濾別し、80℃減圧下で48時間乾燥させ、ナノジェットマイザーを用いた乾式粉砕処理により微粒化し、式(35)で表されるフタロシアニン誘導体Fを得た。フタロシアニン誘導体Fの構造はLC-MS、TOF-SIMSおよびXRFで分析した。ICP-MSでCu原子を定量した結果、検出下限未満(1質量ppm未満)であった。
【0203】
(合成例13:フタロシアニン誘導体Gの合成)
チタニルフタロシアニン(昇華精製品、東京化成工業(株)製)に替えて、514.55gの無金属フタロシアニン(昇華精製品、Sigma-Aldrich社製)を用いたことと、3-アミノベンゼンスルホン酸に替えて、445.45gの3-アミノプロピオン酸を用いたこと以外は合成例12と同じ方法で、式(32)で表される化合物:式(33)で表される化合物=質量比率95:5の混合物である、フタロシアニン誘導体Gを得た。フタロシアニン誘導体Gの構造はLC-MSおよびTOF-SIMSで分析した。ICP-MSでCu原子を定量した結果、検出下限未満(1質量ppm未満)であった。
【0204】
(合成例14:フタロシアニン誘導体Hの合成)
無金属フタロシアニン(昇華精製品、Sigma-Aldrich社製)に替えて、“Heliogen Blue”(登録商標)D7490(BASF社製:C.I.ピグメントブルー16)を用いた以外は合成例7と同じ方法で、式(30)で表される化合物:式(31)で表される化合物=質量比率81:19の混合物である、フタロシアニン誘導体Hを得た。フタロシアニン誘導体Hの構造はLC-MSおよびTOF-SIMSで分析した。ICP-MSでCu原子を定量した結果、24質量ppmであった。
【0205】
(合成例15:フタロシアニン誘導体Iの合成)
無金属フタロシアニン(昇華精製品、Sigma-Aldrich社製)に替えて、CYANINE BLUE TS8135(山陽色素(株)製:C.I.ピグメントブルー16)を用いた以外は合成例7と同じ方法で、式(30)で表される化合物:式(31)で表される化合物=質量比率80:20の混合物である、フタロシアニン誘導体Iを得た。フタロシアニン誘導体Iの構造はLC-MSおよびTOF-SIMSで分析した。ICP-MSでCu原子を定量した結果、5029質量ppmであった。
【0206】
(合成例16:フタロシアニン誘導体Jの合成)
バナジルフタロシアニンに替えて、銅フタロシアニン(昇華精製品、東京化成工業(株)製)を用いた以外は合成例8と同じ方法で、式(61)で表される化合物:式(62)で表される化合物=質量比率39:61の混合物である、フタロシアニン誘導体Jを得た。フタロシアニン誘導体Jの構造はLC-MS、TOF-SIMSおよびXRFで分析した。ICP-MSでCu原子を定量した結果、90145質量ppmであった。
【0207】
【0208】
(実施例1)
3000.00gの“Cromophtal”(登録商標)Violet D5700(BASF社製:C.I.ピグメントバイオレット37)を、大気圧下/空気下200℃のオーブンで1時間加熱し、式(10)で表されるトリフェノジオキサジン顔料Aを得た。
【0209】
3000.00gの“Spectrasense”(登録商標)Black K0087(BASF社製)を、大気圧下/空気下250℃のオーブンで1時間加熱し、式(41)で表される化合物および式(42)で表される化合物の異性体混合物である、ペリレン顔料Aを得た。
【0210】
次いで、ソルベントソルトミリング法により顔料組成物1を調製した。
(a)成分である225.00gのトリフェノジオキサジン顔料Aと、(b)成分である25.00gのフタロシアニン誘導体Aと、(c)成分である250.00gのペリレン顔料Aと、2.5kgの水溶性摩砕材(230℃1時間の加熱処理をして予め水分を0.1質量%とした平均一次粒子径0.5μmの塩化ナトリウム粒子)と、250.00gのジプロピレングリコールとを混合して、ステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所製)に仕込み、90℃で8時間混練し、暗紫色の混練物を得た。この混練物を5Lの温水に投入し、70℃に維持しながら1時間攪拌してスラリー状とし、脱イオン水を用いた水洗および濾過を3回繰り返して水溶性摩砕材およびジプロピレングリコールを除去した。さらに、大気圧下/空気下100℃のオーブンで6時間乾燥させた後にボールミルによる乾式粉砕処理を行い、平均一次粒子径29nmである、顔料組成物1を調製した。各原料の配合質量と、固形分、ならびにICP-MSを用いたCu原子の定量結果を表1に示す。
【0211】
【0212】
次いで、以下の方法で、顔料組成物1を用いて、顔料分散液1を調製した。
【0213】
(e)成分である900.00gの混合溶剤(PGME:乳酸エチル:γ-ブチロラクトン=質量比率50:40:10)中に、(d)樹脂である68.38gのポリイミド前駆体Bを添加し、30分間攪拌して溶解させた。さらに、色素型分散剤である4.59gの色素Bを添加し、30分間攪拌した後に、顔料組成物1を添加して30分間攪拌し、予備攪拌液を得た。次いで、0.4mmφのジルコニアビーズである“トレセラム(登録商標)”(東レ(株)製)が充填率75体積%でベッセル内に充填された縦型ビーズミル“ウルトラアペックスミル アドバンス(登録商標)”;((株)広島メタル&マシナリー製)に予備攪拌液を送液し、循環方式で周速10m/sで1時間の湿式メディア分散処理を行った。次いで、0.1mmφのジルコニアビーズである“トレセラム(登録商標)”(東レ(株)製)が充填率75体積%でベッセル内に充填された縦型ビーズミルに送液し、循環方式で周速8m/sで4時間の湿式メディア分散処理を行い、顔料分散液を得た。口径0.8μmの濾過フィルタで第一の濾過を行い、さらに口径0.2μmの濾過フィルタで第二の濾過を行い、顔料分散液1を調製した。濾過前後で固形分の変化は観られなかった。各原料の配合質量を表2に示す。
【0214】
【0215】
次いで、以下の方法で、顔料分散液1を用いて、ポジ型感光性組成物1を調製した。
【0216】
黄色灯下、(e)成分である9.14gの混合溶剤(PGME:乳酸エチル:γ-ブチロラクトン=質量比率50:40:10)中に、0.48gのポリイミド前駆体Bと、(f)成分である0.57gのキノンジアジド化合物aと、0.12gのキノンジアジド化合物bと、0.54gの4,4’,4”-トリヒドロキシトリフェニルメタンと、熱架橋剤である0.42gのHMOM-TPHAP(本州化学工業(株)製)と、レベリング剤であるBYK-333(ビックケミージャパン(株)製)の固形分5質量%PGME溶液を0.04g添加し、30分間攪拌して溶解させた。さらに、38.70gの顔料分散液1を添加し、30分間攪拌して、固形分12質量%のポジ型感光性組成物1を調製した。各原料の配合質量を表3に示す。
【0217】
【0218】
透明ガラス基材である「テンパックス(AGCテクノグラス(株)製)の表面に、ポジ型感光性組成物1を、最終的に得られる硬化膜の厚さが3.0μmとなるように回転数を調節してスピンコーターで塗布して塗布膜を得た。ホットプレート(SCW-636;大日本スクリーン製造(株)製)を用いて塗布膜を大気圧下110℃で120秒間プリベークして、プリベーク膜を得た。両面アライメント片面露光装置を用い、超高圧水銀灯のg,h,i混合線を前述の方法で求めた必要最小露光量の15%に相当する露光量で、プリベーク膜の全面に照射して露光膜を得た。必要最小露光量の測定時と同じ方法で現像、リンスおよび乾燥を行い、ベタ状の現像膜を得た。高温イナートガスオーブン(INH-9CD-S;光洋サーモシステム(株)製)を用いて、現像膜を空気下250℃で1時間加熱して、膜厚3.0μmのベタ状の硬化膜を具備する遮光性評価用基板を得て、前述の方法で硬化膜の遮光性(OD/μm)を評価した。評価結果を表4に示す。
【0219】
【0220】
さらに、以下の方法で、ポジ型感光性組成物1を用いて、画素分割層およびスペーサー層を具備する有機EL表示装置を作製した。
【0221】
図4に、画素分割層およびスペーサー層の形成工程を含む有機EL表示装置の作製工程を示す。
【0222】
縦75mm/横150mmの無アルカリガラス基板の中央部7および端部8の表面に、スパッタ法により銀合金(99.00質量%の銀と、1.00質量%の銅からなる合金)を全面成膜した。アルカリ可溶性ノボラック系ポジ型レジストを用いて、液温30℃の銀合金エッチング液に浸漬してエッチングして、膜厚50nmのパターン状の銀合金膜9を得た。さらに、スパッタ法によりITO膜(インジウム-錫酸化物)を全面成膜した。アルカリ可溶性ノボラック系ポジ型レジストを用いて液温50℃の5質量%シュウ酸水溶液に5分間浸漬し、脱イオン水で2分間シャワー水洗した後にエアーブローで乾燥させ、膜厚10nmの同パターン状のITO膜10を得た。以上の工程により、無アルカリガラス基板の中央部7および端部8の表面に、銀合金膜/ITO膜の積層パターンからなる第一電極を具備する第一電極形成基板を得た。
【0223】
ポジ型感光性組成物1を、スピンコーターを用いて、後述するキュア工程後に得られる画素分割層の膜厚が2.9~3.1μmであり、かつスペーサー層の膜厚が2.4μm(すなわち、画素分割層とスペーサー層の膜厚の合計が5.3~5.5μm)となるように回転数を調節して、第一電極形成基板の表面に塗布し、塗布膜を得た。さらに、ホットプレートを用いて、塗布膜を大気圧下110℃で120秒間プリベークして、プリベーク膜を得た。ポジ型ハーフトーン露光マスク(縦:30.0μm、横:30.0μmの正方形の全透過部が2箇所に100個ずつ配列し、全透過部における露光量を100%、遮蔽部の露光量を0%としたとき、半透過部における露光量が15%となるように設計されたマスク)を介して、両面アライメント片面露光装置を用いて、前述の方法で測定した必要最小露光量で、ポジ型感光性組成物1のプリベーク膜11にパターン露光して露光膜を得た。なお、パターン露光は、ポジ型ハーフトーン露光マスクをプリベーク膜の表面に接触させて行った。次いで、必要最小露光量の測定時と同じ方法で現像、リンスおよび乾燥を行い、パターン状の現像膜を得た。高温イナートガスオーブンを用いて現像膜を空気下250℃で1時間加熱して、第一電極形成基板の中央部7の表面と端部8の表面に、画素分割層およびスペーサー層12を形成した画素分割層形成基板を得た。
【0224】
次に、真空蒸着法により発光層を含む有機EL層13を、画素分割層の開口部の表面に形成するため、真空度1×10-3Pa以下の蒸着条件下で、蒸着源に対して画素分割層形成基板を回転させ、まず、正孔注入層として式(63)で表される化合物(HT-1)を10nm、正孔輸送層として式(64)で表される化合物(HT-2)を50nmの厚さで成膜した。次に、発光層上に、ホスト材料として、式(65)で表される化合物(GH-1)、ドーパント材料として式(66)で表される化合物(GD-1)を40nmの厚さで蒸着した。次いで、電子輸送材料として式(67)で表される化合物(ET-1)と、式(68)で表される化合物(LiQ)を、体積比1:1で40nmの厚さで積層した。
【0225】
【0226】
【0227】
次に、化合物(LiQ)を2nm蒸着した後、銀/マグネシウム合金(体積比10:1)を厚さ150nmとなるように蒸着して第二電極14を形成した。次いで、低湿/窒素雰囲気下、エポキシ樹脂系接着剤を用いて封止層15を形成し、キャップ状ガラス板を接着することにより封止し、中央部および端部にグリーンの発光画素が100個ずつ同一基板の面内に配置された有機EL表示装置を得た。なお、有機EL層13を構成する各層は、前述の画素分割層と比べて非常に薄く、触針式膜厚測定装置では高い測定精度が得られないため、100nm未満の薄膜に好適な水晶発振式膜厚モニターを用いてそれぞれ測定し、面内3点の平均値の少数点第一位を四捨五入して得られた値を膜の厚さとした。作製した有機EL表示装置について、前述の方法で評価した結果を表4に示す。
【0228】
(実施例2~3)
トリフェノジオキサジン顔料Aに替えて、トリフェノジオキサジン顔料Bまたはトリフェノジオキサジン顔料Cをそれぞれ用いた以外は実施例1と同じ方法で顔料組成物2~3を調製した。各原料の配合質量、平均一次粒子径、Cu原子の定量結果を表1に示す。さらに、顔料組成物2~3を用いて、顔料分散液2~3およびポジ型感光性組成物2~3をそれぞれ順に調製し、実施例1と同じ方法で遮光性評価用基板および有機EL表示装置を作製し、硬化膜の遮光性と非点灯画素の発生個数を評価した。各原料の配合質量を表2および表3に、評価結果を表4に示す。
【0229】
(実施例4~5)
フタロシアニン誘導体Aに替えて、フタロシアニン誘導体Hまたはフタロシアニン誘導体Iをそれぞれ用いた以外は実施例1と同じ方法で顔料組成物4~5を調製した。各原料の配合質量、平均一次粒子径、Cu原子の定量結果を表1に示す。さらに、実施例1と同じ方法で顔料組成物4~5を用いて、顔料分散液4~5およびポジ型感光性組成物4~5をそれぞれ順に調製し、遮光性評価用基板および有機EL表示装置を作製し、硬化膜の遮光性と非点灯画素の発生個数を評価した。各原料の配合質量を表2および表3に、評価結果を表4に示す。
【0230】
(実施例6)
ペリレン顔料Aを用いなかったこと以外は実施例1と同じ方法で、表5に示す配合量で、顔料組成物6を調製した。さらに、実施例1と同じ方法で顔料組成物6を用いて、顔料分散液6およびポジ型感光性組成物6を順に調製し、遮光性評価用基板および有機EL表示装置を作製し、硬化膜の遮光性と非点灯画素の発生個数を評価した。各原料の配合質量を表6および表7に、評価結果を表8に示す。
【0231】
【0232】
【0233】
【0234】
【0235】
(実施例7~12)
フタロシアニン誘導体Aに替えて、フタロシアニン誘導体B、フタロシアニン誘導体C、フタロシアニン誘導体D、フタロシアニン誘導体E、フタロシアニン誘導体Fまたはフタロシアニン誘導体Gをそれぞれ用いた以外は実施例1と同じ方法で顔料組成物7~12を調製した。各原料の配合質量、平均一次粒子径、Cu原子の定量結果を表5および表9に示す。さらに、実施例1と同じ方法で顔料組成物7~12を用い、顔料分散液7~12およびポジ型感光性組成物7~12をそれぞれ順に調製し、遮光性評価用基板および有機EL表示装置を作製し、硬化膜の遮光性と非点灯画素の発生個数を評価した。各原料の配合質量を表6、表7、表10および表11に、評価結果を表8および表12に示す。
【0236】
【0237】
【0238】
【0239】
【0240】
(実施例13)
202.50gのトリフェノジオキサジン顔料Aと、22.50gのフタロシアニン誘導体Aと、225.00gのペリレン顔料Aと、(d)樹脂である50.00gのTRR5010G(旭有機材(株)製)と、2.5kgの水溶性摩砕材、250.00gのジプロピレングリコールとを混合して、ステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所製)に仕込み、90℃で8時間混練し、暗紫色の混練物を得た。この混練物を5Lの温水に投入し、70℃に維持しながら1時間攪拌してスラリー状とし、脱イオン水を用いた水洗および濾過を3回繰り返して水溶性摩砕材およびジプロピレングリコールを除去した。さらに、大気圧下/空気下100℃のオーブンで6時間乾燥させた後にボールミルによる乾式粉砕処理を行い、顔料組成物13を調製した。各原料の配合質量、平均一次粒子径、Cu原子の定量結果を表9に示す。TRR5010Gは、式(43)中、R69が水素原子であり、pが1である繰り返し単位を有し、重量平均分子量(Mw)10000のクレゾールノボラック樹脂(固形分100質量%)である。各原料の配合質量とCu原子の定量結果を表9に示す。さらに、実施例1と同じ方法で顔料組成物13を用いて、顔料分散液13およびポジ型感光性組成物13を順に調製し、遮光性評価用基板および有機EL表示装置を作製し、硬化膜の遮光性と非点灯画素の発生個数を評価した。各原料の配合質量を表10および表11に、評価結果を表12に示す。
【0241】
(実施例14)
TRR5010Gに替えて、VP-2500(日本曹達(株)製)を用いたこと以外は実施例13と同じ方法で、顔料組成物14を調製した。VP-2500は、式(44)中、R70が水素原子であり、R71が単結合である繰り返し単位を有し、重量平均分子量(Mw)4200のポリヒドロキシスチレン樹脂(固形分100質量%)である。各原料の配合質量、平均一次粒子径、Cu原子の定量結果を表9に示す。さらに、実施例1と同じ方法で顔料組成物14を用いて、顔料分散液14およびポジ型感光性組成物14を順に調製し、遮光性評価用基板および有機EL表示装置を作製し、硬化膜の遮光性と非点灯画素の発生個数を評価した。各原料の配合質量を表10および表11に、評価結果を表12に示す。
【0242】
(実施例15)
TRR5010Gに替えて、VP-2500を用いたことと、フタロシアニン誘導体Aに替えて、フタロシアニン誘導体Dを用いたこと以外は実施例13と同じ方法で、顔料組成物15を調製した。各原料の配合質量、平均一次粒子径、Cu原子の定量結果を表9に示す。さらに、実施例1と同じ方法で顔料組成物15を用いて、顔料分散液15およびポジ型感光性組成物15を順に調製し、遮光性評価用基板および有機EL表示装置を作製し、硬化膜の遮光性と非点灯画素の発生個数を評価した。各原料の配合質量を表10および表11に、評価結果を表12に示す。
【0243】
(比較例1)
フタロシアニン誘導体Aに替えて、(b)成分に属さないフタロシアニン誘導体であるフタロシアニン誘導体Jを用いた以外は実施例1と同じ方法で、顔料組成物16を調製した。調製後、混合溶液(N-メチルピロリドン:脱イオン水=質量比1:1)を用い、ICP-MSで定量されるCu原子が検出下限未満となるまでニーダー機内を繰り返し洗浄し、さらに脱イオン水で洗浄後、乾燥させた。各原料の配合質量、平均一次粒子径、Cu原子の定量結果を表13に示す。さらに、実施例1と同じ方法で顔料組成物16を用い、顔料分散液16およびポジ型感光性組成物16を順に調製し、遮光性評価用基板および有機EL表示装置を作製し、硬化膜の遮光性と非点灯画素の発生個数を評価した。各原料の配合質量を表14および表15に、評価結果を表16に示す。
【0244】
【0245】
【0246】
【0247】
【0248】
(比較例2)
フタロシアニン誘導体Aを用いなかったこと以外は実施例13と同じ方法で、顔料組成物17を調製した。各原料の配合質量、平均一次粒子径、Cu原子の定量結果を表13に示す。さらに、実施例1と同じ方法で顔料組成物17を用い、顔料分散液17およびポジ型感光性組成物17を順に調製し、遮光性評価用基板および有機EL表示装置を作製し、硬化膜の遮光性と非点灯画素の発生個数を評価した。各原料の配合質量を表14および表15に、評価結果を表16に示す。
【0249】
(比較例3)
フタロシアニン誘導体Aを用いなかったこと以外は実施例14と同じ方法で、顔料組成物18を調製した。各原料の配合質量、平均一次粒子径、Cu原子の定量結果を表13に示す。さらに、実施例1と同じ方法で顔料組成物18を用い、顔料分散液18およびポジ型感光性組成物18を順に調製し、遮光性評価用基板および有機EL表示装置を作製し、硬化膜の遮光性と非点灯画素の発生個数を評価した。各原料の配合質量を表14および表15に、評価結果を表16に示す。
【0250】
(比較例4)
特許文献1の製造例1に基づく以下の方法で、微細化ペリレンブラック顔料1を製造した。
【0251】
実施例1で得られた500.00gのペリレン顔料Aと、2.5kgの摩砕材(実施例1で用いたものと同じ)、250.00gのジプロピレングリコールとを混合して、ステンレス製1ガロンニーダーに仕込み、90℃で8時間混練した。この混練物を5Lの温水に投入し、70℃に維持しながら1時間攪拌してスラリー状とし、イオンクロマトグラフィで定量される塩素イオンが50質量ppm以下となるまで濾過、水洗を繰り返して、摩砕材およびジプロピレングリコールを除去した。さらに、大気圧下/空気下100℃のオーブンで6時間乾燥させた後にボールミルで乾燥凝集を解きほぐし、平均一次粒子径25nmであり、式(41)で表される化合物および式(42)で表される化合物の異性体混合物からなる微細化ペリレンブラック顔料1を得た。
【0252】
次いで、特許文献1の製造例6に基づく以下の方法で、微細化ジオキサジン顔料2を製造した。
【0253】
実施例1で得られた500.00gのトリフェノジオキサジン顔料Aと、2.5kgの摩砕材(実施例1で用いたものと同じ)、250.00gのジプロピレングリコールを混合して、ステンレス製1ガロンニーダーに仕込み、90℃で5時間混練した。この混練物を5Lの温水に投入し、70℃に維持しながら1時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗を3回繰り返して、摩砕材およびジプロピレングリコールを除去した。さらに、大気圧下/空気下100℃のオーブンで6時間乾燥させた後にボールミルで乾燥凝集を解きほぐし、平均一次粒子径30nmである、式(10)で表される微細化ジオキサジン顔料2を得た。
【0254】
900.00gの混合溶剤(PGME:乳酸エチル:γ-ブチロラクトン=質量比率50:40:10)中に、68.38gのポリイミド前駆体Bを添加し、30分間攪拌して溶解させた。さらに、4.59gの色素Bを添加し、30分間攪拌した後に、14.86gの微細化ペリレンブラック顔料1と、12.16gの微細化ジオキサジン顔料2を添加して30分間攪拌し、予備攪拌液を得た。次いで、以降の工程は実施例1と同じ方法で湿式メディア分散処理および濾過を行い、顔料分散液19を得た。
さらに、実施例1と同じ方法で顔料組成物19を用い、ポジ型感光性組成物19を調製し、遮光性評価用基板および有機EL表示装置を作製し、硬化膜の遮光性と非点灯画素の発生個数を評価した。各原料の配合質量を表14および表15に、評価結果を表16に示す。
【0255】
(比較例5)
微細化ジオキサジン顔料2を用いなかったこと以外は比較例4と同じ方法で、表14に示す配合量で湿式メディア分散処理および濾過を行い、顔料分散液20を得た。
さらに、実施例1と同じ方法で顔料組成物20を用い、ポジ型感光性組成物20を調製し、遮光性評価用基板および有機EL表示装置を作製し、硬化膜の遮光性と非点灯画素の発生個数を評価した。各原料の配合質量を表14および表15に、評価結果を表16に示す。
【0256】
以上の結果から、顔料組成物1~15を用いた実施例1~15では、顔料組成物16~18を用いた比較例1~3、ならびに特許文献1に開示された先行技術に相当する比較例4~5と比べて、端部の非点灯の発生個数が少なく、優れた有機EL表示装置が得られていることがわかる。
【0257】
端部の非点灯を抑制する効果のメカニズムは明らかではないが、端部に配置された発光画素を点灯させるために必要となる駆動電圧の上昇が、(b)成分により抑制される効果が少なくとも寄与したものと考えられる。
また、とりわけ実施例1、実施例7~10および比較例1の有機EL表示装置の評価結果に着目すると、本課題の解決にあたり、フタロシアニン誘導体が有する置換基の種類だけでなく、特にフタロシアニン骨格中の中心金属の有無、ならびに中心金属の種類の選択が重要であることがわかる。
したがって、本発明の顔料組成物が有用であることがわかる。
本発明の顔料組成物は、有機EL表示装置の画素分割層およびスペーサー層、有機EL表示装置のTFT平坦化層、量子ドット有機EL表示装置(QD-OLED)の隔壁、マイクロLEDディスプレイの平坦化層、液晶表示装置または有機EL表示装置のカラーフィルター基板表面に形成されるブラックマトリクス、液晶表示装置のブラックカラムスペーサーなどに好ましく利用することができる。中でも、高い遮光性に加えて、経済的に有利であることが求められる有機EL表示装置が具備する、画素分割層およびスペーサー層に、特に好ましく利用することができる。