(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021839
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】包装袋からの内容物の取り出し方法
(51)【国際特許分類】
B65D 77/30 20060101AFI20250206BHJP
B65D 33/00 20060101ALI20250206BHJP
B65D 75/62 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
B65D77/30 C
B65D33/00 C
B65D75/62 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125843
(22)【出願日】2023-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】木村 和人
【テーマコード(参考)】
3E064
3E067
【Fターム(参考)】
3E064AA09
3E064BA26
3E064BA36
3E064BB03
3E064BC08
3E064BC18
3E064EA30
3E064FA05
3E064HM03
3E064HN05
3E064HP01
3E067AA04
3E067AA11
3E067AB01
3E067BA12A
3E067BB15A
3E067BB25A
3E067CA04
3E067CA24
3E067CA30
3E067EA06
3E067EB07
3E067EE59
3E067FA01
3E067FC01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】包装袋にくっつきやすい内容物を取り出しやすくする取り出し方法を提供する。
【解決手段】包装袋1は、フィルムに縦シール部7を形成して構成された筒体3と、上側横シール部4と、下側横シール部5を備え、前記縦シール部は、前記フィルムを筒状に湾曲させて前記フィルムの一縁側の内面と他縁側の内面を重ね合わせて形成した合掌部8において前記フィルム同士を溶着することによって形成され、前記上側横シール部は、前記筒体の上側を閉塞させるように設けられ、前記下側横シール部は、前記筒体の下側を閉塞させるように設けられ、前記包装袋は、前記合掌部とそれ以外の本体部9で構成され、開口部形成工程では、前記合掌部での引裂開始位置6aから開始した引き裂きが前記上側横シール部に到達するように前記本体部を引き裂くことによって開口部を形成する
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装袋からの内容物の取り出し方法であって、
開口部形成工程と、絞り出し工程を備え、
前記包装袋内には、前記内容物が収容されており、
前記包装袋は、フィルムに縦シール部を形成して構成された筒体と、上側横シール部と、下側横シール部を備え、
前記縦シール部は、前記フィルムを筒状に湾曲させて前記フィルムの一縁側の内面と他縁側の内面を重ね合わせて形成した合掌部において前記フィルム同士を溶着することによって形成され、
前記上側横シール部は、前記筒体の上側を閉塞させるように設けられ、
前記下側横シール部は、前記筒体の下側を閉塞させるように設けられ、
前記包装袋は、前記合掌部とそれ以外の本体部で構成され、
前記開口部形成工程では、前記合掌部での引裂開始位置から開始した引き裂きが前記上側横シール部に到達するように前記本体部を引き裂くことによって開口部を形成し、
前記絞り出し工程では、前記包装袋のうち、前記引裂開始位置よりも前記下側横シール部に近い下側部位を圧縮して、前記開口部を通じて前記内容物を絞り出す、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記包装袋の上下方向の長さをLとし、前記上側横シール部の内縁から前記引裂開始位置までの、前記上下方向の長さをL1とすると、L1/Lは、0~0.2である、方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の方法であって、
前記包装袋は、前記合掌部に引裂開始部を備え、
前記引裂開始位置は、前記引裂開始部が設けられた位置である、方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の方法であって、
前記内容物は、粘度が1~1000Pa・sである、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装袋からの内容物の取り出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、合掌部に設けた引裂開始部で引き裂きが開始され、その引き裂きが本体部に到達した後に、本体部では、引き裂きが合掌部を挟んで両側に斜め方向に広がった状態で、縦シール部の長手方向に引き裂きが進行する包装袋が開示されている。このような包装袋では、引き裂きによって広い開口部を形成可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の包装袋では、縦シール部に沿って広い開口部を容易に形成することができ、この開口部を通じて内容物を重力で落下させて、包装袋から容易に取り出すことができるという利点がある。
【0005】
このような方法で取り出される内容物としては、フラワーペーストが挙げられるが、フラワーペーストの中には、粘度が低いものがあり、このようなフラワーペーストは、包装袋にくっついて、包装袋から離れにくい場合がある。このようなフラワーペーストは、開口部を通じてフラワーペーストを重力で落下させて取り出そうとしても、フラワーペーストがなかなか落下しなかったり、落下してもフラワーペーストの一部が包装袋にくっついたままになっており、結局、へらなどを用いてこすり取る必要があったりする。このような問題は、フラワーペースト以外でも、包装袋にくっつきやすい任意の内容物で起こりうる。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、包装袋にくっつきやすい内容物を取り出しやすい、内容物の取り出し方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]包装袋からの内容物の取り出し方法であって、開口部形成工程と、絞り出し工程を備え、前記包装袋内には、前記内容物が収容されており、前記包装袋は、フィルムに縦シール部を形成して構成された筒体と、上側横シール部と、下側横シール部を備え、前記縦シール部は、前記フィルムを筒状に湾曲させて前記フィルムの一縁側の内面と他縁側の内面を重ね合わせて形成した合掌部において前記フィルム同士を溶着することによって形成され、前記上側横シール部は、前記筒体の上側を閉塞させるように設けられ、前記下側横シール部は、前記筒体の下側を閉塞させるように設けられ、前記包装袋は、前記合掌部とそれ以外の本体部で構成され、前記開口部形成工程では、前記合掌部での引裂開始位置から開始した引き裂きが前記上側横シール部に到達するように前記本体部を引き裂くことによって開口部を形成し、前記絞り出し工程では、前記包装袋のうち、前記引裂開始位置よりも前記下側横シール部に近い下側部位を圧縮して、前記開口部を通じて前記内容物を絞り出す、方法。
[2][1]に記載の方法であって、前記包装袋の上下方向の長さをLとし、前記上側横シール部の内縁から前記引裂開始位置までの、前記上下方向の長さをL1とすると、L1/Lは、0~0.2である、方法。
[3][1]又は[2]に記載の方法であって、前記包装袋は、前記合掌部に引裂開始部を備え、前記引裂開始位置は、前記引裂開始部が設けられた位置である、方法。
[4][1]~[3]の何れか1つに記載の方法であって、前記内容物は、粘度が1~1000Pa・sである、方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法によれば、包装袋に開口部を形成し、包装袋を圧縮することによって内容物を絞り出すことによって、包装袋から内容物を取り出すことができる。重力の作用によって内容物を取り出すのではないので、内容物が包装袋にくっつきやすい場合でも、比較的容易に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】内容物が入っていない状態の包装袋1の平面図である。
【
図2】内容物が入った状態の包装袋1の斜視図である。
【
図3】
図3Aは、包装袋1内に内容物が充填された状態での、縦シール部7の長手方向D1の中央での、長手方向D1に垂直な断面の断面図であり、
図3Bは、
図3A中の領域Bの拡大図である。
【
図4】
図4Aは、引裂開始部6から合掌部8の引き裂きを開始したときに合掌部8及び本体部9が引き裂かれるラインを示す斜視図であり、
図4Bは、
図4A中の領域Bの拡大図である。
【
図5】本体部9の引き裂きが上側横シール部4にまで到達して開口部1bが形成された後の状態を示す斜視図である。
【
図6】開口部1bから内容物Wを絞り出す状態を示す斜視図である。
【
図8】製袋充填機100の横シール機116近傍の拡大図であり、横シール機116で横シール部11を形成している状態を示す。
【
図9】
図8の状態から、横シール機116が開き、シャッター部材123が初期位置に戻り、横シール部11がプレス兼カッター118の位置に移動した後に、プレス兼カッター118で横シール部11を挟持して、横シール部11を切断し、その後に、プレス兼カッター118及びしごきロール115が開いた後の状態を示す。
【
図10】
図9の状態から、内容物Wをさらに投入した後にしごきロール115が閉じ、その後に、密着部3aがシャッター部材123の位置に移動した後の状態を示す。
【
図11】
図10の状態から、シャッター部材123が密着部3aを挟み込み、その状態で垂直方向下方へ移動した後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0011】
1.包装袋1
図1~
図4に示すように、本発明の一実施形態の包装袋1は、フィルム2に縦シール部7を形成して構成された筒体3と、上側横シール部4と、下側横シール部5と、引裂開始部6を備える。包装袋1内には、通常、内容物が充填されているが、
図1では、便宜上、内容物が充填されていない状態の包装袋1を示している。内容物の例としては、フラワーペースト、ジャム、餡等の粘稠性食品が挙げられる。内容物の粘度は、1~1000Pa・sであることが好ましい。この場合、内容物が包装袋1にくっつきやすくて重力の作用によって内容物を包装袋1から取り出しにくいので、本発明を適用する意義が顕著である。本明細書において、粘度は、23℃でJIS Z8803に準拠して測定した値を意味する。この粘度は、10~500Pa・sが好ましく、20~100Pa・sがさらに好ましい。この粘度は、具体的には例えば、1、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000Pa・sであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲であってもよい。
【0012】
以下、
図1の上下左右を包装袋1の上下左右として説明を進める。具体的には、筒体3の軸方向が上下方向である。縦シール部7を手前側に配置したときの左右が包装袋1の左右である。また、縦シール部7側の面を前面とし、その対向する面を背面とする。上下方向は、縦シール部7の長手方向D1であり、左右方向は、長手方向D1に直交する直交方向D2である。
【0013】
包装袋1の左右方向の長さは、例えば、140~300mmであり、160~260mmが好ましい。この長さは、具体的には例えば、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。この値が小さすぎると、製袋充填の際に内容物が包装袋1の内面に付着してしまって充填しにくくなる場合がある。この問題は、内容物の粘稠性が高い場合に顕著である。[包装袋1の上下方向の長さ/包装袋1の左右方向の長さ]の値は、例えば、1.5~15であり、3~10が好ましい。この値は、具体的には例えば、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0014】
図3に示すように、縦シール部7は、フィルム2を筒状に湾曲させてフィルム2の一縁2a側の内面と他縁2b側の内面を重ね合わせて形成した合掌部8においてフィルム2同士を溶着することによって形成される。縦シール部7は、合掌部8の全体に形成してもよく、合掌部8の一部に未シール部8aを設けてもよい。未シール部8aは、合掌部8の縁8bを含むように設けることが好ましい。包装袋1のうち合掌部8以外の部位が本体部9である。本体部9は袋状である。
【0015】
合掌部8は、寝かされた状態になっていることが好ましい。合掌部8の本体部9側の面は、本体部9の外面に溶着されていてもいなくてもよい。
【0016】
合掌部8及び縦シール部7の左右方向の長さは、それぞれ、例えば5~50mmであり、10~30mmが好ましい。この長さは、具体的には例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。{縦シール部7の左右方向の長さ/合掌部8の左右方向の長さ}の値は、例えば0.2~1.0であり、0.5~1.0が好ましい。この値は、具体的には例えば、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0017】
上側横シール部4及び下側横シール部5は、それぞれ、筒体3の上側及び下側を閉塞させるように設けられる。横シール部4,5は、それぞれ、筒体3の上端及び下端に沿って形成することが好ましい。横シール部4,5は、縦シール部7に直交するように形成することが好ましい。横シール部4,5は、それぞれ、筒体3をヒートシールすることによって形成することができる。
【0018】
横シール部4,5は、一例では、上下方向に並ぶ複数の線状シール部(
図1の点線で示す部位)4a,5aで構成される。各線状シール部4a,5aは、横シール部4,5の左右方向に延びるように設けられる。複数の線状シール部4a,5aは、平行に配置されることが好ましい。線状シール部4a,5aを設けるピッチは、2~5mmであることが好ましい。このピッチは、具体的には例えば、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0019】
合掌部8には、引裂開始部6が設けられていることが好ましい。引裂開始部6は、合掌部8の引き裂きを容易にするように構成された部位であり、例えば切り欠きや切り込みによって構成される。引裂開始部6を設けることによって、はさみなどの道具を用いることなく、合掌部8の引き裂きを開始することが容易になる。引裂開始部6は、合掌部8の縁8bから縦シール部7に到達するように設けることが好ましい。{引裂開始部6の左右方向の長さ/合掌部8の左右方向の長さ}は、例えば0.1~0.9であり、0.3~0.7が好ましい。この値は、具体的には例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0020】
包装袋1の上下方向の長さをLとし、上側横シール部4の内縁4bから引裂開始部6までの前記上下方向の長さをL1とすると、L1/Lは、0~0.2であることが好ましい。また、L1は、例えば0~50mmであり、1~30mmであることが好ましい。これらの値が大きすぎると、後述の開口部形成工程で開口部1bを形成する際に、引裂開始部6よりも上側横シール部4側に配置される内容物の量が多くなりすぎて、内容物が意図せずに包装袋1から脱落して無駄にしてしまったりしやすくなる。L1/Lは、具体的には例えば、0、0.001、0.01、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲であってもよい。L1は、具体的には例えば、0、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲であってもよい。
【0021】
包装袋1の横シール部4,5に近い部位では、包装袋1が膨らみにくいために、包装袋1が扁平な形状になり、包装袋1の転がし搬送を阻害する。この傾向は、横シール部4,5の内縁の両端に、外側に向かって凸となる湾曲部が設けられていなかったり、湾曲部が設けられていても、その左右方向の長さが小さかったりする場合に特に顕著になる。
【0022】
そこで、本実施形態では、横シール部4,5の内縁の両端に外側に向かって凸となる左湾曲部4l,5l及び右湾曲部4r,5rを設けている。また、横シール部4,5の左右方向の長さをWsとし、左湾曲部4l,5l及び右湾曲部4r,5rの左右方向の長さをWl,Wrとすると、Wr/Ws及びWl/Wsを、それぞれ、0.1~0.4としている。このような湾曲部を形成することで、
図2に示すように、横シール部4,5の近傍においても包装袋1が膨らみやすくなり、その外形が略円柱になるので、包装袋1の転がし搬送がスムーズになる。WrとWlは同じであることが好ましいが、互いに異なっていてもよい。Wr/Ws及びWl/Wsは、具体的には例えば、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。Wsは、包装袋1の左右方向の長さと同様である。Wl,Wrは、例えば10~100mmであり、20~50mmが好ましい。Wl,Wrは、具体的には例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0023】
また、左湾曲部4l,5l及び右湾曲部4r,5rは円弧状であることが好ましく、その曲率半径をRl,Rrとすると、Rl/Ws及びRr/Wsは、それぞれ、0.1~0.4であることが好ましい。Rl/Ws及びRr/Wsは、具体的には例えば、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。Rl,Rrは、例えば20~60mmであり、30~50mmが好ましい。Rl,Rrは、具体的には例えば、具体的には例えば、20、25、30、35、40、45、50、55、60mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0024】
内容物が充填された包装袋1は、略楕円筒状である。
図3に示すように、包装袋1内に内容物が充填された状態での、縦シール部7の長手方向D1の中央での、長手方向D1に垂直な断面での真円度が0.5以上であることが好ましい。真円度の値が大きいほど、断面形状が円に近いことを意味する。前記断面での内接円径及び外接円形をそれぞれ、D1及びD2とすると、本明細書では、真円度は、D1/D2で定義される。D1/D2は、例えば0.5~1.0であり、具体的には例えば、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0025】
引裂開始部6は、左湾曲部4lと右湾曲部4rの間に設けることが好ましい。この場合、後述の開口部形成工程で開口部1bを大きく形成しやすい。
【0026】
フィルム2は、基材層とシーラント層を有する積層フィルムであることが好ましく、基材層とシーラント層の間に接着層を備えることがさらに好ましい。
【0027】
基材層は、包装袋1の外表面に露出するように配置され、シーラント層は、包装袋1の内表面に露出するように配置される。シーラント層同士がヒートシールされることによって、縦シール部7及び横シール部4,5が形成される。
【0028】
基材層は、強度に優れて高い耐衝撃性を有する素材により形成されている。基材層としては、例えば、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエチレン等が用いられる。接着層は、基材層とシーラント層を互いに積層するように接着するための層であり、接着層としては、例えば、ポリエチレン等が用いられる。
【0029】
基材層のポリアミドは、芳香族ポリアミドを含むものが好ましい。この場合、基材層がMD方向の直線カット性を有し、かつバリア性に優れるからである。芳香族ポリアミドとしては、特に制限はないが、キシリレンジアミンと炭素数が6~12のα,ω脂肪族ジカルボン酸とからなるポリアミド構成単位を分子鎖中に70モル%以上含有している樹脂等が使用できる。具体的には、ポリメタキシリレンアジパミド、ポリメタキシリレンピメラミド、ポリメタキシリレンアゼラミド、ポリパラキシリレンアゼラミド、ポリパラキシリレンデカナミドなどの単独重合体、メタキシリレン/パラキシリレンアジパミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンピメラミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンアゼラミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンセパカミド共重合体などの共重合体が挙げられるが、ポリメタキシリレンアジパミド(以下、「MXD6」という)が強度やガスバリア性等の基本特性に優れ、工業的にも比較的入手しやすい点から好ましい。
【0030】
シーラント層は、ヒートシール性に優れた樹脂で形成可能である。シーラント層としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレンで形成することができる。シーラント層を構成するフィルムとしては、MD方向の直線カット性を有するものが好ましい。
【0031】
また、基材層とシーラント層の少なくとも一方が直線カット性を有することが好ましい。シーラント層の厚さは、基材層の厚さの2倍以上であることが好ましく、フィルム2全体の厚さの半分以上であることが好ましい。
【0032】
フィルム2は、厚さ10μm~20μm、例えば15μmの基材層と、厚さ10μm~30μm、例えば20μmの接着層と、厚さ30μm~50μm、例えば40μmのシーラント層を積層して形成することができ、フィルム2として、通常は50μm~100μmの厚さを有する。
【0033】
また、基材層とシーラント層とは、接着層により互いに積層するように接着されているが、例えば、接着層としてポリエチレンを使用し、押し出しラミネート法を用いて基材層とシーラント層とを互いに接着することができる。また、接着層としてポリエチレン以外の材料を使用し、ドライラミネート法を用いて基材層とシーラント層とを互いに接着することもできる。あるいは、接着層を用いない融着を利用することもできる。このようにして、基材層、接着層、シーラント層から形成されるフィルム2は、高い強度、耐衝撃性、密封性、防気性等を有している。
【0034】
フィルム2は、長手方向D1の引裂強さである第1引裂強さをS1とし、直交方向D2の引裂強さである第2引裂強さをS2とすると、S2/S1は、好ましくは1.5~10であり、さらに好ましくは2~6である。引裂強さは、JIS K7128に従って測定することができる。引裂強さとは、フィルム2の引き裂きに必要な力の大きさを示す指標であり、引裂強さの値が大きいほど、フィルム2が引き裂きにくいことを意味する。S2/S1は、長手方向D1に比べて直交方向D2がどの程度引き裂きにくいのかを示す指標であり、この値が大きいほど、フィルム2が長手方向D1に引き裂きやすいことを意味する。そして、S2/S1の値によって、引裂開始位置6aからフィルム2の引き裂きを開始した場合に、フィルム2がどのように引き裂かれるのかが影響され、S2/S1が上記数値の範囲内である場合、幅広の開口部1bが形成されやすい。S2/S1は、具体的には例えば、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0035】
2.包装袋1からの内容物の取り出し方法
本発明の一実施形態の包装袋1からの内容物の取り出し方法は、開口部形成工程と、絞り出し工程を備える。以下、各工程について詳細に説明する。
【0036】
<開口部形成工程>
開口部形成工程では、
図4~
図5に示すように、合掌部8での引裂開始位置6aから開始した引き裂きが上側横シール部4に到達するように本体部9を引き裂くことによって開口部1bを形成する。
【0037】
引裂開始位置6aは、引き裂きを開始する位置であり、合掌部8に引裂開始部6が設けられている場合には、引裂開始部6が設けられた位置を引裂開始位置6aとすることが好ましい。合掌部8に引裂開始部6が設けられていない場合、例えば、はさみなどの道具を用いて合掌部8に切り込みを形成し、その切り込みを引裂開始位置6aとしてもよい。
【0038】
一例では、
図4に示すように、引裂開始位置6aの近傍において合掌部8を立てた状態にし、合掌部8のうち、引裂開始位置6aの両側のそれぞれの部位8c,8dを両手でつまんで、上側横シール部4側の部位8cを上側横シール部4に向かって強く引っ張ると、まずは、
図1及び
図4Bの一点鎖線12に示すように、合掌部8が引き裂かれ、その後、引き裂きが本体部9に到達すると、一点鎖線13,14に示すように、引き裂きが合掌部8を挟んで両側に斜め方向に広がりながら、上側横シール部4に到達するまで引き裂きが進行する。このため、一点鎖線13,14の間の中間領域15に幅広の開口部1bが形成され、この開口部1bを通じて、包装袋1内の内容物を容易に絞り出すことができる。一点鎖線13,14は、合掌部8と本体部9の境界線8eに対して対称であることが好ましい。開口部1bの形成後も、中間領域15は、上側横シール部4につながったままになっていて、包装袋1の残りの部位から分離されないので、中間領域15が異物として内容物Wに混入することを避けることができる。また、上側横シール部4から引き裂きを開始すると、フィルム片が発生しやすかったり、湾曲部4l,4rがあるために引き裂きを行いにくかったりするが、本実施形態の方法によれば、フィルム片の発生が抑制され、かつ湾曲部4l,4rによって引き裂きを行いにくくなることがない。
【0039】
中間領域15の幅が最大になる部位での幅をWcとすると、Wc/Wsは、例えば、0.3~1.0であり、0.4~0.8が好ましく、具体的には例えば、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。この値が小さすぎると内容物が取り出しにくい。
【0040】
本体部9の引き裂きは、上側横シール部4に到達したところで止めてもよく、上側横シール部4に到達した後に、上側横シール部4の内縁4bに沿って引き裂きを進行させて開口部1bを広げるようにしてもよい。
【0041】
開口部形成工程は、絞り出し工程の前に完了していてもよく、絞り出し工程中に完了してもよい。後者の場合、例えば、絞り出し工程の前には開口部1bが形成されているものの本体部9の引き裂きが上側横シール部4に到達していない状態になっており、絞り出し工程において開口部1bを通じて内容物を絞り出す際に本体部9の引き裂きが進行して上側横シール部4に到達するようにしてもよい。
【0042】
<絞り出し工程>
絞り出し工程では、
図6に示すように、包装袋1のうち、引裂開始位置6aよりも下側横シール部5に近い下側部位1cを圧縮して、開口部1bを通じて内容物Wを絞り出す。この工程は、例えば、下側部位1cを握った手を下側横シール部5から開口部1bの方向に向かって移動させることによって行うことができる。また、この工程を複数回繰り返すことによって、包装袋1内に残留する内容物の量を低減することができる。
【0043】
3.製袋充填方法
次に、
図7~
図11を用いて、フィルム2を用いた製袋充填方法について説明する。この方法は、縦型の製袋充填機100を用いて実施可能である。
【0044】
<S1:フィルム湾曲工程>
まず、ロール状原反Fから繰り出されたフィルム2は、複数の繰り出しロール120、121を経てフォーマ112に導かれる。ロール状原反Fからフォーマ112までの経路途中にはセンサ119が配されており、フィルム2に長さ方向において一定間隔で印刷されたレジマークを検知して、製袋充填機100の軌道上に一定の長さのフィルム2を一定の時間間隔で送り出せるようになっている。フィルム2は、フォーマ112を通過する間に筒状に湾曲されて、フィルム2の一縁2a側の内面と他縁2b側の内面が重ね合わされて合掌部8が形成される。
【0045】
なお、フォーマ112の手前の位置で、フィルム2に印字を行う印字工程を備えてもよい。この印字は、包装袋1の前面(縦シール部7側の面)となる領域に行うことが好ましい。この場合、後述する切断工程でコンベア130上に落下した包装袋1を、縦シール部7が上側になるようにした状態で搬送する際に、印字が適切になされているかどうかを確認することができる。
【0046】
<S2:縦シール工程>
次に、縦シール機113によるヒートシールによって、縦シール部7を形成する。縦シール機113は、一対のシールロールを備え、フィルム2が一定の時間間隔で移動するタイミングに合わせて、フィルム2の合掌部8を一対のシールロールで挟持しながら一対のシールロールを互いに逆方向に回転させることでフィルム2を送り出しながらヒートシールを行う。これによって、縦シール部7が形成される。フィルム2に縦シール部7を形成することによって、筒体3が形成される。合掌部8には、縦シール機113の下流に配置されたカッター131を用いて、引裂開始部6を形成することができる。引裂開始部6は、製袋充填の完了後に形成してもよい。
【0047】
<S3:横シール工程>
次に、送りロール114を回転させることで、筒体3を所定の長さだけ下流に移動させ、
図8に示すように、筒体3の所定位置を横シール機116にてヒートシールし、横シール部11を形成する。横シール部11は、下流側の包装袋1の上側横シール部4と上流側の筒体3の下側横シール部5が繋がって構成されており、後述する切断工程において上下に分割される。横シール機116は、一対のシールバー116aを備え、上記所定位置を一対のシールバー116aで所定時間挟持することでヒートシールを行う。
【0048】
シールバー116aは、一例では、
図1の左右方向に延びる凸条と凹条が上下方向に交互に並ぶ形状を有する。この場合、凸条が押圧された部位において、線状シール部(
図1の点線で示す部位)4a,5aが形成される。
【0049】
<S4:切断工程>
次に、送りロール114をさらに回転させることで、横シール部11をプレス兼カッター118の位置に移動させる。プレス兼カッター118は、一対のバー118aを備える。
【0050】
次に、
図9に示すように、プレス兼カッター118を閉じて横シール部11を挟圧して冷却するとともに、カッター刃(不図示)で横シール部11を切断して上下に分割することによって、下流側の包装袋1の上側横シール部と、上流側の筒体3の下側横シール部5を形成する。下流側の包装袋1は、横シール部11を切断すると、コンベア130上へ落下する。
【0051】
<S5:充填工程>
次に、
図9に示すように、以前の工程で閉じた状態になっているしごきロール115を開くと、以前の工程でホッパ111から投入されてしごきロール115の上側に溜まっている内容物Wがしごきロール115の下側に落下する。筒体3には下側横シール部5が形成されているので、落下した内容物Wは、筒体3内に充填される。筒体3の周囲には、1対のシャッター部材123が配置されている。シャッター部材123は、水平方向および垂直方向に移動可能に構成されている。
【0052】
内容物Wをさらに筒体3内に投入し、筒体3内の内容物Wがセンサ122の位置にまで到達すると、
図10に示すように、しごきロール115を閉じることによって、内容物Wをしごきロール115の上側部分と下側部分に分断する。しごきロール115の下側部分の内容物が包装袋1の一袋分の内容物である。また、しごきロール115を閉じることによって筒体3に密着部3aが形成され、密着部3aと下側横シール部5の間に内容物が収容された部分である袋部3bが形成される。
【0053】
<S6:送り工程>
次に、しごきロール115を閉じたまま、送りロール114を回転させることで、
図10に示すように、密着部3aをシャッター部材123の位置にまで移動させる。
【0054】
<S7:挟み込み工程>
次に、
図11に示すように、シャッター部材123を水平方向に移動させて袋部3bの上方の密着部3aを挟みこみ、さらに、シャッター部材123を鉛直方向下方へ移動させる(
図11における矢印参照)ことで、袋部3bに対して張りを持たせることができる。ここで、シャッター部材123は、横シール機116よりも下方まで移動させることが好ましい。このようにすることで、袋部3bに持たせた張りを維持したまま、横シールを行うことが可能となる。
【0055】
その後、シャッター部材123を袋部3bの上方に維持したまま横シール工程(S3)を実施することで、内容物Wが充填された部位(袋部3b)よりも高い位置(密着部3a)において、袋部3bに張りを持たせたまま横シール部11を形成することができ、包装袋1が形成される。
【0056】
そして、
図9に示すように、シャッター部材123をもとの位置に戻し、後続の切断工程(S4)を行う。これにより、
図9に示すように、包装袋1がコンベア130上へ落下する。
【0057】
このようにして、S3~S7の工程を繰り返すことによって、内容物Wが充填された包装袋1を連続的に製造することができる。なお、本実施形態における包装袋1の製造において、熱処理工程は行わない。
【0058】
以上のようにして、本実施形態における製袋充填方法では、筒体3に対して上述した挟みこみ工程を行うことによって包装袋1に必要な張りを持たせている。
【実施例0059】
1.包装袋1の製造
以下の構成のフィルム2を用いて、上記実施形態の製袋充填方法に従って、
図1~
図4に示す構成及び以下に示す寸法の包装袋1を製造した。包装袋1内にはフラワーペースト(23℃で測定した粘度:50Pa・s)を充填した。フィルム2のS2/S1は、約3.3であった。
【0060】
・フィルム2(基材層/接着層/シーラント層で構成される3層ラミネートフィルム)
基材層:ポリアミド(ユニチカ株式会製、エンブレムNC-15、厚さ15μm)
接着層:無水マレイン酸変性ポリエチレン、厚さ5μm
シーラント層:LLDPE(スカイフィルム株式、HR543、厚さ50μm)
【0061】
・包装袋1
包装袋1の左右方向の長さ:200mm
包装袋1の上下方向の長さ:600mm
合掌部8の左右方向の長さ:20mm
縦シール部7の左右方向の長さ:10mm
開封開始部(切り込み)の左右方向の長さ:15mm
上側横シール部4の内縁4bから引裂開始部6までの上下方向の長さ:5mm
【0062】
2.内容物の取り出し試験
上述の方法で製造した、内容物Wが充填された包装袋1から、以下の実施例1及び比較例1に示す方法で内容物の取り出しを行い、包装袋1に残留した内容物Wの量を測定した。その結果、実施例1では、比較例1に比べて、包装袋1内の内容物Wの残量を低減できたことが分かった。比較例1においてもヘラなどで内容物Wをこすり取れば、内容物Wの残量を低減させることができるがそれには手間と時間がかかる。一方、本発明の実施例の方法によれば、手間と時間をかけることなく、内容物Wの残量を少なくすることができる。
【0063】
<実施例1>
図4~
図5に示すように、引裂開始部6の両側を両手でつまんで、上側横シール部4側の部位8cを上側横シール部4に向かって強く引っ張って本体部9を引き裂くことによって、引裂開始部6と上側横シール部4の間に開口部1bを形成した。
【0064】
次に、
図6に示すように、下側部位1cを握った手を、下側横シール部5の近傍から開口部1bに向かって移動させることによって、開口部1bから内容物Wを絞り出す工程を5回繰り返した。その後に、包装袋1内の内容物Wの残量を測定したところ、残量は、内容物Wの元々の量の1質量%以下であった。
【0065】
<比較例1>
引裂開始部6の両側を両手でつまんで、下側横シール部5側の部位を強く引っ張って本体部9を引き裂くことによって、引裂開始部6と下側横シール部5の間に開口部1bを形成した。
【0066】
次に、開口部1bを下向きにした状態で、包装袋1を軽く振動させることによって開口部1bを通じて内容物Wを落下させることを試みた。
【0067】
その結果、内容物Wの大部分は落下したものの、内容物Wの一部が包装袋1に付着した状態となり、残量は、内容物の元々の量の10質量%であった。