(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021754
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】射撃訓練システム
(51)【国際特許分類】
F41G 3/26 20060101AFI20250206BHJP
F41J 5/14 20060101ALI20250206BHJP
F41J 5/20 20060101ALI20250206BHJP
A61B 5/16 20060101ALI20250206BHJP
A61B 5/291 20210101ALI20250206BHJP
A61B 5/33 20210101ALI20250206BHJP
【FI】
F41G3/26
F41J5/14
F41J5/20
A61B5/16 110
A61B5/291
A61B5/33 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125696
(22)【出願日】2023-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福嶋 一茂
(72)【発明者】
【氏名】牧野 晋也
(72)【発明者】
【氏名】桐田 茂次
(72)【発明者】
【氏名】加藤 規一
【テーマコード(参考)】
4C038
4C127
【Fターム(参考)】
4C038PP03
4C038PQ06
4C038PR00
4C038PS03
4C127AA02
4C127AA03
4C127GG15
4C127KK03
4C127KK05
(57)【要約】
【課題】射手の射撃精度とバイタル状態の関係性を判定し、より高い射撃精度を目指すことができる射撃訓練システムを提供することを目的とする。
【解決手段】弾通過位置を検出する標的装置と、弾発射を検出する表示器と、射撃結果と射撃履歴を保持する射撃サーバと、射手のバイタル情報を検出するバイタルセンサと、前記バイタルセンサからバイタル情報を取得するバイタル端末と、過去の射撃精度とバイタル情報を比較し分析したバイタル傾向情報を保持するバイタルサーバと、を備え、前記バイタル端末は、射撃を行う射手のバイタル傾向情報を前記バイタルサーバから取得し、射手の射撃結果を前記射撃サーバから取得し、バイタル傾向情報から射撃精度に影響があるバイタル情報に対して、今回の射撃時の所定時間前から射撃時までのバイタル情報のうち射撃精度に所定以上悪影響を及ぼすデータがあった場合に当該データを前記バイタル端末の表示部に表示する。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾通過位置を検出する標的装置と、弾発射を検出する表示器と、射撃結果と射撃履歴を保持する射撃サーバと、射手のバイタル情報を検出するバイタルセンサと、前記バイタルセンサからバイタル情報を取得するバイタル端末と、過去の射撃精度とバイタル情報を比較し分析したバイタル傾向情報を保持するバイタルサーバと、を備え、
前記バイタル端末は、射撃を行う射手のバイタル傾向情報を前記バイタルサーバから取得し、射手の射撃結果を前記射撃サーバから取得し、バイタル傾向情報から射撃精度に影響があるバイタル情報に対して、今回の射撃時の所定時間前から射撃時までのバイタル情報のうち射撃精度に所定以上悪影響を及ぼすデータがあった場合に当該データを前記バイタル端末の表示部に表示することを特徴とする射撃訓練システム。
【請求項2】
請求項1に記載の射撃訓練システムにおいて、
前記バイタル端末は、前記バイタルセンサから取得したバイタル情報を前記バイタルサーバに送信し、
前記射撃サーバは、弾通過位置の情報を含む射撃履歴を前記バイタルサーバに送信し、
前記バイタルサーバは、射手単位及び射手が属するチーム単位で、射撃精度に影響があるバイタル情報を算出、記録することを特徴とする射撃訓練システム。
【請求項3】
請求項1に記載の射撃訓練システムにおいて、
前記バイタル端末は、前記バイタルセンサから取得したバイタル情報を前記バイタルサーバに送信し、
前記標的装置は、弾通過位置の情報を含む射撃結果を前記バイタルサーバに送信し、
前記バイタルサーバは、バイタル傾向情報の分析において、射撃訓練で生じたデータを追加しながら処理して学習させて、バイタル傾向情報を更新していく処理を行うことを特徴とする射撃訓練システム。
【請求項4】
請求項1に記載の射撃訓練システムにおいて、
前記バイタル情報は、心拍数と脳波の少なくとも1つを含むことを特徴とする射撃訓練システム。
【請求項5】
請求項1に記載の射撃訓練システムにおいて、
前記射撃時の所定時間前における所定時間は、1秒から5秒の間の範囲内であることを特徴とする射撃訓練システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射撃訓練システムに関し、特に、射手のバイタル状態をふまえた射撃訓練システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の射撃訓練システムでは、訓練毎の該当射手の射撃結果を比較することで前回より射撃精度が向上したことや、低下したことの判断を行っていた。
【0003】
また、特許文献1には、実弾が標的に命中した位置や命中した位置による得点などを射撃結果として画面に色分け表示する射撃訓練システムが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、訓練者にストレスを与えた状態での射撃訓練システムとして、射撃訓練の目標となる標的を隠顕動作させる標的装置と、標的装置の標的を任意の隠顕時間で制御する標的制御装置と、標的装置の隠顕動作に連動しレーザ光線を送信するレーザ送信装置を有する射撃訓練システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-126257号公報
【特許文献2】特開2017-172816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の射撃訓練システムでは、射撃精度の変動が何に起因するものなのかは判断していなかった。例えば特許文献1では、実弾が標的に命中した位置等を表示するものであり、その命中精度がどのような原因によるものなのかは検出していない。また、特許文献2は、訓練者にストレスを与えるものであり、標的への精度がどのような原因によるものなのかは検出していない。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みて、射手の射撃精度とバイタル状態の関係性を判定し、より高い射撃精度を目指すことができる射撃訓練システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、代表的な本発明の射撃訓練システムの一つは、弾通過位置を検出する標的装置と、弾発射を検出する表示器と、射撃結果と射撃履歴を保持する射撃サーバと、射手のバイタル情報を検出するバイタルセンサと、前記バイタルセンサからバイタル情報を取得するバイタル端末と、過去の射撃精度とバイタル情報を比較し分析したバイタル傾向情報を保持するバイタルサーバと、を備え、前記バイタル端末は、射撃を行う射手のバイタル傾向情報を前記バイタルサーバから取得し、射手の射撃結果を前記射撃サーバから取得し、バイタル傾向情報から射撃精度に影響があるバイタル情報に対して、今回の射撃時の所定時間前から射撃時までのバイタル情報のうち射撃精度に所定以上悪影響を及ぼすデータがあった場合に当該データを前記バイタル端末の表示部に表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、射撃訓練システムにおいて、射手の射撃精度とバイタル状態の関係性を判定し、より高い射撃精度を目指すことができる。
上記以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態による態様を実施するためのコンピュータシステムのブロック図である。
【
図3】
図3は、本発明の射撃訓練システムの一実施形態を示す全体構成図である。
【
図4】
図4は、本発明における射撃サーバの一例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、本発明における表示器の一例を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、本発明における標的装置の一例を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、本発明におけるバイタルサーバの一例を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、本発明におけるバイタル端末の一例を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、本発明におけるバイタルセンサの一例を示すブロック図である。
【
図10】
図10は、本発明における射撃結果および訓練履歴のデータの流れの一例を示す図である。
【
図11】
図11は、本発明におけるバイタル情報のデータの流れの一例を示す図である。
【
図12】
図12は、本発明における射撃結果のデータ内容の一例を示す表である。
【
図13】
図13は、本発明における訓練履歴のデータ内容の一例を示す表である。
【
図14】
図14は、本発明におけるバイタル傾向情報のデータ内容の一例を示す表である。
【
図15】
図15は、本発明におけるバイタル情報のデータ内容の一例を示す表である。
【
図16】
図16は、本発明におけるバイタル傾向分析の一例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態を説明する。
【0012】
<実施形態による態様を実施するためのコンピュータシステム>
図1は、本開示の実施形態による態様を実施するためのコンピュータシステム300のブロック図である。本明細書で開示される様々な実施形態の機構及び装置は、任意の適切なコンピューティングシステムに適用されてもよい。コンピュータシステム300の主要コンポーネントは、1つ以上のプロセッサ302、メモリ304、端末インターフェース312、ストレージインターフェース314、I/O(入出力)デバイスインターフェース316、及びネットワークインターフェース318を含む。これらのコンポーネントは、メモリバス306、I/Oバス308、バスインターフェースユニット309、及びI/Oバスインターフェースユニット310を介して、相互的に接続されてもよい。
【0013】
コンピュータシステム300は、プロセッサ302と総称される1つ又は複数の処理装置302A及び302Bを含んでもよい。各プロセッサ302は、メモリ304に格納された命令を実行し、オンボードキャッシュを含んでもよい。ある実施形態では、コンピュータシステム300は複数のプロセッサを備えてもよく、また別の実施形態では、コンピュータシステム300は単一の処理装置によるシステムであってもよい。処理装置としては、CPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processong Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等を適用できる。
【0014】
ある実施形態では、メモリ304は、データ及びプログラムを記憶するためのランダムアクセス半導体メモリ、記憶装置、又は記憶媒体(揮発性又は不揮発性のいずれか)を含んでもよい。ある実施形態では、メモリ304は、コンピュータシステム300の仮想メモリ全体を表しており、ネットワークを介してコンピュータシステム300に接続された他のコンピュータシステムの仮想メモリを含んでもよい。メモリ304は、概念的には単一のものとみなされてもよいが、他の実施形態では、このメモリ304は、キャッシュおよび他のメモリデバイスの階層など、より複雑な構成となる場合がある。例えば、メモリは複数のレベルのキャッシュとして存在し、これらのキャッシュは機能毎に分割されてもよい。その結果、1つのキャッシュは命令を保持し、他のキャッシュはプロセッサによって使用される非命令データを保持する構成であってもよい。メモリは、いわゆるNUMA(Non-Uniform Memory Access)コンピュータアーキテクチャのように、分散され、種々の異なる処理装置に関連付けられてもよい。
【0015】
メモリ304は、本明細書で説明する機能を実施するプログラム、モジュール、及びデータ構造のすべて又は一部を格納してもよい。例えば、メモリ304は、潜在因子特定アプリケーション350を格納していてもよい。ある実施形態では、潜在因子特定アプリケーション350は、後述する機能をプロセッサ302上で実行する命令又は記述を含んでもよく、あるいは別の命令又は記述によって解釈される命令又は記述を含んでもよい。ある実施形態では、潜在因子特定アプリケーション350は、プロセッサベースのシステムの代わりに、またはプロセッサベースのシステムに加えて、半導体デバイス、チップ、論理ゲート、回路、回路カード、および/または他の物理ハードウェアデバイスを介してハードウェアで実施されてもよい。ある実施形態では、潜在因子特定アプリケーション350は、命令又は記述以外のデータを含んでもよい。ある実施形態では、カメラ、センサ、または他のデータ入力デバイス(図示せず)が、バスインターフェースユニット309、プロセッサ302、またはコンピュータシステム300の他のハードウェアと直接通信するように提供されてもよい。このような構成では、プロセッサ302がメモリ304及び潜在因子識別アプリケーションにアクセスする必要性が低減する可能性がある。
【0016】
コンピュータシステム300は、プロセッサ302、メモリ304、表示システム324、及びI/Oバスインターフェースユニット310間の通信を行うバスインターフェースユニット309を含んでもよい。I/Oバスインターフェースユニット310は、様々なI/Oユニットとの間でデータを転送するためのI/Oバス308と連結していてもよい。I/Oバスインターフェースユニット310は、I/Oバス308を介して、I/Oプロセッサ(IOP)又はI/Oアダプタ(IOA)としても知られる複数のI/Oインターフェースユニット312、314、316、及び318と通信してもよい。表示システム324は、表示コントローラ、表示メモリ、又はその両方を含んでもよい。表示コントローラは、ビデオ、オーディオ、又はその両方のデータを表示装置326に提供することができる。また、コンピュータシステム300は、データを収集し、プロセッサ302に当該データを提供するように構成された1つまたは複数のセンサ等のデバイスを含んでもよい。例えば、コンピュータシステム300は、心拍数データやストレスレベルデータ等を収集するバイオメトリックセンサ、湿度データ、温度データ、圧力データ等を収集する環境センサ、及び加速度データ、運動データ等を収集するモーションセンサ等を含んでもよい。これ以外のタイプのセンサも使用可能である。表示メモリは、ビデオデータをバッファするための専用メモリであってもよい。表示システム324は、単独のディスプレイ画面、テレビ、タブレット、又は携帯型デバイスなどの表示装置326に接続されてもよい。ある実施形態では、表示装置326は、オーディオをレンダリングするためスピーカを含んでもよい。あるいは、オーディオをレンダリングするためのスピーカは、I/Oインターフェースユニットと接続されてもよい。他の実施形態では、表示システム324が提供する機能は、プロセッサ302を含む集積回路によって実現されてもよい。同様に、バスインターフェースユニット309が提供する機能は、プロセッサ302を含む集積回路によって実現されてもよい。
【0017】
I/Oインターフェースユニットは、様々なストレージ又はI/Oデバイスと通信する機能を備える。例えば、端末インターフェースユニット312は、ビデオ表示装置、スピーカテレビ等のユーザ出力デバイスや、キーボード、マウス、キーパッド、タッチパッド、トラックボール、ボタン、ライトペン、又は他のポインティングデバイス等のユーザ入力デバイスのようなユーザI/Oデバイス320の取り付けが可能である。ユーザは、ユーザインターフェースを使用して、ユーザ入力デバイスを操作することで、ユーザI/Oデバイス320及びコンピュータシステム300に対して入力データや指示を入力し、コンピュータシステム300からの出力データを受け取ってもよい。ユーザインターフェースは例えば、ユーザI/Oデバイス320を介して、表示装置に表示されたり、スピーカによって再生されたり、プリンタを介して印刷されたりしてもよい。
【0018】
ストレージインターフェース314は、1つ又は複数のディスクドライブや直接アクセスストレージ装置322(通常は磁気ディスクドライブストレージ装置であるが、単一のディスクドライブとして見えるように構成されたディスクドライブのアレイ又は他のストレージ装置であってもよい)の取り付けが可能である。ある実施形態では、ストレージ装置322は、任意の二次記憶装置として実装されてもよい。メモリ304の内容は、ストレージ装置322に記憶され、必要に応じてストレージ装置322から読み出されてもよい。ネットワークインターフェース318は、コンピュータシステム300と他のデバイスが相互的に通信できるように、通信経路を提供してもよい。この通信経路は、例えば、ネットワーク330であってもよい。
【0019】
図1に示されるコンピュータシステム300は、プロセッサ302、メモリ304、バスインタフェース309、表示システム324、及びI/Oバスインターフェースユニット310の間の直接通信経路を提供するバス構造を備えているが、他の実施形態では、コンピュータシステム300は、階層構成、スター構成、又はウェブ構成のポイントツーポイントリンク、複数の階層バス、平行又は冗長の通信経路を含んでもよい。さらに、I/Oバスインターフェースユニット310及びI/Oバス308が単一のユニットとして示されているが、実際には、コンピュータシステム300は複数のI/Oバスインターフェースユニット310又は複数のI/Oバス308を備えてもよい。また、I/Oバス308を様々なI/Oデバイスに繋がる各種通信経路から分離するための複数のI/Oインターフェースユニットが示されているが、他の実施形態では、I/Oデバイスの一部または全部が、1つのシステムI/Oバスに直接接続されてもよい。
【0020】
ある実施形態では、コンピュータシステム300は、マルチユーザメインフレームコンピュータシステム、シングルユーザシステム、又はサーバコンピュータ等の、直接的ユーザインターフェースを有しない、他のコンピュータシステム(クライアント)からの要求を受信するデバイスであってもよい。他の実施形態では、コンピュータシステム300は、デスクトップコンピュータ、携帯型コンピュータ、ノートパソコン、タブレットコンピュータ、ポケットコンピュータ、電話、スマートフォン、又は任意の他の適切な電子機器であってもよい。
【0021】
<実弾射撃訓練の例>
図2は、実弾射撃訓練の例を示す図である。
【0022】
実弾射撃訓練では、射手100が実弾を標的装置105へ向けて発射すると表示器101の検出部101aによって射手100の発射検出(発射情報検出)を行う。一方、標的側である標的装置105では発射された弾丸の弾通過位置検出(着弾情報検出)を行う。そして、射撃サーバ110にて表示器101からの発射情報と標的装置105からの着弾情報の擦り合わせを実施する。この情報は、表示器101へ送信され、該当射手100の近くに配置された表示器101の表示部101bに着弾点を表示する。このことで、射手100やその指導者が射撃結果を知ることができる。さらに、この射撃結果は訓練単位で射撃サーバ110に記憶され、訓練後に参照することもできる。
【0023】
<射撃訓練システム>
図3は、本発明の射撃訓練システムの一実施形態を示す全体構成図である。
【0024】
図3に示す射撃訓練システムは、射撃サーバ10、表示器1および標的装置5に加え、バイタルセンサ3、バイタル端末2およびバイタルサーバ11を備えている。これらは、
図1で示したコンピュータシステム300を適用してもよい。表示器1、バイタル端末2は、射手100の近傍に配置される。バイタルセンサ3は、射手100のバイタル情報を取得するように配置される。例えば、射手100に装着しているセンサ等である。また、標的装置5は、射手100から離れた標的側に設けられている。
【0025】
射手100は、レーンごとに射撃訓練を行うことができる。
図3では1レーンから5レーンの5つのレーンが設けられている。このため、1度に5人が同時に射撃訓練を行える。表示器1、バイタル端末2、バイタルセンサ3、標的装置5はレーンごとに設けられている。射撃サーバ10とバイタルサーバ11は、表示器1、バイタル端末2、標的装置5とネットワーク20を介して通信接続されている。ネットワーク20は、有線でも無線でも可能である。すなわち、複数の表示器1、バイタル端末2、バイタルセンサ3、標的装置5に対して、1つの射撃サーバ10とバイタルサーバ11が対応している。射撃サーバ10とバイタルサーバ11は、射撃レーンとは別の場所に配置することができる。なおレーンの数は、例えば複数でよく、5つでなくてもよい。
【0026】
図3に示す射撃訓練システムでは、このような構成要素を備えることにより、実弾射撃時の弾着位置検出による射撃結果から得られる射撃精度を検出できる。さらに、射撃時のバイタル情報を蓄積、比較することにより、該当射手の射撃精度とバイタル状態の関係を解析することができる。そして、以後の訓練時に射撃精度が高いバイタル状態から変動があった場合に射手や射手を指導する指導者へ通知することができる。
【0027】
ここでバイタル状態は射手100のバイタルサインを含む身体に関する情報が示す状態である。例えば、後述する
図14で例が示されている。
【0028】
<射撃サーバ>
図4は、本発明における射撃サーバの一例を示すブロック図である。
【0029】
射撃サーバ10は、操作部10a、制御部10b、通信部10c、表示部10dを備えている。射撃サーバ10は、この他、データを記憶する記憶部を備えていてもよいし、制御部10bで必要な情報を記憶してもよい。
【0030】
操作部10aは、使用者が標的動作指示、訓練履歴送信指示等を入力する。この入力は、マウス、タッチパネル、キーボードなどの入力デバイスにより行うことができる。標的動作指示により、射撃訓練が開始される。操作部10aの入力操作は、入力データとして制御部10bに送信される。
【0031】
制御部10bは、各種の制御を行う機能を有している。制御部10bは、操作部10aから入力データを受信し、通信部10cから発射情報や着弾情報を受信する。また、制御部10bは、通信部10cへ情報を送信する制御や、表示部10dへ表示データを送信する制御を行う。例えば、制御部10bは、標的動作指示を操作部10aから入力した場合は、隠顕指示を通信部10cを介して標的装置5へ送る。また、制御部10bは、訓練履歴送信指示を操作部10aから入力した場合は、射撃結果や訓練履歴を通信部10cを介してバイタルサーバ11へ送信する。
【0032】
通信部10cは、
図3で説明したネットワーク20と通信を行いながら制御部10bとのデータのやりとりを行う。
図4では、表示器1、標的装置5、バイタル端末2およびバイタルサーバ11とLAN(Local Area Network)通信を行う例を示している。
【0033】
表示部10dは、弾着点表示や訓練履歴表示等を表示可能な表示装置である。例えば、液晶画面や有機EL(OLED)画面を適用してもよい。
【0034】
射撃サーバ10は、このような構成を備えることで次の機能を備えている。まずは、標的装置5の隠顕動作を指示する機能である。さらに、射撃サーバ10は、表示器1から受信する発射情報と、標的装置5から受信する着弾情報を判定し、射手100単位で弾着点を表示する機能を備えている。さらに、射撃サーバ10は、射撃結果を表示器1およびバイタル端末2に送信する機能を備えている。さらに、射撃サーバ10は、その訓練中に発生した射撃結果を訓練履歴として蓄積して、表示部10dに表示し、バイタルサーバ11に送信する機能を有する。
【0035】
<表示器>
図5は、本発明における表示器の一例を示すブロック図である。
【0036】
表示器1は、操作部1a、制御部1b、通信部1c、表示部1d、検出部1eを備えている。表示器1は、この他、データを記憶する記憶部を備えていてもよいし、制御部1bで必要な情報を記憶してもよい。
【0037】
操作部1aは、使用者が画面切替指示等を入力する。この入力は、マウス、タッチパネル、キーボードなどの入力デバイスにより行うことができる。操作部1aの入力操作は、入力データとして制御部1bに送信される。
【0038】
制御部1bは、各種の制御を行う機能を有している。制御部1bは、操作部1aから入力データを受信し、表示部1dへ表示データを送信する制御を行う。例えば、制御部1bは、画面切替指示を操作部1aから入力した場合は、それに基づく表示データを表示部1dへ送る。また、制御部1bは、検出部1eから発射検出の信号を入力した場合は、発射情報を通信部1cを介して射撃サーバ10へ送る。また、制御部1bは、通信部1cを介して射撃サーバ10から射撃結果の情報を受信した場合は、それに応じた表示データを表示部1dへ送信する。
【0039】
通信部1cは、
図3で説明したネットワーク20と通信を行いながら制御部1bとのデータのやりとりを行う。
図5では、射撃サーバ10とLAN通信を行う例を示している。
【0040】
表示部1dは、弾着点表示等が可能な表示装置である。例えば、液晶画面や有機EL画面を適用してもよい。表示部1dは、各レーンに射手100やその指導者が見えやすい位置に配置される。
【0041】
検出部1eは、弾発射を検出するセンサを含む構成である。例えば、弾発射時の衝撃波を検出して、射手100の弾発射を検知する。検出部1eは、各レーンに射手100の弾発射が検知しやすい位置に配置される。このため、検出部1eは表示部1dと一体的な構成でなくてもよく、配線で接続されている構成でもよい。
【0042】
このように、表示器1は射撃サーバ10から受信する射撃結果表示のほか、射手100の弾発射を検出して発射情報として射撃サーバ10に送信する機能を有する。
【0043】
<標的装置>
図6は、本発明における標的装置の一例を示すブロック図である。
【0044】
標的装置5は、検出部5a、制御部5b、通信部5c、標的部5dを備えている。標的装置5は、この他、データを記憶する記憶部を備えていてもよいし、制御部5bで必要な情報を記憶してもよい。
【0045】
検出部5aは、弾通過位置を検出する。この検出は、例えば、衝撃波を検出することにより、上下方向と横方向の座標を計算して弾が標的部5dのどの位置を通過したかを検出する。このことで、目標位置に対してどの程度の精度で弾通過したかを検出できる。検出したデータは、制御部5bへ送信される。
【0046】
制御部5bは、各種の制御を行う機能を有している。制御部5bは、検出部5aから着弾位置検出のデータを受信した場合は、それに基づく着弾情報を通信部5cを介して射撃サーバ10へ送信する。また、制御部5bは、通信部5cを介して射撃サーバ10から隠顕指示の情報を受信した場合は、それに基づき標的部5dの隠顕制御を行う。
【0047】
通信部5cは、
図3で説明したネットワーク20と通信を行いながら制御部5bとのデータのやりとりを行う。
図6では、射撃サーバ10とLAN通信を行う例を示している。
【0048】
標的部5dは、弾の標的を構成している。標的部5dは、制御部5bの制御により、起きたり倒れたりする機能を有している。またこの時、弾が何発当たったら標的部5dが倒れる等の制御も可能となる。隠顕の動作は、このような標的部5dの起きや倒れの動作のことを示す。
【0049】
このように、標的装置5は射撃サーバ10から受信する標的の隠顕指示のほか、弾通過位置を検出して着弾情報として射撃サーバ10に送信する機能を有する。
【0050】
<バイタルサーバ>
図7は、本発明におけるバイタルサーバの一例を示すブロック図である。
【0051】
バイタルサーバ11は、操作部11a、制御部11b、通信部11c、表示部11dを備えている。バイタルサーバ11は、この他、データを記憶する記憶部を備えていてもよいし、制御部11bで必要な情報を記憶してもよい。
【0052】
操作部11aは、使用者が解析指示、傾向送信指示等を入力する。この入力は、マウス、タッチパネル、キーボードなどの入力デバイスにより行うことができる。操作部11aの入力操作は、入力データとして制御部11bに送信される。
【0053】
制御部11bは、各種の制御を行う機能を有している。制御部11bは、操作部11aから入力データを受信し、通信部11cを介して、バイタル端末2からバイタル情報、射撃サーバ10から訓練履歴等を受信する。また、制御部11bは、通信部11cへ情報を送信する制御や、表示部11dへ表示データを送信する制御を行う。例えば、制御部11bは、解析指示の信号を操作部11aから受信した場合は、訓練履歴とバイタル情報を比較、分析を行い、バイタル傾向情報を出力する。制御部11bは、バイタル傾向情報を、記録したり、表示部11dで表示させたりすることができる。また、制御部11bは、傾向送信指示の信号を操作部11aから受信した場合は、バイタル傾向情報を通信部11cを介してバイタル端末2へ送信する。
【0054】
バイタル傾向情報は、収集したバイタル情報と射撃で得た弾着位置との関係を示すデータである。特に、目標の的の位置(標的の中心)に対する今までの射撃精度とその射撃時のバイタル情報を比較する。射撃精度が高い射撃のときのバイタル情報や、射撃精度が低い射撃の時のバイタル情報の傾向を分析する。そのことで、射撃精度が高いときのバイタル状態や、射撃精度の低い射撃のときのバイタル状態の傾向を調べることができる。
【0055】
通信部11cは、
図3で説明したネットワーク20と通信を行いながら制御部11bとのデータのやりとりを行う。
図7では、バイタル端末2および射撃サーバ10とLAN通信を行う例を示している。
【0056】
表示部11dは、訓練履歴表示、バイタルデータ表示、解析結果表示等を表示可能な表示装置である。例えば、液晶画面や有機EL画面を適用してもよい。
【0057】
このように、バイタルサーバ11はバイタル端末2から受信するバイタル情報を蓄積する機能を有する。さらに、バイタルサーバ11は、射撃サーバ10から受信する訓練履歴とバイタル情報を比較、分析し、射手単位もしくはチーム単位で射撃精度に対するバイタル傾向情報(バイタル傾向データ)を蓄積する機能を有する。さらに、バイタルサーバ11は、射撃時に該当射手のバイタル傾向情報をバイタル端末2に送信する機能を有する。
【0058】
<バイタル端末>
図8は、本発明におけるバイタル端末の一例を示すブロック図である。
【0059】
バイタル端末2は、操作部2a、制御部2b、通信部2c、表示部2d、無線部2eを備えている。バイタル端末2は、この他、データを記憶する記憶部を備えていてもよいし、制御部2bで必要な情報を記憶してもよい。
【0060】
操作部2aは、使用者が画面切替指示等を入力する。この入力は、マウス、タッチパネル、キーボードなどの入力デバイスにより行うことができる。操作部2aの入力操作は、入力データとして制御部2bに送信される。
【0061】
制御部2bは、各種の制御を行う機能を有している。制御部2bは、操作部2aから入力データを受信し、表示部2dへ表示データを送信する制御を行う。例えば、制御部2bは、画面切替指示を操作部2aから入力した場合は、それに基づく表示データを表示部2dへ送る。また、制御部2bは、無線部2eから脳波データ、心電データ等のバイタル情報の信号を無線部2eから入力する。さらに、制御部2bは、バイタル傾向情報をバイタルサーバ11から、射撃結果を射撃サーバ10から、通信部2cを介してそれぞれ受信する。制御部2bは、これらのデータから傾向判定等の処理を行う。処理の結果は表示データとして、表示部2dへ送信する。また、制御部2bは、バイタル情報を、バイタルサーバ11へ通信部2cを介して送信する。
【0062】
通信部2cは、
図3で説明したネットワーク20と通信を行いながら制御部2bとのデータのやりとりを行う。
図8では、射撃サーバ10、バイタルサーバ11とLAN通信を行う例を示している。
【0063】
表示部2dは、バイタル情報表示、バイタル傾向表示、バイタル差異表示等が可能な表示装置である。例えば、液晶画面や有機EL画面を適用してもよい。表示部2dは、各レーンに射手100やその指導者が見えやすい位置に配置される。
【0064】
無線部2eは、射手100のバイタルセンサ3からのデータを受信する。バイタルセンサ3からのデータは、例えば、脳波データ、心電データ等である。無線で受信することで、射手100との間の配線を省略し、射手100の射撃を行いやすくする。
【0065】
このように、バイタル端末2はバイタルセンサ3から受信する脳波データや心電データをバイタル情報として蓄積する機能を有する。さらに、バイタル端末2は、このバイタル情報とバイタル傾向情報を比較する機能を有する。さらに、バイタル端末2は、射撃サーバ10から受信する射撃結果の参照タイミングでバイタル状況を表示する機能を有する。
【0066】
<バイタルセンサ>
図9は、本発明におけるバイタルセンサの一例を示すブロック図である。
【0067】
バイタルセンサ3は、脳波センサ3a、無線部3b、心電センサ3c、無線部3dを備えている。
【0068】
脳波センサ3aは、射手100に装着され射手100の脳波を測定する。測定した脳波データは無線部3bへ送信される。脳波データは無線部3bからは無線通信によりバイタル端末2の無線部2eへ送信される。脳波データからは、射手100の集中度やリラックス度等を検出できる。
【0069】
心電センサ3cは、射手100に装着され射手100の心電データを測定する。測定した心電データは無線部3dへ送信される。心電データは無線部3dからは無線通信によりバイタル端末2の無線部2eへ送信される。心電データは、心拍数、血圧、体温等を測定できる。心電図を測定してもよい。また、血圧、体温は、別のセンサを用いてもよい。
【0070】
<射撃結果および訓練履歴のデータの流れ>
図10は、本発明における射撃結果および訓練履歴のデータの流れの一例を示す図である。
【0071】
図10において、射撃結果は1発毎の着弾情報であり、訓練履歴は訓練開始から訓練終了までの期間の、全ての射手の全ての射撃結果である。
【0072】
訓練が開始されると射撃サーバ10は、訓練開始の処理を行い(S101)、標的動作指示の処理を行う(S102)。そして、射撃サーバ10は、各標的装置5に対して隠顕指示の信号を送信する(S103)。
【0073】
隠顕指示の信号を受信した標的装置5は、標的部5dの標的隠顕動作を行う(S104)。すると、標的隠顕動作に合わせて射手が射撃を行う(S105)。このとき、表示器1の検出部1eは、弾発射を検知し、弾発射の検出による発射情報が射撃サーバ10へ送信される(S106)。加えて、標的装置5の検出部5aが弾通過位置を検出し、着弾情報として射撃サーバ10へ送信する(S107)。
【0074】
次に、射撃サーバ10では、弾通過位置検出による着弾情報に基づき射撃結果判定を行う(S108)。射撃結果判定は、目標の的(例えば標的の中心)に対する射撃精度を示すものである。射撃精度は、例えば、射撃が目標の的にどれだけ近いかを評価するものである。的の位置と弾通過位置の距離が近くなるほど高い評価となる。次に、射撃サーバ10の表示部10dで弾着点表示をする(S109)とともに、該当射手の表示器1に射撃結果の情報を送信する(S110)。射撃結果を受信した表示器1では、表示部1dで弾着点表示を行う(S111)。弾着点表示は、標的部5dの弾通過位置を表示するものである。
【0075】
同時に、射撃サーバ10は、該当射手のバイタル端末2にも射撃結果を送信する(S112)。射撃結果を受信したバイタル端末2は、傾向判定を行う(S113)。傾向判定は、該当射手の射撃時のタイミングでバイタル情報とバイタル傾向情報の比較をバイタル端末2の制御部2bで実施する。
【0076】
訓練終了時(S114)は、射撃サーバ10は、訓練履歴を登録し(S115)、訓練履歴送信指示を行う(S116)。すると、訓練履歴はバイタルサーバ11に送信される(S117)。訓練履歴を受信したバイタルサーバ11は、バイタルサーバ11に訓練履歴を登録する(S118)。ここで訓練履歴は、射撃結果をまとめたデータとなる。例えば、標的を5秒間隔で10回だして、その間に20発打つ訓練をすると、その射撃結果のデータが訓練履歴となる。
【0077】
<バイタル情報のデータの流れ>
図11は、本発明におけるバイタル情報のデータの流れの一例を示す図である。
【0078】
訓練を開始する前に、今回の訓練に参加する射手のバイタル傾向情報を該当射手のバイタル端末2に送信し、バイタル傾向情報を記録する。具体的には、バイタルサーバ11から、バイタル傾向情報の送信指示を行い(S201)、バイタル傾向情報は該当射手のバイタル端末2に送信される。バイタル傾向情報を受信したバイタル端末2は、該当射手のバイタル傾向情報を記録する。該当射手であるか否かの識別は、あらかじめ射撃訓練をする際のレーンと射手の名前またはID等の識別情報を登録しておくことで識別できる。また、射手が射撃を行うバイタル端末2から射手のIDをバイタルサーバ11に送信して識別してもよい。
【0079】
訓練が開始されると(S204)、訓練が終了するまでの期間は、バイタル端末2においてバイタルセンサ3からバイタル情報を受信する。具体的には、バイタル端末2は、脳波データおよび心電データを受信し(S205、S207)、バイタル情報として記録する(S206、S207)。
【0080】
一方、射手による射撃が開始されると(S209)、射撃サーバ10から射撃結果がバイタル端末2へ送信される(S210)。このときの射撃結果は、射撃時刻の情報を含む。バイタル端末2は、射撃時刻を参照して、S206及びS208で記録された当該時刻のバイタル情報と、S203で記録されたバイタル傾向情報を過去の射撃精度をふまえながら比較することで傾向判定を行う。ここでの傾向判定は、
図10のS113と同じ処理である。そして、傾向判定の必要に応じて、判定結果をバイタル端末2の表示部2dに表示し、射手または指導者に通知する。
【0081】
傾向判定は、バイタル傾向情報から判明する射撃精度に影響があるバイタル情報に対して、今回の射撃時のバイタル情報の比較を行う。具体的には、バイタル傾向情報から判明する射撃精度に影響があるバイタル情報に対して、今回の射撃時のバイタル情報が過去の射撃精度に所定以上悪影響を及ぼすデータであれば、それを表示する。例えば、心拍数が80で射撃していると良い成績で、100を超えると悪い成績というバイタル傾向情報がある場合、今回の心拍数が90、100と80から離れていったら、その情報を表示部2dに表示する。またはその心拍数が上がり過ぎていることを表示部2dに表示する。射撃精度の所定以上の悪影響は、例えば、標的の中心から弾通過の位置までの距離の値や、その距離に応じた点数化の値等により閾値を決めて判定すればよい。その閾値より射撃精度の悪い方の値であれば、射撃精度に所定以上悪影響を及ぼすと判定できる。逆に射撃精度の良い状態のバイタル状態であることを表示してもよい。また、傾向判定と同時に射撃精度に所定以上悪影響を及ぼすバイタル情報に対する射手の対応表示を行ってもよい。例えば、心拍数が上がっていれば「落ち着いてください」とか、リラックス度が下がっていれば「リラックスしてください」とか、集中度が落ちていれば「集中してください」などである。
【0082】
訓練終了後(S212)は、バイタルサーバ11でバイタル情報収集の指示を行うと(S213)、バイタル端末2へバイタル情報要求を送信する(S214)。バイタル端末2は、バイタルサーバ11からのこの要求により、記録したバイタル情報をバイタルサーバ11に送信する(S215)。そして、バイタルサーバ11では、受信したバイタル情報を登録して蓄積する(S216)。
【0083】
<各データの例>
図12は、本発明における射撃結果のデータ内容の一例を示す表である。
図10であればS110の射撃結果、
図11であればS210の射撃結果が該当する。
図12の例では、「射手」、「時刻」、「X座標」、「Y座標」、「精度」の各項目のデータが格納されている。「射手」は、射撃を行った射手名もしくはその射手のID等の射手を特定する情報である。「時刻」は、射撃を実施した時刻のデータである。「X座標」は、標的の中心を(0,0)とした場合のその射撃の着弾位置のX座標のデータである。「Y座標」は、標的の中心を(0,0)とした場合のその射撃の着弾位置のY座標のデータである。「精度」は、標的の中心から着弾位置までの距離のデータである。
【0084】
図13は、本発明における訓練履歴のデータ内容の一例を示す表である。
図10であればS117の訓練履歴が該当する。
図13の例では、「訓練日時」、「チーム」、「参加射手1~n」、「射撃結果1~n」の各項目のデータが格納されている。「訓練日時」は、訓練を開始した日時のデータである。「チーム」は、訓練を実施したチームを特定するデータである。チームは、例えば、所属部隊や所属部隊に属する班等である。「参加射手1~n」は、訓練に参加した射手分の名称データ等の射手を特定する情報である。射手のIDでもよい。ここでのnは、参加した人数分を意味する。「射撃結果1~n」は、訓練中に発生した分の射撃結果データである。具体的には
図12の表の内容である。ここでのnは射撃結果の数を意味する。
【0085】
図14は、本発明におけるバイタル傾向情報のデータ内容の一例を示す表である。
図11であれば、S202のバイタル傾向情報が該当する。
図14の例では、「対象射手」、「射手血圧(訓練開始時)」、「射手体温(訓練開始時)」、「射手集中度(射撃時)」、「射手リラックス度(射撃時)」、「射手心拍数(射撃時)」、「射手集中度(射撃X秒前)」、「射手リラックス度(射撃X秒前)」、「射手心拍数(射撃X秒前)」、「対象チーム」、「チーム集中度(射撃時)」、「チームリラックス度(射撃時)」、「チーム心拍数(射撃時)」、「チーム集中度(射撃X秒前)」、「チームリラックス度(射撃X秒前)」、「チーム心拍数(射撃X秒前)」の各項目のデータが格納されている。「対象射手」は、バイタル傾向情報の対象となった射手名もしくはその射手のID等の射手を特定する情報である。「射手血圧(訓練開始時)」は、対象射手の訓練開始時の血圧のデータである。「射手体温(訓練開始時)」は、対象射手の訓練開始時の体温のデータである。「射手集中度(射撃時)」は、対象射手の射撃精度が高い射撃時の集中度のデータである。「射手リラックス度(射撃時)」は、対象射手の射撃精度が高い射撃時のリラックス度のデータである。「射手心拍数(射撃時)」は、対象射手の射撃精度が高い射撃時の心拍数のデータである。「射手集中度(射撃X秒前)」は、対象射手の射撃精度が高い射撃X秒前の集中度のデータである。「射手リラックス度(射撃X秒前)」は、対象射手の射撃精度が高い射撃X秒前のリラックス度のデータである。「射手心拍数(射撃X秒前)」は、対象射手の射撃精度が高い射撃X秒前の心拍数のデータである。「対象チーム」は、対象射手が属するバイタル傾向情報の対象となったチーム名もしくはそのチームのID等のチームを特定する情報である。「チーム集中度(射撃時)」は、対象チームの射撃精度が高い射撃時の集中度(例えばチームの平均値)のデータである。「チームリラックス度(射撃時)」は、対象チームの射撃精度が高い射撃時(例えばチームの平均値)のリラックス度のデータである。「チーム心拍数(射撃時)」は、対象チームの射撃精度が高い射撃時の心拍数(例えばチームの平均値)のデータである。「チーム集中度(射撃X秒前)」は、対象チームの射撃精度が高い射撃X秒前の集中度(例えばチームの平均値)のデータである。「チームリラックス度(射撃X秒前)」は、対象チームの射撃精度が高い射撃X秒前のリラックス度(例えばチームの平均値)のデータである。「チーム心拍数(射撃X秒前)」は、対象チームの射撃精度が高い射撃X秒前の心拍数(例えばチームの平均値)のデータである。
【0086】
ここで、集中度、リラックス度は脳波センサ3aからの脳波データに基づき算出できる。また、体温、血圧、心拍数は、心電センサ3cの心電データより検出できる。
【0087】
図15は、本発明におけるバイタル情報のデータ内容の一例を示す表である。
図11であれば、S215のバイタル情報が該当する。
図15の例では、「射手」、「血圧・体温測定時刻」、「血圧」、「体温」、「脳波データ測定時刻」、「集中度」、「リラックス度」、「心電データ測定時刻」、「心拍数」の各項目のデータが格納されている。「射手」は、射撃を行った射手名もしくはその射手のID等の射手を特定する情報である。「血圧・体温測定時刻」は、訓練開始の時刻のデータである。「血圧」は、訓練開始時の血圧のデータである。「体温」は、訓練開始時の体温のデータである。「脳波データ測定時刻」は、脳波センサからの脳波データの受信時刻のデータである。「集中度」は、脳波センサから受信した集中度のデータである。「リラックス度」は、脳波センサから受信したリラックス度のデータである。「心電データ測定時刻」は、心電センサからの心電データの受信時刻のデータである。「心拍数」は、心電センサから受信した心拍数のデータである。
【0088】
<バイタル傾向情報>
上述した
図14で一例を示したバイタル傾向情報は、バイタルサーバ11において分析を行う。
図10のS118で登録した当該訓練の訓練履歴と、
図11のS216で登録したバイタル情報を比較、分析することで更新する。このことで、射撃精度とバイタル情報の関係が判明する。
【0089】
このとき、射撃時におけるバイタル情報と射撃精度を比較するが、これに加えて、
図14にも示すように射撃X秒前のバイタル状態がどのような状態であったかを判定するとよい。これは、照準時の状態を考慮したものである。例えば、照準が射撃の1秒前であれば、X秒は1秒となる。このため、バイタル情報は、射撃の所定秒前から連続してバイタル情報のデータを取得しておくとよい。例えば、5秒前から射撃時まで、さらには3秒前から射撃時まで、さらには2秒前から射撃時まで、さらには1秒前から射撃時までなどである。すなわち所定秒前の所定秒は1秒から5秒の間、さらには、2秒から3秒の間の範囲とすることができる。このとき、バイタル情報の変化に対する射撃精度を比較してバイタル傾向情報を算出してもよい。例えば、集中度が射撃の数秒前から連続して上がった状態であれば、射撃精度がよい等である。
【0090】
射撃時のX秒前のバイタル状態を段階的に遡って測定することにより、バイタル状態の影響をどの程度の時間受け続けるかを検出することができる。例えば、3秒前から1秒前の2秒間バイタル状態に変化があった場合、その長さに応じたストレスの強さの度合いを検出し、ストレスとの強さと射撃精度との傾向を分析する。ここでのストレスは、例えば、
図14の集中度やリラックス度で分析することができる。また、これらのデータの変動の大きさによりストレスの強さを検出し、ストレスとの強さと射撃精度との傾向を分析する。これにより、射手毎の心身状態の影響度合いをモニタできるため、状況に応じて心身状態の回復方法や回復状況をそれぞれアドバイスすることができる。また、射撃精度と相関関係における傾向を分析することで、バイタル状態が射撃精度に与える影響の客観的データとして利用することができる。
【0091】
バイタル傾向情報は、射手単位で分析してもよく、さらには、チーム単位で分析してもよい。例えば、その射手が属する班単位や、その班が属する部隊単位等である。これは、部隊や班によって、訓練の頻度や指導方針が異なるため、指導の傾向性を把握することが可能となる。これらのバイタル傾向情報は、結果を記録し、次回訓練時に使用することができる。
【0092】
このように、チーム単位での分析結果として、特定の事象や特定の時間、場所の影響がチーム全体に出ることを検出した場合には、チームへの影響やその程度を考慮した指導を行うことができる。さらに、チーム単位での影響を検出する場合、メンバーの構成や人数、相互の配置位置関係等の情報を考慮してもよい。これらの情報、射撃精度、バイタル状態を組み合わせで分析を行い、チーム全体としての改善や指導を行うこともできる。
【0093】
例えば、チームが所属する部隊の訓練度合いや、年齢、性別等の条件の影響も考慮して分析してもよい。また、当日の気候やチームの訓練状況による疲労度、射撃の時間帯等の条件を考慮して分析もよい。また、メンバー同志の相性や利き手の影響等による配置の得意不得意、気候の変化による無自覚の体調不良を見つけることができる可能性もある。
【0094】
分析においてはAI(Artificial Intelligence)ソフト等を利用し、訓練で生じたデータを追加しながら処理して学習させることで、より信頼できるバイタル傾向情報に更新してもよい。例えば、
図14に示すような項目のデータをAI解析に利用して、その傾向を調べることができる。特に、射撃の所定秒前から射撃時までのバイタル情報のデータを連続して取得し、射撃精度と比較する。このことで、どのバイタル状態が射撃精度に影響しているのか、バイタル状態の時間変化がどのように射撃精度に影響しているのか等を解析することができる。これにより、精度の高いバイタル状態又はその傾向を更新することができる。
【0095】
<バイタル傾向分析の具体例>
図16は、本発明におけるバイタル傾向分析の一例を示す表である。
【0096】
射撃精度が最も高い時のバイタル状態(脳波データや心電データ等)をあらかじめ取得しておき、その時の値を基準値として、基準値に対して変動があった場合の値と射撃精度との関係を解析する。それにより射手を以下のように4つに分類する解析を行う。この分析はバイタルサーバ11で行うことができる。これらは、バイタル状態全体で解析してもよいし、バイタル状態の項目ごとに解析してもよい。また、バイタル状態の変動や射撃精度の低下はあらかじめ閾値(例えば、変動率や低下率等の値)を決めて判定することができる。これらの分類の結果は、バイタルサーバ11の表示部11dやバイタル端末2の表示部2d等で表示することができる。
【0097】
一番目の分類として、バイタル状態に変動があったにもかかわらず、射撃精度は低下しない場合は、「◎:非常時一定状態」とする。この場合は、何等かの心身の変化があるにもかかわらず、射撃精度が低下しないため、射撃訓練に影響を与えていない。つまり、心身のストレス耐性が強く、不調に影響されないためメンタルが強い人又は状況といえる。
【0098】
二番目の分類として、バイタル状態に変動があり、射撃精度も低下した場合は、「△:非常時変動状態」とする。この場合は、何等かの心身の変化により射撃精度が低下している。つまり、メンタル状態の変化に伴って射撃精度にも変化を伴うのは通常起こりうるものであり、最もスタンダードな変化といえる。
【0099】
三番目の分類として、バイタル状態に変動がなく、射撃精度も低下しない場合は、「〇:通常時一定状態」とする。この場合は、特段の事情がなく普段通りの訓練ができているため、心身に変化がない場合には射撃精度にも変化ないものと考えられる。
【0100】
四番目の分類として、バイタル状態に変動がないにもかかわらず、射撃精度が低下した場合は、「×:通常時変動状態」とする。この場合は、視力低下や聴力低下などの他の心身の要因(不調)があると想定される。
【0101】
<効果>
以上のような実施形態により、その射手のバイタル傾向情報及びバイタル情報を用いて分析することで、射手の射撃精度をより高めることができる。この時、射手及び指導者は、射撃のレーンでバイタル端末の表示部で傾向判定の情報を確認できるため、射撃の改善の情報をすぐに得ることができる。また、バイタル情報はバイタルサーバに送信することで、過去のバイタル情報と射撃精度の情報を構築して、より多角的に分析したバイタル傾向情報を算出することができる。さらに、バイタル情報を射撃の所定時間前から取得することで、照準時の射手のバイタル状態も把握できるし、照準時から発射時までのバイタル状態の変化も考慮したより深い解析を行うことができる。さらに、バイタル状態と射撃精度の状態に応じて、射手の分類を行い、その射手の特性を的確に知ることができる。また、バイタル状態を考慮しない
図2の実弾射撃訓練に対して、バイタルセンサ3、バイタル端末2、バイタルサーバ11を追加することで、バイタル状態を考慮した射撃訓練システムを構築することが可能となる。
【0102】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0103】
本明細書には以下の態様の開示も含まれる。
(態様1)
弾通過位置を検出する標的装置と、弾発射を検出する表示器と、射撃結果と射撃履歴を保持する射撃サーバと、射手のバイタル情報を検出するバイタルセンサと、前記バイタルセンサからバイタル情報を取得するバイタル端末と、過去の射撃精度とバイタル情報を比較し分析したバイタル傾向情報を保持するバイタルサーバと、を備え、
前記バイタル端末は、射撃を行う射手のバイタル傾向情報を前記バイタルサーバから取得し、射手の射撃結果を前記射撃サーバから取得し、バイタル傾向情報から射撃精度に影響があるバイタル情報に対して、今回の射撃時の所定時間前から射撃時までのバイタル情報のうち射撃精度に所定以上悪影響を及ぼすデータがあった場合に当該データを前記バイタル端末の表示部に表示することを特徴とする射撃訓練システム。
【0104】
(態様2)
態様1に記載の射撃訓練システムにおいて、
前記バイタル端末は、前記バイタルセンサから取得したバイタル情報を前記バイタルサーバに送信し、
前記射撃サーバは、弾通過位置の情報を含む射撃履歴を前記バイタルサーバに送信し、
前記バイタルサーバは、射手単位及び射手が属するチーム単位で、射撃精度に影響があるバイタル情報を算出、記録することを特徴とする射撃訓練システム。
【0105】
(態様3)
態様1又は態様2に記載の射撃訓練システムにおいて、
前記バイタル端末は、前記バイタルセンサから取得したバイタル情報を前記バイタルサーバに送信し、
前記標的装置は、弾通過位置の情報を含む射撃結果を前記バイタルサーバに送信し、
前記バイタルサーバは、バイタル傾向情報の分析において、射撃訓練で生じたデータを追加しながら処理して学習させて、バイタル傾向情報を更新していく処理を行うことを特徴とする射撃訓練システム。
【0106】
(態様4)
態様1から態様3のいずれかに記載の射撃訓練システムにおいて、
前記バイタル情報は、心拍数と脳波の少なくとも1つを含むことを特徴とする射撃訓練システム。
【0107】
(態様5)
態様1から態様4のいずれかに記載の射撃訓練システムにおいて、
前記射撃時の所定時間前における所定時間は、1秒から5秒の間の範囲内であることを特徴とする射撃訓練システム。
【符号の説明】
【0108】
1…表示器、1a…操作部、1b…制御部、1c…通信部、1d…表示部、1e…検出部、2…バイタル端末、2a…操作部、2b…制御部、2c…通信部、2d…表示部、2e…無線部、3…バイタルセンサ、3a…脳波センサ、3b…無線部、3c…心電センサ、3d…無線部、5…標的装置、5a…検出部、5b…制御部、5c…通信部、5d…標的部、10…射撃サーバ、10a…操作部、10b…制御部、10c…通信部、10d…表示部、11…バイタルサーバ、11a…操作部、11b…制御部、11c…通信部、11d…表示部、20…ネットワーク、100…射手、101…表示器、101a…検出部、101b…表示部、105…標的装置、110…射撃サーバ、300…コンピュータシステム、302…プロセッサ、302A、302B…処理装置、304…メモリ、306…メモリバス、308…I/Oバス、309…バスインターフェースユニット、310…I/Oバスインターフェースユニット、312…端末インターフェースユニット、314…ストレージインターフェース、316…I/Oデバイスインターフェース、318…ネットワークインターフェース、320…ユーザI/Oデバイス、322…ストレージ装置、324…表示システム、326…表示装置、330…ネットワーク、350…潜在因子特定アプリケーション