(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021814
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】液体ポンプ及び液体ポンプの製造方法
(51)【国際特許分類】
F02M 37/08 20060101AFI20250206BHJP
【FI】
F02M37/08 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125793
(22)【出願日】2023-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】塚田 悟
(72)【発明者】
【氏名】鵤木 孝夫
(57)【要約】
【課題】内燃機関に供給される燃料に錆が混入することを防止できる液体ポンプ及び液体ポンプの製造方法を提供する。
【解決手段】燃料ポンプ1は、ポンプ部Pと、ポンプ部Pを駆動するポンプモータMと、を備える。ポンプモータMは、ステータ10と、ステータ10の径方向内側に回転自在に設けられたロータ12と、ステータ10とロータ12との間に形成され、ポンプ部Pで汲み上げた燃料が流れる流路30と、を備える。ステータ10のステータコア14に複数のコイル17及びモータカバー18を取り付けた状態で、ステータコア14の外部に露出している外周面14c及び内周面14dに、電解メッキを施すことによるメッキ被膜が形成されており、ステータコア14の外周面14cには、電解メッキを施すときの電極の痕が形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を汲み上げるポンプ部と、
前記ポンプ部を駆動するポンプモータと、
を備え、
前記ポンプモータは、
ステータと、
前記ステータの径方向内側に回転自在に設けられ、前記ポンプ部と連結されたロータと、
前記ステータと前記ロータとの間に形成され、前記ポンプ部で汲み上げた前記液体が流れる流路と、
を備え、
前記ステータは、
複数の電磁鋼板が積層されたステータコアと、
前記ステータコアに巻回された複数のコイルと、
前記複数のコイルを保護するモータカバーと、
を備え、
前記ステータコアに前記複数のコイル及び前記モータカバーを取り付けた状態で、前記ステータコアの外部に露出している露出部に、電解メッキを施すことによるメッキ被膜が形成されており、
前記露出部のうちの前記ステータコアの外周面には、前記電解メッキを施すときに電極が当接されることにより生じる電極当接痕が形成されている、
ことを特徴とする液体ポンプ。
【請求項2】
筒部を有するハウジングケースを備え、
前記ポンプ部は、前記ハウジングケース内に収納されており、
前記筒部の内周面に前記ステータの前記外周面が嵌合されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体ポンプ。
【請求項3】
前記ハウジングケースは、前記ステータコアの前記外周面に対して径方向の寸法が大きい、
ことを特徴とする請求項2に記載の液体ポンプ。
【請求項4】
液体を汲み上げるポンプ部と、
前記ポンプ部を駆動するポンプモータと、
を備え、
前記ポンプモータは、
ステータと、
前記ステータの径方向内側に回転自在に設けられ、前記ポンプ部と連結されたロータと、
前記ステータと前記ロータとの間に形成され、前記ポンプ部で汲み上げた前記液体が流れる流路と、
を備える液体ポンプの製造方法において、
前記ステータは、
複数の電磁鋼板を積層してステータコアを形成する積層工程と、
前記ステータコアに複数のコイルを巻回する巻回工程と、
前記複数のコイルを保護するモータカバーを成形する成形工程と、
前記成形工程の後に、前記ステータコアの外周面に電極を当接し、電解メッキを施すことにより前記ステータコアの外部に露出している露出部にメッキ被膜を形成するメッキ工程と、
により形成される、
ことを特徴とする液体ポンプの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体ポンプ及び液体ポンプの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体ポンプとして、例えば自動二輪車や四輪車等の車両用の燃料ポンプがある。この種の燃料ポンプは、燃料タンクの内部に配置されて燃料に浸漬される、いわゆるインタンク式が採用される。燃料ポンプは、筒状のハウジングケースの内部にポンプモータ及びポンプ部が設けられている。燃料ポンプは、ポンプモータによってポンプ部を回転することにより、燃料タンクの燃料をポンプ部で昇圧する。昇圧された燃料は、燃料ポンプに形成された流路を通り、吐出ポートから内燃機関に供給される。
【0003】
上記燃料ポンプでは、例えば、ステータコアにインシュレータ及びモータカバー等を備えたステータの状態において、ステータコアに電解メッキを施して錫メッキ被膜(Snメッキ被膜)が形成されるものが知られている。ステータコアに錫メッキ被膜を形成することにより、ステータコアの耐腐食性を確保することが可能である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ステータコアに電解メッキを施す際には、例えばステータコアの外周面に電極が当接される。この場合、ステータコアの外周面のうち、電極が当接された箇所にメッキ被膜を形成することが難く、痕になる。この痕に錆が生じることが考えられる。例えば燃料ポンプにおいて、燃料が流れる流路が、ステータの外周面側に設けられたハウジングケースと、ステータコアの外周面との間に形成されている場合、ステータコアの外周面に沿って燃料が内燃機関に供給される。このため、ステータコアの外周面に発生した錆が燃料に混入されることが懸念される。
【0006】
そこで、本発明は、例えば内燃機関に供給される燃料に錆が混入してしまうことを防止できる液体ポンプ及び液体ポンプの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の第1態様では、液体を汲み上げるポンプ部と、前記ポンプ部を駆動するポンプモータと、を備え、前記ポンプモータは、ステータと、前記ステータの径方向内側に回転自在に設けられ、前記ポンプ部と連結されたロータと、前記ステータと前記ロータとの間に形成され、前記ポンプ部で汲み上げた前記液体が流れる流路と、を備え、前記ステータは、複数の電磁鋼板が積層されたステータコアと、前記ステータコアに巻回された複数のコイルと、前記複数のコイルを保護するモータカバーと、を備え、前記ステータコアに前記複数のコイル及び前記モータカバーを取り付けた状態で、前記ステータコアの外部に露出している露出部に、電解メッキを施すことによるメッキ被膜が形成されており、前記露出部のうちの前記ステータコアの外周面には、前記電解メッキを施すときに電極が当接されることにより生じる電極当接痕が形成されている。
【0008】
このように構成することで、電極の痕が形成されたステータコアの外周面が流路とされてしまうことを防止できる。電極の痕には、メッキ被膜が形成されず錆が発生する可能性がある。このため、上述のように構成することで、例えば液体ポンプを内燃機関に燃料を供給する燃料ポンプとして用いる場合であっても内燃機関に供給される燃料に錆が混入してしまうことを防止できる。
【0009】
本発明の第2態様では、第1態様の液体ポンプにおいて、筒部を有するハウジングケースを備え、前記ポンプ部は、前記ハウジングケース内に収納されており、前記筒部の内周面に前記ステータの前記外周面が嵌合されてもよい。
【0010】
このように構成することで、ステータとロータとの間を、確実に液体が流れる流路とすることができる。
【0011】
本発明の第3態様では、第2態様の液体ポンプにおいて、前記ハウジングケースは、前記ステータコアの前記外周面に対して径方向の寸法が大きくてもよい。
【0012】
このように構成することで、ハウジングケースの内周面にメッキ被膜が接触してしまい、ステータコアの外周面からメッキ被膜が剥がれてしまうことを防止できる。
【0013】
本発明の第4態様では、液体ポンプの製造方法は、液体を汲み上げるポンプ部と、前記ポンプ部を駆動するポンプモータと、を備え、前記ポンプモータは、ステータと、前記ステータの径方向内側に回転自在に設けられ、前記ポンプ部と連結されたロータと、前記ステータと前記ロータとの間に形成され、前記ポンプ部で汲み上げた前記液体が流れる流路と、を備える液体ポンプの製造方法において、前記ステータは、複数の電磁鋼板を積層してステータコアを形成する積層工程と、前記ステータコアに複数のコイルを巻回する巻回工程と、前記複数のコイルを保護するモータカバーを成形する成形工程と、前記成形工程の後に、前記ステータコアの外周面に電極を当接し、電解メッキを施すことにより前記ステータコアの外部に露出している露出部にメッキ被膜を形成するメッキ工程と、により形成される。
【0014】
このような方法として、ステータコアの外周面に電極の痕が形成された場合であっても、ステータコアの外周面が流路とされてしまうことを防止できる。電極の痕には、メッキ被膜が形成されず錆が発生する可能性がある。しかしながら、ステータコアの外周面が流路とされてしまうことがないので、例えば液体ポンプを内燃機関に燃料を供給する燃料ポンプとして用いる場合であっても内燃機関に供給される燃料に錆が混入してしまうことを防止できる。
また、複数の電磁鋼板の間に隙間を生じさせた状態でステータコアの外周面にメッキ被膜が形成されてしまうことを防止できる。このため、電磁鋼板間にメッキ被膜が形成されて鉄損となり、モータ性能が低下してしまうことを防止できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、例えば内燃機関に供給される燃料に錆が混入することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態における燃料ポンプを側方からみた斜視図である。
【
図2】
図1の燃料ポンプにおいてハウジングケース及びポンプモータの一部を破断した側面図である。
【
図3】本発明の実施形態における燃料ポンプに備えたポンプモータのステータコアを示す斜視図である。
【
図4】
図3のステータコアにインシュレータ及び複数のコイルを備えた状態を示す斜視図である。
【
図5】
図4のステータコアを1次成形品に形成した状態を示す斜視図である。
【
図6】
図5の1次成形品を2次成形品に形成した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
<燃料ポンプ>
図1は、燃料ポンプ1を側方からみた斜視図である。
図2は、
図1の燃料ポンプにおいてハウジングケース6及びポンプモータMの一部を破断した側面図である。
図1,
図2に示すように、燃料ポンプ1は、例えば、自動車や自動二輪車等の車両の燃料タンクの内部において燃料に浸漬されて配置されるインタンク式である。燃料ポンプ1は、燃料タンクの内部から燃料を汲み上げて内燃機関2に圧送する。実施形態では、燃料ポンプ1を燃料タンクの内部に鉛直方向へ向けて配置する例について説明する。しかしながらこれに限られるものではなく、燃料ポンプ1を配置する向きは任意に選択可能である。
【0019】
燃料ポンプ1は、ポンプモータMと、ポンプモータMに設けられたアウトレットカバー4と、アウトレットカバー4とはポンプモータMを挟んで反対側に配置されたポンプ部Pと、これらポンプモータM、アウトレットカバー4及びポンプ部Pが収納されるハウジングケース6と、を備える。燃料ポンプ1は、ポンプモータM、アウトレットカバー4、ポンプ部P、及びハウジングケース6が同一軸線O上に設けられている。
以下、燃料ポンプ1の軸線Oを単に「軸線O」、軸線Oを中心とする径方向を単に「径方向」、軸線Oを中心とする周方向を単に「周方向」ということがある。
【0020】
<ポンプモータ>
図3は、ポンプモータMのステータコア14を示す斜視図である。
図4は、
図3のステータコア14にインシュレータ16及び複数のコイル17を取り付けた状態を示す斜視図である。
図2から
図4に示すように、ポンプモータMは、例えば、ステータ10に電力を供給する際にブラシを必要としない、いわゆるブラシレスモータである。ポンプモータMは、円筒状に形成されたステータ10と、ステータ10の径方向内側に配置されてステータ10に対して回転可能に設けられたロータ12と、を備える。
【0021】
ステータ10は、積層した複数の電磁鋼板15により形成される円筒状のステータコア14と、ステータコア14のティース14aを覆うインシュレータ16と、インシュレータ16を介してティース14aに巻回された複数のコイル17と、複数のコイル17を保護するモータカバー18と、を備える。
【0022】
ステータコア14は、環状に形成された複数の電磁鋼板15が軸線O方向に積層されて形成される。ステータコア14は、径方向内側に向けて突出する複数のティース14aを有する。ステータコア14は、周方向で隣接するティース14a間にスロット14bが形成されている。
【0023】
インシュレータ16は、例えば、ステータコア14のティース14aを覆うように樹脂でモールド成形されている。インシュレータ16を成形する樹脂として、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)、POM(ポリオキシメチレン)、あるいはPA66(66ナイロン)が使用される。
【0024】
複数のコイル17は、例えば三相コイルを構成している。三相コイルに端子21(
図1も参照)が接続されている。ステータコア14のティース14aにインシュレータ16を介して複数のコイル17が巻回されることにより、複数の電磁鋼板15に軸線O方向(積層方向)の中央に向かって適正な押圧力が作用する。このため、複数の電磁鋼板15間の隙間は、殆ど生じない程度に小さくなる。
【0025】
図5は、
図4のステータコアを1次成形品に形成した状態を示す斜視図である。
図2、
図5に示すように、モータカバー18は、例えば、ステータコア14に金型を使用して樹脂でモールド成形(以下、1次成形ということがある)することにより、複数のコイル17を覆うように形成されている。これにより、モータカバー18によって複数のコイル17が保護される。以下、ステータコア14にモータカバー18を1次成形した部品を1次成形品Mo1ということがある。
モータカバー18を成形する樹脂として、例えばPPS、POMが使用される。
【0026】
モータカバー18は、例えば、複数の電磁鋼板15を軸線O方向に積層させた状態に支持するように形成されている。複数の電磁鋼板15をモータカバー18で軸線O方向に積層させた状態に支持することにより、軸線O方向において、複数の電磁鋼板15間の隙間がより小さく確保されている。
モータカバー18の一端部18aは、ステータコア14からアウトレットカバー4側に向かって軸線O方向に突出されている。モータカバー18の一端部18aにおける外周面18bは、ステータコア14の外周面14cに対して径方向の寸法が若干大きく形成されている。モータカバー18の他端部18cは、ステータコア14からポンプ部P側に向かって軸線O方向に突出されている。
【0027】
ロータ12は、ロータコア25と、ロータコア25が固定された出力軸26と、を備える。ロータコア25は、例えば、軸線Oを中心とする周方向において、N極とS極とが交互に着磁されている。出力軸26は、軸線Oに沿ってロータコア25に貫通された状態で固定され、ロータコア25と一体に回転する。出力軸26の一端部26aは、例えば、アウトレットカバー4に図示しない軸受を介して回転可能に支持されている。出力軸26の他端部26bは、後述するポンプケース41に軸受28を介して回転可能に支持されている。出力軸26の他端部26bは、ポンプ部Pの後述するインペラ40に連結されている。
【0028】
ここで、ロータコア25の外周面25aとステータコア14の内周面14dとの間の隙間により、燃料の流路30が形成されている。燃料の流路30は、ポンプ部Pで汲み上げられた燃料が通過する流路である。
【0029】
<アウトレットカバー>
図6は、
図5の1次成形品を2次成形品に形成した状態を示す斜視図である。
図2、
図6に示すように、アウトレットカバー4は、1次成形においてステータコア14にモータカバー18を成形した後、例えば、1次成形品Mo1のモータカバー18に金型を使用して樹脂でモールド成形(以下、2次成形ということがある)されている。アウトレットカバー4を成形する樹脂として、例えばPPS、POMが使用される。
【0030】
アウトレットカバー4の外周4aは、ステータコア14の外周面14cに対して径方向の寸法が大きく形成されている。アウトレットカバー4の外周4aは、例えば、モータカバー18のうち一端部18aの外周面18bに対して径方向の寸法が同一に形成されている。
アウトレットカバー4には、軸線O方向において、ポンプモータMの反対側に吐出ポート4bが形成されている。吐出ポート4bは、燃料ポンプ1のポンプ部Pにより汲み上げられた燃料がポンプモータMの流路30を経て導かれる部位である。吐出ポート4bには、燃料の逆流を防止するための図示しないチェックバルブが設けられている。アウトレットカバー4の外周には、ハウジングケース6を加締めるためのカバー段部4cが形成されている。
【0031】
以下、1次成形品Mo1のモータカバー18にアウトレットカバー4がモールド成形された部品を2次成形品Mo2ということがある。すなわち、2次成形品Mo2は、ステータコア14にインシュレータ16、複数のコイル17、モータカバー18、及びアウトレットカバー4を備えている。2次成形品Mo2では、この2次成形品Mo2においてステータコア14の外部に露出している露出部Eに、電解メッキを施すことによる錫メッキ被膜Cが形成されている。露出部Eとは、ステータコア14の外周面14c及び内周面14dである。
【0032】
<ポンプ部>
図2に示すように、ポンプ部Pとして、例えばインペラ40を有する非容積型のポンプが用いられている。ポンプ部Pは、図示しない燃料タンクの内部から燃料を汲み上げる。ポンプ部Pは、インペラ40と、インペラ40の全体を覆うポンプケース41と、を備える。
インペラ40は、樹脂により円板状に形成されている。インペラ40は、ポンプモータMの出力軸26のうちの他端部26bに相対回転不能に連結されている。インペラ40は、軸線Oを中心とする周方向において、外周40aに沿って複数の図示しない羽根部が形成されている。インペラ40は、ポンプケース41の内部に回転可能に収納されている。
【0033】
ポンプケース41は、軸線O方向で重なり合う第1ケース部42と、第2ケース部43と、を備える。第1ケース部42は、ポンプモータMのうちアウトレットカバー4の反対側の端部(すなわち、モータカバー18の他端部18c)に設けられている。第2ケース部43は、第1ケース部42のうちポンプモータMの反対側の端部に設けられている。第2ケース部43には、軸線O方向において、第2ケース部43の反対側に吸入管43aが形成されている。吸入管43aは、ポンプ部Pの内部(すなわち、燃料の流路30)に燃料が汲み上げられる部位である。
【0034】
<ハウジングケース>
図1、
図2に示すように、ハウジングケース6は、例えば、円筒状に形成されたケース本体(請求項における筒部の一例)50と、アウトレットカバー4側の端部に形成された加締め部51と、第2ケース部43側の端部に形成されたフランジ52と、を有する。
【0035】
ケース本体50は、ポンプモータM、アウトレットカバー4、及びポンプ部Pを覆うように円筒状に形成されている。ケース本体50の一端部50aは、モータカバー18における一端部18aの外周面18b及びアウトレットカバー4の外周4aに接触した状態に嵌め込まれている。ケース本体50の他端部50bは、ポンプケース41の外周41aに接触した状態に嵌め込まれている。
【0036】
モータカバー18における一端部18aの外周面18b及びアウトレットカバー4の外周4aは、ステータコア14の外周面14cに対して径方向の寸法が大きく形成されている。このため、ステータコア14の外周面14cとケース本体50との間に空間Sが形成されている。
【0037】
フランジ52は、ケース本体50の他端部50bから径方向内側に環状に折り曲げられている。フランジ52は、第2ケース部43の端部に形成されたケース段部43bに係止されている。加締め部51は、ケース本体50の一端部50aから径方向内側に加締められることにより、アウトレットカバー4のカバー段部4cに係止されている。
【0038】
ハウジングケース6は、加締め部51を加締める前の状態において、加締め部51を第2ケース部43側からアウトレットカバー4のカバー段部4cまで嵌め込まれる。加締め部51をカバー段部4cまで嵌め込むことにより、フランジ52がケース段部43bに係止する。この状態において、加締め部51を径方向内側に加締めることによりカバー段部4cに係止する。このため、ハウジングケース6がポンプモータM、アウトレットカバー4、及びポンプ部Pに嵌め込まれた状態に固定される。これにより、アウトレットカバー4やポンプ部PがポンプモータMに対して一体化されている。
【0039】
<燃料ポンプの製造方法>
次に、
図3から
図6に基づいて、燃料ポンプ1の製造方法を説明する。
図3に示すように、まず、複数の電磁鋼板15を軸線O方向に積層してステータコア14を形成する(積層工程)。
【0040】
次に、
図4に示すように、形成したステータコア14のティース14aをインシュレータ16で覆う。そして、インシュレータ16に複数のコイル17(
図2参照)を巻き付けることにより、ステータコア14のティース14a(
図3参照)にインシュレータ16を介して複数のコイル17を巻回する(巻回工程)。巻回した複数のコイル17で三相コイルを構成し、三相コイルに端子21を接続する。巻回工程後では、複数の電磁鋼板15に軸線O方向の中央に向かって適正な押圧力が作用して複数の電磁鋼板15間の隙間が殆ど生じない程度に小さくなる。
【0041】
次に、
図5、
図6に示すように、ステータコア14に複数のコイル17(
図2参照)を巻回した状態において、ステータコア14にモータカバー18を樹脂で1次成形する。ステータコア14にモータカバー18を1次成形することにより1次成形品Mo1を成形する。すると、モータカバー18により複数のコイル17が覆われる。さらに、1次成形品Mo1にアウトレットカバー4を樹脂で2次成形することにより2次成形品Mo2を形成する(成形工程)。
【0042】
1次成形品Mo1及び2次成形品Mo2を成形する際は、それぞれ図示しない金型等によってステータコア14に適正な圧力が付与された状態で行われる。このため、複数の電磁鋼板15が密接しており、複数の電磁鋼板15の間の隙間が殆ど生じない程度に維持されている。
【0043】
次に、2次成形品Mo2を洗浄工程で洗浄し、洗浄の後工程において、2次成形品Mo2のステータコア14に電解メッキを施すことによる錫メッキ被膜Cを形成する(メッキ工程)。
具体的には、ステータコア14の外周面14cに図示しない電極を当接し、ステータコア14に電解メッキを施す。すると、ステータコア14の露出部E(外周面14c、内周面14d)に錫メッキ被膜Cが形成される。
【0044】
この際、ステータコア14の外周面14cのうち、図示しない電極を当接した箇所には錫メッキ被膜Cが形成されず、電極が当接されたことによる電極当接痕T(
図6参照)が残る(形成される)。これにより、ステータ10の製造が完了する。このように、ステータ10は、燃料ポンプ1の製造方法において、積層工程、巻回工程、成形工程、及びメッキ工程が実施されることにより形成される。
【0045】
<燃料ポンプの動作>
次に、
図2に基づいて、燃料ポンプ1の動作を説明する。
図2示すように、燃料ポンプ1のポンプモータMを駆動させると、これによってポンプ部Pが駆動される。具体的には、ポンプモータMを駆動させることにより、出力軸26が回転し、出力軸26に相対回転不能に連結されているインペラ40が回転する。インペラ40が回転することにより、燃料タンクの内部の燃料が吸入管43aからポンプ部Pの内部に汲み上げられる。
【0046】
ポンプ部Pの内部に汲み上げられた燃料は、ポンプ部Pの内部で昇圧され、昇圧された燃料が燃料流路孔(不図示)を経てポンプモータMの内部に吐出される。ポンプモータMの内部に吐出された燃料は、ポンプモータMの内部において燃料の流路30を経てアウトレットカバー4の吐出ポート4bに吐出される。燃料の流路30は、ロータコア25の外周面25aとステータコア14の内周面14dとの隙間により形成されている。燃料の流路30から吐出ポート4bに導かれた燃料は、内燃機関2(
図1参照)へ導かれる。
【0047】
<実施形態の効果>
このように、実施形態の燃料ポンプ1は、
図4から
図6に示すように、ステータコア14にインシュレータ16、複数のコイル17(
図2参照)、モータカバー18、及びアウトレットカバー4を備えた2次成形品Mo2を形成した。形成した2次成形品Mo2において、ステータコア14の外周面14cに図示しない電極を当接し、電解メッキを施した。これにより、ステータコア14の外周面14cと内周面14dとに錫メッキ被膜Cを形成した。このため、例えば、ステータコア14の外周面14cにおいて電極を当接した箇所に錫メッキ被膜Cを好適に形成することが難しい。これが電極当接痕Tとなり、電極当接痕Tに錆が発生することが考えられる。
【0048】
そこで、
図2に示すように、ポンプモータMにおける燃料の流路30を、ロータコア25の外周面25aとステータコア14の内周面14dとの間の隙間に形成した。このため、内燃機関2(
図1参照)に供給する燃料をステータコア14の外周面14cに流さないようにできる。これにより、ステータコア14の外周面14cにおいて電極当接痕Tに発生した錆が、内燃機関2に供給される燃料に混入することを防止できる。
【0049】
また、ハウジングケース6を、径方向の寸法においてステータコア14の外周面14cより大きく形成した。ステータコア14の外周面14cには錫メッキ被膜Cが形成されている。よって、例えば、ハウジングケース6にステータ10を収納する際に、ハウジングケース6の内周がステータコア14の錫メッキ被膜Cに接触することを防止できる。これにより、ハウジングケース6の内周が錫メッキ被膜Cに接触して、錫メッキ被膜Cがステータコア14の外周面14cから剥がれることを防止できる。
【0050】
さらに、ハウジングケース6を径方向の寸法においてステータコア14の外周面14cより大きく形成することにより、ステータコア14の外周面14cとハウジングケース6のケース本体50との間に空間Sが形成されている。よって、ステータコア14の外周面14cにおいて電極当接痕Tに発生した錆を空間Sに逃がすことができる。これにより、電極当接痕Tに発生した錆が電磁鋼板15間の隙間に入り込むことを防止できる。
【0051】
また、
図2、
図6に示すように、実施形態における燃料ポンプ1の製造方法によれば、積層工程、巻回工程、及び成形工程の後工程でメッキ工程を実施するようにした。このメッキ工程において、ステータコア14の外周面14cと内周面14dとに錫メッキ被膜Cを形成するようにした。具体的には、メッキ工程において、ステータコア14の外周面14cに図示しない電極を当接し、電解メッキを施すことによりステータコア14の外周面14cと内周面14dとに錫メッキ被膜Cを形成するようにした。
【0052】
ところで、ステータコア14の外周面14c及び内周面14dに錫メッキ被膜Cを形成する場合、例えば、ステータコア14の単体にメッキ処理を施すことも可能である。しかし、この場合、積層された複数の電磁鋼板15の間に隙間が生じる場合があり、複数の電磁鋼板15間にメッキ液が残留することがある。このため、ステータコア14の外周面14cや内周面14dに錫メッキ被膜Cのムラや錆等が発生することがある。また、電磁鋼板15間にメッキ被膜が形成されて鉄損となり、モータ性能の低下を引き起こすおそれがある。メッキムラや錆等の発生、さらに鉄損によるモータ性能の低下を抑えるためには、メッキ被膜の種類や条件の管理が重要になり、この観点から改良の余地が残されていた。
【0053】
また、ステータコア14の単体において、ステータコア14の外周面14c及び内周面14dに錫メッキ被膜Cを形成する場合、錫メッキ被膜Cを形成したステータコア14に複数のコイル17(
図2参照)を巻回する。さらに、複数のコイル17を巻回した後、ステータコア14に金型でモータカバー18やアウトレットカバー4をモールド成形する。
ここで、ステータコア14にモータカバー18やアウトレットカバー4をモールド成形する金型は、成形品に対する寸法精度が厳しく設定されている。このため、ステータコア14の外周面14c及び内周面14dに錫メッキ被膜Cが安定して形成されていない場合、金型に対するステータコア14のセット性が悪化したり、ステータコア14から錫メッキ被膜Cが剥がれたりするおそれがある。
【0054】
そこで、ステータコア14にモータカバー18やアウトレットカバー4をモールド成形した2次成形品Mo2において、ステータコア14に電解メッキを施し、ステータコア14の外周面14c及び内周面14dに錫メッキ被膜Cを形成するようにした。2次成形品Mo2を形成する前段階では、ステータコア14のティース14aにインシュレータ16を介して複数のコイル17(
図2参照)が巻回される。これにより、軸線O方向において、複数の電磁鋼板15間の隙間が小さく確保されている。この状態で、1次成形品Mo1によって、複数の電磁鋼板15をモータカバー18で軸線O方向に積層させた状態に支持する。これにより、軸線O方向において、複数の電磁鋼板15間の隙間がより小さく確保されている。
【0055】
このため、2次成形品Mo2では、ステータコア14の複数の電磁鋼板15が密接している。したがって、複数の電磁鋼板15の間の隙間はほぼ生じていない。この結果、複数の電磁鋼板15間の隙間にメッキ液が浸入することを抑制ができ、メッキ被膜が必要なステータコア14の外周面14c及び内周面14dのみに錫メッキ被膜Cを形成することができる。複数の電磁鋼板15間にメッキ液が残留することもなく、錫メッキ被膜Cのムラを防止できる。そして、ステータコア14の外周面14c及び内周面14dに安定した錫メッキ被膜Cを形成することができる。電磁鋼板15間にメッキ被膜が形成されて鉄損となり、モータ性能が低下してしまうことを防止できる。また、電解メッキの種類や条件の管理を容易にでき、生産工程を簡略化できる。さらに、金型に対するセット性の悪化や錫メッキ被膜Cの剥がれを抑制できる。
【0056】
さらに、インシュレータ16、モータカバー18、及びアウトレットカバー4は、樹脂として、例えば、PPS、POM、あるいはPA66を使用して形成される。PPS、POM、PA66は、ステータコア14に電解メッキを施す前処理に必要な洗浄工程に対して耐薬品性を有している。このため、2次成形品Mo2において、ステータコア14の外周面14c及び内周面14dに錫メッキ被膜Cを形成することにより、インシュレータ16、モータカバー18、及びアウトレットカバー4の品質等に影響を与えてしまうことを防止できる。
【0057】
加えて、複数のコイル17(
図2参照)は、インシュレータ16やモータカバー18等によりオーバーモールド成形されている。このため、ステータコア14に電解メッキを施す前処理に必要な洗浄工程において、洗浄に使用する洗浄液から複数のコイル17をインシュレータ16やモータカバー18等で保護できる。これにより、2次成形品Mo2に電解メッキを施し、ステータコア14の外周面14c及び内周面14dに錫メッキ被膜Cを形成することにより、複数のコイル17の品質等に影響を与えてしまうことを防止できる。
【0058】
本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
【0059】
例えば上述の実施形態では、液体ポンプの一例として燃料ポンプ1について説明した。燃料ポンプ1は、例えば、自動車や自動二輪車等の車両の燃料タンクの内部において燃料に浸漬されて配置されるインタンク式である場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、さまざまな装置に燃料を供給する燃料ポンプに上述の構成を採用できる。さらに、燃料に限らず、さまざまな液体を汲み上げるさまざまな液体ポンプに上述の構成を採用できる。
【0060】
上述の実施形態では、ステータコア14の露出部E(外周面14c、内周面14d)に電解メッキを施して錫メッキ被膜Cを形成した場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、錫メッキ被膜Cに代えて電解メッキを施して形成されるさまざまなメッキ被膜をステータコア14の露出部Eに形成してよい。
【0061】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…燃料ポンプ(液体ポンプ)、2…内燃機関、4…アウトレットカバー、4a…外周、4b…吐出ポート、4c…カバー段部、6…ハウジングケース、10…ステータ、12…ロータ、14…ステータコア、14a…ティース、14b…スロット、14c…外周面(露出部)、14d…内周面(露出部)、15…電磁鋼板、16…インシュレータ、17…コイル、18…モータカバー、18a…一端部、18b…外周面、18c…他端部、21…端子、25…ロータコア、25a…外周面、26…出力軸、26a…一端部、26b…他端部、28…軸受、30…流路、40…インペラ、40a…外周、41…ポンプケース、41a…外周、42…第1ケース部、43…第2ケース部、43a…吸入管、43b…ケース段部、50…ケース本体(請求項における筒部の一例)、50…ケース本体、50a…一端部、50b…他端部、51…加締め部、52…フランジ、C…錫メッキ被膜、E…露出部、Mo1…1次成形品、Mo2…2次成形品、O…軸線、T…電極当接痕