(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021679
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】電子基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/32 20060101AFI20250206BHJP
H05K 3/06 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
G03F7/32
H05K3/06 G
H05K3/06 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125574
(22)【出願日】2023-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】山田 晃平
【テーマコード(参考)】
2H196
5E339
【Fターム(参考)】
2H196AA25
2H196GA09
2H196GA10
2H196GA11
5E339AB02
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5E339GG10
(57)【要約】
【課題】一態様において、ハンドリング性が良好で、現像速度を向上できる現像剤を用いた電子基板の製造方法を提供する。
【解決手段】本開示は、一態様において、アルカリ剤(成分A)及びHLBが11以上15以下のノニオン性界面活性剤(成分B)を含有する現像剤を用いて厚み10μm以上100μm以下のドライフィルムレジストを現像する工程を含む、電子基板の製造方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ剤(成分A)及びHLBが11以上15以下のノニオン性界面活性剤(成分B)を含有する現像剤を用いて厚み10μm以上100μm以下のドライフィルムレジストを現像する工程を含む、電子基板の製造方法。
【請求項2】
前記現像剤に含まれる成分Aは、アルカリ金属炭酸塩である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記現像剤に含まれる全界面活性剤中のHLBが4超7以下のノニオン性界面活性剤(成分C)の含有量は、25質量%以下である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記現像剤は、HLBが4以下のノニオン性界面活性剤(成分D)を含まない、請求項1から3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記現像剤に含まれる成分Bは、HLBが11以上15以下のポリオキシエチレンアルキルエーテルである、請求項1から4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記現像剤中における成分Aの含有量と成分B及び成分Cの合計含有量との質量比A/(B+C)が1以上100以下である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項7】
前記現像剤が窒素含有化合物及びリン含有化合物を実質的に含まない、請求項1から6のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータや各種電子デバイスにおいては、低消費電力化、処理速度の高速化、小型化が進み、これらに搭載されるパッケージ基板などの配線は年々微細化が進んでいる。このような微細配線並びにピラーやバンプといった接続端子形成にはこれまでメタルマスク法が主に用いられてきたが、汎用性が低いことや配線等の微細化への対応が困難になってきたことから、他の新たな方法へと変わりつつある。
新たな方法の一つとして、ドライフィルムレジストをメタルマスクに代えて厚膜樹脂マスクとして使用する方法が知られている。
【0003】
通常、プリント基板等の基板上にレジストを塗布し、露光・現像によりパターンを形成し、次いで該レジストパターンをマスクとし非マスク領域の基板のエッチングを行うことで微細配線が形成される。
レジストの現像には、アルカリ性現像剤が広く用いられている。
例えば、特許文献1には、感光性樹脂組成物(液状レジスト)用の現像液として、水100質量部あたり0.01~20質量部のアルカリ金属炭酸塩、水100質量部あたり0.01~20質量部のアルカリ金属重炭酸塩、水100質量部あたり0.01~25質量部の特定の非イオン性界面活性剤を含む現像液が提案されている。
特許文献2には、感光性樹脂組成物(液状レジスト)用の現像液として、特定のアルキルグルコシド型非イオン性界面活性剤と、ポリオキシアルキレンエーテル型非イオン性界面活性剤とアルカリ剤を含有するアルカリ現像液が提案されている。
特許文献3には、液状感光性レジスト用の現像液として、塩基性化合物、HLBが0~4の非イオン性界面活性剤、HLBが6~20の非イオン性界面活性剤及び水を含むアルカリ現像液が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-209117号公報
【特許文献2】特開2006-259537号公報
【特許文献3】特開2001-66794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
厚み10μm以上のドライフィルムレジストを現像する場合、現像速度が不足しやすい傾向にある。
そのため、微細配線の形成には、厚み10μm以上のドライフィルムレジストのパターン形成に使用される現像剤の現像速度が重要となる。また、最適な現像条件を設定する上では現像剤の外観に濁りがなく、処理時の基板の様子を観察できるようなハンドリング性が必要になる。さらに、現像剤には、細線部の現像性に優れることも求められる。
【0006】
そこで、本開示は、一態様において、ハンドリング性が良好で、現像速度を向上できる現像剤を用いた電子基板の製造方法を提供する。本開示は、一態様において、ハンドリング性が良好で、現像速度を向上でき、さらに細線部の現像性に優れる現像剤を用いた電子基板の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、一態様において、アルカリ剤(成分A)及びHLBが11以上15以下のノニオン性界面活性剤(成分B)を含有する現像剤を用いて厚み10μm以上100μm以下のドライフィルムレジストを現像する工程を含む、電子基板の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、一又は複数の実施形態において、ハンドリング性が良好で現像速度を向上できる現像剤を用いることで、高品質の電子基板を効率よく製造できる。また、本開示によれば、一又は複数の実施形態において、ハンドリング性が良好で、現像速度を向上でき、さらに細線部の現像性に優れる現像剤を用いることで、高品質の電子基板を効率よく製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施例1の現像剤を用いて現像された細線部の外観の一例を示すイラスト図である。
【
図2】図は、比較例1(リファレンス)の現像剤を用いて現像された細線部の外観の一例を示すイラスト図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、厚み10μm以上100μm以下のドライフィルムレジストの現像処理にアルカリ剤(成分A)及び特定のHLBを有するノニオン性界面活性剤(成分B)を含有する現像剤を用いることで、現像速度を向上でき、ハンドリング性を向上できるという知見に基づく。
また、本開示は、上記現像剤が、さらに、細線部の現像性の向上が可能であるという知見に基づく。
【0011】
本開示は、一態様において、アルカリ剤(成分A)及びHLBが11以上15以下であるノニオン性界面活性剤(成分B)を含有する現像剤(以下、「本開示の現像剤」ともいう)を用いて厚み10μm以上100μm以下のドライフィルムレジストを現像する工程を含む、電子基板の製造方法(以下、「本開示の電子基板製造方法」ともいう)に関する。
【0012】
本開示によれば、一又は複数の実施形態において、ハンドリング性が良好で、現像速度を向上できる現像剤を用いることで、高品質の電子基板を効率よく製造できる。本開示において「ハンドリング性」とは、現像剤の外観の濁りが抑制され、処理時の基板の様子を観察しやすい性質のことをいう。
また、本開示によれば、一又は複数の実施形態において、細線部の現像性に優れる現像剤を用いることで、生産性の向上が可能となる。
【0013】
本開示の効果発現の作用メカニズムの詳細は不明な部分があるが、以下のように推定される。
本開示では、アルカリ剤(成分A)が、樹脂マスク(ドライフィルムレジスト)の未露光部に浸透して樹脂マスクに配合されているアルカリ可溶性樹脂の解離を促進し、更に解離によって生じる電荷の反発を起こすことによって樹脂マスクの乳化、可溶化を進行させて現像すると考えられる。
厚みのある樹脂マスク(例えば、厚み10~100μm)においては、露光硬化された樹脂マスクパターンの隙間に現像剤が濡れ広がりにくくなるために、現像速度が低下すると考えられる。しかし、本開示では、HLB11~15のノニオン性界面活性剤(成分B)が露光硬化された樹脂マスクパターンとの良好な相性を持つために吸着し、現像剤が濡れ広がりやすくなるために現像速度が向上すると考えられる。
また、一般的に、疎水的な界面活性剤はアルカリ剤(成分A)と組み合わせると濁りを呈することが多くなるが、本開示ではHLB11~15のノニオン性界面活性剤(成分B)を用いることで濁りのない良好なハンドリング性を達成することができる。
さらに、露光時の干渉や反射のために半硬化された樹脂マスク、特に細線部の樹脂マスクは現像残渣となりやすいが、本開示ではHLB11~15のノニオン性界面活性剤(成分B)が吸着して乳化を促進するために、現像残渣を低減し、現像精度、特に細線部の現像性を向上できると考えられる。
但し、本開示はこのメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
【0014】
本開示において、「レジスト」とは、光や電子線等によって現像液に対する溶解性等の物性が変化するものである。レジストは、光や電子線との反応方法から、ネガ型とポジ型に大きく分けられている。ネガ型レジストは、露光されると現像液に対する溶解性が低下する特性を有し、ネガ型レジストを含む層(以下「ネガ型レジスト層」ともいう)は、露光及び現像処理後に露光部が樹脂マスクとして使用される。ポジ型レジストは、露光されると現像液に対する溶解性が増大する特性を有し、ポジ型レジストを含む層(以下「ポジ型レジスト層」ともいう)は、露光及び現像処理後に露光部が除去され、未露光部が樹脂マスクとして使用される。このような特性を有する樹脂マスクを使用することで、金属配線、金属ピラーやハンダバンプといった回路基板の微細な接続部を形成することができる。
【0015】
[現像工程]
本開示の電子基板製造方法は、本開示の現像剤を用いて厚み10μm以上100μm以下のドライフィルムレジスト(被処理物)を現像する工程(以下、単に「現像工程」ともいう)を含む。前記現像工程は、一又は複数の実施形態において、本開示の現像剤を被処理物に接触させることを含む。前記現像工程は、一又は複数の実施形態において、本開示の現像剤を用いてドライフィルムレジストの少なくとも一部を除去することを含む。本開示の電子基板製造方法によれば、一又は複数の実施形態において、ハンドリング性が良好で、現像速度を向上できる現像剤を用いることで、高品質の電子基板を効率よく製造できる。また、本開示の電子基板製造方法によれば、一又は複数の実施形態において、ハンドリング性が良好で、現像速度を向上でき、さらに細線部の現像性に優れる現像剤を用いることで、高品質の電子基板を効率よく製造できる。
【0016】
本開示の現像剤を用いて被処理物を現像する方法、又は、本開示の現像剤を被処理物に接触させる方法としては、例えば、浸漬現像、攪拌現像、スプレー現像、パドル現像等が挙げられる。
【0017】
前記現像工程において、本開示の現像剤の現像力が発揮されやすい点から、被処理物に接触させる現像剤の温度としては、例えば、10~50℃が好ましい。本開示の現像剤を被処理物に接触させる時間としては、例えば、0.2~10分が好ましい。
【0018】
本開示の電子基板製造方法は、一又は複数の実施形態において、本開示の現像剤を被処理物に接触させた後、水でリンスし、乾燥する工程を含むことができる。リンス方法としては、例えば、流水リンスが挙げられる。乾燥方法としては、例えば、エアブロー乾燥が挙げられる。
本開示の電子基板製造方法は、一又は複数の実施形態において、本開示の現像剤を被処理物に接触させた後、水ですすぐ工程を含むことができる。
【0019】
[被処理物]
被処理物は、一又は複数の実施形態において、厚みが10μm以上100μm以下のドライフィルムレジストである。ドライフィルムレジストは、一又は複数の実施形態において、ネガ型ドライフィルムレジスト又はポジ型ドライフィルムレジストであり、本開示の現像剤の効果発現の点から、ネガ型ドライフィルムレジストが好ましい。ドライフィルムレジストの厚みは、一又は複数の実施形態において、10μm以上100μm以下であり、より好ましくは15μm以上60μm以下である。
被処理物としては、一又は複数の実施形態において、基板にラミネートされた厚み10μm以上100μ以下のドライフィルムレジストが挙げられる。基板にラミネートされた厚み10μm以上100μm以下のドライフィルムレジストは、一又は複数の実施形態において、部分的に露光処理されたドライフィルムレジスト、露光処理されていない(未露光)のドライフィルムレジスト等が挙げられる。基板としては、電子基板が挙げられる。電子基板としては、例えば、ガラスエポキシ多層基板、プリント基板、ウエハ、銅板、アルミニウム板等が挙げられる。
被処理物としては、例えば、厚みが10μm以上100μm以下のドライフィルムレジストを有する電子部品及びその製造中間物が挙げられる。電子部品としては、例えば、ガラスエポキシ多層基板、プリント基板、ウエハ、銅板及びアルミニウム板等の金属板から選ばれる少なくとも1つの部品が挙げられる。前記製造中間物は、電子部品の製造工程における中間製造物を含む。
【0020】
[現像剤]
本開示の現像剤は、一又は複数の実施形態において、アルカリ剤(成分A)及びHLBが11以上15以下のノニオン性界面活性剤を含有する。本開示の現像剤に含まれる成分について以下に説明する。
【0021】
<アルカリ剤(成分A)>
本開示の現像剤に含まれるアルカリ剤(以下、「成分A」ともいう)は、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
成分Aとしては、ハンドリング性、現像速度向上及び細線部の現像性向上の観点から、アルカリ金属炭酸塩が好ましい。アルカリ金属炭酸塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられ、同様の観点から、炭酸ナトリウムが好ましい。
【0022】
本開示の現像剤中の成分Aの含有量は、ハンドリング性、現像速度向上及び細線部の現像性向上の観点から、0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更に好ましい。同様の観点から、本開示の現像剤中の成分Aの含有量は、0.1質量%以上5質量%以下が好ましく、0.3質量%以上3質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上2質量%以下が更に好ましい。成分Aが2種以上の組合せである場合、成分Aの含有量はそれらの合計含有量をいう。
【0023】
本開示において「現像剤中の各成分の含有量」とは、現像時、すなわち、現像剤の現像処理への使用を開始する時点での各成分の含有量をいう。
本開示の現像剤中の各成分の含有量は、一又は複数の実施形態において、本開示の現像剤中の各成分の配合量とみなすことができる。
【0024】
<HLB11以上15以下のノニオン性界面活性剤(成分B)>
本開示の現像剤に含まれるHLBが11以上15以下のノニオン性界面活性剤(以下、「成分B」ともいう)は、1種でもよいし、2種以上の組合せもよい。
【0025】
成分BのHLBは、ハンドリング性、現像速度向上及び細線部の現像性向上の観点から、11以上であって、11.5以上が好ましく、12以上がより好ましく、そして、同様の観点から、15以下であって、14以下が好ましく、13以下がより好ましい。同様の観点から、成分BのHLBは、11以上15以下であって、11.5以上14以下が好ましく、12以上13以下がより好ましい。本開示において、界面活性剤のHLBは、グリフィン法により求められる値である。
【0026】
成分Bとしては、例えば、HLBが11以上15以下のポリオキシエチレンアルキルエーテル、HLBが11以上15以下のポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルが挙げられる。HLBが11以上15以下のポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレン(6)ラウリルエーテル(HLB:12.1)が挙げられる。HLBが11以上15以下のポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(HLB:12.8)が挙げられる。
これらのなかでも、ハンドリング性、現像速度向上及び細線部の現像性向上の観点から、HLBが11以上15以下のポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましく、ポリオキシエチレン(6)ラウリルエーテル(HLB:12.1)がより好ましい。( )内の数値はエチレンオキシド(EO)の平均付加モル数を表す。
【0027】
本開示の現像剤中の成分Bの含有量は、ハンドリング性、現像速度向上及び細線部の現像性向上の観点から、0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更に好ましい。同様の観点から、本開示の現像剤中の成分Bの含有量は、0.1質量%以上5質量%以下が好ましく、0.3質量%以上3質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上2質量%以下が更に好ましい。成分Bが2種以上の組合せである場合、成分Bの含有量はそれらの合計含有量をいう。
【0028】
本開示の現像剤中における成分Aと成分Bとの質量比A/B(成分Aの含有量/成分Bの含有量)は、現像速度向上及び細線部の現像性向上の観点から、100以下が好ましく、50以下がより好ましく、そして、同様の観点から、20以上が好ましく、1以上がより好ましく、1.5以上が更に好ましい。同様の観点から、本開示の現像剤中における質量比A/Bは、1以上100以下が好ましく、1以上50以下がより好ましく、1.5以上20以下が更に好ましい。
【0029】
<HLB4超7以下のノニオン性界面活性剤(成分C)>
本開示の現像剤は、一又は複数の実施形態において、HLBが4超7以下のノニオン性界面活性剤(以下、「成分C」ともいう)をさらに含有することができる。成分Cは1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
【0030】
成分CのHLBは、現像速度向上の観点から、7以下であって、6.8以下が好ましく、6.6以下がより好ましく、そして、現像速度向上及びハンドリング性の観点から、4超であって、5以上がより好ましい。同様の観点から、成分CのHLBは、4超以上7以下であって、5以上6.8以下が好ましく、5以上6.6以下がより好ましい。
【0031】
成分Cとしては、例えば、HLBが4超7以下のポリオキシエチレンアルキルエーテルが挙げられる。HLBが4超7以下のポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル(HLB:6.4)が挙げられる。( )内の数値はEOの平均付加モル数を表す。
【0032】
本開示の現像剤中の成分Cの含有量は、ハンドリング性の観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、そして、ハンドリング性の観点から、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.2質量%以下が更に好ましい。同様の観点から、本開示の現像剤中の成分Cの含有量は、0.01質量%以上1質量%以下が好ましく、0.05質量%以上0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上0.2質量%以下が更に好ましい。成分Cが2種以上の組合せである場合、成分Cの含有量はそれらの合計含有量をいう。
【0033】
本開示の現像剤に含まれる全界面活性剤(100質量%)中の成分Cの含有量は、ハンドリング性の観点から25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下が更に好ましく、0質量%(すなわち、含まないこと)が更に好ましい。
【0034】
本開示の現像剤中における成分Aの含有量と成分B及び成分Cの合計含有量との質量比A/(B+C)は、ハンドリング性の観点から、1以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2以上がより好ましく、5以上が更に好ましく、そして、ハンドリング性の観点から、100以下が好ましく、50以下がより好ましく、20以下が更に好ましい。同様の観点から、本開示の現像剤中における質量比A/(B+C)は、1以上100以下が好ましく、1.5以上100以下がより好ましく、2以上50以下がより好ましく、5以上20以下が更に好ましい。
【0035】
<HLB4以下のノニオン性界面活性剤(成分D)>
本開示の現像剤は、一又は複数の実施形態において、HLBが4以下のノニオン性界面活性剤(以下、「成分D」ともいう)を含むものとすることができ、その他の一又は複数の実施形態において、成分Dを含まないものとすることができる。成分Dは1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
【0036】
成分Dとしては、例えば、HLBが4以下のソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。HLBが4以下のソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、ソルビタントリステアレート(HLB:2.1)が挙げられる。
【0037】
本開示の現像剤中の成分Dの含有量は、ハンドリング性の観点から、0.5質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下が更に好ましく、0質量%(すなわち、含まないこと)が更に好ましい。
【0038】
<水(成分E)>
本開示の現像剤は、一又は複数の実施形態において、水(以下、「成分E」ともいう)をさらに含有する。成分Eとしては、一又は複数の実施形態において、イオン交換水、RO水、蒸留水、純水、超純水等が挙げられる。
【0039】
本開示の現像剤中の成分Eの含有量は、成分A、成分B及び任意成分(成分C、成分D、後述するその他の成分)を除いた残余とすることができる。
本開示の現像剤中の成分Eの含有量は、現像速度向上、細線部の現像性向上、及びハンドリング性の観点から、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、97質量%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、99.9質量%以下が好ましく、99.5質量%以下がより好ましく、99質量%以下が更に好ましい。同様の観点から、本開示の現像剤中の成分Eの含有量は、90質量%以上99.9質量%以下が好ましく、95質量%以上99.5質量%以下がより好ましく、97質量%以上99質量%以下が更に好ましい。
【0040】
<その他の成分>
本開示の現像剤は、一又は複数の実施形態において、本開示の効果を損なわない範囲で、必要に応じてその他の成分をさらに含有することができる。その他の成分としては、通常の現像剤に用いられうる成分を挙げることができ、例えば、成分B~D以外の界面活性剤、安定化剤、防食剤等が挙げられる。
【0041】
本開示の現像剤は、一又は複数の実施形態において、アルキル化オリゴ糖を実質的に含まないものとすることができる。例えば、本開示の現像剤中のアルキル化オリゴ糖の含有量は、5質量%未満が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下が更に好ましく、0質量%(すなわち、含まないこと)が更に好ましい。
本開示の現像剤は、一又は複数の実施形態において、アルカリ金属重炭酸塩を実質的に含まないものとすることができる。例えば、本開示の現像剤中のアルカリ金属重炭酸塩の含有量は、0.01質量%未満が好ましく、0質量%(すなわち、含まないこと)がより好ましい。
本開示の現像剤は、一又は複数の実施形態において、アルキルグルコシド型非イオン性界面活性剤を実質的に含まないものとすることができる。例えば、本開示の現像剤中のアルキルグルコシド型非イオン界面活性剤の含有量は、0.01質量%未満が好ましく、0質量%(すなわち、含まないこと)がより好ましい。
【0042】
本開示の現像剤は、一又は複数の実施形態において、排水処理負荷を低減し、排水域の富栄養化を抑制する観点、及び毒性を回避して安全性を向上する観点から、窒素含有化合物及びリン含有化合物を実質的に含まないことが好ましい。本開示において「窒素含有化合物及びリン含有化合物を実質的に含まない」とは、本開示の現像剤中の窒素含有化合物及びリン含有化合物の合計含有量が0.1質量%未満であることをいう。本開示の現像剤中の窒素含有化合物及びリン含有化合物の合計含有量は、排水処理負荷を低減し、排水域の富栄養化を抑制する観点から、0.05質量%以下が好ましく、0.01質量%以下がより好ましく、0質量%(すなわち、含まないこと)が更に好ましい。
窒素含有化合物としては、例えば、アミン及びその塩、アンモニア、並びにアンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種又は2種以上の組合せが挙げられる。前記アミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアミノアルコールが挙げられる。前記アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等の4級アンモニウム塩を挙げることができる。
リン含有化合物としては、例えば、リン酸及びその塩、ピロリン酸、ポリリン酸、メタリン酸等の縮合リン酸及びその塩などの無機リン酸、並びに有機リン酸、リン酸エステルから選ばれる少なくとも1種又は2種以上の組合せが挙げられる。
【0043】
[現像剤の製造方法]
本開示の現像剤は、一又は複数の実施形態において、成分A、成分B及び必要に応じて上述の任意成分(成分C、成分D、成分E、その他の成分)を公知の方法で配合することにより製造できる。例えば、本開示の現像剤は、少なくとも前記成分A及び成分Bを配合してなるものとすることができる。したがって、本開示は、少なくとも成分A及び成分Bを配合する工程を含む、現像剤の製造方法に関する。本開示において「配合する」とは、成分A、成分B、及び必要に応じて上述した任意成分(成分C、成分D、成分E、その他の成分)を同時に又は任意の順に混合することを含む。本開示の現像剤の製造方法において、各成分の好ましい配合量は、上述した本開示の現像剤の各成分の好ましい含有量と同じとすることができる。
【0044】
本開示の現像剤の実施形態は、全ての成分が予め混合された状態で市場に供給される、いわゆる1剤型であってもよいし、使用時に混合される、いわゆる2剤型であってもよい。
本開示の現像剤は、その保存安定性が損なわれない範囲で濃縮された状態で保存及び供給されてもよい。本開示の現像剤の濃縮物は、使用時に各成分が上述した含有量(すなわち、現像時の含有量)になるよう水(成分E)を用いて適宜希釈して使用することができる。希釈割合は、例えば、3~100倍とすることができる。
本開示の現像剤は、一又は複数の実施形態において、成分Aを含む剤と、成分A以外の剤を濃縮状態で含む剤の2液型現像剤である。
本開示の現像剤は、一又は複数の実施形態において、成分Aを含む剤(第1剤)と、成分Bを含む剤(第2剤)とを相互に混合されない状態で含み、第1液と第2液とは使用時に混合されるもの(2液型現像剤)であってもよい。第1剤及び第2剤の各々には、必要に応じて任意成分(成分C、成分D、成分E、その他の成分)が含まれていてもよい。第1剤と第2剤とが混合された後、必要に応じて水(成分E)を用いて希釈されてもよい。
【0045】
本開示の現像剤のpHは、ハンドリング性、現像速度向上及び細線部の現像性向上の観点から、10以上が好ましく、10.5以上がより好ましく、11以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、13以下が好ましく、12.5以下がより好ましく、12以下が更に好ましい。同様の観点から、本開示の現像剤のpHは、10以上13以下が好ましく、10.5以上12.5以下がより好ましく、11以上12以下が更に好ましい。
【実施例0046】
以下に、実施例により本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0047】
1.実施例1~7及び比較例1~5の現像剤の調製
表1~2に示す各成分を表1~2に記載の配合量(質量%、有効分)で配合し、それを攪拌して混合することにより、実施例1~7及び比較例1~5の現像剤を調製した。
【0048】
実施例1~7及び比較例1~5の現像剤の調製には、下記のものを使用した。
(成分A)
炭酸ナトリウム[富士フィルム和光純薬株式会社製]
(成分B)
ポリオキシエチレン(6)ラウリルエーテル[花王株式会社製、EO付加モル数:6、HLB:12.1]
ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル[花王株式会社製、HLB:12.8]
(成分C)
ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル[花王株式会社製、EO付加モル数:2、HLB:6.4]
(成分D)
ソルビタントリステアレート[花王株式会社製、HLB:2.1]
(その他の成分)
ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル[花王株式会社製、EO付加モル数:4、HLB:9.7]
ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル[花王株式会社製、EO付加モル数:23、HLB:16.9]
(成分E)
水[オルガノ株式会社製純水装置G-10DSTSETで製造した1μS/cm以下の純水]
【0049】
2.現像剤の評価
調製した実施例1~7及び比較例1~5の現像剤について下記評価を行った。
【0050】
[現像速度評価用テストピースI]
テストピースIは、120mm×120mmのサイズで、ガラスエポキシ多層基板の表面に厚さ60μmのネガ型ドライフィルムレジストである樹脂マスク層を有し、仕上がりパターン(ドライフィルムレジストパターン)のライン/スペースが100μm/100μmになるように露光硬化されている。
[細線現像性評価用テストピースII]
テストピースIIは、120mm×120mmのサイズで、ガラスエポキシ多層基板の表面に厚さ60μmのネガ型ドライフィルムレジストである樹脂マスク層を有し、仕上がりパターン(ドライフィルムレジストパターン)のライン/スペースが60μm/60μmになるように露光硬化されている。
【0051】
[現像速度の評価]
30℃、600rpmの撹拌条件下でテストピースIを現像剤(実施例1~7、比較例1~5)に浸漬(浸漬現像)しながら目視観察を行い、露光硬化されていない部分の樹脂マスク(ドライフィルムレジスト)が現像されてテストピースIの下地が見えるまでの時間を測り取った。比較例1の現像剤(炭酸ナトリウム1%水溶液)をリファレンスとして、下記評価基準に基づき実施例1~7及び比較例2~4の現像速度を評価した。比較例1(リファレンス)の現像時間は2分であった。結果を表1~2に示した。
<評価基準>
A:現像に要する時間がリファレンスに対して15%以上短縮される
B:現像に要する時間がリファレンスに対して10%以上15%未満短縮される
C:現像に要する時間がリファレンスに対して5%以上10%未満短縮される
D:現像に要する時間がリファレンスに対して5%未満短縮、または延長される
【0052】
[ハンドリング性の評価]
現像剤(実施例1~7、比較例1~5)を用いて上記現像速度の評価を行う際の目視観察のしやすさ(ハンドリング性)を、下記評価基準に基づき評価した。ここで、目視観察のしやすさとは、現像剤中の異物(沈殿物等)が観察しやすいかどうか、及び、現像具合が見えやすいかどうか(現像後の基板の様子を観察しやすいかどうか)を示す。結果を表1~2に示した。
<評価基準>
A:現像剤が透明で、沈殿等の異物の有無、現像具合がはっきりと見える
B:現像剤がやや濁っているが、沈殿等の異物の有無、現像具合が見える
C:現像剤が濁っているが、沈殿等の異物の有無、現像具合がやや見える
D:現像剤が濁っており、沈殿等の異物の有無、現像具合が極めて見えにくい
【0053】
[細線現像性の評価]
5Lステンレスビーカーに各現像剤を3kg添加した後、30℃に加温し、1流体ノズル(充円錐形)J020(株式会社いけうち製)をスプレーノズルとして取り付けたボックス型スプレー洗浄機にて循環しながら、テストピースIIに均一にスプレーが当たるようにノズルを稼働させて、テストピースIIを現像時間(2分)の2倍の時間(4分)スプレー(圧力:0.15MPa、スプレー距離:11cm)した。そして、水を30秒間かけ流してリンスを行った後、窒素ブローにて乾燥した。現像後のドライフィルムレジストパターンの細線部の裾(細線部と基板との境界部分)を走査電子顕微鏡で観察しやすくするため、下記方法により導電膜(Pt-Pd)を蒸着した。その後に、走査電子顕微鏡を用いて現像されたドライフィルムレジストパターンの細線部を観察し、比較例1(炭酸ナトリウム1%水溶液)をリファレンスとして、下記評価基準に基づき実施例1、3及び比較例5の細線現像性を評価した。結果を表2に示した。
導電膜の蒸着方法:HITACH製のE-1030(イオンスパッタ装置)を用いて、イオン電流15mA、2分間の処理を行うことで導電膜を蒸着した。
<評価基準>
A:ドライフィルムレジストパターンの細線部の裾の現像残渣がリファレンスよりも明らかに少ない
B:ドライフィルムレジストパターンの細線部の裾の現像残渣がリファレンスよりも少ない
C:ドライフィルムレジストパターンの細線部の裾の現像残渣がリファレンスよりもやや少ない
D:ドライフィルムレジストパターンの細線部の裾の現像残渣がリファレンスと同等、または、多い
【0054】
ここで、
図1に実施例1の現像剤を用いて現像されたドライフィルムレジストパターンの細線部1の外観の一例を示す。
図2に比較例1(炭酸ナトリウム1%水溶液)を用いて現像されたドライフィルムレジストパターンの細線部1の外観の一例を示す。
比較例1(炭酸ナトリウム1%水溶液、リファレンス)の現像剤を用いて現像した場合、
図2に示されるように、基板表面2上に現像後の細線部1の裾に現像残渣3(裾の広がり、裾残り)が多く発生していた。一方、実施例1の現像剤を用いて現像した場合、
図1に示されるように、基板表面2上に現像後の細線部1の裾に発生する現像残渣3がリファレンス(
図1)に比べて少なく、細線部の現像性が向上(すなわち、現像精度が向上)していることが分かった。
【0055】
【0056】
【0057】
表1に示すとおり、アルカリ剤(成分A)及びHLB11~15のノニオン性界面活性剤(成分B)を含む現像剤を用いた実施例1~7は、成分Aを含み、成分Bを含まない現像剤を用いた比較例1、成分Bを含み、成分Aを含まない現像剤を用いた比較例2、成分Aを含み、成分B以外のノニオン性界面活性剤を含む現像剤を用いた比較例3~4に比べて、現像速度が高く、かつ、ハンドリング性に優れていることがわかった。
また、表2に示すとおり、アルカリ剤(成分A)及びHLB11~15のノニオン性界面活性剤(成分B)を含む現像剤を用いた実施例1、3は、成分Aを含み、成分Bを含まない現像剤を用いた比較例1、成分Aを含み、成分B以外のノニオン性界面活性剤を含む現像剤を用いた比較例5に比べて、現像速度が高く、かつ、ハンドリング性及び細線部の現像性に優れていることがわかった。
本開示によれば、ハンドリング性が良好で、現像速度を向上できる現像剤を用いることで、製造される電子基板の性能・信頼性の向上が可能となり、電子基板の生産性を向上できる。