(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021687
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】駆動用バッテリの搭載構造
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20190101AFI20250206BHJP
B62D 21/02 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
B60K1/04 Z ZHV
B62D21/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125585
(22)【出願日】2023-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】521537852
【氏名又は名称】ダイムラー トラック エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100176946
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 智恵
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀田 誠
【テーマコード(参考)】
3D203
3D235
【Fターム(参考)】
3D203AA13
3D203AA31
3D203AA33
3D203AA34
3D203BA03
3D203BA06
3D203BA07
3D203CA25
3D203CA56
3D203CA58
3D203CB09
3D203CB40
3D203DB05
3D235AA06
3D235BB06
3D235BB17
3D235CC14
3D235DD37
3D235EE64
3D235FF02
3D235FF06
3D235FF07
3D235HH26
(57)【要約】
【課題】大型化された駆動用バッテリの搭載性を確保し、且つ、側突の衝撃力を緩和する。
【解決手段】左右サイドレール21を備える電動車両3において左右サイドレール21の間に配置された駆動用バッテリ4の搭載構造1であって、サイドレール21の車幅方向D2外側に備えられた一対の第一ブラケット30と、一対の第一ブラケット30から車高方向D3に沿って下方へ延出するとともに、駆動用バッテリ4及びサイドレール21に対して車幅方向D2外側に配置された一対の第二ブラケット31と、一対の第二ブラケット31から車幅方向D2内側に延び且つ駆動用バッテリ4よりも車高方向D3下方に位置し、駆動用バッテリ4を下方から支持する第三ブラケット32と、駆動用バッテリ4と第二ブラケット31との間に配置されており、駆動用バッテリ4の側面を車幅方向D2外側から覆う面状領域を有する一対の衝撃緩和部材33を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右のサイドレールを備える電動車両において前記左右のサイドレールの間に配置された駆動用バッテリの搭載構造であって、
前記左右のサイドレールの車幅方向外側にそれぞれ備えられた一対の第一ブラケットと、
前記一対の第一ブラケットからそれぞれ車高方向に沿って下方へ延出するとともに、前記駆動用バッテリ及び前記サイドレールに対して車幅方向外側に配置された一対の第二ブラケットと、
前記一対の第二ブラケットから車幅方向内側に延び且つ前記駆動用バッテリよりも車高方向下方に位置し、前記駆動用バッテリを下方から支持する第三ブラケットと、
前記駆動用バッテリの車幅方向両側において前記駆動用バッテリと前記第二ブラケットとの間に配置されており、前記駆動用バッテリの側面を車幅方向外側から覆う面状領域を有する一対の衝撃緩和部材と、を備えた
ことを特徴とする駆動用バッテリの搭載構造。
【請求項2】
前記左右サイドレールにおいて、少なくとも前記駆動用バッテリの配置された領域は、車長方向及び車高方向に沿う板状のウェブ部と前記ウェブ部の上縁から車幅方向内側へ延出した上フランジ部とを有する断面L字型に形成されたL字部をなす
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動用バッテリの搭載構造。
【請求項3】
前記衝撃緩和部材は、前記L字部における前記ウェブ部で形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の駆動用バッテリの搭載構造。
【請求項4】
前記衝撃緩和部材は、前記サイドレールに取り付けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動用バッテリの搭載構造。
【請求項5】
前記L字部を補強するスティフナが前記サイドレールに取り付けられており、
前記衝撃緩和部材は、前記サイドレールに取り付けられた前記スティフナで形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の駆動用バッテリの搭載構造。
【請求項6】
前記左右のサイドレール間には、車幅方向に延びて前記サイドレール同士を連結するクロスメンバが架設されており、
前記衝撃緩和部材は、前記クロスメンバに取り付けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動用バッテリの搭載構造。
【請求項7】
前記第一ブラケットは、前記第二ブラケットよりも車幅方向外側へ突出して設けられている
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の駆動用バッテリの搭載構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、トラック等の大型の電動車両に用いて好適な駆動用バッテリの搭載構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、環境への負荷を低減する観点から、乗用車等の小型車両において、駆動用バッテリの電力をモータに供給することで走行する電気自動車やハイブリッド自動車や燃料電池車等の電動車両の開発が進んでいる。さらに、近年では、トラック等の大型車両の分野においても、電動車両の開発が行われている(例えば特許文献1参照)。
特許文献1の電動車両では、シャシフレームのうち左右一対のサイドレール間に挟まれるようにバッテリボックスが配設されており、このバッテリボックスに駆動用バッテリが搭載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、トラック等の大型の電動車両では、一回の充電で走行できる距離を延ばすために駆動用バッテリの大型化や複数の駆動用バッテリを搭載することが検討されている。
上記特許文献1のように左右のサイドレール間に挟まれるように駆動用バッテリが搭載された構造において駆動用バッテリを大型化する場合、駆動用バッテリがサイドレールに干渉するため車幅方向へ拡幅することはできず、下方に延長することになる。
しかし、駆動用バッテリを下方に延長した場合、駆動用バッテリ下部がサイドレールよりも下方に延出してしまう。この場合、自車両に他車両が側突した場合、他車両が駆動用バッテリに直接接触する虞があり、駆動用バッテリに加わる衝撃力が大きくことが考えられる。
【0005】
よって、左右のサイドレール間に駆動用バッテリを搭載する従来の技術では、駆動用バッテリを大型化された場合の搭載性の確保と側面衝突への対策とについて改善の余地があった。
本件の駆動用バッテリの搭載構造は、大型化された駆動用バッテリの搭載性を確保しつつ側面衝突による衝撃力を緩和できるようにすることを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本件は上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現できる。
【0007】
(1)本適用例に係る駆動用バッテリの搭載構造は、左右のサイドレールを備える電動車両において前記左右のサイドレールの間に配置された駆動用バッテリの搭載構造であって、前記左右のサイドレールの車幅方向外側にそれぞれ備えられた一対の第一ブラケットと、前記一対の第一ブラケットからそれぞれ車高方向に沿って下方へ延出するとともに、前記駆動用バッテリ及び前記サイドレールに対して車幅方向外側に配置された一対の第二ブラケットと、前記一対の第二ブラケットから車幅方向内側に延び且つ前記駆動用バッテリよりも車高方向下方に位置し、前記駆動用バッテリを下方から支持する第三ブラケットと、前記駆動用バッテリの車幅方向両側において前記駆動用バッテリと前記第二ブラケットとの間に配置されており、前記駆動用バッテリの側面を車幅方向外側から覆う面状領域を有する一対の衝撃緩和部材と、を備えている。
【0008】
この駆動用バッテリの搭載構造によれば、駆動用バッテリを下方から支持する第三ブラケットが第一ブラケット及び第二ブラケットによりサイドレールの下方に設けられているので、サイドレールの下方に駆動用バッテリの搭載スペースを確保しやすい。よって、車高方向の寸法を大型化した駆動用バッテリの搭載性を高めることができる。
また、衝撃緩和部材により駆動用バッテリの側面を側突された場合の衝撃を緩和することができる。
以上より、この駆動用バッテリの搭載構造では、大型化された駆動用バッテリの搭載性を確保しつつ側面衝突による衝撃力を緩和することができる。
【0009】
(2)適用例に係る駆動用バッテリの搭載構造において、前記左右サイドレールにおいて、少なくとも前記駆動用バッテリの配置された領域は、車長方向及び車高方向に沿う板状のウェブ部と前記ウェブ部の上縁から車幅方向内側へ延出した上フランジ部とを有する断面L字型に形成されたL字部をなすことが好ましい。
この場合、サイドレールがL字部を有することで、全体がコ字型断面をなすサイドレールに比べて、サイドレール間に搭載スペースを確保しやすくなる。
(3)また、適用例に係る駆動用バッテリの搭載構造において、前記衝撃緩和部材は、前記L字部における前記ウェブ部で形成されていることが好ましい。この場合、サイドレールの一部を衝撃緩和部材として利用できる。よって、衝撃緩和部材を別部材で設ける構造に比べて構造がシンプルである。
【0010】
(4)また、適用例に係る駆動用バッテリの搭載構造において、前記衝撃緩和部材は、前記サイドレールに取り付けられていることが好ましい。
(5)また、適用例に係る駆動用バッテリの搭載構造において、前記L字部を補強するスティフナが前記サイドレールに取り付けられており、前記衝撃緩和部材は、前記サイドレールに取り付けられた前記スティフナで形成されていることが好ましい。
上記(4),(5)の駆動用バッテリの搭載構造によれば、例えば、サイドレールでは緩和しきれない衝撃力をサイドレールとは別部材である衝撃緩和部材で緩和することができる。
【0011】
(6)また、適用例に係る駆動用バッテリの搭載構造において、前記左右のサイドレール間には、車幅方向に延びて前記サイドレール同士を連結するクロスメンバが架設されており、前記衝撃緩和部材は、前記クロスメンバに取り付けられていてもよい。この場合も、上記の(1)の駆動用バッテリの搭載構造と同様の効果が得られる。
(7)また、適用例に係る駆動用バッテリの搭載構造において、前記第一ブラケットは、前記第二ブラケットよりも車幅方向外側へ突出して設けられていることが好ましい。この場合、側突に対して第一ブラケットも衝撃緩和機能を果たす。よって、側面衝突による衝撃力をより緩和することができる。
【発明の効果】
【0012】
本件の駆動用バッテリの搭載構造によれば、大型化された駆動用バッテリの搭載性を確保しつつ側面衝突による衝撃力を緩和できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】適用例に係る駆動用バッテリの搭載構造を、駆動用バッテリが車体へ組み付けられた状態で示す斜視図である。
【
図2】
図1のバッテリの搭載構造を
図1の矢印Aから視た説明図である。
【
図3】適用例に係るバッテリの搭載構造の変形例の説明図である。
【
図4】適用例に係るバッテリの搭載構造の変形例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照して、本件の実施形態について説明する。以下の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。下記の実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。また、必要に応じて取捨選択でき、あるいは適宜組み合わせられる。
【0015】
[1.構成]
図1は、本実施形態に係る駆動用バッテリ4の搭載構造1(単に、搭載構造1ともいう)を、駆動用バッテリ4が電動車両3へ組み付けられた状態で示す斜視図である。
図2は、
図1の矢印Aから視た説明図である。なお、
図1及び
図2では、電動車両3の一部を省略している。
図1に示すように、搭載構造1は、車体の骨格をなすラダーフレーム2を備えた電動車両3に対し、駆動用バッテリ4を組み付けるために設けられている。電動車両3は、駆動用バッテリパック(駆動用バッテリ4)の電力を図示しない電動モータに供給することで走行する車両であり、例えば電動トラックである。なお、電動車両3には、内燃機関を装備しない純粋な電気自動車のほかに、駆動源又は発電用の内燃機関を装備したハイブリッド車や燃料電池車も電動車両に含むものとする。
【0016】
以下、電動車両3の前後方向を車長方向D1ともいい、電動車両3の左右方向を車幅方向D2ともいう。また、前後方向と左右方向とのいずれにも直交する上下方向を車高方向D3ともいう。図面では、前方を「FR」で示し、後方を「RR」で示し、左方を「LH」で示し、右方を「RH」で示し、上方を「UP」で示し、下方を「DW」で示す。
【0017】
ラダーフレーム2は、電動車両3の骨格をなす部材であって、高い剛性及び強度を有する。ラダーフレーム2は、車長方向D1に延びる一対のサイドレール21L,21R(左右を区別しない場合は、符号「21」で示す)と、車幅方向D2に延びてサイドレール21同士を連結する複数のクロスメンバ22とを含む。
一対のサイドレール21は、車幅方向D2に互いに離間して配置される。複数のクロスメンバ22は、一対のサイドレール21の間に架設されており、車長方向D1に互いに離間して複数配置される。
【0018】
駆動用バッテリ4は、電動車両3の電動モータに電力を供給するための高電圧バッテリパックである。
図1の電動車両3において、駆動用バッテリ4は、搭載構造1を介して、一対のサイドレール21L,21R間に配置されている。また、上方から視て駆動用バッテリ4の上側且つ第一ブラケット30が車幅方向外側に配置される位置に、二つのクロスメンバ22が配置されている。
図1の駆動用バッテリ4は、直方体状をなし、左右両側面のそれぞれがサイドレール21L,21Rに対して車幅方向D2内側に配置されている。なお、駆動用バッテリ4の形状は、特に限定されない。
【0019】
この駆動用バッテリ4は、一回の充電で走行できる距離を延ばすために大型化されている。具体的に言えば、
図1のように一対のサイドレール21L,21R間に配置された駆動用バッテリ4は、車高方向の寸法を下方へ延長することで大型化を図っている。なお、
図1のように一対のサイドレール21L,21R間に配置された駆動用バッテリ4では、サイドレール21に干渉するため車幅方向D2へ拡幅することはできず、また、荷箱やボデー等の上部構造に干渉するため上方へ延長することができない。
【0020】
この搭載構造1は、駆動用バッテリ4を一対のサイドレール21L,21R間で支持するために第一ブラケット30と第二ブラケット31と第三ブラケット32とを有し、駆動用バッテリ4側面への衝突対策として衝撃緩和部材33を有している。すなわち、搭載構造1は、駆動用バッテリ4を電動車両3に搭載する機能と、搭載された駆動用バッテリ4に対する側突(側面衝突)プロテクト機能とを兼ね備えている。
【0021】
第一ブラケット30は、左右のサイドレール21L,21Rの車幅方向D2外側に設けられており、第二ブラケット31と第三ブラケット32と(搭載構造1)を、車体側のサイドレール21L,21Rに繋ぐための固定部材である。
図1の搭載構造1では、左右のサイドレール21L,21Rの車幅方向D2外側のそれぞれに取り付けられた左右一対の第一ブラケット30L,30Rが、二つずつ(合計四つ)設けられている。なお、左右の第一ブラケット30L,30Rを区別しない場合は、符号「30」で示す。
【0022】
第二ブラケット31は、第一ブラケット30から車高方向に沿って下方へ延出するとともに駆動用バッテリ4及びサイドレール21に対して車幅方向D2外側に配置されており、第一ブラケット30と第三ブラケット32とを繋ぐために設けられた連結部材である。具体的には、第二ブラケット31は、車高方向に沿って延在する板状部材からなり、その上端において第一ブラケット30に固定されるとともに、その下端において第三ブラケット32に固定されている。
図1の搭載構造1では左右一対の第二ブラケット31L,31Rが、二つずつ(合計四つ)設けられている。なお、左右の第二ブラケット31L,31Rを区別しない場合は、符号「31」で示す。
【0023】
第三ブラケット32は、一対の第二ブラケット31L,31Rのそれぞれから車幅方向D2内側に延び且つ駆動用バッテリ4よりも車高方向下方に位置し、駆動用バッテリ4を下方から支持する載置台(バッテリーケース)である。
図1の第三ブラケット32は、車幅方向D2及び車長方向D1に沿って面状に延在する載置面32Aを有し、載置面32A上に駆動用バッテリ4が載置される。具体的には、
図1及び
図2に示す載置面32Aは、駆動用バッテリ4の下面よりも面積の広い矩形状をなし、載置面32Aにより駆動用バッテリ4の下面全体が支持される。
【0024】
図1の搭載構造1では、第三ブラケット32は、前側及び後側のそれぞれの左右両側(つまり四隅)で第二ブラケット31に固定されている。すなわち、第三ブラケット32は、第一ブラケット30及び第二ブラケット31により、左右のサイドレール21L,21Rに対して下方に吊り下げられるように取り付けられている。第一ブラケット30及び第二ブラケット31は、この第三ブラケット32を介して駆動用バッテリ4を支持するバッテリーサポートと言える。
【0025】
上記の搭載構造1は、サイドレール21L,21Rに対して下方に吊り下げられた第三ブラケット32に駆動用バッテリ4を載置する構造であるため、駆動用バッテリ4の車幅方向D2の側面への衝突対策として衝撃緩和部材33を有している。
衝撃緩和部材33は、駆動用バッテリ4の車幅方向D2の両側において駆動用バッテリ4と第二ブラケット31の間に配置されており、駆動用バッテリ4の側面を車幅方向D2外側から覆う面状領域を有する。搭載構造1には、駆動用バッテリ4の車幅方向D2の両側に左右一対の衝撃緩和部材33L,33Rが設けられている。なお、左右の衝撃緩和部材33L,33Rを区別しない場合は符号「33」で示す。
【0026】
図1に示す搭載構造1では、衝撃緩和部材33は、サイドレール21L,21Rの一部により形成された場合を例に挙げる。
図1及び
図2に示すように、各サイドレール21L,21Rにおいて駆動用バッテリ4の配置された領域は、断面L字型に形成されたL字部23をなす。駆動用バッテリ4の配置された領域とは、各サイドレール21L,21Rのうち駆動用バッテリ4の両側面に向かい合う領域である。L字部23は、車長方向D1及び車高方向に沿う板状のウェブ部23Aとウェブ部23Aの上縁から車幅方向D2内側へ延出した上フランジ部23Bとを有する。
【0027】
各サイドレール21L,21RにおいてL字部23(駆動用バッテリ4の配置された領域)以外の領域は、断面コの字型に形成されたコ字部24をなす。コ字部24は、車長方向D1及び車高方向に沿う板状のウェブ部24Aとウェブ部24Aの上縁及び下縁のそれぞれから車幅方向D2内側へ延出した上フランジ部24B及び下フランジ部24Cとを有する。
なお、本実施形態では、L字部23のウェブ部23A及び上フランジ部23Bが、コ字部24のウェブ部24A及び上フランジ部24Bと一体的に形成された構成を図示している。しかし、これに限らず、L字部23の前後部とコ字部24とが別体で形成され、ボルト等の締結部材で連結されてもよい。すなわち、本実施形態において各サイドレール21L,21RにおいてL字部23は、断面コの字型をなすコ字部24に対し下フランジ部をカットして断面L字型に変形したものとも言える。
【0028】
L字部23のウェブ部23Aは、コ字部24のウェブ部24Aに比べて下方へ延出されており、駆動用バッテリ4の側面を車幅方向D2外側から覆う面状領域をなす。すなわち、L字部23のウェブ部23Aが衝撃緩和部材33として機能する。言い換えれば、
図1及び
図2の衝撃緩和部材33は、L字部23におけるウェブ部23Aで形成されているものと言える。なお、衝撃緩和部材33をなすウェブ部23Aは図示しないリブで補強されていてもよい。
ウェブ部23Aの車高方向D3の寸法は、駆動用バッテリ4の側面を覆うことができるように、駆動用バッテリ4の車高方向D3の寸法以上に設定されている。
【0029】
具体的には、
図2に示すように、ウェブ部23Aの上端(上フランジ部23B)は、駆動用バッテリ4の上面よりも上方に配置されている。ウェブ部23Aの下端は第三ブラケット32の上面に当接しており、車高方向において駆動用バッテリ4の下面と同じ位置に配置されている。
すなわち、
図2に示すウェブ部23Aの車高方向D3の寸法は駆動用バッテリ4の車高方向D3の寸法よりも大きく設定されている。したがって、車幅方向D2外側から見て、駆動用バッテリ4の側面の全体がウェブ部23Aにより覆われている。
また、
図2に示すように、L字部23のウェブ部23Aは、駆動用バッテリ4と第二ブラケット31の間に配置されている。
【0030】
各サイドレール21L,21RにおいてL字部23は下フランジ部がカットされている。そのため、L字部23における強度不足を補うために、
図2に示すように、各L字部23に対して補強用のスティフナ25が取り付けられている。
図2に示すスティフナ25は、各L字部23に対して車幅方向D2内側に配置されており、L字部23の車幅方向D2内側を向いた面に沿う断面L字形状に形成されている。
図2示すスティフナ25の車高方向D3の寸法は、ウェブ部23Aの車高方向D3の寸法よりも短く設定されている。スティフナ25の車高方向D3の寸法は、例えばコ字部24の車高方向D3の寸法と同一に設定されてよい。
【0031】
また、
図1及び
図2に示すように、各第一ブラケット30L,30Rは、各サイドレール21L,21Rに対して車幅方向D2外側へ向かって突出した形状をなす。詳しくは
図2に示すように、各第一ブラケット30L,30Rには、車幅方向D2内側から外側へ向かって、第一部材35、インシュレータ36、第二部材37がこの順に設けられている。
【0032】
第一部材35は、サイドレール21L,21Rに固定された基部である。第二部材37には、第二ブラケット31が結合される。インシュレータ36は、第一部材35と第二部材37との間に介装されている。
図2に示すように、第二部材37において車幅方向D2外側を向いた外面37Aは、第二ブラケット31よりも車幅方向D2外側へ突出して配置されている。すなわち、第一ブラケット30は第二ブラケット31よりも車幅方向D2外側へ突出して設けられてものと言える。
【0033】
[2.作用効果]
以上説明した本実施形態は以下のような作用効果を奏する。
本適用例に係る駆動用バッテリ4の搭載構造1は、左右のサイドレール21L,21Rの間に配置された駆動用バッテリ4を、第一ブラケット30,第二ブラケット31及び第三ブラケット32により下方から支持している。ここで、駆動用バッテリ4の載置面をなす第三ブラケット32は、第一ブラケット30及び第二ブラケット31によりサイドレール21L,21Rに対して下方に吊り下げられている。
【0034】
そのため、第二ブラケット31が下方へ延出した寸法に応じてサイドレール21と第三ブラケット32との間の車高方向D3の寸法を長くとることが可能になり、サイドレール21の下方に駆動用バッテリ4の搭載スペースを確保しやすい。よって、この搭載構造1によれば、車高方向D3の寸法を大型化した駆動用バッテリ4の搭載性を高めることができる。
【0035】
また、本実施形態の搭載構造1では、衝撃緩和部材33により駆動用バッテリ4の側面を側突された場合の衝撃を緩和することができる。また、搭載構造1側に衝撃緩和部材33が設けられているため、駆動用バッテリ4側に衝突ガードを設ける必要がなくなる。よって、衝突ガードを廃した分だけ駆動用バッテリ4を拡張(大型化)することができる。
以上より、本実施形態の搭載構造1では、大型化された駆動用バッテリ4の搭載性を確保しつつ側面衝突による衝撃力を緩和することができる。
また、大型化した駆動用バッテリ4を搭載することにより電動車両3の一回充電当たりの走行距離を延ばすことが可能となる。また、サイドレール21L,21Rの拡幅のような、電動車両3の上部構造に影響を与える変更形状がないため、キャビン、荷箱、モータなど従来の上部構造をそのまま流用できる。これに伴い、架装の新規開発が不要である。
【0036】
また、本実施形態の搭載構造1では、サイドレール21L,21RがL字部23を有することで、全体がコ字型断面をなすサイドレールに比べて、サイドレール21L,21R間に搭載スペースを確保しやすくなる。具体的には、サイドレール21L,21R間に駆動用バッテリ4を搭載する構造において、下フランジ部をなくした分だけ、駆動用バッテリ4の車幅方向D2の寸法を拡幅することができる。また、コ字型断面をなすサイドレールの下フランジ部の下に駆動用バッテリを搭載する構造に比べて、上記のように車幅方向D2の寸法を拡幅した駆動用バッテリ4を車高方向D3の高い位置に配置することができる。そのため、低床車にも車高方向D3の寸法を大型化した駆動用バッテリ4を搭載しやすくなる。
よって、車高方向D3の寸法を大型化した駆動用バッテリ4の搭載性をより高めることができる。
【0037】
また、本実施形態の搭載構造1では、L字部23のウェブ部23Aが下方へ延出された形状をなし、このウェブ部23Aが衝撃緩和部材33を形成するので、サイドレール21L,21Rの一部を衝撃緩和部材33として利用できる。
よって、衝撃緩和部材を別部材で設ける構造に比べて構造がシンプルである。
また、本実施形態の搭載構造1では、第一ブラケット30が第二ブラケット31よりも車幅方向D2外側へ突出して設けられている。そのため、側突に対して第一ブラケット30も衝撃緩和機能を果たす。よって、側面衝突による衝撃力をより緩和することができる。
【0038】
[4.その他]
上記の搭載構造1では、L字部23のウェブ部23Aが下方へ延出されており、衝撃緩和部材33として機能する場合を例に挙げた。
図3に示す搭載構造1の変形例では、スティフナ25が下方へ延出されており、スティフナ25が衝撃緩和部材33として機能する。スティフナ25は、L字部23(サイドレール21の一部)を補強するための板状部材であり、断面L字状に形成されている。この場合、L字部23のウェブ部23Aの車高方向D3の寸法は、延長されておらず、例えばコ字部24の車高方向D3の寸法と同一に設定されてよい。
図1及び
図2のようなL字部23(サイドレール21の一部)が衝撃緩和部材33として機能する構成に対し、
図3に示す搭載構造1は、衝撃緩和部材33(スティフナ25)がサイドレール21に取り付けられた構成と言える。
【0039】
この場合、ウェブ部23Aを補強するためのスティフナ25を衝撃緩和部材33として流用するので、衝撃緩和部材を別部材で設ける構造に比べて構造がシンプルである。
なお、
図3に示す搭載構造1において、L字部23のウェブ部23Aが、スティフナ25と同様に、下方へ延出されていてもよい。この場合、衝撃緩和部材33がウェブ部23Aとスティフナ25との二重構造となるので、強度を高めることができる。
また、変形例として、スティフナ25とは別部材からなる衝撃緩和部材33がサイドレール21に取り付けられていてもよい。この場合、L字部23を形成することなく、すなわち従来のサイドレールの形状を変形することなく、側面衝突による衝撃力を緩和することができる。
【0040】
図4に示す搭載構造1の変形例は、
図3に対してスティフナ25がクロスメンバ22に取り付けられている点が異なり、その他の構成は共通している。
図4に示す搭載構造1は、衝撃緩和部材33(スティフナ25)がクロスメンバ22に取り付けられた構成と言える。
この場合も、
図3に示す搭載構造1と同様の作用効果が得られる。
【0041】
なお、サイドレール21は、一部にL字部23を有する構成に限らず、全体が上下フランジを有するコ字型断面に形成されていてもよいし、あるいは、全体が上フランジのみを有するL字型断面に形成されていてもよい。
第一ブラケット30,第二ブラケット31及び第三ブラケット32の形状は、上記の形状に限定されない。例えば、第三ブラケット32は、駆動用バッテリ4の下面全体を支持する矩形状の載置面32Aを有する形状に限らず、駆動用バッテリ4の下面の一部を支持する形状であってもよい。
電動車両3の車種は、ラダーフレーム2を備えたものであればトラックに限らず、バスや乗用車などどのような車種であってもよい。
【0042】
以下、本実施形態に関する付記を開示する。
[付記1]
左右のサイドレールを備える電動車両において前記左右のサイドレールの間に配置された駆動用バッテリの搭載構造であって、
前記左右のサイドレールの車幅方向外側にそれぞれ備えられた一対の第一ブラケットと、
前記一対の第一ブラケットからそれぞれ車高方向に沿って下方へ延出するとともに、前記駆動用バッテリ及び前記サイドレールに対して車幅方向外側に配置された一対の第二ブラケットと、
前記一対の第二ブラケットから車幅方向内側に延び且つ前記駆動用バッテリよりも車高方向下方に位置し、前記駆動用バッテリを下方から支持する第三ブラケットと、
前記駆動用バッテリの車幅方向両側において前記駆動用バッテリと前記第二ブラケットとの間に配置されており、前記駆動用バッテリの側面を車幅方向外側から覆う面状領域を有する一対の衝撃緩和部材と、を備えた
ことを特徴とする駆動用バッテリの搭載構造。
[付記2]
前記左右サイドレールにおいて、少なくとも前記駆動用バッテリの配置された領域は、車長方向及び車高方向に沿う板状のウェブ部と前記ウェブ部の上縁から車幅方向内側へ延出した上フランジ部とを有する断面L字型に形成されたL字部をなす
ことを特徴とする付記1に記載の駆動用バッテリの搭載構造。
[付記3]
前記衝撃緩和部材は、前記L字部における前記ウェブ部で形成されている
ことを特徴とする付記2に記載の駆動用バッテリの搭載構造。
[付記4]
前記衝撃緩和部材は、前記サイドレールに取り付けられている
ことを特徴とする付記1又は2に記載の駆動用バッテリの搭載構造。
[付記5]
前記L字部を補強するスティフナが前記サイドレールに取り付けられており、
前記衝撃緩和部材は、前記サイドレールに取り付けられた前記スティフナで形成されている
ことを特徴とする付記2に記載の駆動用バッテリの搭載構造。
[付記6]
前記左右のサイドレール間には、車幅方向に延びて前記サイドレール同士を連結するクロスメンバが架設されており、
前記衝撃緩和部材は、前記クロスメンバに取り付けられている
ことを特徴とする付記1、2、4又は5に記載の駆動用バッテリの搭載構造。
[付記7]
前記第一ブラケットは、前記第二ブラケットよりも車幅方向外側へ突出して設けられている
ことを特徴とする付記1~6のいずれか1つに記載の駆動用バッテリの搭載構造。
【符号の説明】
【0043】
1 駆動用バッテリの搭載構造
2 ラダーフレーム
3 電動トラック(電動車両)
4 駆動用バッテリ
21,21L,21R サイドレール
22 クロスメンバ
23 L字部
23A ウェブ部
23B 上フランジ部
24 コ字部
24A ウェブ部
24B 上フランジ部
24C 下フランジ部
25 スティフナ
30,30L,30R 第一ブラケット
31,31L,31R 第二ブラケット
32 第三ブラケット
32A 載置面
33,33L,33R 衝撃緩和部材
35 第一部材
36 インシュレータ
37 第二部材
37A 外面