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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021606
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】密封装置
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/10 20060101AFI20250206BHJP
【FI】
F16J15/10 N
F16J15/10 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125424
(22)【出願日】2023-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100160864
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 政治
(74)【代理人】
【識別番号】100158698
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 基樹
(74)【代理人】
【識別番号】100217892
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】六川 数馬
【テーマコード(参考)】
3J040
【Fターム(参考)】
3J040AA12
3J040AA17
3J040BA03
3J040EA02
3J040EA15
3J040EA17
3J040EA22
3J040EA25
3J040FA01
3J040FA05
3J040HA03
3J040HA16
(57)【要約】
【課題】偏心時においてもシール状態を維持することが可能な密封装置を提供する。
【解決手段】密封装置100は、第1部材に形成された挿通孔の内周面と、挿通孔に挿通される第2部材の外周面と、挿通孔の軸方向において第2部材の一方側に位置する第3部材230と、の間隙250に配置されて間隙250を密封する密封装置100であって、第1部材の内周面に対して当接する当接部11を有する環状の本体部10と、本体部10から径方向内側に延出し第2部材の外周面に当接するシールリップ部30と、本体部10から軸方向に延出し第3部材230に当接するサイドリップ部50と、を備え、サイドリップ部50は、第1リップ部51と、第1リップ部51から分岐して第1リップ部51に対して径方向外側に位置する第2リップ部52と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材に形成された挿通孔の内周面と、前記挿通孔に挿通される第2部材の外周面と、前記挿通孔の軸方向において前記第2部材の一方側に位置する第3部材と、の間隙に配置されて前記間隙を密封する密封装置であって、
前記第1部材の前記内周面に対して当接する当接部を有する環状の本体部と、
前記本体部から径方向内側に延出し前記第2部材の前記外周面に当接するシールリップ部と、
前記本体部から軸方向に延出し前記第3部材に当接するサイドリップ部と、
を備え、
前記サイドリップ部は、第1リップ部と、前記第1リップ部から分岐して前記第1リップ部に対して径方向外側に位置する第2リップ部と、を有する密封装置。
【請求項2】
自然状態において、前記第1リップ部及び前記第2リップ部の各々は、前記第3部材側に向かうにつれて径方向外側に向かう向きに傾斜している請求項1に記載の密封装置。
【請求項3】
自然状態において、前記第1リップ部の先端が、前記第2リップ部の先端よりも、前記第3部材の近くに位置する請求項1又は2に記載の密封装置。
【請求項4】
前記サイドリップ部の厚み寸法は、前記第1リップ部と前記第2リップ部との分岐部における寸法よりも、当該サイドリップ部の基端部における寸法が小さい請求項1又は2に記載の密封装置。
【請求項5】
前記第1リップ部と前記第2リップ部との分岐部から前記第1リップ部の先端までの距離よりも、前記分岐部から前記第2リップ部の先端までの距離が長い請求項1又は2に記載の密封装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、プラグチューブシールなどとして用いられる密封装置について記載されている。同文献の密封装置は、環状の本体部と、本体部から径方向内側に延出しているシールリップ部と、本体部から軸方向に延出しているサイドリップ部と、を有する。
このうち本体部は、第1部材(同文献の外側部材:例えばエンジンのヘッドカバー)の内周面に当接する。シールリップ部は、第2部材(同文献の内側部材:例えばプラグチューブ)の外周面に当接する。サイドリップ部は、第3部材(同文献の相手部材:例えば点火装置のプラグトップコイルのコイル本体)に当接する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-92271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本願発明者の検討によれば、特許文献1の密封装置は、第3部材の偏心時においてもサイドリップ部によるシール状態を維持する観点で、なお改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、第3部材の偏心時においてもサイドリップ部によるシール状態を維持することが可能な密封装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、第1部材に形成された挿通孔の内周面と、前記挿通孔に挿通される第2部材の外周面と、前記挿通孔の軸方向において前記第2部材の一方側に位置する第3部材と、の間隙に配置されて前記間隙を密封する密封装置であって、
前記第1部材の前記内周面に対して当接する当接部を有する環状の本体部と、
前記本体部から径方向内側に延出し前記第2部材の前記外周面に当接するシールリップ部と、
前記本体部から軸方向に延出し前記第3部材に当接するサイドリップ部と、
を備え、
前記サイドリップ部は、第1リップ部と、前記第1リップ部から分岐して前記第1リップ部に対して径方向外側に位置する第2リップ部と、を有する密封装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第3部材の偏心時においてもサイドリップ部によるシール状態を維持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る密封装置の中心軸に沿った断面図である。
図2】実施形態に係る密封装置の取付構造の例を示す断面図である。
図3図2の部分拡大図である。
図4】偏心時の状態を示す図である。
図5】比較形態に係る密封装置の部分拡大の断面図である。
図6】比較形態に係る密封装置の偏心時の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
なお、図2から図4は、図1と同様に、実施形態に係る密封装置100の中心軸AX1に沿った断面を示す。図4は、図3と同様の範囲を示したものである。
図5及び図6は、比較形態に係る密封装置1000の中心軸に沿った断面を示しており、このうち図5図3と同様の範囲を示したものであり、図6図4と同様の範囲を示したものである。
【0010】
図1から図4に示すように、本実施形態に係る密封装置100は、第1部材210(図2)に形成された挿通孔211の内周面211aと、挿通孔211に挿通される第2部材220(図2)の外周面220aと、挿通孔211の軸方向AX2において第2部材220の一方側(図2において左側)に位置する第3部材230と、の間隙250に配置されて間隙250を密封する密封装置100である。
密封装置100は、第1部材210の内周面211aに対して当接する当接部11を有する環状の本体部10と、本体部10から径方向内側に延出し第2部材220の外周面220aに当接するシールリップ部30と、本体部10から軸方向AX2に延出し第3部材230に当接するサイドリップ部50と、を備える。
サイドリップ部50は、第1リップ部51と、第1リップ部51から分岐して第1リップ部51に対して径方向外側に位置する第2リップ部52と、を有する。
【0011】
本実施形態によれば、サイドリップ部50は、第1リップ部51と、第1リップ部51から分岐して第1リップ部51に対して径方向外側に位置する第2リップ部52と、を有する。このため、第1部材210や第2部材220に対して相対的に第3部材230の偏心が生じたときに、第1リップ部51と第2リップ部52とが一体に傾動して、第1リップ部51でシールする状態(図3)から第2リップ部52でシールする状態(図4)に移行できる。よって、第3部材230の偏心時においてもサイドリップ部50によるシール状態を維持することが可能である。
【0012】
ここで、密封装置100は、例えば、内燃機関のプラグチューブシールとして用いることができ、本実施形態では、密封装置100がプラグチューブシールである例を説明する。この場合、第1部材210は、例えば、内燃機関のヘッドカバーであり、第2部材220は、プラグチューブであり、第3部材230は、点火装置のプラグトップコイル240(図2)のコイル本体である。
ただし、本発明はこの例に限らず、密封装置100は、内燃機関のインジェクションパイプシールとして用いられてもよい。この場合、第2部材220は、インジェクションパイプである。
更には、密封装置100は、その他の用途、例えば、自動車、産業機械または建設機械等の機械に設けられる各種接続構造に用いられてもよい。
【0013】
以下、より詳細に説明する。
なお、以下の説明において、特に断りが無い場合、密封装置100の各部の形状の説明や、密封装置100の各部どうしの位置関係の説明は、密封装置100に外力が作用していない自然状態での説明であるものとする。
また、密封装置100は、当該密封装置100の中心軸AX1が第2部材220の軸心と概ね一致するように配置される。また、密封装置100の中心軸AX1及び第2部材220の軸心は、概ね第1部材210の挿通孔211の軸方向AX2に沿って配置される。
以下の説明では、中心軸AX1に対して直交する方向を径方向と称する。径方向のうち、中心軸AX1から遠ざかる方向を径方向外側と称し、中心軸AX1に近づく方向を径方向内側と称する。
また、中心軸AX1の周りを周回する方向を周方向と称する。
また、中心軸AX1に沿う方向を単に(密封装置100の)軸方向と称する場合がある。なお、密封装置100の軸方向は、概ね挿通孔211の軸方向AX2と一致する。
また、中心軸AX1に沿う方向のうち、密封装置100を基準として一方側(図1及び図2における左側、図3及び図4における上側)は、第3部材230側であり、他方側(図1及び図2における右側、図3及び図4における下側)は、第3部材230から遠ざかる側である。
【0014】
上述のように、密封装置100は、当接部11を有する環状の本体部10と、本体部10から径方向内側に延出しているシールリップ部30と、本体部10から軸方向AX2に延出しているサイドリップ部50と、を備える。
更に、密封装置100は、例えば、本体部10から径方向外側に延出しているフランジ部20を備える。
【0015】
本体部10は、例えば、中心軸AX1を中心とする円筒状に形成されている。本体部10の外周面は、第1部材210の内周面211aに対して当接する当接部11を構成している。
本体部10は、図1において中心軸AX1の片側(例えば上側)に示される本体部10の切断端面形状を中心軸AX1周りに1回転させたときの、当該切断端面形状の移動軌跡と対応する立体形状に形成されている。
【0016】
フランジ部20は、例えば、本体部10における一方側(図1における左側)の端部から径方向外側に延出している。
フランジ部20は、例えば、中心軸AX1に対して略直交する板状に形成されている。
フランジ部20は、図1において中心軸AX1の片側(例えば上側)に示されるフランジ部20の切断端面形状を中心軸AX1周りに1回転させたときの、当該切断端面形状の移動軌跡と対応する立体形状に形成されている。
【0017】
シールリップ部30は、例えば、本体部10における他方側(図1における右側)の端部から径方向内側に延出している。より詳細には、例えば、シールリップ部30は、本体部10における他方側の端部から、一方側(図1における左側)に向けて斜めに延出している。
シールリップ部30は、図1において中心軸AX1の片側(例えば上側)に示されるシールリップ部30の切断端面形状を中心軸AX1周りに1回転させたときの、当該切断端面形状の移動軌跡と対応する立体形状に形成されている。
【0018】
サイドリップ部50は、泥水リップとも称されるものであり、水や泥等の異物の侵入を抑制するシール領域を第3部材230との間で形成する。
サイドリップ部50は、上述のように、第1リップ部51と第2リップ部52とを有する。
第1リップ部51は、例えば、本体部10における一方側(図1における左側)の端部から、一方側(図1における左側)に延出している。より詳細には、第1リップ部51は、例えば、一方側(図1における左側)に向かうにつれて径方向外側に向かう向きに傾斜している。
第2リップ部52は、第1リップ部51の途中から分岐しており、第1リップ部51との分岐部(股部53)から、一方側(図1における左側)に延出している。より詳細には、第2リップ部52も、例えば、一方側(図1における左側)に向かうにつれて径方向外側に向かう向きに傾斜している。
サイドリップ部50は、図1において中心軸AX1の片側(例えば上側)に示されるサイドリップ部50の切断端面形状を中心軸AX1周りに1回転させたときの、当該切断端面形状の移動軌跡と対応する立体形状に形成されている。
【0019】
このように、自然状態において、第1リップ部51及び第2リップ部52の各々は、第3部材230側(一方側)に向かうにつれて径方向外側に向かう向きに傾斜している。
これにより、図2に示すように密封装置100を取り付けたときに、第1リップ部51が安定的に第3部材230(の後述するサイドリップ当接面231)に対して圧接されるようにできる。また、第3部材230の偏心によって第2リップ部52によりシールされる状態に移行した際にも、第2リップ部52が安定的に第3部材230に対して圧接されるようにできる(図4)。
【0020】
自然状態において、第1リップ部51の先端51a(図3)が、第2リップ部52の先端52a(図3)よりも、第3部材230の近くに位置する。
これにより、図2及び図3に示すように密封装置100を取り付けたときに、第1リップ部51がより確実に第3部材230(のサイドリップ当接面231)に対して圧接されるようにできる。
また、例えば図2及び図3に示すように、密封装置100を取り付けたとき(第3部材230の偏心が生じていないとき)には、第2リップ部52が第3部材230のサイドリップ当接面231から離間した状態とすることが可能である。
【0021】
本実施形態の場合、サイドリップ部50の厚み寸法は、第1リップ部51と第2リップ部52との分岐部(股部53)における寸法(図3に示す厚み寸法D1)よりも、サイドリップ部50の基端部における寸法(図3に示す厚み寸法D2)が小さい。
ここで、分岐部におけるサイドリップ部50の厚み寸法D1は、第1リップ部51と第2リップ部52との間の股部53(図3)を通過する厚み寸法のうち最小のものである。
また、サイドリップ部50の基端部は、第1リップ部51の基端部51cである。
第1リップ部51と第2リップ部52との分岐部における厚み寸法D1よりも、サイドリップ部50の基端部(基端部51c)における厚み寸法D2が小さいとは、サイドリップ部50において、厚み寸法D1よりも厚みが小さい部分が、股部53よりも基端側に存在することを意味する。
このような構成により、サイドリップ部50の基端部(基端部51c)が屈曲しやすくなるため、第1リップ部51でシールする状態(図3)から第2リップ部52でシールする状態(図4)への切り替え動作がスムーズになる。
サイドリップ部50において、厚み寸法D1よりも厚みが小さい部分は、サイドリップ部50の基端(付け根:第1リップ部51の基端51d(図3))よりも、サイドリップ部50の先端側に位置していることが好ましく、このようになっていることにより、第1リップ部51でシールする状態(図3)から第2リップ部52でシールする状態(図4)への切り替え動作が一層スムーズになる。
【0022】
本実施形態の場合、第1リップ部51と第2リップ部52との分岐部(股部53)から第1リップ部51の先端51aまでの距離(図3に示す距離L1)よりも、分岐部(股部53)から第2リップ部52の先端52aまでの距離(図3に示す距離L2)が長い。換言すれば、第1リップ部51において股部53よりも先端側の部分の長さよりも、第2リップ部52の長さの方が長い。
これにより、図4に示すように第1リップ部51によるシール性が低下する程度に第3部材230の偏心が生じたときに、より確実に第2リップ部52によるシール性を得ることが可能となる。
【0023】
本実施形態の場合、自然状態において、第1リップ部51の先端側の端面51b(図3)の傾斜角度(中心軸AX1に対する傾斜角度)よりも、第2リップ部52の先端側の端面52b(図3)の傾斜角度(中心軸AX1に対する傾斜角度)の方が小さい。すなわち、端面51bよりも端面52bの方が、中心軸AX1に対してより緩い角度で傾斜している。
これにより、図3に示すように第3部材230の偏心が生じていないときには、第1リップ部51の端面51bが第3部材230のサイドリップ当接面231に対して安定的に圧接されるようにできるとともに、図4に示すように第3部材230の偏心が生じたときには、第2リップ部52の端面52bがサイドリップ当接面231に対して安定的に圧接されるようにできる。
【0024】
密封装置100は、例えば、それぞれ以下に説明するシール本体構成部材60、補強環70及びガータスプリング80により構成されている。
【0025】
シール本体構成部材60は、弾性体により構成されている。シール本体構成部材60は、例えばその全体が一体的に成形されており、サイドリップ部50及びシールリップ部30を含んで構成されているとともに、フランジ部20を構成している。
シール本体構成部材60は、図1において中心軸AX1の片側(例えば上側)に示されるシール本体構成部材60の切断端面形状を中心軸AX1周りに1回転させたときの、当該切断端面形状の移動軌跡と対応する立体形状に形成されている。
【0026】
シール本体構成部材60を構成する弾性体は、ゴム(合成ゴムや天然ゴム)又はサーモプラスチックエラストマー(熱可塑性樹脂ゴム弾性体)のような弾力性に富む材質のもの(ゴム状弾性体)であり、可撓性を有する。シール本体構成部材60の材料としては、例えば、ニトリルゴム(NBR)、水素添加ニトリルゴム(H-NBR)、アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム(FKM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等のゴム材料が挙げられる。
シール本体構成部材60は、補強環70とともに一体成形されている。
例えば、図示しない成形型内に補強環70(必要に応じて、後述するガータスプリング80も)を配置し、未架橋のゴム材料を注入し、その後、成形型のキャビティ内を加熱及び加圧することによりゴム材料を架橋させることにより、補強環70をインサート品とするインサート成形によりシール本体構成部材60を構成することができる。このインサート成形によって、補強環70に加硫接着により接合された状態のシール本体構成部材60が得られる。
【0027】
補強環70は、剛性等の要求される特性を満足する観点から、シール本体構成部材60を構成する材料よりも高いヤング率の材料で構成されている。補強環70は、例えば、金属材料又は樹脂材料により構成されている。
補強環70は、例えば、本体部10の内部に埋設されている円筒状の部分と、フランジ部20の内部に埋設されているドーナツ状の板状の部分と、を一体に備える断面L字状の形状に形成されている。
補強環70は、図1において中心軸AX1の片側(例えば上側)に示される補強環70の切断端面形状を中心軸AX1周りに1回転させたときの、当該切断端面形状の移動軌跡と対応する立体形状に形成されている。
【0028】
補強環70が金属材料により構成されている場合、補強環70の材料としては、例えばステンレス鋼(SUS)又は冷間圧延鋼(SPCC)等が挙げられる。補強環70が金属材料により構成されている場合、例えば、プレス加工または鍛造等により補強環70が作製されている。
【0029】
補強環70が樹脂材料により構成されている場合、補強環70の材料としては、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE) 等が挙げられる。この樹脂材料には、必要に応じて、例えば、ガラス繊維、有機繊維、金属繊維、カーボン繊維または鉱物繊維等の繊維基材が混入されていてもよいし、アルミナ等の金属酸化物、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、または窒化ホウ素等の窒化物で構成される粒子状のフィラーが混入されていてもよい。補強環70が樹脂材料で構成されている場合、例えば、射出成形により補強環70が作製されている。
【0030】
ガータスプリング80は、コイルスプリングにより構成されており、当該コイルスプリングの両端は相互に接続されており、当該コイルスプリングの軸心が円環状にループしている。コイルスプリングの軸心は、中心軸AX1の周りを1周している。すなわち、ガータスプリング80は、周方向に沿って円環状に形成されている。
ガータスプリング80は、引っ張り型のコイルスプリングであり、その軸方向の長さを縮める向きの付勢力を発揮する。ガータスプリング80は円環状のループ形状であるため、ガータスプリング80は、ループの半径を縮める向きの付勢力を発揮する。
ガータスプリング80は、シールリップ部30の先端部に形成された溝内に配置されており、シールリップ部30を径方向内側に向けて付勢している。よって、ガータスプリング80は、シールリップ部30を第2部材220に対して拘束する機能を担う。
これにより、シールリップ部30の内周縁が第2部材220の外周面220aに対して良好に圧接されるようになっている。
【0031】
密封装置100は、以上のように構成されており、例えば以下に説明するようにして取り付けられる。
図2に示すように、第1部材210(ヘッドカバー)は、例えば、階段状に径寸法が変化した部分を有しており、密封装置100における本体部10からフランジ部20にかけての部分が、第1部材210の当該部分の内周面に沿って周回状に密着して配置される。
第1部材210の挿通孔211には、第2部材220が同軸に挿通されている。シールリップ部30の内周縁は、第2部材220の外周面220aに対して周回状に圧接されている。
第1部材210(ヘッドカバー)の内部には、プラグトップコイル240が配置されている。プラグトップコイル240は、大径のコイル本体と、コイル本体から延出している小径の軸部241と、を有する。軸部241は、第2部材220の内部に挿通されており、コイル本体は、第2部材220の外部に配置されている。本実施形態の場合、第3部材230はプラグトップコイル240のコイル本体であり、サイドリップ部50は第3部材230のサイドリップ当接面231に対して周回状に圧接される。サイドリップ当接面231は、挿通孔211の軸方向AX2に対して略直交している。
【0032】
ここで、図5及び図6を用いて、比較形態に係る密封装置1000について説明する。
比較形態に係る密封装置1000は、サイドリップ部50に代えてサイドリップ部1050を有する点で、本実施形態に係る密封装置100と相違しており、その他の点では、密封装置100と同様に構成されている。
サイドリップ部1050は、本実施形態に係る密封装置100における第1リップ部51に相当する構成となっており、密封装置100における第2リップ部52に相当する部分は有していない。密封装置1000のシール本体構成部材1060は、密封装置100のシール本体構成部材60と比べて、第2リップ部52に相当する部分を有していない点で相違しており、その他の点では、密封装置100のシール本体構成部材60と同様に構成されている。
比較形態に係る密封装置1000の場合、図5に示すように、第3部材230の偏心が生じていないときには、サイドリップ部1050の先端が第3部材230のサイドリップ当接面231に対して周回状に圧接されて、サイドリップ部1050によるシール性が確保される。
一方、図6に示すように、第3部材230の偏心が生じたときには、サイドリップ部1050が捲れてしまい、サイドリップ部1050によるシール性が低下してしまう可能性がある。
【0033】
これに対し、本実施形態の場合、図4に示すように、第3部材230の偏心が生じたことにより図4に示す矢印A方向へと第3部材230が密封装置100に対して相対的に移動し、第1リップ部51が捲れて第1リップ部51によるシール性が低下してしまったとしても、第2リップ部52が第3部材230のサイドリップ当接面231に対して安定的に圧接されるようにできるため、サイドリップ部50によるシール性を維持することができる。
すなわち、サイドリップ部50の周方向における一部分が、密封装置100の中心軸AX1に近づく方向に傾動する結果、サイドリップ部50の周方向における一部分については、第1リップ部51によりシール性が確保されていた元の状態(図3の状態)から、第2リップ部52によりシール性が確保された状態(図4の状態)へと移行する。これにより、本実施形態の場合、第3部材230の偏心時においてもサイドリップ部50によるシール状態を維持することが可能である。
なお、図4に示す矢印A方向は、密封装置100の中心軸AX1及び挿通孔211の軸方向AX2に対して略直交する方向である。また、図6に示す矢印A方向も同様であり、密封装置1000の中心軸及び挿通孔211の軸方向AX2に対して略直交する方向である。
【0034】
以上、図面を参照して実施形態を説明したが、これは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
例えば、上記においては、図3に示す厚み寸法D1よりも図3に示す厚み寸法D2が小さい例を説明したが、厚み寸法D1と厚み寸法D2とが互いに同じであってもよいし、厚み寸法D2が厚み寸法D1よりも大きくてもよい。
また、上記においては、図3に示す距離L1よりも図3に示す距離L2が長い例を説明したが、距離L1と距離L2とが互いに同じであってもよいし、距離L1が距離L2よりも長くてもよい。
また、上記においては、自然状態において、中心軸AX1に対する端面51bの傾斜角度よりも、中心軸AX1に対する端面52bの傾斜角度の方が小さい例を説明したが、
中心軸AX1に対する端面51bの傾斜角度と中心軸AX1に対する端面52bの傾斜角度とが互いに同じであってもよいし、中心軸AX1に対する端面51bの傾斜角度が中心軸AX1に対する端面52bの傾斜角度よりも小さくてもよい。
また、上記においては、中心軸AX1に沿った切断端面形状について、第1リップ部51の全体が直線状に延在している例(サイドリップ部50の全体形状が小文字のy字状である例)を説明したが、第1リップ部51の基端部51c(股部53よりも基端側の部分)に対して、第1リップ部51における股部53よりも先端側の部分が傾斜していてもよい。すなわち、中心軸AX1に沿った切断端面形状について、サイドリップ部50の全体形状が大文字のY字状となっていてもよい。
【0035】
本実施形態は以下の技術思想を包含する。
(1)第1部材に形成された挿通孔の内周面と、前記挿通孔に挿通される第2部材の外周面と、前記挿通孔の軸方向において前記第2部材の一方側に位置する第3部材と、の間隙に配置されて前記間隙を密封する密封装置であって、
前記第1部材の前記内周面に対して当接する当接部を有する環状の本体部と、
前記本体部から径方向内側に延出し前記第2部材の前記外周面に当接するシールリップ部と、
前記本体部から軸方向に延出し前記第3部材に当接するサイドリップ部と、
を備え、
前記サイドリップ部は、第1リップ部と、前記第1リップ部から分岐して前記第1リップ部に対して径方向外側に位置する第2リップ部と、を有する密封装置。
(2)自然状態において、前記第1リップ部及び前記第2リップ部の各々は、前記第3部材側に向かうにつれて径方向外側に向かう向きに傾斜している(1)に記載の密封装置。
(3)自然状態において、前記第1リップ部の先端が、前記第2リップ部の先端よりも、前記第3部材の近くに位置する(1)又は(2)に記載の密封装置。
(4)前記サイドリップ部の厚み寸法は、前記第1リップ部と前記第2リップ部との分岐部における寸法よりも、当該サイドリップ部の基端部における寸法が小さい(1)から(3)のいずれか一項に記載の密封装置。
(5)前記第1リップ部と前記第2リップ部との分岐部から前記第1リップ部の先端までの距離よりも、前記分岐部から前記第2リップ部の先端までの距離が長い(1)から(4)のいずれか一項に記載の密封装置。
【符号の説明】
【0036】
10 本体部
11 当接部
20 フランジ部
30 シールリップ部
50 サイドリップ部
51 第1リップ部
51a 先端
51b 端面
51c 基端部
51d 基端
52 第2リップ部
52a 先端
52b 端面
53 股部(分岐部)
60 シール本体構成部材
70 補強環
80 ガータスプリング
100 密封装置
210 第1部材
211 挿通孔
211a 内周面
220 第2部材
220a 外周面
230 第3部材
231 サイドリップ当接面
240 プラグトップコイル
241 軸部
250 間隙
1000 密封装置
1050 サイドリップ部
1060 シール本体構成部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6