IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

2025-21627異物付き中間膜から異物を分離する方法、及び異物付き中間膜から異物を分離する装置
<>
  • -異物付き中間膜から異物を分離する方法、及び異物付き中間膜から異物を分離する装置 図1
  • -異物付き中間膜から異物を分離する方法、及び異物付き中間膜から異物を分離する装置 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021627
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】異物付き中間膜から異物を分離する方法、及び異物付き中間膜から異物を分離する装置
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/08 20060101AFI20250206BHJP
   B09B 3/80 20220101ALI20250206BHJP
   B09B 101/75 20220101ALN20250206BHJP
【FI】
C08J11/08 ZAB
B09B3/80
B09B101:75
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125458
(22)【出願日】2023-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】江畑 研一
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 公裕
(72)【発明者】
【氏名】服部 風太
【テーマコード(参考)】
4D004
4F401
【Fターム(参考)】
4D004AA07
4D004BA07
4D004CA04
4D004CA13
4D004CA41
4D004CB44
4D004CC15
4D004DA03
4D004DA20
4F401AA15
4F401BA06
4F401BA13
4F401CA14
4F401CA22
4F401CA25
4F401CA48
4F401CA50
4F401CA51
4F401CB01
4F401CB14
4F401EA59
4F401EA63
4F401FA05Z
4F401FA07Z
(57)【要約】
【課題】合わせガラスから得られる異物付き中間膜から、より短時間で異物を分離できる方法を提供する。
【解決手段】中間膜を備えた合わせガラスから得られる異物付き中間膜から異物を分離する方法が、前記合わせガラスから得られる異物付き中間膜片を、膨潤溶媒によって膨潤させる膨潤工程と、前記異物付き中間膜片に含まれるポリビニルブチラールを溶解溶媒で溶解する溶解工程と、前記異物と、前記ポリビニルブチラールを含む溶液とを分離する分離工程と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間膜を備えた合わせガラスから得られる異物付き中間膜から異物を分離する方法であって、
前記合わせガラスから得られる異物付き中間膜片を、膨潤溶媒によって膨潤させる膨潤工程と、
前記異物付き中間膜片に含まれるポリビニルブチラールを溶解溶媒で溶解する溶解工程と、
前記異物と、前記ポリビニルブチラールを含む溶液とを分離する分離工程と、を含む、方法。
【請求項2】
前記膨潤溶媒は、カルボン酸エステル及び芳香族炭化水素の1以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶解溶媒は、低級アルコールを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記異物付き中間膜片の質量から異物の質量を差し引いて得られる中間膜片の質量と、前記溶解工程の終了までに投入された全溶媒の質量との合計に対する、前記中間膜片の質量の割合は、2.5質量%以上25質量%以下である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリビニルブチラールを含む溶液の粘度は、せん断速度が2.4s-1の条件で30mPa・s以上3000mPa・s以下である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記分離工程を濾過により行う、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記合わせガラスから前記中間膜を分離して得られる前記異物付き中間膜を破砕することによって前記異物付き中間膜片を得る破砕工程をさらに含み、
前記破砕工程において、前記異物付き中間膜を、交差する2方向の切断線に沿って細断する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリビニルブチラールの溶液に含まれている溶媒を回収溶媒として回収し、
前記回収溶媒を、前記膨潤工程及び/又は前記溶解工程において利用することをさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
前記合わせガラスは、自動車用のタングステンワイヤ付き合わせガラスであり、
前記異物はタングステンワイヤである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項10】
中間膜を備えた合わせガラスから得られる異物付き中間膜から異物を分離する装置であって、
前記合わせガラスから得られる異物付き中間膜片を、膨潤溶媒によって膨潤させる膨潤部と、
前記異物付き中間膜片に含まれるポリビニルブチラールを溶解溶媒で溶解する溶解部と、
前記異物と、前記ポリビニルブチラールを含む溶液とを分離する分離部と、を含む、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異物付き中間膜から異物を分離する方法、及び異物付き中間膜から異物を分離する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
不要になった合わせガラスを再利用するためには、合わせガラスに用いられるガラス板及び中間膜をそれぞれ適切に回収する必要がある。しかしながら、近年の合わせガラスは、金属線等の異物が封入されたものが多く、合わせガラスから得られた中間膜にもこのような異物が付着している。異物があると材料の再利用が困難になる場合があるため、異物付き中間膜から異物を分離する技術について様々な検討がなされている。
【0003】
合わせガラスから得られた異物付き中間膜から異物を分離する方法としては、例えば、特許文献1に、廃合わせガラスから得られるガラス微片付中間膜片の中間膜片を有機溶剤に溶かして、中間膜溶液を得る工程を含む方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-285042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されている方法は、中間膜片を有機溶剤に溶かす工程だけでも1日以上の時間を要するものであるため、実用的とは言い難い。
【0006】
上記の点に鑑みて、本発明の一態様は、合わせガラスから得られる異物付き中間膜から、より短時間で異物を分離できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様による方法は、中間膜を備えた合わせガラスから得られる異物付き中間膜から異物を分離する方法であって、前記合わせガラスから得られる異物付き中間膜片を、膨潤溶媒によって膨潤させる膨潤工程と、前記異物付き中間膜片に含まれるポリビニルブチラールを溶解溶媒で溶解する溶解工程と、前記異物と、前記ポリビニルブチラールを含む溶液とを分離する分離工程と、を含む。
【0008】
本発明の一態様による装置は、中間膜を備えた合わせガラスから得られる異物付き中間膜から異物を分離する装置であって、前記合わせガラスから得られる異物付き中間膜片を、膨潤溶媒によって膨潤させる膨潤部と、前記異物付き中間膜片に含まれるポリビニルブチラールを溶解溶媒で溶解する溶解部と、前記異物と、前記ポリビニルブチラールを含む溶液とを分離する分離部と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、合わせガラスから得られる異物付き中間膜から、より短時間で異物を分離できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】合わせガラスの一例を示す図であり、本発明の一実施形態により処理される異物付き中間膜は合わせガラスに由来する。
図2】本発明の一実施形態による異物付き中間膜から異物を分離する方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の具体的な実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。
【0012】
[合わせガラス及び異物付き中間膜]
本発明の一実施形態において処理される異物付き中間膜は、合わせガラスを破砕すること等によって得られる。まず、図1を参照して、合わせガラスについて説明する。図1(a)は、合わせガラス1を車内側から見た平面図であり、図1(b)は、図1(a)のI-I線断面図であり、図1(c)は、図1(a)の部分IIの拡大図である。図1(b)に示すように、合わせガラス1は、車外側のガラス板11と車内側のガラス板12とが、中間膜20を介して貼り合わせてなる構造を有する。
【0013】
合わせガラス1に用いられるガラス板11、12は、ソーダライムシリケートガラス、アルミノシリケートガラス、ボレートガラス、リチウムアルミノシリケートガラス、ホウ珪酸ガラス等のガラス板であってよい。また、ガラス板は、フロート法によって成形されたものが好ましい。また、ガラス板11、12は、未強化であってよいし、風冷強化又は化学強化処理が施された強化ガラスであってもよい。
【0014】
中間膜20は、ポリビニルブチラール(PVB)を含むものとする。また、中間膜20は、ポリビニルブチラール(PVB)以外に可塑剤を含有しているため、可塑性、柔軟性に優れる。可塑剤は、フタル酸エステル、燐酸エステル、脂肪酸エステル、グリコール誘導体類等であってよく、具体例としては、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキシル酸エステル等が挙げられる。さらに、中間膜20は、ポリビニルブチラール(PVB)以外の熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂以外の樹脂、可塑剤以外の添加剤等を含んでいてもよい。中間膜20に含まれるポリビニルブチラール(PVB)の量は、中間膜20全量に対して、50質量%以上90質量%以下であってよい。また、中間膜20に含まれる可塑剤の量は、中間膜20全量に対して、10質量%以上50質量%以下であってよい。このように、中間膜20は柔軟性の高い材料から構成されているので、本実施形態による方法のために、中間膜から中間膜片を得る場合には、カッタ等による切断を利用することが好ましい。
【0015】
中間膜20の厚みは、0.6mm以上1.6mm以下であってよい。このような範囲の厚みであることで、合わせガラスの強度を確保できると共に、過度な厚み増大のために取扱い性を損なうことを防止できる。本実施形態の方法により処理される中間膜片も、上記範囲の厚みを有し得る。
【0016】
また、図1に例示した合わせガラス1は、電熱線30が封入された自動車用窓ガラスである。電熱線30は、図1(a)には図示しないが、図1(b)及び(c)に示すように、合わせガラス1の内部に、互いに離隔して複数配置されている。また、電熱線30は、車内側のガラス板12と一層の中間膜20との間に挟まれ、中間膜20に部分的に埋設されている。このような電熱線30は、図1(a)に示すバスバー40等とも接続され、デアイサー、デフォッガー等の発熱装置を構成する。
【0017】
電熱線30は、例えばタングステン、ニッケル-クロム、鉄-クロム等の金属からなる線であってよい。このうち、電気抵抗が大きく、熱膨張率が低いこと等からタングステンワイヤが使用されることが多い。電熱線がタングステンワイヤである場合、合わせガラス1は、自動車用のタングステンワイヤ付き合わせガラスとなり、異物はタングステンワイヤとなる。
【0018】
合わせガラス1を破砕した場合、電熱線30はガラス板と共に破砕されずに、中間膜20に付着した状態で、ガラス板から分離する。さらに異物付き中間膜を破砕して異物付き中間膜片を得る際にも、電熱線30は中間膜片に付着したままである。
【0019】
本明細書における「異物付き中間膜」の「異物」とは、合わせガラスから取り出された中間膜の表面に付着している、又は中間膜に埋設されている、中間膜以外の材料を指す。よって、異物は、タングステンワイヤに限定されることはなく、電熱線に限定されることもない。例えば、合わせガラスに発熱装置、アンテナ、液晶装置、調光装置、映像投影層、発光層、光起電層、熱反射層等が設けられている場合、合わせガラスを破砕した際に得られる中間膜に上記の構成要素が付いているのであれば、その構成要素が、異物付き中間膜及び異物付き中間膜片における異物となる。なお、破砕前の合わせガラスにアンテナ、液晶装置等が設けられている場合、上記異物は、金属パターン付きの樹脂(PET等)、金属酸化物のパターン等であってよい。いずれの異物であっても、中間膜又は中間膜片に付着した異物の、中間膜又は中間膜片の表面からの厚みは、10μm以上500μm以下となり得る。例えば、異物が電熱線30である場合、電熱線の太さが上記厚みとなり得る。
【0020】
なお、図1(a)に示すように、合わせガラス1には、車内側のガラス板12の周縁部に、黒セラ層とも呼ばれる遮蔽層50が形成されていてもよい。遮蔽層50は、車両において合わせガラス1を車体に装着して保持するためのシーラント等を紫外線等から保護する働きを有する。遮蔽層50は、例えば、黒色、灰色、濃茶色等のセラミックカラーペーストが塗布され焼成されてなる層であると好ましい。
【0021】
本実施形態により処理される合わせガラス1は、図1で例示した自動車用窓ガラスに限られない。中間膜のリサイクル時に異物となり得る物質を含むものであれば、自動車用合わせガラス、例えばフロントガラス、リアガラス、サイドガラス、ルーフガラス等、或いは自動車以外の電車等で利用される車両用合わせガラス、又は車両用以外の建築用の合わせガラス等であってよい。
【0022】
[異物の分離方法]
本発明の一実施形態は、上述のような合わせガラスから得られる異物付き中間膜から異物を分離する方法である。図2に、本実施形態による具体的な方法のフロー図を示す。本実施形態による方法は、異物付き中間膜片を、膨潤溶媒によって膨潤させる膨潤工程(S20)と、異物付き中間膜片に含まれるポリビニルブチラールを溶解溶媒で溶解する溶解工程(S30)と、異物と、ポリビニルブチラールを含む溶液とを分離する分離工程(S40)とを含む。本実施形態による方法は、バッチ式で行うこともできるし、連続式で行うこともできる。また、図2に示すように、本実施形態による方法は、膨潤工程(S20)の前に、合わせガラスから中間膜を分離して得られる異物付き中間膜を破砕することによって異物付き中間膜片を得る破砕工程(S10)をさらに含んでいてよい。以下、各工程についてより詳細に説明する。
【0023】
<破砕工程(S10)>
破砕工程(S10)では、まず、合わせガラスから中間膜を分離する。具体的には、例えば、図1に示すような合わせガラス1を破砕機等により破砕し、湿式処理等により中間膜に付着しているガラスカレットの分離処理を行う。合わせガラス1の破砕及びガラスカレットの分離処理により、ガラス板11、12の部分はガラスカレットとして回収され、異物(図1の例では電熱線30)が付着してなる中間膜を取り出すことができる。破砕工程(S10)では、このような異物付き中間膜をさらに破砕して、異物付き中間膜片を得る。中間膜は可塑剤を含んでいるため、硬度が低く柔軟性が高い。そのため、異物付き中間膜の破砕方法としては、カッタ等による切断を利用することが好ましい。また、カッタ等による切断によれば、含まれる異物が硬く破砕し難い材料であったとしても、異物も中間膜と共に容易に切断できる。中間膜の破砕方法の例としては、カッタを表面に備えたロール対に中間膜を挿通させることによって、中間膜を複数の中間膜片へと細断する方法が挙げられる。具体的には、シュレッダー等の装置を利用できる。
【0024】
破砕工程(S10)を、ロール対を用いた細断によって行う場合、細断方式としては、1方向に沿った複数の切断線にて細断を行うストレートカット方式であってもよいし、互いに交わる2以上の方向にそれぞれ沿った複数の切断線にて細断を行うクロスカット方式であってもよい。クロスカット方式では、互いに交わる切断線に沿った力が同時に加えられて中間膜が切断されるので、柔らかい中間膜であっても、容易に中間膜片が得られる。なお、クロスカット方式には、マイクロクロスカット方式、ワンカットクロス方式と呼ばれる方式が含まれ得る。
【0025】
破砕工程(S10)により得られる異物付き中間膜片は、完全に平坦ではなく、多少湾曲した形状を有し得る。その場合、複数の異物付き中間膜片の嵩は、ある程度大きくなる。異物付き中間膜片の単位体積当たりの重さは、ある程度小さくなり、例えば、800g/L以下であってよい。これにより、中間膜片同士に隙間ができ、後続の膨潤工程(S20)及び/又は溶解工程(S30)において、溶媒の流動が容易になる。そのため、中間膜片と溶媒との相互作用が促進され、中間膜片の膨潤及び/又は溶解をより迅速に進行できる。また、異物付き中間膜片の単位体積当たりの重さは200g/L以上であってよい。これにより、異物付き中間膜片の大部分を浸けるために多量の溶媒が必要になることを回避でき、後続の溶解工程(S30)を経て得られるポリビニルブチラールを含む溶液の濃度が過度に小さくなることを防止できる。異物付き中間膜片の嵩は、中間膜の厚み、異物付き中間膜片の形状及びサイズ、異物付き中間膜を破砕する方法等によって調整できる。
【0026】
異物付き中間膜片の形状は、平面視で、又は中間膜片が湾曲している場合には平らに伸ばした状態での平面視で、鋭角の頂点を有する形状、例えば、三角形、四角形、五角形等の多角形であると好ましい。鋭角の頂点を有する形状であると、後続の膨潤工程(S20)及び/又は溶解工程(S30)をより迅速に進行でき、より短時間での処理が可能となる。
【0027】
また、1つの異物付き中間膜片の面積は、平面視で、又は中間膜片が湾曲している場合には平らに伸ばした状態での平面視で、好ましくは1mm以上2500mm以下、より好ましくは4mm以上100mm以下であってよい。上記範囲の面積を有することで、後続の膨潤工程(S20)及び/又は溶解工程(S30)をより迅速に進行できると共に、破砕工程(S10)における時間及びコストを低減できる。
【0028】
1つの異物付き中間膜片の最大長さは、平面視で、又は中間膜片が湾曲している場合には平らに伸ばした状態での平面視で、好ましくは1mm以上50mm以下、より好ましくは2mm以上10mm以下であってよい。上記範囲の最大長さを有することで、後続の膨潤工程(S20)及び/又は溶解工程(S30)をより迅速に進行できると共に、破砕工程(S10)における時間及びコストを低減できる。
【0029】
<膨潤工程(S20)>
膨潤工程(S20)では、破砕工程(S10)で得られた異物付き中間膜片を、膨潤溶媒によって膨潤させる。異物付き中間膜片のうち中間膜片の部分に膨潤溶媒が浸透することで中間膜片の体積が増す。そのため、後続の溶解工程(S30)において、中間膜片に含まれるポリビニルブチラールが溶解溶媒中に拡散し易くなる。また、膨潤によって、中間膜片に含まれるポリビニルブチラール以外の成分(可塑剤等)の溶解溶媒中への拡散も促進され、中間膜片全体が溶解溶媒に溶解し易くなる。このように、溶解工程(S30)前に膨潤工程(S20)を行うことで、溶解工程(S30)におけるポリビニルブチラールの溶解速度を顕著に上昇でき、異物付き中間膜からの異物を分離する方法にかかる時間を、従来の方法に比べて大きく短縮できる。なお、膨潤後の異物付き中間膜片の体積は、膨潤前の異物付き中間膜片の体積に対して1.5倍以上3倍以下程度になる。
【0030】
膨潤溶媒は、ポリビニルブチラールを含む中間膜片を膨潤できる溶媒であれば特に限定されないが、溶解度パラメータが8.5(cal/cm1/2以上9(cal/cm1/2以下の溶媒であると好ましい。膨潤溶媒は、カルボン酸エステル及び芳香族炭化水素の1以上を含むことが好ましい。さらに、カルボン酸エステルの例としては、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸アミル等の酢酸エステルが挙げられ、芳香族炭化水素の例としては、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン等の、メチル基で置換された置換基数1以上3以下の単環芳香族炭化水素が挙げられる。これらの溶媒のうち、ポリビニルブチラールの良好な膨潤が可能であること、安全性が高いこと等から、酢酸ブチルを用いることが好ましい。
【0031】
膨潤工程(S20)で用いる膨潤溶媒の量は、処理される異物付き中間膜片100質量部に対して、好ましくは150質量部以上2000質量部以下、より好ましくは400質量部以上1100質量部以下であってよい。膨潤溶媒の量を150質量部以上とすることで、十分な膨潤作用を得ることができ、2000質量部以下とすることで、過剰な溶媒量の使用を避けてコストを低減できる。
【0032】
膨潤工程(S20)は、加熱しながら行うことが好ましい。加熱することで、中間膜片への膨潤溶媒の浸透速度が上昇し、より迅速な膨潤が可能となる。加熱する場合、異物付き中間膜片若しくは膨潤溶媒、又はその両方が加熱される。また、加熱の手段は特に限定されない。例えば、異物付き中間膜片及び膨潤溶媒が入った容器をヒーターによって加熱する。膨潤工程(S20)は、さらに撹拌装置、振動装置又は溶媒還流のためのコンデンサーを用いることができる。
【0033】
上記の加熱温度は、膨潤溶媒の沸点以下であればよいが、好ましくは40℃以上80℃以下、より好ましくは50℃以上70℃以下であってよい。加熱温度を50℃以上とすることで、中間膜片への膨潤溶媒の浸透速度を一層上昇させ、膨潤工程(S20)を迅速に行うことができる。また、加熱温度を70℃以下とすることで、膨潤溶媒の揮発を抑制し、安全性も確保できる。
【0034】
また、膨潤工程(S20)では、容器の内容物、すなわち膨潤溶媒及び/又は異物付き中間膜片を動かしながら行うことが好ましい。具体的には、撹拌翼、マグネチックスターラー、撹拌球といった撹拌手段等の容器の内部に配置する手段を利用することもできるし、超音波発生手段、振盪手段等の外部から容器に振動を付与する手段を利用してもよい。このうち、膨潤溶媒を良好に流動でき、また取扱いも容易であることから、撹拌手段を用いることが好ましい。
【0035】
なお、膨潤工程(S20)の前に、中間膜片に含まれる樹脂、具体的にはポリビニルブチラールに対して化学修飾等の前処理を施しておくこともできる。
【0036】
<溶解工程(S30)>
溶解工程(S30)では、膨潤工程(S20)で膨潤させた中間膜片を溶解溶媒で溶解する。中間膜片の溶解により、異物が中間膜片に埋設されている場合であっても、異物と中間膜片との分離が可能となる。
【0037】
溶解溶媒は、ポリビニルブチラールを溶解できる溶媒であれば、特に限定されない。溶解溶媒は、中間膜片に含まれるポリビニルブチラール以外の樹脂成分、例えば可塑剤も溶解できる溶媒であると好ましい。また、溶解溶媒の溶解度パラメータは、9(cal/cm1/2以上15(cal/cm1/2以下であってよい。溶解溶媒としては、炭素数4以下の低級アルコールの他、クロロホルム、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。低級アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール(n-プロピルアルコール及びイソプロピルアルコール(IPA)を含む)、ブタノールが挙げられる。これらのうち、ポリビニルブチラールを良好に溶解できることから、溶解溶媒がエタノールを含むことが好ましい。さらに、溶解溶媒として、安価で取り扱いが容易であること等から、エタノール及びイソプロピルアルコールを含有する変性アルコールを用いることが好ましい。
【0038】
溶解工程(S30)で用いる溶解溶媒の量は、処理される異物付き中間膜片100質量部に対して、好ましくは150質量部以上2000質量部以下、より好ましくは400質量部以上1100質量部以下であってよい。溶解溶媒の量を150質量部以上とすることで、処理される中間膜片を十分に溶解させることができ、2000質量部以下とすることで、過剰な溶媒量の使用を避けてコストを低減できる。
【0039】
なお、溶解工程(S30)で用いられる溶解溶媒の質量(w3)の、上述の膨潤工程(S20)で用いられる膨潤溶媒の質量(w2)に対する比の値(w3/w2)は、好ましくは0.5以上2以下、より好ましくは0.75以上1.25以下であってよい。上記範囲の比の値とすることで、必要十分な膨潤を可能にして溶解速度を上昇できると共に、膨潤溶媒及び溶解溶媒のいずれかが過度に多くなり無駄になることを防止できる。
【0040】
溶解工程(S30)も、膨潤工程(S20)と同様に、加熱しながら行うことが好ましい。加熱することで、中間膜片に含まれる成分が活性化し、中間膜片の溶解速度が上昇して、より迅速な溶解が可能となる。加熱する場合、異物付き中間膜片若しくは溶解溶媒、又はその両方が加熱される。また、溶解工程(S30)における加熱手段としては、膨潤工程(S20)で用いられる上記加熱手段と同様の加熱手段を利用できる。
【0041】
溶解工程(S30)で加熱を行う場合、その加熱温度は、溶解溶媒の沸点以下であればよいが、好ましくは40℃以上80℃以下、より好ましくは50℃以上70℃以下であってよい。加熱温度を50℃以上とすることで、中間膜片の溶解溶媒への溶解速度を一層上昇させ、溶解工程(S30)を迅速に行うことができる。また、加熱温度を70℃以下とすることで、溶解溶媒の揮発を抑制し、安全性も確保できる。
【0042】
溶解工程(S30)では、膨潤工程(S20)と同様に、容器の内容物、すなわち溶解溶媒及び/又は異物付き中間膜片を動かしながら行うことが好ましい。溶解工程(S30)において、溶解溶媒及び/又は異物付き中間膜片を動かすための手段は、膨潤工程(S20)で用いられる上記の手段と同様の手段を利用できる。
【0043】
なお、異物付き中間膜片の質量から異物の質量を差し引いて得られる中間膜片の質量と、溶解工程(S30)の終了までに投入された全溶媒の質量との合計に対する、中間膜片の質量の割合は、好ましくは2.5質量%以上25質量%以下、より好ましくは3.5質量%以上15質量%以下、さらに好ましくは5質量%以上10質量%以下であってよい。なお、上記の溶解工程(S30)の終了までに投入された全溶媒の質量は、膨潤溶媒の質量と溶解溶媒の質量との合計であってよい。上記中間膜片の質量の割合が2.5質量%以上であることで、溶媒が過剰になることを防止し、処理の効率を高めることができる。また、25質量%以下であることで、膨潤工程(S20)及び/又は溶解工程(S30)にて、膨潤速度及び/又は溶解速度を上昇させるための撹拌等の動作が妨げられることを回避できる。なお、本実施形態による方法では、膨潤溶媒及び溶解溶媒以外にも、膨潤工程(S20)及び溶解工程(S30)に影響のない程度にその他の溶媒を添加する場合もある。その場合、その他の溶媒も上記「全溶媒」に含まれる。
【0044】
溶解工程(S30)が終了した時点で、容器の内容物のうち液体部分、すなわち、ポリビニルブチラールを含む溶液中のポリビニルブチラールの濃度は、好ましくは2.5質量%以上25質量%以下、より好ましくは3.5質量%以上15質量%以下、さらに好ましくは5質量%以上10質量%以下となり得る。上記濃度を5質量%以上にすることで、溶媒が過剰になることを防止し、処理の効率を高めることができる。また、濃度を10質量%以下にすることで、膨潤工程(S20)及び/又は溶解工程(S30)にて、膨潤速度及び/又は溶解速度を上昇させるための撹拌等の動作が妨げられることを回避できる。
【0045】
また、上記ポリビニルブチラールを含む溶液の粘度は、せん断速度が2.4s-1の条件で30mPa・s以上3000mPa・s以下であるのが好ましい。粘度を上記範囲にすることで、処理の効率が高められると共に、膨潤速度及び/又は溶解速度を上昇させるための撹拌等の動作が妨げられることも回避できる。
【0046】
<分離工程(S40)>
上記溶解工程(S30)により、異物付き中間膜片に含まれるポリビニルブチラールが溶解溶媒で溶解され、好ましくは異物付き中間膜片における中間膜部分が溶解溶媒で溶解された状態となる。分離工程(S40)では、異物、すなわち溶解溶媒で溶解しなかった固体成分と、ポリビニルブチラールを含有する溶液とに分離する。溶液は、ポリビニルブチラールの他にも、溶解溶媒に可溶な成分を含有していてよい。溶解溶媒に可溶な成分とは、例えば、中間膜に含まれていた可塑剤等の成分、異物が液晶セルに由来する場合に液晶セルに含まれていた液晶を構成する成分等であってよい。
【0047】
分離工程(S40)で用いられる分離方法は、特に限定されない。分離工程(S40)では、濾過、デカンテーション等を用いることができるが、効率良く異物を分離できることから、濾過によって上記分離を行うことが好ましい。濾過を利用する場合、常圧の重力濾過の他、減圧濾過(真空濾過)、加圧濾過等を利用してもよい。また、濾過のためにフィルターバックを用いることができ、その場合には、濾過精度0.5μm以上50μm以下のものを用いることが好ましい。
【0048】
また、上述のとおり、上記ポリビニルブチラールを含む溶液の粘度は、せん断速度が2.4s-1の条件で30mPa・s以上3000mPa・s以下であるのが好ましい。粘度を上記範囲にすることで、加圧濾過をするための装置仕様にすることなく、重力濾過によって短時間で異物を分離できる。
【0049】
図2に示すように、上述の分離工程(S40)によって、異物と、ポリビニルブチラールを含む溶液(PVBの溶液)とを得ることができる。得られた異物は、分離工程(S40)において、フィルターバックによって濾過されている場合には、フィルターバックから異物をかき取って回収することができる。また、得られた異物は、水等によって洗浄した後、回収してもよい。異物は、その種類及び再利用の用途に応じて処理又は加工される。例えば、異物が金属線に由来する場合には、公知の金属の再生工程に従って処理できる。その場合、再び金属線として加工し、利用することもできる。なお、フィルターバッグは、分離工程(S40)後直ちに溶解工程(S30)で使用する溶解溶媒で洗浄してフィルターの目詰まりを防止することで、再利用できる。
【0050】
ポリビニルブチラールを含む溶液は、処理を加えることなく、溶液の状態で再利用先に提供してもよい。また、ポリビニルブチラールを含む溶液には、何らかの処理を加えてもよい。例えば、ポリビニルブチラールを含む溶液を加熱し、蒸発した溶媒をコンデンサーで冷却することで、当該溶液に含有されている溶媒の一部を回収することもできる(S50)。これにより、ポリビニルブチラールをより高濃度で含む溶液が得られる。この濃度は、ポリビニルブチラールの再利用目的に応じて調整できる。濃縮後のポリビニルブチラールを含む溶液の濃度は、15質量%以上30質量%以下となり得る。
【0051】
回収されたポリビニルブチラールは、接着剤、インク又は塗料のバインダー等として利用できる。また、回収されたポリビニルブチラールから、合わせガラスの中間膜を製造することも期待される。
【0052】
上記の回収工程(S50)における溶媒の回収には、例えば蒸留等を利用できる。その場合、溶媒種ごとに回収することが可能となる。これにより、例えば、膨潤溶媒及び溶解溶媒を別々に回収できる。溶媒の一部を回収する工程(S50)にて回収された溶媒は、再利用してもよい。例えば、図2に示すように、回収された膨潤溶媒を膨潤工程(S20)に戻して再利用してもよい。また、回収された溶解溶媒を溶解工程(S30)に戻して再利用してもよい。すなわち、本実施形態による方法は、ポリビニルブチラールの溶液に含まれている溶媒を回収溶媒として回収し、当該回収溶媒を、上述の膨潤工程(S20)及び/又は溶解工程(S30)において利用することをさらに含んでいてよい。
【0053】
[異物付き中間膜から異物を分離する装置]
本発明の一実施形態は、上述した異物付き中間膜から異物を分離する方法で使用される装置である。具体的には、一実施形態は、中間膜を備えた合わせガラスから得られる異物付き中間膜から異物を分離する装置であって、前記合わせガラスから得られる異物付き中間膜片を、膨潤溶媒によって膨潤させる膨潤部と、前記異物付き中間膜片に含まれるポリビニルブチラールを溶解溶媒で溶解する溶解部と、前記異物と、前記ポリビニルブチラールを含む溶液とを分離する分離部と、を含む。
【0054】
装置の内壁等で溶媒と接触する部分は、処理する温度や時間などの条件で、溶媒によって膨潤、溶出又は腐食のおそれがない材質を使用する。具体的には、金属、ガラス、ポリエチレン又はポリプロピレンを使用する。ガラス、ポリエチレン又はポリプロピレンでライニングされた金属を使用してもよい。上記の接触する部分の洗浄は、溶解工程の溶解溶媒を使用する。洗浄液は、溶解工程での再利用や、分離部で分離した後のポリビニルブチラールの溶液の濃度調整にも利用できる。
【実施例0055】
以下、実験例に基づき、本発明の実施形態についてさらに説明する。
【0056】
(例1)
=前工程=
合わせガラスとして、熱電線であるタングステンワイヤが封入された自動車用窓ガラスを利用した。当該自動車用窓ガラスは、主成分としてポリビニルブチラールを含む中間膜を2枚のガラス板で挟まれてなり、且つタングステンワイヤが車内側となるガラス板と中間膜との間に配置されたものであった。この自動車用窓ガラスを、2本のブレード付きロールへの挟み込みにより破砕し、さらに界面活性剤水溶液中で揺動させ、中間膜の表面に残ったガラスカレットを分離することにより、異物付き中間膜(タングステンワイヤ付き中間膜)を得た。
【0057】
=破砕工程=
上述のようにして得られた異物付き中間膜は、クロスカット型シュレッダー(サンワサプライ社製、マイクロカットシュレッダーPSD039)を用いて細断することで、平らに伸ばした状態で平面視長方形であり、平均で5mm×20mmの異物付き中間膜片を得た。
【0058】
=膨潤工程=
得られた異物付き中間膜片90gをガラス製の5L容器内に入れ、さらに膨潤溶媒である酢酸ブチル900gを投入した。異物付き中間膜片が酢酸ブチルに浸かってなる内容物を、メカニカルスターラー(新東科学社製スリーワンモータ)により4枚ピッチドパドル翼、100rpmの条件で、液温度を50℃に維持しながら1時間、撹拌した。撹拌開始後1時間の時点で、異物付き中間膜片の膨潤が目視で確認できた。
【0059】
=溶解工程=
続いて、溶解溶媒である変性アルコール(山一化学工業社製ミックスエタノールNP、エタノール85.5%;イソプロピルアルコール9.6%;メタノール4.9%)を800g加え、上記メカニカルスターラーにより4枚ピッチドパドル翼、200rpmの条件で、液温度を50℃に維持しながら撹拌した。溶解工程開始から1時間後、中間膜片が溶解溶媒にほぼ完全に溶解していることを目視で確認できた。容器の底には、タングステンワイヤが目視で観察された。なお、異物付き中間膜片の質量から異物の質量を差し引いて得られる中間膜片の質量と、溶解工程の終了までに投入された全溶媒の質量との合計に対する、中間膜片の質量の割合(中間膜片、膨潤溶媒及び溶解溶媒の質量の合計に対する、中間膜片の質量の割合)は、5.0質量%であった。
【0060】
=分離工程=
容器の内容物を、フィルターバッグ(スリーエム社製ポリプロピレン不織布、公称濾過精度10μm)に移し、タングステンワイヤを、ポリビニルブチラール含有溶液から常圧で液の自重により濾別した(重力濾過)。濾別にかかった時間は2分であった。これにより、約0.5gのタングステンワイヤが回収された。また、フィルターバッグを通ったポリビニルブチラール含有溶液の質量は1600gであった。また、ポリビニルブチラール含有溶液中のポリビニルブチラールの濃度は5質量%であった。また、ポリビニルブチラール含有溶液の粘度は、せん断速度が2.4s-1の条件で35mPa・sであった。
【0061】
(例2)
異物付き中間膜片(タングステンワイヤ付き中間膜片)の質量を185gとしたこと以外は、例1と同様にして、実験を行った。溶解工程では、工程開始から3時間後、中間膜片が溶解溶媒にほぼ完全に溶解していることを目視で確認できた。また、分離工程において、濾別にかかった時間は15分であった。回収されたタングステンワイヤの質量は約1gであった。フィルターバッグを通ったポリビニルブチラール含有溶液の質量は1600gであった。
【0062】
なお、異物付き中間膜片の質量から異物の質量を差し引いて得られる中間膜片の質量と、溶解工程の終了までに投入された全溶媒の質量との合計に対する、中間膜片の質量の割合(中間膜片、膨潤溶媒及び溶解溶媒の質量の合計に対する、中間膜片の質量の割合)は、10質量%であった。また、分離工程で分離されたポリビニルブチラール含有溶液中のポリビニルブチラールの濃度は10質量%であった。また、ポリビニルブチラール含有溶液の粘度は、せん断速度が2.4s-1の条件で2600mPa・sであった。
【0063】
(例3)
合わせガラスとして、タングステンワイヤではなくアンテナが封入された自動車用合わせガラスを用いたこと以外は、例1と同様にして、実験を行った。用いられた合わせガラスでは、アンテナを構成する金属(銅の線状)パターン付きポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが、車内側となるガラス板と中間膜との間に配置されていた。溶解工程では、工程開始から2時間後、中間膜片が溶解溶媒にほぼ完全に溶解していることを目視で確認できた。回収された金属パターン付きPETフィルムの質量は約1gであった。フィルターバッグを通ったポリビニルブチラール含有溶液の質量は1500gであった。
【0064】
なお、異物付き中間膜片の質量から異物の質量を差し引いて得られる中間膜片の質量と、溶解工程の終了までに投入された全溶媒の質量との合計に対する、中間膜片の質量の割合(中間膜片、膨潤溶媒及び溶解溶媒の質量の合計に対する、中間膜片の質量の割合)は、4.5質量%であった。また、分離工程で分離されたポリビニルブチラール含有溶液中のポリビニルブチラールの濃度は4.5質量%であった。
【0065】
(例4)
合わせガラスとして、タングステンワイヤではなく液晶セルが封入された合わせガラスを用いたこと以外は、例1と同様にして、実験を行った。用いられた合わせガラスでは、液晶部分と金属パターン付きPETフィルムとを含む液晶セルが、車内側となるガラス板と中間膜との間に配置されていた。溶解工程では、工程開始から3時間後、中間膜片が溶解溶媒にほぼ完全に溶解していることを目視で確認できた。また、回収された金属パターン付きPETフィルムの質量は約30gであった。フィルターバッグを通ったポリビニルブチラール含有溶液の質量は1500gであった。液晶セルの液晶部分は、溶解工程にて溶解溶媒中に溶解していた。
【0066】
なお、異物付き中間膜片の質量から異物の質量を差し引いて得られる中間膜片の質量と、溶解工程の終了までに投入された全溶媒の質量との合計に対する、中間膜片の質量の割合(中間膜片、膨潤溶媒及び溶解溶媒の質量の合計に対する、中間膜片の質量の割合)は、4.0質量%であった。また、分離工程で分離されたポリビニルブチラール含有溶液中のポリビニルブチラールの濃度は4.0質量%であった。
【0067】
以上の実施例によれば、タングステンワイヤ、PETフィルム等の異物が付いている中間膜から、異物と、中間膜に含まれるポリビニルブチラールとを、短時間で分離し、回収できることが分かった。
【符号の説明】
【0068】
1 合わせガラス
11、12 ガラス板
20 中間膜
30 電熱線
40 バスバー
50 遮蔽層
図1
図2