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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021880
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】鉄骨階段用踏材と鉄骨階段
(51)【国際特許分類】
   E04F 11/17 20060101AFI20250206BHJP
   E04F 11/112 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
E04F11/17 100A
E04F11/112
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125946
(22)【出願日】2023-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】315019894
【氏名又は名称】株式会社杉孝グループホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】和田 錬太郎
【テーマコード(参考)】
2E301
【Fターム(参考)】
2E301CC32
2E301CC47
2E301DD17
2E301DD40
2E301DD77
2E301DD98
(57)【要約】
【課題】可及的に軽量でハンドリング性に優れ、構造が複雑でない鉄骨階段用踏材と、この鉄骨階段用踏材により各ステップの凹部の養生が図られている鉄骨階段を提供すること。
【解決手段】踏板11の段鼻11aの上方に突出する立ち上がり片12を備え、踏板11と蹴込板13と立ち上がり片12により形成される凹部14に対して、セメント系材料が打設されるまでの期間の養生に適用される、鉄骨階段用踏材60であり、平面視矩形もしくは略矩形で、樹脂製の踏片20と、踏片20の一対の長辺及び/又は一対の短辺に沿って下方に延びる、樹脂製の一対の脚片30と、踏片20の下面24のうち、一対の脚片30の間に設けられている、樹脂製の補助脚片40とを有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏板の段鼻の上方に突出する立ち上がり片を備え、該踏板と蹴込板と該立ち上がり片により形成される凹部に対して、セメント系材料が打設されるまでの期間の養生に適用される、鉄骨階段用踏材であって、
平面視矩形もしくは略矩形で、樹脂製の踏片と、
前記踏片の一対の長辺及び/又は一対の短辺に沿って下方に延びる、樹脂製の一対の脚片と、
前記踏片の下面のうち、前記一対の脚片の間に設けられている、樹脂製の補助脚片とを有することを特徴とする、鉄骨階段用踏材。
【請求項2】
1つの前記補助脚片が、前記一対の脚片の中央位置に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の鉄骨階段用踏材。
【請求項3】
前記脚片と前記補助脚片がいずれも、それらの断面幅が下方に向かって狭くなる断面形状を有していることを特徴とする、請求項1に記載の鉄骨階段用踏材。
【請求項4】
前記踏片が、平面視において複数の開口を備えているメッシュ構造を有していることを特徴とする、請求項1に記載の鉄骨階段用踏材。
【請求項5】
前記開口の一部もしくは全部の平面視形状がハニカム形状であることを特徴とする、請求項4に記載の鉄骨階段用踏材。
【請求項6】
前記踏片が、平面視矩形の長辺と短辺に沿う、複数の直線状の梁をさらに備えていることを特徴とする、請求項4に記載の鉄骨階段用踏材。
【請求項7】
前記脚片に比べて前記補助脚片の断面幅が小さく、
前記補助脚片は、前記長辺もしくは前記短辺に沿う方向に一定間隔で補強リブを備えていることを特徴とする、請求項1に記載の鉄骨階段用踏材。
【請求項8】
前記踏片の踏面に、複数の微小凸部が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の鉄骨階段用踏材。
【請求項9】
全体が黄色を呈していることを特徴とする、請求項1に記載の鉄骨階段用踏材。
【請求項10】
前記踏板と前記蹴込板と前記立ち上がり片とによりステップが形成され、側桁に対して複数の該ステップが連続的に取り付けられている、鉄骨階段であって、
各ステップの備える前記凹部に、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の鉄骨階段用踏材が設置され、前記脚片と前記補助脚片と前記踏片とにより形成される収容空間に、前記踏板の上面に存在する凸部材が収容されて該凹部が養生されていることを特徴とする、鉄骨階段。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨階段用踏材と鉄骨階段に関する。
【背景技術】
【0002】
ビル等の建築物の建設工事において、建設中の建築物内への作業員の出入りや建設資機材の搬出入のために、鉄骨階段が一般に利用される。ここで、図1は、従来の鉄骨階段の一例を斜視図で示す図であり、図2は、ステップを拡大して側面から見た図である。図示する鉄骨階段10は、複数のステップ15が側桁17に対して連続的に取り付けられている構造を有している。
【0003】
各ステップ15を形成する踏板11の段鼻11aには、上方に突出する立ち上がり片12が設けられ、踏板11と蹴込板13と立ち上がり片12とにより凹部14が形成されている。この凹部14には、最終的にコンクリートやモルタルといったセメント系材料が打設されて凹部14が解消されることになるが、それまでの期間は凹部14が存在する。
【0004】
そのため、図3(a)に示すように作業員Fが鉄骨階段10をX1方向に上る場合と、図3(b)に示すように作業員Fが鉄骨階段10をX2方向に下る場合のいずれにおいても、作業員Fの足元が高さの異なる立ち上がり片12の頂部と踏板11で2点支持されることになる。また、作業員Fのつま先が立ち上がり片10につまずき易くなる。これらのことから、鉄骨階段10の昇降の際に足元Fが不安定になり易く、鉄骨階段10の昇降時の安全性に課題があるとともに、安全に昇降しようと注意することが過度のストレスに繋がる。
【0005】
また、鉄骨階段10が施工現場にあることから、各ステップ15の凹部14には粉塵等のゴミの他、泥や雨水等が溜まり易く、凹部にこれらが溜まっている場合は足元が滑り易くなり、このことも昇降時の安全性を低下させる要因となる。
【0006】
以上のことから、鉄骨階段10の凹部14にセメント系材料が打設されるまでの期間における昇降時の安全性を保証できる養生部材と、この養生部材を各ステップの凹部に備えている鉄骨階段(仮設時の鉄骨階段)が望まれる。
【0007】
ここで、特許文献1には、鉄骨階段用踏み板が提案されている。この鉄骨階段用踏み板は、ステップの基端側に次の上の段に至る立壁が、また、対向する先端側には立壁より低い小立壁が立設された鉄骨階段に使用される踏み板である。この踏み板は、立壁と小立壁間の寸法より小さい幅を有する踏み板本体と、踏み板本体に設けられて踏み板本体を立壁と小立壁間にガタツキなく保持可能な弾性体とを有している。より具体的には、同じ長さの2本のアングルを間隔L1で平行に配置し、これらの両端を円筒で結合して四角のフレームを形成し、上側にメッシュ状の踏面部を溶接等で固定し、これに対して、弾性体が、踏み板本体から突出するようにばね手段により付勢されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000-314218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の鉄骨階段用踏み板は、全体が金属製の部材であることから、多数のステップを備える鉄骨階段の各ステップの凹部に対して、このように金属製で重量のある鉄骨階段用踏み板を運んで設置する際のハンドリング性や、セメント系材料の打設に当たって凹部から取り外して搬出する際のハンドリング性が良好でないことは明らかである。
【0010】
また、弾性体が、金属製の踏み板本体からばね手段により突出するといった複雑な構成を有していることから、製作手間と製作コストが懸念され、多数のステップの凹部を養生することに鑑みると、鉄骨階段用踏み板の数が多くなるにつれてこの課題は一層顕著になる。
【0011】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、可及的に軽量でハンドリング性に優れ、構造が複雑でない鉄骨階段用踏材と、この鉄骨階段用踏材により各ステップの凹部の養生が図られている鉄骨階段を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成すべく、本発明による鉄骨階段用踏材一態様は、
踏板の段鼻の上方に突出する立ち上がり片を備え、該踏板と蹴込板と該立ち上がり片により形成される凹部に対して、セメント系材料が打設されるまでの期間の養生に適用される、鉄骨階段用踏材であって、
平面視矩形もしくは略矩形で、樹脂製の踏片と、
前記踏片の一対の長辺及び/又は一対の短辺に沿って下方に延びる、樹脂製の一対の脚片と、
前記踏片の下面のうち、前記一対の脚片の間に設けられている、樹脂製の補助脚片とを有することを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、平面視矩形もしくは略矩形で樹脂製の踏片と、樹脂製の一対の脚片と、踏片の下面のうち、一対の脚片の間に設けられている樹脂製の補助脚片とを有することにより、可及的に軽量でハンドリング性に優れ、構造が複雑でない鉄骨階段用踏材を形成できる。そして、この鉄骨階段用踏材が各ステップや踊り場の凹部に設置されて養生されることにより、凹部にセメント系材料が打設されるまでの期間における昇降時の安全性を保証することができる。
【0014】
また、一対の脚片の間に補助脚片があることで、一対の脚片を支点とした踏片の撓みが大きくなることを抑制でき、全体として軽量でありながらも、剛性の高い鉄骨階段用踏材を形成できる。ここで、補助脚片は、1つであってもよいし、複数設けられてもよい。
【0015】
また、鉄骨階段用踏材の高さは、凹部に設置された際に立ち上がり片と同程度の高さか立ち上がり片よりも若干高い高さとなるように設定されることにより、立ち上がり片によるつまずきが解消され、鉄骨階段用踏材の踏片を足元が安定した状態で踏むことができる。また、鉄骨階段用踏材の平面形状及び平面寸法は、一般に平面視矩形のステップと同様の平面視矩形もしくは平面視略矩形であり、各ステップの凹部に容易に収容できる平面寸法に設定されるのがよい。
【0016】
また、本発明による鉄骨階段用踏材の他の態様は、
1つの前記補助脚片が、前記一対の脚片の中央位置に設けられていることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、一対の脚片の中央位置に1つの補助脚片が設けられていることにより、構成を可及的にシンプルにしながら、軽量かつ高剛性の鉄骨階段用踏材を形成できる。
【0018】
また、本発明による鉄骨階段用踏材の他の態様は、
前記脚片と前記補助脚片がいずれも、それらの断面幅が下方に向かって狭くなる断面形状を有していることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、脚片と補助脚片がいずれも、それらの断面幅が下方に向かって狭くなる断面形状を有していることにより、踏片と脚片と補助脚片とにより形成される収容空間を可及的に広くすることができ、ステップや踊り場に存在する障害物(凸部材)を収容し易くできる。この障害物には、凹部にセメント系材料を打設する際に配筋される鉄筋を、所定のかぶりを有した状態で設置するためのスペーサ等が含まれる。
【0020】
また、本発明による鉄骨階段用踏材の他の態様は、
前記踏片が、平面視において複数の開口を備えているメッシュ構造を有していることを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、踏片が、平面視において複数の開口を備えているメッシュ構造を有していることにより、踏片の上面に粉塵等のゴミや泥、雨水等が溜まることを解消でき、昇降時の安全性を高めることができるとともに、鉄骨階段用踏材のより一層の軽量化を図ることができる。
【0022】
また、本発明による鉄骨階段用踏材の他の態様は、
前記開口の一部もしくは全部の平面視形状がハニカム形状であることを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、開口の一部もしくは全部の平面視形状がハニカム形状であることにより、開口を有しながらも踏片の剛性を高めることができる。
【0024】
また、本発明による鉄骨階段用踏材の他の態様は、
前記踏片が、平面視矩形の長辺と短辺に沿う、複数の直線状の梁をさらに備えていることを特徴とする。
【0025】
本態様によれば、踏片が、平面視矩形の長辺と短辺に沿う複数の直線状の梁をさらに備えていることにより、軽量で開口を有する踏片の剛性をより一層高めることができる。
【0026】
また、本発明による鉄骨階段用踏材の他の態様は、
前記脚片に比べて前記補助脚片の断面幅が小さく、
前記補助脚片は、前記長辺もしくは前記短辺に沿う方向に一定間隔で補強リブを備えていることを特徴とする。
【0027】
本態様によれば、脚片に比べて補助脚片の断面幅が小さく、補助脚片が長辺もしくは短辺に沿う方向に一定間隔で補強リブを備えていることにより、補助脚片の断面幅を可及的に小さくして収容空間を広げつつ、補助脚片を複数の補強リブにて効果的に強度補強することができる。
【0028】
また、本発明による鉄骨階段用踏材の他の態様は、
前記踏片の踏面に、複数の微小凸部が設けられていることを特徴とする。
【0029】
本態様によれば、踏片の踏面に複数の微小凸部が設けられていることにより、踏面における滑り防止性能を高めることができる。
【0030】
また、本発明による鉄骨階段用踏材の他の態様は、
全体が黄色を呈していることを特徴とする。
【0031】
本態様によれば、鉄骨階段用踏材の全体が黄色を呈していることにより、作業員が鉄骨階段を昇降する際の注意喚起を促すことができる。また、施工現場において危険性のある場所に設置される部材を黄色とすることで、安全管理の行き届いた現場であることを示すことができる。
【0032】
また、本発明による鉄骨階段の一態様は、
前記踏板と前記蹴込板と前記立ち上がり片とによりステップが形成され、側桁に対して複数の該ステップが連続的に取り付けられている、鉄骨階段であって、
各ステップの備える前記凹部に前記鉄骨階段用踏材が設置され、前記脚片と前記補助脚片と前記踏片とにより形成される収容空間に、前記踏板の上面に存在する凸部材が収容されて該凹部が養生されていることを特徴とする。
【0033】
本態様によれば、鉄骨階段の各ステップの凹部に本発明の鉄骨階段用踏材が設置され、各踏板にある凸部材が収容空間に収容された状態で凹部が養生されていることにより、鉄骨階段用踏材と凸部材との干渉が防止されながら、鉄骨階段用踏材にて凹部が養生された安全性の高い鉄骨階段となる。
【0034】
尚、各ステップのみならず、踊り場の凹部にも本発明の鉄骨階段用踏材が設置され、養生されるのがよい。ここで、凸部材は、上記するように、凹部にセメント系材料を打設する際に配筋される鉄筋を、所定のかぶりを有した状態で設置するためのスペーサ等である。
【発明の効果】
【0035】
以上の説明から理解できるように、本発明の鉄骨階段用踏材によれば、可及的に軽量でハンドリング性に優れ、構造が複雑でない鉄骨階段用踏材を提供できる。また、本発明の鉄骨階段用踏材にて各ステップや踊り場の凹部が養生された鉄骨階段によれば、凹部にセメント系材料が打設されるまでの期間における昇降時の安全性を保証することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】従来の鉄骨階段の一例の斜視図である。
図2】従来の鉄骨階段のステップを拡大して側面から見た図である。
図3】(a)は、従来の鉄骨階段を上る際の作業員の足元の状態を示す図であり、(b)は、従来の鉄骨階段を下る際の作業員の足元の状態を示す図である。
図4】実施形態に係る鉄骨階段用踏材の一例を斜め上方から見た斜視図である。
図5図4のV方向矢視図であって、実施形態に係る鉄骨階段用踏材の一例を上方から見た平面図である。
図6図4のVI方向矢視図であって、実施形態に係る鉄骨階段用踏材の一例を斜め下方から見た斜視図である。
図7図5のVII方向から見た矢視図であって、実施形態に係る鉄骨階段用踏材を短辺側の側方から見た側面図である。
図8図5のVIII-VIII矢視図であって、実施形態に係る鉄骨階段用踏材を長手方向の途中位置で短辺方向に切断した縦断面図である。
図9図5のIX-IX矢視図であって、実施形態に係る鉄骨階段用踏材を長手方向の別途の途中位置で短辺方向に切断した縦断面図である。
図10図4のX部の拡大図である。
図11】実施形態に係る鉄骨階段用踏材が、ステップと踊り場に設置されている状態を示す斜視図である。
図12】実施形態に係る鉄骨階段の一例の斜視図である。
図13】実施形態に係る鉄骨階段を上る際の作業員の足元の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、実施形態に係る鉄骨階段用踏材と鉄骨階段の一例について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0038】
[実施形態に係る鉄骨階段用踏材と鉄骨階段]
図4乃至図13を参照して、実施形態に係る鉄骨階段用踏材と鉄骨階段の一例について説明する。
【0039】
ここで、図4は、実施形態に係る鉄骨階段用踏材の一例を斜め上方から見た斜視図である。また、図5図6,及び図10はそれぞれ、図4のV方向矢視図であって、実施形態に係る鉄骨階段用踏材の一例を上方から見た平面図、図4のVI方向矢視図であって、実施形態に係る鉄骨階段用踏材の一例を斜め下方から見た斜視図、及び図4のX部の拡大図である。また、図7図8,及び図9はそれぞれ、図5のVII方向から見た矢視図であって、実施形態に係る鉄骨階段用踏材を短辺側の側方から見た側面図、図5のVIII-VIII矢視図であって、実施形態に係る鉄骨階段用踏材を長手方向の途中位置で短辺方向に切断した縦断面図、図5のIX-IX矢視図であって、実施形態に係る鉄骨階段用踏材を長手方向の別途の途中位置で短辺方向に切断した縦断面図である。さらに、図11は、実施形態に係る鉄骨階段用踏材が、ステップと踊り場に設置されている状態を示す斜視図であり、図12は、実施形態に係る鉄骨階段の一例の斜視図であり、図13は、実施形態に係る鉄骨階段を上る際の作業員の足元の状態を示す図である。
【0040】
鉄骨階段用踏材60は、平面視矩形で樹脂製の踏片20と、踏片20の一対の長辺21に沿って下方に延びる、樹脂製の一対の脚片30と、踏片20の下面24のうち、一対の脚片30の間(図示例は一対の脚片30の中央位置)に設けられて、脚片30に平行に延びる、樹脂製の補助脚片40とを有する。図示例の補助脚片40は、脚片30と高さが同じであり、高さの同じ一対の脚片30と補助脚片40とにより鉄骨階段用踏材60の安定姿勢を保持できるが、例えば、脚片30と補助脚片40のそれぞれの設置予定箇所の高さが異なる場合等においては、補助脚片40と脚片30の双方の高さが設置予定箇所の高さに応じて僅かに異なっていてもよい。
【0041】
ここで、「平面視矩形」には、各隅角部が面取りされている形状や湾曲状の形状も含まれる。また、踏片20は、図示例の平面視矩形の形態以外にも、端辺が側方へ湾曲に膨らんだ形状や、端辺が側方へ三角形状に膨らんだ形状等の平面視略矩形の形態であってもよい。
【0042】
また、図示例は、脚片30が踏片20の長辺21に対応する位置に設けられているが、脚片は踏片20の短辺22に対応する位置に設けられてもよく、この形態では、一対の短辺22に対応する位置にある脚片の間に、脚片に平行に延びる1つもしくは複数の補助脚片が設けられる。さらに、一対の長辺21に対応する位置にある一対の脚片30と、一対の短辺22に対応する位置にある一対の脚片の双方を備えている形態であってもよい。
【0043】
踏片20と脚片30と補助脚片40とにより、踏片20の下方には収容空間35が形成される。この収容空間35には、鉄骨階段用踏材60が鉄骨階段のステップ15の凹部14や踊り場18の凹部19に設置される際に、凹部14,18に存在する鉄筋を載置するためのスペーサ等の凸部材P(図11参照)が収容されるようになっており、凹部14,18に存在する様々な形態の凸部材Pと干渉することなく、鉄骨階段用踏材60を凹部14,18に設置できるようになっている。
【0044】
踏片20の長辺21の長さt1と短辺22の長さt2(図5参照)は、通常の鉄骨階段が備える平面視矩形のステップ15(図1参照)の平面寸法よりも若干小さく設定されることにより、鉄骨階段用踏材60をステップ15の凹部14にスムーズに挿入設置することができ、設置された鉄骨階段用踏材60が凹部14内でずれ難いことから好ましい。
【0045】
一例として、長さt1は、850mm乃至1200mm程度で例えば870mm等に設定でき、長さt2は、200mm乃至250mm程度で例えば235mm等に設定できる。
【0046】
また、鉄骨階段用踏材60の高さt3(図7参照)は、ステップ15の凹部14に設置された際に、凹部14を形成する立ち上がり片12と同程度の高さか立ち上がり片12よりも若干高い高さとなるように設定されることにより、立ち上がり片12によるつまずきが解消され、鉄骨階段用踏材60の踏片20を足元が安定した状態で踏むことができて好ましい。一例として、高さt3は、50mm乃至60mm程度で例えば52mm等に設定できる。
【0047】
鉄骨階段用踏材60は、全体が樹脂製であり、金属製の従来の養生部材に比べて、軽量であり、ハンドリング性に優れている。ここで、素材の樹脂には、比較的硬質で汎用的な材料である、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)等を適用できる。
【0048】
また、鉄骨階段用踏材60は、その全体が黄色を呈しているのが好ましい。例えば、樹脂材料に黄色の染料を混合して一体成形する製作方法や、一体成形後に黄色に着色する(塗料を塗工したり、塗料内に浸漬する方法等)製作方法などが挙げられる。
【0049】
鉄骨階段用踏材60の全体が黄色を呈していることにより、作業員が鉄骨階段を昇降する際の注意喚起を促すことができ、施工現場において危険性のある場所に設置される部材が黄色であることから、安全管理の行き届いた現場であることを示すことができて好ましい。
【0050】
鉄骨階段用踏材60は、樹脂材料を用いた一体成形により、良好な製作効率の下で製作することができる。また、全体が樹脂により形成されて可及的に軽量であることから、鉄骨階段10の備える多数のステップ15や踊り場18の各凹部14,19に対する設置性が良好となり、凹部14,19にセメント系材料を打設する前の取り外し性も良好となる。
【0051】
踏片20のうち、一対の長辺21に対応する位置(一対の脚片30の直上)には、長手方向に延びる細幅の梁25が設けられている。より具体的には、長辺21に対応する位置に梁25が設けられ、間隔t2'を置いて同様に別途の梁25が設けられており、従って、踏片20の長手方向に沿う一対の端部(長辺21の領域)にはそれぞれ、2つで1組の梁25が設けられている。
【0052】
この2つ1組の梁25の間には、長手方向に沿って、平面視形状がハニカム形状の半分の形状である台形や三角形、長方形(矩形の一例)の複数の開口が設けられている。
【0053】
また、踏片20の平面視における中央位置(補助脚片40の直上)にも、長辺21に平行な梁26が設けられている。
【0054】
尚、図8図9に示すように、図示例の梁25,26は、脚片30と補助脚片40にも連続するように延びており、脚片30及び補助脚片40と踏片20との一体性が高められている。
【0055】
一方、踏片20のうち、短辺22に対応する位置や、一対の短辺22の間の複数箇所には、短辺22に平行で梁25,26に直交する方向に延びる複数の梁27が長手方向に間隔を置いて設けられている。
【0056】
ここで、梁25,26,27の高さは例えば20mm程度に設定でき、従って、さらに、図7における脚片30や補助脚片40の高さt4は、高さt3と梁25等との差分である、30mm乃至40mm程度に設定できる。
【0057】
梁25,26と梁27との間には、平面視形状がハニカム形状の開口28や平面視形状が矩形の開口29、さらには平面視形状が三角形の開口が設けられている。
【0058】
このように、踏片20が多数の開口28,29等を備えたメッシュ構造を有していることにより、鉄骨階段用踏材60が樹脂製であることと相俟って、踏片20のより一層の軽量化を図ることができ、このことは鉄骨階段用踏材60のより一層の軽量化に繋がる。
【0059】
また、踏片20が多数の開口28,29等を備えながらも、踏片20には長手方向に延びる複数の梁25,26と、短手方向に延びる複数の梁27が設けられ、さらに、開口の一部に平面視ハニカム形状の開口28が含まれていることにより、踏片20の剛性を高めることができ、作業員等により踏まれた際の耐荷性のある踏片20を形成できる。
【0060】
また、踏片20の踏面23に多数の開口28,29等が存在することにより、踏片20の踏面23に粉塵等のゴミや泥、雨水等が溜まることを解消でき、これらのゴミや雨水等による足元の滑り易さを解消できることから、ステップ15の凹部14に鉄骨階段用踏材60が設置された際の、作業員の昇降時の安全性を高めることができる。
【0061】
また、図4図5,及び図10等に示すように、踏片20の踏面23には、多数の微小凸部50が設けられている。微小凸部50の高さt9(図10参照)は、1mm乃至5mm程度で例えば2mm等に設定できる。
【0062】
このように、踏片20の踏面23に、多数の微小凸部50が設けられていることにより、踏面23における滑り防止性能を高めることができ、上記するゴミや泥、雨水等が溜まることが解消されることと相俟って、作業員の昇降時の安全性をより一層高めることができる。
【0063】
また、図7に示すように、脚片30と補助脚片40はいずれも、それらの断面幅が下方に向かって狭くなる断面形状を有している。
【0064】
具体的には、脚片30は、踏片20との取り合い部の幅t5に対して、下端の幅t6が狭くなっており、補助脚片40は、踏片20との取り合い部の幅t7に対して、下端の幅t8が狭くなっている。
【0065】
一例として、幅t5は24mm乃至26mm程度で例えば25mm等に設定でき、幅t6は22mm乃至24mm程度で例えば23mm等に設定できる。さらに、幅t7は5mm乃至8mm程度で例えば7mm等に設定でき、幅t8は4mm乃至7mm程度で例えば6mm等に設定できる。
【0066】
このように、脚片30と補助脚片40がいずれも、それらの断面幅が下方に向かって狭くなる断面形状を有していることと、脚片30に比べて補助脚片40の幅が狭いことにより、収容空間35を可及的に広く設定することができ、様々な大きさ及び形状の凸部材Pを収容可能にできる。
【0067】
また、図6に示すように、補助脚片40は、長手方向に一定間隔で補強リブ45を備えている。
【0068】
このように複数の補強リブ45が設けられていることにより、補助脚片40の断面幅を可及的に小さくして収容空間35を広げつつ、補助脚片40を効果的に強度補強することができる。
【0069】
図11は、複数のステップ15のうちの最上段のステップ15と、これに続く踊り場18の各凹部14,19に、鉄骨階段用踏材60が設置されている状態を示している。
【0070】
図示例では、踊り場18に複数(図示例は4つ)のアングルからなる鉄筋用のスペーサである凸部材Pが溶接されており、各鉄骨階段用踏材60の収容空間35に凸部材Pが収容された状態で各鉄骨階段用踏材60が凹部19に設置されている。尚、図示を省略するが、ステップ15の踏板にも凸部材が溶接される。
【0071】
図12に示すように、上方と下方にある踊り場18とこれらを繋ぐ複数のステップ15のそれぞれの凹部19,14に鉄骨階段用踏材60が設置されることにより、各凹部19,14が鉄骨階段用踏材60にて養生されてなる鉄骨階段80が形成される。ここで、鉄骨階段80には手摺り70が取り付けられている。
【0072】
図13に示すように、各ステップ15の凹部14に立ち上がり片12と同程度かそれ以上の高さの踏面23を有し、かつ滑り難い鉄骨階段用踏材60が設置されることにより、凹部14が平坦な踏面23となるように養生されて昇降し易くなり、昇降時に滑り難いことから、凹部14にセメント系材料が打設されるまでの期間における昇降時の安全性を保証することのできる鉄骨階段80となる。
【0073】
また、ステップ15が多数存在する場合でも、各ステップ15の凹部14に対して軽量な鉄骨階段用踏材60をスムーズに設置できることで鉄骨階段80を容易に形成することができ、セメント系材料の打設に当たっては各ステップ15の凹部14から鉄骨階段用踏材60をスムーズに取り外すことができる。
【0074】
上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0075】
10:鉄骨階段
11:踏片
11a:段鼻
12:立ち上がり片
13:蹴込板
14:凹部
15:ステップ
17:側桁
18:踊り場
19:凹部
F:作業員(足元)
P:凸部材
20:踏片
21:長辺
22:短辺
23:上面(踏面)
24:下面
25:梁(長手方向端梁)
26:梁(長手方向中央梁)
27:梁(短手方向梁)
28:開口(ハニカム形状開口)
29:開口(矩形開口)
30:脚片
35:収容空間
40:補助脚片
45:補強リブ
50:微小凸部
60:鉄骨階段用踏材
70:手摺り
80:鉄骨階段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13