(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021724
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】配送計画装置、配送計画方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/083 20240101AFI20250206BHJP
G06Q 10/047 20230101ALI20250206BHJP
【FI】
G06Q10/083
G06Q10/047
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125641
(22)【出願日】2023-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】明石 和陽
(72)【発明者】
【氏名】福田 展和
(72)【発明者】
【氏名】金井 俊介
(72)【発明者】
【氏名】大中 亮磨
(72)【発明者】
【氏名】岩田 覚
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA04
5L010AA16
5L049AA04
5L049AA16
(57)【要約】
【課題】経路探索の精度を向上させること。
【解決手段】一実施形態に係る配送計画装置は、取得部と、最適化部とを含む。取得部は、輸送媒体数、需要点数、前記輸送媒体に搭乗する人員の数、および前記人員が連続して活動が可能な時間を示す連続勤務上限時間をパラメータ情報として取得する。最適化部は、前記輸送媒体に搭乗する人員は同一の拠点に存在する人員である制約の下、前記パラメータ情報を用いた分枝限定法により、各需要点に対する前記輸送媒体の経路と前記輸送媒体に対する前記人員の割り当てとを同時に最適化する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸送媒体数、需要点数、前記輸送媒体に搭乗する人員の数、および前記人員が連続して活動が可能な時間を示す連続勤務上限時間をパラメータ情報として取得する取得部と、
前記輸送媒体に搭乗する人員は同一の拠点に存在する人員である制約の下、前記パラメータ情報を用いた分枝限定法により、各需要点に対する前記輸送媒体の経路と前記輸送媒体に対する前記人員の割り当てとを同時に最適化する最適化部と、
を具備する配送計画装置。
【請求項2】
前記最適化部は、前記連続勤務上限時間を前記分枝限定法における変数として設定し、前記分枝限定法の緩和問題を列生成法と二分探索とを用いて解くことにより、前記経路および前記割り当てを同時に最適化する、請求項1に記載の配送計画装置。
【請求項3】
前記最適化部は、第1需要点における前記人員の勤務時間終了時に前記第1需要点において前記輸送媒体に乗り換え可能な人員が存在しない場合の待機時間を前記分枝限定法における変数として設定し、前記分枝限定法の緩和問題を列生成法と二分探索とを用いて解くことにより、前記経路および前記割り当てを同時に最適化する、請求項1に記載の配送計画装置。
【請求項4】
前記最適化部は、緩和問題の解が、元問題の前記輸送媒体間の同期制約に関する変数の制約を満たさない場合、前記変数の範囲を狭めるように分枝を実行する、請求項1に記載の配送計画装置。
【請求項5】
輸送媒体数、需要点数、前記輸送媒体に搭乗する人員の数、および前記人員が連続して活動が可能な時間を示す連続勤務上限時間をパラメータ情報として取得し、
前記輸送媒体に搭乗する人員は同一の拠点に存在する人員である制約の下、前記パラメータ情報を用いた分枝限定法により、各需要点に対する前記輸送媒体の経路と前記輸送媒体に対する前記人員の割り当てとを同時に最適化する、
配送計画方法。
【請求項6】
コンピュータを、請求項1に記載の配送計画装置の各部として実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、配送計画装置、配送計画方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両による物資配送は、現代社会において不可欠な要素であり、円滑な配送のためには最適な経路の決定が必要である。例として災害時に車両によって電力や水等の物資を複数の需要点に供給する場合、各需要点で物資が枯渇する時間をできるだけ小さくするような経路の探索が必要となる。物資の配送には車両だけでなく作業を行う人員が不可欠であるため、人に関する制約、例えば作業に必要な資格や連続して勤務できる時間、経路途中での人員の交代なども考慮した経路探索を行うことが望ましい。
【0003】
具体的に、例えば広域停電が発生した場合には、非常用バッテリで稼働する各通信ビルの電源を維持または復旧するために、発電機を搭載した移動電源車と、複数名の作業員(運転士および電気工事士)を、需要点である通信ビルへ配備し、非常用バッテリへ給電する計画を立案する。このとき、各作業員は、立案された計画に従って、拠点(デポ)から作業車両の場所へ移動し、さらに、当該作業車両で指定された通信設備の場所へ移動した後、復旧作業を実施する。
【0004】
また、各作業員が連続して勤務できる時間には制限があるため、復旧作業に長時間を要する障害の場合は、別の作業員と適宜交代することになる。広域停電の対応では、通信ビルへの移動および給電にそれぞれ数時間かかることが見込まれるため、給電完了後に別の作業員と交代する等の対応が想定される。
上記のような制約を考慮し、限られた数の車両や作業員で実行可能で、各通信ビルで電力が枯渇する時間をできるだけ小さくするような経路を探索する必要がある。
【0005】
従来手法として、人的制約を加味せずに車両経路のみを探索する技術としては、離散最適化手法を用いて厳密に最適経路を求める手法がある。また、人的制約(最大連続勤務時間、経路途中での人員の乗り換え等)を加味する場合、問題を車両経路の決定とその後の人員の割り当てとの二段階に分割し、それぞれを独立して解くという手法がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Anders Dohn, Esben Kolind, Jens Clausen, The manpower allocation problem with time windows and job-teaming constraints: A branch-and-price approach, Computers & Operations Research, Volume 36, Issue 4, 2009, Pages 1145-1157.
【非特許文献2】Drexl, M., Rieck, J., Sigl, T. et al. Simultaneous Vehicle and Crew Routing and Scheduling for Partial-and Full-Load Long-Distance Road Transport. Bus Res 6, 242-264 (2013).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、車両経路の決定と、その後の人員の割り当てとの二段階に配送計画問題を分解して行う手法は、元の問題の厳密な最適解ではない。すなわち、人的制約を無視して決定した車両経路が、人的制約を加味したうえでの最適な車両経路と一致するとは限らない。
【0008】
本発明は、上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、経路探索の精度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様の配送計画装置は、取得部と、最適化部とを含む。取得部は、輸送媒体数、需要点数、前記輸送媒体に搭乗する人員の数、および前記人員が連続して活動が可能な時間を示す連続勤務上限時間をパラメータ情報として取得する。最適化部は、前記輸送媒体に搭乗する人員は同一の拠点に存在する人員である制約の下、前記パラメータ情報を用いた分枝限定法により、各需要点に対する前記輸送媒体の経路と前記輸送媒体に対する前記人員の割り当てとを同時に最適化する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る配送計画装置を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る配送計画装置の配送計画処理を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る配送計画装置に入力されるパラメータ情報の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る配送計画装置の出力結果の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本実施形態に係る配送計画装置、配送計画方法およびプログラムについて説明する。以下の実施形態では、同一の参照符号を付した部分は同様の動作をおこなうものとして、重複する説明を適宜省略する。
【0012】
本実施形態に係る配送計画装置について
図1のブロック図を参照して説明する。
図1に示す配送計画装置1は、処理回路11と、格納部12と、通信インタフェース13と、入力インタフェース14と、出力インタフェース15とを含む。処理回路11は、取得部111と、最適化部112と、出力制御部113とを含む。
【0013】
取得部111は、輸送媒体数、需要点数、輸送媒体に搭乗する人員の数、および人員が連続して活動が可能な時間を示す連続勤務上限時間をパラメータ情報として取得する。輸送媒体は、ここでは、人員が登場するトラックなどの車両を想定するが、これに限らない。例えば、鉄道や船舶、ドローン等の飛翔体を選択的に用いてもよく、人員が移動可能な輸送媒体であればよい。需要点は、例えば、通信ビルや被災場所など、人員が活動する対象となる地点である。
【0014】
最適化部112は、輸送媒体に搭乗する人員は同一の拠点に存在する人員である制約の下、パラメータ情報を用いた分枝限定法により、各需要点に対する輸送媒体の経路と輸送媒体に対する人員の割り当てとを同時に最適化する。結果として、経路と人員の割り当てとに関する最適経路情報を生成する。
【0015】
なお、配送計画装置1の処理回路11は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサ、または、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの集積回路で構成される。上述した処理回路11の各部は、プロセッサまたは集積回路が、例えば格納部12に格納される処理プログラムを実行することで、プロセッサまたは集積回路の一機能として実現されてもよい。
【0016】
また、一連の処理のうちのすべてまたは一部を、1つのプロセッサで実行してもよいし、複数のプロセッサまたはその他の情報処理端末により分散して処理するようにしてもよい。
【0017】
格納部12は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、ROM、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリといった、一般的に用いられる記憶媒体で構成される。なお、格納部12は、RAM(Random Access Memory)などの揮発性メモリで構成されてもよいし、不揮発性メモリと揮発性メモリとを組み合わせて構成されてもよい。格納部12は、最適化部112により算出された最適経路情報を格納する。
【0018】
通信インタフェース13は、外部装置と有線または無線によりデータを送受信するためのインタフェースである。
【0019】
入力インタフェース14は、例えば、マウスや、キーボード、マイクなどの入力装置からユーザからの入力を受け付けるためのインタフェースである。
【0020】
出力インタフェース15は、例えば、ディスプレイ、プロジェクタ、スピーカなどの出力装置に対してデータまたは音声を出力するためのインタフェースである。
【0021】
次に、本実施形態に係る配送計画装置1の配送計画処理について
図2のフローチャートを参照して説明する。ここでは、輸送媒体として車両を想定する。また、需要点に対する人的制約を加味した配送計画を最適化する、言い換えれば物資の最大枯渇時間を最小化する車両経路と人員の割り当てとを同時に最適化する処理を想定する。また、さらなる制約として、同期制約、すなわち単一の需要点に複数の車両が同時に電源を供給する場合を想定する。さらに、車両に搭乗する人員は同一の拠点に存在する人員である制約を仮定する。
【0022】
ステップSA1では、取得部111が、例えば入力インタフェース14を介して、ユーザからパラメータ情報を取得する。
【0023】
ステップSA2では、最適化部112が、パラメータ情報に基づいて、最適化問題(元問題)を生成する。ここで想定する最適化問題は、最大枯渇時間が最小となる経路を求める問題である。
具体的には、デポ(拠点)jの集合をD、需要点iの集合をS、人員hの集合Hとそれぞれ定義する。また、2つの需要点i,j(i,j∈D∪S)をつなぐエッジをeijと定義する。1台の車両が、人員h∈Hによって、エッジeijを使用するならば「1」、使用しないならば「0」を返す2値変数xijhを定義する。これにより、車両の経路は、xijhの集合{xijh}で表現される。つまり、元問題とは、各人員の連続勤務上限時間がa(aは正の値)以内であり、かつ全需要点における枯渇時間がλ(λは正の値)以下となる経路{xijh}が存在するか否かを求める問題である。ここでは、人員の連続勤務上限時間aは、ユーザ入力値または所定値であり、既知であるとする。
経路xで移動する場合の需要点iにおける枯渇時間Tiは、各需要点における残り時間diと想定到着時刻Tarr_iと基づき、Ti(x)=Tarr_i-diにより算出できる。よって、元問題は、枯渇時間TS(x)≦λとなる経路xijhを求める問題である。
【0024】
ステップSA3では、最適化部112が、元問題の緩和問題を生成する。緩和問題は、経路xijhが存在するか否かの整数変数xijh∈[0,1]を、連続変数である0≦xijh≦1に緩和した問題である。なお、ここでは説明の便宜上、緩和問題を生成するにあたり、各車両間の制約、すなわち、ある需要点に対して、訪れる車両の時刻が同時であるという制約、および連続勤務上限時間と勤務時間間隔とを含む人員に関する制約とをひとまず無視する。緩和問題として、線形緩和を行った線形計画問題を生成する。
【0025】
ステップSA4では、最適化部112が、緩和問題、つまり線形計画問題に対する最大枯渇時間の最小値を二分探索により探索する。具体的には、最大枯渇時間の最小値λの初期値を設定し、λ以下となる経路を二分探索する。具体的には、全需要点の枯渇時間がλ以下になる部分経路を探索する。二分探索における探索範囲の上限値および下限値は、所定の値が与えられるものとする。
【0026】
ステップSA5では、最適化部112が、二分探索された後のある枝について、線形緩和された線形計画問題を計算し、実行可能解が得られるか否かを判定する。線形計画問題(主問題)に対して解が得られる場合は、ステップSA6に進み、線形計画問題(主問題)に対して実行可能解が得られない、つまり解なしの場合は、ステップSA7に進む。
【0027】
ステップSA6では、最適化部112が、実行可能解があり、実行可能な枝(経路)であると判定し、最大枯渇時間の最小値λを小さくする。
【0028】
ステップSA7では、最適化部112が、ステップSA4の主問題に対する双対問題を生成する。双対問題の生成は、一般的な列生成法における双対問題の生成であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0029】
ステップSA8では、最適化部112が、車両に搭乗する人員は同一の拠点(デポ)に存在する人員であるという、乗員を固定した状態において双対問題を計算し、追加する列が存在するか否かを判定する。具体的には、双対問題を計算した結果、ラベリング法による探索により、追加すべき列が存在するか否かを判定する。具体的には、各需要点にそれまでに得られた出発点からのパスの長さと、パス上の直前の需要点を表すラベルとを与え、探索の過程でより良いパスが見つかるたびに、当該ラベルを書き換える。また、ある単一の需要点において人員の勤務時間終了時に、当該需要点において車両に乗り換え可能な人員が存在しない場合は、待機時間を設けるようラベルを更新する。追加する列が存在すれば、ステップSA9に進み、追加する列が存在しなければ、ステップSA10に進む。
【0030】
ステップSA9では、最適化部112が、ステップSA7の双対問題の目的関数を満たす列を、線形計画問題の列に追加する。その後、ステップSA4に戻り、新たに限定された列を含めて線形計画問題の主問題を生成し、同様の処理を繰り返す。
【0031】
ステップSA10では、最適化部112が、実行可能解がなく、実行不可能な枝であると判定し、最大枯渇時間の最小値λを大きく設定し、ステップSA11に進む。これにより、当該緩和問題(分枝)における最適解を見つけることができる。
【0032】
ステップSA11では、最適化部112が、ステップSA4からステップSA9までの処理により得られた線形計画問題の解が、元問題の解であるか否かを判定する。すなわち、ステップSA3で無視した各車両間の制約および人員に関する制約を満たすか否かを判定する。
例えば、各車両間の制約としては、ステップSA5で算出された解では、勤務開始可能時刻および初期勤務可能時間よりも後に、人員が割り当てられることが必要となる。さらに、需要点に対して、訪れる車両の時刻が同時であることが必要である。このように、解が上述の各車両間の制約を満たす場合、つまり、実行可能解{xijh}が整数値を取る場合、元問題の解であると判定し、ステップSA12に進む。一方、解が各車両間の制約を満たさない場合、つまり実行可能解{xijh}が整数値以外の値を取る場合、元問題の解ではないと判定し、ステップSA13に進む。
【0033】
ステップSA12では、最適化部112が、解が各車両間の制約を満たすため、当該枝についての探索を打ち切る。
【0034】
ステップSA13では、最適化部112が、解が各車両間の制約を満たさないため、時間窓を二分するようにさらに分枝する。分枝の具体例としては、ある車両がある需要点に行くことを強制する、またはある需要点には行かないことを強制するように、パラメータを設定すればよい。その後、ステップSA3に戻り、新たな緩和問題を生成し、同様の処理を繰り返す。
具体的には、例えば、ある需要点に12時に第1車両が到着し、13時に別の車両である第2車両が到着する緩和解が得られた場合には、当該緩和解は同時に車両が到着するという同期制約を満たさない。よって、当該需要点に車両が12時以前に到着する、または12時より後に到着する、という制約を加えた分枝が実行されればよい。
【0035】
ステップSA14では、出力制御部113が、ステップSA13までの処理において、探索して得た各緩和問題(分枝)の解のうち、最大枯渇時間の最小値が最も小さい解を最適解として、出力インタフェース15を介して例えばディスプレイなどに当該最適解を出力する。
【0036】
次に、本実施形態に係る配送計画装置1の配送計画処理の具体例について
図3および
図4を参照して説明する。具体例では、電力復旧のため各需要点に対して電力を供給する場合の最適な配送計画を生成することを想定する。
【0037】
図3は、配送計画装置1に入力されるパラメータ情報の一例である。
ユーザから入力されるパラメータ情報として、車両vの数、需要点sの数、人員hの数、連続勤務上限時間a、勤務時間間隔pおよび各需要点間の移動コストcが入力される。勤務時間間隔は、一定時間連続して勤務した後、次の勤務までに必要なインターバル時間である。ここでは、車両vの数=1、需要点sの数=3、人員hの数=4、連続勤務上限時間a=8、勤務時間間隔p=24であることを想定する。
【0038】
需要点sに関してはさらに、需要点ごとに、電力が枯渇する時刻である電源断時刻、電力を供給するためにかかる時間である電源供給時間、および同時に必要な車両数を示す同時必要車両数に関する情報を含む。すなわち、電源断時刻、電源供給時間および同時必要車両数はs個の要素が存在する。ここでは、3か所の需要点の電源断時刻が(10,100,1000)であるとする。電源供給時間は(1,2,3)であるとする。同時必要車両数は各需要点で1台、すなわち(1,1,1)であるとする。
【0039】
人員hに関してはさらに、人員ごとに、人員が持つ資格、人員が勤務開始が可能となる時刻である勤務開始可能時刻、人員の最初の勤務可能時間を示す初期勤務可能時間を含む。すなわち、資格、勤務開始可能時刻および初期勤務可能時間はそれぞれ、h個の要素が存在する。資格は、ここでは、運転免許および電気工事士免許などを想定し、車両の運転には、運転免許が、需要点が停電した通信ビルである場合の給電作業には電気工事士免許が必要であることを示す。資格は、各人員hがどのような資格を持つかを数値で指定する場合を想定し、例えば、運転免許は「1」、電気工事士免許は「2」、両方を有する場合は「3」と設定すればよい。ここでは(1,1,2,2)である例とする。勤務開始可能時刻および初期勤務可能時間は、すぐに行動開始できることを想定するため、(0,0,0,0)であるとする。
【0040】
移動コストは、各需要点間での移動コストを示し、(d+s+h)
2の要素で形成される。
図3の例では、(1+3+4)
2=64個の移動コストが存在する。また、車両に搭乗する人員は同一のデポ(拠点)に存在する人員であることを制約としているため、例えば、移動コストは、[0,1,2,3]のように表せる。ここでは、第1成分が車両のデポ(拠点)であり、第2成分から第4成分までが、車両のデポから各需要点までのコストである。
【0041】
このように、連続勤務上限時間、勤務開始可能時刻および初期勤務可能時間を分枝変数として保持する。電源の最大枯渇時間が最小となる目的関数を定義し、分枝限定法を用いる。このような分枝変数を用いて線形緩和問題の最小値を計算したのち、線形緩和問題の元問題の制約に反するか否かに応じて分枝する。例えば、特定の人員h1が勤務可能時間の制約を破って車両に搭乗しているといった、人的制約に違反すれば、分枝を行えばよい。分枝の手法としては、例えば、人員h1が需要点s1で作業した場合は、別の人員h2と交代することを必須とし、需要点s2では人員h2が作業するといった制約を設定してもよい。これにより、人員の割り当てパターンを削減し、解を得るまでの時間を短縮できる。
【0042】
また、車両がある需要点に移動する(経由する)ことを強制する、または、車両がある需要点に移動しない(経由しない)ことを強制することを条件として、分枝すればよい。または、勤務開始可能時刻または初期勤務可能時間を狭める(限定する)ように分枝をしてもよい。
【0043】
次に、本実施形態の出力結果について
図4を参照して説明する。
図4は、
図3に示すパラメータ情報の入力に対して、
図2に示す配送計画処理を実行した実行結果を示す。最大遅延時間を[-8時間]とし、車両経路[v1→s1→s2→s3]と、車両に乗る人員のスケジュールとが生成される。人員スケジュールは、人員h1および人員h2についてはそれぞれ、[(0,v1,d0),(26,v1,s2)]と算出される。人員h3および人員h4については、[(1,v2,d0),(2,v1,s1)]と算出される。ここで、()内の第1成分は、出発時刻であり、第2成分は搭乗車両であり、第3成分は乗り換え場所を示す。
【0044】
すなわち、
図4の例では、生成される配送計画として、人員h1および人員h2が「時刻:0」に車両v1に搭乗してデポd0から需要点s1に移動し、需要点s1において電源供給作業を行う。その後、人員h3および人員h4が、「時刻:1」に車両v1とは異なる車両(ここでは便宜上車両v2とする)に搭乗してデポd0から需要点s1に移動する。人員h3および人員h4が、「時刻:2」に需要点s1において車両v1に乗り換えて需要点s1から需要点s2に移動し、需要点s2において電源供給作業を行う。最後に、人員h1および人員h2が、「時刻:26」に需要点s2において車両v1に乗り換えて需要点2から需要点s3に移動し、需要点3において電源供給を行えばよいことがわかる。
【0045】
なお、上述の実施形態では、災害発生時に複数の需要点に電源供給する場合を例にとって説明したが、これに限らず、平常時において例えば複数の店舗へ商品を配送するときの支援システムとしても適用可能である。
【0046】
またその他、配送計画装置1の機能、処理手順と処理内容、物資の種類、支援情報の内容等についても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
【0047】
以上に示した本実施形態によれば、車両間の同期制約および連続勤務上限時間を分枝限定法による変数として設定して探索を行い、各分枝において線形緩和した問題を列生成法と二分探索とにより解く。得られた解が線形緩和する前の元問題の解であるならば、値を当該分枝の解とし、そうでないならば、さらに時間窓を二分するように分枝する。最終的に、各分枝の解のうち、物資の最大枯渇時間が最小となる最適解を選択する。
【0048】
これにより、車両などの輸送媒体だけでなく人的制約を同時に加味した厳密な最適経路を求めることができる。よって、例えば、災害時に電気や水といった物資を被災地へ届ける際、物資の枯渇時間を最小限に抑えることを可能とする。さらに、各輸送媒体に搭乗する人員を、車両と同じデポの人員に限定することで、探索空間の縮小させることができ、処理時間を短縮するとともに、人員にとって有利な経路を出力できる。すなわち、より良い経路を短時間で探索することができる。
【0049】
また、上記実施形態に記載した手法は、計算機(コンピュータ)に実行させることができるプログラム(ソフトウェア手段)として、例えば磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD-ROM、DVD、MO等)、半導体メモリ(ROM、RAM、フラッシュメモリ等)等の記憶媒体に格納し、また通信媒体により伝送して頒布することもできる。なお、媒体側に格納されるプログラムには、計算機に実行させるソフトウェア手段(実行プログラムのみならずテーブル、データ構造も含む)を計算機内に構成させる設定プログラムをも含む。本装置を実現する計算機は、記憶媒体に記憶されたプログラムを読み込み、また場合により設定プログラムによりソフトウェア手段を構築し、このソフトウェア手段によって動作が制御されることにより上述した処理を実行する。なお、本明細書で言う記憶媒体は、頒布用に限らず、計算機内部或いはネットワークを介して接続される機器に設けられた磁気ディスク、半導体メモリ等の記憶媒体を含むものである。
【0050】
要するに、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。さらに、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。
【符号の説明】
【0051】
1…配送計画装置
11…処理回路
12…格納部
13…通信インタフェース
14…入力インタフェース
15…出力インタフェース
111…取得部
112…最適化部
113…出力制御部