(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021667
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】濾布の走行制御装置及びベルトフィルタ
(51)【国際特許分類】
B01D 37/04 20060101AFI20250206BHJP
B01D 33/04 20060101ALI20250206BHJP
B01D 33/58 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
B01D37/04
B01D33/04 B
B01D33/34
B01D33/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125543
(22)【出願日】2023-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】596052902
【氏名又は名称】三機グリーンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】松本 将門
(72)【発明者】
【氏名】亀井 諭
【テーマコード(参考)】
4D116
【Fターム(参考)】
4D116AA01
4D116AA04
4D116BB11
4D116BC62
4D116BC63
4D116BC65
4D116BC67
4D116BC70
4D116DD05
4D116FF13B
4D116KK06
4D116QA18C
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4D116QA55F
4D116QC19
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4D116RR01
4D116RR03
4D116RR04
4D116RR14
4D116RR23
4D116RR26
4D116RR27
4D116VV09
4D116VV11
(57)【要約】
【課題】従来の蛇行検知装置では検知することができなかった濾布の走行状態の異常を検知できるようにする
【解決手段】ベルトフィルタにおける濾布13の走行制御装置であって、濾布13が走行しているときにその幅方向の長さが正常な状態よりも短くなったことを検知するための検知手段20を備える。検知手段20は、濾布13の一方又は両方の幅方向側方に配置されており、所定の回動軸を支点として濾布13の幅方向に向かって回動する接触部材21と、この接触部材21の回動を検知するためのセンサ22を備える。接触部材21は、濾布13が正常な状態において、濾布13の側縁に接触して、回動軸を支点として正常範囲内で傾斜するように構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトフィルタにおける濾布の走行制御装置であって、
前記濾布が走行しているときに、前記濾布の幅方向の長さが正常な状態よりも短くなったことを検知する検知手段を備える
走行制御装置。
【請求項2】
前記検知手段は、
前記濾布の一方又は両方の幅方向側方に配置され、所定の回動軸を支点として前記濾布の幅方向に向かって回動する接触部材と、
前記接触部材の回動を検知するためのセンサを備え、
前記接触部材は、前記濾布が正常な状態において、前記濾布の側縁に接触して、前記回動軸を支点として正常範囲内で傾斜するように構成されており、
前記センサは、前記接触部材が接触している前記濾布の側縁が幅方向中央寄りに変位し、前記接触部材の傾斜角度が前記正常範囲から逸脱したことを検知する第1センサを含む
請求項1に記載の走行制御装置。
【請求項3】
前記接触部材及び前記第1センサは、前記濾布の幅方向両側に配置されている
請求項2に記載の走行制御装置。
【請求項4】
前記第1センサは、前記接触部材が前記濾布の側縁から乖離して自由となった状態を検知可能である
請求項2に記載の走行制御装置。
【請求項5】
前記センサは、前記接触部材が接触している前記濾布の側縁が幅方向外側寄りに変位し、前記接触部材の傾斜角度が前記正常範囲から逸脱したことを検知する第2センサをさらに含む
請求項2に記載の走行制御装置。
【請求項6】
前記第1センサが前記接触部材の傾斜角度が前記正常範囲から逸脱したことを検知したときに、前記接触部材に接触している前記濾布の側縁を幅方向外側寄りに変位させる調整手段をさらに含む、
請求項2に記載の走行制御装置。
【請求項7】
前記調整手段は、前記濾布の側縁部分に接触し、当該側縁部分を幅方向外側寄りに引張するように構成された一又は複数のローラを含む
請求項6に記載の走行制御装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の走行制御装置を有するベルトフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトフィルタにおける濾布の走行制御装置に関する。また、本発明は、走行制御装置を備えたベルトフィルタにも関連するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば化学工場、製紙工場、食品工場などの化工機分野において、スラリー(懸濁液)を処理する用途でベルトフィルタが用いられている。ベルトフィルタは、一般的に、外周面に無端状の濾布が張られた脱水ドラムをスラリーが貯留されたタンク内で周方向に回転させ、タンク内のスラリーを濾布によって濾過し、その濾布の表面に形成された脱水ケーキを濾布から剥離することにより、タンク内のスラリーから固体と液体を分離する(特許文献1)。このようなベルトフィルタは、例えば工業プロセスで発生した廃水処理等の固液分離処理に利用できる。
【0003】
また、従来から、上記した濾布の蛇行状態を検知する装置も知られている。すなわち、ベルトフィルタでは脱水ドラムを周方向に回転させることで、その外周面に掛け張られた濾布を走行させることになるが、濾布を長時間走行させていると、この濾布の中心が次第に脱水ドラムの軸方向の片側に向かって寄ってしまう蛇行状態となることがある。このような濾布の蛇行状態を放置していると、最悪の場合には濾布が脱水ドラムから脱落してしまうことになることから、濾布の走行状態を監視して、蛇行が発生した場合には濾布を正規な位置(ドラムの中心)に戻す必要がある。そこで、例えば特許文献2に記載の蛇行検知装置では、自重によって垂直に戻るレバーを濾布の幅方向の左右どちらかの片側に配置しておき、濾布が蛇行して左右のどちらかに片寄ったことをこのレバーにより検知するという構成を採用している。この特許文献2の蛇行検知装置では、濾布が蛇行状態となったときに、濾布がレバーを回動させることになるため、このレバーの回動角度に応じて濾布を正規位置に戻すように調整することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実全昭59-180713号公報
【特許文献2】特開昭62-275598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献2の蛇行検知装置は、前述したように自重によって垂直に戻るレバーが濾布の幅方向の左右片側のみに配置されているため、例えば濾布の走行中にヨレや撓みが発生し、濾布の幅方向の長さが正常な状態よりも短くなったことを正確に検知できないという問題がある。具体的には、この蛇行検知装置は、濾布の幅方向の長さが適正に維持されたまま濾布が左右どちらかに片寄って走行している状態(蛇行状態)となれば、濾布の側縁に摺接しているレバーの角度が変化するため、濾布にこのような異常が発生していることを検知できる。しかし、例えば濾布にヨレや撓みや波打ちなどが発生し、濾布の左右の側縁の両方又は一方が幅方向の中央に寄って濾布の幅方向の長さが縮まっている場合、濾布の片側に配置されたレバーだけでは、濾布が左右どちらかに片寄って走行しているのか、あるいは走行中にヨレや撓みにより濾布の幅方向の長さが正常な状態よりも短くなっているのかを正確に判別できない。特に、特許文献2の蛇行検知装置では、走行中における幅方向の長さが正常な状態よりも短くなっているという異常が濾布に生じていることを検知することができない。
【0006】
そこで、本発明は、従来の蛇行検知装置では検知することができなかった濾布の走行状態の異常を検知できるようにすることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者らは、上記した従来発明の課題を解決する手段について鋭意検討した結果、例えば自重で略垂直に戻る接触部材を正常に走行する濾布の幅方向側縁に接触した状態で配置することにより、走行時の濾布の幅方向の長さが正常な状態よりも短くなったことを検知できるようになるという知見を得た。そして、本発明者らは、上記知見に基づけば、従来発明では検知することができなかった濾布の走行状態の異常を検知できるようになるということに想到し、本発明を完成させた。具体的に説明すると、本発明は以下の構成を有する。
【0008】
本発明の第1の側面は、ベルトフィルタが備える濾布の走行状態を制御するための装置に関する。本発明に係る走行制御装置は、濾布が走行しているときに、この濾布の幅方向の長さが正常な状態よりも短くなったことを検知する検知手段を備える。なお、ここにいう「濾布の幅方向の長さ」とは、走行時における濾布の一方の側縁から他方の側縁までの直線距離を意味する。このため、濾布にヨレや撓みや波打ちなどが発生している場合には、その分「濾布の幅方向の長さ」は短くなる。従来の蛇行検知装置では、濾布の左右の側縁の両方又は一方が幅方向の中央に寄って濾布の幅方向の長さ(直線距離)が短くなっていることまでは検知できなかった。本発明では、このような濾布の異常を検知するための検知手段を備えることで、従来の蛇行検知装置では検知することができなかった濾布の走行状態の異常を検知できるようになる。
【0009】
本発明に係る走行制御装置において、検知手段は、接触部材とセンサを備えることが好ましい。接触部材は、濾布の一方又は両方の幅方向側方に配置されており、所定の回動軸を支点として濾布の幅方向に向かって回動する。特に、接触部材は、濾布の幅方向側方の両方に配置されていることが好ましい。センサは、接触部材の回動を検知する。ここで、接触部材は、濾布が正常な状態において、濾布の側縁に接触して、回動軸を支点として正常範囲内で傾斜するように構成されている。また、センサは、第1センサを含む。この第1センサは、接触部材が接触している濾布の側縁が幅方向中央寄りに変位し、接触部材の傾斜角度が正常範囲から逸脱したことを検知する。例えば、接触部材が濾布の側縁と接触しなくなった場合は、そのような接触部材の状態がこの第1センサにより検知される。このように、本発明では、濾布の走行状態が正常であるときから予め濾布を接触部材に接触させておき、異常が発生したときに濾布が接触部材から離れた場合に、その接触部材の状態を第1センサにより検知するように構成されている。これにより、本発明では、走行時の濾布の幅方向の長さが短くなったことなど、従来の蛇行検知装置では検知することができなかった濾布の走行状態の異常を検知できるようになる。
【0010】
本発明に係る走行制御装置において、接触部材及び第1センサは濾布の幅方向両側に配置されていることが好ましい。本発明では、接触部材及び第1センサは濾布の幅方向片側のみに配置することとしてもよいが、濾布の幅方向両側に配置することで濾布の走行状態の異常をより正確に検知できるようになる。
【0011】
本発明に係る走行制御装置において、第1センサは、接触部材が濾布の側縁から乖離して自由となった状態を検知可能であることが好ましい。これにより、走行時の濾布の幅方向の長さが短くなったことなどをより正確に検知できる。
【0012】
本発明に係る走行制御装置において、センサは、第2センサをさらに含むことが好ましい。第2センサは、接触部材が接触している濾布の側縁が幅方向外側寄りに変位し、接触部材の傾斜角度が正常範囲から逸脱したことを検知する。このように、濾布の側縁が幅方向外側寄りに変位したことを検知する第2センサを設けることで、従来の蛇行検知装置と同様に、濾布が蛇行状態にあることも検知することができる。また、濾布の幅方向両側に第1センサと第2センサを設けることで、各センサの検知情報の組み合わせによって、濾布が左右のどちらに蛇行しているのか、濾布の側縁の片側にヨレや撓みが発生してるのか、あるいは濾布の側縁の両側にヨレや撓みが発生してるのかなどを識別することが可能となる。
【0013】
本発明に係る走行制御装置は、調整手段をさらに含むことが好ましい。調整手段は、第1センサが接触部材の傾斜角度が正常範囲から逸脱したことを検知したときに、接触部材に接触している濾布の側縁(「接触部材に接触していた濾布の側縁」を含む)を幅方向外側寄りに変位させる。すなわち、第1センサが接触部材を検知したということは、この第1センサ側の濾布の側縁にヨレは撓みが発生して走行時における濾布の幅方向の長さが短くなっているか、濾布がこの第1センサから離れるように蛇行していることを意味する。従って、この場合には、調整手段によって接触部材に接触している濾布の側縁を幅方向外側寄りに変位させることで、濾布の走行状態を正常に戻すことができる。
【0014】
本発明に係る走行制御装置において、調整手段は、一又は複数のローラを含む。このローラは、濾布の側縁部分に接触し、当該側縁部分を幅方向外側寄りに引張するように構成されている。これにより、濾布の連続的な走行を維持しながら、濾布の走行状態を正常に戻すことができる。
【0015】
本発明の第2の側面は、前述した第1の側面に係る走行制御装置を有するベルトフィルタに関する。すなわち、本発明に係る走行制御装置は単独で実施することもできるし、ベルトフィルタに組み込んだかたちで実施することもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、従来の蛇行検知装置では検知することができなかった濾布の走行状態の異常が検知できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、ベルトフィルタの構成例を示した側面図である。
【
図2】
図2は、検知手段の構成例を示した断面図であって、濾布の走行状態が正常である場合を示している。
【
図3】
図3は、検知手段の構成例を示した拡大図である。
【
図4】
図4は、検知手段の構成例を示した断面図であって、濾布が蛇行して左方に寄っている場合を示している。
【
図5】
図5は、検知手段の構成例を示した断面図であって、濾布が蛇行してさらに左方に寄っている場合を示している。
【
図6】
図6は、検知手段の構成例を示した断面図であって、濾布の右側の側縁が中央に寄っている場合を示している。
【
図7】
図7は、検知手段の構成例を示した断面図であって、濾布の左右両側の側縁が中央に寄っている場合を示している。
【
図8】
図8は、調整手段の構成例を示した拡大図である。
【
図9】
図9は、調整手段の構成例を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は、以下に説明する形態に限定されるものではなく、以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
【0019】
なお、各図では、X軸,Y軸,Z軸の直交座標系を矢印で示している。X軸は濾布の長手方向(走行方向)に対応し、Y軸は濾布の幅方向に対応し、Z軸は濾布の厚さ方向(高さ方向)を示している。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係るベルトフィルタ1を示している。
図1に示されるように、本実施形態に係るベルトフィルタ1は、タンク11、脱水ドラム12、濾布13、ベントプーリ14、テンションプーリ15、シュート16、及び洗浄装置17を備える。また、ベルトフィルタ1は、濾布13の走行状態を調整するための走行制御装置2をさらに備える。この走行制御装置2には、濾布13の走行状態の異常を検知するための検知手段20と、濾布13の異常が検知されたときに濾布13の走行状態を正常に戻すための調整手段30が含まれる。
【0021】
タンク11は、本ベルトフィルタ1による処理の対象となるスラリーSL(懸濁液)を貯留するための容器である。本ベルトフィルタ1で扱うスラリーSLの種類は特に制限されないが、本ベルトフィルタ1は、例えば化学工場や、製紙工場、食品工場などの工業プロセスで発生した廃液を処理するのに適している。また、図示は省略するが、タンク11には、その内部に未処理のスラリーSLを供給する供給ノズルや、スラリーSLのオーバーフローをタンク11外に排出する排出ノズルが接続されている。
【0022】
脱水ドラム12は、バキューム式のドラムであり、その外周面に無端状の濾布13が掛け渡されている。脱水ドラム12と濾布13は部分的にタンク11内のスラリーSLに浸漬するように配置されており、脱水ドラム12が回転することで濾布13が走行して、濾布13全体がスラリーSL内を順次通過することになる。また、脱水ドラム12は、主に濾布13と接触する面においてこの濾布13を吸引している。このため、タンク11内のスラリーSLや濾布13に染み込んだスラリーSLが、濾布13を通過して脱水ドラム12内に吸引される。これにより、濾布13によってスラリーSLが濾過される。すなわち、このスラリーSLに含まれる液体は、濾過13を通過して脱水ドラム12内に捕集される一方で、スラリーSL内の固体は、濾布13に付着したまま濾布13上に残り、脱水ケーキDCとなる。なお、図示は省略するが、脱水ドラム12は、脱水ドラム12の内部を陰圧にするための真空ポンプや、脱水ドラム12内に捕集された液体(濾液)を排水するための濾液ポンプや、この液体を貯留するための濾液タンクにそれぞれ接続されている。また、脱水ドラム12としては、脱水ドラム12の周囲をフードで覆うことで真空エリアを形成し、この真空エリア内で濾布13やスラリーSLの吸引を行うという構成(いわゆる真空脱水ドラム)を採用することも可能である。
【0023】
濾布13は、上記の通り脱水ドラム12に架け渡される無端状の濾過用ベルトである。濾布13は、スラリーSLを構成する液体を濾過して、固体をその表面に捕集できるものであればよく、スラリーSLの種類に応じて材質や目の大きさ、厚みなどを調整すればよい。また、ベルトフィルタ1の用途に応じて、濾布13の長手方向の長さや幅方向の長さも適宜調整すればよい。
【0024】
ベントプーリ14は、脱水ドラム12から引き出された濾布13の一部(つまり脱水ドラム12の外周面に接してない部分)を走行させるためのプーリであり、特に濾布13の進行方向を変えることを目的として配置されている。
図1に示した例において、ベントプーリ14は、濾布13の進行経路上に2箇所配置されている。
図1では、脱水ドラム12から離れた濾布13が最初に通過するベントプーリ14を第1のベントプーリ14(a)とし、その次に通過するベントプーリ14を第2のベントプーリ14(b)としている。
【0025】
テンションプーリ15は、ベントプーリ14と同様に脱水ドラム12から引き出された濾布13の一部を走行させるためのプーリであるが、アクチュエータによってその位置を移動させることで走行中の濾布13に負荷する張力を調整できるように構成されている。これにより、脱水ドラム12、ベントプーリ14、及びテンションプーリ15によって走行させられる濾布13には、常に一定の張力が与えられる。
【0026】
シュート16は、濾布13に付着した脱水ケーキDCを排出するための廃棄口に繋がっている廃棄経路である。
図1に示した実施形態では、濾布13が第1のベントプーリ14(a)に至りその進行方向が曲げられると、濾布13の表面から脱水ケーキDCが剥離されて、そのまま落下することになる。シュート16はこの脱水ケーキDCの落下先に設けられている。なお、図示は省略するが、濾布13を挟んだ第1のベントプーリ14(a)の反対側付近に脱水ケーキDCを剥離手段(ブラシ又はブレード等)設けて、濾布13の表面に付着した脱水ケーキDCを強制的に剥離することとしてもよい。
【0027】
洗浄装置17は、脱水ケーキDCが剥離した後の濾布13を洗浄するための装置である。
図1に示した実施形態では、洗浄装置17は、濾布13の表面側と裏面側の両方に配置された一対のローラブラシを備えており、これらのローラブラシは第1のベントプーリ14(a)と第2のベントプーリ14(b)の間に配置されている。なお、洗浄装置17は、ローラブラシに加えて又はローラブラシに代えて、洗浄液を濾布13に吹き付けるスプレーを備えていてもよい。このように、洗浄装置17によって洗浄された濾布13は、再び脱水ドラム12の外周面に至り、脱水ドラム12の回転に伴ってタンク11内のスラリーSLに浸漬される。このようにして、濾布13を連続的に走行させることで、タンク11内のスラリーSLを連続的に処理することができる。
【0028】
走行制御装置2は、上記した濾布13の走行状態を監視して、異常が発生した場合には濾布13を調整することで正常に戻すための機能を備えている。具体的には、本実施形態において、走行制御装置2は、濾布13が脱水ドラム12の外周面から離れてから、第1のベントプーリ14(a)に至るまでの区間に配置されている。この区間は、濾布13が脱水ドラム12から離れた直後であり、かつ濾布13上に脱水ケーキDCが堆積されていることから、濾布13に蛇行やヨレ、撓みといった異常が発生しやすい。このため、走行制御装置2はこの脱水ドラム12と第1のベントプーリ14(a)の区間に配置することが好ましい。
【0029】
図2及び
図3は、本実施形態に係る走行制御装置2の検知手段20を示している。
図2に示されるように、本実施形態において、検知手段20は濾布13の幅方向の両側に配置されている。濾布13の左側に配置されたものを左センサ装置20(L)とし、濾布13の右側に配置されたものを右センサ装置20(R)とする。なお、
図3では、左センサ装置20(L)の詳細な構成を拡大して示しているが、右センサ装置20(R)の構成もこれと同じである。
図2及び
図3に示されるように、左右のセンサ装置20(L,R)は、それぞれ、主に接触部材21、センサ22、及び筐体23を備える。
【0030】
接触部材21は、走行時の濾布13の側縁に接触する部材である。接触部材21は、回動軸21a、縦バー21b、及び横バー21cを含む。縦バー21bと横バー21cは、それぞれ直線的な棒状の部材であり、回動軸21aを交点として一体的に接合されている。図示した例では、縦バー21bと横バー21cは互いにほぼ直交するように接合され、これらが一体化された部材は略T字型となっている。実際には、接触部材21のうちの縦バー21bが濾布13の側縁に直接接触する。なお、縦バー21bと横バー21cのなす角度(Y方向に縦バー21bを挟み濾布13と反対側の横バー21cと縦バー21bのなす鋭角側)は、直角(90度)であることが最も好ましいが、70~90度の範囲内であればよく、80~90度であってもよい。
【0031】
縦バー21bと横バー21cが一体化された略T字型の部材は、回動軸21aを支点として、濾布13の幅方向(Y軸方向)に向かって回動する。このT字型の部材は、回動軸21aを支点として揺動することができるが、縦バー21bに何ら外圧が加わっていない状態では自重によって自然状態に戻ろうとする。このT字型の部材は、自然状態において、縦バー21bが回動軸21aに対して垂直方向に向かって延び、横バー21cが回動軸21aに対して水平方向に向かって延びる。一方で、縦バー21bが濾布13の側縁に接触すると、この縦バー21bは濾布13からの圧力を受けることなるため回動軸21aを支点として回動する。また、この縦バー21bに伴って横バー21cも回動することになる。なお、T字型の部材の重量バランスによっては、縦バー21bは完全に垂直にならず、横バー21cも完全な水平とはならないこともある。このT字型の部材は、自然状態において、縦バー21bが略鉛直(水平面に対して90度±10度)になることが好ましく、横バー21cが略水平(水平面に対して0度±10度)となることが好ましい。また、縦バー21bが外圧を受けていない自然状態においては、横バー21cが筐体23等の外部要素に接触して規制を受けることにより、縦バー21bが略鉛直となり、横バー21cが略水平となった状態が維持されることとしてもよい。
【0032】
なお、上記のように、自然状態において縦バー21bを略鉛直とし横バー21cを略水平とすることを考慮すると、縦バー21bと横バー21cは上記の通り略T字型に接合されていることが好ましい。ただし、例えば縦バー21bの一端と横バー21cの一端とを接合して、略L字型の部材とすることもできる。また、縦バー21bや横バー21cは、必ずしも直線的な部材とする必要はなく、検知手段20の作用を損なわない範囲で屈曲又は湾曲していてもよい。また、縦バー21bや横バー21cは、必ずしも棒状(円柱状、多角柱状)である必要はなく、面状の部材であってもよい。
【0033】
図2及び
図3では、濾布13が正常に走行しているときの接触部材21の状態を示している。各図に示されるように、接触部材21は、正常に走行している濾布13の側縁に接触し、回動軸21aを支点として所定角度で傾斜するように設置されている。つまり、濾布13の走行状態が正常である場合には、接触部材21の縦バー21bは濾布13からの圧力を受けることになる。
図3では、縦バー21bが自然状態から正常な濾布13の側縁に接触している状態になったときの傾斜角度を符号θ
1で示している。すなわち、正常な濾布13の側縁に接触している縦バー21bは、外圧を受けていないときには略垂直となるが、正常に走行している濾布13に接触しているときには、角度θ
1で傾斜していることになる。この縦バー21bの傾斜角度θ
1は理論的には1~89度の範囲から選択可能であるが、実際には1~45度であることが好ましく、5~30度であることがより好ましい。図示した例では、傾斜角度θ
1は10~15度程度となっている。このような縦バー21bの傾斜に伴って、横バー21cも傾斜することになるのは自明である。
【0034】
一方で、濾布13の側縁が縦バー21bから離れる方向(幅方向内側寄り)に変位すると、接触部材21はその自重によって自然状態に戻ろうとする。濾布13の側縁が縦バー21bから完全に離れているときには、縦バー21bは略鉛直となり、横バー21cは略水平となる。
図3に示した実施形態では、濾布13の側縁が縦バー21bから完全に離れると、横バー21cが筐体23のセンサ収納ケース23bの底面に接触してそれ以上は回動しなくなる。このため、縦バー21bと横バー21cの角度が維持される。なお、濾布13の側縁が縦バー21bから完全に離れたときには、縦バー21bや横バー21cがどこにも接触しないようにすることもできる。また、反対に、濾布13の側縁が縦バー21bに近づく方向(幅方向外側寄り)に変位すると、接触部材21の縦バー21bと横バー21cの傾斜角度が、前述した正常な傾斜角度θ
1よりも大きくなる。このように、正常な傾斜角度θ
1に対して、接触部材21の傾斜角度が小さくなった場合と大きくなった場合は、いずれの場合においても濾布13の走行状態に何らかの異常が発生している可能性があるといえる。
【0035】
センサ22は、接触部材21の回動を検知する。本実施形態において、より具体的には、センサ22は、接触部材21のうち、横バー21cの回動を検知するように構成されている。すなわち、
図3に示されるように、センサ22は、横バー21cの回動軌道上に設置されており、横バー21cの傾斜角度が一定の正常範囲から逸脱したことを検知するように構成されている。本実施形態において、センサ22は、第1センサ22a、第2センサ22b、第3センサ22c、及び第4センサ22dの合計4つのセンサを含む。各センサ22a~22dとしては、近接センサを採用することができる。近接センサは、検出物体が接近したことを非接触で検出するセンサである。すなわち、近接センサは、横バー21cの接近を検知したときに、その検知信号を出力する。近接センサの種類は特に制限されないが、例えば一般的な光学式、磁気式、又は静電容量式のセンサを用いればよい。
【0036】
また、
図3に示されるように、センサ22には、各センサ22a~22dによっては横バー21cが検知されない無検知エリアが存在する。
図3では、この無検知エリアを点線の枠で示している。この無検知エリアの範囲は、接触部材21(具体的には横バー21c)の傾斜角度の正常範囲に対応している。つまり、接触部材21の傾斜角度が正常範囲にあるときには、横バー21cはセンサ22の無検知エリアに属していることになる。
【0037】
また、無検知エリアの前後には各センサ22a~22dが位置している。具体的には、濾布13の側縁が接触部材21から離れる方向(幅方向内側寄り)に変異して、濾布13が接触部材21から完全に離れると、接触部材21の横バー21cはこの無検知エリアから逸脱し、第1センサ22aによって検知される。
図3に示した例では、濾布13が接触部材21から完全に離れると横バー21cは略水平になって、第1センサ22aによって検知されることになる。このように接触部材21の横バー21cが第1センサ22aによって検知される角度を便宜的に初期角度(0度)とする。
【0038】
一方で、濾布13の側縁が接触部材21に近づく方向(幅方向外側寄り)に変位していくと、接触部材21の横バー21cは次第に無検知エリアから逸脱して、第2センサ22bによって検知される。また、濾布13の側縁の変位が更に進むと、接触部材21の横バー21cは、第3センサ22c、第4センサ22dの順で検知されることになる。このように、濾布13の側縁が接触部材21に近づく方向に変位した場合には、第2センサ22b、第3センサ22c、及び第4センサ22dの順で横バー21cの検知が段階的に行われる。これらの第2センサ22b、第3センサ22c、及び第4センサ22dの間の間隔は、横バー21cの傾斜角度を基準として、例えば3~20度間隔又は5~15度間隔とすればよい。
【0039】
本実施形態の構成では、第1センサ22aと第2センサ22bの間が無検知エリアとなる。前述のように横バー21cが第1センサ22aによって検知される角度を初期角度(0度)とすると、横バー21cが第2センサ22bによって検知される角度は、例えば15~45度の範囲とすることが好ましく、18~40度又は20~35度に設定することが好ましい。言い換えると、センサ22の無検知エリアは、15~45度の範囲であって、かつ、第1センサ22aと第2センサ22bによって検知されない範囲となる。この無検知エリアの設定は、ベルトフィルタ1の用途等に応じて適宜調整することが可能である。
【0040】
筐体23は、上記した接触部材21とセンサ22を支持するための要素である。本実施形態において、筐体23は、接地面上に固定された支持台23aと、センサ22を収納するためのセンサ収納ケース23bと、このセンサ収納ケース23bの少なくとも一面を形成する透明カバー23cと、センサ収納ケース23b内において各センサ22a~22dを支持するセンサ支持具23dと、センサ収納ケース23bに対して接触部材21を回動可能に固定するバー支持具23eとを含む。このように各センサ22a~22dはセンサ収納ケース23b内に収納して保護すると良い。また、センサ収納ケース23b内には、接触部材21の横バー21cが挿入されており、その内部の各センサ22a~22dによって横バー21cの回動が検知可能となっている。また、接触部材21の回動軸21aは、センサ収納ケース23bの外に位置しているが、同じくセンサ収納ケース23b外に設けられているバー支持具23eに固定されている。また、前述したように、濾布13が接触部材21から完全に離れると、接触部材21の横バー21cがセンサ収納ケース23bの底面に接触して、それ以上は回動しないように規制されている。このため、第1センサ22aは、センサ収納ケース23bの底面に接している横バー21cを検出することになる。また、センサ収納ケース23bの少なくとも一面はアクリルやガラスなどの透明カバー23cで覆われているため、目視でセンサ収納ケース23b内の横バー21cの動きを確認することができる。
【0041】
次に、
図2及び
図4から
図7を参照して、濾布13の走行状態とそれに対応した左センサ装置20(L)及び右センサ装置20(R)の動作について説明する。前述したように、
図2は、濾布13の走行状態が正常である場合を示している。この状態では、左センサ装置20(L)と右センサ装置20(R)の接触部材21は、それぞれ濾布13の側縁に接触し正常範囲内で傾斜している。
図2では、濾布13の幅方向の中心を符号Cで示している。また、正常な走行状態であるときに濾布13の中心Cが通るべき通過点を符号Oで示している。さらに、走行時にヨレや撓みの生じていない濾布13の最適な幅方向の長さ(直線距離)を符号Wで示している。
図2に示されるように、濾布13の中心Cが正常な通過点O上に位置しており、かつ、濾布13の幅方向の長さが最適長さWに維持されている状態が理想である。
【0042】
一方で、
図4は、濾布13が蛇行して左側に片寄っている場合を示している。この場合、濾布13の幅方向の長さは最適長さWに維持されているものの、濾布13全体が左側に片寄っているため、濾布13の走行状態には異常があるといえる。このとき、濾布13の左側縁は、左センサ装置20(L)に近づく方向に変位しているため、左センサ装置20(L)の接触部材21の傾斜角度は正常範囲を超えて大きくなる。その結果、左センサ装置20(L)では、接触部材21の横バー21cが第2センサ22bによって検知される。また、濾布13の右側縁は、右センサ装置20(R)の接触部材21から乖離しているため、右センサ装置20(R)の接触部材21の傾斜角度は正常範囲未満となる。その結果、右センサ装置20(R)では、接触部材21の横バー21cが第1センサ22aによって検知される。このような場合には、左右のセンサ装置20(L,R)の検知信号に基づいて、濾布13は最適長さWをある程度維持したまま、幅方向左側に片寄って蛇行していると判断できる。そこで、このような場合には、この検知情報に基づいて調整手段30を制御し、調整手段30によって濾布13を幅方向右側に寄せることで、濾布13の走行状態を正常に戻せばよい。なお、
図4では、左センサ装置20(L)の第2センサ22bによって横バー21cが検知された場合を示しているが、横バー21cが第2センサ22bを通過してしまうと検知されなくなってしまうので、第3センサ22cによって横バー21cが検知された場合も同様の制御が実行される。なお、第2センサ22bと第3センサ22cを設けた場合を述べたが、両センサの位置の範囲まで検知範囲を広げた1つのセンサとしてもよい。
【0043】
また、
図5は、濾布13が
図3よりも更に左側に片寄っている場合を示している。このとき、濾布13の左側縁は、左センサ装置20(L)に近づく方向に大きく変位しているため、左センサ装置20(L)の接触部材21の傾斜角度は正常範囲を大幅に超えて大きくなる。その結果、左センサ装置20(L)では、接触部材21の横バー21cが第4センサ22dによって検知される。なお、右センサ装置20(R)では、接触部材21の横バー21cが第1センサ22aによって検知されているが、これは
図3のときと同様である。このような場合には、左右のセンサ装置20(L,R)の検知信号に基づいて、濾布13の蛇行幅が危機的に大きくなっていると判断できる。そこで、第4センサ22dによって横バー21cが検知されたときには、ベルトフィルタ1による濾布13の走行を停止させ、濾布13を適正位置まで戻すことが好ましい。これにより、濾布13が脱水ドラム12から脱落するという最悪の事態を回避できる。
【0044】
なお、
図3及び
図4では、濾布13が左側に片寄っている場合を例に挙げて左右のセンサ装置20(L,R)の動作を説明したが、濾布13が右側に片寄っている場合には、左右のセンサ装置20(L,R)の動作が逆になるだけで、基本的には同様の動作が行われる。
【0045】
図6は、濾布13の右側縁が幅方向中心寄りに変位している場合を示している。すなわち、濾布13の走行時における幅方向長さW´(直線距離)が最適長さWよりも短くなっている。この場合には、
図6に示すように濾布13の中心Cが正常な通過点O上に位置しているとしても、濾布13の右側縁側にヨレや撓み等が生じていることから、濾布13の走行状態には異常があるといえる。このとき、濾布13の右側縁は、右センサ装置20(R)の接触部材21から乖離しているため、右センサ装置20(R)の接触部材21の傾斜角度は正常範囲未満となる。その結果、右センサ装置20(R)では、接触部材21の横バー21cが第1センサ22aによって検知される。一方で、濾布13の左側縁は、局所的に見れば特に異常は発生していない。このため、左センサ装置20(L)の接触部材21と濾布13の左側縁は適度に接触したままとなる。その結果、左センサ装置20(L)では、接触部材21の横バー21cがセンサ22の無検知エリアに在り、特に検知信号は発せられていない。このような場合には、左右のセンサ装置20(L,R)の検知信号に基づいて、濾布13の右側縁側に異常が発生し、濾布13の走行時の幅方向長さW´が最適長さWよりも短くなっていると判断できる。そこで、この検知情報に基づいて調整手段30を制御し、調整手段30によって濾布13の右側縁側を幅方向外側に引っ張って、濾布13の走行状態を正常に戻せばよい。
【0046】
また、
図7は、濾布13の左側縁と右側縁の両方が幅方向中心寄りに変位している場合を示している。すなわち、濾布13の走行時における幅方向長さW´(直線距離)が最適長さWよりも短くなっている。この場合には、
図7に示すように濾布13の中心Cが正常な通過点O上に位置しているとしても、濾布13に全体的にヨレや撓み等が生じていることから、濾布13の走行状態には異常があるといえる。このとき、濾布13の左側縁は、左センサ装置20(L)の接触部材21から乖離しているため、左センサ装置20(L)の接触部材21の傾斜角度は正常範囲未満となる。その結果、左センサ装置20(L)では、接触部材21の横バー21cが第1センサ22aによって検知される。同様に、濾布13の右側縁も、右センサ装置20(R)の接触部材21から乖離しているため、右センサ装置20(R)の接触部材21の傾斜角度は正常範囲未満となる。その結果、右センサ装置20(R)でも、接触部材21の横バー21cが第1センサ22aによって検知される。このような場合には、左右のセンサ装置20(L,R)の検知信号に基づいて、濾布13の左側縁側と右側縁側に異常が発生し、濾布13の走行時の幅方向長さW´が全体的に最適長さWよりも短くなっていると判断できる。そこで、この検知情報に基づいて調整手段30を制御し、調整手段30によって濾布13の左側縁側と右側縁側を共に幅方向外側に引っ張って、濾布13の走行状態を正常に戻せばよい。
【0047】
続いて、
図8及び
図9を参照して、調整手段30の具体例について説明する。本実施形態では、調整手段30は、
図9に示されるように濾布13の幅方向左右両側に配置されており、それぞれが前述した検知手段20からの検知情報に基づいて、濾布13の走行状態を正常に戻すための調整動作を実行する。
【0048】
図8に示されるように、左右の調整手段30は、それぞれ表面ローラ31及び裏面ローラ32を有する。表面ローラ31は濾布13の表面側に位置し、裏面ローラ32は濾布13の裏面側に位置する。濾布13の走行状態を調整する際には、表面ローラ31と裏面ローラ32とで濾布13の側縁付近の部分を強く挟み込むことになる。
【0049】
また、各調整手段30は、接地面に固定されたローラ支持台33と、このローラ支持台33に対して固定され表面ローラ31を回転可能に支持する表面ローラ支持具34と、裏面ローラ32を回転可能に支持する裏面ローラ支持具35を有する。ただし、裏面ローラ支持具35は、ローラ支持台33に対して直接固定されておらず、このローラ支持台33と裏面ローラ支持具35の間には昇降機構36が介在している。昇降機構36は、例えば回転軸36aがローラ支持台33の一部に固定されたリンク機構となっており、その一端が裏面ローラ支持具35の端部と連結されている。このため、昇降機構36の回転軸36bに連結されているシリンダーロッドでZ方向に動かし、回転軸36aを中心に回動させると、その先に連結された裏面ローラ支持具35が裏面ローラ32とともに上下に昇降する。裏面ローラ32を上昇させると、表面ローラ31と裏面ローラ32との間に濾布13が強く挟み込まれる。濾布13はその長手方向(X軸方向)に走行しているため、表面ローラ31と裏面ローラ32が濾布13を挟み込むと、両者の間に摩擦力が生じ、濾布13の走行に伴って各ローラ31,32が回転を始める。一方で、裏面ローラ32を下降させると、表面ローラ31と裏面ローラ32とによる濾布13の挟み込みは解除される。この場合、特に裏面ローラ32は濾布13に接触しなくなり、各ローラ31,32と濾布13の間の摩擦力はゼロになるか弱くなるため、各ローラ31,32の回転は止まるか緩やかになる。
【0050】
また、
図9に示されるように、左右の調整手段30(L,R)において、表面ローラ31と裏面ローラ32は、それぞれの回転軸が濾布13の幅方向(Y軸方向)に対して斜めに傾くようにして、前述した表面ローラ支持具34や裏面ローラ支持具35によって支持されている。濾布13の幅方向に対する各ローラ31,32の傾斜角度θ
2は、例えば5~30度とすればよく、10~20度であることがより好ましい。また、各ローラ31,32は、濾布13の送り出し方向(
図9の黒矢印が示す方向)が、濾布13の幅方向の外側を向くように、それぞれの回転軸が斜めに傾けられている。このため、各ローラ31,32によって濾布13の側縁付近が表面と裏面から強く挟み込まれた状態で、この濾布13が一定方向に走行すると、各ローラ31,32の回転に伴って、濾布13の側縁部分を幅方向外側に向かって引っ張りながら誘導する力が発生する。例えば、左側の調整手段30(L)の各ローラ31,32だけで濾布13を挟み込むと、濾布13は左側に引っ張られることになり、反対に右側の調整手段30(R)の各ローラ31,32だけで濾布13を挟み込むと、濾布13は右側に引っ張られることになる。また、左右両方の調整手段30(L,R)の各ローラ31,32で同時に濾布13を挟み込むと、濾布13は左右両側に引っ張られる。
【0051】
このようにして、検知手段20によって検知された濾布13の異常状態に応じて、左右の調整手段30を独立して制御することにより、濾布13を自動的に正常な状態へと戻すことができる。具体的には、濾布13全体が左側に蛇行している場合には、右側の調整手段30(R)によって濾布13全体を右側に誘導すればよい。反対に、濾布13全体が右側に蛇行している場合には、左側の調整手段30(L)によって濾布13全体を左側に誘導すればよい。また、濾布13の左側縁側にヨレや撓み等が発生して濾布13の幅方向の長さが縮んでいる場合には、左側の調整手段30(L)によって濾布13の左側縁側を外側に向かって引っ張ればよい。反対に、濾布13の右側縁側にヨレや撓み等が発生して濾布13の幅方向の長さが縮んでいる場合には、右側の調整手段30(R)によって濾布13の右側縁側を外側に向かって引っ張ればよい。さらに、濾布13の左右の両側縁側にヨレや撓み等が発生している場合には、左右両方の調整手段30(L,R)によって濾布13全体を左右外側に向かって引っ張ればよい。これにより、本実施形態では、濾布13に発生したあらゆる走行状態の異常に対応することができる。従って、ベルトフィルタ1の安定した連続運転が可能となる。
【0052】
以上、本願明細書では、本発明の内容を表現するために、図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
【符号の説明】
【0053】
1…ベルトフィルタ 2…走行制御装置
11…タンク 12…脱水ドラム
13…濾布 14…ベントプーリ
15…テンションプーリ 16…シュート
17…洗浄装置 20…検知手段
20(L)…左センサ装置 20(R)…右センサ装置
21…接触部材 21a…回動軸
21b…縦バー 21c…横バー
22…センサ 22a…第1センサ
22b…第2センサ 22c…第3センサ
22d…第4センサ 23…筐体
23a…支持台 23b…センサ収納ケース
23c…透明カバー 23d…センサ支持具
23e…バー支持具 30…調整手段
31…表面ローラ 32…裏面ローラ
33…ローラ支持台 34…表面ローラ支持具
35…裏面ローラ支持具 36…昇降機構
36a…回転軸 36b…回転軸
SL…スラリー DC…脱水ケーキ