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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021796
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】プレキャストコンクリート基礎梁構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/00 20060101AFI20250206BHJP
【FI】
E02D27/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125760
(22)【出願日】2023-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(74)【代理人】
【識別番号】100098246
【弁理士】
【氏名又は名称】砂場 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100208269
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 雅士
(74)【代理人】
【識別番号】100228511
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彩秋
(72)【発明者】
【氏名】松浦 恒久
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046AA11
(57)【要約】
【課題】 プレキャスト梁部材を使用して構築した基礎梁と、基礎梁に支持される構造スラブ等とを一体的に接合させて効率よく構築する。
【解決手段】 基礎梁が杭頭部基礎3間を連結して配設され、基礎梁の両側面の下部に耐圧版30の周辺が固定支持され、基礎梁の両側面の上端に構造スラブ40の周辺が固定支持された基礎梁構造1である。基礎梁は、プレキャスト梁部材10の側面及び上面から突出したスターラップ筋16を有する。プレキャスト梁部材10の下端に耐圧版30のスラブ筋が貫通する貫通スリット19が形成されている。梁幅方向の中心線Cに関して対称な一対のプレキャスト梁部材10が、接合空間S1と接合空間S2を確保して底盤上に対向して載置され、接合空間S1と、接合空間S2と、耐圧版30と、構造スラブ40とにコンクリートが現場打設される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎梁が杭頭部基礎間を連結して配設され、前記基礎梁の両側面の下部に耐圧版の周辺が固定支持され、前記基礎梁の両側面の上端に構造スラブの周辺が固定支持された基礎梁構造であって、
前記基礎梁は、梁部材の側面及び梁部材の上面から一部が突出した第1のスターラップ筋を有し、梁部材の下端に前記耐圧版のスラブ筋の一部が貫通する複数の貫通スリットが形成され、前記基礎梁の梁幅方向の中心線に関して対称形状をなした一対のプレキャストコンクリート梁部材が、梁幅方向に第1の接合空間と、梁部材の材端面と前記杭頭部基礎との間に第2の接合空間を確保して底盤上に対向して載置され、
前記耐圧版のスラブ筋が前記貫通スリットを貫通して、前記構造スラブのスラブ筋が前記プレキャストコンクリート梁部材の上端を越えて、前記第1の接合空間内まで配筋され、
前記第1の接合空間と、前記第2の接合空間と、前記耐圧版と、前記構造スラブとにコンクリートが現場打設されたことを特徴とするプレキャストコンクリート基礎梁構造。
【請求項2】
前記構造スラブのスラブ筋は、前記基礎梁の上面から突出した前記第1のスターラップ筋の近傍に配筋された請求項1に記載のプレキャストコンクリート基礎梁構造。
【請求項3】
基礎梁が杭頭部基礎間を連結して配設され、前記基礎梁の一方の側面の下部に耐圧版の周辺が固定支持され、前記基礎梁の前記耐圧版が固定支持された側の上端に構造スラブの周辺が固定支持された基礎梁構造であって、
前記基礎梁は、梁部材の側面及び梁部材の上面から一部が突出した第1のスターラップ筋を有し、前記耐圧版のスラブ筋の一部が貫通する複数の貫通スリットが下端に形成された第1のプレキャストコンクリート梁部材と、梁部材の側面から一部が突出した第2のスターラップ筋を有する第2のプレキャストコンクリート梁部材とが、梁幅方向に第1の接合空間と、梁部材の材端面と前記杭頭部基礎との間に第2の接合空間を確保するように底盤上に対向して載置され、
前記耐圧版のスラブ筋が前記貫通スリットを貫通して、前記構造スラブのスラブ筋が前記第1のプレキャストコンクリート梁部材の上端を越えて、前記第1の接合空間内まで配筋され、
前記第1の接合空間と、前記第2の接合空間と、前記耐圧版と、前記構造スラブとにコンクリートが現場打設されたことを特徴とするプレキャストコンクリート基礎梁構造。
【請求項4】
前記第1の接合空間内にある前記第1のスターラップ筋の縦筋と前記第1のプレキャストコンクリート梁部材の前記構造スラブの取り付く側の外側面からの距離は、前記基礎梁の梁幅の1/2より大きい請求項3に記載のプレキャストコンクリート基礎梁構造。
【請求項5】
前記耐圧版のスラブ筋の端部は、前記第1の接合空間内の前記第1のスターラップ筋の縦筋の近傍で折り曲げて、現場打設された前記コンクリート内に定着された請求項4に記載のプレキャストコンクリート基礎梁構造。
【請求項6】
前記第2のプレキャストコンクリート梁部材の梁せいは、第1のプレキャストコンクリート梁部材の梁せいと前記構造スラブの厚さの和に等しい請求項3に記載のプレキャストコンクリート基礎梁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャストコンクリート基礎梁構造に係り、特に複数のハーフプレキャストコンクリート部材を用いて基礎梁の上下端において構造スラブ等の端辺との一体的接合を容易に行えるようにしたプレキャストコンクリート基礎梁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の基礎梁構造は、現場で型枠を組み立てて、コンクリートを打設する、いわゆる在来工法で施工されることが多い。しかし、在来工法によると、施工手間や工期が増大するので、プレキャストコンクリートを上部構造だけでなく下部構造である基礎梁構造にも採用する場合がある。
【0003】
基礎梁構造にプレキャストコンクリートを使用する場合、マンションやビル等の大型建築物では基礎梁の梁せい、梁スパンが大きくなるので、プレキャストコンクリート製の基礎梁はプレキャストコンクリート製の柱に比べてかなり重量が重くなる。このため、現場で使用する揚重機は基礎梁の重さに対応した大型のものが必要になり、建設コスト増などの要因になってしまう。
【0004】
これらの問題に対応するために、出願人は、基礎梁を2つのプレキャストコンクリート梁部材を現場打ちコンクリートで一体化させることで、プレキャストコンクリート梁部材1つあたりの重量を軽量化させた基礎梁構造を提案している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2023-19966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の発明によれば、プレキャストコンクリート梁部材の質量を抑えることができ、プレキャスト部材の製造工場での揚重設備を大型化する必要もなく、基礎梁の施工現場においても、プレキャストコンクリート梁部材の間と柱側端部に現場打ちコンクリートを打設するのみで基礎梁を構築でき、現場基礎工における省力化を図ることができる。
【0007】
ところで、基礎内にピット等を構築する場合、構造スラブや耐圧版の周辺を基礎梁に支持させるように設計することが多い。特許文献1に開示された基礎梁構造では、構造スラブや耐圧版のスラブ筋を基礎梁内に定着させる構造を想定していない。そのため、基礎梁となるプレキャストコンクリート部材に、あらかじめ多数のスラブ筋を接合するインサートを埋め込んでおいたり、スラブ接合部を在来工法で構築する等の対応が必要となる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、プレキャストコンクリートを使用した基礎梁構造において、地下ピット等のスラブの周辺とを一体接合させた基礎梁構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1の発明としてのプレキャストコンクリート基礎梁構造は、基礎梁が杭頭部基礎間を連結して配設され、前記基礎梁の両側面の下部に耐圧版の周辺が固定支持され、前記基礎梁の両側面の上端に構造スラブの周辺が固定支持された基礎梁構造であって、前記基礎梁は、梁部材の側面及び梁部材の上面から一部が突出した第1のスターラップ筋を有し、梁部材の下端に前記耐圧版のスラブ筋の一部が貫通する複数の貫通スリットが形成され、前記基礎梁の梁幅方向の中心線に関して対称形状をなした一対のプレキャストコンクリート梁部材が、梁幅方向に第1の接合空間と、梁部材の材端面と前記杭頭部基礎との間に第2の接合空間を確保して底盤上に対向して載置され、前記耐圧版のスラブ筋が前記貫通スリットを貫通して、前記構造スラブのスラブ筋が前記第1のプレキャストコンクリート梁部材の上端を越えて、前記第1の接合空間内まで配筋され、前記第1の接合空間と、前記第2の接合空間と、前記耐圧版と、前記構造スラブとにコンクリートが現場打設されたことを特徴とする。
【0010】
前記構造スラブのスラブ筋は、前記基礎梁の上面から突出した前記第1のスターラップ筋の近傍に配筋することが好ましい。
【0011】
第2の発明としてのプレキャストコンクリート基礎梁構造は、基礎梁が杭頭部基礎間を連結して配設され、前記基礎梁の一方の側面の下部に耐圧版の周辺が固定支持され、前記基礎梁の前記耐圧版が固定支持された側の上端に構造スラブの周辺が固定支持された基礎梁構造であって、前記基礎梁は、梁部材の側面及び梁部材の上面から一部が突出した第1のスターラップ筋を有し、前記耐圧版のスラブ筋の一部が貫通する複数の貫通スリットが下端に形成された第1のプレキャストコンクリート梁部材と、梁部材の側面から一部が突出した第2のスターラップ筋を有する第2のプレキャストコンクリート梁部材とが、梁幅方向に第1の接合空間と、梁部材の材端面と前記杭頭部基礎との間に第2の接合空間を確保するように底盤上に対向して載置され、前記耐圧版のスラブ筋が前記貫通スリットを貫通して、前記構造スラブのスラブ筋が前記第1のプレキャストコンクリート梁部材の上端を越えて、前記第1の接合空間内まで配筋され、前記第1の接合空間と、前記第2の接合空間と、前記耐圧版と、前記構造スラブとにコンクリートが現場打設されたことを特徴とする。
【0012】
前記第1の接合空間内にある前記第1のスターラップ筋の縦筋と前記第1のプレキャストコンクリート梁部材の前記構造スラブの取り付く側の外側面からの距離は、前記基礎梁の梁幅の1/2より大きいことが好ましい。
【0013】
前記耐圧版のスラブ筋の端部は、前記第1の接合空間内の前記第1のスターラップ筋の縦筋の近傍で折り曲げて、現場打設された前記コンクリートに定着させることが好ましい。
【0014】
前記第2のプレキャストコンクリート梁部材の梁せいは、第1のプレキャストコンクリート梁部材の梁せいと前記構造スラブの厚さの和に等しいことが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、プレキャストコンクリートを使用した基礎梁と、基礎梁に支持される構造スラブ等とを一体的に接合して構築することができ、工期短縮、施工コストの削減、プレキャスト部材の製造工場の設備の大型化を回避することができることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1(a)は、本発明の実施形態に係る基礎梁構造からなる建物基礎の一部を示した平面図、(b-1)は(a)中の基礎梁100と杭頭部基礎3,3の立面図、(b-2)はIb2-Ib2断面線に沿った梁断面図図、(c-1)は(a)中の基礎梁200と杭頭部基礎4,4の立面図、(c-2)はIc2-Ic2断面線に沿った梁断面図。
図2図1(b-1)中の基礎梁100のIIa-IIa断面線に沿った本発明の一実施形態の基礎梁構造の断面図。
図3図2に示した基礎梁構造の一部を構成するハーフプレキャストコンクリート梁部材の断面(a)および一部側面図(b)。
図4図1(c-1)中の基礎梁200のIVa-IVa断面線に沿った本発明の一実施形態の基礎梁構造の断面図。
図5図4に示した基礎梁構造の一部を構成するハーフプレキャストコンクリート梁部材の断面(a)および一部側面図(b)。
図6図2に示した基礎梁構造を構築するための施工順序図(その1:(a)-(c))。
図7図2に示した基礎梁構造を構築するための施工順序図(その2:(d)-(f))。
図8図4に示した基礎梁構造を構築するための施工順序図(その1:(a)-(d))。
図9図4に示した基礎梁構造を構築するための施工順序図(その2:(e)-(g))。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のプレキャストコンクリート基礎梁構造について、添付図面を参照して説明する。なお、各図において、図の簡単化のために、発明の特徴ではない腹筋、幅止め筋の図示を省略している。
【0018】
図1(a)~(c-2)は、本発明に係る基礎梁100,200と杭頭部基礎3,4とで構成された基礎梁構造1の平面構成の一部を示している。本発明の基礎梁構造1は、2種類の断面形状から構成された基礎梁100,200が構築されている。また、基礎梁100,200の材端を支持する杭頭部基礎3,4は、たとえばφ=1000mmの外殻鋼管コンクリート杭(SC杭)からなる既製杭Pの杭頭接合部として構築され、その杭頭部基礎3,4上には、柱せい1200mm×1200mmの断面寸法のプレキャストコンクリート柱部材7(以下、プレキャスト柱部材7とする。)が柱スパンS=10mで立設されている。
【0019】
[基礎梁100,200の概略構成]
基礎梁100は、図1各図、図2に示したように、図示しない均しコンクリート上の所定位置に、同形のハーフプレキャストコンクリート梁部材10,10(以下、プレキャスト梁部材10とする。)が、所定の間隔を空けて第1のスターラップ筋としてのスターラップ筋16同士が対向するように設置され、プレキャスト梁部材10,10間(第1の接合空間としての接合空間S1:後述する。)に基礎梁コンクリート11が現場打設されるとともに、材軸方向の梁端部と杭頭部基礎3との間(第2の接合空間としての接合空間S2:後述する。)に基礎梁コンクリート12が現場打設されて一体化された基礎梁として構築されている。
【0020】
基礎梁200は、図1各図、図4に示したように、図示しない均しコンクリート上の所定位置に、異なる断面形状からなるハーフプレキャストコンクリート梁部材20,25(以下、プレキャスト梁部材20、25とする。)が、スターラップ筋26,27同士が対向するように設置され、プレキャスト梁部材20,25間(接合空間S1:後述する。)に基礎梁コンクリート21が現場打設されるとともに、材軸方向の梁端部と杭頭部基礎4との間(接合空間S2:後述する。)に基礎梁コンクリート22が現場打設されて一体化された基礎梁として構築されている。
【0021】
基礎梁100,200の完成断面は、ともに梁せいH=2000mm、梁幅W=1000mmで、それぞれ部材長L=5250mmからなるプレキャスト梁部材10,20,25の材軸方向端面から梁主筋14,24が突出し、杭頭部基礎3,4から延びる鉄筋と機械式継手を介して接合されている。また、梁主筋14,24の突出範囲と接合位置には材軸方向に所定間隔をあけてスターラップ筋18,28が配筋されている(図1各図)。
【0022】
[プレキャスト梁部材10の構成]
基礎梁100の主構成部材となるプレキャスト梁部材10の構成について、図1(b-1),図2図3各図を参照して説明する。プレキャスト梁部材10は、上述したように、両材端面から梁主筋14が材軸方向に所定長さだけ突出した所定部材長のハーフプレキャストコンクリート製品である(図1(b-1))。プレキャスト梁部材10は、基礎梁構造1を構築する際、図2図3(a)に示したように、その一部に配筋されたスターラップ筋16同士が対向するように所定幅だけあけて接合空間S1が確保されて均しコンクリート(図示せず)上に載置される。このとき基礎梁100の完成断面の梁幅1000mmのうち、接合空間S1の幅が500mm、各プレキャスト梁部材10の幅が250mmに設定されている。また、基礎梁100の完成断面(図2)に示したように、スターラップ筋16は、図3(a)に示したように、縦長の四角形状からなり、上辺はプレキャスト梁部材10の上面から突出し、接合空間S1内に所定長だけ張り出すように配筋され、図示しない組立筋とともに上辺、下辺位置で2段配筋された所定本数の梁主筋24を保持している。
【0023】
プレキャスト梁部材10の下辺には、図1(b-1),図3(b)に示したように、下方が開放された貫通スリット19が所定間隔をあけて連続して形成されている。この貫通スリット19は、プレキャスト梁部材10の工場製作時に型枠に箱抜き部を設けることで梁部材の製作と同時に形成され、基礎梁100の下辺に接合される耐圧版30のスラブ筋31を、基礎梁100の下辺を貫通させるために用いられる(図2)。この貫通スリット19の上面は、図3(a)の左側断面図に示したように、梁外面側から内面側にかけてわずかに勾配がつけられ、耐圧版コンクリート32の打設時にコンクリート流動に伴って貫通スリット19が確実に閉塞される(図6(b)-(c))。
【0024】
[プレキャスト梁部材20,25の構成]
基礎梁200の主構成部材となる第1のプレキャストコンクリート梁部材としてのプレキャスト梁部材20,第2のプレキャストコンクリート梁部材としてのプレキャスト梁部材25の構成について、図1(a-1),(c-1),図4図5各図を参照して説明する。基礎梁200は、図1(a-1),図4に示したように、建物外周に配置される基礎梁で、耐圧版30,構造スラブ40の一辺が基礎梁200の片面のみに接合される。そのため、基礎梁200は、異なる梁断面形状からなるプレキャスト梁部材20,25を用いて構成されている。
【0025】
プレキャスト梁部材20,25は、プレキャスト梁部材10と同じ部材長を有し、両材端面から梁主筋24が材軸方向に所定長さだけ突出した点(図1(c-1))、基礎梁構造1を構築する際、所定幅だけあけてスターラップ筋26,27を対向する接合空間S1が確保される点(図4図5(a))、基礎梁200の完成断面の梁幅1000mmのうち、接合空間S1の幅が500mm、各プレキャスト梁部材20,25の幅が250mmに設定されている点、基礎梁200の完成時にスターラップ筋26,27と図示しない組立筋とによって、梁上端および下端にそれぞれ2段配筋で梁主筋24が配筋される点(図4)については、プレキャスト梁部材10の場合と同様である。
【0026】
ここで、個々のプレキャスト梁部材20,25の断面形状について、図5(a)~(c)を参照して説明する。プレキャスト梁部材20において、スターラップ筋26は、図5(a)に示したように、縦長の四角形状で、上辺はプレキャスト梁部材20の上面から突出し、接合空間S1内に所定幅だけ張り出すように配筋され、図示しない組立筋とともに上辺、下辺位置に複数本の梁主筋24が配筋されている。スターラップ筋26の上辺の長さは、基礎梁200の完成断面(図4)の梁幅Bに対して、プレキャスト梁部材20の外側面から梁幅方向の中心位置(B/2)よりも長くなるように設定されている。これにより、耐圧版30のスラブ筋31、構造スラブ40のスラブ筋41を基礎梁200内に定着させるために十分な定着長が確保されている。さらに各スラブ筋31は図8(b),(c)に示したように、折り上げ定着部31aとして端部が折り上げられ、スターラップ筋26の縦筋26aの近くで定着させる。
【0027】
また、図5(b)に示したように、プレキャスト梁部材10と同様に、プレキャスト梁部材20の下辺にも、下方が開放された貫通スリット29が所定間隔をあけて連続して形成されている。貫通スリット29は、プレキャスト梁部材20の工場製作時に型枠に箱抜き部を設けることで部材を製作するのと同時に形成され、基礎梁200の下辺に接合される耐圧版30のスラブ筋31を、基礎梁200の下辺を貫通させるために用いられる。この貫通スリット29の上面にも、梁外面側から内面側にかけてわずかに勾配がつけられ、耐圧版コンクリート32の打設時にコンクリート流動に伴って貫通スリット29が確実に閉塞される(図8(c),(d))。
【0028】
一方、プレキャスト梁部材25の梁せいは、図5(a),(c)に示したように、プレキャスト梁部材20の高さと構造スラブ40の厚さとの和からなり、その全体で基礎梁コンクリート21が打設される際の側型枠の役割も果たす。プレキャスト梁部材20と対向する側面からは、大きく張り出したスターラップ筋26と所定の隙間をあけて対向するように、スターラップ筋27が突出している。スターラップ筋27と図示しない組立筋と、ともに上辺、下辺位置で2段配筋された所定本数の梁主筋24を保持している。
【0029】
[プレキャスト梁部材の梁幅方向の接合(接合空間S1の施工)]
基礎梁100は、図3(a)に示したように、梁の幅方向の中心線Cに関して対称形状となる断面形状のプレキャスト梁部材10,10が、部材端から上面側と側面とに突出したスターラップ筋16同士が対向するように所定の離隔をとって底盤上の均しコンクリート(図示せず)上に載置され、プレキャスト梁部材10,10の間に接合空間S1が形成されている。この接合空間S1に基礎梁コンクリート11が現場打設され、プレキャスト梁部材10,10と基礎梁コンクリート11とが一体的に接合されている。この基礎梁コンクリート11が打設されるのと同時に、耐圧版コンクリート32の端部がプレキャスト梁部材10の下部に、構造スラブコンクリート42の端部がプレキャスト梁部材10の上面に一体的に構築されている(図2参照)。これらの構造及び施工手順については、図6各図、図7各図を参照して後述する。
【0030】
基礎梁200は、図4図5(a)に示したような、異なる断面形状からなるプレキャスト梁部材20,25が、部材端から上面側(プレキャスト梁部材20のみ)と側面とに突出したスターラップ筋26,27が対向するように所定の離隔をとって均しコンクリート(図示せず)上に載置され、プレキャスト梁部材20,25の間に形成された接合空間S1に基礎梁コンクリート21が現場打設され、プレキャスト梁部材20,25と、基礎梁コンクリート21とを一体的に接合させている。この基礎梁コンクリート21が打設されるのと同時に、耐圧版コンクリート32の端部がプレキャスト梁部材20の下面に、構造スラブコンクリート42の端部がプレキャスト梁部材20の上面に一体的に構築されている(図4参照)。これらの構造及び施工手順については、図8各図、図9各図を参照して後述する。
【0031】
[プレキャスト梁部材の梁材軸方向の接合(接合空間S2の施工)]
基礎梁100のプレキャスト梁部材10,10の材軸方向の端部の材軸方向の端部には、プレキャスト梁部材10,10の材端部と杭頭部基礎3,4とを接合するための接合空間S2が設けられている(図1各図)。この接合空間S2では、プレキャスト梁部材10の軸方向の両端面から突出している梁主筋14と杭頭部基礎3,4の側面から突出するように配筋された梁主筋接合筋とが機械式継手(図示せず)を介して接合され、接合空間S2に打設された基礎梁コンクリート12により、基礎梁100と杭頭部基礎3とが一体的に接合されている。また、接合空間S2においても、プレキャスト梁部材10の下部には所定の配筋がなされて耐圧版コンクリート32の端部が、上面には所定の配筋がなされて構造スラブコンクリート42の端部が一体的に構築されている。
【0032】
基礎梁200のプレキャスト梁部材20,25の材軸方向の端部にもプレキャスト梁部材20,25の材端部と杭頭部基礎4とを接合するための接合空間S2が設けられている。この接合空間S2では、プレキャスト梁部材20,25の材軸方向の両端面から突出している梁主筋24と杭頭部基礎4の側面から突出するように配筋された梁主筋接合筋とが機械式継手(図示せず)を介して接合され、接合空間S2に打設された基礎梁コンクリート22により、基礎梁200と杭頭部基礎4とが一体的に接合されている。また、接合空間S2においても、プレキャスト梁部材20の下部の貫通スリット29を通過させて所定の配筋がなされて耐圧版コンクリート32の端部が基礎梁200と一体化され、プレキャスト梁部材25の上面には構造スラブコンクリート42の端部が一体化されている。
【0033】
[基礎梁100と耐圧版30と構造スラブ40の一体構築]
以下、基礎梁100の構築の施工手順について、図1各図、図6(a)~図7(f)を参照して説明する。基礎梁100は、図1(a)に示したように、建物内部に位置する杭頭部基礎3,3間に構築される。基礎梁100の構築位置に形成された均しコンクリート(図示せず)上に、一対をなすようにプレキャスト梁部材10,10間に所定の接合空間S1、材端部の杭頭部基礎3との間に接合空間S2を確保するように載置する(図6(a))。隣接した基礎梁100間に四辺が囲まれるように耐圧版30(図6(c))のスラブ筋31を配筋する。このとき各スラブ筋31をプレキャスト梁部材10の下辺に形成された貫通スリット19を挿通させた配筋を行う(図6(b))。さらに、図6(c)に示したように、耐圧版コンクリート32(一例として厚さ250mm)を打設する。このとき、各貫通スリット19を介して耐圧版コンクリート32の一部を基礎梁100の接合空間S1の下部まで一体的に充填させる。これにより耐圧版30の端辺と基礎梁100の下辺とを一体的に接合し、耐圧版30を基礎梁100に固定支持させる。
【0034】
耐圧版コンクリート32が所定強度に達した後、基礎梁100の上端位置に地下ピット50の上面となる構造スラブ40(図7(e))を構築する。構造スラブコンクリート42の底型枠43を支持する支保工サポート44を耐圧版30上に組み立てるとともに、構造スラブ40のスラブ筋41の配筋を行う(図7(d))。このときスラブ筋41の端部は十分な定着長を確保して基礎梁100の上面位置まで配筋されている。そして基礎梁100の接合空間S1に基礎梁コンクリート11を打設した後、基礎梁100の上端と構造スラブ40とを一体的に接合させるように構造スラブコンクリート42を打設する(図7(e))。なお、構造スラブコンクリート42の施工において、底型枠43に代えて床型枠用鋼製デッキプレート(フラットデッキ)を使用することで支保工サポート44を省略することができる。
【0035】
基礎梁コンクリート11のコンクリート強度と構造スラブコンクリート42のコンクリート強度の設計強度が同じ場合には基礎梁コンクリート11と構造スラブコンクリート42とを連続打設することができる(図7(e),(f))。コンクリート強度が異なる場合には、基礎梁100の接合空間S1の部分の基礎梁コンクリート11をプレキャスト梁部材10の天端付近まで打設した後、必要に応じて所定の打ち継ぎ処理を行い、構造スラブコンクリート42を打設する。なお、プレキャスト梁部材10と杭頭部基礎3との間の接合空間S2の構築については、基礎梁100の接合空間S1の部分の基礎梁コンクリート11の打設前にスターラップ筋18の配筋作業を行っておき、接合空間S1,S2のコンクリートを同時に打設することが好ましい。接合空間S1,S2及び構造スラブコンクリート42の打設後、所定の養生期間を経過後、接合空間S2の側型枠(図示せず)及び構造スラブ40の底型枠43を脱型する。これにより、基礎梁100と耐圧版30と構造スラブ40とが一体化した地下ピット50を備えた基礎梁構造1を完成させることができる(図7(f))。
【0036】
[基礎梁200と耐圧版30と構造スラブ40の一体構築]
以下、基礎梁200の構築の施工手順について、図1各図、図8(a)~図9(g)を参照して説明する。基礎梁200は、図1(a)に示したように、建物内部に位置する杭頭部基礎4,4間に構築される。基礎梁200の構築位置に形成された均しコンクリート(図示せず)上に、基礎梁200の一方の側面を規定するプレキャスト梁部材20を設置する(図8(a))。設置されたプレキャスト梁部材20の下辺に形成されている貫通スリット29を介して耐圧版コンクリート32のスラブ筋31を配筋する。このときスラブ筋31の端部に所定長の折り上げ定着部31aを設けておき、あらかじめ梁幅Bの1/2以上の幅を有するように製作されたスターラップ筋26の縦筋26aにスラブ筋31の折り上げ定着部31aを保持させるように固定する。これにより、スラブ筋31は所定の定着長が確保される(図8(b),(c))。さらに他方のプレキャスト梁部材25を、プレキャスト梁部材20との間に所定の接合空間S1および材端部の杭頭部基礎4との間に接合空間S2を確保する位置に設置するとともに、隣接した基礎梁100,200間に四辺が囲まれるように耐圧版30のスラブ筋31を配筋する(図8(c))。さらに、図8(d)に示したように、耐圧版コンクリート32(一例として厚さ250mm)を打設する。このとき、各貫通スリット29を介して耐圧版コンクリート32の一部を基礎梁200の接合空間S1の下部まで一体的に充填させる。これにより耐圧版30の一辺と基礎梁200の下部とを一体的に接合させ、耐圧版30を基礎梁200に固定支持させることができる(図9(f))。
【0037】
耐圧版コンクリート32が所定強度に達した後、基礎梁200の上端位置に地下ピット50の上面となる構造スラブ40を構築する(図9(f))。構造スラブコンクリート42の底型枠43を支持する支保工サポート44を耐圧版30上に立設するとともに、構造スラブ40のスラブ筋41の配筋を行う(図9(e))。このときスラブ筋41の端部は下方に折り曲げられ、スターラップ筋26の縦筋26a近くに位置するように配筋されている。そして接合空間S1に基礎梁コンクリート22を打設した後、基礎梁コンクリート22の上端と構造スラブコンクリート42とを一体的に接合するように構造スラブコンクリート42を打設する(図9(f))。本実施形態では、基礎梁コンクリート11のコンクリート強度と構造スラブコンクリート42のコンクリート強度の設計強度が異なる場合を示している。この場合には、基礎梁200の接合空間S1の部分の基礎梁コンクリート22をプレキャスト梁部材20の天端付近まで打設した後、必要に応じて所定の打ち継ぎ処理を行い、構造スラブコンクリート42をプレキャスト梁部材25の天端高さまで打設している。なお、プレキャスト梁部材20と杭頭部基礎4との間の接合空間S2の構築手順については、基礎梁100の場合と同様とすることが好ましい(図1(a),(c-1))。接合空間S1,S2及び構造スラブコンクリート42の打設後、所定の養生期間を経過後、接合空間S2の側型枠(図示せず)及び構造スラブ40部分の底型枠43を脱型する。これにより、基礎梁200と耐圧版30と構造スラブ40とが一体化した地下ピット50を備えた基礎梁構造1を完成させることができる(図9(g))。
【0038】
本実施形態の基礎梁構造1によれば、基礎梁100,200を構成するプレキャスト梁部材10,20,25の1本当たりの重量を、柱を構成するプレキャスト柱部材7の1本当たりの重量以下におさえることができる。よって、基礎梁構造にプレキャスト基礎梁を採用しながらも、基礎梁構造を、従来の上部構造のみプレキャスト工法で構築する場合と同等能力の揚重機で施工することができる。さらに、一対のプレキャスト梁部材10間、20,25間(接合空間S1)の接合において配筋が不要であり、プレキャスト梁部材10,20,25は接合空間S1に現場打設される基礎梁コンクリート11,21よりも質量が大きいので、プレキャスト梁部材10を支保する部材を省略でき、セパレータ等も不要である。従って、施工手間や施工コストを削減でき、基礎梁構造1を容易に施工できる。
【0039】
なお、対向するプレキャスト梁部材10,10間あるいはプレキャスト梁部材20,25間の対向する内側面のコンクリート表面に凹凸部や、材軸方向に沿った各種断面形状の溝や、複数個のコッターを配列することにより現場打設される基礎梁コンクリート11,22とプレキャスト梁部材10,20,25の内側面との付着を高めることも好ましい。
【0040】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に示した範囲内での種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲内で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
1 基礎梁構造
3,4 杭頭部基礎
7 プレキャストコンクリート柱部材(プレキャスト柱部材)
10,20,25 ハーフプレキャストコンクリート梁部材(プレキャスト梁部材)
11,12,21,22 基礎梁コンクリート(現場打ちコンクリート)
14,24 梁主筋
16,26,27 スターラップ筋
19,29 貫通スリット
30 耐圧版
31,41 スラブ筋
32 耐圧版コンクリート
40 構造スラブ
42 構造スラブコンクリート
100,200 基礎梁
S1,S2 接合空間
図1
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図9