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特開2025-21804圧電素子を有する変換器およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021804
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】圧電素子を有する変換器およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H04R 17/00 20060101AFI20250206BHJP
   H04R 31/00 20060101ALI20250206BHJP
   H04R 7/16 20060101ALI20250206BHJP
   H04R 1/40 20060101ALI20250206BHJP
   H04R 7/04 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
H04R17/00
H04R31/00 Z
H04R7/16
H04R1/40 310
H04R7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125772
(22)【出願日】2023-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 亮
(72)【発明者】
【氏名】不藤 平四郎
【テーマコード(参考)】
5D004
5D016
5D018
【Fターム(参考)】
5D004BB03
5D004CC01
5D004CC10
5D004DD01
5D004DD02
5D004FF08
5D004GG00
5D016FA00
5D016GA01
5D016HA07
5D018AF22
5D018AF23
(57)【要約】      (修正有)
【課題】圧電素子による複数の振動部を簡単な構造で構成できるようにした圧電素子を有する変換器およびその製造方法を提供する。
【解決手段】変換器1において、圧電シート2には、可撓性基板の表面に圧電素子が形成されている。支持部材3には、金属板などの支持板30に同じ内径寸法の複数の穴35が形成されている。圧電シート2は、支持板30の第1表面31に重ねられ、接着されて固定されている。圧電シート2の素子領域DAのうちの穴35が対向している領域が振動部(v)で、穴35以外の領域が圧電シート2が動くことのなく固定された拘束部(s)となっている。複数の振動部(v)が同じ共振周波数を有し、振動部(v)から超音波などを同期して発生させることができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性基板と、前記可撓性基板の表面に形成された圧電素子と、を有する変換器において、
前記可撓性基板の表面に前記圧電素子が面方向に連続する素子領域が形成され、
前記可撓性基板よりも剛性が高く、複数の穴が形成された支持部材が設けられ、前記支持部材に前記可撓性基板が重ねられて、前記素子領域に複数の前記穴が対向しており、
複数の前記穴の内部で前記可撓性基板が自由状態であり、前記穴以外の領域で、前記可撓性基板が前記支持部材に固定されていることを特徴とする圧電素子を有する変換器。
【請求項2】
前記素子領域に重ねられている複数の前記穴の内径が同じである請求項1記載の圧電素子を有する変換器。
【請求項3】
前記可撓性基板の2つの表面のそれぞれに前記支持部材が重ねられ、2つの前記支持部材の穴の中心が一致した状態で、前記支持部材の前記穴が形成されていない領域が前記可撓性基板のそれぞれの表面に固定されている請求項1記載の圧電素子を有する変換器。
【請求項4】
前記素子領域と重ねられている前記支持部材が湾曲している請求項1ないし3のいずれかに記載の圧電素子を有する変換器。
【請求項5】
可撓性基板と、前記可撓性基板の表面に形成された圧電素子と、を有する変換器の製造方法において、
前記可撓性基板の表面に前記圧電素子が面方向に連続する素子領域を形成する工程と、
前記可撓性基板よりも剛性が高い材料を使用して、複数の穴が形成された支持部材を形成する工程と、
前記支持部材に前記可撓性基板を重ねて、前記素子領域に複数の前記穴を対向させ、複数の前記穴の内部で前記可撓性基板を自由状態とし、前記穴以外の領域で、前記可撓性基板を前記支持部材に固定する工程と、
を有することを特徴とする圧電素子を有する変換器の製造方法。
【請求項6】
前記素子領域を形成する工程では、
前記可撓性基板の表面に、下面電極層と圧電材料層および上面電極層を順番に積層する請求項5記載の圧電素子を有する変換器の製造方法。
【請求項7】
前記素子領域を形成する工程では、
高分子圧電材料で形成された圧電材料層の下面に下面電極層を上面に上面電極層を積層して圧電素子を形成し、
前記圧電素子を、可撓性基板の表面に固定する請求項5記載の圧電素子を有する変換器の製造方法。
【請求項8】
前記可撓性基板と前記支持部材とを重ねる工程の前または後で、
前記支持部材を湾曲させる工程を有する請求項5ないし7のいずれかに記載の圧電素子を有する変換器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカやセンサなどとして使用可能な圧電素子を使用した変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に超音波トランスデューサーに関する発明が記載されている。この超音波トランスデューサーは、板厚方向に振動可能な弾性を有する弾性板を有している。弾性板は、ステンレス、Ni-Fe合金、アルミ合金、チタン合金、あるいは炭素繊維強化プラスチックあるいはセラミックなどで形成される。弾性板の第1面に、複数の圧電素子が板面方向に並列状態で固着されている。圧電素子はPZTからなる圧電本体と、圧電本体の厚み方向両側に配置された一対の上面電極層および下面電極層を有している。また、複数の圧電素子のそれぞれを平面視において囲む複数の筒状部を有する封止部材と、複数の圧電素子に対する電圧供給経路となるフレキシブル配線板とを備えている。
【0003】
弾性板には、複数の圧電素子がそれぞれ装着される振動領域と、振動領域のそれぞれを囲む複数の低剛性領域と、複数の低剛性領域をそれぞれ囲む拘束領域を有している。拘束領域よりも径方向の外方に位置する境界領域では、弾性板にスリット部が形成されている。低剛性領域で囲まれた複数の振動領域に圧電素子を設けることで、複数の振動領域を近接して配置できるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開 WO2020/202351公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された超音波トランスデューサーは、弾性板の第1面に、複数の振動領域が近接して配置されているが、それぞれの振動領域に圧電素子を個別に固着する必要があり、さらに弾性板の表面にフレキシブル配線板を設け、フレキシブル配線板をそれぞれの圧電素子に個別に配線する必要があるため、製造工程が非常に煩雑である。
【0006】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、多数の圧電素子を個別に設けなくても、圧電素子を使用した複数の振動部を形成することができる圧電素子を使用した変換器およびその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、可撓性基板と、前記可撓性基板の表面に形成された圧電素子と、を有する変換器において、
前記可撓性基板の表面に前記圧電素子が面方向に連続する素子領域が形成され、
前記可撓性基板よりも剛性が高く、複数の穴が形成された支持部材が設けられ、前記支持部材に前記可撓性基板が重ねられて、前記素子領域に複数の前記穴が対向しており、
複数の前記穴の内部で前記可撓性基板が自由状態であり、前記穴以外の領域で、前記可撓性基板が前記支持部材に固定されていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の圧電素子を有する変換器は、前記素子領域に重ねられている複数の前記穴の内径が同じであることが好ましい。
【0009】
本発明の圧電素子を有する変換器は、前記可撓性基板の2つの表面のそれぞれに前記支持部材が重ねられ、2つの前記支持部材の穴の中心が一致した状態で、前記支持部材の前記穴が形成されていない領域が前記可撓性基板のそれぞれの表面に固定されているものであってもよい。
【0010】
本発明の圧電素子を有する変換器は、前記素子領域と重ねられている前記支持部材が湾曲しているものとして構成できる。
【0011】
また、本発明は、可撓性基板と、前記可撓性基板の表面に形成された圧電素子と、を有する変換器の製造方法において、
前記可撓性基板の表面に前記圧電素子が面方向に連続する素子領域を形成する工程と、
前記可撓性基板よりも剛性が高い材料を使用して、複数の穴が形成された支持部材を形成する工程と、
前記支持部材に前記可撓性基板を重ねて、前記素子領域に複数の前記穴を対向させ、複数の前記穴の内部で前記可撓性基板を自由状態とし、前記穴以外の領域で、前記可撓性基板を前記支持部材に固定する工程と、
を有することを特徴とするものである。
【0012】
本発明の圧電素子を有する変換器の製造方法は、
前記素子領域を形成する工程で、
前記可撓性基板の表面に、下面電極層と圧電材料層および上面電極層を順番に積層するものである。
【0013】
本発明の圧電素子を有する変換器の製造方法は、
前記素子領域を形成する工程で、
高分子圧電材料で形成された圧電材料層の下面に下面電極層を上面に上面電極層を積層して圧電素子を形成し、
前記圧電素子を、可撓性基板の表面に固定するものである。
【0014】
本発明の圧電素子を有する変換器の製造方法は、
前記可撓性基板と前記支持部材とを重ねる工程の前または後で、
前記支持部材を湾曲させる工程を有するものとして構成できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の変換器は、可撓性基板の表面に、圧電素子が面方向に連続する素子領域が形成され、可撓性基板の表面に複数の穴を有する支持部材が重ねられて、素子領域の中で複数の穴が対向している部分が振動部として機能している。ひとつの素子領域を使用して実質的に分離された複数の振動部を形成することができるため、小さな圧電素子を複数形成する必要がなくなる。またそれぞれの振動部に個別に配線部材を接続する必要もない。したがって、低コストで複数の振動部を有する変換器を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の圧電素子を有する変換器の第1実施形態を示す分解斜視図、
図2図1に示される変換器が組み立てられた状態を示すII-II線で切断した部分断面図、
図3】本発明の圧電素子を有する変換器の第2実施形態を示す部分断面図、
図4図2に示された変換器に使用されている圧電シートの構成の詳細を示す拡大断面図、
図5図2に示された変換器に使用されている圧電シートの構成の変形例を示す拡大断面図、
図6】本発明の圧電素子を有する変換器の第3実施形態を示す分解斜視図、
図7】第3実施形態の変換器が組み立てられた状態を示す斜視図、
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1図2に、本発明の第1実施形態の変換器1が示されている。変換器1は、圧電シート2と支持部材3とが重ねられて構成されている。圧電シート2は可撓性基板10を有している。可撓性基板10は、ポリイミドフィルムなどのような、弾性を有して撓み変形可能な有機樹脂フィルムである。図4の拡大断面図に示されるように、可撓性基板10はZ1方向に向く第1表面11とZ2方向に向く第2表面12とを有しており、第1表面11に圧電素子20が固着されて設けられている。図1に示されるように、可撓性基板10は平面視が四角形であり、第1表面11に固着された圧電素子20も四角形である。圧電素子20は可撓性基板10の第1表面11において、広い面積で面方向に連続して形成されている。第1表面11において圧電素子20が面方向に連続して形成されている領域が素子領域DAである。
【0018】
図4に示されるように、圧電素子20は、可撓性基板10の第1表面11に固着する下面電極層21と、下面電極層21の表面に積層された圧電材料層23と、圧電材料層23の表面に積層された上面電極層22と、を有している。圧電素子20の製造方法は、可撓性基板10の第1表面11に、銅層、銀層、金層などの導電性金属層を蒸着やスパッタなどの方法で形成して下面電極層21を製造する。その表面に、チタン酸バリウムやジルコン酸バリウムまたはチタン酸ジリコン酸鉛などの強誘電性セラミックを焼成して圧電材料層23を形成し、その表面に蒸着やスパッタなどの手段で上面電極層22を形成する。圧電材料層23に対しては、電界を与えて、膜厚方向(Z方向)を分極方向とする分極処理を行う。または、圧電材料層23をポリフッ化ビニリデンのような高分子圧電材料で形成し、このフィルム状の圧電材料層23に下面電極層21と上面電極層22を積層して圧電素子20を形成し、この圧電素子20を可撓性基板10の第1表面11に接着してもよい。この場合も、圧電材料層23に電界を与えて、膜厚方向(Z方向)を分極方向とする分極処理を行う。
【0019】
図1に示されるように、可撓性基板10に延長部13,14が形成されている。延長部13の第1表面に下面端子部24が、延長部14の第1表面に上面端子部25が形成されている。下面端子部24は、導電性金属層であり、下面電極層21と一体に連続して形成され、または下面電極層21とは別体に形成されて下面電極層21に接続されている。上面電極層25も、導電性金属層であり、上面電極層22と一体に連続して形成され、または上面電極層22と別体に形成されて上面電極層22に接続されている。
【0020】
図1図2に示される支持部材3は、支持板30を有している。支持板30は、可撓性基板10よりも剛性が高く、可撓性基板10よりも板厚が十分に大きい。支持板30はステンレス鋼板などの金属板、またはエポキシ系などの合成樹脂板である。支持板30は、Z1側に向く第1表面31と、その反対のZ2側に向く第2表面32とを有している。第1表面31に圧電シート2が重ねられる。支持板30に複数の穴35が形成されている。それぞれの穴35は、その中心線が第1表面31および第2表面32と垂直であり、穴35は支持板30を貫通して形成されている。複数の穴35は、第1表面31に沿う第1方向(X方向)に一定のピッチで配列しており、第1方向と直交する第2方向(Y方向)にも一定のピッチで配列している。
【0021】
穴35は、支持板30の第1表面31から第2表面32に向けて内径が一定の円筒穴であり、全ての穴35は内径(内直径)が同じである。また、穴35は、圧電シート2が固定される第1表面31からそれとは逆側の第2表面32に向けて内径が徐々に広くなるテーパ形状であってもよい。この場合は、全ての穴35の第1表面31に現れる開口径が同じである。
【0022】
図2に示されるように、支持部材3を構成する支持板30の第1表面31に圧電シート2が接着されて固定されて変換器1が構成される。圧電シート2の素子領域DAはシート面に沿って所定の面積で連続しており、素子領域DAに複数の穴35が対向するように、支持板30と圧電シート2とが接着されて固定される。
【0023】
支持部材3において穴35が形成されていない領域では、圧電シート2の素子領域DAが支持板30の第1表面31に接着されて固定されている。支持部材3において穴35と対向する領域での素子領域DAは、第1表面31に固定されておらず自由状態である。すなわち穴35の内部で可撓性基板10と圧電素子20が自由状態である。圧電シート2の素子領域DAは、穴35が形成されている領域に対向する部分が振動部(v)として機能し、穴35が形成されていない領域は、圧電シート2が支持板30の第1表面31に固定された拘束部(s)となる。複数の振動部(v)の群に着目したときに、全ての振動部(v)は円形であり直径が同じである。拘束部(s)では、隣り合う穴35の間の領域の全面で、素子領域DAが支持板30の第1表面31に固定されて拘束されており、可撓性基板10と圧電素子20の動きが規制されている。
【0024】
次に、前記変換器1の動作を説明する。
圧電シート2の下面端子部24と上面端子部25との間に交流電圧が与えられると、素子領域DAでは、下面電極層21と上面電極層22と間の電圧が圧電材料層23に対して厚さ方向に作用する。圧電材料層23は板厚方向が分極方向であるため、電圧が作用した圧電材料層23に歪みが発生する。振動部(v)では、穴35の内部で圧電シート2が自由状態であるため、歪みが生じる圧電素子20と可撓性基板10との体積変化の差により、図2において破線で示されるように、圧電シート2が湾曲変形して振動する。拘束部(s)では、素子領域DAが支持板30の第1表面31に固定されているため、圧電シート2が厚み方向へ湾曲することがない。
【0025】
変換器1が圧電スピーカとして使用されると、複数の振動部(v)から、圧電シート2の撓み振動による圧力波が発生する。それぞれの振動部(v)では、穴35の内部に位置する圧電シート2が、その質量と弾性係数に基づく所定の共振周波数を有するため、圧電シート2に前記共振周波数を含む特定の周波数帯域の交流電圧を与えることで、圧電シート2を高感度で振動させることができる。1つの振動部(v)のみでは圧力波の出力が低いが、同じ径を有し同じ共振周波数を有する複数の振動部(v)が同期して振動するため、変換器1の全体として大きな出力で圧力波を発生させることができる。
【0026】
変換器1は、例えば、高指向性の音響システムを構成するパラメトリック・スピーカとして使用される。このスピーカは、例えば40kHzの超音波にFM変調やAM変調をかけ、2つの超音波が交差する空間に可聴域の音を再生させ、あるいは超音波が空気中を伝搬する際の非線形性特性により可聴音を出現させるものである。実施形態の変換器1は、複数の振動部(v)から互いに同期した超音波を発することができるため、超音波の出力を高くすることができ、比較的高い出力で可聴音を再生することができる。
【0027】
図1図2に示される第1実施形態の変換器1は、圧電シート2が設けられたZ1側が発音方向(圧力波の送波方向)として使用されてもよいし、支持部材3が設けられたZ2側が発音方向として使用されてもよい、Z2側が発音方向として使用される場合、穴35をZ方向に長い円筒穴とすることで、圧力波の指向性をさらに高めることもできる。また、Z2側が発音方向として使用される場合、穴35の形状を、内径をZ2方向に向けて内径が徐々に大きくなるテーパ形状としてもよい。
【0028】
図5に示される変換器1Aには、変形例となる圧電シート102が使用されている。圧電シート102は、支持部材3を構成する支持板30の第1表面31に重ねられて固定されている。この圧電シート102は、可撓性基板10の第1表面11に圧電素子20Aが重ねられ、第2表面12に圧電素子20Bが重ねられている。圧電素子20Aと圧電素子20Bは、共に、下面電極層21と上面電極層22との間に圧電材料層23が挟まれた構造である。この変換器1Aでは、圧電シート102の圧電素子20Aと圧電素子20Bに、位相が反転した交流電圧が印加される。圧電素子20Aにプラスの歪みが生じたときに圧電素子20Bにマイナスの歪みが生じ、圧電素子20Aにマイナスの歪みが生じたときに圧電素子20Bにプラスの歪みが生じる。これにより、振動部(v)において、圧電シート102を感度よく振動させることが可能になる。
【0029】
図3に示される本発明の第2実施形態の変換器101は、支持部材3Aと支持部材3Bの間に、図4に示される圧電シート2または図5に示される圧電シート102が挟まれている。支持部材3Aの支持板30に形成された穴35と、支持部材3Bの支持板30に形成された穴35は同じ内径である。図3に示されるように、支持部材3Aの穴35と支持部材3Bの穴35はその中心がZ方向において一致するように、各支持部材3A,3Bが位置決めされる。圧電シート2の素子領域DAは、拘束部(s)において、支持部材3Aと支持部材3Bの双方に接着されて固定されている。この変換器101は、2つの支持部材3A,3Bで素子領域DAを固定し拘束できるため、拘束部(s)における圧電材料層23の厚み方向の歪みの発生を抑制でき、振動部(v)における圧電シート2の振動に前記歪みが影響するのを防止できる。
【0030】
図6図7に本発明の第3実施形態の変換器201が示されている。この変換器201は、支持部材103が、湾曲した支持板30を有し、この支持板30に複数の穴35が形成されている。支持板30は、第1表面31が円筒面の一部を構成できるように湾曲している。すなわち、支持板30は、第1表面31と平行でY方向に延びる仮想中心線からの半径が一定となるように二次元的に湾曲している。圧電シート2は、支持板30の凹面側となる第1表面31に重ねられて固定されている。支持板30は、予め複数の穴35が形成された金属板をプレス工程で湾曲させることで形成される。あるいは支持板30が、合成樹脂材料で湾曲した形状に成型されてもよい。圧電シート2は、支持板30の凹面側において、凹面に倣うように接着される。このとき、圧電シート2の素子領域DA内に複数の穴35が位置するように、圧電シート2と支持部材3とが互いに位置決めされて接着されて固定される。
【0031】
図7に示される第3実施形態の変換器201は、支持部材3の凹面側であるZ1側が発音方向(圧力波の送波方向)として使用される。変換器201の圧電素子20を動作させると、複数の振動部(v)から圧力波が放射されるが、複数の振動部(v)が凹形状の曲面に沿って配列しているため、圧力波をZ1方向の所定位置に集中させやすくなる。圧電シート2が円筒面の一部に一致している場合には、圧力波は円筒面の曲率中心線付近に集中する。変換器201を、パラメトリック・スピーカとして使用すると、聴取位置での、聴取感度を高めることが可能になる。
【0032】
第3実施形態の変換器201の構造としては、湾曲している支持板30の凸側となる第2表面32に圧電シート2を重ねて接着し固定することも可能である。または、図3に示された変換器101と同様に、湾曲した2つの支持部材103の間に圧電シート2を挟む構造にしてもよい。第3実施形態の変換器201は、支持部材103の湾曲形状が、X方向へ一定の曲率であるが、X方向に向けて場所により曲率が相違し、例えば二次関数曲線となるように湾曲してもよい。さらに、支持部材103が、X方向とY方向の双方に曲率を有するように3次元的な湾曲形状であってもよい。
【0033】
前記各実施形態の変換器は、圧電シート2(または102)に、シート表面に沿って連続して形成された圧電素子20(または20A,20B)が形成され、圧電素子20が形成された単一の素子領域DAに複数の振動部(v)が形成されているため、基板の表面に互いに独立する複数の圧電素子を並べて配置する構造に比べて圧電素子20の形成工程が容易である。また個々の振動部(v)に配線経路を個別に設ける必要がなく、配線構造を単一にできるため、製造工程が簡単であり、低コストで製造できる。また、それぞれの振動部(v)において振動に寄与する圧電素子20の大きさは穴35の内径で決まる。複数の穴35で内径が同じとなるように、穴35を高精度に加工しておくことにより、それぞれの振動部(v)において、変形できる圧電素子20の寸法のばらつきをきわめて小さくでき、それぞれの振動部(v)での振動特性を均一に構成することができる。
【0034】
なお、前記各実施形態の変換器は、圧電センサーまたは超音波センサーとして使用することもできる。変換器に40kHz程度の超音波が与えられると、その圧力波により各振動部(v)において圧電素子20に歪みが発生する。そのときに圧電素子の下面電極層21と上面電極層22との間に生じる電圧を測定することで、超音波を検知することが可能になる。
【0035】
前記実施形態の変換器は、面方向に連続する圧電素子20の素子領域DAに同じ内径の複数の穴35が対向することで、同じ共振周波数を有する複数の振動部(v)が形成されている。ただし、振動板に同じ内径の複数の第1穴と、第1穴とは内径が相違し且つ同じ内径の複数の第2穴を形成し、複数の第1穴と複数の第2穴を同じ素子領域DAに対向させてもよい。この場合、同じ素子領域DAに、第1穴が対向する複数の第1振動部と、第2穴が対向する複数の第2振動部を構成できる。第1振動部と第2振動部は互いに共振周波数が相違するため、それぞれの穴の共振周波数に対応した駆動電圧を与えることにより、第1振動部と第2振動部から異なる周波数の超音波を同時にまたは交互に発生させることができる。穴の種類はさらに3種類以上であってもよい。
【符号の説明】
【0036】
1,101,201 変換器
1,102 圧電シート
3,3A,3B,103 支持部材
10 可撓性基板
20,20A,20B 圧電素子
21 下面電極層
22 上面電極層
23 圧電材料層
30 支持板
35 穴
DA 素子領域
(s) 拘束部
(v) 振動部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7