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特開2025-21614加工支援装置、および加工支援システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021614
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】加工支援装置、および加工支援システム
(51)【国際特許分類】
   G06N 3/09 20230101AFI20250206BHJP
   B24B 49/00 20120101ALI20250206BHJP
【FI】
G06N3/09
B24B49/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125435
(22)【出願日】2023-08-01
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2020年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、次世代人工知能・ロボットの中核となるインテグレート技術開発、人工知能技術の適用領域を広げる研究開発委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000150604
【氏名又は名称】株式会社ナガセインテグレックス
(71)【出願人】
【識別番号】593127027
【氏名又は名称】株式会社シギヤ精機製作所
(71)【出願人】
【識別番号】000242792
【氏名又は名称】牧野フライス精機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000114019
【氏名又は名称】ミクロン精密株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山本 雅人
(72)【発明者】
【氏名】板津 武志
(72)【発明者】
【氏名】松本 耕
(72)【発明者】
【氏名】有賀 純一郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 征幸
【テーマコード(参考)】
3C034
【Fターム(参考)】
3C034CA05
3C034CA15
3C034CA26
3C034CB02
3C034CB06
3C034CB18
3C034DD07
(57)【要約】
【課題】加工条件を変更すると加工結果がどのように変わるかを把握できるようにした加工支援装置を提供する。
【解決手段】加工支援装置10のPU12は、ユーザインターフェース20の操作によって要求仕様が入力されると、要求仕様を所定以上満たす加工条件を探索する。探索する処理は、PU12が、加工条件を入力として加工結果を出力とする学習済みモデルを用いて実行する。PU12は、探索された加工条件および加工結果を表示装置22に表示する。PU12は、ユーザインターフェース20の操作によって加工条件の変更が指示されると、指示された変更に応じた加工結果を表示装置22に表示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実行装置と、記憶装置と、を備え、
前記記憶装置には、加工結果出力写像を規定するためのデータである加工結果出力写像データが記憶されており、
前記加工結果出力写像は、加工条件変数の値を入力として且つ加工結果変数の値を出力する写像であり、
前記加工条件変数は、加工装置による加工条件を示す変数であり、
前記加工結果変数は、前記加工装置による加工結果を示す変数であり、
前記実行装置は、要求取得処理と、加工結果算出処理と、探索処理と、加工条件通知処理と、加工条件変更受付処理と、変更結果通知処理と、を実行するように構成され、
前記要求取得処理は、加工結果に対する要求仕様を取得する処理であり、
前記加工結果算出処理は、前記加工条件変数の値を前記加工結果出力写像に入力したときの前記加工結果変数の値を求める処理であり、
前記探索処理は、前記加工結果算出処理による前記加工結果変数の値のうちの要求仕様を所定以上満たす値を探索する処理であり、
前記加工条件通知処理は、前記探索処理による探索結果が示す前記加工条件と、対応する前記加工結果と、を通知する処理であり、
前記加工条件変更受付処理は、前記加工条件を、前記加工条件通知処理によって通知された前記加工条件に対して変更する指示を受け付ける処理であり、
前記変更結果通知処理は、前記変更する指示に従った前記加工条件変数の値を前記加工結果算出処理の入力として得られる前記加工結果変数の値に応じた前記加工結果を通知する処理である加工支援装置。
【請求項2】
前記加工結果は、複数の項目を有し、
前記加工条件は、複数の項目を有し、
前記実行装置は、指定項目受付処理と、寄与度算出処理と、寄与度通知処理と、を実行するように構成され、
前記指定項目受付処理は、前記加工結果に関する前記複数の項目のうちのユーザが指定した項目を受け付ける処理であり、
前記寄与度算出処理は、前記指定項目受付処理によって受け付けられた前記加工結果の前記項目への前記加工条件の項目の寄与度を求める処理であり、
前記寄与度通知処理は、前記指定項目受付処理によって受け付けられた前記加工結果の項目への前記加工条件の項目の寄与度を示す情報を通知する処理である請求項1記載の加工支援装置。
【請求項3】
前記寄与度算出処理は、前記指定項目受付処理によって受け付けられた前記加工結果の項目を前記要求仕様にいっそう適合させるための変更の仕方を求める変更方向算出処理を含み、
前記寄与度通知処理は、前記加工結果の項目の寄与度を示す情報を、前記要求仕様にいっそう適合させるための変更の仕方を示す情報とともに通知する処理を含む請求項2記載の加工支援装置。
【請求項4】
前記加工結果変数には、加工の精度を示す変数と、前記加工にかかる負荷を示す変数と、が含まれる請求項2記載の加工支援装置。
【請求項5】
前記加工装置は、研削加工装置であり、
前記加工条件変数には、研削加工による切込量を示す変数と、前記研削加工の砥石速度を示す変数と、前記研削加工による研削液流量を示す変数と、が含まれる請求項2記載の加工支援装置。
【請求項6】
前記記憶装置には、組み合わせデータが記憶されており、
前記組み合わせデータは、前記加工結果と前記加工条件との組み合わせを示すデータであり、
前記探索処理は、前記組み合わせデータに含まれる前記加工結果のうちの前記要求仕様に近い前記加工結果に対応する前記加工条件を取得する取得処理と、前記取得処理によって取得された前記加工条件に対して探索する前記加工条件を変更する変更処理と、を含む請求項1記載の加工支援装置。
【請求項7】
前記加工条件は、複数の項目を有し、
前記変更処理は、前記取得処理によって取得された前記加工条件の1つの項目に関し、同項目に関する前記取得された条件に近い条件に変更する確率を前記取得された前記条件から遠い条件に変更する確率より大きくする処理を含む請求項6記載の加工支援装置。
【請求項8】
前記加工条件は、複数の項目を有し、
前記実行装置は、加工条件指定受付処理を実行するように構成され、
前記加工条件指定受付処理は、ユーザが前記加工条件に関する一部の項目を指定することを受け付ける処理であり、
前記探索処理は、前記指定された前記項目を満たす制約の下で前記加工条件を探索する処理である請求項1記載の加工支援装置。
【請求項9】
前記加工条件は、複数の項目を有し、
前記記憶装置には、関係規定データが記憶されており、
前記関係規定データは、前記加工条件の複数の項目同士の関係を規定するデータであり、
前記探索処理は、前記関係規定データによって規定される関係を満たす前記加工条件を探索の対象とする処理である請求項1記載の加工支援装置。
【請求項10】
前記実行装置は、結果取得処理、再学習処理、および更新処理を実行するように構成され、
前記結果取得処理は、前記加工装置による前記加工結果と対応する前記加工条件とを取得する処理であり、
前記再学習処理は、前記結果取得処理によって取得されたデータを訓練データとして前記加工結果出力写像を再学習する処理であり、
前記更新処理は、前記記憶装置に記憶されている前記加工結果出力写像データを前記再学習されたデータに更新する処理である請求項1記載の加工支援装置。
【請求項11】
前記加工装置は、研削装置であり、
前記加工結果変数には、たたき目変数、送り目変数、焼け変数、スクラッチ変数、および角ダレ変数の5つのうちの少なくとも1つが含まれ、
前記たたき目変数は、加工対象の表面において加工方向に直交する方向に現れる模様を示す変数であり、
前記送り目変数は、前記加工対象の表面において加工方向に現れる模様を示す変数であり、
前記焼け変数は、前記加工対象の表面の加工熱による変色度合いを示す変数であり、
前記スクラッチ変数は、前記加工対象の表面における傷の度合いを示す変数であり、
前記角ダレ変数は、前記加工対象の周辺部分が過度に削れた度合いを示す変数である請求項1記載の加工支援装置。
【請求項12】
請求項1記載の加工支援装置における前記実行装置および前記記憶装置を備え、
前記実行装置は、第1実行装置と、第2実行装置と、を備え、
前記第1実行装置は、少なくとも前記要求取得処理、および前記加工条件変更受付処理を実行するように構成され、
前記第2実行装置は、少なくとも前記加工結果算出処理を実行するように構成されている加工支援システム。
【請求項13】
請求項10記載の加工支援装置における前記実行装置および前記記憶装置を備え、
前記実行装置は、第1実行装置と、第2実行装置と、を備え、
前記第1実行装置は、少なくとも前記結果取得処理を実行するように構成され、
前記第2実行装置は、少なくとも前記再学習処理を実行するように構成されている加工支援システム。
【請求項14】
請求項12記載の加工支援システムにおける前記第1実行装置を備える加工支援装置。
【請求項15】
請求項13記載の加工支援システムにおける前記第1実行装置を備える加工支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工支援装置、および加工支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば下記特許文献1には、加工条件探索装置が記載されている。この装置は、入力される要求仕様に応じた最適な加工条件のデータを出力する。この装置は、様々な加工条件を加工条件モデル部に入力したときの同モデルが出力する加工結果のデータに基づき、最適な加工条件を求める。加工条件モデル部は、機械学習による学習済みモデルを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-36812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記装置の場合、要求仕様に対して最適な加工条件が出力されるのみであるから、加工条件を変更すると加工結果がどのように変わるかを把握できない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、上記課題を解決するための手段およびその作用効果について記載する。
1.実行装置と、記憶装置と、を備え、前記記憶装置には、加工結果出力写像を規定するためのデータである加工結果出力写像データが記憶されており、前記加工結果出力写像は、加工条件変数の値を入力として且つ加工結果変数の値を出力する写像であり、前記加工条件変数は、加工装置による加工条件を示す変数であり、前記加工結果変数は、前記加工装置による加工結果を示す変数であり、前記実行装置は、要求取得処理と、加工結果算出処理と、探索処理と、加工条件通知処理と、加工条件変更受付処理と、変更結果通知処理と、を実行するように構成され、前記要求取得処理は、加工結果に対する要求仕様を取得する処理であり、前記加工結果算出処理は、前記加工条件変数の値を前記加工結果出力写像に入力したときの前記加工結果変数の値を求める処理であり、前記探索処理は、前記加工結果算出処理による前記加工結果変数の値のうちの要求仕様を所定以上満たす値を探索する処理であり、前記加工条件通知処理は、前記探索処理による探索結果が示す前記加工条件と、対応する前記加工結果と、を通知する処理であり、前記加工条件変更受付処理は、前記加工条件を、前記加工条件通知処理によって通知された前記加工条件に対して変更する指示を受け付ける処理であり、前記変更結果通知処理は、前記変更する指示に従った前記加工条件変数の値を前記加工結果算出処理の入力として得られる前記加工結果変数の値に応じた前記加工結果を通知する処理である加工支援装置である。
【0006】
上記加工支援装置は、要求仕様を所定以上満たす加工条件を探索する。そして、加工支援装置は、探索結果をユーザに通知する。これにより、ユーザは、要求仕様を所定以上満たす加工条件を把握できる。また、加工支援装置は、探索された加工条件のユーザによる変更指示に従った加工結果をユーザに通知する。これにより、ユーザは、加工条件を変更すると加工結果がどのように変わるかを把握できる。
【0007】
2.前記加工結果は、複数の項目を有し、前記加工条件は、複数の項目を有し、前記実行装置は、指定項目受付処理と、寄与度算出処理と、寄与度通知処理と、を実行するように構成され、前記指定項目受付処理は、前記加工結果に関する前記複数の項目のうちのユーザが指定した項目を受け付ける処理であり、前記寄与度算出処理は、前記指定項目受付処理によって受け付けられた前記加工結果の前記項目への前記加工条件の項目の寄与度を求める処理であり、前記寄与度通知処理は、前記指定項目受付処理によって受け付けられた前記加工結果の項目への前記加工条件の項目の寄与度を示す情報を通知する処理である上記1記載の加工支援装置である。
【0008】
上記加工支援装置は、加工結果のうちのユーザが指定した項目への加工条件の項目の寄与度を通知する。これにより、ユーザが、加工条件の各項目のうちの寄与度が小さいものを変化させる指示を出すことを抑制できる。
【0009】
3.前記寄与度算出処理は、前記指定項目受付処理によって受け付けられた前記加工結果の項目を前記要求仕様にいっそう適合させるための変更の仕方を求める変更方向算出処理を含み、前記寄与度通知処理は、前記加工結果の項目の寄与度を示す情報を、前記要求仕様にいっそう適合させるための変更の仕方を示す情報とともに通知する処理を含む上記2記載の加工支援装置である。
【0010】
上記加工支援装置は、ユーザに、加工結果の項目の寄与度を通知するとともに、その項目をどのように変更すれば要求仕様にいっそう適合するかの情報を通知する。そのため、ユーザが、要求仕様から外れる方向に加工条件を変更する指示をすることを抑制できる。
【0011】
4.前記加工結果変数には、加工の精度を示す変数と、前記加工にかかる負荷を示す変数と、が含まれる上記1~3のいずれか1つに記載の加工支援装置である。
加工の精度が要求仕様を満たしたとしても、加工にかかる負荷が過度に大きい場合には、コストアップや納期を無視した加工時間等に繋がることから、その加工条件の実用性が低い。そこで上記加工支援装置は、加工結果変数に、加工の精度を示す変数に加えて、加工にかかる負荷を示す変数を含める。これにより、過度に負荷が大きい加工条件が探索されることを抑制できる。
【0012】
5.前記加工装置は、研削加工装置であり、前記加工条件変数には、研削加工による切込量を示す変数と、前記研削加工の砥石速度を示す変数と、前記研削加工による研削液流量を示す変数と、が含まれる上記1~4のいずれか1つに記載の加工支援装置である。
【0013】
6.前記記憶装置には、組み合わせデータが記憶されており、前記組み合わせデータは、前記加工結果と前記加工条件との組み合わせを示すデータであり、前記探索処理は、前記組み合わせデータに含まれる前記加工結果のうちの前記要求仕様に近い前記加工結果に対応する前記加工条件を取得する取得処理と、前記取得処理によって取得された前記加工条件に対して探索する前記加工条件を変更する変更処理と、を含む上記1~5のいずれか1つに記載の加工支援装置である。
【0014】
加工結果を示す項目が多い場合と、加工条件を示す項目が多い場合と、には、要求仕様を満たす加工条件を探索する処理の負荷が大きくなりやすい。そこで上記加工支援装置は、組み合わせデータを利用して探索する候補となる加工条件を取得する。組み合わせデータは、加工結果と加工条件との組み合わせを示すデータであることから、過去に実際に行われた加工を特定するデータとすることができる。そしてこれにより、探索する候補として信頼性の高い加工条件を迅速に取得できる。
【0015】
7.前記加工条件は、複数の項目を有し、前記変更処理は、前記取得処理によって取得された前記加工条件の1つの項目に関し、同項目に関する前記取得された条件に近い条件に変更する確率を前記取得された前記条件から遠い条件に変更する確率より大きくする処理を含む上記6記載の加工支援装置である。
【0016】
組み合わせデータが要求仕様を満たした実際の加工を反映する場合、一般には、取得処理によって取得された加工条件に近い条件の方が遠い条件よりも要求仕様に適合する可能性が高い。ただし、加工条件が複数の項目を有する場合、それら各項目が加工結果に及ぼす影響が、加工条件の別の項目によって変動する可能性がある。そしてその場合、要求仕様に適合する加工条件が必ずしも取得処理によって取得された加工条件に近いとは限らなくなる。そこで、上記加工支援装置は、取得処理によって取得された加工条件から遠い条件を低確率で探索する候補に含める。これにより、加工条件のある項目が加工結果に与える影響が別の加工条件の項目によって大きく変動する場合であっても、要求仕様を満たす加工条件を探索できる可能性を高めることができる。
【0017】
8.前記加工条件は、複数の項目を有し、前記実行装置は、加工条件指定受付処理を実行するように構成され、前記加工条件指定受付処理は、ユーザが前記加工条件に関する一部の項目を指定することを受け付ける処理であり、前記探索処理は、前記指定された前記項目を満たす制約の下で前記加工条件を探索する処理である上記1~7のいずれか1つ記載の加工支援装置である。
【0018】
ユーザは、あらゆる加工条件を実現できるとは限らない。たとえば、ユーザは、特定の加工装置を用いることを前提として、それ以外の加工条件を知りたい場合もある。また、たとえば、ユーザが利用できる加工工具が限られている場合もある。そこで、上記加工支援装置は、ユーザが加工条件の一部の項目を指定した場合、指定された項目を満たす制約の下で加工条件を探索する。これにより、加工支援装置は、ユーザが実際に実現できる加工条件の中から要求仕様を満たす加工条件を探索してユーザに通知できる。
【0019】
9.前記加工条件は、複数の項目を有し、前記記憶装置には、関係規定データが記憶されており、前記関係規定データは、前記加工条件の複数の項目同士の関係を規定するデータであり、前記探索処理は、前記関係規定データによって規定される関係を満たす前記加工条件を探索の対象とする処理である上記1~8のいずれか1つに記載の加工支援装置である。
【0020】
加工の分野には、工学的な理論が存在する。それら理論には、加工条件の複数の項目同士の関係を規定するものが存在する。また、加工に長年携わってきた熟練者には、加工条件の複数の項目同士の適切な関係についての知見が存在する。それらの関係からはずれた加工条件が要求仕様を満たす条件となる可能性は低い。そこで上記加工支援装置は、関係規定データによって規定される関係を満たす加工条件を探索対象とする。これにより、関係規定データに上記工学的な理論と熟練者の知見との少なくとも一方に基づく関係を反映させることによって、適切な探索候補を効率的に定めることができる。
【0021】
10.前記実行装置は、結果取得処理、再学習処理、および更新処理を実行するように構成され、前記結果取得処理は、前記加工装置による前記加工結果と対応する前記加工条件とを取得する処理であり、前記再学習処理は、前記結果取得処理によって取得されたデータを訓練データとして前記加工結果出力写像を再学習する処理であり、前記更新処理は、前記記憶装置に記憶されている前記加工結果出力写像データを前記再学習されたデータに更新する処理である上記1~9のいずれか1つに記載の加工支援装置である。
【0022】
上記加工支援装置は、再学習処理を実行することによって加工結果出力写像データを更新する。これにより、ユーザが実際に加工装置を用いて加工をすることにより、その加工結果等を利用して、加工結果出力写像データを更新できる。そしてこれにより、要求仕様を満たす加工結果の通知精度を高めることが可能となる。
【0023】
11.前記加工装置は、研削装置であり、前記加工結果変数には、たたき目変数、送り目変数、焼け変数、スクラッチ変数、および角ダレ変数の5つのうちの少なくとも1つが含まれ、前記たたき目変数は、加工対象の表面において加工方向に直交する方向に現れる模様を示す変数であり、前記送り目変数は、前記加工対象の表面において加工方向に現れる模様を示す変数であり、前記焼け変数は、前記加工対象の表面の加工熱による変色度合いを示す変数であり、前記スクラッチ変数は、前記加工対象の表面における傷の度合いを示す変数であり、前記角ダレ変数は、前記加工対象の周辺部分が過度に削れた度合いを示す変数である上記1~10のいずれか1つに記載の加工支援装置である。
【0024】
上記各変数は、研削加工において作業者が通常は定性的に評価する項目を示す変数である。そのため、上記加工支援装置は、研削加工において作業者が通常は定性的に評価する項目についても、要求仕様に含めることができる。
【0025】
12.上記1~11のいずれか1つに記載の加工支援装置における前記実行装置および前記記憶装置を備え、前記実行装置は、第1実行装置と、第2実行装置と、を備え、前記第1実行装置は、少なくとも前記要求取得処理、および前記加工条件変更受付処理を実行するように構成され、前記第2実行装置は、少なくとも前記加工結果算出処理を実行するように構成されている加工支援システムである。
【0026】
上記加工支援システムでは、加工結果算出処理を第2実行装置が実行することにより、加工結果算出処理を第1実行装置が実行する場合と比較して、第1実行装置の演算負荷を軽減できる。
【0027】
13.上記10記載の加工支援装置における前記実行装置および前記記憶装置を備え、前記実行装置は、第1実行装置と、第2実行装置と、を備え、前記第1実行装置は、少なくとも前記結果取得処理を実行するように構成され、前記第2実行装置は、少なくとも前記再学習処理を実行するように構成されている加工支援システムである。
【0028】
上記加工支援システムでは、第2実行装置が再学習処理を実行する。そのため、たとえば第2実行装置をユーザ端末とは別の装置が備えることにより、複数のユーザ端末のそれぞれによる結果取得処理によって取得されたデータを用いて再学習処理を実行することが容易となる。
【0029】
14.上記12記載の加工支援システムにおける前記第1実行装置を備える加工支援装置である。
15.上記13記載の加工支援システムにおける前記第1実行装置を備える加工支援装置である。
【0030】
なお、上記1~11記載の加工支援装置と、上記12または13記載の加工支援システムにおいて、前記加工結果は、複数の項目を有し、前記探索処理は、複数のパレート最適解を探索する処理であってもよい。
【0031】
また、上記1~11記載の加工支援装置と、上記12または13記載の加工支援システムにおいて、前記加工結果変数の値は、前記加工結果の確率分布を示す変数を含み、前記探索処理は、前記加工結果の確率分布が、前記要求仕様を満たさない確率が閾値未満の場合に、前記要求仕様を所定以上満たすと見なす処理であり、前記加工条件通知処理は、前記探索処理によって探索された前記加工条件に対応する前記加工結果の確率分布を通知する処理を含み、前記変更結果通知処理は、前記変更する指示に従った前記加工条件変数の値を前記加工結果算出処理の入力として得られる前記加工結果変数の値に応じた前記加工結果の確率分布を通知する処理を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】第1の実施形態にかかる加工支援装置を示すブロック図である。
図2】同実施形態にかかる加工結果出力写像を示す図である。
図3】同実施形態にかかる加工支援装置が実行する処理の手順を示す流れ図である。
図4】同実施形態にかかる加工支援装置が実行する処理の手順を示す流れ図である。
図5】同実施形態にかかる研削加工を支援する表示例を示す図である。
図6】同実施形態にかかる研削加工を支援する表示例を示す図である。
図7】同実施形態にかかる研削加工を支援する表示例を示す図である。
図8】同実施形態にかかる加工結果出力写像データの再学習処理の手順を示す流れ図である。
図9】第2の実施形態にかかる加工支援システムの構成を示すブロック図である。
図10】同実施形態にかかる加工結果出力写像データの再学習処理の手順を示す流れ図である。
図11】第3の実施形態にかかる加工支援システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
<第1の実施形態>
以下、第1の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
「前提構成」
図1に、本実施形態にかかる加工支援装置を示す。
【0034】
図1に示す加工支援装置10には、ユーザインターフェース20を介した入力操作に応じて、ユーザの意思が入力される。また、加工支援装置10は、演算結果を表示装置22に表示する。
【0035】
加工支援装置10は、PU12、および記憶装置14を備えている。PU12は、CPU、GPU、およびTPU等のソフトウェア処理装置である。記憶装置14は、電気的に書き換え可能な不揮発性メモリ、およびディスク媒体等の記憶媒体であってよい。
【0036】
記憶装置14には、加工支援プログラム14a、加工結果出力写像データ14b、組み合わせデータ14c、関係規定データ14d、および再学習プログラム14eが記憶されている。
【0037】
加工支援装置10は、加工支援プログラム14aをPU12が実行することによって、研削加工を支援する処理を実行する。この処理は、ユーザによる要求仕様に適合した研削に関する加工条件を表示する処理を含む。これは、加工結果出力写像データ14bによって規定される写像である加工結果出力写像を利用する処理である。
【0038】
「学習済みモデルについて」
図2に、加工結果出力写像を示す。
図2に示すように、加工結果出力写像は、加工条件を入力として加工結果を出力する写像である。図2には、加工条件として、研削装置の種類、加工工具の種類、左右送り速度、切り込み量、切込速度、取り代、砥石回転数、および研削液流量を例示する。ここで、加工工具の種類は、たとえば研削砥石の種類および研削砥石のサイズ等である。また、切込速度とは、加工対象に対する加工工具の相対的な変位速度である。また、左右送り速度は、切込速度に直交する方向における加工対象に対するの加工工具の相対的な変位速度である。また、取り代は、加工対象から最終的に削り取られる量である。研削液流量は、単位時間当たりに供給する研削液の量である。
【0039】
図2には、加工結果として、幾何精度、除去量、面品位、表面粗さRa、たたき目、送り目、焼け、スクラッチ、角ダレ、および加工時間を例示する。幾何精度は、たとえば平面度や真円度である。除去量は、1度の切込処理によって取り除かれる材料の厚みである。面品位は、加工対象の加工後の表面の粗さを示す。特に、面品位は、表面の高さの最大値と最小値との差を示す。表面粗さRaは、算術平均粗さである。
【0040】
たたき目は、研削装置の振動や砥石の表面形状などに起因する加工対象表面の模様で、主に、加工方向に対して垂直な方向に現れる模様である。ここで、加工方向とは、加工対象と砥石との相対的な移動方向である。たたき目は、研削加工の熟練者が目視でその度合いを判定するのが常である。ただし、ここでは、熟練者が判断する度合いを数値化している。
【0041】
送り目は、研削加工の運動精度や砥石を含めた剛性に起因する加工対象表面に現れる模様で、主に材料の送り方向に現れる模様である。送り目は、研削加工の熟練者が目視でその度合いを判定するのが常である。ただし、ここでは、熟練者が判断する度合いを数値化している。
【0042】
焼けは、加工対象の表面が加工熱の影響で、変質した状態を示す。焼けは、通常は、研削加工の熟練者が熱による表面の変色を目視することによって、その度合いを判定するのが常である。ただし、ここでは、熟練者が判断する度合いを数値化している。
【0043】
スクラッチは、砥石の砥粒の脱落や、研削液からのゴミが研削箇所に混入することに起因して生じる、加工対象の表面に入った一筋の傷である。
角ダレは、加工対象の周辺部分が過度に削れてしまう度合いを示す。
【0044】
加工対象出力写像は、学習済みモデルである。加工対象出力写像は、熟練者が実際に行った研削加工の結果と、そのときの加工条件とを訓練データとする。なお、訓練データの数を増やす目的で、実験計画法によって定めたいくつかの加工条件による研削加工を実際に実行して加工結果を得ることにより、訓練データを追加してもよい。訓練データのうち、上記たたき目、送り目、焼け、スクラッチは、熟練者の目視により熟練者が数値を定めることによって訓練データを生成する。また、研削装置の種類、加工工具の種類等は、ラベル変数によって定義する。
【0045】
加工対象出力写像は、回帰モデルである。特に加工対象出力写像は、加工結果の各項目についての確率分布を出力する写像である。確率分布は、一例として、正規分布である。その場合、加工結果出力写像は、一例として、加工結果の各項目について、平均および分散を示す変数を出力する写像となる。
【0046】
本実施形態では、一例として加工対象出力写像をニューラルネットワークによって構成する。詳しくは、ニューラルネットワークは、全結合順伝播型のネットワークである。また、ニューラルネットワークは、1例として、中間層の層数が2~7層である。また、各中間層のノードの数は、一例として、30~200である。中間層同士でノードの数は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0047】
「研削加工支援」
図3および図4に、加工支援装置10が実行する処理の手順を示す。図3および図4に示す処理は、加工支援プログラム14aをPU12がたとえば所定周期で繰り返し実行することによって実現される。
【0048】
図3および図4に示す一連の処理において、PU12は、まず、ユーザインターフェース20の操作によって、研削加工の要求仕様が入力されたか否かを判定する(S10)。要求仕様は、上記加工結果に対する要求を示す。すなわち、たとえば面品位が「x」以下等、加工結果として許容できる範囲を指定したものである。
【0049】
PU12は、要求仕様が入力されたと判定する場合(S10:YES)、要求仕様を記憶装置14に一旦記憶する(S12)。次に、PU12は、ユーザインターフェース20の操作によって、加工条件の一部がユーザによって指定されたか否かを判定する(S14)。これは、たとえばユーザが使用できる研削加工装置が限定されていたり、ユーザが用いる研削工具が限定されていたりする場合に、ユーザが実現できる加工条件を把握するための処理である。
【0050】
PU12は、加工条件の一部がユーザによって指定されたと判定する場合(S14:YES)、記憶装置14に、指定された加工条件を一旦記憶する(S16)。PU12は、S16の処理を完了する場合と、S14の処理において否定判定する場合と、には、要求仕様を示すベクトルを次元圧縮した第1成分と第2成分とを算出する(S18)。
【0051】
ここで、要求仕様を示すベクトルを第1成分および第2成分に変換する処理は、上記組み合わせデータ14cを用いて定義されている。組み合わせデータ14cは、熟練者が過去に実際に行った研削加工における加工結果とその時の加工条件との組を示すデータである。組み合わせデータ14cは、加工結果出力写像の学習のための訓練データであってもよい。S18の処理では、PU12は、まず、組み合わせデータ14cの加工結果のうちの要求仕様に該当する項目のみを抽出する。すなわち、たとえば、要求仕様に加工時間が含まれていない場合、組み合わせデータ14cのうち加工時間以外の項目を抽出する。そして、抽出した加工結果の項目と要求仕様の加工結果とのベクトルの第1主成分および第2主成分を算出する。
【0052】
次にPU12は、組み合わせデータ14cの加工結果のうちの要求仕様に最も近いものに対応する加工条件を探索する。ここで加工結果と要求仕様との近さは、上記S18の処理における第1主成分および第2主成分によって定義される点同士のノルム等によって定量化すればよい。そして、探索した最も近い加工条件を、要求仕様を満たす加工条件の候補として選択する(S20)。
【0053】
ただし、PU12は、S16の処理を実行した場合、S20の処理において、組み合わせデータ14cが示す加工条件および加工結果の組のうち、S16の処理によって指定された条件に一致しない組を除外する。詳しくは、PU12は、組み合わせデータ14cが示す加工条件および加工結果の組のうち、S16の処理によって指定された条件に一致しない組以外の組が示す加工条件を要求仕様を満たす加工条件の候補とする。
【0054】
また、PU12は、組み合わせデータ14cが示す加工条件および加工結果の組のうち、上記関係規定データ14dによって規定された加工条件同士の関係を満たさないものについては、加工条件の候補から除外する。
【0055】
関係規定データ14dは、工学における理論によって規定された加工条件の項目同士の関係と、熟練者の知見によって得られた加工条件の項目同士の関係とを規定するデータである。
【0056】
工学における理論によって規定された加工条件の項目同士の関係は、理論式から得られる一義的な関係に幅を持たせた関係としてもよい。すなわち、加工条件を示す2つの項目x,yの間にy=2・xの関係が理論的に導かれている場合、「2・x-δ≦y≦2・x+δ」を関係規定データに含めてもよい。
【0057】
熟練者の知見による関係についても同様に、不等式等で表現される関係を含む。また、これ以外に、たとえば、加工対象が超硬合金の場合、加工工具としての砥石をダイヤモンドとするなどの関係であってもよい。
【0058】
次にPU12は、S20の処理によって選択した加工条件を基準として、この加工条件を変更することによって、N個の加工条件の候補を生成する(S22)。ここで、Nは複数である。なお、加工条件の候補の1つである探索対象(1)は、S20の処理によって選択された加工条件である。また、探索対象(2)~探索対象(N)は、S20の処理によって選択された加工条件を変更することによって生成される。詳しくは、PU12は、S20の処理によって選択された加工条件の複数の項目のそれぞれについて、同項目の値との差が小さくなる変更がなされる確率を、同項目の値との差が大きくなる変更がなされる確率よりも大きくする条件で、加工条件を変更する。なお、上記差が小さくなる変更がなされる確率を同差が大きくなる変更がなされる確率よりも大きくする条件は、加工条件のうちの連続変数に限って適用してもよい。換言すれば、研削装置および研削工具等には、この条件を適用しなくてもよい。なお、ラベル変数等で定義されている加工条件の項目についても、同項目内での近さを定義することによって、上記条件を適用してもよい。
【0059】
ただし、PU12は、S16の処理を実行した場合、S22の処理において、S16の処理によって指定された条件に一致しない加工条件への変更を禁止する。これにより、S16の処理が実行された場合、探索対象(1)~(N)は、S16の処理によって記憶された条件を満たす。また、PU12は、上記関係規定データ14dによって規定された加工条件同士の関係を満たさない加工条件への変更を禁止する。これにより、探索対象(1)~(N)は、関係規定データ14dによって規定された関係を満たす。
【0060】
次にPU12は、探索対象を指定するラベル変数iに「1」を代入する(S24)。そして、PU12は、探索対象(i)を加工結果出力写像に入力することによって、加工結果の各項目に関する確率分布を算出する(S26)。
【0061】
次にPU12は、ラベル変数iがNであるか否かを判定する(S28)。PU12は、ラベル変数iがNではないと判定する場合(S28:NO)、ラベル変数iをインクリメントして(S30)、S26の処理に戻る。
【0062】
一方、PU12は、ラベル変数iがNであると判定する場合(S28:YES)、探索対象(1)~(N)に対応するN個の加工結果のうち、パレート最適解(1)~(M)を決定する(S32)。すなわち、加工結果の項目が複数あることから、PU12は、要求仕様を満たす最適な1つの加工条件を絞り込む代わりに、M(<N)個のパレート最適解を決定する。ただし、Mは「1」の場合もある。
【0063】
図4に移り、PU12は、探索対象(1)~(N)のそれぞれについて、加工結果の各項目への寄与度を算出する(S34)。すなわち、探索対象(1)~(N)のそれぞれについて、加工結果の各項目に、加工条件の各項目が寄与する度合いを算出する。詳しくは、PU12は、探索対象(1)~(N)のそれぞれについて、加工条件の複数の項目のうちの着目する項目以外を周辺化した状態で着目する項目の値を変化させた際の加工結果の変化によって、加工結果の各項目への着目する項目の寄与度を算出する。たとえばPU12は、探索対象(1)~(N)のそれぞれについて、切り込み量以外を周辺化した状態で切り込み量の値を変化させることによって、加工結果の各項目への切り込み量の寄与度を算出すればよい。具体的には、PU12は、寄与度としてSHAP値を算出してもよい。
【0064】
S34の処理は、加工条件の各項目をどのように変化させると加工結果が要求仕様によりいっそう適合するかを特定する処理を含む。すなわち、たとえば、加工結果の各項目のそれぞれについて、要求仕様にいっそう適合させる上では切り込み量を大きくすべきか小さくすべきかを特定する処理を含む。
【0065】
次にPU12は、表示装置22を操作して、パレート最適解を表示する(S36)。
図5に、S36の処理を例示する。
図5に示すように、PU12は、表示装置22に、パレート最適解を示す最適解リスト30と、加工結果の確率分布を示す存在確率マップ32と、を表示させる。最適解リスト30は、パレート最適解に該当する加工条件(加工システム)の項目リストである。PU12は、複数のパレート最適解がある場合、それらパレート最適解毎に、最適解リスト30を生成して表示装置22に表示させる。図5には、パレート最適解が3つであった場合を例示している。詳しくは、PU12は、現在選択されている最適解リスト30の内容を表示する一方、選択されていない最適解リスト30については、リストの輪郭のみを表示する。PU12は、複数のパレート最適解が存在する場合、現在選択されている最適解に対応する存在確率マップ32を表示装置22に表示させる。すなわち、図5に示す存在確率マップ32は、研削装置が「4」であって加工工具が「3」である等の加工条件による加工結果の確率分布を示す。
【0066】
存在確率マップ32は、加工結果の各項目について、横軸を各項目の値として且つ、縦軸を確率とする確率分布曲線CPと、要求仕様を示す閾値Ltとを含む画像である。閾値Ltは、加工結果の各項目について要求仕様が示す値である。たとえば、加工結果のうちの幾何精度に関する要求仕様が「0.1」以下の場合、PU12は、幾何精度の閾値Ltを「0.1」とする。PU12は、閾値Ltを満たす確率が所定率以上の場合に、その項目について要求仕様を所定以上満たすと判定する。すなわち、本実施形態においては、パレート最適解は、いずれも、加工結果の各項目が要求仕様を満たす確率が所定率以上となる解である。
【0067】
図4に戻り、PU12は、ユーザインターフェース20の操作によって、存在確率マップ32に表示した加工結果の項目のうちの特定の項目が選択されたか否かを判定する(S38)。PU12は、特定の項目が選択されたと判定する場合(S38:YES)、表示装置22を操作することによって、その項目に関するS34の処理による算出結果を表示する(S40)。すなわち、PU12は、現在選択されているパレート最適解に対応するS34の処理による算出結果を表示装置22に表示する。
【0068】
図6に、S38,S40の処理を例示する。
図6には、カーソル40によって加工結果の項目のうちの「幾何精度」が選択された状態を例示している。これにより、PU12は、表示装置22に、現在選択されているパレート最適解に関する寄与度グラフ34を表示させる。
【0069】
寄与度グラフ34は、加工条件の各項目について、最適解リスト30のうちの選択されているパレート最適解を基準線Lrに位置付ける。そして、加工条件の各項目について、どのように変更すると、要求仕様をより確実に満たすかについての情報を表示する。すなわち、図6に示す例では左右送り速度の棒グラフが右側に延びていることから、左右送り速度を高めることが、要求仕様をより確実に満たすことを示す。また、切り込み量の棒グラフが左側に延びていることから、切り込み量を小さくすることが、要求仕様をより確実に満たすことを示す。また、左右送り速度の棒グラフが基準線Lrから延びる量の方が、切り込み量の棒グラフが基準線Lrから延びる量よりも長いことから、切り込み量の寄与度よりも左右送り速度の寄与度の方が大きいことを示す。
【0070】
なお、寄与度グラフ34は、加工条件の各項目を、寄与度が大きい順に並べて表示したグラフとしてもよい。
図4に戻り、PU12は、ユーザインターフェース20の操作によって、加工条件の変更指令が入力されたか否かを判定する(S42)。PU12は、変更指令が入力された場合(S42:YES)、変更指令に従った加工条件を加工結果出力写像に入力することによって、加工結果の確率分布を算出する(S44)。そしてPU12は、表示装置22を操作することによって、S44の処理による算出結果を表示する(S46)。
【0071】
図7に、S42~S46の処理を例示する。
図7には、左右送り速度を増大させる変更指令がなされることにより、幾何精度の確率分布曲線CPが左側に移動する一方、面品位の確率分布曲線CPが右側に移動した例を示す。なお、加工条件の変更指令は、最適解リスト30において選択されているパレート最適解の該当する加工条件の項目の値を、ユーザインターフェース20の操作によって移動させる処理であってもよい。
【0072】
図4に戻り、PU12は、S46の処理を完了する場合と、S38,S42の処理において否定判定する場合と、には、ユーザインターフェース20の操作によって、表示を終了する指令が入力されたか否かを判定する(S48)。PU12は、終了する指令が入力されていないと判定する場合(S48:NO)、S38の処理に戻る。
【0073】
一方、PU12は、終了する指令が入力されたと判定する場合(S48:YES)と、S10の処理において否定判定する場合と、には、図3および図4に示す一連の処理を一旦終了する。
【0074】
「再学習処理」
図8に、加工結果出力写像の再学習処理の手順を示す。図8に示す処理は、再学習プログラム14eをPU12がたとえば所定周期で繰り返し実行することにより実現される。
【0075】
図8に示す一連の処理において、PU12は、まず、ユーザインターフェース20の操作によって、実際の研削加工の加工条件と加工結果との組の入力がなされたか否かを判定する(S50)。上記入力は、図3および図4の処理を利用して実際に採用した加工条件による研削加工がなされた後に、ユーザが加工結果を計測した場合等になされる。PU12は、実際の研削加工の加工条件と加工結果との組の入力がなされたと判定する場合(S50:YES)、加工条件と加工結果との組を記憶装置14に記憶する(S52)。
【0076】
PU12は、S52の処理によって記憶装置14に記憶されたデータ量が所定量以上となったか否かを判定する(S54)。所定量は、再学習をするトリガを定める量である。PU12は、上記データ量が所定量以上となったと判定する場合(S54:YES)、加工結果出力写像の再学習を実行する(S56)。すなわち、PU12は、記憶装置14に記憶した加工結果を用いて、再学習のための訓練データにおける加工結果の各項目の平均および分散を定める。この処理は、以前に訓練データとして用いた加工結果の各項目の平均および分散を修正する処理としてもよい。そして、これら平均および分散と、新たに得られた加工条件とを訓練データとして、加工結果出力写像データ14bが有するパラメータを更新する。
【0077】
PU12は、再学習が完了すると、記憶装置14に記憶されていた加工結果出力写像データ14bを、再学習によって得られた新たなパラメータによって更新する(S58)。
なお、PU12は、S58の処理を完了する場合と、S50,S54の処理において否定判定する場合と、には図8に示す一連の処理を一旦終了する。ちなみに、PU12は、S56の処理を完了する場合、S52の処理によって記憶したデータを消去する。ただし、その後、S56の処理を再度実行するうえで、それまでの全ての訓練データから平均および分散を求めるためには、平均および分散を定めるためのデータを記憶装置14の別の記憶領域の記憶しておくことが望ましい。
【0078】
「本実施形態の作用および効果」
ユーザが要求仕様を入力すると、PU12は、加工結果出力写像に様々な加工条件を入力したときの加工結果のうち要求仕様を所定以上満たすものを探索する。そして所定以上満たす加工結果と加工条件とを表示装置22に表示させる。ここで、加工結果出力写像は、熟練者が実行した実際の研削加工から生成した訓練データを用いて学習された学習済みモデルである。そのため、要求仕様が与えられた場合に熟練者が選択する加工条件に近い加工条件が表示装置22に表示される。
【0079】
また、PU12は、ユーザが加工条件の変更を指示する場合、変更後の加工条件を加工結果出力写像に入力することによって加工結果を算出する。そしてPU12は、変更後の加工条件に対応する加工結果を表示装置22に表示させる。これにより、ユーザは、加工条件を変更すると加工結果がどのように変わるかを把握できる。これにより、ユーザは、加工条件の変化に対する加工結果の変化を把握したうえで実際の加工条件を選択することができる。
【0080】
また、ユーザによる変更指示に応じた加工結果が表示されることにより、研削加工の経験が浅い作業者を教育することも可能となる。
以上説明した本実施形態によれば、さらに以下に記載する作用および効果が得られる。
【0081】
(1-1)PU12は、要求仕様を所定以上満たす加工条件のみを表示装置22に表示させる代わりに、同加工条件と加工結果の確率分布とを表示装置22に表示させた。ここで、研削加工は様々な要因が絡むために、加工条件として定義した項目が全て同じであっても、必ずしも加工結果が一義的に定まるものではない。そのため、加工結果の確率分布を表示することにより、研削加工によって実際に得られる加工結果に関する情報をより正確にユーザに通知できる。
【0082】
(1-2)PU12は、ユーザが加工条件の変更を指示する場合、加工条件の変更によって確率分布がどのように変化するかを表示した。これにより、ユーザは、要求仕様をより確実に満たすうえでどのように加工条件を変更すればよいかを把握できる。
【0083】
(1-3)加工結果の複数の項目のうちのある項目をより望ましい値とすると別の項目が望ましい値から外れる等、加工結果の複数の項目には、互いに背反の関係を有する項目が存在しうる。そしてその場合に熟練者が最終的に最適と判断する加工条件を絞り込むロジックを作成することには大きな工数を要する。
【0084】
そこで、PU12は、要求仕様に対するパレート最適解を複数表示可能とした。これにより、ユーザは、複数のパレート最適解が表示されると、その加工結果の確率分布を見たり、最適解の加工条件を変更した場合の加工結果を見たりすることができる。これにより、ユーザが要求仕様にとって最適な加工条件を定めることを支援できる。
【0085】
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0086】
「前提構成」
図9に、本実施支援にかかる加工支援システムを示す。なお、図9において、図1に示した部材に相当する部材については、便宜上、同一の符号を付している。
【0087】
加工支援システムは、クライアント端末としての複数の加工支援装置10(1),10(2),…を備える。加工支援装置10の後のカッコ内の数字は、加工支援装置10を識別するために付与した。加工支援装置10(1),10(2),…は、互いに異なる加工現場に配置される端末である。加工支援装置10(1),10(2),…は、互いに異なる加工業者が所持する端末であってもよい。なお、以下では、複数の加工支援装置10(1),10(2),…を総括する場合、加工支援装置10と表記する。また、図10において、図1に示した加工支援装置10に対応する部材については、便宜上、同一の符号を付与している。
【0088】
図9に示すように、加工支援装置10の記憶装置14には、再学習プログラム14eが記憶されていない。また、加工支援装置10は、通信機16を備える。通信機16は、ネットワーク70を介して加工支援システムが備えるサーバ装置60と通信可能となっている。
【0089】
サーバ装置60は、加工支援装置10に、最新の加工結果出力写像データ14bを配信する装置である。サーバ装置60は、PU62、記憶装置64、および通信機66を備える。通信機66は、ネットワーク70を介して加工支援装置10と通信するための装置である。PU62は、CPU、GPU、およびTPU等のソフトウェア処理装置である。記憶装置64は、電気的に書き換え可能な不揮発性メモリ、およびディスク媒体等の記憶媒体であってよい。
【0090】
記憶装置64には、加工結果出力写像データ14bおよび再学習プログラム14eが記憶されている。
「再学習処理」
図10に、加工結果出力写像データ14bの再学習に関する処理の手順を示す。図10に示す処理は、次の2つの処理よりなる。1つは、加工支援プログラム14aをPU12がたとえば所定周期で繰り返し実行することによって実現される処理である。もう1つは、再学習プログラム14eをPU62がたとえば所定周期で繰り返し実行することによって実現される処理である。ちなみに、本実施形態における加工支援プログラム14aは、PU12が実行する図10の処理と、図3および図4の処理とを実行させる指令を含む。なお、以下では、実際の再学習のための処理の時系列に従って、図10に示す一連の処理を説明する。
【0091】
図10に示す一連の処理において、加工支援装置10のPU12は、まず、ユーザインターフェース20の操作によって、実際の研削加工の加工条件と加工結果との組の入力がなされたか否かを判定する(S60)。この処理は、S50の処理に相当する。PU12は、実際の研削加工の加工条件と加工結果との組の入力がなされたと判定する場合(S60:YES)、通信機16を操作することによって、同組のデータをサーバ装置60に送信する(S62)。
【0092】
これに対し、サーバ装置60のPU62は、加工条件および加工結果の組に関するデータを受信する(S70)。そして、PU62は、記憶装置64に、加工条件および加工結果の組に関するデータを記憶する(S72)。次にPU62は、記憶装置64に記憶された加工条件および加工結果の組に関するデータの量が所定量以上であるか否かを判定する(S74)。この処理は、S54の処理に相当する。
【0093】
PU62は、上記データの量が所定量以上であると判定する場合(S74:YES)、再学習処理を実行する(S78)。この処理は、S56の処理に相当する。そして、PU62は、記憶装置64に記憶されている加工結果出力写像データ14bを更新する(S80)。そしてPU62は、通信機66を操作して、更新した加工結果出力写像データ14bを加工支援装置10に送信する(S82)。
【0094】
なお、PU62は、S82の処理を完了する場合、図10に示すPU62が実行する処理を一旦終了する。
一方、加工支援装置10のPU12は、更新された加工結果出力写像データ14bを受信する(S64)。そしてPU12は、記憶装置14に記憶されている加工結果出力写像データ14bを、受信した加工結果出力写像データ14bに更新する(S66)。
【0095】
なお、PU12は、S66の処理を完了する場合と、S60の処理において否定判定する場合と、には、図10に示す処理のうちのPU12が実行する処理を一旦終了する。
「本実施形態の作用効果」
複数の加工現場において、実際に研削加工がなされると、各加工現場のユーザは、その時の加工条件と加工結果とを加工支援装置10に入力可能である。PU12は、加工条件と加工結果とが入力されると、それらを示すデータをサーバ装置60に送信する。サーバ装置60のPU62は、複数の加工支援装置10から送信されたデータを用いて加工結果出力写像データ14bを更新する。そして、PU62は、更新した加工結果出力写像データ14bを、複数の加工現場の加工支援装置10に送信する。
【0096】
このように、PU12は、複数の加工現場のそれぞれで実際になされた加工に関するデータを用いて、加工結果出力写像データ14bを更新する。そのため、再学習のためのデータ量を増やしやすい。したがって、加工結果出力写像データ14bを、加工結果を高精度に予測するデータへと更新しやすい。
【0097】
<第3の実施形態>
以下、第3の実施形態について、第2の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0098】
「前提構成」
図11に、本実施支援にかかる加工支援システムを示す。なお、図11において、図9に示した部材に対応する部材については、便宜上、同一の符号を付している。
【0099】
図11に示すように、加工支援装置10の記憶装置14には、クライアント用加工支援プログラム14fが記憶されている。一方、サーバ装置60の記憶装置64には、加工結果出力写像データ14b、組み合わせデータ14c、関係規定データ14d、再学習プログラム14e、およびサーバ用加工支援プログラム14gが記憶されている。
【0100】
サーバ用加工支援プログラム14gは、要求仕様、S14の処理に関連する加工条件の指定、S38に関連する加工結果の選択、およびS42の処理に関連する加工条件の変更指令を、加工支援装置10から受信する指令を含む。また、サーバ用加工支援プログラム14gは、S10~S34,S38,S42,S44の処理を実行する指令を含む。また、サーバ用加工支援プログラム14gは、通信機66を操作して、演算結果を加工支援装置10に送信する指令を含む。
【0101】
クライアント用加工支援プログラム14fは、要求仕様、S14の処理に関連する加工条件の指定、S38に関連する加工結果の選択、およびS42の処理に関連する加工条件の変更指令を受け取る指令を含む。また、クライアント用加工支援プログラム14fは、通信機16を操作して、受け取った入力をサーバ装置60に送信する指令を含む。また、クライアント用加工支援プログラム14fは、サーバ装置60から送信された演算結果を受信する指令を含む。また、クライアント用加工支援プログラム14fは、S36,S40,S46の処理のように、表示装置22に画像を表示する処理を実行する指令を含む。
【0102】
このように、本実施形態では、加工支援装置10は、ユーザから指令を受け取ることによって、受け取った指令をサーバ装置60に送信する。また、加工支援装置10は、サーバ装置60による演算結果を受信することによって、表示装置22に演算結果を表示する。
【0103】
<対応関係>
上記実施形態における事項と、上記「課題を解決するための手段」の欄に記載した事項との対応関係は、次の通りである。以下では、「課題を解決するための手段」の欄に記載した解決手段の番号毎に、対応関係を示している。[1]実行装置は、図1のPU12に対応する。記憶装置は、図1の記憶装置14に対応する。要求取得処理は、S10,S12の処理に対応する。加工結果算出処理は、S26の処理に対応する。探索処理は、S20~S24,S28~S32の処理に対応する。加工結果通知処理は、S36の処理に対応する。加工条件変更受付処理は、S42の処理に対応する。変更結果通知処理は、S46の処理に対応する。「要求仕様を所定以上満たす値」は、加工結果の項目のそれぞれが要求仕様を満たす確率が所定率以上となる加工結果に対応する。[2]指定項目受付処理は、S38の処理に対応する。寄与度算出処理は、S34の処理に対応する。寄与度通知処理は、S40の処理に対応する。[3]図6に対応する。[4]加工の精度を示す変数は、幾何精度、除去量、面品位、表面粗さRa、スクラッチ、および角ダレに対応する。負荷を示す変数は、加工時間に対応する。[5]研削速度を示す変数は、切込速度および左右送り速度に対応する。[6]取得処理は、S20の処理に対応する。変更処理は、S22の処理のうち、探索候補(2)~(N)を生成する処理に対応する。[7]S22の処理において、S20の処理において選択した加工条件の各項目を確率分布に従って変更することに対応する。[8]加工条件指定受付処理は、S14,S16の処理に対応する。[9]探索処理は、S20,S22の処理において関係規定データ14dによって規定される制約を満たす探索候補を用いることに対応する。[10]結果取得処理は、S50,S52の処理に対応する。再学習処理は、S56の処理に対応する。[11]図2に対応する。[12,14,15]第1実行装置は、図11のPU12に対応する。第2実行装置は、図11のPU62に対応する。[13,14,15]第1実行装置は、図9のPU12および図11のPU12に対応する。第2実行装置は、図9のPU62および図11のPU62に対応する。
【0104】
<その他の実施形態>
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0105】
「加工条件変数について」
・加工条件変数は、上記実施形態において例示した変数の組からなるものに限らない。たとえば、上記実施形態において例示した複数の項目のそれぞれを示す変数の一部のみから構成されてもよい。
【0106】
・加工条件変数は、上記実施形態において例示した変数に限らない。たとえば、砥石を回転させるモータの回転速度を示す変数を含んでもよい。また、たとえば、加工助剤の種類を特定する変数を含めてもよい。またたとえば、計測器の種類を特定する変数を含めてもよい。
【0107】
「加工結果変数について」
・加工結果変数は、上記実施形態において例示した変数の組からなるものに限らない。たとえば、上記実施形態において例示した複数の項目のそれぞれを示す変数の一部のみから構成されてもよい。
【0108】
・加工結果変数である、負荷を示す変数としては、加工時間に限らない。たとえば加工にかかるコストを示す変数であってもよい。またたとえば、加工に要する消費電力を示す変数であってもよい。
【0109】
・加工結果変数としては、上記実施形態において例示した変数に限らない。
「加工結果出力写像について」
・加工結果出力写像を構成するニューラルネットワークとしては、全結合順伝播型のニューラルネットワークに限らない。たとえば注意機構を備えたニューラルネットワークであってもよい。
【0110】
・加工結果出力写像を構成する学習済みモデルが、ニューラルネットワークであることは必須ではない。加工結果出力写像を構成する学習済みモデルは、たとえば、勾配ブースティング決定木であってもよい。またたとえば、加工結果出力写像を構成する学習済みモデルは、サポートベクトル回帰モデルであってもよい。
【0111】
・加工結果出力写像を構成する学習済みモデルが、回帰モデルであることは必須ではない。たとえば識別モデルであってもよい。その場合、加工結果出力写像を構成する学習済みモデルの出力を、ロジスティックシグモイド関数の出力としてもよい。これにより、学習済みモデルの出力を、要求仕様を満たす確率変数の値とすることができる。その場合、加工条件を変更したときの要求仕様を満たす確率の変化を表示させることが可能となる。そのため、加工条件の変更結果を提示する処理の利用価値が高い。
【0112】
なお、加工結果出力写像を構成する学習済みモデルが、確率分布を示すことは必須ではない。たとえば、出力の符号が正であるか負であるかに応じて、要求仕様を満たすか満たさないかを示すサポートベクトルマシン等の識別モデルとしてもよい。その場合、加工結果を示す複数の項目のうちの所定数以上を満たす加工結果を、要求仕様を所定以上満たす加工結果とすればよい。
【0113】
「関係規定データについて」
・関係規定データ14dが、工学における理論によって規定された加工条件の項目同士の関係と、熟練者の知見によって得られた加工条件の項目同士の関係と、を規定するデータであることは必須ではない。たとえば、工学における理論によって規定された加工条件の項目同士の関係を規定するデータのみから構成されていてもよい。またたとえば、熟練者の知見によって得られた加工条件の項目同士の関係を規定するデータのみから構成されていてもよい。
【0114】
「指定項目受付処理について」
・指定項目受付処理が、該当する加工結果の表示の選択を受け付ける処理であることは必須ではない。指定項目受付処理は、たとえば、PU12が加工結果の項目の一覧表を表示して、一覧表の中から特定の項目が選択される場合に、その選択を受け付ける処理であってもよい。
【0115】
「寄与度通知処理について」
・寄与度通知処理が、加工条件をどのように変更することにより、要求仕様をより確実に満たすようになるかの情報を含むことは必須ではない。寄与度通知処理は、たとえば、加工条件の複数の項目同士の寄与度の相対的な大きさのみを示す処理であってもよい。
【0116】
・寄与度通知処理が、加工条件の複数の項目の全てについて、寄与度を通知することは必須ではない。たとえば、寄与度が大きい上位所定数個の項目の寄与度に限って通知する処理であってもよい。
【0117】
「取得処理について」
・S18の処理においては、組み合わせデータ14cが示す加工結果から抽出した項目と要求仕様とのベクトルの第1主成分および第2主成分を算出したが、これに限らない。たとえば、PU12は、抽出した項目からなるベクトルの第1主成分と第2主成分とを抽出してもよい。その場合、PU12は、要求仕様を示すベクトルのうち第1主成分に平行な成分と第2主成分に平行な成分とを算出する。これにより、抽出した項目および要求仕様をともに2次元に圧縮することができる。
【0118】
・取得処理は、組み合わせデータに含まれる加工結果のうちの要求仕様に近いものを、第1主成分および第2主成分を利用して選択する処理に限らない。たとえば、加工結果および要求仕様を3つ以上の主成分のそれぞれと平行な方向の成分によって定量化して用いてもよい。取得処理が、主成分分析を利用する処理であることも必須ではない。取得処理は、たとえば、加工結果を示すベクトルと要求仕様を示すベクトルとのコサイン類似度を利用して、要求仕様を満たす加工条件の候補を取得する処理であってもよい。
【0119】
「変更処理について」
・変更処理が、S20の処理によって選択された加工条件の各項目に近い条件への変更を遠い条件への変更よりも高い確率とする処理に限らない。たとえば、S20の処理によって選択された加工条件の各項目との差が所定以下の条件の中から、均等に変更後の条件を選択する処理であってもよい。
【0120】
「探索処理について」
・探索処理が、組み合わせデータ14cを利用して要求仕様を満たす加工条件の候補をまず1つ取得する処理を含むことは必須ではない。たとえば、組み合わせデータに代えて、要求仕様を示す変数を入力として加工条件を示す変数を出力する写像を利用する処理であってもよい。この写像は、組み合わせデータ14cを訓練データとして学習された学習済みモデルとすればよい。
【0121】
・探索処理が、実際に行われた加工における、加工条件と加工結果とによって生成されたデータを利用して、加工条件の候補を1つ定める処理を含むことは必須ではない。
・探索処理が、S14,S16の処理によって指定された指定条件を制約条件として、加工条件を探索する処理であることは必須ではない。
【0122】
・探索処理が、関係規定データ14dによって規定された関係を制約条件として、加工条件を探索する処理であることは必須ではない。
・探索処理が、パレート最適解を探索する処理であることは必須ではない。たとえば、加工結果の各項目毎に、要求仕様を満たす確率に応じたポイントを付与して且つ、ポイントの合計に応じて加工結果を1つ選択する処理であってもよい。
【0123】
「組み合わせデータについて」
・上記実施形態では、再学習がなされる場合に組み合わせデータ14cを更新することについて特に言及しなかった。しかし、再学習用の新たな訓練データを組み合わせデータ14cに加えることによって、組み合わせデータ14cを更新してもよい。なお、「探索処理について」の欄に記載したように、要求仕様を示す変数を入力として加工条件を示す変数を出力する写像を用いる場合には、これを再学習用の訓練データを用いて更新してもよい。
【0124】
「実行装置について」
・実行装置としては、ソフトウェア処理を実行するものに限らない。たとえば、上記実施形態において実行される処理の少なくとも一部を実行するたとえばASIC等の専用のハードウェア回路を備えてもよい。すなわち、実行装置は、以下の(a)~(c)のいずれかの構成を備える処理回路を含んでいればよい。(a)上記処理の全てを、プログラムに従って実行する処理装置を備える処理回路。(b)上記処理の一部をプログラムに従って実行する処理装置と、残りの処理を実行する専用のハードウェア回路とを備える処理回路。(c)上記処理の全てを実行する専用のハードウェア回路を備える処理回路。ここで、処理装置およびプログラム格納装置を備えたソフトウェア実行装置は、複数であってもよい。また、専用のハードウェア回路は複数であってもよい。
【0125】
「加工支援装置について」
図1において、記憶装置14に再学習プログラム14eを記憶していなくてもよい。すなわち、加工支援装置10が再学習する機能を有しなくてもよい。
【0126】
「加工支援システムについて」
・上記第3の実施形態では、サーバ装置60が、探索対象の演算、加工結果の確率分布の演算、および寄与度の演算の全てを実行したが、これに限らない。たとえば、S14~S20の処理については、加工支援装置10が実行するなどしてもよい。
【0127】
「加工装置について」
・加工装置が研削加工装置であることは必須ではない。たとえば切削加工装置であってもよい。
【符号の説明】
【0128】
10…加工支援装置
30…最適解リスト
32…存在確率マップ
34…寄与度グラフ
40…カーソル
60…サーバ装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11