(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021802
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】撥水撥油剤用ポリマー組成物及び撥水撥油剤
(51)【国際特許分類】
C09K 3/18 20060101AFI20250206BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20250206BHJP
C08F 230/08 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
C09K3/18 104
C08F290/06
C08F230/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125769
(22)【出願日】2023-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹田 佳靖
【テーマコード(参考)】
4H020
4J100
4J127
【Fターム(参考)】
4H020BA32
4J100AL03P
4J100AL03Q
4J100AL03R
4J100AL08S
4J100AL08T
4J100BA72S
4J100BA81S
4J100BC43T
4J100CA03
4J100DA36
4J100FA03
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4J100JA01
4J100JA20
4J127AA05
4J127BB021
4J127BB101
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4J127BC021
4J127BC151
4J127BD291
4J127BG381
4J127BG38Y
4J127CA02
4J127CB124
4J127CB142
4J127CB143
4J127CB144
4J127CB151
4J127CC012
4J127CC021
4J127CC031
4J127FA07
4J127FA56
(57)【要約】
【課題】撥水性と撥油性とを兼ね備えた膜を形成できる撥水撥油剤用ポリマー組成物及び撥水撥油剤の提供。
【解決手段】式(1)で表される反応性シリコーンに由来する構成単位(A)、環状構造を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位(B)、及び、環状構造を有しないアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(C)を含み、構成単位(A)の含有率が、全構成単位に対して1質量%以上30質量%未満であり、アルキル部位の炭素数が8以上であり、かつ、環状構造を有しないアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(D)の含有率が、全構成単位に対して50質量%未満であるポリマーと、溶剤と、を含む撥水撥油剤用ポリマー組成物〔式(1)中、R
1:水素原子又はメチル基、R
2~R
6:炭素数1~5のアルキル基、又は、炭素数1~3のアルキル基を有するトリアルキルシロキシ基、m:1~10、n:0~200〕。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される反応性シリコーンに由来する構成単位(A)、環状構造を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位(B)、及び、環状構造を有しないアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(C)を含み、前記構成単位(A)の含有率が、全構成単位に対して1質量%以上30質量%未満の範囲であり、アルキル部位の炭素数が8以上であり、かつ、環状構造を有しないアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(C1)の含有率が、全構成単位に対して50質量%未満であるポリマーと、溶剤と、を含む撥水撥油剤用ポリマー組成物。
【化1】
式(1)中、R
1は、水素原子又はメチル基を表し、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、各々独立に、炭素数1~5のアルキル基、又は、炭素数1~3のアルキル基を有するトリアルキルシロキシ基を表す。mは、1~10の整数を表し、nは、0~200の整数を表す。
【請求項2】
前記環状構造を有する(メタ)アクリレートが、ベンジル(メタ)アクリレート及びイソボルニル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の撥水撥油剤用ポリマー組成物。
【請求項3】
前記ポリマーにおける前記式(1)で表される反応性シリコーンの数平均分子量が、8000以上である、請求項1に記載の撥水撥油剤用ポリマー組成物。
【請求項4】
前記ポリマーにおける前記構成単位(A)の含有量に対する前記構成単位(B)の含有量の割合が、質量基準で、0.1以上2.0以下の範囲である、請求項1に記載の撥水撥油剤用ポリマー組成物。
【請求項5】
前記ポリマーにおけるアルキル部位の炭素数が1~4であるアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(C2)の含有率が、全構成単位に対して40質量%以上である、請求項1に記載の撥水撥油剤用ポリマー組成物。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の撥水撥油剤用ポリマー組成物を含む撥水撥油剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撥水撥油剤用ポリマー組成物及び撥水撥油剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撥水及び撥油の技術を用いた防汚コーティング剤に関しては、フッ素化合物を使用した製品が多く上市されている。フッ素化合物は、撥水及び撥油のいずれの効果も期待できる化合物であることから、フッ素化合物を使用した撥水撥油剤に関する報告がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、アルキル部位の炭素数が8以上であるパーフルオロアルキル基を有するフッ素化合物は、撥水性及び撥油性のいずれの性能も高いことが知られており、撥水撥油剤、表面処理剤等の原料として多用されてきた。しかし、アルキル部位の炭素数が8以上である上記フッ素化合物は、分解し難く、長期にわたって環境及び人体への影響が懸念されることから、その使用を規制する動きが広がっている。一方、アルキル部位の炭素数が6以下である上記フッ素化合物は、アルキル部位の炭素数が8以上である上記フッ素化合物と比較して、環境及び人体への影響は低いものの、今後、規制対象となる可能性がある。また、撥水性及び/又は撥油性については、かなり劣る傾向にある。このため、近年、パーフルオロアルキル基を有するフッ素化合物の代替化合物を使用した撥水撥油剤の研究が進められている。
【0005】
本開示は、上記のような状況に鑑みてなされたものである。
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、撥水性と撥油性とを兼ね備えた膜を形成できる撥水撥油剤用ポリマー組成物を提供することにある。
本開示の他の実施形態が解決しようとする課題は、上記撥水撥油剤用ポリマー組成物を含む撥水撥油剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 下記式(1)で表される反応性シリコーンに由来する構成単位(A)、環状構造を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位(B)、及び、環状構造を有しないアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(C)を含み、上記構成単位(A)の含有率が、全構成単位に対して1質量%以上30質量%未満の範囲であり、アルキル部位の炭素数が8以上であり、かつ、環状構造を有しないアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(C1)の含有率が、全構成単位に対して50質量%未満であるポリマーと、溶剤と、を含む撥水撥油剤用ポリマー組成物。
【0007】
【0008】
式(1)中、R1は、水素原子又はメチル基を表し、R2、R3、R4、R5及びR6は、各々独立に、炭素数1~5のアルキル基、又は、炭素数1~3のアルキル基を有するトリアルキルシロキシ基を表す。mは、1~10の整数を表し、nは、0~200の整数を表す。
【0009】
<2> 上記環状構造を有する(メタ)アクリレートが、ベンジル(メタ)アクリレート及びイソボルニル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種である、<1>に記載の撥水撥油剤用ポリマー組成物。
<3> 上記ポリマーにおける上記式(1)で表される反応性シリコーンの数平均分子量が、8000以上である、<1>又は<2>に記載の撥水撥油剤用ポリマー組成物。
<4> 上記ポリマーにおける上記構成単位(A)の含有量に対する上記構成単位(B)の含有量の割合が、質量基準で、0.1以上2.0以下の範囲である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の撥水撥油剤用ポリマー組成物。
<5> 上記ポリマーにおけるアルキル部位の炭素数が1~4であるアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(C2)の含有率が、全構成単位に対して40質量%以上である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の撥水撥油剤用ポリマー組成物。
<6> <1>~<5>のいずれか1つに記載の撥水撥油剤用ポリマー組成物を含む撥水撥油剤。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一実施形態によれば、撥水性と撥油性とを兼ね備えた膜を形成できる撥水撥油剤用ポリマー組成物が提供される。
本開示の他の実施形態によれば、上記撥水撥油剤用ポリマー組成物を含む撥水撥油剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の撥水撥油剤用ポリマー組成物及び撥水撥油剤について、詳細に説明する。以下に記載する要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において、適宜、変更を加えて実施することができる。
【0012】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0013】
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0014】
本開示において、撥水撥油剤用ポリマー組成物中の各成分の量は、撥水撥油剤用ポリマー組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、撥水撥油剤用ポリマー組成物中に存在する上記複数の物質の合計量を意味する。
【0015】
本開示において、「(メタ)アクリル系モノマー」とは、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを意味する。
【0016】
本開示において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」及び「メタクリル」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の両方を包含する用語である。
【0017】
本開示において、「n-」はノルマルを意味し、「i-」はイソを意味し、「s-」はセカンダリーを意味し、「t-」はターシャリーを意味する。
【0018】
本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
【0019】
本開示において、「モノマー」と「単量体」とは、同義であり、「ポリマー」と「重合体」とは、同義である。
【0020】
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0021】
[撥水撥油剤用ポリマー組成物]
本開示の撥水撥油剤用ポリマー組成物(以下、単に「ポリマー組成物」ともいう。)は、式(1)で表される反応性シリコーンに由来する構成単位(A)、環状構造を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位(B)、及び、環状構造を有しないアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(C)を含み、上記構成単位(A)の含有率が、全構成単位に対して1質量%以上30質量%未満の範囲であり、アルキル部位の炭素数が8以上であり、かつ、環状構造を有しないアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(C1)の含有率が、全構成単位に対して50質量%未満であるポリマーと、溶剤と、を含む。
本開示のポリマー組成物によれば、撥水性と撥油性とを兼ね備えた膜を形成できる。
本開示のポリマー組成物がこのような効果を奏し得る理由については明らかでないが、本発明者は以下のように推測している。但し、以下の推測は、本開示のポリマー組成物を限定的に解釈するものではなく、一例として説明するものである。
【0022】
本発明者は、パーフルオロアルキル基を有するフッ素化合物の代替化合物として、シリコーン化合物に着目した。一般に、シリコーン化合物は、その使用により、形成する膜に撥水性を発現させることができるものの、水よりも表面張力が低い油をはじく撥油性を発現させることは困難である。本発明者は、シリコーン化合物を使用した撥水撥油剤の研究を重ねる過程で、特定の構造を有する反応性シリコーンに由来する構成単位を、環状構造を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位及び環状構造を有しないアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位とともに、ポリマーに組み込むことで、撥水性に加えて撥油性の発現も可能となることを見出した。
【0023】
本開示のポリマー組成物は、ポリマーが式(1)で表される反応性シリコーンに由来する構成単位(A)を含むことで、形成される膜が撥水性及び撥油性を発現し得る。ポリマーが構成単位(A)を含むことで、形成される膜では、式(1)で表される反応性シリコーンの構造に起因して、表面エネルギーが小さくなると考えられる。表面エネルギーが小さくなることにより、形成される膜が撥水性及び撥油性を発現と推測される。また、本開示のポリマー組成物は、ポリマーが環状構造を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位(B)を含むことで、形成される膜が撥油性を発現し得る。ポリマーが構成単位(B)を含むことで、形成される膜では、環状構造を有する(メタ)アクリレートに起因する立体障害によりシリコーン鎖の運動が阻害されると考えられる。この運動の阻害により、表面エネルギーの低い状態が保たれるため、形成される膜が撥油性を発現すると推測される。
本開示のポリマー組成物に含まれるポリマーは、環状構造を有しないアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(C)を含み、アルキル部位の炭素数が8以上であり、かつ、環状構造を有しないアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(C1)の含有率が、全構成単位に対して50質量%未満である。環状構造を有しないアルキル(メタ)アクリレートは、疎水性のアルキル基を含むため、水に対する親和性(所謂、親水性)が低く、油に対する親和性(所謂、親油性)が高い。環状構造を有しないアルキル(メタ)アクリレートの親油性は、アルキル基の炭素数が多いほど高くなる傾向にあるが、本開示のポリマー組成物は、ポリマー中の構成単位(C1)の割合が多すぎず、形成される膜の親油性が過度に高くならないため、撥油性が損なわれ難いと推測される。また、本開示のポリマー組成物は、ポリマー中の構成単位(A)の割合が多すぎないことも、形成される膜の親油性が過度に高くならず、撥油性が損なわれ難い理由の1つと推測される。
以上のことから、本開示のポリマー組成物によれば、撥水性と撥油性とを兼ね備えた膜を形成できると推測される。
【0024】
本開示では、「式(1)で表される反応性シリコーンに由来する構成単位(A)、環状構造を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位(B)、及び、環状構造を有しないアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(C)を含み、上記構成単位(A)の含有率が、全構成単位に対して1質量%以上30質量%未満の範囲であり、アルキル部位の炭素数が8以上であり、かつ、環状構造を有しないアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(C1)の含有率が、全構成単位に対して50質量%未満であるポリマー」を「特定ポリマー」ともいう。
【0025】
〔特定ポリマー〕
本開示のポリマー組成物は、式(1)で表される反応性シリコーンに由来する構成単位(A)、環状構造を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位(B)、及び、環状構造を有しないアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(C)を含み、上記構成単位(A)の含有率が、全構成単位に対して1質量%以上30質量%未満の範囲であり、アルキル部位の炭素数が8以上であり、かつ、環状構造を有しないアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(C1)の含有率が、全構成単位に対して50質量%未満であるポリマー(即ち、特定ポリマー)を含む。
本開示のポリマー組成物は、特定ポリマーを1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0026】
<式(1)で表される反応性シリコーンに由来する構成単位(A)>
特定ポリマーは、下記式(1)で表される反応性シリコーンに由来する構成単位(A)を含み、上記構成単位(A)の含有率が、特定ポリマーの全構成単位に対して1質量%以上30質量%未満の範囲である。
式(1)で表される反応性シリコーンに由来する構成単位(A)は、形成される膜における撥水性及び撥油性の発現に寄与し得る。
【0027】
本開示において、「式(1)で表される反応性シリコーンに由来する構成単位」とは、式(1)で表される反応性シリコーンが付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0028】
【0029】
式(1)中、R1は、水素原子又はメチル基を表し、メチル基であることが好ましい。
【0030】
式(1)中、R2、R3、R4、R5及びR6は、各々独立に、炭素数1~5のアルキル基、又は、炭素数1~3のアルキル基を有するトリアルキルシロキシ基を表す。
式(1)中、R2、R3、R4、R5又はR6で表されるアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状のいずれであってもよい。
式(1)中、R2、R3、R4、R5及びR6は、各々独立に、炭素数1~5のアルキル基であることが好ましく、より好ましくは、R2、R3、R4及びR5が炭素数1のアルキル基(即ち、メチル基)であり、R6が炭素数4のアルキル基である。
式(1)中、mは、1~10の整数を表し、1~5の整数であることが好ましく、3であることがより好ましい。
式(1)中、nは、0~200の整数を表し、5~150の整数であることが好ましい。
【0031】
特定ポリマーにおける式(1)で表される反応性シリコーンの数平均分子量は、特に限定されないが、例えば、形成される膜の撥油性の観点から、400以上であることが好ましく、1000以上であることがより好ましく、5000以上であることが更に好ましく、8000以上であることが更により好ましく、10000以上あることが特に好ましい。
特定ポリマーにおける式(1)で表される反応性シリコーンの数平均分子量は、例えば、式(1)で表される反応性シリコーンの入手容易性の観点から、20000未満であることが好ましい。
【0032】
本開示において、式(1)で表される反応性シリコーンの数平均分子量は、下記の方法により測定される。但し、式(1)で表される反応性シリコーンとして市販品を用いる場合であって、その市販品のカタログに数平均分子量の記載がある場合には、カタログに記載の数平均分子量を優先して採用する。
式(1)で表される反応性シリコーンとテトラヒドロフランとを用いて、固形分濃度が0.2質量%である試料溶液を得る。なお、ここでいう「固形分濃度」とは、試料溶液に占める式(1)で表される反応性シリコーンの質量割合を意味する。次いで、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、下記条件にて、標準ポリスチレン換算値として、式(1)で表される反応性シリコーンの数平均分子量を測定する。
【0033】
~条件~
測定装置:高速GPC〔型番:HLC-8420 GPC、東ソー(株)製〕
検出器:示差屈折率計(RI)〔HLC-8420に組込、東ソー(株)製〕
カラム:TSKgel GMHXL〔東ソー(株)製〕を2本使用
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
試料溶液の注入量:100μL
流量:0.8mL/分
【0034】
なお、特定ポリマーが数平均分子量の異なる2種以上の式(1)で表される反応性シリコーンを含む場合、「特定ポリマーにおける式(1)で表される反応性シリコーンの数平均分子量」は、算術平均した値を意味し、具体的には、下記の式により計算される値をいう。下記の式では、「式(1)で表される反応性シリコーン」を、単に「反応性シリコーン」と表記する。
特定ポリマーにおける反応性シリコーンの数平均分子量 = 〔反応性シリコーン1の数平均分子量×反応性シリコーン1の配合量+反応性シリコーン2の数平均分子量×反応性シリコーン2の配合量+・・・+反応性シリコーンnの数平均分子量×反応性シリコーンnの配合量〕/〔反応性シリコーン1の配合量+反応性シリコーン2の配合量+・・・+反応性シリコーンnの配合量〕
【0035】
式(1)で表される化合物の具体例としては、サイラプレーン(登録商標) FM-0711〔式(1)において、R1=R2=R3=R4=R5=メチル基、R6=n-ブチル基、m=3、数平均分子量(Mn):1000(カタログ値)、JNC(株)製〕、サイラプレーン(登録商標) FM-0721〔式(1)において、R1=R2=R3=R4=R5=メチル基、R6=n-ブチル基、m=3、数平均分子量(Mn):5000(カタログ値)、JNC(株)製〕、サイラプレーン(登録商標) FM-0725〔式(1)において、R1=R2=R3=R4=R5=メチル基、R6=n-ブチル基、m=3、数平均分子量(Mn):10000(カタログ値)、JNC(株)製〕、X-22-2404〔式(1)において、R1=メチル基、R2=R3=R6=トリメチルシロキシ基、m=3、n=0、数平均分子量(Mn):420(カタログ値)、信越化学工業(株)製〕等が挙げられる。
【0036】
特定ポリマーは、構成単位(A)を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0037】
特定ポリマーにおける構成単位(A)の含有率は、特定ポリマーの全構成単位に対して1質量%以上30質量%未満の範囲である。
特定ポリマーにおける構成単位(A)の含有率が、特定ポリマーの全構成単位に対して1質量%以上であることは、ポリマーが構成単位(A)を積極的に含むことを意味する。
特定ポリマーにおける構成単位(A)の含有率が、特定ポリマーの全構成単位に対して30質量%未満であると、形成される膜では、撥油性の発現が損なわれ難い傾向にある。
特定ポリマーにおける構成単位(A)の含有率は、特定ポリマーの全構成単位に対して、1質量%以上25質量%以下の範囲であることが好ましく、5質量%以上20質量%以下の範囲であることがより好ましく、10質量%以上20質量%以下の範囲であることが更に好ましい。
【0038】
<環状構造を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位(B)>
特定ポリマーは、環状構造を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位(B)を含む。
環状構造を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位(B)は、形成される膜における撥油性の発現に寄与し得る。
【0039】
本開示において、「環状構造を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位」とは、環状構造を有する(メタ)アクリレートが付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0040】
環状構造を有する(メタ)アクリレートの種類は、特に限定されない。
環状構造を有する(メタ)アクリレートは、メタクリレートであってもよく、アクリレートであってもよい。
環状構造としては、例えば、芳香環、脂肪族環等の構造が挙げられる。
芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環及びアントラセン環に代表される芳香族炭化水素環;チオフェン環、フラン環、ピロール環、イミダゾール環、トリアゾール環及びピリジン環に代表される芳香族複素環;等が挙げられる。
脂肪族環としては、シクロヘキサン環、シクロペンタン環、ピナン環、ノルピナン環、ノルボルナン環、イソボルナン環、ビシクロオクタン環、ビシクロノナン環、ホモブレダン環、アダマンタン環、テトラヒドロジシクロペンタジエン環、5,6-ジヒドロジシクロペンタジエン環、トリシクロウンデカン環及びテトラシクロドデカン環に代表される脂肪族炭化水素環;オキソラン環、オキサン環、ピペリジン環及びピペラジン環に代表される脂肪族複素環;等が挙げられる。
【0041】
環状構造を有する(メタ)アクリレートの具体例としては、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、及び、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
環状構造を有する(メタ)アクリレートは、ベンジル(メタ)アクリレート及びイソボルニル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、ベンジルメタクリレート及びイソボルニルメタクリレートから選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0042】
特定ポリマーは、構成単位(B)を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0043】
特定ポリマーにおける構成単位(B)の含有率は、特に限定されないが、例えば、形成される膜の撥油性の観点から、特定ポリマーの全構成単位に対して、1質量%以上であることが好ましく、1.5質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることが更に好ましく、2.5質量%以上であることが特に好ましい。
特定ポリマーにおける構成単位(B)の含有率の上限は、例えば、形成される膜の強度の観点から、特定ポリマーの全構成単位に対して、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であることが更に好ましく、20質量%以下であることが特に好ましい。
ある態様において、特定ポリマーにおける構成単位(B)の含有率は、特定ポリマーの全構成単位に対して、1質量%~40質量%であってもよく、1.5質量%~30質量%であってもよく、2質量%~25質量%であってもよく、2.5質量%~20質量%であってもよい。
【0044】
特定ポリマーにおける構成単位(A)の含有量に対する構成単位(B)の含有量の割合〔構成単位(B)の含有量/構成単位(A)の含有量〕は、質量基準で、0.1以上2.0以下の範囲であることが好ましく、0.15以上2.0以下の範囲であることがより好ましく、0.2以上2.0以下の範囲であることが更に好ましく、0.25以上2.0以下の範囲であることが特に好ましい。
特定ポリマーにおける構成単位(A)の含有量に対する構成単位(B)の含有量の割合が、質量基準で、上記範囲内であると、撥水性と撥油性とのバランスがより良好な膜を形成できる傾向にある。
【0045】
<環状構造を有しないアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(C)>
特定ポリマーは、環状構造を有しないアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(C)を含む。
環状構造を有しないアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(C)は、形成される膜の柔軟性及び強度の向上に寄与し得る。
【0046】
本開示において、「環状構造を有しないアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位」とは、環状構造を有しないアルキル(メタ)アクリレートが付加重合して形成される構成単位を意味する。
なお、本開示における「環状構造を有しないアルキル(メタ)アクリレート」には、後述の架橋性官能基を有するモノマーに該当するものは、包含されないものとする。すなわち、架橋性官能基を有するモノマーが環状構造を有しないアルキル(メタ)アクリレートにも該当する場合は、架橋性官能基を有するモノマーとして分類する。
一例を挙げると、架橋性官能基として水酸基を有する2-ヒドロキシエチルアクリレートは、環状構造を有しないアルキル(メタ)アクリレートにも該当するが、本開示では、架橋性官能基を有するモノマーとして分類する。
【0047】
環状構造を有しないアルキル(メタ)アクリレートの種類は、特に限定されない。
環状構造を有しないアルキル(メタ)アクリレートは、アルキルメタクリレートであってもよく、アルキルアクリレートであってもよい。
環状構造を有しないアルキル(メタ)アクリレートが有するアルキル基は、無置換であってもよいし、置換基を有していてもよいが、無置換であることが好ましい。
環状構造を有しないアルキル(メタ)アクリレートが有するアルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。
環状構造を有しないアルキル(メタ)アクリレートのアルキル部位の炭素数は、例えば、1~18であることが好ましく、1~12であることがより好ましく、1~8であることが更に好ましく、1~4であることが特に好ましい。
【0048】
環状構造を有しないアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート〔アルキル部位の炭素数:1〕、エチル(メタ)アクリレート〔アルキル部位の炭素数:2〕、n-ブチル(メタ)アクリレート〔アルキル部位の炭素数:4〕、i-ブチル(メタ)アクリレート〔アルキル部位の炭素数:4〕、s-ブチル(メタ)アクリレート〔アルキル部位の炭素数:4〕、t-ブチル(メタ)アクリレート〔アルキル部位の炭素数:4〕、n-オクチル(メタ)アクリレート〔アルキル部位の炭素数:8〕、i-オクチル(メタ)アクリレート〔アルキル部位の炭素数:8〕、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート〔アルキル部位の炭素数:8〕、n-ノニル(メタ)アクリレート〔アルキル部位の炭素数:9〕、i-ノニル(メタ)アクリレート〔アルキル部位の炭素数:9〕、n-デシル(メタ)アクリレート〔アルキル部位の炭素数:10〕、ラウリル(メタ)アクリレート〔アルキル部位の炭素数:12〕、及び、ステアリル(メタ)アクリレート〔アルキル部位の炭素数:18〕が挙げられる。
【0049】
特定ポリマーは、構成単位(C)を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0050】
特定ポリマーにおいて、構成単位(C)の含有率は、特に限定されないが、アルキル部位の炭素数が8以上であり、かつ、環状構造を有しないアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(C1)の含有率は、特定ポリマーの全構成単位に対して50質量%未満である。
特定ポリマーにおける構成単位(C1)の含有率が、特定ポリマーの全構成単位に対して50質量%未満であると、形成される膜の撥油性が損なわれ難い傾向にある。このような観点から、特定ポリマーにおける構成単位(C1)の含有率は、特定ポリマーの全構成単位に対して、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが更に好ましく、10質量%以下であることが特に好ましく、例えば、0質量%であってもよい。
【0051】
また、特定ポリマーにおいて、アルキル部位の炭素数が1~4であるアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(C2)の含有率は、特定ポリマーの全構成単位に対して、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが更に好ましく、70質量%以上であることが特に好ましい。
特定ポリマーにおける構成単位(C2)の含有率が、特定ポリマーの全構成単位に対して40質量%以上であると、形成される膜の柔軟性及び強度がより良好になる傾向にある。
特定ポリマーにおける構成単位(C2)の含有率の上限は、特に限定されないが、例えば、特定ポリマーの全構成単位に対して、98質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることが更に好ましい。
ある態様において、特定ポリマーにおける構成単位(C2)の含有率は、特定ポリマーの全構成単位に対して、40質量%~95質量%であってもよく、50質量%~90質量%であってもよく、60質量%~90質量%であってもよく、70質量%~90質量%であってもよい。
【0052】
<その他のモノマーに由来する構成単位>
特定ポリマーは、式(1)で表される反応性シリコーン、環状構造を有する(メタ)アクリレート、及び、環状構造を有しないアルキル(メタ)アクリレートのいずれにも該当しないモノマー(所謂、その他のモノマー)に由来する構成単位を含んでいてもよい。
本開示において、「その他のモノマーに由来する構成単位」とは、その他のモノマーが付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0053】
その他のモノマーに由来する構成単位としては、例えば、アクリル酸及びメタクリル酸に代表される反応性官能基を有するモノマーが挙げられる。
特定ポリマーがその他のモノマーに由来する構成単位として反応性官能基を有するモノマーに由来する構成単位を含むと、上記反応性基と後述の架橋剤と架橋反応して架橋構造を形成することで、形成される膜の耐油性が高まる傾向にある。
本開示において、「反応性官能基」とは、後述の架橋剤と反応して架橋構造を形成し得る官能基を意味する。反応性官能基としては、例えば、カルボキシ基、水酸基及びアミノ基が挙げられる。本開示における「アミノ基」には、第1級アミノ基、第2級アミノ基及び第3級アミノ基が含まれる。
【0054】
また、その他のモノマーに由来する構成単位としては、例えば、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルに代表されるシアン化ビニル化合物に由来する構成単位;蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及びバーサチック酸ビニルに代表されるビニルエステル化合物に由来する構成単位;等も挙げられる。
【0055】
特定ポリマーは、その他のモノマーに由来する構成単位を含む場合、その他のモノマーに由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0056】
特定ポリマーがその他のモノマーに由来する構成単位を含む場合、その他のモノマーに由来する構成単位の含有率は、本開示のポリマー組成物の効果を損なわない範囲において、適宜設定できる。
【0057】
<<特定ポリマーの重量平均分子量>>
特定ポリマーの重量平均分子量(「Mw」ともいう。)は、特に限定されないが、例えば、1万~100万であることが好ましく、1.5万~80万であることがより好ましく、2万~60万であることが更に好ましい。
特定ポリマーの重量平均分子量が1万以上であると、ポリマー組成物の塗工性がより優れる傾向にある。
特定ポリマーの重量平均分子量が100万以下であると、ポリマー組成物の粘度が高くなり過ぎず、ポリマー組成物がより取り扱いやすくなる傾向にある。
【0058】
特定ポリマーの重量平均分子量は、下記の方法により測定される値である。具体的には、下記の(1)~(3)に従って測定する。
(1)特定ポリマーの溶液を剥離紙に塗布し、100℃で1分間乾燥し、フィルム状の特定ポリマーを得る。
(2)上記(1)で得られたフィルム状の特定ポリマーとテトラヒドロフランとを用いて、固形分濃度が0.2質量%である試料溶液を得る。なお、ここでいう「固形分濃度」とは、試料溶液に占める特定ポリマーの質量割合を意味する。
(3)下記の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値として、特定ポリマーの重量平均分子量を求める。
【0059】
~条件~
測定装置:高速GPC〔型番:HLC-8420 GPC、東ソー(株)製〕
検出器:示差屈折率計(RI)〔HLC-8420に組込、東ソー(株)製〕
カラム:TSKgel GMHXL〔東ソー(株)製〕を2本使用
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
試料溶液の注入量:100μL
流量:0.8mL/分
【0060】
特定ポリマーの重量平均分子量は、単量体を重合させる際に、重合温度、重合時間、有機溶剤の使用量、重合開始剤の種類、重合開始剤の使用量等を調整することにより、所望の値にできる。
【0061】
<<特定ポリマーの含有率>>
本開示のポリマー組成物における特定ポリマーの含有率は、特に限定されないが、例えば、ポリマー組成物の全質量に対して、10質量%~70質量%であることが好ましく、15質量%~60質量%であることがより好ましく、20質量%~50質量%であることが更に好ましい。
【0062】
〔特定ポリマーの製造方法〕
特定ポリマーの製造方法は、特に限定されない。
特定ポリマーは、例えば、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、及び塊状重合法に代表される公知の重合方法で、既述のモノマーを重合することにより製造できる。
重合方法としては、製造後に本開示のポリマー組成物を調製するにあたり、処理工程が比較的簡単であり、かつ、短時間で行える点で、溶液重合法が好ましい。
【0063】
溶液重合法では、一般に、重合槽内に所定の有機溶剤、モノマー、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤を仕込み、例えば、有機溶剤の還流温度で、撹拌しながら数時間加熱反応させる。この場合、有機溶剤、モノマー、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤の少なくとも一部を逐次添加してもよい。また、窒素気流中で反応させてもよい。
【0064】
重合反応時に用いられる有機溶剤としては、例えば、芳香族炭化水素化合物、脂肪族系炭化水素化合物、脂環族系炭化水素化合物、エステル化合物、ケトン化合物、グリコールエーテル化合物、及びアルコール化合物が挙げられる。
重合反応時に用いられる有機溶剤としては、より具体的には、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、t-ブチルベンゼン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、テトラリン、デカリン、及び芳香族ナフサに代表される芳香族炭化水素化合物、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、i-オクタン、n-デカン、ジペンテン、石油スピリット、石油ナフサ、及びテレピン油に代表される脂肪族系又は脂環族系炭化水素化合物、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸n-アミル、酢酸n-ブチルセロソルブ(所謂、ブチルセロソルブアセテート)、酢酸2-ヒドロキシエチル、酢酸2-ブトキシエチル、酢酸3-メトキシブチル、及び安息香酸メチルに代表されるエステル化合物、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、及びメチルシクロヘキサノンに代表されるケトン化合物、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルに代表されるグリコールエーテル化合物、並びに、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、s-ブチルアルコール、及びt-ブチルアルコールに代表されるアルコール化合物が挙げられる。
【0065】
特定ポリマーの製造に際しては、芳香族炭化水素化合物、脂肪族系炭化水素化合物、エステル化合物、ケトン化合物等の重合反応中に連鎖移動を生じ難い有機溶剤の使用が好ましい。
【0066】
重合反応時には、有機溶剤を1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0067】
重合開始剤としては、例えば、通常の溶液重合法で用いられる有機過酸化物及びアゾ化合物が挙げられる。
有機過酸化物の具体例としては、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート〔所謂、(2-エチルヘキサノイル)(tert-ブチル)ペルオキシド〕、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、カプロイルペルオキシド、ジ-i-プロピルペルオキシジカルボナート、ジ-2-エチルヘキシルペルオキシジカルボナート、t-ブチルペルオキシピバレート、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-アミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-α-クミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)ブタン、及び2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルペルオキシシクロヘキシル)ブタンが挙げられる。
アゾ化合物の具体例としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル〔AIBN〕、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)〔ABVN〕、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、及び2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチルが挙げられる。
【0068】
重合反応時には、重合開始剤を1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0069】
重合開始剤の使用量は、特に限定されず、例えば、目的とする特定ポリマーの分子量に応じて、適宜設定できる。
【0070】
特定ポリマーの製造に際しては、必要に応じて、連鎖移動剤を用いてもよい。
連鎖移動剤としては、例えば、シアノ酢酸、シアノ酢酸の炭素数1~8のアルキルエステル化合物、ブロモ酢酸、ブロモ酢酸の炭素数1~8のアルキルエステル化合物、α-メチルスチレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン、及び9-フェニルフルオレンに代表される芳香族化合物、p-ニトロアニリン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、p-ニトロ安息香酸、p-ニトロフェノール、及びp-ニトロトルエンに代表される芳香族ニトロ化合物、ベンゾキノン及び2,3,5,6-テトラメチル-p-ベンゾキノンに代表されるベンゾキノン誘導体、トリブチルボランに代表されるボラン誘導体、四臭化炭素、四塩化炭素、1,1,2,2-テトラブロモエタン、トリブロモエチレン、トリクロロエチレン、ブロモトリクロロメタン、トリブロモメタン、及び3-クロロ-1-プロペンに代表されるハロゲン化炭化水素化合物、クロラール及びフラルデヒドに代表されるアルデヒド化合物、炭素数1~18のアルキルメルカプタン化合物、チオフェノール及びトルエンメルカプタンに代表される芳香族メルカプタン化合物、メルカプト酢酸、メルカプト酢酸の炭素数1~10のアルキルエステル化合物、炭素数1~12のヒドロキシアルキルメルカプタン化合物、並びに、ピネン及びターピノレンに代表されるテルペン化合物が挙げられる。
【0071】
特定ポリマーの製造に際し、連鎖移動剤を用いる場合、連鎖移動剤の使用量は、特に限定されず、例えば、目的とする特定ポリマーの分子量に応じて、適宜設定できる。
【0072】
重合温度は、特に限定されず、例えば、目的とする特定ポリマーの分子量に応じて、適宜設定できる。
【0073】
〔溶剤〕
本開示のポリマー組成物は、溶剤を含む。
溶剤としては、有機溶剤が好ましい。
有機溶剤としては、例えば、既述の特定ポリマーの重合反応時に用いられる有機溶剤と同様のものが挙げられる。
有機溶剤としては、例えば、芳香族炭化水素化合物、脂肪族炭化水素化合物、エステル化合物、及び、ケトン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。芳香族炭化水素化合物、脂肪族炭化水素化合物、エステル化合物、及び、ケトン化合物の具体例は、既述のとおりである。
【0074】
本開示のポリマー組成物は、溶剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0075】
本開示のポリマー組成物における有機溶剤の含有率は、特に限定されず、目的に応じて、適宜設定できる。
本開示のポリマー組成物における有機溶剤の含有率は、例えば、ポリマー組成物の全質量に対して、30質量%~90質量%であることが好ましく、40質量%~85質量%であることがより好ましく、50質量%~80質量%であることが更に好ましい。
【0076】
〔架橋剤〕
本開示のポリマー組成物は、架橋剤を含んでいてもよい。
架橋剤の種類は、特に限定されない。
架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤及び金属キレート系架橋剤が挙げられる。
本開示において、「イソシアネート系架橋剤」とは、1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物(所謂、ポリイソシアネート系化合物)を指す。また、「エポキシ系架橋剤」とは、1分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物(所謂、2官能以上のエポキシ系化合物)を指す。また、「金属キレート系架橋剤」とは、架橋剤として機能する金属キレート系化合物を指す。
【0077】
架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤及び金属キレート系架橋剤からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、イソシアネート系架橋剤がより好ましい。
【0078】
ポリイソシアネート系化合物としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート系化合物、脂環式ポリイソシアネート系化合物、及び、芳香族ポリイソシアネート系化合物が挙げられる。
「脂肪族ポリイソシアネート系化合物」には、例えば、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂肪族ポリイソシアネート化合物の多量体、脂肪族ポリイソシアネート化合物とポリオール系化合物〔例えば、トリメチロールプロパン(TMP);以下、同じ。〕とのアダクト体、及び脂肪族ポリイソシアネート化合物のビウレット体が包含される。脂肪族ポリイソシアネート化合物の具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、テトラメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、及びリジンジイソシアネートが挙げられる。
「脂環式ポリイソシアネート系化合物」には、例えば、脂環式ポリイソシアネート化合物、脂環式ポリイソシアネート化合物の多量体、脂環式ポリイソシアネート化合物とポリオール系化合物とのアダクト体、及び脂環式ポリイソシアネート化合物のビウレット体が包含される。脂環式ポリイソシアネート化合物の具体例としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水素化トリレンジイソシアネート、水素化キシレンジイソシアネート、水素化4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、及び4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが挙げられる。
「芳香族ポリイソシアネート系化合物」には、例えば、芳香族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物の多量体、芳香族ポリイソシアネート化合物とポリオール系化合物とのアダクト体、及び芳香族ポリイソシアネート化合物のビウレット体が包含される。芳香族ポリイソシアネート化合物の具体例としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、及び4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。
【0079】
ポリイソシアネート系化合物としては、芳香族ポリイソシアネート系化合物が好ましく、トリレンジイソシアネート系化合物がより好ましい。
「トリレンジイソシアネート系化合物」には、例えば、TDI、TDIの多量体、TDIとポリオール系化合物とのアダクト体、及びTDIのビウレット体が包含される。トリレンジイソシアネート系化合物としては、TDIとTMPとのアダクト体が好ましい。
【0080】
イソシアネート系架橋剤としては、市販品を使用できる。
イソシアネート系架橋剤の市販品の例としては、「コロネート(登録商標) HX」、「コロネート(登録商標) HL-S」、「コロネート(登録商標) L」、「コロネート(登録商標) L-45E」、「コロネート(登録商標) 2031」、「コロネート(登録商標) 2037」、「コロネート(登録商標) 2234」、「コロネート(登録商標) 2785」、「アクアネート(登録商標) 200」、及び「アクアネート(登録商標) 210」〔以上、東ソー(株)製〕、「スミジュール(登録商標) N3300」、「デスモジュール(登録商標) N3400」、及び「スミジュール(登録商標) N75」〔以上、住化コベストロウレタン(株)製〕、「デュラネート(登録商標) D201」、「デュラネート(登録商標) E405-70B」、「デュラネート(登録商標) E405-80T」、「デュラネート(登録商標) AE700-100」、「デュラネート(登録商標) 24A-100」、及び「デュラネート(登録商標) TSE-100」〔以上、旭化成(株)製〕、並びに、「タケネート(登録商標) D-110N」、「タケネート(登録商標) D-101」、「タケネート(登録商標) D-120N」、「タケネート(登録商標) D-140N」、「タケネート(登録商標) M-631N」、「MT-オレスター(登録商標) NP1200」、及び「スタビオ(登録商標) XD-340N」〔以上、三井化学(株)製〕が挙げられる。
【0081】
2官能以上のエポキシ系化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、2,2-ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、トリス(グリシジル)イソシアヌレート、トリス(グリシドキシエチル)イソシアヌレート、1,3-ビス(N,N-グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、及びN,N,N’,N’-テトラグリシジル-1,3-ベンゼンジ(メタンアミン)が挙げられる。
【0082】
エポキシ系架橋剤としては、市販品を使用できる。
エポキシ系架橋剤の市販品の例としては、「TETRAD(登録商標)-X」及び「TETRAD(登録商標)-C」〔以上、三菱ガス化学(株)製〕、並びに、「デナコール(登録商標) EX-201」及び「デナコール(登録商標) EX-931」〔以上、ナガセケムテックス(株)製〕が挙げられる。
【0083】
金属キレート系化合物としては、例えば、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、及びアルミニウムトリス(アセチルアセトネート)に代表されるアルミニウムキレート化合物、チタンキレート化合物、ジルコニウムキレート化合物、並びに、コバルトキレート化合物が挙げられる。
【0084】
金属キレート系架橋剤としては、市販品を使用できる。
金属キレート系架橋剤の市販品の例としては、「アルミキレート A」、「アルミキレート D」、及び「ALCH-TR」〔以上、川研ファインケミカル(株)製〕が挙げられる。
【0085】
本開示のポリマー組成物は、架橋剤を含む場合、架橋剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0086】
本開示のポリマー組成物が架橋剤を含む場合、架橋剤の含有量は、特に限定されない。
本開示のポリマー組成物における架橋剤の含有量は、例えば、特定ポリマー100質量部に対して、0.1質量部~10.0質量部であってもよく、0.5質量部~8.0質量部であってもよく、1.0質量部~5.0質量部であってもよい。
【0087】
架橋剤は、本開示のポリマー組成物の成分として含まれていてもよいが、本開示のポリマー組成物に含まれる成分ではなく、本開示のポリマー組成物と組み合わせて使用する成分であってもよい。架橋剤を使用する場合、その使用態様としては、例えば、本開示のポリマー組成物の成分としては架橋剤を含まずに、撥水撥油性を対象物に付与する直前に、本開示のポリマー組成物と架橋剤とを混合した後、対象物に付与する態様が好ましい。
【0088】
〔その他の成分〕
本開示のポリマー組成物は、その効果を損なわない範囲で、必要に応じて、既述した成分以外の成分(所謂、その他の成分)を含んでいてもよい。
その他の成分としては、特定ポリマー以外のポリマー、粘性調整剤、増粘剤、顔料等の各種添加剤が挙げられる。
【0089】
本開示のポリマー組成物がその他の成分を含む場合、その他の成分の含有量は、本開示のポリマー組成物の効果を損なわない範囲で、適宜設定できる。
【0090】
<<ポリマー組成物の用途>>
本開示のポリマー組成物は、撥水撥油剤に用いられるポリマー組成物(即ち、撥水撥油剤用ポリマー組成物)である。本開示のポリマー組成物は、撥水性及び撥油性を兼ね備えるため、撥水撥油剤に用いられるものとして好適である。
本開示のポリマー組成物の具体的な用途としては、例えば、コーティング剤、塗料等に使用される撥水撥油剤、又は、撥水撥油剤の原料が挙げられる。
【0091】
[撥水撥油剤]
本開示の撥水撥油剤は、既述の本開示のポリマー組成物を含む。
本開示の撥水撥油剤は、本開示のポリマー組成物からなるものであってもよく、本開示のポリマー組成物に各種添加剤を含んでなるものであってもよい。
本開示の撥水撥油剤が含み得る各種添加剤としては、例えば、架橋剤及び造膜助剤が挙げられる。
【実施例0092】
以下、本開示のポリマー組成物を実施例により更に具体的に説明する。本開示はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0093】
[ポリマー組成物の製造]
〔実施例1〕
温度計、撹拌機、窒素導入管、及び還流冷却器を備えた反応器内に、エチルアクリレート(EA)〔環状構造を有しないアルキルアクリレート、アルキル部位の炭素数:2〕2.6質量部、メチルメタクリレート(MMA)〔環状構造を有しないアルキルメタクリレート、アルキル部位の炭素数:1〕5.2質量部、i-ブチルメタクリレート(i-BMA)〔環状構造を有しないアルキルメタクリレート、アルキル部位の炭素数:4〕5.2質量部、サイラプレーン(登録商標) FM-0711〔商品名、式(1)で表される反応性シリコーン、JNC(株)製〕1.5質量部、ベンジルメタクリレート(BZMA)〔環状構造を有するメタクリレート〕0.37質量部、(2-エチルヘキサノイル)(tert-ブチル)ペルオキシド〔重合開始剤〕0.01質量部、及び、ブチルセロソルブアセテート〔溶剤〕12.1質量部を入れ、撹拌しながら反応器内を窒素置換した。その後、反応器内の混合液を撹拌しながら90℃まで昇温した。反応器内の温度を30分間、90℃に保った後、反応器内の混合液に、エチルアクリレート(EA)2.1質量部、メチルメタクリレート(MMA)4.3質量部、i-ブチルメタクリレート(i-BMA)4.3質量部、サイラプレーン(登録商標) FM-0711 1.2質量部、ベンジルメタクリレート(BZMA)0.31質量部、ブチルセロソルブアセテート15.1質量部、及び、(2-エチルヘキサノイル)(tert-ブチル)ペルオキシド0.01質量部の混合液を、120分間かけて逐次滴下した。滴下終了後、60分間保持して重合反応させ、続いて、ブチルセロソルブアセテート45.4質量部、及び、(2-エチルヘキサノイル)(tert-ブチル)ペルオキシド0.08質量部の混合液を60分間かけて逐次滴下した。滴下終了後、更に90分間保持して重合反応させ、重合反応物を得た。得られた重合反応物を、ブチルセロソルブアセテートを用いて固形分濃度27.0質量%に希釈した後、冷却し、ポリマー及び溶剤を含む実施例1のポリマー組成物を得た。
【0094】
ここでいう「固形分濃度」とは、ポリマー組成物に占めるポリマーの質量割合を意味する。以下において製造した実施例2~15及び比較例1~5のポリマー組成物についても同様である。
【0095】
〔実施例2~15〕
実施例2~15では、ポリマー組成物に含まれるポリマーのモノマー組成を表1に示すモノマー組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例2~15の各ポリマー組成物(固形分濃度:27.0質量%)を得た。
【0096】
〔比較例1~5〕
比較例1~5では、ポリマー組成物に含まれるポリマーのモノマー組成を表1に示すモノマー組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較例1~5の各ポリマー組成物(固形分濃度:27.0質量%)を得た。
【0097】
実施例1~15及び比較例1~5の各ポリマー組成物に含まれるポリマーの重量平均分子量を、既述の特定ポリマーの重量平均分子量の測定方法と同様の方法により測定したところ、いずれも28万であった。
【0098】
【0099】
表1に記載の各モノマーの詳細は、以下に示すとおりである。
<環状構造を有しないアルキル(メタ)アルキルアクリレート>
「EA」:エチルアクリレート(アルキル部位の炭素数:2)
「MMA」:メチルメタクリレート(アルキル部位の炭素数:1)
「i-BMA」:i-ブチルメタクリレート(アルキル部位の炭素数:4)
「t-BMA」:t-ブチルメタクリレート(アルキル部位の炭素数:4)
「2EHA」:2-エチルヘキシルアクリレート(アルキル部位の炭素数:8)
「2HEMA」:2-エチルヘキシルメタクリレート(アルキル部位の炭素数:8)
「LMA」:ラウリルメタクリレート(アルキル部位の炭素数:12)
<反応性官能基を有するモノマー>
「AA」:アクリル酸(反応性官能基:カルボキシ基)
<式(1)で表される反応性シリコーン>
「FM-0711」:サイラプレーン(登録商標) FM-0711〔数平均分子量:1000(カタログ値)、JNC(株)製〕
「FM-0721」:サイラプレーン(登録商標) FM-0721〔数平均分子量:5000(カタログ値)、JNC(株)製〕
「FM-0725」:サイラプレーン(登録商標) FM-0725〔数平均分子量:10000(カタログ値)、JNC(株)製〕
<環状構造を有する(メタ)アクリレート>
「BZMA」:ベンジルメタクリレート
「IBXA」:イソボルニルアクリレート
「IBXMA」:イソボルニルメタクリレート
【0100】
実施例1~15及び比較例1~5の各ポリマー組成物のモノマー組成を表1に示す。
表1では、便宜上、式(1)で表される反応性シリコーンを「a」、また、環状構造を有する(メタ)アクリレートを「b」とも表記した。
表1中、「b/a」は、式(1)で表される反応性シリコーンの含有量に対する環状構造を有する(メタ)アクリレートの含有量の質量基準での割合を意味する。
表1中、モノマー組成の欄に記載の「-」は、その欄に該当するモノマーを使用していないことを意味する。
【0101】
[評価]
1.撥水性
(1)皮膜の形成
(1-1)実施例1~14及び比較例1~5のポリマー組成物
ポリマー組成物を、8mil(≒203.2μm)のアプリケータを用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に塗工し、塗工膜を形成した。次いで、形成した塗工膜を、熱風循環式乾燥機を用いて、加熱温度100℃及び加熱時間5分間の条件で乾燥させ、PETフィルム上に皮膜を形成した。
【0102】
(1-2)実施例15のポリマー組成物
ポリマー組成物に、タケネート(登録商標) D-101〔商品名、イソシアネート系架橋剤、三井化学(株)製〕を、ポリマー組成物に含まれるポリマー100質量部に対して5質量部(固形分換算値)加えて混合した。得られた混合物を、8mil(≒203.2μm)のアプリケータを用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に塗工し、塗工膜を形成した。次いで、形成した塗工膜を、熱風循環式乾燥機を用いて、加熱温度100℃及び加熱時間5分間の条件で乾燥させた。次いで、乾燥させた塗工膜に対し、雰囲気温度40℃の環境下で3日間養生を行い、PETフィルム上に皮膜を形成した。
【0103】
(2)水の接触角の測定
上記にて形成した皮膜の表面に脱イオン水を滴下し、接触角測定装置〔装置名:全自動接触角計 DM-701、協和界面科学(株)製〕を用いて、水の接触角を測定した。水の接触角の算出には、2θ法を用いた。そして、下記の評価基準に従って、評価を行った。結果を表2に示す。
下記の評価基準において、「A」及び「B」は、実用可能なレベルであり、「A」であることが最も好ましい。
【0104】
-評価基準-
A:水の接触角が110°以上である。
B:水の接触角が100°以上110°未満である。
C:水の接触角が100°未満である。
【0105】
2.撥油性
(1)皮膜の形成
上記「1.撥水性」の「(1)皮膜の形成」と同様の操作により皮膜を形成した。
【0106】
(2)ヘキサデカンの接触角の測定
上記にて形成した皮膜の表面にヘキサデカンを滴下し、接触角測定装置〔装置名:全自動接触角計 DM-701、協和界面科学(株)製〕を用いて、ヘキサデカンの接触角を測定した。ヘキサデカンの接触角の算出には、2θ法を用いた。そして、下記の評価基準に従って、評価を行った。結果を表2に示す。
下記の評価基準において、「A」及び「B」は、実用可能なレベルであり、「A」であることが最も好ましい。
【0107】
-評価基準-
A:ヘキサデカンの接触角が40°以上である。
B:ヘキサデカンの接触角が30°以上40°未満である。
C:ヘキサデカンの接触角が30°未満である。
【0108】
【0109】
表2に示す結果から、実施例1~15のポリマー組成物により形成された膜は、撥水性と撥油性とを兼ね備えていることが確認された。
一方、比較例1~5のポリマー組成物により形成された膜は、撥水性及び撥油性の少なくとも一方が、実施例のポリマー組成物により形成された膜と比較して劣ることが確認された。