(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021656
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】防災システム
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20250206BHJP
G08B 17/06 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
G08B17/00 K
G08B17/06 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125525
(22)【出願日】2023-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(74)【代理人】
【識別番号】100228669
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 愛規
(72)【発明者】
【氏名】松熊 秀成
【テーマコード(参考)】
5C085
5G405
【Fターム(参考)】
5C085AA13
5C085CA14
5C085CA15
5C085CA16
5C085CA18
5C085FA13
5C085FA25
5C085FA35
5G405AA01
5G405AA04
5G405AA06
5G405CA13
5G405CA20
5G405CA21
5G405CA23
5G405CA36
5G405FA08
5G405FA17
5G405FA25
(57)【要約】
【課題】任意の設置現場の火災検知器又は防災受信盤側に試験装置を接続し、試験装置から火災検知器への電源供給を必要とすることなく、1又は複数の火災検知器の情報を試験装置で収集して確認を可能とする。
【解決手段】防災受信盤10からの信号回線14に監視エリアの火災を検知する複数の火災検知器12(12-1),12(12-2)・・・を並列に接続して火災を監視する。試験装置15は、例えば火災検知器12(12-2)と信号回線14の間に、コネクタを介して着脱自在に接続した状態で、試験装置15に電源回線を介して防災受信盤10からの電源を供給すると共に伝送回線を介して複数の火災検知器12(12-1),12(12-2)・・・と接続し、試験装置15により、指定された任意の火災検知器12で検出された情報を受信して保存する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防災受信盤からの信号回線に監視エリアの火災を検知する複数の火災検知器を並列に接続して火災を含む異常を監視する防災システムであって、
前記信号回線は、電源回線と伝送回線を含み、
前記火災検知器は、前記信号回線にコネクタを介して着脱自在に接続されており、
前記信号回線と何れかの前記火災検知器との間に、前記コネクタを介して試験装置を着脱自在に接続した状態で、前記試験装置に前記電源回線を介して電源を供給すると共に前記伝送回線を介して前記複数の火災検知器と接続し、
前記試験装置により、指定された前記火災検知器で検出された情報を受信して保存することを特徴とする防災システム。
【請求項2】
請求項1記載の防災システムにおいて、
前記火災検知器は、第1コネクタにより前記信号回線に接続されており、
前記試験装置は、第2コネクタのソケットと前記信号回線と同じ信号回線で引き出された第3コネクタのプラグを備え、
何れかの前記火災検知器から外した前記第1コネクタのプラグを前記試験装置の第2コネクタのソケットに接続すると共に前記試験装置の第3コネクタのプラグを前記火災検知器の前記第1コネクタのソケットに接続することにより、前記信号回線と前記火災検知器の間に前記試験装置を着脱自在に接続することを特徴とする防災システム。
【請求項3】
防災受信盤からの信号回線に監視エリアの火災を検知する複数の火災検知器を並列に接続して火災を含む異常を監視する防災システムであって、
前記信号回線は、電源回線と伝送回線を含み、
前記火災検知器は、前記信号回線にコネクタを介して着脱自在に接続されており、
前記防災受信盤に対する前記信号回線のコネクタ接続部位に、コネクタを介して前記試験装置を着脱自在に接続した状態で、前記試験装置に前記電源回線を介して電源を供給すると共に前記伝送回線を介して前記複数の火災検知器と接続し、
前記試験装置により、指定された前記火災検知器で検出された情報を受信して保存することを特徴とする防災システム。
【請求項4】
請求項3記載の防災システムにおいて、
前記火災検知器は、第1コネクタにより前記信号回線に接続されており、
前記試験装置は、第2コネクタのソケットと前記信号回線と同じ信号回線で引き出された第3コネクタのプラグを備え、
前記防災受信盤は、第4コネクタにより前記信号回線を着脱自在に接続しており、
前記防災受信盤から外した前記第4コネクタのプラグを前記試験装置の第2コネクタのソケットに接続すると共に前記試験装置の第3コネクタのプラグを前記防災受信盤の前記第4コネクタのソケットに接続することにより、前記防災受信盤に対する前記信号回線の接続部位に前記試験装置を着脱自在に接続することを特徴とする防災システム。
【請求項5】
防災受信盤からの信号回線に監視エリアの火災を検知する複数の火災検知器を並列に接続して火災を含む異常を監視する防災システムであって、
前記信号回線は、電源回線と伝送回線を含み、
前記火災検知器は、前記信号回線にコネクタを介して着脱自在に接続されており、
前記防災受信盤は、前記信号回線に含まれる電源回線を前記試験装置に接続すると共に前記火災検知器側からの伝送回線を前記防災受信盤側又は前記試験装置側に切替え接続する回線切替部を備え、
前記回線切替部により前記信号回線を前記試験装置側に切替え接続した状態で、前記試験装置を前記回線切替部にコネクタを介して接続することで、前記試験装置に前記電源回線を介して電源を供給すると共に前記伝送回線を介して前記複数の火災検知器と接続し、
前記試験装置により、指定された前記火災検知器で検出された情報を受信して保存することを特徴とする防災システム。
【請求項6】
請求項5記載の防災システムにおいて、
前記火災検知器は、第1コネクタにより前記信号回線に接続されており、
前記試験装置は、第2コネクタのソケットと前記信号回線と同じ信号回線で引き出された第3コネクタのプラグを備え、
前記防災受信盤は、前記火災検知器側の信号回線を接続する第4コネクタと、前記試験装置側の信号回線を接続する前記回線切替部の第5コネクタのソケットとを備え、
前記防災受信盤の前記回線切替部は、前記第4コネクタからの前記伝送回線を、前記防災受信盤内の伝送部への伝送回線又は前記第5コネクタのソケットへの伝送回線に切替える切替スイッチ回路を備え、
前記試験装置の第3コネクタのプラグを前記回線切替部の前記第5コネクタのソケットに接続することにより、前記防災受信盤の前記回線切替部に前記試験装置を着脱自在に接続し、
前記試験装置により、指定された前記火災検知器で検出された情報を受信して保存することを特徴とする防災システム。
【請求項7】
防災受信盤からの信号回線に監視エリアの火災を検知する複数の火災検知器を並列に接続して火災を含む異常を監視する防災システムであって、
前記信号回線は、電源回線と伝送回線を含み、
前記火災検知器は、前記信号回線にコネクタを介して着脱自在に接続されており、
前記防災受信盤は、前記信号回線に含まれる電源回線を前記試験装置に接続すると共に前記火災検知器側からの伝送回線を前記防災受信盤側又は前記試験装置側に接続する回線分岐部を備え、
前記回線分岐部を介して前記信号回線を前記試験装置側に接続した状態で、前記試験装置を前記回線分岐部にコネクタを介して接続することで、前記試験装置に前記電源回線を介して電源を供給すると共に前記伝送回線を介して前記複数の火災検知器と接続し、
前記試験装置により、指定された前記火災検知器で検出された情報を受信して保存することを特徴とする防災システム。
【請求項8】
請求項7記載の防災システムにおいて、
前記火災検知器は、第1コネクタにより前記信号回線に接続されており、
前記試験装置は、第2コネクタのソケットと前記信号回線と同じ信号回線で引き出された第3コネクタのプラグを備え、
前記防災受信盤は、前記火災検知器側の信号回線を接続する第4コネクタと、前記試験装置側の信号回線を接続する前記回線分岐部の第6コネクタのソケットとを備え、
前記防災受信盤の前記回線分岐部は、前記防災受信盤内の伝送部から前記第4コネクタへの電源回線及び伝送回線を前記第6コネクタのソケットに分岐接続し、
前記試験装置の第3コネクタのプラグを前記回線分岐部の前記第6コネクタのソケットに接続することにより、前記防災受信盤の前記回線分岐部に前記試験装置を着脱自在に接続し、
前記試験装置により、指定された前記火災検知器で検出された情報を受信して保存することを特徴とする防災システム。
【請求項9】
請求項1,3又は7の何れかに記載の防災システムにおいて、
前記防災受信盤は、前記試験装置が接続された場合に、前記伝送回線を使用した前記火災検知器に対する周期的に呼出信号を送信して応答信号を受信するポーリング処理を停止し、前記伝送回線を前記試験装置による情報の伝送に割り当てることを特徴とする防災システム。
【請求項10】
請求項1,3又は7の何れかに記載の防災システムにおいて、
前記防災受信盤は、前記ポーリング処理の停止中に前記火災検知器で火災が検出された場合に送信される火災割込み信号の受信に基づいて火災を検出して警報することを特徴とする防災システム。
【請求項11】
請求項5記載の防災システムにおいて、
前記試験装置は、前記回線切替部を介して前記複数の火災検知器に接続された状態で、前記火災検知器で火災が検出された場合に送信される火災割込み信号の受信に基づいて火災を検出して警報することを特徴とする防災システム。
【請求項12】
請求項1、3,5又は7の何れかに記載の防災システムにおいて、
前記電源回線は、通常電源回線と試験電源回線で構成され、
前記信号回線は、
前記通常電源回線を構成する第1電源線及び第1電源コモン線と、
前記試験電源回線を構成する第2電源線及び第2電源コモン線と、
前記伝送回線を構成するシリアル信号線及びシリアル信号コモン線と、
を備える6線であることを特徴とする防災システム。
【請求項13】
請求項1、3,5又は7の何れかに記載の防災システムにおいて、
前記防災受信盤は、前記火災検知器に所定の下り信号を送信すると共に前記火災検知器からの所定の上り信号を受信し、
前記試験装置は、前記火災検知器へ前記下り信号を送信すると共に前記火災検知器から前記上り信号を受信し、且つ、前記防災受信盤へ前記上り信号を送信すると共に前記防災受信盤からの前記下り信号を受信し、
前記火災検知器は、前記防災受信盤又は前記試験装置からの前記下り信号を受信すると共に前記防災受信盤又は前記試験装置へ前記上り信号を送信することを特徴とする防災システム。
【請求項14】
請求項13記載の防災システムにおいて、
前記下り信号は、前記伝送回線の信号電圧を変化させる電圧モード信号であり、
前記上り信号は、前記伝送回線の信号電流を変化させる電流モードの信号であることを特徴とする防災システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防災受信盤からの信号回線に監視エリアの火災を検知する火災検知器を接続して火災を監視する防災システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、自動車専用道路等のトンネルには、トンネル内で発生する火災を監視して火災事故から人身及び車両等を守るために、防災システムとして、トンネル内に火災検知器がトンネルの長手方向に沿って設置され、防災受信盤から引き出された信号回線に火災検知器が接続されている。
【0003】
火災検知器は、トンネルの長手方向となる左右両側に検知エリアを持ち、隣に配置される火災検知器との検知エリアが相互補完的に重なるように、例えば25m間隔或いは50m間隔で連続的に配置されている。
【0004】
また、火災検知器は、火災を検知するために、透光性窓を介してトンネル内で発生する火災炎からの放射線エネルギー(光エネルギー)として、例えば赤外線エネルギーを受光素子で受光して観測しており、火災の検知機能を維持するために、受光素子の感度を監視するための感度試験や透光性窓の汚れを監視するための汚れ試験を行っている。
【0005】
受光素子の感度試験では、防災受信盤から定期的に送信される試験信号を受信した場合に、火災炎から発せられる光に相当する試験光を試験光源から受光素子に入射して受光感度(受光値)を検出している。そして、火災検知器は、検出した受光感度に応じて受光素子の故障信号(感度異常信号)を防災受信盤に送信して受光素子の故障警報(感度異常の警報)を出力させている。
【0006】
透光性窓の汚れ試験では、防災受信盤から定期的に送信される試験信号を受信した場合に、試験光を火災検知器の外側に設けられた試験光源から透光性窓を介して受光素子に入射して減光率を求めている。そして、火災検知器は、受光値が所定の汚れ閾値に低下するまでは受光値を補正することで火災の検知機能を維持し、減光率が所定の汚れ閾値を超えた場合に汚れ異常信号を防災受信盤に送信して汚れ警報を出力させている。
【0007】
また、近年にあっては、火災検知器の劣化を監視する方法として、感度試験を行い、受光素子が故障とみなされるよりも前の条件を満たしたときに劣化異常と判定する輻射式火災検知器や(特許文献1)、火災検知器における感度試験の受光感度(受光値)以外の情報(例えば消費電流等)に基づいて火災検知器の劣化を検出するトンネル防災システム(特許文献2)が知られている。
【0008】
また、従来の防災システムにあっては、防災受信盤側に同じ機能を備えた試験装置を設け、防災受信盤に接続されている信号回線を外して試験装置に接続し、火災検知器の劣化予兆情報を、防災受信盤側に設置した試験装置で収集するようにしている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3240586号公報
【特許文献2】特許第6900206号公報
【特許文献3】特開2021-163099号公報
【発明の概要】
【0010】
しかしながら、火災検知器の劣化予兆情報を、防災受信盤側に設置した試験装置で収集する従来の防災システム(特許文献3)にあっては、防災受信盤と同等な機能及び電源を有する試験装置を必要とすることから、設備構成が複雑となり、コストが嵩む問題がある。
【0011】
また、火災検知器は、防災受信盤から通常電源及び試験電源の2系統の電源供給を受けて動作しており、防災受信盤から試験装置に切替える場合、防災受信盤から信号回線を外したときに火災検知器に対する電源供給が断たれ、その後に試験装置に信号回線を接続したときに火災検知器に電源が供給されて再起動することとなり、運用中に停電が発生したと同じ状況となり、電源の断接に伴い火災検知器が正常に起動できない障害を起こす可能性が高まる。
【0012】
また、試験装置による検知器情報の収集は、防災受信盤側のみならず、現場設置されている火災検知器側で収集してチェックする場合があり、その場合、特定の火災検知器のみならず、周辺の複数の火災検知器の情報を収集して確認する必要がある。
【0013】
このため、試験装置を持ち運び可能な可搬式とした場合には、電池電源を必要とし、複数の火災検知器を動作しながら情報を収集するに足りる電源を確保するためには電池電源が大型化し、火災検知器の1台単位の試験とならざるを得ず、現場での情報収集に手間と時間がかかる。
【0014】
本発明は、任意の設置現場の火災検知器側又は防災受信盤側に試験装置を接続し、試験装置から火災検知器への電源供給を必要とすることなく、1又は複数の火災検知器の情報を試験装置で収集して確認を可能とする防災システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(第1発明:試験装置を火災検知器側に接続するシステム)
本発明は、防災受信盤からの信号回線に監視エリアの火災を検知する複数の火災検知器を並列に接続して火災を含む異常を監視する防災システムであって、
信号回線は、電源回線と伝送回線を含み、
火災検知器は、信号回線にコネクタを介して着脱自在に接続されており、
信号回線と何れかの火災検知器との間に、コネクタを介して試験装置を着脱自在に接続した状態で、試験装置に電源回線を介して電源を供給すると共に伝送回線を介して複数の火災検知器と接続し、
試験装置により、指定された火災検知器で検出された情報を受信して保存することを特徴とする。
【0016】
(火災検知器と試験装置のコネクタ接続)
火災検知器は、第1コネクタにより信号回線に接続されており、
試験装置は、第2コネクタのソケットと信号回線と同じ信号回線で引き出された第3コネクタのプラグを備え、
何れかの火災検知器から外した第1コネクタのプラグを試験装置の第2コネクタのソケットに接続すると共に試験装置の第3コネクタのプラグを火災検知器の第1コネクタのソケットに接続することにより、信号回線と火災検知器の間に試験装置を着脱自在に接続する。
【0017】
(第2発明:試験装置を防災受信盤の信号回線引出部に接続するシステム)
本発明の別の形態にあっては、防災受信盤からの信号回線に監視エリアの火災を検知する複数の火災検知器を並列に接続して火災を含む異常を監視する防災システムであって、
信号回線は、電源回線と伝送回線を含み、
火災検知器は、信号回線にコネクタを介して着脱自在に接続されており、
防災受信盤に対する信号回線のコネクタ接続部位に、コネクタを介して試験装置を着脱自在に接続した状態で、試験装置に電源回線を介して電源を供給すると共に伝送回線を介して複数の火災検知器と接続し、
試験装置により、指定された火災検知器で検出された情報を受信して保存することを特徴とする。
【0018】
(防災受信盤と試験装置のコネクタ接続)
火災検知器は、第1コネクタにより信号回線に接続されており、
試験装置は、第2コネクタのソケットと信号回線と同じ信号回線で引き出された第3コネクタのプラグを備え、
防災受信盤は、第4コネクタにより信号回線を着脱自在に接続しており、
防災受信盤から外した第4コネクタのプラグを試験装置の第2コネクタのソケットに接続すると共に試験装置の第3コネクタのプラグを防災受信盤の第4コネクタのソケットに接続することにより、防災受信盤に対する信号回線の接続部位に試験装置を着脱自在に接続する。
【0019】
(第3発明:試験装置を防災受信盤の回線切替部に接続するシステム)
本発明の別の形態にあっては、防災受信盤からの信号回線に監視エリアの火災を検知する複数の火災検知器を並列に接続して火災を含む異常を監視する防災システムであって、
信号回線は、電源回線と伝送回線を含み、
火災検知器は、信号回線にコネクタを介して着脱自在に接続されており、
防災受信盤は、信号回線に含まれる電源回線を試験装置に接続すると共に火災検知器側からの伝送回線を防災受信盤側又は試験装置側に切替え接続する回線切替部を備え、
回線切替部により信号回線を試験装置側に切替え接続した状態で、試験装置を回線切替部にコネクタを介して接続することで、試験装置に電源回線を介して電源を供給すると共に伝送回線を介して複数の火災検知器と接続し、
試験装置により、指定された火災検知器で検出された情報を受信して保存することを特徴とする。
【0020】
(防災受信盤と試験装置のコネクタ接続)
火災検知器は、第1コネクタにより信号回線に接続されており、
試験装置は、第2コネクタのソケットと信号回線と同じ信号回線で引き出された第3コネクタのプラグを備え、
防災受信盤は、火災検知器側の信号回線を接続する第4コネクタと、試験装置側の信号回線を接続する回線切替部の第5コネクタのソケットとを備え、
防災受信盤の回線切替部は、第4コネクタからの伝送回線を、防災受信盤内の伝送部への伝送回線又は第5コネクタのソケットへの伝送回線に切替える切替スイッチ回路を備え、
試験装置の第3コネクタのプラグを回線切替部の第5コネクタのソケットに接続することにより、防災受信盤の回線切替部に試験装置を着脱自在に接続し、
試験装置により、指定された火災検知器で検出された情報を受信して保存する。
【0021】
(第4発明:試験装置を防災受信盤の回線分岐部に接続するシステム)
本発明の別の形態にあっては、防災受信盤からの信号回線に監視エリアの火災を検知する複数の火災検知器を並列に接続して火災を含む異常を監視する防災システムであって、
信号回線は、電源回線と伝送回線を含み、
火災検知器は、信号回線にコネクタを介して着脱自在に接続されており、
防災受信盤は、信号回線に含まれる電源回線を試験装置に接続すると共に火災検知器側からの伝送回線を防災受信盤側又は試験装置側に接続する回線分岐部を備え、
回線分岐部を介して信号回線を試験装置側に接続した状態で、試験装置を回線分岐部にコネクタを介して接続することで、試験装置に電源回線を介して電源を供給すると共に伝送回線を介して複数の火災検知器と接続し、
試験装置により、指定された火災検知器で検出された情報を受信して保存することを特徴とする。
【0022】
(防災受信盤と試験装置のコネクタ接続)
火災検知器は、第1コネクタにより信号回線に接続されており、
試験装置は第2コネクタのソケットと信号回線と同じ信号回線で引き出された第3コネクタのプラグを備え、
防災受信盤は、火災検知器側の信号回線を接続する第4コネクタと、試験装置側の信号回線を接続する回線分岐部の第6コネクタのソケットとを備え、
防災受信盤の回線分岐部は、防災受信盤内の伝送部から第4コネクタへの電源回線及び伝送回線を第6コネクタのソケットに分岐接続し、
試験装置の第3コネクタのプラグを回線分岐部の第6コネクタのソケットに接続することにより、防災受信盤の分岐部に試験装置を着脱自在に接続し、
試験装置により、指定された火災検知器で検出された情報を受信して保存する。
【0023】
(第1、第2及び第4発明の防災受信盤のポーリング停止)
防災受信盤は、試験装置が接続された場合に、伝送回線を使用した火災検知器に対する周期的に呼出信号を送信して応答信号を受信するポーリング処理を停止し、伝送回線を試験装置による情報の伝送に割り当てる。
【0024】
(第1、第2及び第4発明のポーリング停止中の火災割込み)
防災受信盤は、ポーリング処理の停止中に火災検知器で火災が検出された場合に送信される火災割込み信号の受信に基づいて火災を検出して警報する。
【0025】
(第3発明:試験装置による火災監視)
試験装置は、回線切替部を介して複数の火災検知器に接続された状態で、火災検知器で火災が検出された場合に送信される火災割込み信号の受信に基づいて火災を検出して警報する。
【0026】
(信号回線の構成)
電源回線は、通常電源回線と試験電源回線で構成され、
信号回線は、
通常電源回線を構成する第1電源線及び第1電源コモン線と、
試験電源回線を構成する第2電源線及び第2電源コモン線と、
伝送回線を構成するシリアル信号線及びシリアル信号コモン線と、
を備える6線である。
【0027】
(下り信号と上り信号の伝送)
防災受信盤は、火災検知器に所定の下り信号を送信すると共に火災検知器からの所定の上り信号を受信し、
試験装置は、火災検知器へ下り信号を送信すると共に火災検知器から上り信号を受信し、且つ、防災受信盤へ上り信号を送信すると共に防災受信盤からの下り信号を受信し、
火災検知器は、防災受信盤又は試験装置からの下り信号を受信すると共に防災受信盤又は試験装置へ上り信号を送信する。
【0028】
(電圧モードの下り信号と電流モードの上り信号)
下り信号は、伝送回線の信号電圧を変化させる電圧モード信号であり、
上り信号は、伝送回線の信号電流を変化させる電流モード信号である。
【発明の効果】
【0029】
(第1発明の効果:試験装置を火災検知器側に接続するシステムの効果)
本発明は、防災受信盤からの信号回線に監視エリアの火災を検知する複数の火災検知器を並列に接続して火災を含む異常を監視する防災システムであって、信号回線は、電源回線と伝送回線を含み、火災検知器は、信号回線にコネクタを介して着脱自在に接続されており、信号回線と何れかの火災検知器との間に、コネクタを介して試験装置を着脱自在に接続した状態で、試験装置に電源回線を介して電源を供給すると共に伝送回線を介して複数の火災検知器と接続し、試験装置により、指定された火災検知器で検出された情報を受信して保存するようにしたため、信号回線と火災検知器の間にコネクタを介して試験装置を接続しても、信号回線に接続されている全ての火災検知器に対する防災受信盤からの電源供給は維持され、試験装置に防災受信盤と同等の電源部を設ける必要がなく、試験装置が小型軽量となり、携帯可能な可搬式の試験装置とすることを可能とする。
【0030】
また、試験装置は、防災受信盤から電源供給を受けて動作し、自己を動作できる程度の小型小容量の電池電源を備える程度で済むことから、試験装置の更なる小型軽量化が可能となる。
【0031】
また、試験装置は、信号回線に接続されている任意の火災検知器の場所でコネクタを介して接続可能であり、劣化要因である温度環境や湿度環境が、他に比べて劣化を招きやすい状態にある場所などに設置されている火災検知器にコネクタを介して接続することで、当該火災検知器に記憶している劣化予兆情報等を当該火災検知器の設置現場で収集可能とする。
【0032】
また、信号回線と任意の火災検知器の間にコネクタを介して接続した試験装置は、信号回線に含まれる伝送回線を介して全ての火災検知器と接続されており、コネクタを介して試験装置を接続している火災検知器のみならず、他の全ての火災検知器のアドレスを指定して読出しを指示することで、記憶している情報を収集して確認することを可能とする。
【0033】
また、信号回線と火災検知器の間にコネクタを介して試験装置を接続する場合、コネクタ接続を外す火災検知器については電源供給の断接による再起動が行われるが、他の全ての火災検知器は、試験装置をコネクタ接続しても電源供給は維持され、運用中における火災検知器の電源供給の断接による再起動が必要最小限に抑えられるため、電源供給の断接に伴う火災検知器の立ち上がり障害の発生を抑制可能とする。
【0034】
(火災検知器と試験装置のコネクタ接続の効果)
また、第1発明では、火災検知器は、第1コネクタにより信号回線に接続されており、試験装置は、第2コネクタのソケットと信号回線と同じ信号回線で引き出された第3コネクタのプラグを備え、何れかの火災検知器から外した第1コネクタのプラグを試験装置の第2コネクタのソケットに接続すると共に試験装置の第3コネクタのプラグを火災検知器の第1コネクタのソケットに接続することにより、信号回線と火災検知器の間に試験装置を着脱自在に接続するため、火災検知器を信号回線に接続している第1コネクタのプラグ、試験装置の第2コネクタのソケット、及び試験装置の第3コネクタのプラグによって、信号回線と火災検知器の間に試験装置をコネクタにより簡単且つ容易に接続することで、信号回線に接続されている任意の火災検知器を指定した情報の収集を可能とする。
【0035】
(第2発明の効果:試験装置を防災受信盤の信号回線引出部に接続するシステムの効果)
また、本発明の別の形態にあっては、防災受信盤からの信号回線に監視エリアの火災を検知する複数の火災検知器を並列に接続して火災を含む異常を監視する防災システムであって、信号回線は、電源回線と伝送回線を含み、火災検知器は、信号回線にコネクタを介して着脱自在に接続されており、防災受信盤に対する信号回線のコネクタ接続部位に、コネクタを介して試験装置を着脱自在に接続した状態で、試験装置に電源回線を介して電源を供給すると共に伝送回線を介して複数の火災検知器と接続し、試験装置により、指定された火災検知器で検出された情報を受信して保存するようにしたため、防災受信盤と信号回線の間にコネクタを介して試験装置を接続しても、試験装置を接続する際には電源供給が一時的に断たれるが、試験装置を接続した後は、信号回線に接続されている全ての火災検知器に対する防災受信盤からの電源供給が維持されため、試験装置に防災受信盤と同等の電源部を設ける必要がなく、試験装置が小型軽量となり、携帯可能な可搬式の試験装置とすることを可能とする。
【0036】
また、試験装置は、防災受信盤から電源供給を受けて動作し、自己を動作できる程度の小型小容量の電池電源を備える程度で済むことから、試験装置の更なる小型軽量化が可能となる。
【0037】
また、防災受信盤と信号回線の間にコネクタを介して接続した試験装置は、信号回線に含まれる伝送回線を介して全ての火災検知器と接続されていることから、全ての火災検知器のアドレスを指定して読出しを指示することで記憶している情報を収集して確認することを可能とする。
【0038】
(防災受信盤と試験装置のコネクタ接続による効果)
また、第2発明では、火災検知器は、第1コネクタにより信号回線に接続されており、試験装置は、第2コネクタのソケットと信号回線と同じ信号回線で引き出された第3コネクタのプラグを備え、防災受信盤は、第4コネクタにより信号回線を着脱自在に接続しており、防災受信盤から外した第4コネクタのプラグを試験装置の第2コネクタのソケットに接続すると共に試験装置の第3コネクタのプラグを防災受信盤の第4コネクタのソケットに接続することにより、防災受信盤に対する信号回線の接続部位に試験装置を着脱自在に接続するため、試験装置の第2コネクタのソケット、及び試験装置の第3コネクタのプラグ、防災受信盤に信号回線を接続している第4コネクタのソケットとプラグによって、防災受信盤と信号回線の間に試験装置を、コネクタを介して簡単且つ容易に接続することで、信号回線に接続されている任意の火災検知器を指定した情報の収集を可能とする。
【0039】
(第3発明の効果:試験装置を防災受信盤の回線切替部に接続するシステムの効果)
また、本発明の別の形態にあっては、防災受信盤からの信号回線に監視エリアの火災を検知する複数の火災検知器を並列に接続して火災を含む異常を監視する防災システムであって、信号回線は、電源回線と伝送回線を含み、火災検知器は、信号回線にコネクタを介して着脱自在に接続されており、防災受信盤は、信号回線に含まれる電源回線を試験装置に接続すると共に火災検知器側からの伝送回線を防災受信盤側又は試験装置側に切替え接続する回線切替部を備え、回線切替部により信号回線を試験装置側に切替え接続した状態で、試験装置を回線切替部にコネクタを介して接続することで、試験装置に電源回線を介して電源を供給すると共に伝送回線を介して複数の火災検知器と接続し、試験装置により、指定された火災検知器で検出された情報を受信して保存するようにしたため、防災受信盤の回線切替部にコネクタを介して試験装置を接続し、回線切替部で伝送回線を防災受信盤側から切り離して試験装置側に切替接続するだけで、試験装置は伝送回線を介して全ての火災検知器と接続され、全て火災検知器を対象に、アドレスを指定して読出しを指示することで記憶している情報を収集して確認することを可能とする。
【0040】
また、防災受信盤の回線切替部は、信号回線に含まれる電源回線による火災検知器に対する電源供給は切り替えずに固定的に接続しているため、防災受信盤の回線切替部に試験装置を接続しても、火災検知器に対する電源供給は断接されずに継続され、電源供給の断接に伴う火災検知器の立ち上がり障害の発生を防止可能とする。
【0041】
また、試験装置は、防災受信盤から電源供給を受けて動作し、自己を動作できる程度の小型小容量の電池電源を備える程度で済むことから、試験装置の更なる小型軽量化が可能となる。
【0042】
(防災受信盤と試験装置のコネクタ接続による効果)
また、第3発明では、火災検知器は、第1コネクタにより信号回線に接続されており、試験装置は、第2コネクタのソケットと信号回線と同じ信号回線で引き出された第3コネクタのプラグを備え、防災受信盤は、火災検知器側の信号回線を接続する第4コネクタと、試験装置側の信号回線を接続する回線切替部の第5コネクタのソケットとを備え、防災受信盤の回線切替部は、第4コネクタからの伝送回線を、防災受信盤内の伝送部への伝送回線又は第5コネクタのソケットへの伝送回線に切替える切替スイッチ回路を備え、試験装置の第3コネクタのプラグを回線切替部の第5コネクタのソケットに接続することにより、防災受信盤の回線切替部に試験装置を着脱自在に接続し、試験装置により、指定された火災検知器で検出された情報を受信して保存するため、試験装置の第2コネクタのソケット、防災受信盤の切替部に設けた第5コネクタのソケットによって、防災受信盤の回線切替部に試験装置を、コネクタを介して簡単且つ容易に接続することで、信号回線に接続されている任意の火災検知器を指定した情報の収集を可能とする。
【0043】
(第4発明の効果:試験装置を防災受信盤の回線分岐部に接続するシステムの効果)
また、本発明の別の形態にあっては、防災受信盤からの信号回線に監視エリアの火災を検知する複数の火災検知器を並列に接続して火災を含む異常を監視する防災システムであって、信号回線は、電源回線と伝送回線を含み、火災検知器は、信号回線にコネクタを介して着脱自在に接続されており、防災受信盤は、信号回線に含まれる電源回線を試験装置に接続すると共に火災検知器側からの伝送回線を防災受信盤側又は試験装置側に接続する回線分岐部を備え、回線分岐部を介して信号回線を試験装置側に接続した状態で、試験装置を回線分岐部にコネクタを介して接続することで、試験装置に電源回線を介して電源を供給すると共に伝送回線を介して複数の火災検知器と接続し、試験装置により、指定された火災検知器で検出された情報を受信して保存するようにしたため、防災受信盤の回線分岐部にコネクタを介して試験装置を接続するだけで、試験装置は伝送回線を介して全ての火災検知器と接続され、全て火災検知器を対象に、アドレスを指定して読出しを指示することで記憶している情報を収集して確認することを可能とする。
【0044】
また、防災受信盤の回線分岐部は、信号回線に含まれる電源回線を火災検知器側に固定的に接続しているため、防災受信盤の分岐部に試験装置を接続しても、火災検知器に対する電源供給は断接されずに継続されることで、電源供給の断接に伴う火災検知器の立ち上がり障害の発生を防止可能とする。
【0045】
また、試験装置は、防災受信盤から電源供給を受けて動作し、自己を動作できる程度の小型小容量の電池電源を備える程度で済むことから、試験装置の更なる小型軽量化が可能となる。
【0046】
(防災受信盤と試験装置のコネクタ接続による効果)
また、第4発明では、火災検知器は、第1コネクタにより信号回線に接続されており、試験装置は第2コネクタのソケットと信号回線と同じ信号回線で引き出された第3コネクタのプラグを備え、防災受信盤は、火災検知器側の信号回線を接続する第4コネクタと、試験装置側の信号回線を接続する回線分岐部の第6コネクタのソケットとを備え、防災受信盤の回線分岐部は、防災受信盤内の伝送部から第4コネクタへの電源回線及び伝送回線を第6コネクタのソケットに分岐接続し、試験装置の第3コネクタのプラグを分岐部の第6コネクタのソケットに接続することにより、防災受信盤の回線分岐部に試験装置を着脱自在に接続し、試験装置により、指定された火災検知器で検出された情報を受信して保存するため、試験装置の第2コネクタのソケット、防災受信盤の回線分岐部に設けた第6コネクタのソケットによって、防災受信盤の回線分岐部に試験装置を、コネクタを介して簡単且つ容易に接続することで、信号回線に接続されている任意の火災検知器を指定した情報の収集を可能とする。
【0047】
(第1、第2及び第4発明の防災受信盤のポーリング停止の効果)
また、防災受信盤は、試験装置が接続された場合に、伝送回線を使用した火災検知器に対する周期的に呼出信号を送信して応答信号を受信するポーリング処理を停止し、伝送回線を試験装置による情報の伝送に割り当てるため、防災受信盤からの火災検知器に対するポーリング処理に影響されることなく、火災検知器に記憶している情報を試験装置に伝送回線を介して効率良く伝送して収集することを可能とする。
【0048】
(第1、第2及び第4発明のポーリング停止中の火災割込みの効果)
また、第1、第2及び第4発明の防災受信盤は、ポーリング処理の停止中に火災検知器で火災が検出された場合に送信される火災割込み信号の受信に基づいて火災を検出して警報するため、防災受信盤のポーリング処理が停止されていても、火災検知器で火災が検出されると防災受信盤から火災警報が出力されることから、試験装置による火災検知器の情報収集中てあっても、確実に火災監視を継続可能とする。
【0049】
(第3発明:試験装置による火災監視)
また、第3発明の試験装置は、回線切替部を介して複数の火災検知器に接続された状態で、火災検知器で火災が検出された場合に送信される火災割込み信号の受信に基づいて火災を検出して警報するため、防災受信盤側が試験装置の接続に伴い回線切替部により伝送回線から切り離された状態であっても、火災検知器で火災が検出されると試験装置から火災警報が出力されることから、試験装置による火災検知器の情報収集中てあっても、確実に火災監視を継続可能とする。
【0050】
(信号回線の構成の効果)
また、電源回線は、通常電源回線と試験電源回線で構成され、信号回線は、通常電源回線を構成する第1電源線及び第1電源コモン線と、試験電源回線を構成する第2電源線及び第2電源コモン線と、伝送回線を構成するシリアル信号線及びシリアル信号コモン線と、を備える6線であるため、火災検知器の第1コネクタ、試験装置の第2コネクタのソケットと第3コネクタのプラグ、防災受信盤の第4コネクタのソケットとプラグ、防災受信盤の回線切替部の第5コネクタのソケット、及び、防災受信盤の回線分岐部の第6コネクタのソケットは、全て6ピンのコネクタ構造となることから、簡単且つ容易に試験装置の接続を可能とする。
【0051】
(下り信号と上り信号の伝送の効果)
また、防災受信盤は、火災検知器に所定の下り信号を送信すると共に火災検知器からの所定の上り信号を受信し、試験装置は、火災検知器へ下り信号を送信すると共に火災検知器から上り信号を受信し、且つ、防災受信盤へ上り信号を送信すると共に防災受信盤からの下り信号を受信し、火災検知器は防災受信盤又は試験装置からの下り信号を受信すると共に防災受信盤又は試験装置へ上り信号を送信し、下り信号は、伝送回線の信号電圧を変化させる電圧モード信号であり、上り信号は、伝送回線の信号電流を変化させる電流モードの信号であるため、試験装置は、火災検知器へ下り信号による指定で記憶している情報を読出して上り信号として受信して情報を収集可能とする。
【0052】
また、試験装置は、防災受信盤へ上り信号として、例えば、ポーリング処理を中止する旨の指示(コマンド)を伝送することで、防災受信盤による火災検知器のポーリング処理を停止可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】トンネル防災システムを示した説明図である。
【
図2】防災受信盤の機能構成を示した説明図である。
【
図3】収容箱に取り付けられた火災検知器を示した説明図である。
【
図4】火災検知器の機能構成を示した説明図である。
【
図5】火災検知器側に試験装置を接続するトンネル防災システムの第1実施形態を示した説明図である。
【
図6】
図5の第1実施形態について、収納箱の蓋を外して火災検知器に試験装置をコネクタで接続する状態を示した説明図である。
【
図9】
図5の第1実施形態での試験装置の情報収集制御を示したフローチャートである。
【
図10】防災受信盤に試験装置を接続するトンネル防災システムの第2実施形態を示した説明図である。
【
図11】防災受信盤の回線切替部に試験装置を接続するトンネル防災システムの第3実施形態を示した説明図である。
【
図12】
図11の回線切替部の回路構成を示した説明図である。
【
図13】
図11の第3実施形態での試験装置の情報収集制御を示したフローチャートである。
【
図14】防災受信盤の回線分岐部に試験装置を接続するトンネル防災システムの第4実施形態を示した説明図である。
【
図15】
図14の回線分岐部の回路構成を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下に、本発明に係る防災システムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により、本発明が限定されるものではない。
【0055】
[実施形態の基本的な概念]
まず、実施形態の基本的概念について説明する。実施形態は、概略的に、防災受信盤からの信号回線に監視エリアの火災を検知する複数の異常検知器を接続して監視エリアにおける異常を監視する防災システムであり、このような防災システムの一例としてのトンネル防災システムに関する。
【0056】
ここで、「トンネル防災システム」は、監視エリアとなるトンネル内で発生し得る火災等の異常を監視して防止・対処するためのシステムであり、異常検知器としての火災検知器をトンネル内の長手方向に所定間隔で設置し、信号回線を介して、防災受信盤に当該火災検知器を接続したものである。
【0057】
また、「防災受信盤」とは、防災システムを構築する施設や設備の電気室等に設置され、監視エリアに設置された火災検知器や消火栓装置等の非常用設備の端末機器を接続することで監視エリアの火災等の異常を監視するものである。また、「監視エリア」とは防災システムにより監視される場所であり、例えば建物内の部屋、廊下、階段、トンネル内部等を含む概念である。
【0058】
また、「火災検知器」とは、監視エリアの火災を検知するものであり、火災の検知方法は任意であるが、例えば透光性窓を介して監視エリアで発生する火災炎からの光エネルギーとして、例えば火災炎からの放射線(赤外線)を炎検出部で受光して炎を検出することで監視エリアの火災を検知するものを含む。
【0059】
そして、実施形態のトンネル防災システムは、伝送回線と電源回線を含む信号回線の任意の位置に試験装置をコネクタにより着脱自在に接続し、試験装置に電源回線を介して防災受信盤から電源を供給すると共に、伝送回線を介して複数の火災検知器と接続し、試験装置により、指定された火災検知器で検出された情報を受信して保存するものである。
【0060】
実施形態のトンネル防災システムは、試験装置を接続する場所により、第1乃至第4発明に対応した第1乃至第4実施形態を有するものである。
【0061】
第1発明に対応した第1実施形態のトンネル防災システムは、信号回線と何れかの火災検知器との間に、コネクタを介して試験装置を着脱自在に接続し、この状態で試験装置に電源回線を介して電源を供給すると共に伝送回線を介して複数の火災検知器と接続することで、試験装置により、アドレス指定された火災検知器で検出された情報を受信して保存するものである。
【0062】
ここで、火災検知器は、第1コネクタにより伝送回線と電源回線を含む信号回線に接続されており、また、試験装置は、第2コネクタのソケットと信号回線と同じ信号回線で引き出された第3コネクタのプラグを備えている。
【0063】
このため、火災検知器から外した第1コネクタのプラグを試験装置の第2コネクタのソケットに接続すると共に試験装置の第3コネクタのプラグを火災検知器の第1コネクタのソケットに接続することにより、信号回線と火災検知器の間に試験装置を着脱自在に接続することを可能とする。
【0064】
このようなトンネル防災システムの第1実施形態によれば、信号回線と火災検知器の間にコネクタを介して試験装置を接続しても、信号回線に接続されている全ての火災検知器に対する防災受信盤からの電源供給は維持されることから、試験装置に防災受信盤と同等の電源部を設ける必要がなく、試験装置が小型軽量となり、携帯可能な可搬式の試験装置とすることを可能とする。
【0065】
また、試験装置は、防災受信盤から電源供給を受けて動作し、自己を動作できる程度の小型小容量の電池電源を備える程度で済むことから、試験装置の更なる小型軽量化が可能となる。
【0066】
また、試験装置は、信号回線に接続されている任意の火災検知器の場所でコネクタを介して接続可能であり、火災検知器で記憶している劣化予兆情報等を温度や湿度の高い劣化要因の高いトンネル区間などに設置されている火災検知器にコネクタを介して接続することで、火災検知器に記憶されている情報を設置現場で収集することを可能とする。
【0067】
また、信号回線と任意の火災検知器の間にコネクタを介して接続した試験装置は、信号回線に含まれる伝送回線を介して全ての火災検知器と接続されており、コネクタを介して試験装置が接続されている火災検知器のみならず、他の全ての火災検知器のアドレスを指定して読出しを指示することで、これらの火災検知器が記憶している情報を収集して確認することを可能とする。
【0068】
また、信号回線と火災検知器の間にコネクタを介して試験装置を接続する場合、コネクタ接続を外す火災検知器については、電源供給の断接による再起動が行われるが、他の全ての火災検知器は、試験装置をコネクタ接続しても電源供給は維持され、運用中における火災検知器の電源供給の断接による再起動が必要最小限に抑えられることから、電源供給の断接に伴う火災検知器の立ち上がり障害の発生を抑制可能とする。
【0069】
第2発明に対応した第2実施形態のトンネル防災システムは、防災受信盤に対する信号回線の接続部位に、コネクタを介して試験装置を着脱自在に接続し、この状態で試験装置に電源回線を介して電源を供給すると共に伝送回線を介して複数の火災検知器と接続することで、試験装置により、アドレス指定された火災検知器で検出された情報を受信して保存するものである。
【0070】
ここで、火災検知器と試験装置のコネクタは、第1実施形態と同じであり、防災受信盤は、第4コネクタにより信号回線を着脱自在に接続している。このため、防災受信盤から外した第4コネクタのプラグを試験装置の第2コネクタのソケットに接続すると共に試験装置の第3コネクタのプラグを防災受信盤の第4コネクタのソケットに接続することにより、防災受信盤に対する信号回線の接続部位に試験装置を着脱自在に接続することを可能とする。
【0071】
このようなトンネル防災システムの第2実施形態によれば、防災受信盤と信号回線の間にコネクタを介して試験装置が接続されても、試験装置を接続する際には電源供給が一時的に断たれるが、試験装置を接続した後は、信号回線に接続されている全ての火災検知器に対する防災受信盤からの電源供給は維持されることから、試験装置に防災受信盤と同等の電源部を設ける必要がなく、試験装置が小型軽量となり、携帯可能な可搬式の試験装置とすることを可能とする。
【0072】
また、試験装置は、防災受信盤から電源供給を受けて動作し、自己を動作できる程度の小型小容量の電池電源を備える程度で済むことから、試験装置の更なる小型軽量化が可能となる。
【0073】
また、防災受信盤と信号回線の間にコネクタを介して接続した試験装置は、信号回線に含まれる伝送回線を介して全ての火災検知器と接続されており、全ての火災検知器のアドレスを指定して読出しを指示することで、これらの火災検知器が記憶している情報を収集して確認することを可能とする。
【0074】
第3発明に対応した第3実施形態のトンネル防災システムは、防災受信盤に信号回線に含まれる電源回線を試験装置に接続すると共に火災検知器側からの伝送回線を防災受信盤側又は試験装置側に切替え接続する回線切替部が設けられており、回線切替部により信号回線を試験装置側に切替え接続した状態で、試験装置を回線切替部にコネクタを介して接続することで、試験装置に電源回線を介して電源を供給すると共に伝送回線を介して複数の火災検知器と接続し、試験装置により、指定された火災検知器で検出された情報を受信して保存することを可能とする。
【0075】
ここで、火災検知器と試験装置のコネクタは、第1実施形態と同じであり、防災受信盤は、火災検知器側の信号回線を接続する第4コネクタと、試験装置側の信号回線を接続する第5コネクタのソケットとを備え、防災受信盤の回線切替部は、第4コネクタからの伝送回線を、防災受信盤内の伝送部への伝送回線又は第5コネクタのソケットへの伝送回線に切替える切替スイッチ回路を備え、試験装置の第3コネクタのプラグを回線切替部の第5コネクタのソケットに接続することにより、防災受信盤の回線切替部に試験装置を着脱自在に接続することを可能とする。
【0076】
このようなトンネル防災システムの第3実施形態によれば、防災受信盤の回線切替部にコネクタを介して試験装置を接続し、回線切替部で伝送回線を防災受信盤側から切り離して試験装置側に切替接続するだけで、試験装置は伝送回線を介して全ての火災検知器と接続され、全て火災検知器を対象に、アドレスを指定して読出しを指示することで、これらの火災検知器が記憶している情報を収集して確認することを可能とする。
【0077】
また、防災受信盤の回線切替部は、信号回線に含まれる電源回線による火災検知器に対する電源供給は切り替えずに固定的に接続しているため、防災受信盤の回線切替部に試験装置が接続されても、火災検知器に対する電源供給は断接されずに継続されることから、電源供給の断接に伴う火災検知器の立ち上がり障害の発生を防止可能とする。
【0078】
また、試験装置は、防災受信盤から電源供給を受けて動作し、自己を動作できる程度の小型小容量の電池電源を備える程度で済むことから、試験装置の更なる小型軽量化が可能となる。
【0079】
第4発明に対応した第4実施形態のトンネル防災システムは、信号回線に含まれる電源回線を試験装置に接続すると共に火災検知器側からの伝送回線を防災受信盤側及び試験装置側に接続する回線分岐部が防災受信盤に設けられ、回線分岐部を介して信号回線を試験装置側に接続した状態で、試験装置を回線分岐部にコネクタを介して接続することで、試験装置に電源回線を介して電源を供給すると共に伝送回線を介して複数の火災検知器と接続し、試験装置により、指定された火災検知器で検出された情報を受信して保存することを可能とする。
【0080】
ここで、火災検知器と試験装置のコネクタは、第1実施形態と同じであり、防災受信盤は、火災検知器側の信号回線を接続する第4コネクタと、試験装置側の信号回線を接続する回線分岐部の第6コネクタのソケットとを備えることで、防災受信盤の回線分岐部は、防災受信盤内の伝送部から第4コネクタへの電源回線及び伝送回線を第6コネクタのソケットに分岐接続し、試験装置の第3コネクタのプラグを分岐部の第6コネクタのソケットに接続することを可能とする。
【0081】
このようなトンネル防災システムの第4実施形態によれば、防災受信盤の回線分岐部にコネクタを介して試験装置を接続するだけで、試験装置は伝送回線を介して全ての火災検知器と接続され、全て火災検知器を対象に、アドレスを指定して読出しを指示することで、これらの火災検知器が記憶している情報を収集して確認することを可能とする。
【0082】
また、防災受信盤の回線分岐部は、信号回線に含まれる電源回線を火災検知器側に固定的に接続しているため、防災受信盤の分岐部に試験装置が接続されても、火災検知器に対する電源供給は断接されずに継続されることから、電源供給の断接に伴う火災検知器の立ち上がり障害の発生を防止可能とする。
【0083】
また、試験装置は、防災受信盤から電源供給を受けて動作し、自己を動作できる程度の小型小容量の電池電源を備える程度で済むことから、試験装置の更なる小型軽量化が可能となる。
【0084】
また、第1、第2及び第4実施形態の防災受信盤は、試験装置が接続された場合に、伝送回線を使用して火災検知器に周期的に呼出信号を送信して応答信号を受信するポーリング処理を停止し、伝送回線を試験装置による情報の伝送に割り当てるようにする。このため、防災受信盤からの火災検知器に対するポーリング処理に影響されることなく、火災検知器が記憶している情報を試験装置に伝送回線を介して効率良く伝送して収集することが可能となる。
【0085】
また、第1、第2及び第4実施形態の防災受信盤は、ポーリング処理の停止中に火災検知器で火災が検出された場合に送信される火災割込み信号の受信に基づいて火災を検出して警報する。このため、防災受信盤のポーリング処理が停止されていても、火災検知器で火災が検出されると防災受信盤から火災警報が出力され、試験装置による火災検知器の情報収集中てあっても、確実に火災監視が継続可能となる。なお、防災受信盤で火災が検出された場合、試験装置による情報収集動作を停止する。
【0086】
一方、第3実施形態の試験装置は、回線切替部を介して複数の火災検知器に接続された状態で、火災検知器で火災が検出された場合に送信される火災割込み信号の受信に基づいて火災を検出して警報する。このため、防災受信盤側が試験装置の接続に伴い回線切替部により伝送回線から切り離された状態であっても、火災検知器で火災が検出されると試験装置から火災警報が出力され、試験装置による火災検知器の情報収集中てあっても、確実に火災監視が継続可能となる。なお、試験装置で火災が検出された場合、試験装置による情報収集動作を停止する。
【0087】
また、第1乃至第4実施形態にあっては、電源回線は通常電源回線と試験電源回線で構成され、信号回線は、通常電源回線を構成する第1電源線及び第1電源コモン線と、試験電源回線を構成する第2電源線及び第2電源コモン線と、伝送回線を構成するシリアル信号線及びシリアル信号コモン線と、を備える6線となっている。このため、火災検知器の第1コネクタ、試験装置の第2コネクタのソケットと第3コネクタのプラグ、防災受信盤の第4コネクタのソケットとプラグ、防災受信盤の回線切替部の第5コネクタのソケット、及び、防災受信盤の回線分岐部の第6コネクタのソケットは、全て6ピンのコネクタ構造となることで、簡単且つ容易に試験装置の接続を可能とする。
【0088】
また、1乃至第4実施形態にあっては、防災受信盤は、火災検知器に所定の下り信号を送信すると共に火災検知器からの所定の上り信号を受信し、試験装置は、火災検知器へ下り信号を送信すると共に火災検知器から上り信号を受信し、且つ、防災受信盤へ上り信号を送信すると共に防災受信盤からの下り信号を受信し、火災検知器は、防災受信盤又は試験装置からの下り信号を受信すると共に防災受信盤又は試験装置へ上り信号を送信し、下り信号は、伝送回線の信号電圧を変化させる電圧モード信号であり、上り信号は、伝送回線の信号電流を変化させる電流モードの信号であるため、試験装置は、火災検知器へ下り信号による指定で記憶している情報を読出して上り信号として受信して情報を収集可能とする。
【0089】
また、試験装置は、防災受信盤へ上り信号として、例えば、ポーリング処理を中止する旨の指示(コマンド)を伝送することで、防災受信盤による火災検知器のポーリング処理を停止可能とする。
【0090】
以下、具体的な実施形態を説明する。以下に示す具体的な実施形態では、火災検知器をトンネル内の長手方向に所定間隔で設置して防災受信盤に接続した「トンネル防災システム」を対象とし、火災検知器が「火災を検知するために、トンネル内で発生する火災炎からの放射線エネルギー(赤外線エネルギー)を受光素子で受光して観測しており」、また「火災検知器」は「所定の劣化予兆情報を記憶しており」、「試験装置」が「携帯可能な可搬式の装置」である場合で説明する。また、「防災システムの第1乃至第4発明」に対応して「トンネル防災システムの第1乃至第4実施形態」に分けて説明する。
【0091】
[実施形態の具体的内容]
防災システムの実施形態について、より詳細に説明する。その内容については以下のように分けて説明する。
a.トンネル防災システム
b.防災受信盤
c.火災検知器
c1.火災検知器の配置と外観
c2.火災検知器の機能構成
c3.火災検知器の火災判定
c4.劣化予兆の判定
c5.汚損試験
c6.感度試験
d.トンネル防災システムの第1実施形態
d1.火災検知器側の試験装置の接続
d2.試験装置の外観
d3.試験装置の機能構成
d4.試験装置の情報収集制御
e.トンネル防災システムの第2実施形態
f.トンネル防災システムの第3実施形態
f1.回線切替部に対する試験装置の接続
f2.試験装置の情報収集制御
g.トンネル防災システムの第4実施形態
h.本発明の変形例
【0092】
[a.トンネル防災システム]
まず、トンネル防災システムについて説明する。当該説明にあっては、トンネル防災システムを示した
図1を参照する。
【0093】
図1に示すように、自動車専用道路のトンネルとして、上り線トンネル1aと下り線トンネル1bが構築されている。上り線トンネル1aと下り線トンネル1bの内部には、トンネル長手方向の壁面に沿って、例えば25メートル又は50メートル間隔で火災検知器12(12-1)・・・12(12-4)・・・が配置されている。なお、火災検知器12(12-1)・・・12(12-4)・・・の中の任意の火災感知器を指す際に、火災検知器12と呼ぶ場合がある。
【0094】
火災検知器12は、トンネル長手方向となる左右両側に検知エリアを設定して、個別に左右何れかの検知エリアを監視する2組の炎検知部を備え、隣に配置されている火災検知器との検知エリアが相互補完的に重なるように連続的に配置され、検知エリア内で起きた火災による炎からの放射線エネルギー(光エネルギー)として、例えば赤外線エネルギーを観測して火災炎を検知し、火災炎に基づき火災を判定した場合には火災信号を外部に送信する機能を備えている。
【0095】
また、火災検知器12は、火災判定処理において非火災候補を判定した場合には、非火災候補の判定結果に基づき火災検知器の劣化予兆を判定して記憶する機能を備える。
【0096】
また、上り線トンネル1aと下り線トンネル1bには、防災システムとして、火災通報のために手動通報装置や非常電話が設けられ、また火災の消火や延焼防止のために消火栓装置が設けられている。更にトンネル躯体やダクト内を火災から防護するために水噴霧ヘッドから消火用水を散水させる水噴霧などが設置されるが、図示を省略している。
【0097】
防災受信盤10からは、上り線トンネル1aと下り線トンネル1bに対し電源回線、試験電源回線、及び伝送回線を含む信号回線14が引き出され、信号回線14には、火災検知器12が接続されている。実施形態のトンネル防災システムは、火災検知器12に回線単位に固有のアドレスが設定されたR型(Record-type)の防災システムとなっている。また、火災検知器12のアドレスを、例えば8ビットアドレスとすると、1回線当り最大256台が接続可能となっている。
【0098】
また、防災受信盤10に対しては、消火ポンプ設備16、ダクト用の冷却ポンプ設備18、IG子局設備20、換気設備22、警報表示板設備24、ラジオ再放送設備26、テレビ監視設備28及び照明設備30等が設けられており、IG子局設備20をデータ伝送回線で接続する点を除き、それ以外の設備はP型信号回線により防災受信盤10に個別に接続されている。ここで、IG子局設備20は、防災受信盤10と外部に設けた上位設備である遠方監視制御設備32とをネットワークを経由して結ぶ通信設備である。
【0099】
換気設備22は、トンネル内の天井側に設置されているジェットファンの運転による高い吹き出し風速によってトンネル内の空気にエネルギーを与えて、トンネル長手方向に換気の流れを起こす設備である。警報表示板設備24は、トンネル内の利用者に対して、トンネル内の異常を、電光表示板に表示して知らせる設備である。ラジオ再放送設備26は、トンネル内で運転者等が道路管理者からの情報を受信できるようにするための設備である。テレビ監視設備28は、火災の規模や位置の確認、水噴霧設備の作動、避難誘導を行う場合のトンネル内の状況を把握するための設備である。照明設備30はトンネル内の照明機器を駆動して管理する設備である。
【0100】
[b.防災受信盤]
続いて、防災受信盤について説明する。当該説明にあっては、防災受信盤の機能構成を示した
図2を参照する。
【0101】
図2に示すように、防災受信盤10は盤制御部34を備える。盤制御部34は、例えばプログラムの実行により実現される機能であり、ハードウェアとしてはCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等が使用されている。
【0102】
盤制御部34に対してR型伝送ユニット36(36-1)~36(36-n)が設けられ、外部に信号回線14が引出されている。R型伝送ユニット36(36-1)~36(36-n)は、R型伝送ユニット36(36-1)に代表して示すように、上位伝送部48、電源部50及び試験電源部52を備えている。電源部50は火災検知器に動作電源として、例えばDC48Vを供給するものであり、第1電源線SV1と第1電源コモン線SG1で構成される。試験電源部52は火災検知器に試験用電源として、例えばDC48V供給するものであり、第2電源線SV2と第2電源コモン線SG2で構成される。
【0103】
上位伝送部48は火災検知器との間で、火災検知器12のアドレスを指定してコマンド、データ等の各種のデジタル信号をシリアル伝送するものであり、伝送回線として、シリアル伝送線SAとシリアル伝送コモン線SBが引出されている。上位伝送部48が火災検知器側へ送信する下り信号は、ビット0,1に対応して回線電圧を変化させる電圧モード信号である。これに対し上位伝送部48が受信する火災検知器を含む端末側からの上り信号は、ビット0,1に対応して回線電流を変化させる電流モード信号である。
【0104】
このように、防災受信盤10から引き出された信号回線14は、電源回線を構成する第1電源線SV1と第1電源コモン線SG1、試験電源回線を構成する第2電源線SV2と第2電源コモン線SG2、及び、伝送回線を構成するシリアル信号線SA及びシリアル信号コモン線SBの6芯の信号線で構成されている。
【0105】
また、R型伝送ユニット36(36-1)からの第1電源線SV1、第1電源コモン線SG1、第2電源線SV2、第2電源コモン線SG2、シリアル伝送線SA、及びシリアル伝送コモン線SBの6本の信号線を含む信号回線14は、コネクタ1010(第4コネクタ)を介して外部に引出されている。コネクタ1010は6ピンのコネクタであり、防災受信盤10側にコネクタ1010のソケット1011(第4コネクタのソケット)を配置し、外部からの信号回線14にコネクタ1010のプラグ1012(第4コネクタのプラグ)を接続し、ソケット1011に対しプラグ1012を着脱自在に連結している。なお、防災受信盤10のコネクタ1010としては、火災検知器に使用されている防水コネクタと同じものが設けられる。
【0106】
また、盤制御部34に対しては、その他に、スピーカ、警報表示灯等を備えた警報部38、液晶ディスプレイ、プリンタ等を備えた表示部40、各種スイッチ等を備えた操作部42、外部監視設備と通信するIG子局設備20を接続するモデム44が設けられ、更に、
図1に示した消火ポンプ設備16、冷却ポンプ設備18、換気設備22、警報表示板設備24、ラジオ再放送設備26、テレビ監視設備28及び照明設備30を接続するIO部46が設けられている。
【0107】
盤制御部34は、R型伝送ユニット36(36-1)に指示して火災検知器12のアドレスを順次指定したポーリングコマンドを含む「呼出信号」を繰り返し送信しており、火災検知器は、自己アドレスに一致する「呼出信号」を受信すると、自己の状態情報を含む「応答信号」を返信する。
【0108】
また、盤制御部34は、火災検知器で火災を判定した場合に送信される「火災割込み信号」の受信に基づき、火災と判定した火災検知器12のアドレスを特定したした場合は、警報部38により火災警報を出力させると共にIO部46を介し他設備の連動制御を指示する制御を行う。
【0109】
また、盤制御部34は、システムの立上げ時、あるいは運用中の所定の周期毎に、火災検知器12のアドレスを順次指定した試験指示コマンドを設定した試験信号を送信し、火災検知器に感度試験及び汚れ試験を行わせ、それぞれの試験結果を応答信号として返信させる制御を行う。また、操作部42により特定の火災検知器12のアドレスを指定した試験操作がされた場合には、個別の火災検知器に対し試験信号を送信して試験を行わせることも可能となっている。
【0110】
また、盤制御部34は、火災検知器12の感度試験により得られた感度異常予告の応答信号を受信した場合には、当該火災検知器12のアドレスを特定した感度異常の予告警報を、例えば表示部40の警報音、ディスプレイ表示、印刷により報知させる制御を行う。
【0111】
また、盤制御部34は、火災検知器12の感度試験により得られたセンサ故障(感度異常)の応答信号を受信した場合には、当該火災検知器12のアドレスを特定したセンサ故障警報(感度異常警報)を、例えば表示部40の警報音、ディスプレイ表示、印刷により報知させる制御を行う。
【0112】
また、盤制御部34は、火災検知器12の汚れ試験により得られた汚れ異常予告の応答信号を受信した場合には、当該火災検知器12のアドレスを特定した汚れ異常の予告警報を、例えば表示部40の警報音、ディスプレイ表示、印刷により報知させる制御を行う。
【0113】
また、盤制御部34は、火災検知器12の汚れ試験により得られた汚れ異常の応答信号を受信した場合には、当該火災検知器12のアドレスを特定した汚れ警報を、例えば表示部40の警報音、ディスプレイ表示、印刷により報知させる制御を行う。
【0114】
また、盤制御部34は、火災検知器12の感度試験及び汚れ試験により得られた感度及び汚れの異常予告信号又は異常の応答信号を受信した場合には、モデム44から
図1に示したIG子局設備20を介して遠方監視制御設備32に送信し、遠方監視制御設備32側でも同じく感度及び汚れの異常の警報を報知させる制御を行う。
【0115】
[c.火災検知器]
次に、火災検知器について説明する。当該説明にあっては、収容箱に取り付けられた火災検知器を示した
図3、及び火災検知器の機能構成を示した
図4を参照する。なお、
図3(A)は収容箱の正面を示し、
図3(B)は箱蓋を外した収容箱の内部構造を示す。
【0116】
ここで、
図3の説明では、X-Y-Z方向が互いに直交する方向であり、具体的には、透光性窓が設けられた前面を正面に見て、X方向を左右方向とし、Y方向を上下方向とし、Z方向を前後方向とする。また、X方向における+X側を右側、-X側を左側とし、Y方向における+Y側を上側、-Y側を下側とし、Z方向における+Z側を前側、-Z側を後側とする。
【0117】
(c1.火災検知器の配置と外観)
図3(A)(B)に示すように、火災検知器12(12-1)は、収容箱60の箱本体6010の中に取付け固定され、箱蓋6020に形成された検知器開口6030から透光性窓70R,70Lを備えたセンサ収納部68を外部に露出させている。
【0118】
収容箱60に取付け固定された火災検知器12(12-1)は、センサ収納部68の前面に、左右に分けて2組の透光性窓70R,70Lが設けられ、透光性窓70R,70Lの各々の位置に対応したセンサ収納部68の内部に受光素子部(センサ部)が配置されている。また、透光性窓70R,70Lの近傍の、センサ部を見通せる位置に、透光性窓70R,70Lの汚れ試験に使用される外部試験光源を収納した2組の試験光源用透光窓72R,72Lが設けられている。なお、透光性窓70R,70Lを区別するために、透光性窓70Rを右眼透光性窓70R、透光性窓70Lを左眼透光性窓70Lと呼ぶ場合がある。
【0119】
火災検知器12(12-1)は、第1コネクタ1210を介して防災受信盤10からの信号回線14に接続される。具体的には、収容箱60の左右両側面の下側には電線管62が接続され、上り側(左側)の電線管62には防災受信盤10からの信号回線14を構成する配線ケーブル1410が引き込まれ、下り側(右側)の電線管62には次の火災検知器12(12-2)を接続するための信号回線14を構成する配線ケーブル1420が引出されている。
【0120】
上り側(左側)から引き込まれた芯線6本を有する配線ケーブル1410と、下り側(左側)へ引出された芯線6本を有する配線ケーブル1420と、防水コネクタを用いた火災検知器12の第1コネクタ1210から引き出された芯線6本を有する配線ケーブル1430は、芯線6本の各々を3本ずつ圧着端子で接続してREスリーブとして知られた公知の絶縁チューブ65で被覆され、更にビニール袋67が被せられて保護されている。
【0121】
ここで、火災検知器12(12-1)に設けられた第1コネクタ1210は、
図3(B)に示すように、検知器側に第1コネクタ1210のソケット1211が配置され、配線ケーブル1430側に第1コネクタ1210のプラグ1212が配置され、第1コネクタ1210のソケット1211に第1コネクタ1210のプラグ1212が着脱自在に装着されている。
【0122】
(c2.火災検知器の機能構成)
次に、火災検知器の機能構成について説明する。
図4に示すように、火災検知器12(12-1)には、検知器制御部74、端末伝送部76、2組の炎検出部78R,78L、電源部80、試験電源部82、試験発光駆動部84、透光性窓70R,70Lの汚損試験に用いられる外部試験光源86R,86L、及び炎検出部78R,78Lの感度試験に用いられる内部試験光源88R,90R,88L,90L、及び第1コネクタ1210のソケット1211が設けられている。なお、炎検出部78R,78Lを区別するために、炎検出部78Rを右眼炎検出部78R、炎検出部78Lを左眼炎検出部78Lと呼ぶ場合がある。
【0123】
検知器制御部74は、例えばプログラムの実行により実現される機能であり、ハードウェアとしてはCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等が使用されている。
【0124】
端末伝送部76は、信号回線14に伝送回線として含まれるシリアル伝送線SAとシリアル伝送コモン線SBにより第1コネクタ1210のソケット1211とプラグ1212を介して接続され、防災受信盤10側から電圧モードの「下り信号」を受信すると共に防災受信盤10側へ電流モードの「上り信号」を送信する。こここで、端末伝送部76が受信する「下り信号」には、「呼出信号」、「試験起動信号」等が含まれ、また、端末伝送部76が送信する「上り信号」には、「呼出信号」に対する「応答信号」、「火災割込み信号」、「汚損予告信号」、「汚損信号」、「感度異常信号」、「劣化予兆信号」等が含まれる。
【0125】
電源部80は、信号回線14の電源回線を構成する第1電源線SV1と第1電源コモン線SG1に第1コネクタ1210を介して接続され、
図2に示した防災受信盤10の電源部50から電源の供給を受け、例えば検知器制御部74、伝送部76、炎検出部78R,78Lに所定の電源電圧を供給している。なお、
図4では炎検出部78R,78Lに対する電源ラインの記載を省略している。
【0126】
試験電源部82は、信号回線14の試験電源回線を構成する第2電源線SV2と第2電源コモン線SG2に第1コネクタ1210を介して接続され、
図2に示した防災受信盤10の試験電源部52から試験電源の供給を受け、試験発光駆動部84に供給している。
【0127】
試験発光駆動部84には、汚損試験に使用される外部試験光源86R,86Lが接続されると共に、感度試験に使用される内部試験光源88R,90R,88L,90Lが接続され、試験光源の発光素子として、それぞれにLEDが設けられている。
【0128】
(c3.火災検知器の火災判定)
次に、火災検知器12(12-1)の火災判定について説明する。炎検出部78R,78Lは、センサ部と増幅処理部を備えている。例えば右眼炎検出部78Rを例にとると、センサ部の前面には右眼透光性窓70Rが配置されており、右眼透光性窓70Rを介して外部の検知エリアからの赤外線エネルギーがセンサ部に入射する。
【0129】
右眼炎検出部78Rは、例えば3波長式の炎検知により火災を監視している。右眼炎検出部78Rのセンサ部は、右眼透光性窓70Rを介して入射した赤外線エネルギーの中から、炎に特有なCO2の共鳴放射帯である4.5μm帯の赤外線を光学波長バンドパスフィルタにより選択透過(通過)させて、受光センサにより該赤外線を受光して光電変換したうえで、増幅処理部により増幅等所定の処理を施して受光エネルギー量に対応する炎受光信号(E1R)として検知器制御部74へ出力する。
【0130】
また、右眼炎検出部78Rのセンサ部は、右眼透光性窓70Rを介して入射した赤外線エネルギーの中から、第1の非炎波長帯域となる、例えば5.0μm帯の赤外線エネルギーを光学波長バンドパスフィルタにより選択透過(通過)させて、受光センサにより受光して光電変換したうえで、増幅処理部により増幅等所定の処理を施して受光エネルギー量に対応する第1の非炎受光信号(E2R)として検知器制御部74へ出力する。
【0131】
さらに、右眼炎検出部78Rのセンサ部は、右眼透光性窓70Rを介して入射した赤外線エネルギーの中から、第2の非炎波長帯域となる、例えば2.3μmの赤外線エネルギーを光学波長バンドパスフィルタにより選択透過(通過)させて、受光センサにより受光して光電変換したうえで、増幅処理部により増幅等所定の処理を施して受光エネルギー量に対応する第2の非炎受光信号(E3R)として検知器制御部74へ出力する。
【0132】
検知器制御部74は、プログラムの実行により実現される火災判定機能が設けられ、入力された炎受光信号(E1R)、第1の非炎受光信号(E2R)及び第2の非炎受光信号(E3R)に基づき、複数の段階により火災を判定しており、例えば次の3段階の火災判定を行う。
【0133】
まず、検知器制御部74は、炎受光信号(E1R)が所定の閾値以上又はこれを上回った場合、第1の非炎受光信号(E2R)との相対比(E1R/E2R)を算出し、相対比(E1R/E2R)が所定の閾値を超えた場合に、第1段階の火災判定条件を充足したとして、火災(火災候補)と判定し、次の第2段階の火災判定を行う。
【0134】
検知器制御部74による第2段階の火災判定は、炎受光信号(E1R)について、第2の非炎受光信号(E3R)との相対比(E1R/E3R)を算出し、相対比(E1R/E3R)が所定の閾値を超えた場合に、第2段階の火災判定条件を充足したとして火災と判定する。
【0135】
続いて、検知器制御部74は、次の第3段階の火災判定を行う。検知器制御部74による第3段階の火災判定条件は、炎受光信号(E1R)を高速フーリエ変換(FFT)して結果を分析し,例えば4Hz以下の低周波側成分の相対強度と4Hz超8Hz以下の高周波側成分の相対強度の相対比を算出し、この相対化が所定の閾値以上又はこれを上回った場合に、第3段階の火災判定条件を充足したとして火災と判定し、これにより第1~第3の火災判定段階の全てにおいて火災と判定されたことになり、全体として一旦火災と判定する。
【0136】
更に、第1乃至第3段階の火災判定条件が所定回数連続して充足された場合に、所定蓄積条件を満足したとして火災を断定し、火災信号を防災受信盤10に送信する制御、例えば「火災割込み信号」を送信する制御を行う。左眼火災検知部78Lにおいても同様に行う。
【0137】
なお、検知器制御部74による複数段階の火災判定は、上記の火災判定に限定されず、更に、1又は複数の火災判定段階を加えても良いし、例えば上記3段階のうち何れかを省略して2段階としても良い。或いは例えば蓄積判定段階までを含む4段階としても良い。
【0138】
(c4.劣化予兆の判定)
次に、火災検知器12(12-1)の劣化予兆の判定について説明する。検知器制御部74は、前述した3段階の火災判定段階の途中で火災が判定されずに火災と判定するに至らなかった場合に劣化予兆の発生と判断し、劣化予兆の発生回数Nをカウンタにより計数する制御を行う。
【0139】
また、検知器制御部74は、劣化予兆の発生回数Nが所定の劣化予兆判定の蓄積条件を充足したとき、例えば、劣化予兆の発生回数Nが所定閾値Nthに達したときに劣化予兆と判定(確定)し、防災受信盤10に劣化予兆信号を送信し、続いて、所定の劣化予兆処理を行う。なお、検知器制御部74は、更に、劣化予兆の確定回数が所定数に達したときに所定の劣化予兆処理を行うようにしても良い。
【0140】
検知器制御部74による所定の劣化予兆処理は、例えば火災信号の送信を停止する処理、火災判断の蓄積回数閾値を増加させて火災判断蓄積条件を厳格にする等の処理とする。火災信号の送信を停止する劣化予兆処理は、劣化予兆を判定した後に火災を判断しても劣化による誤った火災判断である可能性が高いことから、火災信号の送信を停止して、非火災報の発生を抑止させる、というものである。なお、火災信号の送信を停止する処理は行わないようにすることもできる。
【0141】
また、検知器制御部74は、外部装置、例えば試験装置から内部状態要求コマンド信号を受信した場合、そのときまでに記憶されている劣化予兆の発生回数Nを示す劣化予兆情報を生成して送信する制御を行い、試験装置は取得した故障予兆情報から抽出された故障予兆の発生回数Nに基づいて火災検知器12(12-1)の信頼性を評価し、信頼性有り、信頼性低下を判断するため等に用いられる。なお、信頼性低下については、その度合により複数段階に分け、例えば信頼性低下状態と信頼性が無い状態を区別できるようにしても良い。
【0142】
なお、カウンタにより計数している劣化予兆の発生回数Nは、所定の期間毎にリセットされるか、又は、劣化予兆をカウントしてから所定の期間が経過したときにリセットされる。ただし、リセット前の劣化予兆の発生回数Nは、劣化予兆情報の一つとして火災検知器12(12-1)に記憶している。
【0143】
(c5.汚損試験)
次に、プログラムの実行により実現される検知器制御部74の機能である汚損試験機能について説明する。検知器制御部74は、端末伝送部76を介して試験起動信号を受信した場合には、試験発光駆動部84を制御し、外部試験光源86R,86Lを順番に発光駆動させて透光性窓70R,70Lの汚損試験を行わせる。
【0144】
透光性窓70Rの汚損試験を例にとると、試験発光駆動部84は、外部試験光源86Rを発光駆動させることにより、火災炎に相当する炎疑似光を、透光性窓70Rを介して炎検出部78Rの受光センサに入射させる。なお、外部試験光源86Rからの炎疑似光は、炎検出部78Rの受光センサで受光する炎に固有な4.4~4.5μm及び5~6μmの放射線を含み、且つ炎に固有な8~12Hzのゆらぎ周波数をもつ光となっている。
【0145】
また、工場出荷時の透光性窓70Rに汚れがない状態での汚損試験で得られた受光信号の受光値が、汚損試験基準受光値としてメモリに記憶されており、汚損試験で求められる減光率の演算に利用される。
【0146】
火災検知器がトンネル壁面に埋込み設置され、防災システムの立上げ時の汚損試験で得られた受光値(検出受光値)は、透光性窓70Rに汚れがほとんどないため基準受光値に一致しており、基準受光値と検出受光値から演算された減光率は0となっている。そして、運用期間が経過して透光性窓70Rに埃等が付着し汚れていくと、減光率は徐々に増加していく。
【0147】
検知器制御部74は、このように減光率が増加した場合には、汚損試験により減光率を求める際に、合わせて減光率の逆数となる補正値を求めてメモリに記憶させ、その後の運用状態で得られる検出受光値については補正値により除算して汚損補正を行い、汚損補正された受光値により火災を検知する。
【0148】
また、検知器制御部74は、前述した汚損補正が不可能となる限界に対応した減光率が、例えば所定の汚損閾値(=0.5)として予め設定され、汚損試験で求められた減光率が汚損閾値以上又は超えた場合には、透光性窓70Rの汚損補正が不可能となる汚損異常と判定し、汚損信号を防災受信盤側へ送信する制御を行う。
【0149】
また、検知器制御部74は、前述した汚損閾値より低い減効率となる所定の汚損予告閾値が、例えば0.4として予め設定され、汚損試験で求められた減光率が汚損予告閾値以上又は超えた場合には、汚損異常が近いと判定し、汚損予告信号を防災受信盤側へ送信する制御を行う。
【0150】
(c6.感度試験)
次に、プログラムの実行により実現される検知器制御部74の機能である感度試験機能について説明する。検知器制御部74は、端末伝送部76を介して試験起動入力信号を受信した場合には、試験発光駆動部84を制御し、内部試験光源88R,90R,88L,90Lを順番に発光駆動して炎検出部78R,78Lの感度試験を行わせる。なお、前述した汚損試験と感度試験の試験順序は任意の順序でよい。
【0151】
炎検出部70Rの感度試験を例にとると、試験発光駆動部84は、内部試験光源88R,90Rを発光駆動することにより、火災炎に相当する炎疑似光を炎検出部78Rの受光センサに入射させる。なお、内部試験光源88R,90Rからの炎疑似光は、炎検出部78Rの受光センサで受光する炎に固有な4.4~4.5μm及び5~6μmの放射線を含み、且つ炎に固有な8~12Hzのゆらぎ周波数をもつ光となっている。
【0152】
工場出荷時の感度試験で得られた受光信号の受光値が、感度試験基準受光値としてメモリに記憶されている。火災検知器がトンネル壁面に埋込み設置され、防災システムの立上げ時の感度試験で得られた受光値(検出受光値)は基準受光値に一致しており、検出受光値を基準受光値で割った検出感度は1となっている。そして、運用期間が経過していくと、部品の経年劣化等により検出受光値は徐々に低下していく。
【0153】
検知器制御部74は、このように検出感度が低下した場合には、感度試験により検出感度を求める際に、合わせて検出感度の逆数となる補正値を求めてメモリに記憶させ、その後の運用状態で得られる検出受光値については補正値を乗算して感度補正を行い、感度補正された受光値により火災を検知する。つまり、運用状態で得られる検出受光値は、前述した汚損試験で得られた補正値および感度試験で得られた補正値で補正されることになる。
【0154】
また、検知器制御部74には、前述した感度補正が不可能となる限界に対応した所定の感度閾値が例えば0.5として予め設定され、感度試験で求められた検出感度が感度閾値以下又は下回った場合に炎検出部78Rの故障となる感度異常と判定し、端末伝送部76に指示して感度異常信号を防災受信盤側へ送信する制御を行う。
【0155】
また、検知器制御部74には、前述した感度閾値より高い検出感度となる所定の感度予告閾値が例えば0.6として予め設定されていても良く、感度試験で求められた検出感度が感度予告閾値以下又は下回った場合には、炎検出部78Rの故障となる感度異常が近いと判定し、感度異常予告信号を防災受信盤側へ送信する制御を行う。
【0156】
炎検出部78Lについても、試験発光駆動部84により内部試験光源88L,90Lを発光駆動することにより、同様にして感度試験が行われる。また、検知器制御部74は、汚損試験及び感度試験を終了すると、端末伝送部76に指示して試験終了信号を防災受信盤側へ送信する制御を行う。
【0157】
[d.トンネル防災システムの第1実施形態]
次に、火災検知器側に試験装置を接続するトンネル防災システムの第1実施形態について説明する。当該説明にあっては、火災検知器側に試験装置を接続するトンネル防災システムの第1実施形態を示した
図5、
図5の第1実施形態について、収納箱の蓋を外して火災検知器に試験装置をコネクタで接続する状態を示した
図6、試験装置の外観を示した
図7、及び試験装置の機能構成を示した
図8を参照する。
【0158】
(d1.火災検知器側の試験装置の接続)
トンネル防災システムの第1実施形態は、
図5に示すように、試験装置15を火災検知器12(12-1),12(12-2),12(12-3)・・・の何れかの側に接続し、試験装置15で任意の火災検知器12のアドレスを指定し、火災検知器に記憶されている情報、例えば劣化予兆情報を収集して保存するものである。
【0159】
図5にあっては、防災受信盤10からの信号回線14に接続されている火災検知器12(12-2)に、試験装置15がコネクタにより着脱自在に接続されている。
【0160】
ここで、火災検知器12(12-1)は、第1コネクタ1210により信号回線14に接続されている。第1コネクタ1210は、防水コネクタであり、
図3(B)に示したように、火災検知器側に第1コネクタ1210のソケット1211が設けられ、信号回線側に第1コネクタ1210のプラグ1212を接続している。
【0161】
また、試験装置15は、第2コネクタのソケット1510と、信号回線14と同じ6芯の信号線で引き出された第3コネクタのプラグ1520を備えている。なお、第2コネクタのソケット1510とプラグ1520の信号線は、装置内で同じ信号線同士が接続されている。また、第2コネクタのソケット1510と第3コネクタのプラグ1520は、第1コネクタ1210と同じ防水コネクタとなっている。
【0162】
信号回線14と火災検知器12(12-2)との間に対する試験装置15の接続は、火災検知器12(12-2)から外した第1コネクタ1210のプラグ1212を試験装置15の第2コネクタのソケット1510に接続すると共に、試験装置15の第3コネクタのプラグ1520を火災検知器12(12-2)の第1コネクタのソケット1211に接続する。このようなコネクタ接続により、信号回線14と火災検知器12(12-2)の間に試験装置15が着脱自在に接続される。なお、防災受信盤10に対する信号回線14の接続も、第4コネクタ1010のソケット1011とプラグ1012により着脱自在に接続されている。
【0163】
図5に示すように、試験装置15を信号回線14と火災検知器12(12-2)の間にコネクタを介して接続する実際の作業は、
図6に示すように、火災検知器12(12-2)の箱蓋を取外して収納箱60の中の火災検知器12(12-2)を露出させ、火災検知器12(12-1)から収納箱60に引き込まれた信号回線14に接続された第1コネクタ1210のプラグ1212をソケット1211から外して試験装置15の第2コネクタのソケット1510に接続し、また、試験装置15の第3コネクタのプラグ1520を火災検知器12(12-2)の第1コネクタ1210のソケット1211に接続することになる。
【0164】
(d2.試験装置の外観)
次に、試験装置の外観について説明する。
図7に示すように、試験装置15は携帯可能な可搬式の装置であり、装置パネルに表示部として機能するディスプレイ1530、テンキー等の操作部1540及び電源スイッチ1550が設けられている。
【0165】
また、試験装置15の側面には、任意の火災検知器と信号回線14との間に試験装置15を接続するための第2コネクタのソケット1510と、防災受信盤10からの信号回線14と同じ信号線(配線ケーブル)により引出された第3コネクタのプラグ1520が設けられている。なお、第3コネクタのプラグ1520を接続する信号線の長さは任意であるが、例えば1メートル程度である。
【0166】
(d3.試験装置の機能構成)
次に、試験装置15の機能構成について説明する。
図8に示すように、試験装置15は、試験器制御部100、上位伝送部102、端末伝送部104、電源部106、ディスプレイ1530、操作部1540、記憶部1560、電池電源108、及び電源スイッチ1550が設けられている。
【0167】
試験器制御部100は、例えばプログラムの実行により実現される機能であり、ハードウェアとしてはCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等が使用されている。
【0168】
上位伝送部102と端末伝送部104は、第2コネクタのソケット1510及び第3コネクタのプラグ1520を介して防災受信盤からの信号回線14に含まれるシリアル伝送線SAとシリアル伝送コモン線SBに接続され、防災受信盤10又は火災検知器12の間で各種の信号をシリアル伝送により送受信する。
【0169】
上位伝送部102は、
図2の防災受信盤10に設けられた上位伝送部48と同様であり、火災検知器12へ電圧モードの「下り信号」を送信し、火災検知器からは電流モードの「上り信号」を受信する。上位伝送部102が火災検知器12へ送信する「下り信号」には、火災検知器12のアドレスを指定した「情報読出コマンド信号」が含まれる。また、上位伝送部102が火災検知器12から受信する「上り信号」には、劣化予兆情報等の「記憶情報信号」が含まれる。
【0170】
端末伝送部104は、
図4の火災検知器12(12-1)に設けられた端末伝送部76と同様であり、防災受信盤10へ電流モードの「上り信号」を送信し、防災受信盤10からは電圧モードの「下り信号」を受信する。端末伝送部104が防災受信盤10へ送信する「上り信号」には、防災受信盤10のポーリング処理を停止させるための「ポーリング禁止コマンド信号」が含まれる。また、端末伝送部104が防災受信盤10から受信する「下り信号」には、必要に応じて試験中ら防災受信盤10から試験装置15に指示する任意の「コマンド信号」が含まれる。
【0171】
電源部106は、信号回線14に電源回線として含まれる第1電源線SV1と第1電源コモン線SG1に第2コネクタのソケット1510及び第3コネクタのプラグ1520を介して接続され、
図2に示した防災受信盤10の電源部50から電源の供給を受け、例えば試験器制御部100、上位伝送部102、端末伝送部104などに所定の電源電圧を供給している。なお、信号回線14に含まれる試験電源用の第2電源線SV2と第2電源コモン線SG2については、試験装置15では試験電源を必要としないことから接続は行われていない。
【0172】
電池電源108は充電可能であり、電源部106に対する第2コネクタのプラグ1510及び第3コネクタのソケット1520からの第1電源線SV1と第1電源コモン線SV2に並列に接続され、プラス側となる第1電源線SV1に電源スイッチ1550が挿入接続されている。
【0173】
ここで、
図5に示したように、例えば火災検知器12(12-2)と信号回線14との間にコネクタを介して試験装置15を接続しても、信号回線14に接続されている全ての火災検知器に対する防災受信盤10からの電源供給は維持され、試験装置15に防災受信盤10と同等の電源部を設ける必要がなく、試験装置15が小型軽量となり、携帯可能な可搬式の試験装置15とすることが可能となる。
【0174】
また、信号回線14と火災検知器12(12-2)の間にコネクタを介して試験装置14を接続した場合、コネクタを脱着する火災検知器12(12-2)については電源供給の断接による再起動が行われるが、他の全ての火災検知器は、試験装置15がコネクタを介して接続されても電源供給は維持され、運用中における火災検知器12の電源供給の断接による再起動が必要最小限に抑えられ、電源供給の断接に伴う火災検知器12の立ち上がり障害の発生が抑制可能となる。
【0175】
また、試験装置15を火災検知器12(12-2)と信号回線14との間から外している場合には、試験装置15は、電池電源100から電源供給を受けて動作する。このため、電池電源108は、火災検知器への電源供給は不要であることから、試験装置15を単独で動作可能とする小さい電源容量の小型のものでよい。
【0176】
試験器制御部100は、信号回線14と火災検知器12(12-2)との間に、コネクタを介して試験装置15を接続した状態で、火災検知器12(12-2)のアドレスを指定した「情報読出コマンド信号」を送信し、アドレス指定した火災検知器12(12-2)に記憶されている劣化予兆情報などの所定の情報を含む「記憶情報信号」を受信して記憶部1560に記憶する制御を行う。
【0177】
また、試験器制御部100は、試験装置15の上位伝送部102が信号回線14に含まれるシリアル伝送線SA及びシリアル伝送コモン線SBを介して全ての火災検知器12に接続されていることから、試験装置15を接続している火災検知器12(12-2)のみならず、例えば、その前後に配置されている他の火災検知器12(12-1),12(12-3)・・・のアドレスを順次指定した「情報読出コマンド信号」の送信で、それぞれに記憶されている劣化予兆情報を読み出して記憶部1560に記憶する制御を行うことを可能とする。
【0178】
また、試験器制御部100は、信号回線14と火災検知器12(12-2)との間にコネクタを介して試験装置15を接続した状態で、電源スイッチ1550がオン操作された場合、端末伝送部104から防災受信盤10に対し「ポーリング禁止コマンド信号」を送信し、防災受信盤10にそれまで行っていた火災検知器12に対する周期的に呼出信号を送信して応答信号を受信するポーリング処理を停止させる制御を行う。このため、試験装置15は、防災受信盤10からの火災検知器12に対するポーリング処理によるシリアル伝送帯域の制限に影響されることなく、火災検知器12に記憶されている情報を試験装置15に伝送回線(シリアル伝送線SAとシリアル伝送コモン線SB)を介して効率良く伝送して収集することを可能とする。
【0179】
ここで、防災受信盤10は、試験装置15からの「ポーリング出停止コマンド信号」によりポーリング処理を停止中に、火災検知器12で火災が検出された場合に送信される「火災割込み信号」を受信した場合には、ポーリング処理の停止を解除し、「グループ検索コマンド信号」と「グルーブ内検索コマンド信号」の送信により火災発報した火災検知器12のアドレスを特定して火災警報を出力する制御を行う。この場合、試験装置15による火災検知器12からの情報読出し制御を含む試験動作は強制的に終了される。試験装置15で試験動作を強制終了する方法は任意であるが、例えば、上位伝送部102で火災割込み信号の受信を判別した場合に強制終了する。
【0180】
(d4.試験装置の情報収集制御)
次に、
図5に示すように、信号回線と火災検知器12(12-2)の間に接続した試験装置15の情報収集制御について説明する。当該説明にあっては、
図5の第1実施形態での試験装置の情報収集制御を示したフローチャートである
図9を参照する。
【0181】
図5に示すように、試験装置15を信号回線14と火災検知器12(12-2)の間にコネクタを介して接続した状態で、試験装置15の電源スイッチ1550がオン操作されると動作が開始され、
図9に示すように、試験装置15の試験器制御部100は、防災受信盤10へ「ポーリング禁止コマンド信号」を送信し、防災受信盤10がそれまで行っていた火災検知器12のアドレスを順次指定して呼出信号を送信して火災検知器12の状態を示す応答信号を返送させるポーリング処理を禁止させる(ステップS1)。
【0182】
続いて、試験装置15の操作部により情報収集の対象とする、例えば火災検知器12(12-1)のアドレスを指定し(ステップS2)、当該アドレスを宛先に含む「情報読出コマンド信号」を送信する(ステップS3)。
【0183】
この「情報読出コマンド信号」の送信に対しアドレス指定を受けた、例えば火災検知器12(12-2)から、記憶している情報、例えば、劣化予兆情報を含む「情報読出信号」が送信されてくることから、受信を開始する(ステップS4)。
【0184】
「情報読出信号」の受信中にあっては、火災検知器12のいずれかによる火災検出で送信される「火災割込み信号」の受信を監視しており(ステップS5)、「火災割込み信号」の受信が判別されなければ(ステップS5のNo)、情報受信終了を監視し、終了しない場合には(ステップS6のNo)、情報の受信と火災割込み信号の受信と監視を繰り返し(ステップS4,S5)、情報受信終了を判別すると(ステップS6のYes)、受信した情報の表示と保存を行う(ステップS7)。
【0185】
続いて、情報収集終了の操作がなければ(ステップS8のNo)、次の火災検知器12のアドレスを指定して同様に情報の収集を行い(ステップS2~S7)、情報収集終了を判別すると(ステップS8のYes)、試験装置15による情報収集制御を終了する。
【0186】
一方、情報の受信中に「火災割込み信号」の受信を判別した場合には(ステップS5のYes)、情報収集を強制終了し(ステップS9)、試験装置15による情報収集制御を終了する。
【0187】
なお、「ポーリング禁止コマンド信号」の送信でポーリング処理を禁止していた防災受信盤10は、火災割込み信号の受信でポーリング処理の禁止を解除し、前述したように、「グループ検索コマンド信号」と「グループ内検索コマンド信号」を順次送信して火災を検出した火災検知器12のアドレスを特定し、火災警報を出力するようになる。
【0188】
[e.トンネル防災システムの第2実施形態]
次に、防災受信盤側に試験装置を接続するトンネル防災システムの第2実施形態について説明する。当該説明にあっては、防災受信盤側に試験装置を接続するトンネル防災システムの第2実施形態を示した
図10を参照する。
【0189】
トンネル防災システムの第2実施形態は、
図10に示すように、防災受信盤10から信号回線14を引出す第4コネクタ1010による接続部位に、コネクタを介して試験装置15を着脱自在に接続するものである。
【0190】
これにより、試験装置15は、信号回線14に含まれる電源回線(第1電源線SV1と第1電源コモン線SG1)を介して防災受信盤10から電源の供給を受ける。
【0191】
また、試験装置15は、信号回線14に含まれる伝送回線(シリアル伝送線SAとシリアル伝送コモン線SB)を介して複数の火災検知器12(12-1),12(12-2),12(12-3)・・・と接続され、試験装置15で任意の火災検知器12のアドレスを指定し、火災検知器12に記憶されている情報、例えば劣化予兆情報を収集して保存する。
【0192】
さらに、試験装置14は、信号回線14に含まれる伝送回線(シリアル伝送線SAとシリアル伝送コモン線SB)を介して防災受信盤10と接続されることから、防災受信盤10へ「ポーリング禁止コマンド信号」を送信しポーリング処理を禁止させることを可能とする。
【0193】
防災受信盤14の第4コネクタ1010を使用した試験装置15の接続は、防災受信盤10から外した第4コネクタ1010のプラグ1012を試験装置15の第2コネクタのソケット1510に接続すると共に、試験装置15の第3コネクタのプラグ1520を防災受信盤10の第4コネクタのソケット1011に接続する。このようなコネクタ接続により、防災受信盤10と信号回線14の間に試験装置15が着脱自在に接続される。
【0194】
試験装置15は、
図7に示した外観と
図8に示した機能構成を有ることから、その説明は省略する。また、
図10に示すように、防災受信盤10と信号回線14との間に接続した試験装置15の情報収集制御は、
図9に示した第1実施形態の場合と同様になることから、その説明を省略する。
【0195】
このようなトンネル防災システムの第2実施形態によれば、防災受信盤10と信号回線14の間にコネクタを介して試験装置15を接続する場合、信号回線14に接続している火災検知器12(12-1),12(12-2),12(12-3)・・・に対する電源供給が一時的に断たれるが、試験装置15を接続した後は、防災受信盤10からの電源供給は維持され、試験装置15に防災受信盤10と同等の電源部を設ける必要がなく、試験装置15が小型軽量となることから、携帯可能な可搬式の試験装置15を可能としている。なお、防災受信盤10から信号回線14をコネクタにより外した場合、ポーリング処理に伴う呼出信号に対し火災検知器からの応答信号が受信されないために端末障害として障害警報が出力されるが、
図10のように試験装置15を、コネクタを介して接続すると自動的に復旧する。
【0196】
また、試験装置14は、防災受信盤10から電源供給を受けて動作し、自己を動作できる程度の小型小容量の電池電源を備える程度で済むことから、試験装置15の更なる小型軽量化が可能となる。
【0197】
また、防災受信盤10と信号回線14の間にコネクタを介して接続した試験装置15は、信号回線14に含まれる伝送回線を介して全ての火災検知器火災検知器12(12-1),12(12-2),12(12-3)・・・と接続されており、任意の火災検知器12のアドレスを指定して情報の読出しを指示することで、火災検知器12に記憶されている情報を収集して確認することを可能とする。
【0198】
[f.トンネル防災システムの第3実施形態]
次に、防災受信盤の回線切替部に試験装置を接続するトンネル防災システムの第3実施形態について説明する。当該説明にあっては、防災受信盤側の回線切替部に試験装置を接続するトンネル防災システムの第3実施形態を示した
図11、
図11の回線切替部の回路構成を示した
図12、及び
図11の第3実施形態での試験装置の情報収集制御を示したフローチャートである
図13を参照する。
【0199】
(f1.回線切替部に対する試験装置の接続)
トンネル防災システムの第3実施形態は、
図11に示すように、防災受信盤10に回線切替部110を設けている。回線切替部110には、第4コネクタ1010と第5コネクタのソケット1100が設けられている。第4コネクタ1010からは信号回線14が引出され、火災検知器12(12-1),12(12-2),12(12-3)・・・が接続されている。第5コネクタのソケット1100には試験装置15の第3コネクタのプラグ1520が接続される。
【0200】
回線切替部110は、防災受信盤10内の電源部50(
図2参照)からの電源回線(第1電源線SV1と第1電源コモン線SG1)を、第4コネクタ1010及び第5コネクタのソケット1100に固定的に接続している。なお、防災受信盤10内の試験電源部52(
図2参照)からの試験電源回線(第2電源線SV2と第2電源コモン線SG2)は、第4コネクタ1010に対してのみ固定的に接続している。
【0201】
また、回線切替部110は、試験装置15を接続した状態で、防災受信盤10内の上位伝送部48(
図2参照)から第4コネクタ1010に接続している伝送回線(シリアル伝送線SAとシリアル伝送コモン線SB)を、上位伝送部48から切り離して第5コネクタのソケット1100、即ち試験装置15側へ切替え接続する。
【0202】
防災受信盤10の回線切替部110の構成は任意であるが、例えば、
図12に示す回路構成を備える。回線切替部110には、第5コネクタのソケット1100が設けられ、第4コネクタ1010に対する第1電源線SV1と第1電源コモン線SG1が分岐接続されている。
【0203】
また、回線切替部110には、2回路の切替スイッチ114,116を備えた切替回路112が設けられ、第4コネクタ1010からのシリアル信号線SAとシリアル信号コモン線SBを、防災受信盤10内の上位伝送部48(
図2参照)側又は第5コネクタのソケット1100側に切替え接続する。切替スイッチ114,115の切替構造は任意であるが、例えばスイッチノブ等により切替えられる手動切替スイッチである。
【0204】
トンネル防災システムの運用中、切替回路112に設けられた切替スイッチ114,116は図示のように、切替接点aに切替えられており、防災受信盤10内からのシリアル信号線SAとシリアル信号コモン線SBを、第4コネクタ1010を介して火災検知器12側に接続している。
【0205】
図11に示したように、回線切替部110の第5コネクタのソケット1100に、試験装置15の第3コネクタのプラグ1520を接続した場合には、切替回路112に設けられた切替スイッチ114,116を切替接点bに切替え、第4コネクタ1010からのシリアル信号線SAとシリアル信号コモン線SBを防災受信盤10内から切り離し、第5コネクタのソケット1100側、即ち試験装置15側に接続する。この結果、試験装置15からのシリアル信号線SAとシリアル信号コモン線SBは火災検知器12(12-1),12(12-2),12(12-3)・・・側に接続された状態となる。
【0206】
このため、トンネル防災システムの第3実施形態にあっては、防災受信盤10の回線切替部110にコネクタを介して試験装置15を接続し、回線切替部110で伝送回線を防災受信盤10側から切り離して試験装置15側に切替接続するだけで、試験装置15は伝送回線を介して全ての火災検知器と接続されることから、任意の火災検知器12を対象に、アドレスを指定して読出しを指示することで、火災検知器12に記憶されている情報を収集して確認することを可能とする。
【0207】
また、防災受信盤10の回線切替部110は、信号回線14に含まれる電源回線(第1電源線SV1と第1電源コモン線SG11及び第2電源線SV2と第2電源コモン線SG2)による火災検知器12(12-1),12(12-2),12(12-3)・・・側に対する電源供給は切り替えずに固定的に接続しているため、防災受信盤10の回線切替部110に試験装置15を接続しても、火災検知器12(12-1),12(12-2),12(12-3)・・・側に対する電源供給は断接されずに継続され、電源供給の断接に伴う火災検知器12の立ち上がり障害の発生を防止可能とする。
【0208】
また、試験装置15は、防災受信盤10から電源供給を受けて動作し、自己を動作できる程度の小型小容量の電池電源を備える程度で済むことから、試験装置15の更なる小型軽量化が可能となる。
【0209】
また、回線切替部110に試験装置15を接続した試験中、防災受信盤10に対する伝送回線は火災検知器側から切り離されているため、防災受信盤10は火災を検出した火災検知器が送信した火災割込み信号を受信して警報するこができない。
【0210】
そこで、第3実施形態の試験装置15は、回線切替部110を介して火災検知器12(12-1),12(12-2),12(12-3)・・・側に接続された状態で、火災検知器12で火災が検出された場合に送信される「火災割込み信号」を受信した場合には、試験装置15から「グループ検索コマンド信号」と「グループ内検索コマンド信号」を送信して、火災を検出した火災検知器12のアドレスを特定して火災警報を出力させる。このため、試験装置15が火災検知器12に記憶されている情報の収集中てあっても、確実に火災警報を出力することを可能とする。
【0211】
(f2.試験装置の情報収集制御)
次に、
図11に示すように、防災受信盤10の回線切替部110に接続した試験装置15の情報収集制御について説明する。当該説明にあっては、
図11の第3実施形態での試験装置の情報収集制御を示したフローチャートである
図13を参照する。
【0212】
図11に示すように、試験装置15を防災受信盤10の回線切替部110にコネクタを介して接続した状態で、試験装置15の電源スイッチ1550がオン操作されると動作が開始され、
図13に示すように、試験装置15の操作部により情報収集の対象とする、例えば火災検知器12(12-1)のアドレスを指定し(ステップS11)、当該アドレスを宛先に含む「情報読出コマンド信号」を送信する(ステップS12)。
【0213】
この「情報読出コマンド信号」の送信に対しアドレス指定を受けた、例えば火災検知器12(12-1)から、記憶している情報、例えば、劣化予兆情報を含む「情報読出信号」が送信されてくることから、受信を開始する(ステップS13)。
【0214】
「情報読出信号」の受信中にあっては、火災検知器12のいずれかによる火災検出で送信される「火災割込み信号」の受信を監視しており(ステップS14)、「火災割込み信号」の受信が判別されなければ(ステップS14のNo)、情報受信終了を監視し、終了しない場合には(ステップS15のNo)、情報の受信と火災割込み信号の受信と監視を繰り返し(ステップS13,S14)、情報受信終了を判別すると(ステップS15のYes)、受信した情報の表示と保存を行う(ステップS16)。
【0215】
続いて、情報収集終了の操作がなければ(ステップS17のNo)、次の火災検知器12のアドレスを指定して同様に情報の収集を行い(ステップS11~S16)、情報収集終了を判別すると(ステップS17のYes)、試験装置15による情報収集制御を終了する。
【0216】
一方、情報の受信中に「火災割込み信号」の受信を判別した場合には(ステップS14のYes)、「グループ検索コマンド信号」を送信して「火災割込み信号」を送信した火災検知器を含むグループを検索し(ステップS18)、続いて、検索したグルーブ内の検知器アドレスを順次指定したグループ内検索コマンド信号を送信し(ステップS19)、火災発報した火災検知器12のアドレスを特定して火災警報を試験装置15から出力させる。
【0217】
[g.トンネル防災システムの第4実施形態]
次に、防災受信盤の回線分岐部に試験装置を接続するトンネル防災システムの第4実施形態について説明する。当該説明にあっては、防災受信盤側の回線分岐部に試験装置を接続するトンネル防災システムの第4実施形態を示した
図14、及び
図14の回線分岐部の回路構成を示した
図15を参照する。
【0218】
トンネル防災システムの第4実施形態は、
図14に示すように、防災受信盤10に回線分岐部120を設けている。回線分岐部120には、第4コネクタ1010と第6コネクタのソケット1200が設けられている。第4コネクタ1010からは信号回線14が引出され、火災検知器12(12-1),12(12-2),12(12-3)・・・が接続されている。第6コネクタのソケット1200には、試験装置15の第3コネクタのプラグ1520が接続される。
【0219】
回線分岐部120は、コネクタ1010から引き出されている信号回線14に含まれる電源回線(第1電源線SV1と第1電源コモン線SG1)及び伝送回線(シリアル伝送線SAとシリアル伝送コモン線SB)を、防災受信盤10内で第6コネクタのソケット1200側、即ち試験装置15側へ分岐して固定的に接続するものである。
【0220】
防災受信盤10の回線分岐部120の構成は任意であるが、例えば、
図15に示す回路構成を備える。回線分岐部120は、防災受信盤10の第4コネクタ1010に対する第1電源線SV1、第1電源コモン線SG1、第2電源線SV2、第2電源コモン線SG2、シリアル信号線SA及びシリアル信号コモン線SBの6本の内、第1電源線SV1、第1電源コモン線SG1、シリアル信号線SA及びシリアル信号コモン線SBの4本を第6コネクタのソケット1200に分岐接続している。
【0221】
図14に示したように、回線分岐部120の第6コネクタのソケット1200に試験装置15の第3コネクタのプラグ1520を接続した場合には、試験装置15は、回線分岐部120を介して第1電源線SV1と第1電源コモン線SG1による電源供給を受けて動作し、また、試験装置15は、回線分岐部120を介してシリアル信号線SA及びシリアル信号コモン線SBにより火災検知器12(12-1),12(12-2),12(12-3)・・・側に接続され、且つ、防災受信盤10にも接続された状態となる。
【0222】
試験装置15は、
図7に示した外観と
図8に示した機能構成を有ることから、その説明は省略する。また、
図14に示すように防災受信盤10の回線分岐部120にコネクタを介して接続した試験装置15の情報収集制御は、
図9に示した第1実施形態の場合と同様になることから、その説明を省略する。
【0223】
このようなトンネル防災システムの第4実施形態にあっては、防災受信盤10の回線分岐部120にコネクタを介して試験装置15を接続するだけで、試験装置15は伝送回線を介して全ての火災検知器と接続されることから、任意の火災検知器12を対象に、アドレスを指定して読出しを指示することで、火災検知器12に記憶されている情報を収集して確認することを可能とする。
【0224】
また、防災受信盤10の回線切替部110は、信号回線14に含まれる電源回線(第1電源線SV1と第1電源コモン線SG1及び第2電源線SV2と第2電源コモン線SG2)による火災検知器12(12-1),12(12-2),12(12-3)・・・側に対する電源供給は切り替えずに固定的に接続しているため、防災受信盤10の回線分岐部110に試験装置15を接続しても、火災検知器12(12-1),12(12-2),12(12-3)・・・側に対する電源供給は断接されずに継続され、電源供給の断接に伴う火災検知器12の立ち上がり障害の発生を防止可能とする。
【0225】
また、試験装置15は、防災受信盤10から電源供給を受けて動作し、自己を動作できる程度の小型小容量の電池電源を備える程度で済むことから、試験装置15の更になる小型軽量化が可能となる。
【0226】
[j.本発明の変形例]
本発明による防災システムの変形例について説明する。本発明の防災システムは、上記の実施形態以外に、以下の変形を含むものである。
【0227】
(火災検知器)
上記の実施形態は3波長方式の火災検知器を例にとっているが、他の方式でも良く、例えば、4.5μmを中心波長とする波長帯の受光信号と、5.0μmを中心波長とする波長帯の受光信号に基づいて火災を検知すると共に劣化予兆を判定する2波長方式の火災検知器としてもよい。
【0228】
上記の実施形態は、火災検知器12の火災判定に基づき劣化予兆を判定しているが、これに限定されず、感度試験と汚れ試験を行った場合、各回路ブロックへの試験中の電源電圧と消費電流(電源電流)を検出してメモリに記憶し、続いて、メモリに記憶された複数の電源電圧と消費電流の平均値を各回路ブロックの内部電圧及び消費電流として求め、測定された内部電圧又は消費電流の変化から劣化予兆を判定するようにしてもよい。
【0229】
(その他)
また、本発明は、上記の実施形態に限定されず、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0230】
1a:上り線トンネル
1b:下り線トンネル
10:防災受信盤
1010:第4コネクタ
1011:第4コネクタのソケット
1012:第4コネクタのプラグ
12,12(12-1)~12(12-4):火災検知器
1210:第1コネクタ
1211:第1コネクタのソケット
1212:第1コネクタのプラグ
14:信号回線
1410,1420,1430:配線ケーブル
15:試験装置
1510:第2コネクタのソケット
1520:第3コネクタのプラグ
1530:ディスプレイ
1540:操作部
1550:電源スイッチ
16:消火ポンプ設備
18:冷却ポンプ設備
20:IG子局設備
22:換気設備
24:警報表示板設備
26:ラジオ再放送設備
28:テレビ監視設備
30:照明設備
32:遠方監視制御設備
34:盤制御部
36(36-1)~36(36-n):R型伝送ユニット
38:警報部
40:表示部
42:操作部
44:モデム
46:IO部
48,102:上位伝送部
50:電源部
52:試験電源部
60:収容箱
6010:箱本体
6020:箱蓋
6030:検出器開口
62:電線管
65:絶縁チューブ
67:ビニール袋
68:センサ収納部
70R,70L:透光性窓
72R,72L:試験光源用透光窓
74:検知器制御部
76,104:端末伝送部
78R,78L:炎検出部
80:電源部
82:試験電源部
84:試験発光駆動部
86R,86L:外部試験光源
88R,88L,90R,90L:内部試験光源
100:試験器制御部
102:上位伝送部
104:端末伝送部
106:電源部
108:電池電源
110:回線切替部
1100:第5コネクタのソケット
112:回線分岐部
114,116:切替スイッチ
120:回線分岐部
1200:第6コネクタのソケット