(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021869
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】X線検査システム、破袋システムおよび破砕システム
(51)【国際特許分類】
G01N 23/10 20180101AFI20250206BHJP
G01N 23/04 20180101ALI20250206BHJP
B09B 3/35 20220101ALI20250206BHJP
【FI】
G01N23/10
G01N23/04
B09B3/35
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125893
(22)【出願日】2023-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】522442294
【氏名又は名称】大谷清運株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】594121408
【氏名又は名称】オクト産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124017
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 晃秀
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】二木 玲子
(72)【発明者】
【氏名】羽田 裕美子
(72)【発明者】
【氏名】羽田 寿洋
(72)【発明者】
【氏名】安達 良平
(72)【発明者】
【氏名】小澤 達郎
【テーマコード(参考)】
2G001
4D004
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001AA10
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA06
2G001DA08
2G001HA13
2G001KA06
2G001LA09
2G001PA03
2G001PA06
2G001PA11
2G001SA14
4D004AA22
4D004AA23
4D004AB03
4D004AC04
4D004CA04
(57)【要約】
【課題】本発明によれば、検査室の高さに制限があっても、物品集合物中に含まれるリチウムイオンの有無を確認することができる。
【解決手段】X線検査システム100は、検査対象の物品集合物の中に、リチウムイオン二次電池の有無を検査するためのものである。物品集合物の大きさは、縦、横および高さのそれぞれが80cm以上であり、物品集合物を検査するための検査室20と、検査室20内から物品集合物に向けてX線を照射する一つ又は複数のX線源26と、前記物品集合物に照射されたX線を検知する一つ又は複数のX線センサ28とを含む。一つ又は複数のX線源26の照射範囲は、前記物品集合物の全体を照射し得る範囲に設定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象の物品集合物の中に、リチウムイオン二次電池の有無を検査するためのX線検査システムであって、
前記物品集合物の大きさは、縦、横および高さのそれぞれが80cm以上であり、
前記物品集合物を検査するための検査室と、
前記検査室内から前記物品集合物に向けてX線を照射する一つ又は複数のX線源と、
前記物品集合物に照射されたX線を検知する、一つ又は複数のX線センサとを含み、
前記一つ又は複数のX線源の照射範囲は、前記物品集合物の全体を照射し得る範囲に設定されているX線検査システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記X線源の照射範囲の角度は、70~90度の範囲内に設定されているX線検査システム。
【請求項3】
請求項1において、
前記X線源の照射範囲は、X線の照射空間内に、前記物品集合物が収まるように設定されるX線検査システム。
【請求項4】
請求項1において、
前記X線源を複数含み、
複数の前記X線源の照射範囲の角度は、それぞれ30~60度の範囲内にあるX線検査システム。
【請求項5】
請求項1において、
前記物品集合物を搬送する搬送路を含み、
前記複数の前記X線センサは、前記搬送路の下に設けられ、かつ、前記搬送路の搬送方向の幅方向に並んで設けられているX線検査システム。
【請求項6】
請求項5において、
前記複数のX線センサは、前記搬送路の搬送方向にずれて並置されているX線検査システム。
【請求項7】
請求項5において、
一のX線センサのX線画像と他のX線センサのX線画像の重複領域がある場合において、一のXセンサのX線画像から前記重複領域の画像を除外する処理部を含むX線検査システム。
【請求項8】
請求項1において、
前記X線センサは、ライン型センサであるX線検査システム。
【請求項9】
請求項1において、
前記検査室に前記物品集合物を導入するためのトンネル導入部を含むX線検査システム。
【請求項10】
請求項1において、
X線が前記トンネル導入部から漏れ出た場合に、漏れ出たX線量は1μシーベルト/時間以下であるX線検査システム。
【請求項11】
請求項9において、
前記X線源は、前記トンネル導入部の天井の位置よりも高い位置にあるX線検査システム。
【請求項12】
請求項1において、
前記リチウムイオン二次電池の有無を判断する第1の判断部を含み、
前記第1の判断部は、少なくとも、前記物品の形状およびX線吸収率に基づき、リチウムイオン二次電池の有無を判断するX線検査システム。
【請求項13】
請求項11において、
前記第1の判断部は、判断アルゴリズムまたは分類器に基づき判断がなされ、
前記判断アルゴリズムまたは分類器を学習させる第1の学習部を含むX線検査システム。
【請求項14】
請求項1において、
リチウムイオン二次電池が混在している物品集合物を透過したX線を受け、当該透過X線に基づき前記リチウムイオン二次電池の有無を検査し、
少なくとも、前記物品集合物中の物品の形状およびX線吸収率に基づき、リチウムイオン二次電池の有無を判断するX線検査システム。
【請求項15】
請求項1において、
前記X線源のX線管電圧が30~80kVの範囲にあるX線検査システム。
【請求項16】
請求項1に記載のX線検査システムを含み、
前記物品集合物は、袋に入れられ、
前記X線検査システムにおいて、リチウムイオン二次電池を含んでいないと判断された物品集合物を含む袋を破袋機に供給する破袋システム。
【請求項17】
請求項1に記載のX線検査システムを含み、
前記X線検査システムにおいて、リチウムイオン二次電池を含んでいないと判断された物品集合物を破砕機に供給する破砕システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を検査し得るX線検査システム、破袋システムおよび破砕システムに関する。
【背景技術】
【0002】
回収されたゴミ袋を処分するに当たり、ゴミ袋を破り、袋の中のゴミを出し、ゴミ袋とゴミを分別することが行われている。ゴミ袋を破る際に、破袋機が用いられている(特開2006-218468)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リチウムイオン二次電池がゴミ袋内のゴミに混在した状態で、破袋機にかけられた場合に、破裂するなどの危険性があるため、破袋機にかける前にリチウムイオン二次電池の有無を確認する必要があるものの、自動的にリチウムイオン二次電池が混入した袋を確認することはできずにいた。また、露出した物品集合物や袋に入った物品集合物などの大きな集合物にリチウムイオン二次電池が入っているかどうかを確認しようとする試みは行われていなかった。しかし、物品集合物の再利用工程の安全性の観点からリチウムイオン二次電池を検知できるようになることは、意義のあることと考えられる。
【0005】
また、ごみや資源物が個別的にコンベアーで運ばれている際に、リチウムイオン電池やリチウムイオン電池を含む機器などを自動で把握することは、処理作業を行う上で、有用である。
【0006】
本発明の目的は、物品集合物中にリチウムイオン二次電池の有無を検査することができるX線検査システム、破袋システムおよび破砕システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の検査システムは、
検査対象の物品集合物の中に、リチウムイオン二次電池の有無を検査するためのX線検査システムであって、
前記物品集合物の大きさは、縦、横および高さのそれぞれが80cm以上であり、
前記物品集合物を検査するための検査室と、
前記物品集合物に向けてX線を照射する一つ又は複数のX線源と、
前記検査室において前記物品集合物に照射されたX線を検知する、一つ又は複数のX線センサとを含み、
前記一つ又は複数のX線源の照射範囲は、前記物品集合物の全体を照射し得る範囲に設定されている。
【0008】
本発明において、前記X線源の照射範囲の角度は、70~90度の範囲内に設定されていることができる。
【0009】
本発明において、前記X線源の照射範囲は、X線の照射空間内に、前記物品集合物が収まるように設定されることができる。
【0010】
本発明において、前記X線源を複数含み、複数の前記X線源の照射範囲の角度は、それぞれ30~60度の範囲内にあることができる。
【0011】
本発明において、前記物品集合物を搬送する搬送路を含み、前記複数の前記X線センサは、前記搬送路の下に設けられ、かつ、前記搬送路の搬送方向の幅方向に並んで設けられていることができる。
【0012】
本発明において、前記複数のX線センサは、前記搬送路の搬送方向にずれて並置されていることができる。
【0013】
本発明において、一のX線センサのX線画像と他のX線センサのX線画像の重複領域がある場合において、一のXセンサのX線画像から前記重複領域の画像を除外する処理部を含むことができる。
【0014】
本発明において、前記X線センサは、ライン型センサであることができる。
【0015】
本発明において、前記検査室に前記物品集合物を導入するためのトンネル導入部を含むことができる。
本願発明者らは、X線検査室の導入部に遮蔽カーテンが設けられている場合に、遮蔽カーテンの重さから軽い物品集合物が遮蔽カーテンを通過できないケースがあるという課題を発見し、トンネル導入部を設けることで遮蔽カーテンを設けない態様または薄い遮蔽カーテンの態様でX線検査システムを実現することを見出した。逆に、物品集合物が重さかった場合にその重さと大きさから、遮蔽カーテンへの負荷がかかり、遮蔽カーテンがすぐに消耗してしまうことも考えられる。物品集合物が重かった場合には、遮蔽カーテンを設けない構成をとることで、遮蔽カーテンがすぐに消耗してコストがかかってしまう問題を回避することができる。
【0016】
本発明において、X線が前記トンネル導入部から漏れ出た場合に、漏れ出たX線量は1μシーベルト/時間以下であることができる。
【0017】
本発明において、前記X線源は、前記トンネル導入部の天井の位置よりも高い位置にあることができる。
【0018】
本発明において、前記リチウムイオン二次電池の有無を判断する第1の判断部を含み、前記第1の判断部は、少なくとも、前記物品の形状およびX線吸収率に基づき、リチウムイオン二次電池の有無を判断することができる。
【0019】
本発明において、前記第1の判断部は、判断アルゴリズムまたは分類器に基づき判断がなされ、前記判断アルゴリズムまたは分類器を学習させる第1の学習部を含むことができる。
【0020】
本発明において、リチウムイオン二次電池が混在している物品集合物を透過したX線を受け、当該透過X線に基づき前記リチウムイオン二次電池の有無を検査し、少なくとも、前記物品集合物中の物品の形状およびX線吸収率に基づき、リチウムイオン二次電池の有無を判断することができる。
【0021】
本発明において、前記X線源のX線管電圧が30~80kVの範囲にあることができる。
【0022】
本発明の破袋システムは、本発明のX線検査システムを含み、
前記物品集合物は、袋に入れられ、
前記X線検査システムにおいて、リチウムイオン二次電池を含んでいないと判断された物品集合物を含む袋を破袋機に供給するものである。
物品群にリチウムイオン二次電池が混在されていることを考慮して、破袋機にかけずに手でゴミ袋を破ることがある。仮にリチウムイオン二次電池またはリチウムイオン二次電池が収められた機器等がゴミに入っていても破袋機にかける前にリチウムイオン二次電池等の混入の有無を判断し、入っていないものは破袋機で破袋し、リチウムイオン二次電池が入っているものは手で袋を破ることができる破袋システムを提供することができる。
【0023】
本発明の破砕システムは、本発明のX線検査システムを含み、前記X線検査システムにおいて、リチウムイオン二次電池を含んでいないと判断された物品集合物を破砕機に供給するものである。
破砕機にリチウムイオン二次電池が導入されてしまった場合、破砕機内でリチウムイオン二次電池が爆発する場合がある。仮にリチウムイオン二次電池またはリチウムイオン二次電池が収められた機器等が破砕システムに紛れ込んでしまった場合でも破砕機に入る前にリチウムイオン二次電池を回収することができる。
【0024】
本明細書中、「A~B」は、A以上B以下を意味する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、たとえば、今までできていなかった最も大きな規格のベール中にあるリチウムイオンの有無を確認することができる。本発明によれば、検査室の高さに制限があっても、物品集合物中に含まれるリチウムイオンの有無を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施の形態に係るX線検査システムを模式的に示す図である。
【
図2】実施の形態に係るX線検査システムを模式的に示す図である。
【
図3】実施の形態に係るX線検査システムを模式的に示す図である。
【
図4】実施の形態に係るX線検査システムを模式的に示す図である。
【
図5】実施の形態に係る破袋システムの一例を模式的に示す図である。
【
図6】実施の形態に係る検査システムに適用されるX線検査装置を説明するための図である。
【
図7】実施の形態に係る破袋システムの一例を模式的に示す図である。(A)は破袋システムの上面図であり、(B)は破袋システムの一側面図であり、(C)は(B)とは別の破袋システムの一側面図である。
【
図8】実施の形態に係る破袋システムを模式的に示す図である。
【
図10】実施の形態に係る検査システムの機能ブロック図を示す。
【
図11】実施の形態に係る破砕システムを模式的に示す図である。
【
図12】ベール生成から出荷までのフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0028】
1.X線検査システムの基本的構成
X線検査システム100は、
図1に示すように、検査対象の物品集合物22の中に、リチウムイオン二次電池の有無を検査するためのものである。X線検査システム100は、物品集合物22を検査するための検査室20と、検査室20内から物品集合物22に向けてX線を照射する一つ又は複数のX線源26と、検査室20において物品が通過する搬送路の下に設けられ、X線源26から照射されたX線を検知する、一つ又は複数のX線センサ28とを含む。
【0029】
検査室20は、X線に対する遮蔽機能を有する材質から構成され、物品集合物22が入る大きさであれば特に限定されない。検査室20の天井の高さは、物品集合物22の大きさにもよるが、たとえば、搬送路16を基準として、150~200cmとすることができる。
【0030】
物品集合物22の大きさは、縦、横および高さのそれぞれが80cm以上である。物品集合物22は、たとえば分別された同一または同種の材質の物品集合物22や、同一もしくは同種または異種の物品を締め上げられたものとすることができる。物品集合物22の大きさは、たとえば、130cm以下とすることができる。 物品集合物22は、袋に入れられることができる。分別した物をまとめて大きな塊にすることが行われているところ、物品集合物22は、たとえば、分別されたペットボトルやプラスチックごみをまとめた物、いわゆるベールとすることができる。ベールは、たとえば分別基準適合物の要件に合致するために行われている。
【0031】
一つ又は複数のX線源26の照射範囲は、物品集合物22の全体を照射し得る範囲に設定されている。X線源26の照射範囲の角度は、70~90度の範囲内に設定されていることができる。照射角度の範囲は絞り26aで調整が可能である。X線源26の照射範囲は、X線の照射空間内に、物品集合物22が収まるように設定されることができる。X線源26を複数含み、複数のX線源26の照射範囲の角度は、それぞれ30~60度の範囲内としてもよい。X線源26の高さは、物品集合物22の大きさにもよるが、物品集合物22の搬送路16を基準にして、たとえば、150~200cmとすることができる。
【0032】
図1に示すように、X線源26が一つの場合に、たとえば搬送路16から175cmの高さに設置することができる。搬送路16はたとえばコンベアとすることができる。絞り26aはX線が80度程度に拡がる様に設定することができる。
図1において、搬送路16により搬送方向は、紙面に対して垂直方向である。
【0033】
図3に示すように、X線源26が二つの場合に、各X線源26の照射角をたとえば45度に、搬送路から175cmの高さに設置することでも実現できる。
図3において、搬送路16により搬送方向は、紙面に対して垂直方向である。X線源26は、たとえば、搬送方向の幅方向に複数並べることができる。
【0034】
物品集合物22を搬送する搬送路16を含み、複数のX線センサ28は、搬送路16の下に設けられ、かつ、搬送路16の搬送方向の幅方向に並んで設けられていることができる。複数のX線センサ28は、搬送路16の搬送方向にずれて並置されていることができる。一のX線センサ28のX線画像と他のX線センサ28のX線画像の重複領域がある場合において、一のXセンサのX線画像から重複領域の画像を除外する画像処理部68を含むことができる。X線センサ28は、たとえば、ライン型センサであることができる。ライン型X線センサ28は614.4mmの撮像範囲を有するものを2個、搬送路16の下側に設置することができる。画像処理部68は情報処理装置60がその機能を実現してもよい。
【0035】
2.各構成の具体例および適用例
X線検査システム100は、
図5および
図6に示すように、検査対象の物品集合物22に、リチウムイオン二次電池が含まれているかどうかを検査するためのものであり、検査室20と、検査室20に物品集合物22を導入するためのトンネル導入部24と、検査室20の天井に設けられたX線源26と、検査室20において物品集合物22が通過する搬送路16の下に設けられたX線のX線センサ28とを含むことができる。X線源26は、たとえば、X線が四角錐状に広がるように発生させることができる。X線源26のX線管電圧がたとえば30~80kVの範囲にあることができる。物品集合物22が入るトンネル導入部24の幅と検査室20内の幅は同じであっても、検査室20の幅をトンネル導入部24の幅よりも広くしてもよい。
【0036】
X線検査システム100は、リチウムイオン二次電池の有無を判断する第1の判断部64aを含むことができる。X線検査システム100は、物品集合物22を透過したX線を受け、当該透過X線に基づきリチウムイオン二次電池の有無を検査してもよい。X線検査システム100は、少なくとも、物品集合物22中の物品の形状およびX線吸収率に基づき、リチウムイオン二次電池の有無を判断することができる。
図9に物品の形状およびX線吸収率と、物品との関係の一例を示す。
【0037】
トンネル導入部24は、X線源26から発したX線が外部に漏れないようにするため、または、X線の漏れる量を抑えるためのものである。X線がトンネル導入部から漏れ出る場合に、漏れ出たX線量は1μシーベルト/時間以下であることが好ましい。具体的には、トンネル導入部24は、X線源26からのX線がトンネル導入部24の入口から漏れ出ない程度の長さを有するものとすることができる。トンネル導入部24の長さは、X線源26の位置や検査室20の大きさにもよるが、たとえば検査室20が2m程度の大きさの場合には、1m程度とすることができる。X線源26は、トンネル導入部24の天井の位置よりも高い位置とすることができる。X線源26を検査室20の側部に設けてもよい。この場合においても、X線源26からのX線が外に漏れないような位置に設けることができる。
【0038】
検査室20から検査対象の物品集合物22を導出するためのトンネル導出部34を設けることができる。トンネル導出部34は、X線源26から発したX線が外部に漏れないようにするためのものである。具体的には、トンネル導出部34は、X線源26からのX線がトンネル導出部34の出口から漏れ出ない程度の長さを有するものとすることができる。トンネル導入部34の長さは、X線源26の位置や検査室20の大きさにもよるが、たとえば検査室20が2m程度の大きさの場合には、1m程度とすることができる。X線源26は、トンネル導出部34の天井の位置よりも高い位置とすることができる。
【0039】
X線検査システム100は、第1の学習部66aを含むことができる。第1の学習部66aは、第1の判断部64aの判断のアルゴリズムもしくはプログラム、または、分類器を学習させるものである。第1の学習部66aは、公知の機械学習やディープラーニングによる手法を用いることができる。分類器は、SVM(Support Vector Machine)、ニューラルネットワークまたは線形回帰モデルとすることができる。
【0040】
X線検査システム100は、
図10に示すように制御部50を含むことができる。制御部50は、X線源26、X線センサ28、後述の強磁性体抽出部30、搬送手段を制御することができる。X線検査システム100は、情報処理装置60を含むことができる。情報処理装置60は、制御装置50に組み込まれてもよいし、別のハードウエア資源により実現してもよい。情報処理装置60は、たとえば、CPUまたはGPU、ROMおよびRAMにより構成することができる。情報処理装置60は、入力部62を含むことができる。入力部62は、第1の判断部64aおよび後述の第2の判断部64bにおいて判断するための基礎情報を入力する機能や、第1の学習部66aおよび後述の第2の学習部66bに教師データを入力する機能を含むことができる。たとえば、X線画像から得られる形状およびX線透過率の少なくとも一方と物品との関係などを第1の判断部64aおよび第2の判断部64bのアルゴリズムまたは識別器などを学習させる際の教師データとすることができる。情報処理装置60、たとえば、電子計算機やコンピュータにより実現することができる。第1の判断部64a、第2の判断部64b、第1の学習部66aおよび第2の学習部66bは、演算処理装置であれば特に限定されない。
【0041】
3.X線センサと画像処理の考え方
X線センサ28で捉えた画像は、たとえば、次のように画像処理を行うことができる。
浜松ホトニクス株式会社製のC14300-12u、撮像範囲614.4mmのライン型X線センサ28a,28bを2個用いて1228.8mm程度の範囲を撮像する。その際に受光素子28a1,28b1を内包するX線センサ28a,28b筐体の幅が受光素子28a1,28b1の幅より大きいことから、真横に並べての継ぎ目の出ない撮像をすることが出来ないので、主走査方向(搬送方向)に対して前後にずらして配置して撮像する。これにより1個目の受光素子28a1と2個目の受光素子28b1では撮像画像に時間的なずれが生じるが、この時間差のある画像を補正して2枚の画像を合成することにより元の画像が得られ、この画像を、異物判定を行う人工知能(AI)に供することにより、死角の無い判定が可能となる。時間のずれを補正する画像処理は画像処理ICチップにより実現できる。
【0042】
図2に示すように、ライン型X線センサ28aとライン型X線センサ28bを使用し左側画像と右側画像をそれぞれ撮像することができる。2次元画像を得るための第1の方向(主走査方向)はベールのコンベア上移動により得ることができる。また、第2の方向(副走査方向)はライン型X線センサの走査により得ることができる。
【0043】
ライン型X線センサ28a,28bの奥行が100mmとすると、受光素子の1個の大きさが0.4mm四方であると想定すると、ライン型X線センサ28aより250走査線分遅れた右画像をライン型X線センサ28bが取得する。搬送路16の移動速度(ベルトコンベアの速度)が200mm/分の場合、ライン型X線センサ28aとライン型X線センサ28bの撮像時間のずれはおよそ30msecとなる。
【0044】
X線センサを2個使う事で、110cmの高さで110cmの幅を持つのベールの検査ができる。また、X線センサ1個で1230mm程度の範囲を走査する場合に比べ、X線センサを2個使う事で走査範囲がおよそ半分になることから、副走査方向の走査速度が上がり、検査ライン自体の速度を上げること
が可能となり、単位時間当たりの検査数を増加させることができる。
【0045】
X線源26の設置高さを抑えることで、X線源26を高位置に設置することに基づき起きるX線画像の劣化を防ぐことができ、かつ、X線照射室の大きさを小型化でき、X線漏洩対策に用いる鉛材、あるいはタングステンポリマー材の使用量を減じる事ができる。
【0046】
4.X線の照射範囲の考え方
110cmの高さで110cmの幅を持つベールの照射範囲を確保する際に、X線源の取り付け位置を低く抑える目的で、X線源の照射角度を80度程度に広げることができる。
通常のX線異物検査装置においては、照射角度は40~45度程度であると考えられるが、これを80度程度に広げることで、例えば45度程度の場合2.7mを必要とする高さを約1.75mに抑えることができる。
【0047】
また、現状良く使用されている照射角度45度程度のX線源を2個使用すれば設置高さを1.75m程度に抑えられる。1つのX線源から照射される部分と2つのX線源から多重照射される部分が出来てしまうが、これを画像処理ICチップにより濃度のリニアリティ補正を行う。)
【0048】
4.破袋システム
物品集合物22は、袋に入れられている場合に、X線検査システムにおいて、リチウムイオン二次電池を含んでいないと判断された物品集合物22を含む袋を破袋機に供給することができる。
【0049】
破袋システム110は、
図8に示すように、投入コンベア10と、検査室20と、排出コンベア12と、分配部32と、破袋機40と、選別システム70とを含む。破袋システム110の処理フローは次のとおりである。
【0050】
投入コンベア10に物品集合物22が入った袋を置き、X線検査システム100にトンネル導入部24に導入し、リチウムイオン二次電池が混入しているかどうか第1の判断部64aが判断する。X線検査システム100から排出コンベア12に排出され、リチウムイオン二次電池が入っていない袋は傾斜コンベア14などにより自動で破袋機40に移され、破袋機40で破袋される。破袋されて袋から出てきた物品集合物22は、選別システム70に供給される。X線検査システム100によりリチウムイオン二次電池が入った袋と判断された袋は分配部32により、手による破袋工程(
図5でB1)に回され、破袋され選別システム70に供給される。なお、選別システム70に強磁性体抽出部30を設け、強磁性体抽出部30により強磁性体からなる物品集合物22が入った袋を抽出してもよい。
【0051】
図7に示すように、排出コンベア12は、投入コンベア10およびX線検査システム100に沿った方向に伸びるように設けてもよいし、投入コンベア10およびX線検査システム100に沿った方向に対して交差する方向(たとえば直角方向)に伸びるように設けてもよい。
【0052】
選別システム70には、破袋機40により袋から出た物品集合物22のうち、強磁性体を含むものを抽出する強磁性体抽出部30を含むことができる。強磁性体抽出部30は、たとえば、磁石により構成することができる。これにより、強磁性体からなる金属製品(たとえば小物鉄製品)を含む物品集合物22を人力によらないで抽出し、回収することができる。破袋の前に金属の選別を行うことで、破袋機40の劣化を抑えることができる。選別システム70は、強磁性体抽出部30に限定されず、他の金属を回収する技術であってもよい。なお、小物金属物は回収袋への混入確率が高いことから、破袋後に回収を行ってもよい。
【0053】
情報処理装置60は、強磁性体抽出部30により抽出できるものかどうかを、X線センサ28が検出した透過X線により得られた形状により判断する第2の判断部64bを含むことができる。
【0054】
本願発明者らは、X線検査システム100の導入部に遮蔽カーテンがあると袋全体が軽量だった場合に、遮蔽カーテンをくぐることができないという問題を見出した。この実施の形態によれば、トンネル導入部24によりX線の漏出を抑えることができるため、遮蔽カーテンをなくすことができるか、または、遮蔽カーテンを設けた場合であっても遮蔽カーテンを薄くすることができる。このため、袋全体が軽くても確実にX線検査システム100内に導入することができる。本実施の形態によれば、遮蔽カーテンを設けた場合であっても、遮蔽カーテンを薄くすることができたり、遮蔽カーテンの選択の自由度を高めることができる。
【0055】
また、本願発明者らは、X線検査システム100の導出部に遮蔽カーテンがあると袋全体が軽量だった場合に、遮蔽カーテンをくぐることができないという問題を見出した。この実施の形態によれば、遮蔽カーテンでX線源26からのX線が漏れ出るのを防ぐのではなく、トンネル導出部34によりX線の漏出を防ぐため、袋全体が軽くても確実にX線検査システム100から排出することができる。
【0056】
本実施の形態に係るX線検査システム100によれば、破袋機40に袋が入る前にリチウムイオン二次電池が入った袋を把握し、抽出することができる。
【0057】
破袋システム100に誤ってリチウムイオン二次電池またはリチウムイオン二次電池を含む物が混在した袋が入ってしまったとしても、破袋機40の手前でその袋を確認捕捉することができるので、破袋機40の中でリチウムイオン二次電池が爆発することを防ぐことができる。
【0058】
実施の形態に係る破袋システム110によれば、破袋機40で発生するリチウムイオン二次電池の発火、爆発を未然に防ぐことができ、火災事故などを未然に防ぎ、回収現場の安全を確保することできる。
【0059】
5.破砕システム
X線検査システムにおいて、リチウムイオン二次電池を含んでいないと判断された物品集合物22を破砕機に供給するものであることができる。
【0060】
本実施の形態に係るX線検査システムは、袋内に入った物品集合物22の中にあるリチウムイオン二次電池の有無を検査するものではなく、露出した物品集合物22の中からリチウムイオン二次電池の有無を検査するために利用することができる。具体的には、X線検査システムを
図11に示す破砕システムに適用することができ、X線検査システムがリチウムイオン二次電池を含んでいないと判断された物品集合物22を破砕機42に供給する破砕システムとして実現が可能である。分配部32の設置は任意であるが、分配部32を設けることにより、リチウムイオン二次電池を回収するために破砕機42に向かうルートとは異なるルートに導くことができる。
【0061】
X線検査システムは、リチウムイオン二次電池またはリチウムイオン二次電池が内蔵された機器以外に、リチウムイオン二次電池が内蔵されていない機器や、任意に指定した物、たとえば、プリント基板、ギターエフェクター、ゲームコントローラーなどを検知してもよい。
【0062】
本実施の形態に係る破砕システムによっても、トンネル導入部24によりX線の漏出を抑えることができるため、遮蔽カーテンをなくすことができるか、または、遮蔽カーテンを設けた場合であっても遮蔽カーテンを薄くすることができる。このため、物品集合物22が軽くても確実にX線検査システム100内に導入することができる。
【0063】
6.本実施の形態の意義
一連のプラスチックに係る資源循環の促進工程において生成される分別収集物のベールには本来混入してはならない異物の混入事例がある。その中でも特に危険なものとしてリチウムイオン二次電池が上げられる。市町村などの地方自治体から供出されるベールの大きさには、規格値で60cm×40cm×30cm(小)と60cm×40cm×40cm(中)と100cm×100cm×100cm(大)の3種がある。近年スマートフォン等多くのプラスチック製品の電源として使われており、再生工場の工程内で爆発、火災の要因ともなっている。本実施の形態に係るX線システムは容器包装プラスチック、製品プラスチック等からベールを生成する最終工程において、リチウムイオン二次電池等の異物の有無を検査するもので、X線技術を利用した異物検査装置に係るものである。
【0064】
ベール(大)の大きさの規格は100cm×100cm×100cmであるが、実際には結束バンドで締め上げた部分以外はこの大きさを10数cm上回っており、このようなベールの大きさの物体を検査できる、X線技術を利用した異物検査装置は無かった。
【0065】
従来のX線異物検査機に使われているライン型X線センサの長さには限界がある。このため、一般的に言われている最長のものでも920mm程度であり、実幅1100mm程度のベールは検査範囲外となる。また、従来のX線異物検査機に使われている照射角度40度程度のX線源を用いた場合、110cm程高さで110cmの幅を持つベールを検査するためには2.7m以上の高さにX線源を設置しない場合には、ベール(大)がX線照射範囲外になってしまうが、X線源とベールの最下端までの距離が長くなるため、X線が拡散し、画質の劣化につながる。さらにこの高さから照射する場合には、X線漏洩防止対策を装置内のより広範囲な部分に施す必要がある。また、現状使用されている照射角度45度程度のX線源を2個使用すれば設置高さを1.75m程度に抑えられる。本実施の形態によれば、ベールが大きくてもリチウムイオン電池の有無を確認することができる。さらに、検査室の高さに制限がある中でも、リチウムイオン電池の有無を確認することができるという意義がある。
【0066】
本実施の形態に係るX線検査システムは、ベールの品質調査自体にも利用することができ、または、品質調査のためにベールを破砕機などで分解する前にリチウムイオン二次電池の有無を確認する利用態様もある。品質調査の分解前にX線検査システムにより検査することで、破砕機でベールを分解する操作者の安全を確保することができるとともに、その操作者が安心してベールの分解作業やベールの性質検査を行うことができる。
【0067】
図12に示すように、本実施の形態に係るX線検査システム100は、通常、分別したものをコンパクターによりベール化をするところ、その後の検査に適用することができる。検査がなされた後に、倉庫に搬送・保管され、リサイクラーに出荷されることになる。
【0068】
本実施の形態に係るX線検査システム100は、自動車などの種々の移動車両にも適用可能である。
【0069】
本実施の形態は、本発明の範囲内において種々の変形が可能である。上記の実施の形態では、X線源26を検査室20の天井に設け、X線センサ28を搬送路16の下に設ける態様としている。この態様に限定されず、X線源26を検査室20内の一方の側部または側面に設け、X線センサ28を検査室20内の他方の側部または側面に設ける態様であってもよい。ここで、検査室20内の側部または側面とは、検査対象の物品集合物22の搬送方向に対して側方にある側の検査室29の部分または面をいう。また、X線源26を検査室20内の一方の側部の上側に設け、X線センサ28を搬送路16の下に設け、X線を斜めから放射する態様や、X線源26のX線照射範囲に検査対象の物品集合物22が収まり、そのX線を検出できる態様でX線センサ28が設けられているような態様であってもよく、X線源26やX線センサ28の位置関係は検査対象の物品集合物22にリチウムイオン二次電池が含まれているかどうかを検査することができるものであれば特に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、たとえば、回収プラスチック資源の再生工程において、回収プラスチック資源をベールにするところ、リチウムイオン二次電池がベールに混入しているかどうかを調べるための検知装置として利用することができる。ベールを再利用する工程やベールの品質検査において、ベールを分解するところ、分解工程などでリチウムイオン二次電池がベールに誤って混入していた際に、リチウムイオン二次電池が破壊され、発火や爆発等を起こすことを事前に防止することができる。産業廃棄物の処理にも有用である。本発明は、ベールの品質調査自体にも利用することができ、または、品質調査のためにベールを破砕機などで分解する前にリチウムイオン二次電池の有無を確認する利用態様もある。
【符号の説明】
【0071】
10 投入コンベア
12 排出コンベア
14 傾斜コンベア
16 搬送路
20 検査室
22 物品集合物
24 トンネル導入部
26 X線源
26a 絞り
28 X線センサ
28a,28b X線センサ
28a1,28b1 受光素子
30 強磁性体抽出部
32 分配部
34 トンネル導出部
40 破袋機
42 破砕機
50 制御装置
60 情報処理装置
62 入力部
64a 第1の判断部
64b 第2の判断部
66a 第1の学習部
66b 第2の学習部
68 画像処理部
70 選別システム
100 X線検査システム
110 破袋システム