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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021665
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】回転電機、回転電機の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/173 20060101AFI20250206BHJP
   F16C 35/07 20060101ALI20250206BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20250206BHJP
   H02K 15/144 20250101ALI20250206BHJP
【FI】
H02K5/173 A
F16C35/07
F16C19/06
H02K15/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125539
(22)【出願日】2023-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】中村 一裕
【テーマコード(参考)】
3J117
3J701
5H605
5H615
【Fターム(参考)】
3J117AA03
3J117CA06
3J117DA01
3J117DB01
3J701AA02
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701BA77
3J701FA46
3J701GA24
5H605AA08
5H605CC02
5H605CC03
5H605CC10
5H605EB10
5H605EB17
5H605GG04
5H605GG06
5H615AA01
5H615BB14
5H615PP25
5H615PP28
5H615SS19
5H615SS20
(57)【要約】
【課題】組み立てや分解を容易に行うことができ、コストの上昇を抑制することができる回転電機、回転電機の製造方法を提供する。
【解決手段】実施形態の回転電機1は、ベアリング6と、ベアリング6が組み付けられる固定金具7と、固定金具7を収容する収容部82を有するブラケット8とを備え、固定金具7は、収容部82に収容されることによって、ねじ止め用の金具側孔部72の径方向における位置がブラケット8側の収容側孔部85から所定の範囲内で位置決めされ、ベアリング6は、ブラケット8に固定されている固定金具7によって間接的に固定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内輪および外輪を有するベアリングと、
前記ベアリングが組み付けられる組付用孔部、および、前記組付用孔部の周囲に複数形成されているねじ止め用の金具側孔部を有する固定金具と、
前記固定金具を収容する収容部、および、前記固定金具をねじ止めするための複数の収容側孔部を有するブラケットと、を備え、
前記固定金具は、前記収容部に収容されることによって、径方向における前記金具側孔部の位置が前記収容側孔部から所定の範囲内で位置決めされ、
前記ベアリングは、前記ブラケットに固定されている前記固定金具によって間接的に固定されている回転電機。
【請求項2】
前記固定金具は、表面から外側に突出するガイド部、または、表面から内側に窪んだガイド溝のうち少なくとも一方を有しており、
前記収容部は、前記ガイド部が挿入される収容側ガイド溝、または、前記ガイド溝に挿入される収容側ガイド部のうち、前記固定金具に対応する少なくとも一方を有している請求項1記載の回転電機。
【請求項3】
前記固定金具は、前記ベアリングの前記外輪の側面に沿って前記組付用孔部から径方向内側に延びて形成されていて、前記外輪の軸方向への移動を規制する規制部を有する請求項1記載の回転電機。
【請求項4】
前記固定金具は、外形の少なくとも一部が円形とは異なる異形状に形成されている請求項1記載の回転電機。
【請求項5】
前記ベアリングは、前記ブラケットとは非接触である請求項1記載の回転電機。
【請求項6】
前記固定金具は、肉抜き加工が施されている請求項1記載の回転電機。
【請求項7】
ベアリングと、ベアリングが組み付けられる組付用孔部が形成されている固定金具とを組み付ける工程と、
軸部材と前記ベアリングとを組み付ける工程と、
ブラケットに形成されている収容部に前記固定金具を前記ベアリングごと収容し、前記固定金具および前記ブラケットにそれぞれ形成されているねじ止め用の孔部の位置を、径方向において所定の範囲内となるように位置決めする工程と、
前記固定金具を前記ブラケットに固定することによって前記ベアリングを間接的に固定する工程と、
を含む回転電機の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転電機、回転電機の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の回転電機では、例えば特許文献1のように、ベアリングをブラケットに固定する際、ベアリングの外輪を押さえる押さえ板を別部材として設けることがある。以下、このような構成を便宜的に従来構成と称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平2-88444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来構成の場合、組立性が悪いという問題があった。具体的には、別部材としての押さえ板は、軸部材を通すための丸穴が中央に形成された薄い円環状に形成されており、その丸穴は、ベアリングの外輪の側面だけを押さえる大きさとなっている。そのため、ベアリングを固定する際には、ねじ止め用の孔部に例えば丸棒状の治具を通し、押さえ板を宙に浮かせた状態で互いの孔部を位置合わせしつつねじ止めするといった作業が必要となることから組立性が悪く、その組立性の悪さがコストの上昇を招いていた。また、組み立て時に限らず、点検時に回転電機の分解復旧作業を行う場合にも同様の問題が発生するなど、従来構成には改善の余地があった。
【0005】
また、従来構成の場合、押さえ板でベアリングの外輪の側面を挟んで押える構造となっているため、周方向への力が加わると接触面の摩擦が軽減されて外輪が回る可能性があり、クリープなどのベアリングの不具合が生じる可能性があるとともに、長期使用によってベアリングの接触面が摩耗したりした場合にはブラケットごと交換する必要があることもコストが上昇する要因となっていた。
【0006】
そこで、組み立てや分解を容易に行うことができ、コストの上昇を抑制することができる回転電機、回転電機の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の回転電機は、内輪および外輪を有するベアリングと、ベアリングが組み付けられる組付用孔部、および、組付用孔部の周囲に複数形成されているねじ止め用の金具側孔部を有する固定金具と、固定金具を収容する収容部、および、固定金具をねじ止めするための複数の収容側孔部を有するブラケットと、を備え、固定金具は、収容部に収容されることによって、径方向における金具側孔部の位置が収容側孔部から所定の範囲内で位置決めされており、ベアリングは、ブラケットに固定されている固定金具によって、間接的に固定されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態による回転電機の構成を模式的に示す図
図2】ベアリングを模式的に示す図
図3】固定金具を模式的に示す図
図4】ブラケットを模式的に示す図
図5】製造工程の一部の流れを示す図
図6】製造過程における各部材の組み付け態様を模式的に示す図
図7】第2実施形態による固定金具を模式的に示す図その1
図8】固定金具を模式的に示す図その2
図9】第3実施形態による固定金具を模式的に示す図
図10】固定金具の組み付け態様を模式的に示す図
図11】他の固定金具を模式的に示す図
図12】その他の実施形態による固定金具の組付け態様を模式的に示す図
図13】固定金具の他の形状例を示す図
図14】肉抜き加工を施した固定金具の例を示す図
図15】固定金具を表面側に組み付けた状態を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、複数の実施形態について図面を参照しながら説明する。また、各実施形態で共通する部位については同一符号を付して説明する。
【0010】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について説明する。図1に示すように、本実施形態の回転電機1は、ケース2と、ケース2の内面に固定されている固定子3と、固定子3との間に所定のギャップを介して配置されている回転子4と、回転子4の中心に取り付けられている軸部材5とを備えている。
【0011】
軸部材5は、ベアリング6によって回転可能に支持されており、そのベアリング6は固定金具7に固定されており、その固定金具7はケース2の開口を塞ぐブラケット8にボルト9によってねじ止めにより固定されている。以下、軸部材5の回転中心を中心軸(J1)と称し、中心軸(J1)に沿った向きを軸方向と称し、軸方向に沿った図示右方への向きを負荷側と称し、軸方向に沿った図示左方への向きを反負荷側と称する。
【0012】
ベアリング6は、図2に示すように、内輪61と外輪62との間に転動体63を有しており、本実施形態では球状の転動体63を有するボールベアリングで構成されている。ただし、ベアリング6としては、ローラ状の転動体63で構成されたローラベアリングを採用することもできる。また、図2では保持器の図示は省略しているが、保持器を備えていない構成であってもよい。このベアリング6は、外輪62の直径がR1、内輪61の内径がR2、軸方向の幅がW1、外輪62の径方向の厚みがD1となっている。以下、中心軸(J1)周りへの向きを周方向と称し、中心軸(J1)に垂直な向きを径方向と称する。
【0013】
固定金具7は、図3に示すように、ベアリング6を組み付けるための組付用孔部71と、組付用孔部71の周囲に複数形成されているねじ止め用の金具側孔部72と有する概ね肉厚の円筒状に形成されており、図1に示すようにその断面が四角いブロック状となっている。また、金具側孔部72は、いわゆるねじ穴として形成されており、周方向に均等な間隔で、中心軸(J1)からの距離がL1となる仮想的な円周上に、図示左右方向および図示上下方向において対称となる状態で4つ設けられている。ただし、金具側孔部72の数や配置はこれに限定されず、異なる数や配置とすることができる。
【0014】
この固定金具7は、外形がR11、内径つまりは組付用孔部71の直径がR12、軸方向への幅がW11となっている。この組付用孔部71の直径(R12)は、ベアリング6をしまりばめによって組み付け可能な大きさに設定されている。また、固定金具7の幅(W11)は、本実施形態ではベアリング6の幅(W1)と同じに設定されている。なお、固定金具7の幅(W11)は、ベアリング6の幅(W1)以上であればよい。
【0015】
ブラケット8は、図4に示すように、径方向外側に広がるフランジ部81を有する概ね有底円筒状に形成されており、固定金具7を収容するための空間である収容部82を有している。本実施形態の場合、収容部82は、ブラケット8の裏面側から立ちあがっている環状に形成された収容壁部83によって囲まれた空間として設けられている。なお、図4では、見易くするために、収容壁部83にハッチングを付している。
【0016】
この収容壁部83は、内径がR21となっており、その内径(R21)は、固定金具7を収容可能であって固定金具7の外形(R11)よりも若干大きく設定されている。そのため、固定金具7は、収容壁部83との間に、例えば金具側孔部72の直径の半分以下となる所定の距離を介した状態で収容される。また、フランジ部81には、ブラケット8をケース2に固定するための固定用孔部84が複数設けられている。
【0017】
また、ブラケット8の底面は、固定金具7をねじ止めするための収容側孔部85が設けられている第1底部86と、軸方向における位置が第1底部86から負荷側に段差状にずれている第2底部87とによって形成されている。この収容側孔部85は、本実施形態ではボルト9が通される貫通孔となっており、金具側孔部72に対応して周方向に均等な位置に4つ設けられている。各収容側孔部85は、中心軸(J1)からの距離がL1となる仮想的な円周上に位置して設けられている。
【0018】
第1底部86は、内周壁から径方向への厚みがD21であり、その厚み(D21)は、固定金具7の径方向の厚みにベアリング6の外輪62の厚み(D1)を加えたものと概ね等しく、内輪61までは到達しない大きさに形成されている。また、第2底部87は、内周壁から径方向への厚みがD22であり、ベアリング6の内輪61の側面を覆う位置まで延びている一方、軸部材5には接触しない大きさに形成されている。そのため、第2底部87の中央には、軸部材5を通すための中央開口88が形成されている。この中央開口88は、その直径がR22であり、軸部材5の直径よりも若干大きく、且つ、ベアリング6の内輪61の側面を覆う状態、つまり、ベアリング6の転動体63が直接的に外部に露出しない状態となっている。
【0019】
次に、上記した構成の作用および効果について説明する。
前述のように、何らかの別部材をブラケット8の裏面側に設ける場合、ねじ止め用の孔部の位置を合わせることが難しく、組立性が悪くなるとともに、その組立性の悪さがコストを上昇させる要因となっていた。そこで、本実施形態では、以下のようにして、組み立てや分解を容易に行うことができ、コストの上昇を抑制することができるようにしている。
【0020】
図5に回転電機1の製造方法の一部を抽出して示すように、本実施形態では、まず、ベアリング6と固定金具7とを組み付ける(S1)。この工程では、図6に組み付け状態として示すように、固定金具7の組付用孔部71にベアリング6がしまりばめによって組み付けられる。これにより、ベアリング6は、その外周面の全体が固定用金具に密に接触した状態で、固定用金具に強固に固定される。
【0021】
続いて、固定金具7に固定された状態のベアリング6と軸部材5とを組み付ける(S2)。この工程では、図6に軸組み付け状態として示すように、ベアリング6の内輪61に軸部材5が圧入される。これにより、ベアリング6は、固定金具7と共に軸部材5に組み付けられた状態となる。なお、軸部材5は、ステップS2の工程の前に回転子4に組み付けられているものとする。
【0022】
続いて、軸部材5、ベアリング6および固定金具7が軸部材5に取り付けられた状態の回転子4をケース2内に配置し(S3)、ブラケット8をケース2に取り付けることによって、固定金具7を収容部82に収容する(S4)。このとき、収容部82の大きさつまりは収容壁部83の内径(R21)は固定金具7の外形(R11)よりも若干大きく設定されていることから、図6に収容状態として示すように、固定金具7を収容部82に収容することにより、各金具側孔部72および各収容側孔部85は、中心軸からの距離がL1となる仮想的な円周上に位置することになる。すなわち、固定金具7を収容部82に収容することによって、径方向における金具側孔部72の位置が、収容側孔部85から所定の範囲内となるように位置決めされ、ブラケット8の表面からねじ止めすることが可能な状態となる。
【0023】
続いて、各孔部の周方向における位置合わせをする(S5)。この工程では、図6に位置合わせ状態として示すように、軸部材5を周方向に回転させることにより、位置合わせが行われる。具体的には、軸部材5を回転させることによってベアリング6の内輪61が回転し、それに追従して外輪62も固定金具7とともに回転することにより、各孔部が周方向において位置合わせされ、金具側孔部72と収容側孔部85が径方向および周方向において同じ位置となる。
【0024】
そして、各孔部が位置合わせされた状態で、固定金具7をブラケット8にねじ止めする(S6)。これにより、ブラケット8に固定された固定金具7を介して、ベアリング6の位置が間接的に固定される。このとき、収容部82は、ブラケット8の裏面側に設けられており、固定金具7は、ブラケット8の裏面側で収容部82に収容され、ブラケット8の表面側からねじ止めされる。なお、この後の工程で、ブラケット8をケース2に固定するなどの作業も行われる。
【0025】
以上説明した実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
本実施形態の回転電機1は、内輪61および外輪62を有するベアリング6と、ベアリング6が組み付けられる組付用孔部71、および、組付用孔部71の周囲に複数形成されているねじ止め用の金具側孔部72を有する固定金具7と、固定金具7を収容する収容部82、および、固定金具7をねじ止めするための複数の収容側孔部85を有するブラケット8と、を備え、固定金具7は、収容部82に収容されることによって、径方向における金具側孔部72の位置が収容側孔部85から所定の範囲内で位置決めされており、ベアリング6は、ブラケット8に固定されている固定金具7によって、間接的に固定されている。
【0026】
このような構成により、本実施形態では、軸部材5を回転させることによってベアリング6および固定部材をともに周方向に回転させることが可能となるため、固定金具7を収容した後、軸部材5を回転させることによって演じ止め用の孔部の位置を合わせることができる。したがって、ブラケット8の表面側から裏面側の固定金具7をねじ止めする場合であっても、従来のように部材を浮かせた状態で作業する必要が無くなり、容易にベアリング6を含めて固定することができるなど、組立性を大きく向上させることができるとともに、組立性の悪さからコストが上昇してしまうことを抑制できる。
【0027】
また、収容部82は固定金具7よりも若干大きく形成されていることから、ブラケット8を組み付けて固定金具7を収容する際、収容壁部83で固定金具7を案内できるとともに、組み付けに余分な力を必要とすることも無いため、容易に組み付けることができる。
また、本実施形態では、固定金具7とベアリング6とをしまりばめによって組み付けていることから、ベアリング6の外周面と固定金具7とが密に接触した状態となり、外輪62が周方向に回転してしまうクリープを抑制する効果を得ることができる。
【0028】
また、仮にクリープが発生しても、固定金具7を交換すればよいことから、また、組立性が良いことから交換作業を効率的に行うことができることから、ランニングコストの上昇を抑制することもできる。
【0029】
また、固定金具7の幅(W11)をベアリング6の幅(W1)と同じとしていることから、外輪62の外周面が全体的に固定金具7に密に接触しているため、クリープ防止の効果をさらに期待できる。また、固定金具7をブラケット8に固定した状態では、図1に示すようにベアリング6の外輪62の負荷側の側面が第1底部86に接触する。そのため、ベアリング6を負荷側に移動させようとするスラスト荷重が加わったとして、第1底部86によってベアリング6の移動が規制され、スラスト荷重への耐性を向上させることができる。
【0030】
また、ベアリング6の外輪62の側面と第1底部86とが接触することにより、クリープの発生を抑制する効果を得ることができる。なお、クリープの防止に大きく寄与するのは固定金具7であるため、仮にクリープが発生したとしても、必ずしもブラケット8を交換する必要は無く、固定金具7を交換することにより点検や修理を行うことが可能となり、コストの上昇を抑制することができる。
【0031】
また、ベアリング6と、ベアリング6が組み付けられる組付用孔部71が形成されている固定金具7とを組み付ける工程と、軸部材5とベアリング6とを組み付ける工程と、ブラケット8に形成されている収容部82に固定金具7をベアリング6ごと収容し、固定金具7およびブラケット8にそれぞれ形成されているねじ止め用の孔部の位置を、径方向において所定の範囲内となるように位置決めする工程と、固定金具7をブラケット8に固定することによってベアリング6を間接的に固定する工程と、を含む回転電機1の製造方法によっても、組立性を大きく向上させることができるとともに、組立性の悪さからコストが上昇してしまうことを抑制できるなど、実施形態と同様の各種の効果を得ることができる。
【0032】
また、治具を用いることにより、組み立てをさらに容易にすることができる。例えば、ボルト9と同じ直径を有していて一方の端部にねじ山が切られている棒状治具をいずれかの金具側孔部72に取り付け、その状態で棒状治具を対応する収容側孔部85に通しながらブラケット8を組み付けて固定金具を収容する手順とすることができる。これにより、図5に示したステップS4とステップS5の工程を同時に実施することができ、作業効率を改善することができる。
【0033】
(第2実施形態)
以下、図7および図8を参照しながら第2実施形態について説明する。なお、図7および図8では、説明の簡略化のために、ブラケット8を簡略化した形で図示している。また、必要に応じて図1から図6も参照しながら説明する。
【0034】
図7に示すように、本実施形態の固定金具7は、外周面となる表面から外側に突出するガイド部73をさらに有しており、収容部82は、ガイド部73が挿入される収容側ガイド溝83aを、固定金具7のガイド部73に対応する位置にさらに有している。このような構成により、ガイド部73の位置を収容側ガイド溝83aに合わせた状態で固定金具7を収容部82に収容すれば、径方向および周方向における金具側孔部72と収容側孔部85との位置決めを同時に行うことができる。つまり、図5に示したステップS4とステップS5の工程を同時に実施することができる。したがって、作業効率を改善することができ、組立性も向上させることができる。
【0035】
あるいは、図8に示すように、固定金具7は、外周面となる表面から内側に窪んだガイド溝74をさらに有し、収容部82は、ガイド溝74に挿入される収容側ガイド部83bをさらに有する構成とすることができる。このような構成であれば、ガイド溝74の位置と収容側ガイド部83bの位置とを合わせた状態で固定金具7を収容部82に収容することにより、径方向および周方向における金具側孔部72と収容側孔部85との位置決めを同時に行うことができる。つまり、図5に示したステップS4とステップS5の工程を同時に実施することができる。したがって、作業効率を改善することができ、組立性も向上させることができる。
【0036】
また、図示は省略するが、固定金具7は、表面から外側に突出するガイド部73、または、表面から内側に窪んだガイド溝74のうち少なくとも一方を有し、収容部82は、ガイド部73が挿入される収容側ガイド溝83a、または、ガイド溝74に挿入される収容側ガイド部83bのうち、固定金具7に対応する少なくとも一方を有する構成とすることができる。すなわち、固定金具7に複数のガイド部73やガイド溝74を設けたり、ガイド部73とガイド溝74の双方を1つ以上設けたりする構成とすることができる。このような構成によっても、径方向および周方向における金具側孔部72と収容側孔部85との位置決めを同時に行うことができ、作業性や組立性を向上させることができる。
【0037】
(第3実施形態)
以下、図9から図11を参照しながら第3実施形態について説明する。また、必要に応じて図1から図8も参照しながら説明する。
【0038】
図9に示すように、本実施形態の固定金具7は、組付用孔部71の反負荷側の端部に、ベアリング6の外輪62の側面に沿って径方向内側に延びて形成されていて、外輪62の軸方向への移動を規制する規制部75を有している。規制部75は、組付用孔部71から径方向への厚みがD31であり、その厚み(D31)は、ベアリング6の外輪62の厚み(D1)以下となっている。つまり、規制部75は、ベアリング6の外輪62のみと接触可能である一方、内輪61とは接触しない大きさに形成されている。また、規制部75を除いた組付用孔部71の径方向への幅はW11であり、固定金具7は、ベアリング6の外周面の全体と接触する。
【0039】
そして、図5に示した工程で組み立てることにより、図10に示すように、ベアリング6は、外輪62の反負荷側の側面が規制部75に接触した状態で、固定金具7によって間接的に固定される。これにより、ベアリング6を反負荷側に移動させようとするスラスト荷重が加わったとしても、規制部75によってベアリング6の移動を規制することができる。さらに、外輪62の側面と規制部75とが接触することにより、クリープの発生を抑制する効果を得ることができる。また、クリープが発生したとしても、ブラケット8を交換する必要は無く、固定金具7を交換すればよいことからコストの上昇を抑制することができる。
【0040】
また、図11に他の規制構成例その1として示すように、ガイド部73を有する固定金具7に対して規制部75を設ける構成とすることができるし、他の規制構成例その2として示すように、ガイド溝74を有する固定金具7に対して規制部75を設ける構成とすることができる。
【0041】
また、図示は省略するが、複数のガイド部73やガイド溝74を有する固定金具7や、ガイド部73とガイド溝74の双方を1つ以上有する固定金具7に対して規制部75を設ける構成とすることができる。
また、本実施形態では周方向の全域に規制部75を設ける構成としたが、周方向の一部に規制部75を設ける構成とすることができる。
【0042】
(その他の実施形態)
以下、その他の実施形態について図12から図15を参照して説明する。以下に説明する各変形例は、構成がバッティングしない範囲で各実施形態と組み合わせることができるものであり、必要に応じて図1から図8も参照しながら説明する。
【0043】
各実施形態ではブラケット8の第1底部86にベアリング6の外輪62が接触する構成例を示したが、図12に示すように、ベアリング6の外輪62と第1底部86との間に距離(W41)の隙間を設ける構成とすることができる。これにより、ベアリング6とブラケット8とを完全に非接触な状態とすることができ、クリープなどの不具合が生じたとしてもブラケット8を交換する必要が無くなり、コストの上昇を抑制することができる。なお、図示は省略するが、第2実施形態で説明したガイド部73やガイド溝74を有する固定金具7や、第3実施形態で説明した規制部75を有する固定金具7についても同様に、ベアリング6の外輪62と第1底部86との間に所定の隙間を設ける構成とすることができる。
【0044】
各実施形態では固定金具7の外形が円形の構成例を示したが、固定金具7は、外形の少なくとも一部が円形とは異なる異形状に形成することができる。異形状の例としては、図13に軸方向から見た状態で示す他の形状例その1のように円形の外形の一部を直線状にしたり、他の形状例その2のように外形を例えば4角形などの矩形状としたり、他の形状例その3のように外形を楕円形としたりすることが考えられる。
【0045】
このような構成とすることにより、位置合わせと位置決めを同時に行うことができるなど、各実施形態と同様の効果を得ることができる。また、形状例その2および形状例その3のように、金具側孔部72を中心軸(J1)に対して対象となる位置に設けることにより、仮に上下を逆に組付けたとしても、金具側孔部72の位置は収容側孔部85と一致することから組み立て時のミスを抑制することができる。
【0046】
各実施形態では、断面がブロック状の固定金具7を例示したが、例えば図14に一部断面を示すように、固定金具7の一部を肉抜き加工した肉抜き部76を設ける構成とすることができる。これにより、軽量化を図ることができる。なお、図14に示す肉抜き部76は一例であり、要求される強度などの仕様を確保できれば、他の部位や複数の部位に肉抜き加工を施すことができる。また、規制部75を有しない固定金具7に適用することもできる。
【0047】
各実施形態では固定金具7をブラケット8の裏面側に固定する構成を例示したが、ブラケット8の表面側に固定する構成とすることができる。つまり、固定金具7を、ブラケット8の表面側から収容部82に収容する構成とすることができる。具体的には、例えば図15に示すように、固定金具7の負荷側の端部にフランジ構造の鍔部77を設け、その鍔部77に金具側孔部72を設ける構成とする。このとき、中心軸から鍔部77の外縁までの半径をR41とすると、ブラケット8に、鍔部77を含めて固定金具7を収容可能な半径がR42となる収容部82を形成する。
【0048】
このとき、収容部82の半径(R42)は、固定金具7をいわゆるインロー式の入れ子構造で収容可能な値に設定されている。また、ブラケット8は、ケース2側に設けられている壁部によって、ケース2に対してインロー式の入れ子構造で組み付けられている。この構成の場合、回転電機1は、軸部材5が圧入された状態の回転子4をケース2内に配置し、ブラケット8を軸部材5に通した状態とし、固定金具7に組み付けられた状態のベアリング6を軸部材5に組み付け、固定金具7を収容部82に収容して各孔部の位置合わせおよび位置決めをした後、ボルト9で固定するという手順で組み立てられる。なお、図示は省略するが、ベアリング6の表面側を覆うためのカバー部材を設ける構成とすることができる。
【0049】
これにより、ブラケット8はケース2に対してインロー式で適切な位置関係となるように組付けられ、そのブラケット8に対してインロー式で固定金具7が適切な位置関係となるように組み付けられ、中心軸(J1)が規定の位置となった状態で回転電機1を組み立てることができる。したがって、組立性を大きく向上させることができるとともに、組立性の悪さからコストが上昇してしまうことを抑制できるなど、実施形態と同様の各種の効果を得ることができる。また、第2実施形態で説明したガイド部73やガイド溝74を設けたり、第3実施形態で説明した規制部75を設けたり、ベアリング6の外輪62の負荷側の側面に沿って規制部75と同様の構造を設けたりする構成とすることができる。
【0050】
各実施形態では収容壁部83により収容部82を形成する構成を例示したが、収容壁部83を設けることなく、ブラケット8の裏面側の空間を収容部82とすることができる。これは、ブラケット8の中央開口88は軸部材5の直径よりも若干大きく形成されており、その中央孔部に軸部材5を通すことにより、ベアリング6、固定部材および軸部材5の中心が概ね中心軸(J1)に一致した状態となり、金具側孔部72と収容側孔部85を所定の範囲内で位置決めすることができるためである。
【0051】
各実施形態では軸部材5の負荷側の端部を支持するベアリング6について説明したが、反負荷側の端部を支持するボールベアリングやローラベアリングに固定金具7を適用することができる。
各実施形態では、固定金具7は、ベアリング6の外周面を軸方向の全体に渡って接触する構成を例示したが、規制部75を有する固定部材の幅(W11)をベアリング6の幅(W1)よりも若干短くする構成とすることができる。これにより、ベアリング6の外輪62がより強固に規制部75と第1底部86とに接触することになり、スラスト荷重への耐性を向上させることができる。
【0052】
各実施形態では、ガイド部73またはガイド溝74を固定金具7の外周面に形成する構成を例示したが、固定金具7の第1底部86や規制部75に対向する面にガイド部73あるいはガイド溝74を設ける構成とすることができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
図面中、1は回転電機、5は軸部材、6はベアリング、7は固定金具、8はブラケット、62は外輪、71は組付用孔部、72は金具側孔部、73はガイド部、74はガイド溝、75は規制部、76は肉抜き部、82は収容部、83は収容壁部、83aは収容側ガイド溝、83bは収容側ガイド部、85は収容側孔部を示す。
図1
図2
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図15