(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021646
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】CT装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/046 20180101AFI20250206BHJP
G01N 23/04 20180101ALI20250206BHJP
【FI】
G01N23/046
G01N23/04 340
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125509
(22)【出願日】2023-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】391017540
【氏名又は名称】東芝ITコントロールシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】原 拓生
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA09
2G001HA14
2G001JA02
2G001JA08
2G001JA13
2G001PA12
2G001PA14
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ユーザの経験に関わらず最適な撮影条件を選択でき、作業性が向上するCT装置を提供する。
【解決手段】CT装置は、被検査物Aに対して放射線を照射して被検査物Aの画像を撮影するに当たり、撮影時に要する複数の撮影時間及び各撮影時間に応じて予め設定された撮影条件を記憶している記憶部と、複数の撮影時間を表示する表示部5と、ユーザから表示部5に表示された撮影時間の選択を受け付ける入力部と、入力部によって受け付けた撮影時間に対応する撮影条件を撮影時の撮影条件として決定する撮影条件決定部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物に対して放射線を照射して前記被検査物の画像を撮影するに当たり、撮影時に要する複数の撮影時間及び各撮影時間に応じて予め設定された撮影条件を記憶している記憶部と、
複数の前記撮影時間を表示する表示部と、
ユーザから前記表示部に表示された前記撮影時間の選択を受け付ける入力部と、
前記入力部によって受け付けた前記撮影時間に対応する前記撮影条件を撮影時の撮影条件として決定する撮影条件決定部と、
を備えるCT装置。
【請求項2】
前記撮影条件は、何れの前記撮影時間においても、検出器で検出される前記放射線の線量の値が同一又は一定の範囲になるように設定されている、
請求項1に記載のCT装置。
【請求項3】
露光時間の設定を変更することで、前記線量の値が同一又は一定の範囲になるよう調整を行っている、
請求項2に記載のCT装置。
【請求項4】
放射線源と前記被検査物の間に設けられ、前記放射線の透過線量を調整する複数の金属フィルタ部を更に備え、
前記金属フィルタ部の素材や厚みを変更することで、前記線量の値が同一又は一定の範囲になるよう調整を行っている、
請求項2に記載のCT装置。
【請求項5】
積算枚数の設定を変更することで、前記線量の値が同一又は一定の範囲になるよう調整を行っている、
請求項2に記載のCT装置。
【請求項6】
前記撮影条件は、前記撮影時間が長く設定された解像度が、前記撮影時間が短く設定された解像度と同一又は高くなるように設定されている、
請求項1又は2に記載のCT装置。
【請求項7】
前記撮影条件は、前記撮影時間が長く設定されたビュー数が、前記撮影時間が短く設定されたビュー数と同一又は増加するように設定されている、
請求項1又は2に記載のCT装置。
【請求項8】
幾何学倍率を算出する幾何学倍率算出部と、
前記幾何学倍率に対応するプリセットテーブルを選択するテーブル選択部と、
を更に備え、
前記記憶部は、各幾何学倍率に対応する複数のプリセットテーブルを記憶し、
各プリセットテーブルには、複数の前記撮影時間及び各撮影時間に応じて予め設定された撮影条件がそれぞれ設定されており、
前記幾何学倍率算出部は、放射線源の焦点から前記被検査物までの距離と前記放射線源の焦点から検出器までの距離に基づいて前記幾何学倍率を算出し、
前記テーブル選択部は、前記幾何学倍率算出部が算出した前記幾何学倍率に対応する前記プリセットテーブルを選択し、
前記表示部は、前記テーブル選択部が選択した前記プリセットテーブルに設定されている複数の前記撮影時間を表示する、
請求項1又は2に記載のCT装置。
【請求項9】
管電流、露光時間、積算枚数及び金属フィルタ部の設定の何れか又は全てを変更することで、前記放射線の線量の値が同一又は一定の範囲になるよう調整を行っている、
請求項8に記載のCT装置。
【請求項10】
前記記憶部は、前記被検査物の種類及び撮影用途ごとに撮影モードを記憶し、
各撮影モードには、複数の前記撮影時間に応じた前記撮影条件が設定されており、
前記入力部は、前記ユーザから前記撮影モードの入力を受け付け、
前記表示部は、前記ユーザが選択した前記撮影モードに対応する複数の前記撮影時間を表示する、
請求項1又は2に記載のCT装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、CT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池などいった小型電子部品を高分解能で検査する産業用のCT装置が広く使用されている。このCT装置は、放射線として例えばX線ビームを照射する放射線源と、放射線源のX線ビームを2次元の分解能で検出する検出器が対向して配置される。放射線源と検出器の間には回転可能な検査台が設けられている。検査台に載置された被検査物に対してX線ビームが照射されている間、この検査台が1回転することで、被検査物の全方位にX線ビームが照射される。
【0003】
CT装置による撮影を行うためには、各種撮影条件を設定する必要がある。各種撮影条件には、管電流、管電圧、金属フィルタの材質や厚み、露光時間、ビュー数、ビニング、積算枚数、線量などがあり、設定項目が多い。最適な画像を取得するためには、これらの各種撮影条件を適切に設定する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のとおり、設定項目が多いため、経験の浅いユーザが適切な条件に設定することは困難であり、また、熟練のユーザにおいても手間のかかる作業であった。そこで、予め撮影条件のパラメータをプリセットされたアイコンを、画質に関係する2次元の指標によってマトリックス状に表示画面に配列して、ユーザが表示されたアイコンから選択することで、撮影条件が決定される技術が開発されている(特許文献1)。
【0006】
特許文献1の場合、たしかに、撮影条件の設定の困難性は一定程度緩和されているが、濃度分解能や解像度などといったCT撮影に関する知識がないと選択できず、経験の浅いユーザが適切なアイコンを選択することが困難であることに変わりはないし、熟練のユーザにとっても濃度分解能や解像度などを考慮したうえで、アイコンを選択するので手間のかかる作業に変わりはない。
【0007】
本発明の実施形態は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ユーザの経験に関わらず最適な撮影条件を選択でき、作業性が向上するCT装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態におけるCT装置は、被検査物に対して放射線を照射して前記被検査物の画像を撮影するに当たり、撮影時に要する複数の撮影時間及び各撮影時間に応じて予め設定された撮影条件を記憶している記憶部と、複数の前記撮影時間を表示する表示部と、ユーザから前記表示部に表示された前記撮影時間の選択を受け付ける入力部と、前記入力部によって受け付けた前記撮影時間に対応する前記撮影条件を撮影時の撮影条件として決定する撮影条件決定部と、を備え、前記撮影条件は、何れの前記撮影時間においても、検出器で検出される前記放射線の線量の値が同一又は一定の範囲になるように設定されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態のCT装置を模式的に示す側面図である。
【
図2】表示部が撮影時間を表示した状態を示す模式図である。
【
図4】撮影時間に応じた撮影条件の一例を示す表である。
【
図5】変形例1における撮影時間に応じた撮影条件の一例を示す表である。
【
図6】変形例2における撮影時間に応じた撮影条件の一例を示す表である。
【
図7】金属フィルタ部を用いた場合の線量の算出方法を示す模式図である。
【
図8】変形例3における撮影時間に応じた撮影条件の一例を示す表である。
【
図9】表示部において、撮影条件の表示状態を示す図であり、(a)は標準モード、(b)はエキスパートモードを示す。
【
図10】第2実施形態の撮影時間に応じた撮影条件の一例を示す表である。
【
図11】第3実施形態における制御部の構成を示すブロック図である。
【
図12】各プリセットテーブルにおける撮影条件の一例を示す図である。
【
図13】変形例6のプリセットテーブルごとの撮影条件の一例を示す図である。
【
図14】第4実施形態における撮影モードの切り替えの一例を示すための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態に係るCT装置について図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、第1実施形態のCT装置を模式的に示す側面図である。
【0011】
CT装置100は、被検査物Aの非破壊検査に供する装置である。CT装置100は、被検査物Aの周囲に当該被検査物Aを透過する放射線ビームを照射し、被検査物Aを透過したことで減弱した放射線量を検出する。そして、この検出結果に基づいて被検査物Aの断面画像であるCT画像を生成する。また、CT装置100は、生成された複数のCT画像から3D画像を生成する。
【0012】
CT装置100は、
図1に示すように、検査台1、放射線源2、検出器3、金属フィルタ部4、表示部5、入力部6及び制御部7を備える。検査台1は、被検査物Aを載置する載置面を有する台である。検査台1は、載置面に平行な方向又は直交する方向に移動可能である。また、検査台1は、載置面に垂直な方向を軸にして回転可能である。検査台1は、XY機構、回転テーブル12及び昇降機構13を有する。
【0013】
XY機構11は、被検査物Aを載置する。XY機構11は、例えば、サーボモータによって駆動されるボールねじ機構を用いることができる。XY機構11は、放射線ビームの光軸と平行な方向、及び、載置面と平行な方向で、かつ、放射線ビームの光軸と直交する方向に移動可能である。
【0014】
回転テーブル12は、XY機構の下に設けられている。回転テーブル12は、例えば、モータ等の駆動源を含んでなるアクチュエータで構成され、載置面に垂直な方向を軸にして回転可能に設けられている。放射線ビームが照射している間、この回転テーブル12が回転することで、被検査物Aの全方位に放射線ビームが照射される。
【0015】
昇降機構13は、回転テーブル12の下に設けられている。昇降機構13は、サーボモータによって駆動されるボールねじ機構を用いることができる。昇降機構13は、載置面に直交する方向に移動可能である。即ち、昇降機構13を載置面に直交する方向に移動させることで、被検査物Aの高さを調整することができる。
【0016】
放射線源2は、例えば、被検査物Aを透過する放射線ビームを照射する。放射線ビームは、放射線源の焦点を頂点とし、ファン角及びコーン角を有して円錐状に拡がる放射線の束である。本実施形態では、放射線源2は、例えば、反射型又は透過型のマイクロフォーカスX線管又はナノフォーカスX線管であり、放射線ビームはX線ビームである。なお、放射線ビームとしては、X線ビームに限らず、例えばγ線など被検査物Aを透過するものであれば用いることができる。
【0017】
検出器3は、検査台1及び被検査物Aを挟んで放射線源2に対向して設けられる。検出器3は、撮像領域の中心が、放射線源2の光軸と一致するように設けられる。検出器3は、放射線ビームの透過経路に応じて減弱した放射線強度の二次元分布を検出し、透視画像を出力する。検出器3は、例えばフラットパネルディテクタ(FPD)により構成される。検出器3は、被検査物Aとの距離を調整する移動機構を有する。検出器3は、移動機構によって撮影領域と直交する方向(放射線源2の光軸と平行方向)に移動可能である。なお、検出器3は、放射線源の光軸と撮影領域の中心を合わせるため、移動機構によって撮影領域と平行方向にも移動可能である。
【0018】
金属フィルタ部4は、被検査物Aと放射線源2の間の放射線源2に近接した位置に配置されている。金属フィルタ部4は、厚さ数mm程度の薄板状の部材である。金属フィルタ部4は、銅、アルミニウム、鉄等またはこれらを含む合金から成る金属板である。金属フィルタ部4は、複数設けられており、各金属フィルタ部4は素材や厚さが異なる。
【0019】
金属フィルタ部4は、移動機構(不図示)によって移動可能に設けられている。移動機構は、例えば、サーボモータによって駆動されるボールねじ機構を用いることができる。移動機構は、ユーザが選択した撮影時間に対応付けられている素材及び厚みの金属フィルタ部4を放射線源2の光軸上に移動させる。光軸上に配置された金属フィルタ部4に放射線ビームが照射され、金属フィルタ部4を透過した放射線ビームが被検査物Aに照射される。金属フィルタ部4を透過させることで、メタルアーチファクトが生じることを抑制する。
【0020】
表示部5は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイなどのモニタである。表示部5は、被検査物Aの透視像、CT画像、3D画像の各種画像、撮影領域、撮影条件などを表示する。また、表示部5は、制御部7によって最適と判断された撮影条件を表示してもよい。
【0021】
表示部5は、後述する各撮影条件が予め設定された複数の撮影時間を表示する。撮影時間とは、実際の撮影に要する時間である。
図2は、表示部5が撮影時間を表示した状態を示す模式図である。表示部5は、
図2に示すように、撮影時間のアイコンを表示する。表示部5は、例えば、1min、4min、7min、25minの4つの撮影時間を表示する。表示部5は、撮影時間のアイコンを撮影時間の短いものから長いものの順に配列して表示する。なお、
図2の撮影時間は一例であり、例えば、10min、15min等の撮影時間を設けてもよいし、撮影時間の数も4つ以上設けてもよい。また、
図2に示す「きれい」との表示は、撮影時間が長いほど綺麗で鮮明な画像を得ることができることを示す。
【0022】
入力部6は、キーボード、マウス、タッチパネルなどを用いることができる。この入力部6は、ユーザから表示部5に表示された撮影時間を受け付ける。また、入力部6は、本撮影又は試し撮影のメニュー選択、撮影条件の設定、移動機構の手動操作、撮影の開始、被検査物Aの観察したい個所の選択などの各種操作を受け付けてもよい。
【0023】
制御部7は、コンピュータ及びドライバ回路により構成される。コンピュータは、HDDまたはSSDといったストレージ、RAM、CPUなどにより構成される。制御部7は、入力部6と接続されており、ユーザは入力部6を介して制御部7にCT装置100の各構成を制御させる。
【0024】
図3は、制御部7の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、制御部7は、検査台制御部71、放射線源制御部72、記憶部73及び撮影条件決定部74を有する。
【0025】
検査台制御部71は、XY機構11、回転テーブル12及び昇降機構13を制御する。検査台制御部71の制御によって、検査台1に載置された被検査物Aを放射線ビームの光軸に合わせたり、放射線ビームの照射中に被検査物Aを1回転させたりできる。また、検査台制御部71の制御によって、放射線源2と被検査物Aの距離(FCD)が調整される。
【0026】
放射線源制御部72は、放射線源2を制御し、被検査物Aに放射線ビームを照射させる。即ち、検査台制御部71及び放射線源制御部72の制御により、被検査物Aの全方位に放射線ビームを照射させ、検出器3は透視画像を取得する。
【0027】
記憶部73は、予め設定された複数の撮影時間を記憶している。また、記憶部73は、各撮影時間に応じた最適な撮影条件を記憶している。
図4は、撮影時間に応じた撮影条件の一例を示す表である。
図4に示すように、管電圧、管電流、金属フィルタ部4の材質及び厚み、ビニング、露光時間、ビュー数、積算、線量といった撮影条件が各撮影時間に対応付けられて設定されている。つまり、記憶部73は、
図4の例に見ると、撮影時間が1分の場合には、管電圧が200kV、管電流が100mA、金属フィルタ部4は素材が銅で厚みが1mm、ビニングは1、100ms、ビュー数は600、積算枚数は1、線量は10000として記憶している。
【0028】
ここで、線量とは、検出器3によって検出される放射線の信号量を指す。そして、各撮影時間における線量は、同一又は一定の範囲に含まれるように予め設定されている。
図4の例では、1分、4分、7分及び25分の各撮影時間の線量は、何れも10000で同一である。
【0029】
線量は、下記式(1)によって算出する。
線量=管電流×ビニング2×露光時間×積算枚数・・・(1)
また、被検査物Aを検査台1に載置せずに、測定した実測値としてもよい。
【0030】
なお、本実施形態では、線量を同一にしているが、各撮影時間における線量が一定の範囲になるように設定されていてもよい。一定の範囲とは、CT装置100のスペックや被検査物等の配置関係等により決定される。例えば、当該CT装置100のスペックにおける限界値を設定し、その限界値のプラスマイナス10%に収まる範囲を一定の範囲とする。
【0031】
撮影条件決定部74は、撮影条件を決定する。即ち、ユーザが選択した撮影時間に対応する撮影条件を実際に撮影する撮影条件として決定する。撮影条件決定部74が撮影条件を決定すると撮影が開始される。
【0032】
以上のとおり、本実施形態のCT装置100の記憶部73は、予め最適な撮影条件が対応付けられた撮影時間を複数記憶している。そして、ユーザは、表示部5の表示された撮影時間を選択するだけでよい。これにより、細かい撮影条件の設定を行う必要がなくなる。よって、経験の浅いユーザにおいても、最適な撮影を行うことができる。また、熟練のユーザにとっても、手間のかかる作業を省略でき、作業性が向上する。
【0033】
また、本実施形態では、各撮影時間における線量が同一である。線量を同一にすることで、画像のSN比が一定になる。各撮影条件のSN比を一定にすることで、撮影時間の増加が画像の解像度のみに寄与することになり、撮影時間が長い=解像度を向上させるというシンプルな選定で、綺麗な画像を取得する最適な撮影条件を設定することができる。
【0034】
(変形例1)
次に、変形例1のCT装置100について説明する。なお、第1実施形態と同一構成及び同一機能については同一符号を付して詳細な説明を省略する。上記第1実施形態では、各撮影時間におけるビニングは同じであったが、変形例1では、撮影時間によってはビニングを変更している。
【0035】
図5は、変形例1における撮影時間に応じた撮影条件の一例を示す表である。
図5では、撮影時間が1min、2min、12min、16minの例を示している。
図5に示すように、撮影時間は1min及び2minのビニングは2であるが、12min及び16minのビニングは1である。
【0036】
ビニングを変更すると、上記式(1)に基づくと線量が異なってしまう。そのため、本変形例1では、更に露光時間を調整することで、線量が同一になるよう設定している。露光時間とは、1フレームをキャプチャするためにかける時間で積分時間と称されることもある。
図5に示すように、撮影時間は1min及び2minの露光時間は100msであるが、12min及び16minの露光時間は200msである。
【0037】
以上のように、変形例1のCT装置100は、各撮影時間の少なくとも一部において、ビニングを変更し、各撮影時間における線量が一定になるように露光時間で調整している。上記式(1)に示すように、線量の算出において、ビニングは2乗される。そのため、同一の線量にする場合、ビニングの値を大きくすると、露光時間や積算枚数の値は小さくなる。そして、撮影時間は、「露光時間×ビュー数×積算枚数」で決まる。よって、ビニングの値を大きくすると、撮影時間を短縮することができる。ビニングは検出器の解像度にリンクするので、ビニングの変更により各撮影時間において、綺麗な画像を取得する最適な撮影条件を設定することが可能となる。
【0038】
また、変形例1では、ビニングの変更をしても各撮影時間における線量が同一になるように、露光時間で調整している。これにより、透過能力やスペクトルといったX線の質を変更することなく、撮影時間や線量を調整できる。よって、各撮影時間におけるコントラストが一定となる。
【0039】
(変形例2)
次に、変形例2のCT装置100について説明する。なお、第1実施形態と同一構成及び同一機能については同一符号を付して詳細な説明を省略する。変形例1では、ビニングの変更をしても各撮影時間における線量が同一になるように露光時間で調整したが、変形例2では、金属フィルタ部4で調整する。
【0040】
図6は、変形例2における撮影時間に応じた撮影条件の一例を示す表である。
図6では、撮影時間が1min、2min、3minの例を示している。変形例2では、各撮影時間によって、金属フィルタ部4の素材は銅で同一であるが、厚みが異なる。
図6に示すように、撮影時間が1minの場合は2mm、2minの場合は1mm、3minの場合は0.2mmである。なお、ビニングは、1minの場合は3、2minの場合は2、3minの場合は1である。
【0041】
ビニングが異なる場合においても、各撮影時間における線量が同一又は一定の範囲になるように金属フィルタ部4の材質や厚みで調整する。線量の算出については実測値を用いてもよいし、例えば、下記の式(2)及び(3)によって算出してもよい。
【0042】
図7は、金属フィルタ部4を用いた場合の線量の算出方法を示す模式図である。金属フィルタ部4を用いた場合における線量は下記(2)によって算出する。
I(E,x):エネルギーEのX線が減弱後の強度(金属フィルタ部4透過後の強度)
I
0(E):エネルギーEの初期の強度(放射線源2から照射される強度)
μ(E):金属フィルタ部4の材質におけるエネルギーEの線減弱係数
x:X線が物質を透過する距離(金属フィルタ部4の厚さ)
e:ネイピア数
【0043】
また、線量は下記式(3)によって算出してもよい。
A:検出器の面積
t:露光時間
μ
filer:金属フィルタ部4の線減弱係数
【0044】
なお、線量は、上記(2)及び(3)以外で算出してもよい。例えば、散乱線を考慮しビルドアップ項を追加したり、円錐状のビームであることを考慮したり、モンテカルロシミュレーションを用いて算出してもよい。
【0045】
入力部6によってユーザが撮影時間を選択すると、金属フィルタ部4の種類が決定する。金属フィルタ部4は、移動機構によって選択された撮影時間に対応する金属フィルタ部4が放射線源2の光軸上に配置されるように、移動させる。
【0046】
以上のように、変形例2のCT装置100は、各撮影時間の金属フィルタ部4の種類が異なり、かつ、線量が同一又は一定の範囲になるように撮影条件が各撮影時間に対応付けて記憶されている。これにより、放射線源2から照射される放射線に対して最適な金属フィルタ部4を設定でき、効果的にメタルアーチファクトを低減させることができる。
【0047】
なお、決定された金属フィルタ部4は移動機構によって自動的に配置させなくてもよい。例えば、表示部5に金属フィルタ部4の素材及び厚み、各金属フィルタ部4に番号が付されている場合には当該番号などを表示させ、ユーザに配置させてもよい。この場合、複数の金属フィルタ部4や移動機構をCT装置100に配置させる必要がないので、CT装置100を簡略化及び小型化することができる。
【0048】
(変形例3)
次に、変形例3のCT装置100について説明する。なお、第1実施形態と同一構成及び同一機能については同一符号を付して詳細な説明を省略する。変形例1では、撮影時間によって露光時間を調整したが、変形例3では、積算枚数を変更している。
【0049】
図8は、変形例3における撮影時間に応じた撮影条件の一例を示す表である。
図8では、撮影時間が1min、4min、27min、36minの例を示している。
図8に示すように、撮影時間は1min及び4minの積算枚数は1であるが、27min及び36minの積算枚数は3である。なお、ビニングは、1min及び4minは3であるが、27min及び36minは1である。
【0050】
以上のように、変形例3のCT装置100は、各撮影時間の少なくとも一部において、ビニングを変更し、かつ、線量が同一又は一定の範囲になるように積算枚数で調整している。これにより、透過能力やスペクトルといったX線の質を変更することなく、撮影時間や線量を調整できる。また、露光時間で調整する場合、CT装置100のスペックによって制約が生じるが、積算枚数で調整する場合にはそのような制約がないため、各撮影時間における撮影条件の設定の自由度が上がる。
【0051】
(変形例4)
次に、変形例4のCT装置100について説明する。なお、第1実施形態と同一構成及び同一機能については同一符号を付して詳細な説明を省略する。第1実施形態では、ユーザが選択した撮影時間に応じた撮影条件で撮影が開始されたが、変形例4では、撮影時間に対応する撮影時間を修正する機能を有する。
【0052】
例えば、ユーザは、
図4の示す4つの撮影時間の中から7minを選択する。そうすると、表示部5は、
図9(a)に示すように、選択された7minの撮影時間に対応する撮影条件を表示する。ユーザは、この表示画面において、撮影モードを変更することができる。
【0053】
ユーザが撮影モードを標準からエキスパートに変更すると、
図9(b)に示すように、撮影モードがエキスパートモードに変更され、各撮影条件を修正できる。ユーザは、各撮影条件をより適切なものに修正した後、決定ボタンを押すと、撮影条件は修正されたものに変更され、修正された撮影条件に基づいて撮影が開示される。
【0054】
このように、変形例4のCT装置100は、予め設定されている撮影条件を修正することができる。これにより、撮影の目的等に応じた細かい修正が可能となり、より最適な撮影条件で撮影することが可能となる。よって、より最適な画像を得ることができる。
【0055】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態のCT装置100について説明する。なお、第1実施形態と同一構成及び同一機能については同一符号を付して詳細な説明を省略する。第1実施形態では、各撮影時間において、線量を同一又は一定の範囲になるように撮影条件を設定していた。第2実施形態では、これに加えて、撮影時間が長い解像度は、撮影時間が短い解像度と同等又は増加するように撮影条件を設定する。なお、解像度とは、検出器の解像度である。
【0056】
図10は、第2実施形態の撮影時間に応じた撮影条件の一例を示す表である。
図10の例では、撮影時間が1min、2min、4.5min、9min、27min、36minの6つの撮影時間の例を示している。各撮影時間の線量は90000で同一である。
【0057】
そして、撮影時間が長いものの解像度は、撮影時間が短いものの解像度と同等又は増加するように撮影条件が設定されている。換言すれば、撮影時間の短いものの解像度が、長いものの解像度より高くなることはない。つまり、撮影時間が1minと2minを比べると、解像度は同等である。一方、1minと4.5minや2minと4.5minを比べると、4.5minの方が解像度が高い。
【0058】
そして、解像度はビニングにリンクするので、解像度を調整することでビニングの値も調整することになる。例えば、
図10の例では、解像度が500×500におけるビニングは3であるのに対し、解像度が1500×1500におけるビニングは2のように調整される。
【0059】
このように、本実施形態におけるCT装置100は、各撮影時間における線量が同一であり、かつ、撮影時間が長いものの解像度は、短いものと同等以上になっている。そのため、撮影時間が長い場合において、綺麗な画像を取得することができる。
【0060】
(変形例5)
変形例5のCT装置100について説明する。なお、第2実施形態と同一構成及び同一機能については同一符号を付して詳細な説明を省略する。第2実施形態では、設定されている撮影時間が長くなるにつれて、解像度が段階的に増加するように撮影条件が設定されていた。変形例5では、解像度ではなく、ビュー数が同等又は増加するように撮影条件が設定されている。ビュー数とは、1周あたりのデータ収集方向数を指す。
【0061】
例えば、
図5に示すように、撮影時間が1minの場合のビュー数を600、撮影時間が2minの場合のビュー数を1200、撮影時間が12minの場合のビュー数を1800、撮影時間が16minの場合のビュー数を2400とし、撮影時間が長くなるにつれて、ビュー数を増加させる。
【0062】
このように、設定されている撮影時間のビュー数を比較すると、長いもののビュー数は、短いものと同等以上になっており、撮影時間が長くなるにつれて、ビュー数が段階的に増加している。同一の線量に対して、ビュー数を増加させるほど画像の鮮明度は増す。そのため、撮影時間が長くなるにつれて、画像の鮮明度を上げることができる。
【0063】
(第3実施形態)
第3実施形態のCT装置100について説明する。なお、第1実施形態と同一構成及び同一機能については同一符号を付して詳細な説明を省略する。第3実施形態では、幾何学倍率に応じた撮影時間及び撮影条件が設定されている。
【0064】
図11は、第3実施形態における制御部7の構成を示すブロック図である。第3実施形態では、制御部7は、移動量計算部75、幾何学倍率算出部76及びテーブル選択部77を更に有する。移動量計算部75は、ユーザが入力部6を介して被検査物Aや検出器3等を移動させた移動量を算出する。
【0065】
幾何学倍率算出部76は、移動量計算部75によって算出された移動量を加味して、放射線源2の焦点から被検査物Aまでの距離(FCD)と放射線源2の焦点から検出器3までの距離(FDD)を算出する。そして、幾何学倍率算出部76は、算出したFCDとFDDから幾何学倍率(FCD/FDD)を算出する。
【0066】
テーブル選択部77は、幾何学倍率に対応するプリセットテーブルを選択する。
図12は、各プリセットテーブルの内容を示す図である。記憶部73は、幾何学倍率に対応した最適な撮影条件となる複数のプリセットテーブルを記憶している。プリセットテーブルは、複数の撮影時間、及び各撮影時間に対応して設定された撮影条件の一群である。プリセットテーブルは、幾何学倍率によって変更される。
【0067】
例えば、
図12に示すように、プリセットテーブル(1)及び(2)が設定されている。そして、記憶部73には閾値としてaという値は記憶されている。テーブル選択部77は、幾何学倍率算出部によって算出された幾何学倍率がaより小さい場合には、プリセットテーブル(1)を選択する。一方、テーブル選択部77は、幾何学倍率算出部によって算出された幾何学倍率がa以上の場合には、プリセットテーブル(2)を選択する。本実施形態では、プリセットテーブル(2)が選択されたとする。
【0068】
表示部5は、プリセットテーブル(2)に設定されている撮影時間を表示する、ユーザは表示された中から希望の撮影時間を選択する。撮影条件としては、プリセットテーブル(2)が選択されているので、金属フィルタ部4は0mm、即ち、金属フィルタ部4は配置せずに撮影を行うことになる。また、管電圧も200kVではなく、ユーザが2minを選択すれば101kVが撮影条件となる。
【0069】
このように、記憶部73は、幾何学倍率に対応するプリセットテーブルを複数記憶し、幾何学倍率に対応する撮影時間をユーザが選択する。そのため、幾何学倍率に対応する撮影を行うことができ、経験の浅いユーザであっても、より鮮明な画像を得ることができる。
【0070】
なお、プリセットテーブルは2種類である必要はなく、それ以上設け、幾何学倍率の範囲をより細かく分類してもよい。この場合、第1の閾値、第2の閾値・・と各プリセットテーブルの境目を示す閾値の数も増やせばよい。これにより、より鮮明な画像を得ることができる。
【0071】
(変形例6)
次に、変形例6のCT装置100について説明する。なお、第3実施形態と同一構成及び同一機能については同一符号を付して詳細な説明を省略する。変形例6における撮影条件CT装置100においても、第3実施形態のように、複数のプリセットテーブルが記憶されており、テーブル選択部77が幾何学倍率によって対応するプリセットテーブルを選択する点は同様である。
【0072】
もっとも、変形例6では、何れの撮影条件においても、線量が同一又は一定の範囲になるように設定されている。管電流、露光時間、積算枚数、金属フィルタ部4を何れか又は全てを調整することで、線量を同一又は一定の範囲にしている。即ち、プリセットテーブルが異なっても、各撮影条件における線量が同一又は一定の範囲である。
【0073】
図13は、変形例6のプリセットテーブルごとの撮影条件を示す図である。
図13に示すように、各プリセットテーブルにおいて、管電流と露光時間の条件が異なるが、線量は何れも40000と同一である。なお、
図13の例では、管電流と露光時間によって線量が同一になるように調整したが、金属フィルタ部4や積算枚数を調整してもよい。
【0074】
このように、変形例6においては、何れのプリセットテーブルに属する撮影条件においても、管電流、露光時間、積算枚数、金属フィルタ部4を何れか又は全てを調整することで、線量が同一又は一定の範囲になるように設定した。これにより、如何なる幾何学倍率であっても、SN比が一定若しくはメタルアーチファクトの低減に最適な金属フィルタ部4を設定できるので、撮影時間が長くなるにつれ画質が向上する。
【0075】
(第4実施形態)
第4実施形態のCT装置100について説明する。なお、第3実施形態と同一構成及び同一機能については同一符号を付して詳細な説明を省略する。第4の実施形態のCT装置100は、第3実施形態の構成に加えて、ユーザが被検査物Aの種類や撮影の用途などによって撮影モードを選択できるように構成される。
【0076】
記憶部73は、複数の撮影モードを記憶している。記憶部73は、例えば、標準モード以外に被検査物Aの種類及び撮影用途毎に撮影モードを記憶している。被検査物Aの種類には、プラスチックなど材質、重さ、厚みなどが含まれ、記憶部73は各項目ごとに撮影時間と撮影時間を対応付けて記憶している。撮影の用途には、内部観察用途、外形観察用途、寸法測定用や各用途における画像の鮮明度などが含まれ、記憶部73は各項目ごとに撮影時間と撮影時間を対応付けて記憶している。各撮影モードには、撮影時間に応じて各撮影モードに適した撮影条件が設定されている。
【0077】
図14は、第4実施形態における撮影モードの切り替えの一例を示すための図である。
図14に示すように、記憶部73は、標準モード以外にヘビーウェイトモードを記憶している。記憶部73は、ヘビーウェイトモード内において、幾何学倍率に対応したプリセットテーブルが複数記憶している。プリセットテーブル内における各撮影時間の線量は同一又は一定の範囲になるように設定されている。また、異なるプリセットテーブルにおける各撮影時間の線量についても、同一又は一定の範囲になるように設定されている。
【0078】
ユーザは、入力部6を介して撮影モードを変更することができる。ユーザが撮影モードを選択すると、撮影モード及び幾何学倍率に対応するプリセットテーブルが決定される。そして、表示部5は、決定されたプリセットテーブルに記憶されている撮影時間を表示する。ユーザは、入力部6を介して撮影時間を選択する。撮影条件決定部74は、ユーザが選択した撮影時間に対応する撮影条件を撮影条件として決定する。
【0079】
このように、第4実施形態のCT装置100は、被検査物Aの種類や撮影用途によってユーザが撮影モードを選択する。記憶部73は、撮影モードに対応する複数のプリセットテーブルや各撮影時間に対応する撮影条件を記憶している。これにより、より適した条件で撮影を行うことができ、ユーザは最適な画像を得ることができる。
【0080】
(他の実施形態)
本明細書においては、本発明に係る実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。上記のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0081】
100 CT装置
1 検査台
11 XY機構
12 回転テーブル
13 昇降機構
2 放射線源
3 検出器
4 金属フィルタ部
5 表示部
6 入力部
7 制御部
71 検査台制御部
72 放射線源制御部
73 記憶部
74 撮影条件決定部
75 移動量計算部
76 幾何学倍率算出部
77 テーブル選択部
A 被検査物