(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021808
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】無線ネットワークシステムおよび無線ネットワークシステムの制御方法
(51)【国際特許分類】
H04W 48/16 20090101AFI20250206BHJP
H04W 84/12 20090101ALI20250206BHJP
H04W 76/10 20180101ALI20250206BHJP
H04W 12/06 20210101ALI20250206BHJP
【FI】
H04W48/16 130
H04W84/12
H04W76/10
H04W12/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125777
(22)【出願日】2023-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】598069423
【氏名又は名称】株式会社オプテージ
(74)【代理人】
【識別番号】110003823
【氏名又は名称】弁理士法人柳野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】狩谷 祐一
(72)【発明者】
【氏名】西馬 荘一朗
(72)【発明者】
【氏名】松木 浩平
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA30
5K067AA34
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE16
(57)【要約】
【課題】利用可能エリアが広く、手軽に利用でき、セキュリティも確保された公衆無線LANサービスに用いることのできる無線ネットワークシステムを提供する。
【解決手段】
WiFi HaLowによる通信機能を備えた複数の無線通信端末10と、WiFi HaLowによるアクセスポイント機能を備えた複数のホームゲートウェイ20と、データベース装置30とを備え、データベース装置30は、複数のホームゲートウェイ20のそれぞれから、自機の位置、MACアドレス、送信時間残数、および接続台数を受信してホームゲートウェイデータベース32を作成し、無線通信端末10は、接続開始時および接続終了前にホームゲートウェイデータベース32を参照し、ホームゲートウェイ20のそれぞれの位置、送信時間残数、および接続台数を考慮して、最適なホームゲートウェイ20を選択し接続する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
公衆無線LANに用いられる無線ネットワークシステムであって、
WiFi HaLow(登録商標)による通信機能を備えた複数の無線通信端末と、
インターネット回線契約者に支給される、WiFi HaLow(登録商標)によるアクセスポイント機能を備えた複数のホームゲートウェイと、
データベース装置とを備え、
前記データベース装置は、複数の前記ホームゲートウェイのそれぞれから、自機の位置、MACアドレス、送信時間残数、および接続台数を取得してホームゲートウェイデータベースを作成し、
前記無線通信端末は、接続開始時、および接続中の前記ホームゲートウェイとの接続終了前に、前記ホームゲートウェイデータベースを参照し、前記ホームゲートウェイのそれぞれの位置、送信時間残数、および接続台数を考慮して、最適な前記ホームゲートウェイを選択し接続する、無線ネットワークシステム。
【請求項2】
前記データベース装置は、複数の前記ホームゲートウェイのそれぞれから、さらに、自機の送信周波数、送信電力を受信して前記ホームゲートウェイデータベースに追加し、
前記無線通信端末は、接続開始時、および接続中の前記ホームゲートウェイとの接続終了前に、前記ホームゲートウェイデータベースを参照するとともに、前記ホームゲートウェイのそれぞれからの受信電波強度を測定し、最適な前記ホームゲートウェイを選択し接続する、請求項1に記載の無線ネットワークシステム。
【請求項3】
前記ホームゲートウェイは、前記無線通信端末から認証要求を受信すると、前記データベース装置の端末識別情報データベースに前記無線通信端末の端末識別情報が登録されているかどうか、および登録されている場合は認証日時を確認し、
前記無線通信端末の端末識別情報が許可端末として登録されていて、認証日時と現在の日時との差が所定の時間以下の場合には、前記ホームゲートウェイは前記無線通信端末をインターネットに接続し、
前記無線通信端末の端末識別情報が登録されていない場合、登録されているが認証日時と現在の日時との差が所定の時間を超過している場合、または、不許可端末として登録されている場合は、前記ホームゲートウェイは、
前記無線通信端末からSIMカードのIMSIデータを取得して、前記無線通信端末の通信事業者(MNO)の認証サーバにEAP-SIM認証を依頼し、
前記認証サーバから前記EAP-SIM認証成功の報告を受領した場合には、前記端末識別情報データベースに認証結果および認証日時を登録するとともに前記無線通信端末をインターネットに接続する、請求項1に記載の無線ネットワークシステム。
【請求項4】
前記ホームゲートウェイは、前記インターネット回線契約者と公衆無線LAN利用者との間の通信、および前記公衆無線LANの利用者相互の間の通信を遮断する、請求項1に記載の無線ネットワークシステム。
【請求項5】
前記無線通信端末と前記データベース装置との通信は、前記ホームゲートウェイを介して、または携帯電話基地局を介して行われる、請求項1に記載の無線ネットワークシステム。
【請求項6】
公衆無線LANに用いられる無線ネットワークシステムの制御方法であって、
前記無線ネットワークシステムは、
WiFi HaLow(登録商標)による通信機能を備えた複数の無線通信端末と、
インターネット回線契約者に支給される、WiFi HaLow(登録商標)によるアクセスポイント機能を備えた複数のホームゲートウェイと、
データベース装置とを備え、
前記データベース装置が、複数の前記ホームゲートウェイのそれぞれから、自機の位置、MACアドレス、送信時間残数、接続台数、送信周波数、および送信電力を受信してホームゲートウェイデータベースを作成するデータベース作成工程と、
前記無線通信端末が、接続開始時、および接続中の前記ホームゲートウェイとの接続終了前に、前記ホームゲートウェイデータベースを参照するとともに、前記ホームゲートウェイのそれぞれからの受信電波強度を測定し、最適な前記ホームゲートウェイを選択し接続する、ホームゲートウェイ選択工程と、を備える、無線ネットワークシステムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、公衆無線LANに用いられる、WiFi HaLowによる無線ネットワークシステム、および無線ネットワークシステムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
公衆無線LANに用いられる無線ネットワークシステムに関しては、以下の発明が開示されている。
例えば、特許文献1(特開2013-106234号公報)には、ユーザ宅に設置されている無線ルータを公衆無線LANのアクセスポイントとして安定して動作させるネットワークシステムが開示されている。
特許文献1に記載のネットワークシステムは、ユーザによって利用されるユーザ端末と、通信網を形成する通信事業者によって管理される制御サーバと、通信網と接続されるとともにユーザのユーザ宅に設置される回線終端装置とを含むネットワークシステムであって、回線終端装置は、ユーザ宅内又はユーザ宅外に位置する無線端末と無線通信を行うことで当該無線端末と通信網との間における通信を制御する無線機能部と、制御サーバによって送信される無線機能部の起動要求を受信した場合に、無線機能部を起動させる起動制御部とを備え、制御サーバは、無線機能部を起動させることをユーザ端末に事前に要求する事前要求を送信する事前要求部と、事前要求部によって送信された事前要求に応答してユーザ端末から無線機能部の起動を了承する旨の応答を受信した場合に、無線機能部を起動させる旨の起動要求を回線終端装置に送信する起動要求部とを備えたことを特徴とする。
【0003】
特許文献2(特開2016-167238号公報)には、公衆無線LANインフラの利用契約を、SIMカードに登録されたMCC/MNCで示される事業者(MNO等)とは別の事業者(MVNO等)が有している場合であっても、ユーザがSIMカードを用いて公衆無線LANインフラのユーザ認証を容易に行う無線通信端末認証制御システムが開示されている。
特許文献2に記載の無線通信端末認証制御システムは、通信事業者から仕入れ仮想移動体通信事業者が提供する認証媒体を用いて、通信事業者のネットワークとは通信方式の異なる無線通信ネットワークのアクセスポイントからネットワークに接続する無線通信端末の認証を制御する認証制御システムであって、アクセスポイントと、ネットワークへの接続を許可する無線通信端末のユーザ識別情報(SIMカード情報)を記憶する認証情報管理装置と、無線通信端末に搭載されている認証媒体に含まれるユーザ識別情報が認証情報管理装置に記憶されているか否かを判定する認証制御装置と、を備え、アクセスポイントは、ネットワークへの接続を許可した無線通信端末の端末識別情報を記憶する記憶手段を備え、無線通信端末のネットワークへの無線通信接続要求に含まれる端末識別情報(MACアドレス)が記憶手段に記憶されているか否かを判定し、当該端末識別情報が記憶手段に記憶されていないと判定したとき、無線通信端末からユーザ識別情報を取得し、ユーザ識別情報を含む接続認証要求を認証制御装置に送信し、認証制御装置は、接続認証要求を受信した場合、受信した接続認証要求に含まれる当該ユーザ識別情報が認証情報管理装置に記憶されているか否かを判定し、無線通信端末のネットワークへの接続可否を判定した結果である接続可否判定結果をアクセスポイントへ送信し、アクセスポイントは、認証制御装置から接続可否判定結果として接続許可を受信した場合、接続許可と判定された無線通信端末の端末識別情報を記憶手段に記憶し、無線通信端末をネットワークへ接続することを特徴とする。
【0004】
特許文献3(特開2003-324449号公報)には、通信を行うために最適なアクセスポイント装置を選択し、アクセスポイント装置の処理負荷を分散する無線通信端末装置が開示されている。
特許文献3に記載の無線通信端末装置は、いずれかの中継局と無線通信を用いて接続することによって他の通信装置と通信を行う無線通信端末装置であって、新規にネットワークに参入する時に、通信システムの負荷に関するシステム負荷情報を要求する通信要求信号を通信範囲にある中継局に送信する通信手段と、通信範囲にある中継局から、収容端末数およびリアルタイム通信端末数を含むシステム負荷情報を取得し、隣接AP情報テーブルに記憶する取得手段と、取得手段によって得られた隣接AP情報テーブルに記憶された各隣接する中継局のシステム負荷情報に基づいて、接続する中継局を選択する選択手段と、を有することを特徴とする。
【0005】
特許文献4(特開2005-192187号公報)には、複数の無線LAN接続装置が設置された環境におけるユーザ端末と無線LAN接続とのチャンネル連結設定方法が開示されている。
特許文献4に記載のチャンネル連結設定方法は、複数の無線LAN接続装置が設置された環境でユーザ端末を接続装置のうち一つと連結設定する方法において、接続装置がビーコンフレームを通じてメディア接近情報を放送する工程と、ユーザ端末から接続装置に調査メッセージを伝送する工程と、調査メッセージを受けた接続装置は、調査応答メッセージをユーザ端末に伝送する工程と、ユーザ端末は、接続装置から受信した調査応答メッセージの内容に基づいて“現在接続装置に連結されている端末の数及び現在接続装置が処理中であるトラフィック量”を“隣の接続装置の最大容量及び隣りの接続装置に連結されている端末の数”と比較して最適の接続装置を選択し、ユーザ端末から選択された接続装置に連結設定のための要求メッセージを伝送する工程と、ユーザ端末が要求メッセージを受信した接続装置から連結設定に対する応答メッセージを受信すれば、ユーザ端末とAP間にチャンネル連結が設定される工程と、を具えたことを特徴とする。
【0006】
特許文献5(特開2012-120021号公報)には、利用可能な公衆無線LANの場所を即時に検索可能で、電波受信状況等をリアルタイムで把握することができる検索システムが開示されている。
特許文献5に記載の検索システムは、複数の携帯端末と、サーバとを備える検索システムであって、複数の携帯端末の少なくとも1つからの情報に基づいて、サーバが一の無線LANサービスよりも一の携帯端末のユーザにとって有利な他の無線LANサービスが所定のエリア内に存在すると判断した場合、一の携帯端末に優先順位を付して表示させることを特徴とする。
【0007】
特許文献6(特開2014-165750号公報)には基地局装置の送信時間が制限されている場合であっても、基地局装置間での電波干渉による影響を抑止しつつ、無線通信の効率を向上させる無線通信システムが開示されている。
特許文献6に記載の無線通信システムは、基地局装置毎に、他の基地局装置から、他の基地局装置が利用している周波数、受信電力及び他の基地局装置の送信タイミングを含む基地局情報と、他システムが備える干渉源が利用している周波数及び受信電力を含む他システム情報とを収集する取得部と、基地局装置から送信された基地局情報と他システム情報とに基づいて、基地局装置が利用する周波数を選択する利用周波数選択部と、選択された周波数を利用している他の基地局装置の送信タイミングと異なる送信タイミングを、基地局装置の送信タイミングに選択する送信タイミング選択部と、選択された周波数及び送信タイミングに基づいて、基地局装置毎に利用する周波数及び自装置の送信タイミングを設定する設定部と、を備え、利用周波数選択部は、基地局情報に含まれる周波数及び受信電力と、他システム情報に含まれる周波数及び受信電力とに基づいて基地局マップを生成し、基地局マップを参照して基地局装置が利用する周波数を選択する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013-106234号公報
【特許文献2】特開2016-167238号公報
【特許文献3】特開2003-324449号公報
【特許文献4】特開2005-192187号公報
【特許文献5】特開2012-120021号公報
【特許文献6】特開2014-165750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
インターネットを中心としたネットワークサービスの通信量は、動画配信サービスやリッチなスマートフォン用ゲームなどの発達に伴い、増加の一途を辿っている。固定回線においては光ファイバー網の普及によりこれに対応している。一方、携帯回線においては周波数域に制限がある以上、通信量や通信速度に制限が掛けられたりする場合も多く、制限が無い場合には膨大な通信料金を要求されるといったことがある。これに対抗するため、スマートフォンによる通信を、携帯電話回線ではなく、無線LANネットワークを通じて各所に設けられたアクセスポイント(AP)へ逃がすことで、携帯回線への負荷を下げるとともに、利用者にかかる料金を抑制することが行われている。
【0010】
この場合、自宅においては、自宅のホームゲートウェイにより固定回線に接続することができるが、出先では例えば飲食店、ホテル、駅、又は空港などに配置された公衆無線LANサービスを利用する必要がある。しかし、公衆無線LANサービスの利用できる場所は限られており、セキュリティの問題がある場合もある。
したがって、利用可能エリアが広く、手軽に利用でき、セキュリティも確保された公衆無線LANサービスに用いることのできる無線ネットワークシステムが必要である。
【0011】
現在の公衆無線LANサービスは2.4GHz帯または5GHz帯の無線LANが用いられている。しかし、これらの無線LANは周波数が高いため伝送エリアが狭く、また5GHzの場合は屋外での伝送が禁止されている帯域(W52帯、W53帯)があり、W56帯でもDFSの使用が義務付けられているなど制約が多く、公衆無線LANサービスにこれらの無線LANを幅広く用いることは困難である。また、2022年9月から使用が許可された6GHz帯の無線LAN(WiFi 6E)においても、EIRP25mW以下のVery Low Power(VLP)に限り、屋外での利用が可能となっており、やはり、屋外で使用できる公衆無線LANには適さない。
【0012】
一方、同じく2022年9月から使用が許可された920MHz帯の無線LAN(WiFi HaLow(登録商標))は、見通し距離100mで20Mbps以上、1kmでも150kbps以上のレートでのデータ伝送が可能とされており、屋外での公衆無線LANサービスの候補となりうる。
しかし、920MHz帯の無線伝送に関しては、1台の送信機の送信時間の総和が1時間あたり360秒(1時間あたり10%)以下との規制があり、また、EIRP250mWでの使用が可能な周波数が920.5MHz以上923.5MHz以下と限られていることから、1台のアクセスポイント、または1か所に配置された複数台のアクセスポイントで多くの無線通信端末に公衆無線LANサービスを行うことは困難である。
【0013】
特許文献1に記載のネットワークシステムは、ユーザ宅に設置されている無線ルータを公衆無線LANのアクセスポイントとして利用するものであるが、使用する無線LANが2.4GHz帯または5GHz帯であり、伝送エリアが狭く、また、屋外での使用に制約があることから、公衆無線LANに用いた場合利用可能エリアが狭くなる。
また、このネットワークシステムをそのままWiFi HaLow(登録商標)に応用した場合には、1台の送信機の送信時間の総和が1時間あたり360秒(1時間あたり10%)以下との規制があることから公衆無線LANサービスには適さない。
【0014】
特許文献2に記載の無線通信端末認証制御システムは、公衆無線LANサービスにおけるユーザー認証の効率化には有効であるが、やはり、使用する無線LANが2.4GHz帯または5GHz帯であり、伝送エリアが狭く、また、屋外での使用に制約があることから、公衆無線LANに用いた場合利用可能エリアが狭くなる。
【0015】
特許文献3に記載の無線通信端末装置は、通信を行うために最適なアクセスポイント装置を選択し、アクセスポイント装置の処理負荷を分散することができることから、公衆無線LANサービスにおけるアクセスポイント装置の選択には有効であるが、やはり、使用する無線LANが2.4GHz帯または5GHz帯であり、伝送エリアが狭く、また、屋外での使用に制約があることから、公衆無線LANに用いた場合利用可能エリアが狭くなる。
また、この無線通信端末装置をそのままWiFi HaLow(登録商標)に応用した場合には、1台の送信機の送信時間の総和が1時間あたり360秒(1時間あたり10%)以下との規制があることが考慮されていないため、WiFi HaLow(登録商標)を用いた公衆無線LANサービスには適さない。
【0016】
特許文献4に記載のチャンネル連結設定方法は、複数の無線LAN接続装置が設置された環境におけるユーザ端末と無線LAN接続とのチャンネル連結設定方法であり、公衆無線LANサービスにおけるチャンネル連結設定方法として有効であるが、やはり、使用する無線LANが2.4GHz帯または5GHz帯であり、伝送エリアが狭く、また、屋外での使用に制約があることから、公衆無線LANに用いた場合利用可能エリアが狭くなる。
また、この無線通信端末装置をそのままWiFi HaLow(登録商標)に応用した場合には、1台の送信機の送信時間の総和が1時間あたり360秒(1時間あたり10%)以下との規制があることが考慮されていないため、WiFi HaLow(登録商標)を用いた公衆無線LANサービスには適さない。
【0017】
特許文献5に記載の検索システムは、利用可能な公衆無線LANの場所を即時に検索可能で、電波受信状況等をリアルタイムで把握することができる検索システムであり、公衆無線LANにおける公衆無線LANの場所の検索システムとして有効であるが、やはり、使用する無線LANが2.4GHz帯または5GHz帯であり、伝送エリアが狭く、また、屋外での使用に制約があることから、公衆無線LANに用いた場合利用可能エリアが狭くなる。
また、この無線通信端末装置をそのままWiFi HaLow(登録商標)に応用した場合には、1台の送信機の送信時間の総和が1時間あたり360秒(1時間あたり10%)以下との規制があることが考慮されていないため、WiFi HaLow(登録商標)を用いた公衆無線LANサービスには適さない。
【0018】
特許文献6に記載の無線通信システムは、基地局装置の送信時間が制限されている場合であっても、基地局装置間での電波干渉による影響を抑止しつつ、無線通信の効率を向上させる無線通信システムであり、WiFi HaLow(登録商標)を用いた公衆無線LANに適用可能ではあるが、無線通信の効率を向上させるための基地局装置の設定を目的とした発明であり、公衆無線LANの利用者のインターネット接続の継続使用に対する配慮が不足している。
【0019】
本発明の主な目的は、利用可能エリアが広く、手軽に利用でき、セキュリティも確保された公衆無線LANサービスに用いることのできる無線ネットワークシステムを提供することにある。
本発明の他の目的は、送信時間制限のある無線ネットワークにおいて、無線通信端末が複数のホームゲートウェイと順次接続することによって、継続してデータをダウンロードすることのできる無線ネットワークシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
(1)
一局面に従う無線ネットワークシステムは、公衆無線LANに用いられる無線ネットワークシステムであって、WiFi HaLowによる通信機能を備えた複数の無線通信端末と、インターネット回線契約者に支給される、WiFi HaLowによるアクセスポイント機能を備えた複数のホームゲートウェイと、データベース装置とを備え、データベース装置は、複数のホームゲートウェイのそれぞれから、自機の位置、MACアドレス、送信時間残数、および接続台数を受信してホームゲートウェイデータベースを作成し、無線通信端末は、接続開始時、および接続中のホームゲートウェイとの接続終了前に、ホームゲートウェイデータベースを参照し、ホームゲートウェイのそれぞれの位置、送信時間残数、および接続台数を考慮して、最適なホームゲートウェイを選択し接続する。
【0021】
2022年9月から使用が許可された920MHz帯の無線LAN(WiFi HaLow(登録商標))は、見通し距離100mで20Mbps以上、1kmでも150kbps以上のレートでのデータ伝送が可能とされており、屋外での公衆無線LANサービスの候補となりうる。
しかし、920MHz帯の無線伝送に関しては、1台の送信機の送信時間の総和が1時間あたり360秒(1時間あたり10%)以下との規制があり、また、EIRP250mWでの使用が可能な周波数が920.5MHz以上923.5MHz以下と限られていることから、1台のアクセスポイント、または1か所に配置された複数台のアクセスポイントで多くの無線通信端末に公衆無線LANサービスを行うことは困難である。
【0022】
公衆無線LANの利用者はインターネットからデータをダウンロードすることが多く、アクセスポイントを備えたホームゲートウェイから利用者の無線通信端末への下り通信の占有時間が長い。すなわち、アクセスポイント側の送信時間が長く、無線通信端末側の送信時間は短い。
したがって、複数のアクセスポイントを配置し、利用者の無線通信端末をこの複数のアクセスポイントを順次選択して接続するようにすれば、送信時間の制限を緩和することができる。
しかし、従来の公衆無線LANの配置に合わせてWiFi HaLowの公衆無線LAN用アクセスポイントを配置した場合、到達距離の長いWiFi HaLowといえども公衆無線LANのサービス範囲が限定され、さらに、限定されたサービス範囲に多数の無線通信端末が集中した場合には送信時間の制限の緩和もできない。
すなわち、利用可能エリアが広く、手軽に利用でき、セキュリティも確保された公衆無線LANサービスを実現するためには、従来の公衆無線LANサービスに対してけた違いに多くの、かつ、位置的にも分散したアクセスポイントが必要である。
【0023】
一局面に従う無線ネットワークシステムは以下2点の特徴を有する。
1点目は、インターネット回線契約者に支給されるホームゲートウェイにWiFi HaLowによるアクセスポイント機能を追加し、このアクセスポイントを公衆無線LAN用アクセスポイントとして活用することによって、公衆無線LAN用アクセスポイントの台数を飛躍的に増加させ、サービス範囲を拡大することである。
2点目は、各アクセスポイントの位置、送信時間残数、および接続台数を取得して登録するデータベース装置を備え、各無線通信端末が接続開始時、および接続中のホームゲートウェイとの接続終了前に、ホームゲートウェイデータベースを参照し、ホームゲートウェイのそれぞれの位置、送信時間残数、および接続台数を考慮して、最適なホームゲートウェイを選択して接続することにより、送信時間の制限を緩和することである。
なお、無線通信端末がホームゲートウェイと接続中の場合、例えば、接続中のホームゲートウェイとの通信が切れる1分前を目安に次の接続先を探し始め、あらかじめ切り替え準備を整えて、次のホームゲートウェイと数秒内に再接続することが望ましい。
【0024】
(2)
第2の発明に係る無線ネットワークシステムは、一局面に従う無線ネットワークシステムにおいて、データベース装置は、複数のホームゲートウェイのそれぞれから、送信周波数、送信電力を受信してホームゲートウェイデータベースに追加し、無線通信端末は、接続開始時、および接続中のホームゲートウェイとの接続終了前に、ホームゲートウェイデータベースを参照するとともに、ホームゲートウェイのそれぞれからの受信電波強度を測定し、最適なホームゲートウェイを選択し接続してもよい。
【0025】
無線通信端末によるホームゲートウェイの選択にあたって、ホームゲートウェイのそれぞれの位置、送信時間残数、および接続台数を考慮することが必要である。このうち、ホームゲートウェイの位置は無線通信端末の受信電波強度およびデータ伝送速度に与える影響が大きく重要である。しかし、無線通信端末とホームゲートウェイとの距離が同じであっても、受信電波強度はその間に遮蔽物があるかどうか等によっても変化する。特に、本発明の無線ネットワークシステムの場合、ホームゲートウェイは屋内に設置されていることから、その設置場所によって無線通信端末の受信電波強度が大幅に変化することが想定される。
第2の発明に係る無線ネットワークシステムでは、無線通信端末が、ホームゲートウェイデータベースから取得する、ホームゲートウェイのそれぞれの位置、送信時間残数、および接続台数の情報に加えて、ホームゲートウェイのそれぞれからの受信電波強度を測定し、十分な受信電波強度のホームゲートウェイを選択して接続する。
【0026】
(3)
第3の発明に係る無線ネットワークシステムは、一局面に従う無線ネットワークシステムにおいて、ホームゲートウェイは、無線通信端末から認証要求を受信すると、データベース装置の端末識別情報データベースに無線通信端末の端末識別情報が登録されているかどうか、および登録されている場合は認証日時を確認し、無線通信端末の端末識別情報が許可端末として登録されていて、認証日時と現在の日時との差が所定の時間以下の場合には、ホームゲートウェイは無線通信端末をインターネットに接続し、無線通信端末の端末識別情報が登録されていない場合、登録されているが認証日時と現在の日時との差が所定の時間を超過している場合、または、不許可端末として登録されている場合は、ホームゲートウェイは、無線通信端末からSIMカードのIMSIデータを取得して、無線通信端末の通信事業者(MNO)の認証サーバにEAP-SIM認証を依頼し、認証サーバからEAP-SIM認証成功の報告を受領した場合には、端末識別情報データベースに認証結果および認証日時を登録するとともに無線通信端末をインターネットに接続してもよい。
【0027】
従来、公衆無線LANのセキュリティとしては、ID、パスワードを入力する方法が多く用いられていた。この場合、ホームゲートウェイに接続するたびにID、パスワードを入力しなければいけないため、本発明のように無線通信端末が頻繁にホームゲートウェイを切り換える場合にはこの方法は使用できない。
一方、EAP-SIM認証と呼ばれる、SIMカードのIMSIデータを無線通信端末の通信事業者(MNO)の認証サーバに送信して認証を依頼する方法では、認証は自動的に行われ、認証にかかる時間も短くできる。
しかし、無線通信端末が複数のホームゲートウェイを切り換えてインターネットに接続する本発明の無線ネットワークシステムでは、ホームゲートウェイの切り替え時に毎回無線通信端末の認証を行う必要があるため、比較的短時間で認証できるEAP-SIM認証であっても、認証が終わるまでの待機時間は大きな課題になる。
【0028】
一方、特許文献2に記載のように、端末識別情報(MACアドレス)が端末識別情報データベースに登録されているかどうかを確認し、当該端末識別情報が端末識別情報データベースに登録されていないときのみ、無線通信端末からSIMカードのIMSIデータを取得し、無線通信端末の通信事業者(MNO)の認証サーバにEAP-SIM認証を依頼する方法も考えられる。この方法では、端末識別情報が端末識別情報データベースに登録されている場合にはより短時間で無線通信端末の認証を行うことができる。しかし、MACアドレスは偽装も容易であるため、この方法はセキュリティ面で課題がある。
そこで、第3の発明に係る無線ネットワークシステムでは、無線通信端末の端末識別情報(MACアドレス)がデータベース装置の端末識別情報データベースに許可と登録されていて認証日時と現在の日時との差が所定の時間以下の場合には直ちに接続を許可し、それ以外の場合にのみEAP-SIM認証を行い、さらに、EAP-SIM認証で許可された場合は、データベース装置の端末識別情報データベースに認証結果および認証日時を登録するようにしている。所定の時間とは、例えば1時間である。
この方法によれば、無線通信端末は、最初のホームゲートウェイとの接続時だけは必ずEAP-SIM認証が必要であるが、所定の時間以内に、接続先を別のホームゲートウェイに切り替える際にはデータベース装置の端末識別情報データベースを参照するだけで接続が許可されるため、ホームゲートウェイの切り替え時に毎回無線通信端末の認証を行っても、インターネット接続の待機時間を短くすることができる。
また、最初のホームゲートウェイとの接続時は必ずEAP-SIM認証を行うため、セキュリティの面でも安心安全である。
ただし、よりセキュリティを重視する場合には、ホームゲートウェイの切り替え時にもEAP-SIM認証を行うようにしてもよい。
【0029】
(4)
第4の発明にかかる無線ネットワークシステムは、一局面に従う無線ネットワークシステムにおいて、ホームゲートウェイは、インターネット回線契約者と公衆無線LAN利用者との間の直接の通信、および公衆無線LAN利用者相互の間の直接の通信を遮断してもよい。
【0030】
インターネット回線契約者に支給されるホームゲートウェイを利用して公衆無線LANを構成した場合、公衆無線LAN利用者がインターネット回線契約者のPCなどに接続できたり、公衆無線LAN利用者相互が接続できたりすることはセキュリティ上の課題がある。
第4の発明にかかる無線ネットワークシステムでは、ホームゲートウェイの公衆無線LAN側のネットワークとインターネット回線契約者側のネットワークとに別のSSIDを設定する。そして、同じSSIDに接続している機器の間の通信を禁止するSTAセパレータをホームゲートウェイの公衆無線LAN側のネットワークに設定し、異なるSSIDに接続している機器との通信を禁止するSSIDセパレータをホームゲートウェイの公衆無線側とインターネット回線契約者側との間に設定することによって、インターネット回線契約者と公衆無線LAN利用者との間の直接の通信、および公衆無線LAN利用者相互の間の直接の通信を遮断している。
【0031】
(5)
第5の発明にかかる無線ネットワークシステムは、一局面に従う無線ネットワークシステムにおいて、無線通信端末とデータベース装置との通信は、ホームゲートウェイを介して、または携帯電話基地局を介して行われてもよい。
【0032】
無線通信端末がスマートフォンなどの携帯電話基地局に接続できる通信端末である場合、無線通信端末は、携帯電話基地局を介してデータベース装置に接続することができる。この場合、もし、近くにホームゲートウェイがない場合には、必要であれば、公衆無線LANが利用可能な場所に移動して利用することができる。
一方で、近くにホームゲートウェイがある場合には、通常、ホームゲートウェイを経由した方がサーバーからの応答時間が短いので好ましい。
第5の発明にかかる無線ネットワークシステムでは、ホームゲートウェイからの受信電波強度、または、サーバーからの応答時間に応じて、無線通信端末とデータベース装置との通信を、ホームゲートウェイを介して、または携帯無線通信網を介して行うことができる。
【0033】
(6)
他の局面に従う無線ネットワークシステムの制御方法は、公衆無線LANに用いられる無線ネットワークシステムの制御方法であって、無線ネットワークシステムは、WiFiHaLow(登録商標)による通信機能を備えた複数の無線通信端末と、インターネット回線契約者に支給される、WiFiHaLow(登録商標)によるアクセスポイント機能を備えた複数のホームゲートウェイと、データベース装置とを備え、データベース装置が、複数のホームゲートウェイのそれぞれから、自機の位置、MACアドレス、送信時間残数、接続台数、送信周波数、および送信電力を受信してホームゲートウェイデータベースを作成するデータベース作成工程と、無線通信端末が、接続開始時、および接続中のホームゲートウェイとの接続終了前に、ホームゲートウェイデータベースを参照するとともに、ホームゲートウェイのそれぞれからの受信電波強度を測定し、最適なホームゲートウェイを選択し接続する、ホームゲートウェイ選択工程と、を備える。
【0034】
この場合、無線通信端末は、各ホームゲートウェイの位置、MACアドレス、送信時間残数、接続台数、送信周波数、および送信電力が記載されたホームゲートウェイデータベース参照することで、送信時間残数が大きく接続台数の少ないホームゲートウェイが、どの位置でどの周波数チャネルにあるかという情報を取得し、さらにそのホームゲートウェイからの受信電波強度が十分であるかどうかをホームゲートウェイのそれぞれからの受信電波強度の測定で把握することができるので、短時間のうちに適切なホームゲートウェイを選択することができ、インターネット接続の待機時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】第1の実施形態に係る無線ネットワークシステムの構成の一例を示す模式図である。
【
図2】第1の実施形態に係る無線ネットワークシステムのホームゲートウェイの構成の一例を示す模式図である。
【
図3】第1の実施形態に係るホームゲートウェイの制御部の構成の一例を示す模式図である。
【
図4】第1の実施形態に係る無線ネットワークシステムのデータベース装置の構成の一例を示す模式図である。
【
図5】第1の実施形態に係る無線ネットワークシステムの無線通信端末の構成の一例を示す模式図である。
【
図6】第1の実施形態に係るデータベース装置のホームゲートウェイデータベースの一例を示す表である。
【
図7】第1の実施形態に係るデータベース装置の端末識別情報データベースの一例を示す表である。
【
図8】第1の実施形態に係る無線通信端末のホームゲートウェイ選択、接続のフローを示す模式的フローチャートである。
【
図9】第1の実施形態に係る無線通信端末の接続認証のフローを示す模式的フローチャートである。
【
図10】第2の実施形態に係る無線通信端末のホームゲートウェイ選択、接続のフローを示す模式的フローチャートである。
【
図11】第2の実施形態に係るデータベース装置のホームゲートウェイデータベースの一例を示す表である。
【
図12】第2の実施形態に係る無線通信端末のホームゲートウェイ選択用データの一例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付す。また、同符号の場合には、それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さないものとする。
【0037】
[第1の実施形態]
(無線ネットワークシステム100)
図1は第1の実施形態の無線ネットワークシステム100の構成の一例を示す模式図であり、
図2はホームゲートウェイ20の構成の一例を示す模式図であり、
図3はホームゲートウェイ20の制御部25の構成の一例を示す模式図であり、
図4はデータベース装置30の構成の一例を示す模式図であり、
図5は無線通信端末10の構成の一例を示す模式図である。
【0038】
図1において、無線ネットワークシステム100は複数の無線通信端末10、複数のホームゲートウェイ20(20a~20d)、データベース装置30、および、それらを接続するブロードバンド回線40、通信ネットワーク50で構成されている。
通信ネットワーク50は、インターネット60を介して各種サーバ(図示せず)、および無線通信端末10の通信事業者(MNO)の基地局70、および認証サーバ80に接続されている。
無線通信端末10はWiFi Halowの無線通信機能を備え、WiFi Halowの電波を介してホームゲートウェイ20と通信することができ、また携帯電話の電波を介して携帯電話基地局70と通信することができる。
各ホームゲートウェイ20は、ブロードバンド回線40、通信ネットワーク50を介してデータベース装置30と接続され、さらに、インターネット60を介して、携帯電話基地局70および認証サーバ80と接続されている。また、各ホームゲートウェイ20は、少なくとも、2.4GHz帯、5GHz帯の無線LAN(WiFi)のアクセスポイント機能と、WiFi Halowのアクセスポイント機能とを備えている。
【0039】
(ホームゲートウェイ20)
図2において、ホームゲートウェイ20は、回線終端部21、有線通信部22、無線通信部23、無線通信用アンテナ24a、24b、制御部25を備えている。
回線終端部21には、光回線の終端装置(ONU:Optical Netowork Unit)、ルーターなどの機能が含まれており、ブロードバンド回線40と有線通信部22、無線通信部23とのインターフェースの機能を備えている。
有線通信部22はパソコンなどの家庭内の有線通信端末との間の有線通信をつかさどる。
無線通信部23は、アンテナ24aを介してインターネット回線契約者宅内の無線通信端末10aと通信することができ、アンテナ24bを介して公衆無線LAN利用者の無線通信端末10と通信することができる。
通常、アンテナ24aは2.4GHz帯、5GHz帯、および/または6GHz帯のアンテナであり、アンテナ24bは920MHz帯(WiFi HaLow)のアンテナである。また、アンテナ24aを介したネットワークとアンテナ24bを介したネットワークとはアクセスポイントのSSIDが異なっている。制御部25の構成については
図3に示す。
【0040】
図3において、ホームゲートウェイ20の制御部25には、通常の無線制御手段25aに加えて、DB報告手段25b、端末認証手段25c、通信遮断手段25dを備えている。
DB報告手段25bは所定の時間ごとにブロードバンド回線40、通信ネットワーク50を介して、自らの識別子、MACアドレス、住所、送信時間残数、接続台数のデータをデータベース装置30に送信する。この場合の所定の時間とは、例えば10分である。
端末認証手段25cは、無線通信端末10から接続認証要求を受信した場合に、まず、無線通信端末10の端末識別情報(MACアドレス)を取得し、端末識別情報がデータベース装置30の端末識別情報データベース33に許可端末として登録されているかどうか、および、登録されている場合は、認証日時と現在の日時との差が所定の時間以下であるかどうかを調べて、許可されていて、かつ、認証日時と現在の日時との差が所定の時間以下であれば接続認証OKとして、無線通信端末10をインターネット60に接続する。なお、この場合の所定の時間とは、例えば1時間である。
一方、無線通信端末10の端末識別情報が端末識別情報データベース33に許可端末として登録されていない場合、登録されているが認証日時と現在の日時との差が所定の時間を超過している場合、または、不許可端末として登録されている場合は、もし、無線通信端末10が携帯電話(スマートフォン)であれば、無線通信端末10のSIMカード情報(IMSIデータ)を取得し、無線通信端末10の通信事業者(MNO)の認証サーバ80との間でEAP-SIM認証を実行する。
そして、EAP-SIM認証でSIMカード情報が認証されれば、データベース装置30に端末識別情報(MACアドレス)と認証結果とを送信してデータベース装置30の端末識別情報データベース33に登録するとともに、認証成功を無線通信端末10に送信して、無線通信端末10をインターネット60に接続する。
なお、無線通信端末10が端末識別情報データベース33に許可端末として登録されておらず、かつ、携帯電話(スマートフォン)でない場合は、接続不可とする。ただし、この場合に、データベース装置30に無線端末利用者のID、パスワードを登録しておき、無線通信端末10にID、パスワードを入力させて、ID、パスワードが一致すれば認証成功として、端末識別情報データベース33に登録するとともに無線通信端末10をインターネット60に接続するように構成することも可能である。
【0041】
通信遮断手段25dは、いわゆるプライバシーセパレータの機能を担うものであって、インターネット回線契約者宅内の無線通信端末10a側のSSIDをSSID1とし、公衆無線LAN利用者の無線通信端末10側のSSIDをSSID2とした場合、SSID2に接続された無線通信端末10のSSID1に接続された無線通信端末10aおよび有線通信端末との通信を遮断するとともに、同じSSID2に接続された無線通信端末10相互の通信(公衆無線LAN利用者相互の間の通信)を遮断するものである。
【0042】
(データベース装置30)
図4において、データベース装置30は、回線終端部31、ホームゲートウェイデータベース32、端末識別情報データベース33、制御部34を備える。
回線終端部31の機能はホームゲートウェイ20の回線終端部21と同じである。
ホームゲートウェイデータベース32は、各ホームゲートウェイ20の情報を登録するデータベースである。
図6に、ホームゲートウェイデータベース32の一例を示す。
図6において、ホームゲートウェイデータベース32は、各ホームゲートウェイ20の識別子(公衆無線LAN利用者の無線通信端末10側のSSID)、MACアドレス、住所、送信時間残数、接続台数を登録している。
住所は各ホームゲートウェイ20がどこに配置されているかを示している。
送信時間残数は、1台の送信機の送信時間の総和が1時間あたり360秒との規制に対して、あとどのくらい送信時間が残っているかを示すのもので、例えば、AABBDDのホームゲートウェイ20であればあと5分20秒送信可能であり、CCUUWWであればあと1分10秒送信可能であることが登録されている。
接続台数はその時点で何台の無線通信端末10がそのホームゲートウェイ20に接続されているかを示している。
したがって、無線通信端末10はホームゲートウェイデータベース32を参照し、住所で近くのホームゲートウェイ20を探したうえで、送信時間残数が多く送信時間台数が少ないホームゲートウェイ20を選択して、そのホームゲートウェイ20の識別子(SSID)により接続することができる。
図6の場合であれば、無線通信端末10の現在地が大阪市xx1 丁目付近であれば、識別子AABBDDのホームゲートウェイ20に接続することになる。
【0043】
端末識別情報データベース33は、ホームゲートウェイ20のいずれかに接続認証要求を行った無線通信端末10のMACアドレスと認証日時と認証結果とが登録されている。
図7に端末識別情報データベース33の一例を示す。認証日時の欄にはEAP-SIM認証により認証された最も新しい認証日時が記入されている。許可の欄では認証が成功し接続が許可された端末を1、許可されなかった端末を0としている。
【0044】
制御部34は、各ホームゲートウェイ20から所定時時間ごとに送信される自機の識別子、MACアドレス、住所、送信時間残数、接続台数のデータをホームゲートウェイデータベース32に登録するとともに、ホームゲートウェイ20から送信される端末識別情報と認証日時と認証結果とを登録する。
また、ホームゲートウェイ20から無線通信端末10の端末識別情報を受信した場合には、その端末識別情報が端末識別情報データベース33に記載されているか、および記載されている場合にはその端末の認証日時がいつであるか、および認証結果が許可であるか不許可であるかをホームゲートウェイ20に返信する。
なお、無線通信端末10からホームゲートウェイデータベース32の参照要求があった場合、関連する(住所が近い)ホームゲートウェイ20の情報を無線通信端末10に提供することが望ましい。
【0045】
(無線通信端末10)
図5において、無線通信端末10は無線通信部11、アンテナ12a、12b、制御部13を備える。無線通信端末10は、通常の携帯電話(スマートフォン)に本無線ネットワークシステムを用いた公衆無線LAN用のアプリケーションプログラムを搭載することによって構成することができる。
無線通信部11はWiFi HaLow用のアンテナ12aと携帯電話用のアンテナ12bとを備え、アンテナ12aを介してホームゲートウェイ20と通信し、アンテナ12bを介して携帯電話基地局70と通信することができる。
制御部13は、通常の携帯電話の機能に加えて、データベース参照手段13a、認証申請手段13b、ホームゲートウェイ選択手段13cを備える。
データベース参照手段13aはホームゲートウェイ20を介して、または携帯電話基地局70を介してデータベース装置30に接続し、ホームゲートウェイデータベース32のデータを取得する。この場合、GPSなどの位置測定手段により取得した無線通信端末10の位置をデータベース装置30に送信し、無線通信端末10の位置に近いホームゲートウェイ20のデータのみを参照するようにすることが望ましい。
認証申請手段13bは、公衆無線LANとの接続認証時、まず、自機のMACアドレスをホームゲートウェイ20に送信し認証を依頼する。そして、MACアドレスによる認証が失敗の場合には、自機のSIMカードの加入者識別番号(IMSIデータ)をホームゲートウェイ20に送信し、EAP-SIM認証を依頼する。
ホームゲートウェイ選択手段13cは、データベース装置30から取得した、各ホームゲートウェイ20の識別子、MACアドレス、住所、送信時間残数、接続台数のデータに基づいて、位置的に近くて、送信時間残数が大きく、かつ接続台数の少ないホームゲートウェイ20の識別子を選択する。そして、無線通信端末10は、選択された識別子のホームゲートウェイ20に対して、認証申請手段13bにより接続認証を依頼する。
【0046】
(全体フローチャート)
図8に、無線通信端末10のホームゲートウェイ20選択、インターネット接続の模式的フローチャートを示す。
以下、スローチャートのステップに沿って説明する。
(ステップS01)接続開始時、無線通信端末10は、接続の可能なホームゲートウェイ20を介して、または、携帯電話基地局70を介してデータベース装置30に接続し、ホームゲートウェイデータベース32を参照する。
(ステップS02)無線通信端末10は、データベース装置30から取得した、各ホームゲートウェイ20の識別子、MACアドレス、住所、送信時間残数、接続台数のデータに基づいて、位置的に近くて、送信時間残数が大きく、かつ接続台数の少ないホームゲートウェイ20を選択する。なお、ステップS02に記載のHGWはホームゲートウェイ20(Home Gateway)の略称である。
(ステップS03)無線通信端末10は、選択したホームゲートウェイ20に対して、接続認証を申請する。
(ステップS04、S05)接続認証に成功した場合はインターネット60に接続し、不成功の場合は処理を終了する。なお、接続認証の詳細については、
図9を用いて詳細に説明する。
(ステップS06)インターネット接続中において、必要な通信が完了した場合には接続を解除し処理を終了する。
(ステップS07)必要な通信が完了する前に所定時間に到達した場合には、再度ステップS01のデータベース参照から繰り返す(すなわち、ステップS01からステップS07を繰り返す)。所定時間とは、例えば、現在接続されているホームゲートウェイ20との通信が切れる1分前(すなわち接続終了1分前)であり、所定時間に到達すると次の接続先のホームゲートウェイ20を探し始め、あらかじめ切り替え準備を整えて、次のホームゲートウェイ20と数秒内に再接続する。
【0047】
(接続認証フローチャート)
図9は、無線通信端末10の接続認証のフローを示す模式的フローチャートである。
以下、スローチャートのステップに沿って説明する。
(ステップS11)無線通信端末10は、選択したホームゲートウェイ20に対して、MACアドレスによる接続認証を申請する。
(ステップS12)ホームゲートウェイ20はデータベース装置30の端末識別情報データベース33を参照する。
(ステップS13)申請した無線通信端末10の端末識別情報(MACアドレス)が端末識別情報データベース33に許可された端末として登録されており、かつ認証日時と現在の日時との差が所定の時間以下であれば、認証成功とし、そのまま、無線通信端末10をインターネット60に接続する。一方、申請した無線通信端末10の端末識別情報(MACアドレス)が端末識別情報データベース33に許可された端末として登録されていない場合、登録されているが認証日時と現在の日時との差が所定の時間を超過している場合、または不許可の端末として登録されている場合は、認証失敗を無線通信端末10に報告する。なお、この場合の所定の時間とは、例えば1時間である。ただし、よりセキュリティを重視する場合には、ホームゲートウェイ20の切り替え時にもEAP-SIM認証を行うようにしてもよい。
(ステップS14)無線通信端末10は自機のSIMカードのIMSIデータを添付して、ホームゲートウェイ20にEAP-SIM認証を依頼する。
(ステップS15)ホームゲートウェイ20は、無線通信端末10のIMSIデータを添付して無線通信端末10の通信事業者(MNO)の認証サーバ80にEAP-SIM認証を依頼する。
(ステップS16)認証サーバ80は添付された無線通信端末10のIMSIデータが通信事業者(MNO)の発行したIMSIデータと一致するかどうかをチェックし、結果をホームゲートウェイ20に返信する。
(ステップS17,S18)ホームゲートウェイ20は無線通信端末10のMACアドレスとEAP-SIM認証の結果をデータベース装置30に送信し、データベース装置30は送信されたMACアドレスとEAP-SIM認証の認証日時および認証結果を端末識別情報データベース33に登録する。
(ステップS05)端末識別情報認証成功(ステップS13)またはEAP-SIM認証成功(ステップS16)の場合は、ホームゲートウェイ20は無線通信端末10をインターネット60に接続する。なお、
図9のステップS05は
図8のステップS05と共通である。
【0048】
[第2の実施形態]
第2の実施形態の無線ネットワークシステム100は、無線通信端末10が接続先のホームゲートウェイ20を選択するにあたって、参照するデータが異なるだけで、その他は第1の実施形態の無線ネットワークシステム100と同一である。
具体的には、第1の実施形態の無線ネットワークシステム100では、無線通信端末10は、自機の位置、MACアドレス、送信時間残数、および接続台数が記載されたホームゲートウェイデータベース32を参照して、位置的に近くて、送信時間残数が大きく、かつ接続台数の少ないホームゲートウェイ20を選択する。
一方、第2の実施形態の無線ネットワークシステム100では、無線通信端末10は、自機の位置、MACアドレス、送信時間残数、接続台数、送信周波数、および送信電力が記載されたホームゲートウェイデータベース32を参照するとともに、各ホームゲートウェイ20からの受信電波強度を測定して、位置的に近くて、送信時間残数が大きく、接続台数が少なく、かつ、受信電波強度の大きなホームゲートウェイ20を選択する。
これは、無線通信端末10とホームゲートウェイ20との距離が同じであっても、受信電波強度はその間に遮蔽物があるかどうか等によっても変化するためである。特に、本発明の無線ネットワークシステム100の場合、ホームゲートウェイ20は屋内に設置されていることから、その設置場所によって無線通信端末10の受信電波強度が大幅に変化する。したがって、第2の実施形態の無線ネットワークシステム100は、より受信電波強度の大きなホームゲートウェイ20を選択することにより、ホームゲートウェイ20の設置場所等によらず、安定してホームゲートウェイ20と通信することができる。
なお、
図1の無線ネットワークシステム100の構成、
図2のホームゲートウェイ20の構成、
図3のホームゲートウェイ20の制御部25の構成、
図4のデータベース装置30の構成、
図5の無線通信端末10の構成、
図7の端末識別情報データベース33、および
図9の無線通信端末10の接続認証のフローについては、第2の実施形態においても同一であるので説明を省略する。
以下、第2の実施形態の無線ネットワークシステム100の第1の実施形態の無線ネットワークシステム100と異なる点を列挙する。
【0049】
(ホームゲートウェイ選択のフローチャート)
図10は、第2の実施形態に係る無線通信端末10のホームゲートウェイ選択、接続のフローを示す模式的フローチャートである。
図10では、第1の実施形態の無線通信端末10のホームゲートウェイ選択、接続のフローを示す
図8に対して、ステップS01のDB参照とステップS02の接続先HGW選択との間に、ステップS08の受信電波強度測定が挿入されている点が異なる。すなわち、第2の実施形態の無線通信端末10はデータベース装置30のホームゲートウェイデータベース32のデータに加えて、自ら測定した各ホームゲートウェイ20の電波強度を参照して接続するホームゲートウェイ20を選択する。
【0050】
(ホームゲートウェイデータベース32)
図11は、第2の実施形態に係るデータベース装置30のホームゲートウェイデータベース32のデータの一例を示す。
図11は、第1の実施形態のホームゲートウェイデータベース32のデータの一例を示す
図6に対して、各ホームゲートウェイ20の送信周波数、送信電力の欄が追加されている点が異なる。各ホームゲートウェイ20の送信周波数、送信電力は各ホームゲートウェイ20のビーコンを解析することによっても取得可能な場合もあるが、データベース装置30が各ホームゲートウェイ20から直接データを取得し、データベースに登録することにより、より効率よく、かつより確実に各ホームゲートウェイ20のデータを把握することができる。
【0051】
(ホームゲートウェイ20選択用データ)
図12は、第2の実施形態の無線通信端末10におけるホームゲートウェイ20選択用データの一例を示す。
第2の実施形態の無線通信端末10では、
図12に記載のように、各ホームゲートウェイ20の送信時間残数、接続台数に加えて、送信周波数、受信電波強度を加味して接続すべきホームゲートウェイ20を選択する。例えば、より受信電波強度の高いホームゲートウェイ20、あるいは、同一周波数に受信電波強度の高いホームゲートウェイ20の無いホームゲートウェイ20などを選択する。
図12の例でいえば、送信時間残数の観点ではAABBDDを選択すべきであるが、CCUUWWによる妨害が問題になる場合は、送信時間残数はやや少ないがPPOOJJを選択することもありうる。
以上のように、第2の実施形態の無線ネットワークシステム100は、無線通信端末10における各ホームゲートウェイ20の電波強度および周波数を考慮することによって、無線通信端末10とホームゲートウェイ20との間の安定した無線通信を実現している。
【0052】
本発明において、無線ネットワークシステム100が『無線ネットワークシステム』に相当し、無線通信端末10,10aが『無線通信端末』に相当し、ホームゲートウェイ20、20a、20b、20c、20dが『ホームゲートウェイ』に相当し、データベース装置30が『データベース装置』に相当し、ホームゲートウェイデータベース32が『ホームゲートウェイデータベース』に相当し、端末識別情報データベース33が『端末識別情報データベース』に相当し、インターネット60が『インターネット』に相当し、携帯電話通信事業者(MNO)認証サーバ80が『認証サーバ』に相当し、携帯電話通信事業者(MNO)基地局70が『携帯電話基地局』に相当する。
【0053】
本発明の好ましい一実施形態は上記の通りであるが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0054】
10、10a 無線通信端末
20、20a、20b、20c、20d ホームゲートウェイ
30 データベース装置
32 ホームゲートウェイデータベース
33 端末識別情報データベース
60 インターネット
70 携帯電話通信事業者(MNO)基地局
80 携帯電話通信事業者(MNO)認証サーバ
100 無線ネットワークシステム