(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021799
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】情報処理装置、分類方法、分類プログラム、および制御システム
(51)【国際特許分類】
B29B 17/00 20060101AFI20250206BHJP
F23G 5/50 20060101ALI20250206BHJP
F23G 5/02 20060101ALI20250206BHJP
B66C 13/48 20060101ALI20250206BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20250206BHJP
G06V 10/50 20220101ALI20250206BHJP
B09B 5/00 20060101ALI20250206BHJP
B09B 101/75 20220101ALN20250206BHJP
【FI】
B29B17/00
F23G5/50 Q ZAB
F23G5/02 Z
B66C13/48 Z
G06T7/00 300G
G06T7/00 350B
G06V10/50
B09B5/00 Q
B09B101:75
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125765
(22)【出願日】2023-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】カナデビア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】矢路 隼斗
【テーマコード(参考)】
3F204
3K062
3K065
4D004
4F401
5L096
【Fターム(参考)】
3F204AA02
3F204BA05
3F204BA09
3F204DA04
3F204DD01
3K062AB01
3K062AC01
3K062AC13
3K062AC20
3K062CA08
3K062CB01
3K062DA05
3K062DA38
3K062DB30
3K065AC01
3K065AC13
3K065BA01
3K065BA06
3K065CA20
4D004AA07
4D004AA46
4D004CA07
4D004DA01
4D004DA02
4D004DA16
4F401AA27
4F401CA22
4F401CA44
4F401DB01
5L096CA04
5L096FA32
5L096FA37
5L096GA08
5L096GA51
5L096JA03
5L096MA07
(57)【要約】
【課題】廃プラスチックを検出する。
【解決手段】情報処理装置(1)は、廃棄物ピットの内部を所定の時間間隔で撮影した画像から生成された差分画像の対象領域における輝度値のヒストグラムと、袋入りの廃棄物が写っている画像から生成された輝度値のヒストグラムとの類似度を算出する類似度算出部(107)と、算出された類似度に基づいて対象領域に写る廃棄物を分類する分類部(108)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を貯留する廃棄物ピットの内部を所定の時間間隔で撮影した画像から生成された差分画像の対象領域における輝度値のヒストグラムと、袋入りの廃棄物または廃プラスチックが写っていることが既知の画像から生成された輝度値のヒストグラムとの類似度を算出する類似度算出部と、
前記類似度に基づいて前記対象領域に写る廃棄物を分類する分類部と、を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記対象領域における輝度の平均値を算出する平均値算出部を備え、
前記分類部は、前記類似度と前記平均値算出部が算出する平均値とに基づいて前記対象領域に写る廃棄物を分類する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記分類部は、前記類似度が所定の下限値より高く、所定の上限値未満であることを条件として、袋入りの廃棄物と廃プラスチックとを分類可能に学習した分類モデルを用いて前記対象領域に写る廃棄物を分類する、請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記分類部は、
袋入りの廃棄物が写っていることが既知の画像から生成された前記ヒストグラムとの類似度が所定の閾値以上であることを条件として、前記対象領域に写る廃棄物を袋入りの廃棄物に分類するか、または、
廃プラスチックが写っていることが既知の画像から生成された前記ヒストグラムとの類似度が所定の閾値以上であることを条件として、前記対象領域に写る廃棄物を廃プラスチックに分類する、請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記分類部は、前記類似度が所定の閾値未満であることを条件として、前記対象領域に写る廃棄物を袋入りの廃棄物および廃プラスチックとは異なる分類とする、請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記差分画像から輝度値が所定の閾値以上の画素を抽出した抽出結果に基づいて前記対象領域を設定する対象領域設定部を備える、請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記対象領域設定部は、前記差分画像における、前記廃棄物ピットに廃棄物を投入する複数の投入口のそれぞれに対応する位置に予め設定された複数の領域のうち、輝度値が所定の閾値以上の画素が所定の割合以上含まれている領域に前記対象領域を設定する、請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
1または複数の情報処理装置が実行する分類方法であって、
廃棄物を貯留する廃棄物ピットの内部を所定の時間間隔で撮影した画像から生成された差分画像の対象領域における輝度値のヒストグラムと、袋入りの廃棄物または廃プラスチックが写っていることが既知の画像から生成された輝度値のヒストグラムとの類似度を算出する類似度算出ステップと、
前記類似度に基づいて前記対象領域に写る廃棄物を分類する分類ステップと、を含む分類方法。
【請求項9】
請求項1に記載の情報処理装置としてコンピュータを機能させるための分類プログラムであって、前記類似度算出部および前記分類部としてコンピュータを機能させるための分類プログラム。
【請求項10】
廃棄物を貯留する廃棄物ピットの内部を所定の時間間隔で撮影した画像から生成された差分画像の対象領域における輝度値のヒストグラムと、袋入りの廃棄物または廃プラスチックが写っていることが既知の画像から生成された輝度値のヒストグラムとの類似度に基づいて前記対象領域に写る廃棄物を分類する情報処理装置と、
前記情報処理装置による分類の結果に基づいて前記廃棄物ピットに配置されたクレーンの動作を制御する制御装置と、を含む制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は廃棄物ピットに貯留された廃棄物を分類する情報処理装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物の焼却処理施設等には、収集された廃棄物を一時的に貯留する廃棄物ピットが設けられている。廃棄物ピット内の廃棄物には、様々な性質のものが含まれ得るため、それらを適切に処理するためには、処理前の適切な分類が必要となる。
【0003】
このような分類に関する従来技術を開示した文献としては、例えば下記の特許文献1が挙げられる。特許文献1には、ごみピット内に堆積したごみの色調を示すごみ色調マップに基づいて異質ごみを特定し、特定した異質ごみを撹拌するようにクレーンを制御する自動クレーンの運転方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、焼却処理する場合に注意すべき廃棄物として廃プラスチックが知られている。廃プラスチックは、プラスチックを主成分とする廃棄物であり、一度に大量の廃プラスチックを焼却炉に投入すると燃焼状態が不安定化することがある。このため、廃棄物ピット内に廃プラスチックが投入されたときには、これを他の廃棄物と混合するなどして、一度に大量の廃プラスチックが焼却炉に投入されないようにすることが好ましい。
【0006】
しかしながら、廃プラスチックには色味がないものも多いため、特許文献1のごみ色調マップには廃プラスチックの存在が反映されない可能性がある。つまり、特許文献1の技術には、異質ごみとして検出すべき廃プラスチックをごみ色調マップに反映させることが難しいという問題がある。
【0007】
本発明の一態様は、廃棄物ピット内の廃プラスチックを検出することが可能な情報処理装置等を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る情報処理装置は、廃棄物を貯留する廃棄物ピットの内部を所定の時間間隔で撮影した画像から生成された差分画像の対象領域における輝度値のヒストグラムと、袋入りの廃棄物または廃プラスチックが写っていることが既知の画像から生成された輝度値のヒストグラムとの類似度を算出する類似度算出部と、前記類似度に基づいて前記対象領域に写る廃棄物を分類する分類部と、を備える。
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る分類方法は、1または複数の情報処理装置が実行する分類方法であって、廃棄物を貯留する廃棄物ピットの内部を所定の時間間隔で撮影した画像から生成された差分画像の対象領域における輝度値のヒストグラムと、袋入りの廃棄物または廃プラスチックが写っていることが既知の画像から生成された輝度値のヒストグラムとの類似度を算出する類似度算出ステップと、前記類似度に基づいて前記対象領域に写る廃棄物を分類する分類ステップと、を含む。
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る制御システムは、廃棄物を貯留する廃棄物ピットの内部を所定の時間間隔で撮影した画像から生成された差分画像の対象領域における輝度値のヒストグラムと、袋入りの廃棄物または廃プラスチックが写っていることが既知の画像から生成された輝度値のヒストグラムとの類似度に基づいて前記対象領域に写る廃棄物を分類する情報処理装置と、前記情報処理装置による分類の結果に基づいて前記廃棄物ピットに配置されたクレーンの動作を制御する制御装置と、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、廃棄物ピット内の廃プラスチックを検出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る情報処理装置の要部構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る制御システムの構成例を示す図である。
【
図3】廃棄物ピットの内部を所定の時間間隔で撮影した画像から生成された差分画像の対象領域における輝度値のヒストグラムの例を示す図である。
【
図4】上記情報処理装置が実行する処理の例を示す図である。
【
図6】上記情報処理装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔システム構成〕
本発明の一実施形態に係る制御システム5の構成を
図2に基づいて説明する。
図2は、制御システム5の構成例を示す図である。図示のように、制御システム5には、情報処理装置1と制御装置2とクレーン3とが含まれている。また、
図2には、廃棄物を収容する廃棄物ピットPの断面についても示している。
【0014】
クレーン3は、廃棄物ピットPに配置された機械であり、廃棄物ピットP内の廃棄物を搬送等するためのものである。クレーン3の構成要素には、ガーダ31、横行台車32、ワイヤ33、およびバケット34が含まれている。ガーダ31は、廃棄物処理プラントの建屋(図示せず)の対向する壁面にそれぞれ設けられたレール(同図の奥行き方向に延在)間を架け渡すように配置されており、このレールに沿って同図の奥行き方向に移動させることができるようになっている。また、横行台車32は、ガーダ31上に設けられており、ガーダ31上を同図の左右方向(ガーダ31の移動方向と直交する方向)に移動させることができるようになっている。この横行台車32にはワイヤ33が取り付けられており、ワイヤ33の先端には廃棄物を掴むバケット34が設けられている。このバケット34は開閉動作を行うことができる。
【0015】
制御装置2は、クレーン3の動作制御を行う。例えば、制御装置2は、ガーダ31と横行台車32を駆動してバケット34を所望の位置に移動させ、その位置でバケット34を開いて廃棄物ピットP内の廃棄物上に降ろし、バケット34を閉じてワイヤ33を巻き上げる制御を行う。これらの一連の制御により、その位置の廃棄物をバケット34で掴みあげることができる。
【0016】
情報処理装置1は、廃棄物ピットP内に収容されている廃棄物の分類を行う。より詳細には、情報処理装置1は、廃棄物ピットPの内部を所定の時間間隔で撮影した画像から生成された差分画像の対象領域における輝度値のヒストグラムと、袋入りの廃棄物または廃プラスチックが写っていることが既知の画像から生成された輝度値のヒストグラムとの類似度に基づいて、対象領域に写る廃棄物を分類する。そして、制御装置2は、情報処理装置1による分類の結果に基づいてクレーン3の動作を制御する。
【0017】
以上のように、制御システム5は、廃棄物を貯留する廃棄物ピットPの内部を所定の時間間隔で撮影した画像から生成された差分画像の対象領域における輝度値のヒストグラムと、袋入りの廃棄物または廃プラスチックが写っていることが既知の画像から生成された輝度値のヒストグラムとの類似度に基づいて対象領域に写る廃棄物を分類する情報処理装置1と、情報処理装置1による分類の結果に基づいて廃棄物ピットPに配置されたクレーン3の動作を制御する制御装置2と、を含む。
【0018】
詳細は後述するが、上記の構成によれば、廃棄物ピットP内の廃プラスチックを検出することが可能になる。そして、上記の構成によれば、廃プラスチックが検出された場合には、その廃プラスチックをクレーン3で適切に処理することも可能になる。
【0019】
情報処理装置1は、様々な廃棄物の分類に適用が可能であるが、以下では焼却炉にて焼却処理する廃棄物の分類を行う例を説明する。この場合、袋入りの廃棄物は、例えば一般家庭から出された可燃ごみであってもよい。袋入りの廃棄物はまとめて焼却炉に投入しても大きな支障は生じないが、廃プラスチックをまとめて焼却炉に投入すると焼却炉の燃焼状態を大きく変化させる場合があるため、廃プラスチックは袋入りの廃棄物と区別して検出することが好ましい。情報処理装置1は、このような検出を可能にするものである。
【0020】
〔装置構成〕
情報処理装置1の構成を
図1に基づいて説明する。
図1は、情報処理装置1の要部構成の一例を示すブロック図である。図示のように、情報処理装置1は、情報処理装置1の各部を統括して制御する制御部10と、情報処理装置1が使用する各種データを記憶する記憶部11を備えている。また、情報処理装置1は、情報処理装置1が他の装置と通信するための通信部12、情報処理装置1に対する各種データの入力を受け付ける入力部13、および情報処理装置1が各種データを出力するための出力部14を備えている。
【0021】
また、制御部10には、差分画像生成部101、二値化画像生成部102、膨張処理部103、対象領域設定部104、平均値算出部105、ヒストグラム生成部106、類似度算出部107、分類部108、およびクレーン制御部109が含まれている。そして、記憶部11には、比較用ヒストグラム111と分類モデル112が記憶されている。
【0022】
差分画像生成部101は、廃棄物を貯留する廃棄物ピットPの内部を所定の時間間隔で撮影した画像から差分画像を生成する。撮影された画像がRGBのカラー画像である場合、差分画像生成部101は、ある時刻に撮影された画像に含まれる各画素と、その所定時間後に撮影された画像における各画素とについて、RGBの各成分の差を算出する。そして、差分画像生成部101は、RGBの各成分について算出した差分の和を、差分画像における各画素の輝度値とする。なお、上記の所定時間は、廃棄物ピットPに廃棄物が投入される頻度等に応じて適宜設定すればよい。
【0023】
二値化画像生成部102は、差分画像生成部101が生成する差分画像から二値化画像を生成する。二値化画像の生成にあたり、二値化画像生成部102は、まず、差分画像から輝度値が所定の閾値以上の画素を抽出する。袋入りの廃棄物または廃プラスチックが廃棄物ピットPに投入されると、これらの廃棄物は薄いグレーから濃いグレーであることが多いため、投入された領域の輝度値は高くなることが多い。このため、輝度値が閾値以上の画素を抽出することにより、新たに投入された袋入りの廃棄物または廃プラスチックが写っている可能性が高い画素を抽出することができる。
【0024】
そして、二値化画像生成部102は、差分画像において、抽出した各画素の輝度値を所定値(例えば255)とし、抽出されなかった各画素の輝度値を他の所定値(例えば0)として二値化画像を生成する。以下では、抽出した各画素の輝度値を255、抽出されなかった各画素の輝度値を0とする例を説明する。この場合、抽出された画素は白色、抽出されなかった画素は黒色となる。
【0025】
なお、二値化画像生成部102は、差分画像生成部101が生成する差分画像から輝度値の絶対値が所定の閾値以上の画素を抽出してもよい。この場合、輝度値が低くなる変化をした画素についても抽出される。これにより、例えば、後述する剪定ごみや汚泥ごみ等のように黒またはそれに近い色の廃棄物が投入された領域の画素も抽出することができる。また、例えば、白色の袋入りの廃棄物が堆積している領域に、グレーの廃プラスチックが投入された場合等にも輝度値は低くなる。二値化画像生成部102は、差分画像から輝度値の絶対値が所定の閾値以上の画素を抽出することにより、このような領域の画素も抽出することができる。以下では、差分画像から輝度値の絶対値が所定の閾値以上の画素を抽出して二値化画像を生成する例を説明する。
【0026】
膨張処理部103は、二値化画像生成部102が抽出する画素に対し、膨張処理を施す。膨張処理とは、注目画素の周囲の何れかの画素が白であれば、その注目画素を白の画素とする処理である。膨張処理を施すことにより、細分化された画素群をひとまとまりの領域とすることができる。
【0027】
対象領域設定部104は、差分画像から輝度値が所定の閾値以上の画素を抽出した抽出結果に基づいて対象領域を設定する。より詳細には、対象領域設定部104は、二値化画像生成部102が生成する二値化画像を用いて対象領域を設定する。二値化画像生成部102が生成する二値化画像は上記の抽出結果を示すものであるから、二値化画像を用いて対象領域を設定することにより、上記の抽出結果に基づいた対象領域が設定される。なお、対象領域の設定方法の詳細は後述する。
【0028】
平均値算出部105は、差分画像生成部101が生成する差分画像の対象領域における輝度の平均値を算出する。
【0029】
ヒストグラム生成部106は、差分画像生成部101が生成する差分画像の対象領域における輝度値のヒストグラムを生成する。生成するヒストグラムにおける輝度値の範囲と階級幅は後述する比較用ヒストグラム111に応じたものとすればよい。例えば、比較用ヒストグラム111が、輝度値-255~255の範囲で、階級幅を10としたヒストグラムであれば、ヒストグラム生成部106は、同じ範囲、同じ階級幅のヒストグラムを生成してもよい。た、ヒストグラム生成部106は、生成したヒストグラムを正規化する。正規化は、比較用ヒストグラム111との類似度を算出するために行われる。
【0030】
類似度算出部107は、ヒストグラム生成部106が生成するヒストグラムと、比較用ヒストグラム111との類似度を算出する。比較用ヒストグラム111は、袋入りの廃棄物または廃プラスチックが写っていることが既知の画像から生成された輝度値のヒストグラムである。ヒストグラム生成部106が生成するヒストグラムと同じく、正規化したヒストグラムを比較用ヒストグラム111とする。なお、ヒストグラム間の類似度を算出する方法は特に限定されない。例えば、類似度算出部107は、周知の類似度算出方法を適用して類似度を算出してもよい。
【0031】
分類部108は、類似度算出部107が算出する類似度に基づいて対象領域に写る廃棄物を分類する。分類部108は、類似度のみに基づいて分類することも可能であるが、類似度に加え、平均値算出部105が算出する平均値についても考慮して廃棄物を分類することも可能である。また、分類部108は、対象領域に写る廃棄物が、袋入りの廃棄物または廃プラスチックである可能性が高いが、類似度と平均値ではその何れであるかを判定することが難しい場合には、分類モデル112を用いてその廃棄物を分類する。
【0032】
分類モデル112は、袋入りの廃棄物と廃プラスチックとを分類可能に学習した分類モデルである。分類モデル112は、袋入りの廃棄物の画像と廃プラスチックの画像とを教師データとして機械学習することにより生成することができる。機械学習のアルゴリズムは特に限定されない。例えば、画像の分類精度の高い畳み込みニューラルネットワークの分類モデル112を適用してもよい。
【0033】
クレーン制御部109は、通信部12を介した通信により制御装置2を介してクレーン3を制御する。例えば、クレーン制御部109は、対象領域の廃棄物が廃プラスチックに分類された場合、その対象領域の位置を制御装置2に通知し、その位置の廃棄物をクレーン3に運搬させ、他の廃棄物と混合させる。例えば、クレーン制御部109は、バケット34を水平移動させながらバケット34を開かせることにより、バケット34の移動経路上に廃プラスチックを分散させてもよい。
【0034】
以上のように、情報処理装置1は、廃棄物を貯留する廃棄物ピットPの内部を所定の時間間隔で撮影した画像から生成された差分画像の対象領域における輝度値のヒストグラムと、袋入りの廃棄物または廃プラスチックが写っていることが既知の画像から生成された輝度値のヒストグラムである比較用ヒストグラム111との類似度を算出する類似度算出部107と、算出された類似度に基づいて対象領域に写る廃棄物を分類する分類部108と、を備える。
【0035】
本願の発明者による実験および検討の結果、廃棄物ピットPの内部を所定の時間間隔で撮影した画像から差分画像を作成し、その輝度値のヒストグラムを作成した場合、そのヒストグラムは廃棄物の種類に応じた特徴的なものとなることが分かった。特に、袋入りの廃棄物または廃プラスチックが写っていることが既知の画像から生成された輝度値のヒストグラムは、他種の廃棄物が写る画像から生成された輝度値のヒストグラムとは特徴が異なることが分かった。
【0036】
例えば、
図3には、h1~h4の計4つのヒストグラムを示している。これらのヒストグラムは、何れも廃棄物ピットPの内部を所定の時間間隔で撮影した画像から生成された差分画像に設定した対象領域における輝度値のヒストグラムである点で共通し、対象領域に写る廃棄物の種類が相違している。なお、何れのヒストグラムにおいても横軸が輝度値、縦軸が度数である。
【0037】
具体的には、ヒストグラムh1は、剪定ごみが写っている対象領域における輝度値のヒストグラムである。剪定ごみは、草木の剪定などによって生じた廃棄物であり、剪定ごみには、草木の断片が主として含まれる。剪定ごみには、生木等の燃えにくいものが含まれていることがあるため、剪定ごみをまとめて焼却炉に投入することは避けることが好ましい。
【0038】
また、ヒストグラムh2は、汚泥ごみが写っている対象領域における輝度値のヒストグラムである。汚泥ごみは、排水の処理過程などで発生する泥状の廃棄物である。汚泥ごみも燃えにくいものであるため、汚泥ごみをまとめて焼却炉に投入することは避けることが好ましい。
【0039】
そして、ヒストグラムh3は袋入りの廃棄物が写っている対象領域における輝度値のヒストグラムであり、ヒストグラムh4は廃プラスチックが写っている対象領域における輝度値のヒストグラムである。
【0040】
ヒストグラムh1~h4のうち、ヒストグラムh3とh4は、何れも形状が全体として正規曲線状となっており、これらのヒストグラムの形状は類似しているといえる。一方、緑色や茶色の部分が多い剪定ごみが写る対象領域は輝度値が負の画素の割合が高く、ヒストグラムh1は負の値への偏りが強いヒストグラムとなっている。また、黒色またはそれに近い色の汚泥ごみが写る対象領域は輝度値が負の画素の割合がさらに高く、ヒストグラムh2は負の値への偏りがさらに強いヒストグラムとなっている。
【0041】
以上のことから、ある廃棄物が写る対象領域について生成したヒストグラムと、ヒストグラムh3またはh4との類似度が高い場合には、その対象領域に写る廃棄物は袋入りの廃棄物または廃プラスチックである可能性が高いといえる。一方、上記の類似度が低い場合には、対象領域に写る廃棄物は袋入りの廃棄物および廃プラスチック以外の廃棄物である可能性が高いといえる。
【0042】
したがって、袋入りの廃棄物または廃プラスチックが写っていることが既知の画像から生成された輝度値のヒストグラムである比較用ヒストグラム111との類似度に基づいて対象領域に写る廃棄物を分類することにより、廃棄物ピットP内の廃プラスチックを検出することが可能になる。
【0043】
また、情報処理装置1は、対象領域における輝度の平均値を算出する平均値算出部105を備える。そして、分類部108は、類似度算出部107が算出する類似度と平均値算出部105が算出する平均値とに基づいて対象領域に写る廃棄物を分類することもできる。
【0044】
本願の発明者による実験および検討の結果、上記の差分画像における輝度の平均値も廃棄物の種類に応じて異なる傾向を示すことが分かった。例えば、
図3の例において、ヒストグラムh1における輝度の平均値は-41.93、ヒストグラムh2における輝度の平均値は-104.62であった。これに対し、ヒストグラムh3における輝度の平均値は-5.97、ヒストグラムh4における輝度の平均値は38.23であった。
【0045】
このように、輝度の平均値は、廃棄物の種類に応じて異なる傾向を示すから、類似度に加えて輝度の平均値に基づいて対象領域に写る廃棄物を分類することにより、廃棄物ピットP内の廃プラスチックの検出精度を高めることが可能になる。
【0046】
〔処理の例〕
情報処理装置1が実行する処理の例を
図4に基づいて説明する。
図4は、情報処理装置1が実行する処理の例を示す図である。
図4の例では、ある時刻に廃棄物ピットPの内部を撮影した画像A1と、その所定時間後に廃棄物ピットPの内部を撮影した画像A2から差分画像A3を生成している。
【0047】
画像A1およびA2に写る領域のうち、上記の所定時間中に輝度値の変化がなかった領域は、差分画像A3において輝度値がゼロの黒色領域となる。一方、上記の所定時間中に新たな廃棄物が廃棄物ピットPに投入される等して輝度値に変化が生じた領域は、差分画像A3において輝度値が非ゼロの値をとる領域となる。例えば、差分画像A3において、廃棄物の投入口の直下の領域A31は、全体として輝度値が高い白色の領域となっており、このことは上記の所定時間中に領域A31に廃棄物が投入されたことを示している。
【0048】
図4には、領域A31を対象領域として生成したヒストグラムh5を示している。類似度算出部107は、このようにして生成されたヒストグラムh5と、比較用ヒストグラム111であるヒストグラムh6との類似度を算出する。ヒストグラムh6は、袋ごみが写っている対象領域における輝度値のヒストグラムである。ヒストグラムh6は、様々な袋ごみが写っている複数の画像のそれぞれから生成したヒストグラムをもとに、統計的に生成されたものであってもよい。領域A31に写る廃棄物の分類は、このようにして算出された類似度に基づいて行われる。
【0049】
〔分類方法〕
以下、類似度に基づく廃棄物の分類方法について説明する。比較用ヒストグラム111が袋入りの廃棄物が写っている画像から生成されたヒストグラムである場合に類似度が高ければ、対象領域に写る廃棄物は袋入りの廃棄物である可能性が高いといえる。同様に、比較用ヒストグラム111が、廃プラスチックが写っている画像から生成されたヒストグラムである場合に類似度が高ければ、対象領域に写る廃棄物廃プラスチックである可能性が高いといえる。
【0050】
このため、分類部108は、袋入りの廃棄物が写っていることが既知の画像から生成された比較用ヒストグラム111との類似度が所定の閾値以上であることを条件として、対象領域に写る廃棄物を袋入りの廃棄物に分類してもよい。また、分類部108は、廃プラスチックが写っていることが既知の画像から生成された比較用ヒストグラム111との類似度が所定の閾値以上であることを条件として、対象領域に写る廃棄物を廃プラスチックに分類してもよい。なお、以下では、上記閾値を「上限値」と呼ぶ。
【0051】
前者の構成によれば、袋入りの廃棄物を廃プラスチックと区別して検出することができる。また、後者の構成によれば、廃プラスチックを袋入りの廃棄物と区別して検出することができる。なお、誤分類を防ぐという観点から、閾値は高めに設定することが好ましい。例えば、本願の発明者による実験では、類似度を0~1の数値(1に近いほど類似性が高い)で表したとき、閾値を0.87以上とすることにより、十分な分類精度となることが確認されている。
【0052】
また、上記の条件には、平均値算出部105が算出する平均値が所定の数値範囲内である、との条件が含まれていてもよい。この数値範囲は、対象領域に写る廃棄物が廃プラスチックまたは袋入りの廃棄物であれば当該範囲に収まり、そうでなければ当該範囲外となるように設定される。例えば、袋入りの廃棄物が写っていることが既知の画像、または廃プラスチックが写っていることが既知の画像における輝度値に基づいて上記の数値範囲を設定しておいてもよい。例えば、本願の発明者による実験では、袋入りの廃棄物および廃プラスチックが写る領域の輝度値は概ね-20から85の範囲に収まることが確認されているから、上記数値範囲を-20から85としてもよい。
【0053】
一方、比較用ヒストグラム111との類似度が低ければ、対象領域に写る廃棄物は袋入りの廃棄物でもなく、廃プラスチックでもない可能性が高いといえる。このため、分類部108は、類似度が所定の閾値未満であることを条件として、対象領域に写る廃棄物を袋入りの廃棄物および廃プラスチックとは異なる分類としてもよい。これにより、袋入りの廃棄物および廃プラスチック以外の廃棄物である可能性が高い廃棄物を適切に分類することができる。なお、以下では、上記閾値を「下限値」と呼ぶ。また、袋入りの廃棄物および廃プラスチック以外の廃棄物である可能性が高い廃棄物を異質廃棄物と呼ぶ。一般に、異質廃棄物も廃プラスチックと同様に、まとめて焼却することは好ましくなく、クレーン3による撹拌により廃棄物ピットP内で分散させることが好ましい。
【0054】
なお、下限値を低めに設定することにより、袋入りの廃棄物および廃プラスチックが誤って異質廃棄物に分類される可能性を低減することができる。このため、下限値は求められる分類精度等に応じて適宜定めておけばよい。例えば、本願の発明者による実験では、類似度を0~1の数値(1に近いほど類似性が高い)で表したとき、下限値を0.50以下とすることにより、袋入りの廃棄物および廃プラスチックが、誤って異質廃棄物に分類される可能性が低いことが確認されている。
【0055】
また、分類部108は、平均値算出部105が算出する平均値が所定の数値範囲外である場合に、対象領域に写る廃棄物を異質廃棄物に分類してもよい。これにより、輝度の平均値という観点から異質廃棄物である可能性が高い廃棄物を適切に分類することができる。例えば、上記の数値範囲を-20から85とした場合、分類部108は、平均値算出部105が算出する平均値が85より大きい廃棄物と、-20より小さい廃棄物を異質廃棄物に分類する。
【0056】
また、分類部108は、類似度と平均値とを併用して異質廃棄物への分類を行ってもよい。例えば、分類部108は、類似度が所定の閾値未満であり、かつ、平均値算出部105が算出する平均値が所定の数値範囲外である場合に、対象領域に写る廃棄物を異質廃棄物に分類としてもよい。また、例えば、分類部108は、類似度が所定の閾値未満であるという条件と、平均値算出部105が算出する平均値が所定の数値範囲外であるという条件の少なくとも一方が充足される場合に、対象領域に写る廃棄物を異質廃棄物に分類してもよい。
【0057】
ここで、類似度が上述の下限値より高く、上述の上限値未満である場合、対象領域に写る廃棄物は袋入りの廃棄物および廃プラスチックの何れかである可能性が高いといえる。また、平均値算出部105が算出する平均値が、上述した所定の数値範囲内である場合も同様である。しかし、類似度および平均値のみからは、対象領域に写る廃棄物が袋入りの廃棄物であるか、廃プラスチックであるかまで判定することは難しい。
【0058】
このため、分類部108は、類似度が所定の下限値より高く、所定の上限値未満であることを条件として、袋入りの廃棄物と廃プラスチックとを分類可能に学習した分類モデル112を用いて対象領域に写る廃棄物を分類する。
【0059】
この構成によれば、袋入りの廃棄物と廃プラスチックとを適切に分類し、廃プラスチックを高精度に検出することが可能になる。また、分類対象が袋入りの廃棄物と廃プラスチックの2種に絞られている上記の構成は、種々の廃棄物について全て分類モデルで分類する構成と比べて、分類モデルの学習コストを最小限に抑えることができる点で有利である。
【0060】
なお、分類モデル112は、対象領域に写る廃棄物が袋入りの廃棄物である確度を示す情報(例えば0~1の数値)と、廃プラスチックである確度を示す情報とを出力するものであってもよい。この場合、分類部108は、廃プラスチックである確度が所定の閾値以上である場合に、対象領域に写る廃棄物を廃プラスチックに分類し、当該確度が当該閾値未満である場合には対象領域に写る廃棄物を袋入りの廃棄物に分類してもよい。
【0061】
また、分類モデル112を用いる条件には、平均値算出部105が算出する平均値が、上述した所定の数値範囲内である、という条件が含まれていてもよい。これにより、平均値算出部105が算出する平均値からは、対象領域に写る廃棄物が袋入りの廃棄物または廃プラスチックであるとはいいがたい場合に、分類モデル112を用いた分類を行わずに済ませることができる。
【0062】
以上のように、対象領域に写る廃棄物の分類には様々な方法が適用可能であるが、以下では、次のような条件で分類を行う例を説明する。
(第1の条件):類似度≧0.87であれば対象領域に写る廃棄物を袋入りの廃棄物に分類する。
(第2の条件):0.5<類似度<0.87、かつ、-20<平均値<85であれば、分類モデル112を用いた分類を行う。
(第3の条件):分類モデル112の分類の結果、廃プラスチックである確度が0.95以上であれば廃プラスチックに分類し、当該確度が0.95未満であれば袋入りの廃棄物に分類する。
(第4の条件):類似度≦0.5、平均値≦-20、および平均値≧85の何れかを満たせば異質廃棄物に分類する。
【0063】
〔対象領域の設定方法〕
対象領域は、例えば情報処理装置1のユーザが入力部13を介して指定する等により、手動で設定するようにしてもよいが、情報処理装置1は、対象領域設定部104を備えているから、対象領域を自動で設定することができる。以下では、対象領域設定部104による対象領域の設定方法を
図5に基づいて説明する。
図5は、対象領域の設定方法を説明する図である。
【0064】
図5には、差分画像A4を示している。差分画像A4には領域A41a~A41gの計7つの領域が設定されている。領域A41a~A41gのそれぞれは、廃棄物ピットPに廃棄物を投入するための投入口の直下に対応する位置に設定されている。つまり、この例では、廃棄物ピットPの長手方向に沿って廃棄物を投入するための投入口が7つ設けられている。なお、以下では、領域A41a~A41gのそれぞれを区別する必要がないときには単に領域A41と表記する。
【0065】
領域A41は、廃棄物ピットPに設けられた投入口の数および位置に応じて設定しておけばよい。領域A41には新たに投入された廃棄物が写るため、対象領域設定部104は、領域A41内に対象領域を設定することにより、妥当な位置に対象領域を設定することができる。
【0066】
なお、投入口から廃棄物が投入されたとき、投入された位置に既に堆積していた廃棄物の高さによって、新たに投入された廃棄物が写る画像上の位置は異なるものとなる。このため、領域A41は、廃棄物ピットPの各所における廃棄物の堆積高さに応じて動的に設定してもよい。これにより、廃棄物ピットPの各所における廃棄物の堆積高さに応じた適切な領域内に対象領域を設定することが可能になる。
【0067】
領域A41内に対象領域を設定するにあたり、対象領域設定部104は、差分画像から輝度値が所定の閾値以上の画素を抽出した抽出結果に基づいて対象領域を設定してもよい。廃棄物ピットPに廃棄物が投入された場合、領域A41内に輝度値が大きい画素からなる領域が生じる。よって、差分画像から輝度値が所定の閾値以上の画素を抽出した抽出結果に基づいて対象領域を設定することにより、妥当な対象領域に設定することができる。
【0068】
例えば、対象領域設定部104は、二値化画像生成部102が生成した二値化画像に対し、膨張処理部103が膨張処理を施したものにおいて、白色の画素からなる画素群を囲む矩形領域を求め、その矩形領域を差分画像における対象領域に設定してもよい。
図5には、領域A41a内にこのようにして設定した対象領域をA42aとして示している。領域A41b~A41gについても同様にして対象領域が設定される。この対象領域の設定方法は、領域A41を設定しない場合にも適用可能である。
【0069】
なお、上述のように、二値化画像生成部102は、差分画像から輝度値の「絶対値」が所定の閾値以上の画素を抽出してもよい。この場合、対象領域設定部104は、当該抽出の結果に基づいて対象領域を設定する。これにより、輝度値が高い廃プラスチック等の廃棄物が投入された領域と、輝度値が低い剪定ごみや汚泥ごみ等の廃棄物が投入された領域の両方を対象領域に設定することができる。
【0070】
また、領域A41の中には、廃棄物が投入されなかった領域が含まれ得る。廃棄物が投入されなかった領域に対象領域を設定する必要はないため、対象領域設定部104は、領域A41のうち、廃棄物が投入された可能性の高い領域に対象領域を設定するようにしてもよい。
【0071】
例えば、対象領域設定部104は、差分画像における、廃棄物ピットPに廃棄物を投入する複数の投入口のそれぞれに対応する位置に予め設定された複数の領域A41のうち、輝度値が所定の閾値以上の画素が所定の割合以上含まれている領域に対象領域を設定してもよい。これにより、廃棄物が投入された可能性が高い領域A41に絞って対象領域を設定することができる。
【0072】
例えば、対象領域設定部104は、二値化画像生成部102が生成し、膨張処理部103が膨張処理を施した二値化画像において、ある領域A41に対応する領域に占める白色の画素の割合が所定の閾値以上である場合に、その領域A41に対象領域を設定してもよい。つまり、対象領域設定部104は、膨張処理後の二値化画像において、ある領域A41に対応する領域に占める白色の画素の割合が所定の閾値未満である場合には、その領域A41には対象領域を設定しないようにしてもよい。上記の割合は適宜定めておけばよく、例えば4割としてもよい。
【0073】
〔処理の流れ〕
情報処理装置1が実行する処理の流れを
図6に基づいて説明する。
図6は、情報処理装置1が実行する処理の一例を示すフローチャートである。なお、ここでは、廃棄物ピットPへの廃棄物の搬入が行われる時間帯において、廃棄物ピットPの内部が所定の時間間隔で撮影されることを想定している。
図6の処理は、新たな画像が撮影され、情報処理装置1がこれを取得する毎に繰り返し行われる。
【0074】
S1では、差分画像生成部101が、廃棄物ピットPの内部を所定の時間間隔で撮影した画像を取得し、それらの画像から差分画像を生成する。
【0075】
S2では、二値化画像生成部102が、S1で生成された差分画像から二値化画像を生成する。より詳細には、二値化画像生成部102は、上記差分画像から輝度値の絶対値が閾値以上の画素を抽出して二値化画像を生成する。なお、二値化画像生成部102は、差分画像から輝度値が閾値以上の画素を抽出して二値化画像を生成してもよい。
【0076】
S3では、膨張処理部103が、S2で抽出された画素に対して膨張処理を施す。そして、S4では、対象領域設定部104が、S2の抽出結果に基づいて対象領域を設定する。例えば、対象領域設定部104は、膨張処理を施した二値化画像において、白色の画素からなる画素群を囲む矩形領域を求め、その矩形領域を差分画像における対象領域に設定する。
図5に基づいて説明したように、対象領域設定部104は、廃棄物ピットPに廃棄物を投入するための投入口の直下に対応する位置に設定された領域A41内に対象領域を設定してもよい。なお、対象領域は複数設定してもよく、複数の対象領域を設定した場合には、各対象領域についてS5以下の処理が行われる。
【0077】
S5では、平均値算出部105が、S1で生成された差分画像のS4で設定された対象領域における輝度の平均値を算出する。そして、S6では、ヒストグラム生成部106が、S1で生成された差分画像のS4で設定された対象領域における輝度値のヒストグラムを生成する。また、ヒストグラム生成部106は、生成したヒストグラムを正規化する。なお、S5よりも先にS6の処理を行うようにしてもよいし、S5とS6の処理を並行して行うようにしてもよい。
【0078】
S7(類似度算出ステップ)では、類似度算出部107が、S6で生成されたヒストグラムと、比較用ヒストグラム111との類似度を算出する。比較用ヒストグラム111は、袋入りの廃棄物が写っていることが既知の画像から生成された輝度値のヒストグラムである。なお、比較用ヒストグラム111は、廃プラスチックが写っていることが既知の画像から生成された輝度値のヒストグラムであってもよい。S7の終了後、S8の処理に進む。S8~S12は、S7で算出された類似度に基づいて対象領域に写る廃棄物を分類する分類ステップである。
【0079】
S8では、分類部108が、S7で算出された類似度が第1の条件を満たすか否かを判定する。第1の条件とは、S7で算出された類似度が所定の上限値(例えば0.87)以上であること、である。S8でYESと判定された場合にはS9に進み、S8でNOと判定された場合にはS10に進む。
【0080】
S9では、分類部108は、対象領域に写る廃棄物を袋入りの廃棄物に分類し、これにより
図6の処理は終了する。なお、S7で用いた比較用ヒストグラム111が、廃プラスチックが写っていることが既知の画像から生成された輝度値のヒストグラムであった場合、S9では対象領域に写る廃棄物は廃プラスチックに分類される。
【0081】
S10では、分類部108は、S5で算出された平均値とS7で算出された類似度とが第2の条件を満たすか否かを判定する。第2の条件とは、S7で算出された類似度が所定の上限値未満で所定の下限値より大きく、かつ、S5で算出された平均値が所定の上限値未満で所定の下限値より大きいこと、である。例えば、分類部108は、0.5<類似度<0.87、かつ、-20<平均値<85であれば第2の条件を満たすと判定してもよい。S10でYESと判定された場合にはS12に進み、S10でNOと判定された場合にはS11に進む。上述の第4の条件が充足されている場合にはS10でNOと判定される。
【0082】
S11では、分類部108は、対象領域に写る廃棄物を異質廃棄物に分類し、これにより
図6の処理は終了する。例えば、S6で
図3のヒストグラムh1(剪定ごみ)またはヒストグラムh2(汚泥ごみ)のようなヒストグラムが生成されたとする。この場合、第1の条件および第2の条件の何れも充足しないためS8およびS10でNOと判定され、対象領域に写る廃棄物はS11で異質廃棄物と分類される。
【0083】
S12では、分類部108は、袋入りの廃棄物と廃プラスチックとを分類可能に学習した分類モデル112を用いて対象領域に写る廃棄物を分類する。分類モデル112に入力する画像は対象領域を含むものであればよい。例えば、分類部108は、
図5の対象領域A42aについて分類を行う場合、S1で生成された差分画像の元になった画像のうち後で撮影された画像から、領域A41aに対応する部分を切り出して分類モデル112に入力してもよい。S12における分類結果は、袋入りの廃棄物および廃プラスチックの何れかとなる。S12において、分類部108は、上述の第3の条件に基づいて対象領域に写る廃棄物を分類してもよい。S12の処理が終了することにより、
図6の処理は終了する。
【0084】
以上説明した
図6の処理には、本実施形態に係る分類方法が含まれている。すなわち、本実施形態に係る分類方法は、廃棄物を貯留する廃棄物ピットPの内部を所定の時間間隔で撮影した画像から生成された差分画像の対象領域における輝度値のヒストグラムと、袋入りの廃棄物または廃プラスチックが写っていることが既知の画像から生成された輝度値のヒストグラムとの類似度を算出する類似度算出ステップ(S7)と、算出された類似度に基づいて対象領域に写る廃棄物を分類する分類ステップ(S8~S12)と、を含む。これにより、廃棄物ピットP内の廃プラスチックを検出することが可能になる。
【0085】
なお、
図6には示していないが、分類部108による分類の結果が、廃プラスチックまたは異質廃棄物であった場合、クレーン制御部109は、その廃棄物が検出された対象領域を制御装置2に通知し、その廃棄物をクレーン3に運搬させて、他の廃棄物と混合させる。
【0086】
〔複数の撮影装置の使用〕
上述の実施形態では、1つの撮影装置で撮影した画像に基づいて廃棄物ピットPにおける対象領域の廃棄物の分類を行う例を説明したが、撮影装置は複数用いてもよい。廃棄物ピットP内の廃棄物は基本的に平坦ではなく、撮影する角度によっては他の廃棄物やクレーン3による死角が生じたり、光の当たり方等により撮影された画像中に写る廃棄物の外観が変わったりすることもあり得る。この点、撮影装置を複数用い、複数の角度から廃棄物ピットP内を撮影することにより、高精度な分類を安定して行うことが可能になる。
【0087】
例えば、廃棄物ピットPが、上面視で長方形状である場合、その一つの頂点付近から廃棄物ピットPを俯瞰するように1つの撮影装置を配置すると共に、上記頂点の対角にあたる頂点付近から廃棄物ピットPを俯瞰するようにもう1つの撮影装置を配置してもよい。これにより、一方の撮影装置からは死角となる領域についても他方の撮影装置で撮影することができる。
【0088】
各撮影装置で撮影された画像から対象領域の廃棄物の分類を行う方法は、上述の実施形態で説明したとおりである。この場合、同じ対象領域について分類結果が複数得られるから、クレーン制御部109はそれらの分類結果に基づいてクレーン3の制御を行えばよい。例えば、クレーン制御部109は、ある対象領域について、少なくとも何れかの分類結果が、その対象領域の廃棄物が廃プラスチックまたは異質廃棄物であることを示していた場合、その廃棄物をクレーン3に運搬させて、他の廃棄物と混合させるようにしてもよい。
【0089】
〔変形例〕
上述の実施形態で説明した各処理の実行主体は任意であり、上述の例に限られない。つまり、相互に通信可能な複数の情報処理装置により、情報処理装置1と同様の機能を有する情報処理システムを構築することができる。例えば、
図6に示した各処理を複数の情報処理装置(コンピュータと言い換えることもできる)に分担で実行させることもできる。つまり、本実施形態に係る分類方法の実行主体は、1つの情報処理装置であってもよいし、複数の情報処理装置であってもよい。
【0090】
〔ソフトウェアによる実現例〕
情報処理装置1の機能は、情報処理装置1としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、情報処理装置1の各制御ブロック(特に制御部10に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラム(分類プログラム)により実現することができる。
【0091】
この場合、情報処理装置1は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記実施形態で説明した各機能が実現される。
【0092】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、情報処理装置1が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して情報処理装置1に供給されてもよい。
【0093】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0094】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る情報処理装置は、廃棄物を貯留する廃棄物ピットの内部を所定の時間間隔で撮影した画像から生成された差分画像の対象領域における輝度値のヒストグラムと、袋入りの廃棄物または廃プラスチックが写っていることが既知の画像から生成された輝度値のヒストグラムとの類似度を算出する類似度算出部と、前記類似度に基づいて前記対象領域に写る廃棄物を分類する分類部と、を備える。
【0095】
本発明の態様2に係る情報処理装置は、前記態様1において、前記対象領域における輝度の平均値を算出する平均値算出部を備え、前記分類部は、前記類似度と前記平均値算出部が算出する平均値とに基づいて前記対象領域に写る廃棄物を分類する。
【0096】
本発明の態様3に係る情報処理装置は、前記態様1または2において、前記分類部は、前記類似度が所定の下限値より高く、所定の上限値未満であることを条件として、袋入りの廃棄物と廃プラスチックとを分類可能に学習した分類モデルを用いて前記対象領域に写る廃棄物を分類する。
【0097】
本発明の態様4に係る情報処理装置は、前記態様1から3の何れかにおいて、前記分類部は、袋入りの廃棄物が写っていることが既知の画像から生成された前記ヒストグラムとの類似度が所定の閾値以上であることを条件として、前記対象領域に写る廃棄物を袋入りの廃棄物に分類するか、または、廃プラスチックが写っていることが既知の画像から生成された前記ヒストグラムとの類似度が所定の閾値以上であることを条件として、前記対象領域に写る廃棄物を廃プラスチックに分類する。
【0098】
本発明の態様5に係る情報処理装置は、前記態様1から4の何れかにおいて、前記分類部は、前記類似度が所定の閾値未満であることを条件として、前記対象領域に写る廃棄物を袋入りの廃棄物および廃プラスチックとは異なる分類とする。
【0099】
本発明の態様6に係る情報処理装置は、前記態様1から5の何れかにおいて、前記差分画像から輝度値が所定の閾値以上の画素を抽出した抽出結果に基づいて前記対象領域を設定する対象領域設定部を備える。
【0100】
本発明の態様7に係る情報処理装置は、前記態様6において、前記対象領域設定部は、前記差分画像における、前記廃棄物ピットに廃棄物を投入する複数の投入口のそれぞれに対応する位置に予め設定された複数の領域のうち、輝度値が所定の閾値以上の画素が所定の割合以上含まれている領域に前記対象領域を設定する。
【0101】
本発明の態様8に係る分類方法は、1または複数の情報処理装置が実行する分類方法であって、廃棄物を貯留する廃棄物ピットの内部を所定の時間間隔で撮影した画像から生成された差分画像の対象領域における輝度値のヒストグラムと、袋入りの廃棄物または廃プラスチックが写っていることが既知の画像から生成された輝度値のヒストグラムとの類似度を算出する類似度算出ステップと、前記類似度に基づいて前記対象領域に写る廃棄物を分類する分類ステップと、を含む。
【0102】
本発明の態様9に係る分類プログラムは、前記態様1に記載の情報処理装置としてコンピュータを機能させるための分類プログラムであって、前記類似度算出部および前記分類部としてコンピュータを機能させる。
【0103】
本発明の態様10に係る制御システムは、廃棄物を貯留する廃棄物ピットの内部を所定の時間間隔で撮影した画像から生成された差分画像の対象領域における輝度値のヒストグラムと、袋入りの廃棄物または廃プラスチックが写っていることが既知の画像から生成された輝度値のヒストグラムとの類似度に基づいて前記対象領域に写る廃棄物を分類する情報処理装置と、前記情報処理装置による分類の結果に基づいて前記廃棄物ピットに配置されたクレーンの動作を制御する制御装置と、を含む。
【0104】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0105】
1 情報処理装置
104 対象領域設定部
105 平均値算出部
107 類似度算出部
108 分類部
111 比較用ヒストグラム
112 分類モデル
2 制御装置
3 クレーン
5 制御システム