(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021897
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】避雷器劣化評価方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/00 20060101AFI20250206BHJP
H01C 7/12 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
G01R31/00
H01C7/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125992
(22)【出願日】2023-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】520304996
【氏名又は名称】四国電力送配電株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000144991
【氏名又は名称】株式会社四国総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】弁理士法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新居 浩治
【テーマコード(参考)】
2G036
5E034
【Fターム(参考)】
2G036AA24
2G036BA06
2G036CA12
5E034DA07
5E034DD01
5E034EC01
(57)【要約】
【課題】避雷器に直流電流を加えるシンプルな方法でありながら、避雷器全体の劣化の程度を評価することができる避雷器劣化評価方法を提供する。
【解決手段】避雷器劣化評価方法は、複数の酸化亜鉛素子を積層させた避雷器の避雷器劣化評価方法である。避雷器劣化評価方法は、基準電流値を決定する基準電流値決定工程と、避雷器を、直流電流を流すことができる装置へ接続する接続工程と、基準電流値で直流電流を付加し、その際の電圧を測定する測定工程と、を包含する。この態様により、避雷器の劣化の程度を容易に把握できる。よって常に避雷器の性能を確保可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の酸化亜鉛素子の積層体を含む避雷器の避雷器劣化評価方法であって、
基準電流値を決定する基準電流値決定工程と、
前記避雷器を、直流電流を流すことができる装置へ接続する接続工程と、
前記基準電流値で直流電流を付加し、その際の電圧を測定する測定工程と、
を包含する、
ことを特徴とする避雷器劣化評価方法。
【請求項2】
前記基準電流値決定工程において、
前記複数の酸化亜鉛素子の一部が、劣化した酸化亜鉛素子と交換された試験避雷器に、あらかじめ定められた電流となるように直流電圧を課し、前記複数の酸化亜鉛素子の全てが正常酸化亜鉛素子である場合と比較することにより、基準電流値を決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の避雷器劣化評価方法。
【請求項3】
前記基準電流値決定工程において、
前記直流電圧は、雷インパルス発生装置により課される、
ことを特徴とする請求項2に記載の避雷器劣化評価方法。
【請求項4】
前記劣化した酸化亜鉛素子は、
直流電流で1mAを付加したときの電圧値があらかじめ定められた値以下である、
ことを特徴とする請求項2に記載の避雷器劣化評価方法。
【請求項5】
前記基準電流値決定工程では、
前記酸化亜鉛素子の一つを、劣化した酸化亜鉛素子と交換して直流電圧を課す第1工程と、
前記酸化亜鉛素子の二以上を、劣化した酸化亜鉛素子と交換して直流電圧を課す第2工程と、
を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の避雷器劣化評価方法
【請求項6】
前記基準電流値が1mAである、
ことを特徴とする請求項1に記載の避雷器劣化評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、避雷器劣化評価方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、避雷器の劣化程度を評価する避雷器劣化評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
避雷器は、発電、変電、送電、配電系統の電力機器または電力の供給を受ける需要家の需要機器、有線通信回線、空中線系、通信機器などを、雷などにより生じる過渡的な異常高電圧から保護する機器であり、いわゆるサージ防護機器のひとつである。この避雷器は、サージ電圧に対しては低抵抗、通常の対地電圧に対しては高抵抗を示す非直線性の電流電圧特性を有している。この避雷器の典型的な構造は、酸化亜鉛(ZnO)を主成分とする複数の酸化亜鉛素子を積層し、その積層体の外周面に、弾性を有するポリマーなどの絶縁外被体を被着した構造である。
【0003】
図4には、上記の酸化亜鉛素子を用いた避雷器の構成および避雷器の等価回路を示す。特許文献1では、避雷器を構成する酸化亜鉛素子(限流素子)を、多段階に強制劣化させ、その際に測定された限流素子ごとの抵抗分電流とV
10μAとの関係から、避雷器内部の限流素子の劣化度合などを評価している。ここでV
10μAは、限流素子に直流10μAを流した時の電圧降下分を意味している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
避雷器は、雷撃を受けるたびに劣化すると考えられている。そして避雷器の劣化の程度が激しくなった場合、すなわち不良品となった場合は、所定の直流電流値に対する電圧値が下がり雷から保護をする動作ができなくなり、電力系統などでの事故が起こるとともに、外部の絶縁外被体が破損するなどの外観に異常が生じる。その後外観の異常を頼りに不良品を発見して、良品と交換されるという運用が現在行われている。
【0006】
前記したように避雷器は、雷撃を受けるたびに劣化するので、不良品とは判断されないものの、劣化の程度が不良品に近いものが存在する。この場合、避雷器は、避雷器としての本来の役目を果たさなくなるという問題がある。これを防ぐためには、避雷器が不良品には至っていない劣化状態を評価することが課題となる。かかる事情への対策として、関連工事に合わせて避雷器を新品に替える運用も行われているが、雷撃を受けていない新品と同等の避雷器や劣化が未だ生じていない避雷器も廃棄することとなって損失が生じる問題があり、これを防ぐためには劣化状態を評価できるようにすることが課題となる。
【0007】
特許文献1では、避雷器を構成する酸化亜鉛素子に直流を流して、酸化亜鉛素子を劣化させて避雷器の劣化の程度を評価する方法が開示されているが、この方法では、1p.u(p.uとは、連続使用電圧を1p.uとして、課電圧の倍数を示す)以上の商用周波の交流電圧を課電して使用する避雷器であることが前提となっていて、これを課電せずに使用する避雷器では劣化の程度を知ることができないという問題がある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑み、避雷器に直流電流を加えるシンプルな方法でありながら、避雷器全体の劣化の程度を評価することができる避雷器劣化評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明の避雷器劣化評価方法は、複数の酸化亜鉛素子の積層体を含む避雷器の避雷器劣化評価方法であって、基準電流値を決定する基準電流値決定工程と、前記避雷器を、直流電流を流すことができる装置へ接続する接続工程と、前記基準電流値で直流電流を付加し、その際の電圧を測定する測定工程と、を包含することを特徴とする。
第2発明の避雷器劣化評価方法は、第1発明において、前記基準電流値決定工程において、前記複数の酸化亜鉛素子の一部が、劣化した酸化亜鉛素子と交換された試験避雷器に、あらかじめ定められた電流となるように直流電圧を課し、前記複数の酸化亜鉛素子の全てが正常酸化亜鉛素子である場合と比較することにより、基準電流値を決定することを特徴とする。
第3発明の避雷器劣化評価方法は、第2発明において、前記基準電流値決定工程において、前記直流電圧は、雷インパルス発生装置により課されることを特徴とする。
第4発明の避雷器劣化評価方法は、第2発明において、前記劣化した酸化亜鉛素子は、直流電流で1mAを付加したときの電圧値があらかじめ定められた値以下であることを特徴とする。
第5発明の避雷器劣化評価方法は、第1発明において、前記基準電流値決定工程では、前記酸化亜鉛素子の一つを、劣化した酸化亜鉛素子とする第1工程と、前記酸化亜鉛素子の二以上を、劣化した酸化亜鉛素子とする第2工程と、を含むことを特徴とする。
第6発明の避雷器劣化評価方法は、第1発明において、前記基準電流値が1mAであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1発明によれば、避雷器に対して基準電流値で直流電流を付加することにより抵抗分漏れ電流を基準とできるので、避雷器の劣化の程度を容易に把握できる。これにより常に避雷器の性能を確保することができる。
第2発明によれば、複数の酸化亜鉛素子の一部が、劣化した酸化亜鉛素子と交換された試験避雷器を用いて基準電流値を決定することにより、雷撃により避雷器の一部が劣化した避雷器と類似した状態で基準電流値を決定することができる。
第3発明によれば、雷インパルス発生装置により、直流電圧が課されることにより、雷撃による劣化に、より類似させることができる。
第4発明によれば、直流電流で1mAを付加したときの電圧値があらかじめ定められた値以下となる酸化亜鉛素子を、劣化した酸化亜鉛素子として用いることにより、雷撃による劣化に、より類似させることができる。
第5発明によれば、基準電流値決定工程において、酸化亜鉛素子の一つを劣化した酸化亜鉛素子と交換して直流電圧を課す第1工程と、酸化亜鉛素子の二以上を劣化した酸化亜鉛素子と交換して直流電圧を課す第2工程と、を含むことにより、一つの酸化亜鉛素子が劣化した状態に基づいて基準電流値を求めることができる。
第6発明によれば、基準電流値が1mAであることにより、劣化の程度の判定が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る避雷器劣化評価方法のフロー図である。
【
図2】
図1の避雷器劣化評価方法の基準電流値決定工程で用いられる酸化亜鉛素子の模式図である。
【
図3】
図1の避雷器劣化評価方法において、試験避雷器に課された直流電圧の値を示すグラフである。
【
図4】(A)
図1の避雷器劣化評価方法で評価される避雷器の模式図である。(B)
図1の避雷器劣化評価方法で評価される避雷器の等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための避雷器劣化評価方法を例示するものであって、本発明は避雷器劣化評価方法を以下のものに特定しない。なお、各図面が示す部材の大きさまたは位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。
【0013】
本発明に係る避雷器劣化評価方法は、複数の酸化亜鉛素子の積層体を含む避雷器の避雷器劣化評価方法であって、基準電流値を決定する基準電流値決定工程と、前記避雷器を、直流電流を流すことができる装置へ接続する接続工程と、前記基準電流値で直流電流を付加し、その際の電圧を測定する測定工程と、を包含する。
【0014】
この態様により、避雷器に対して基準電流値で直流電流を付加することにより抵抗分漏れ電流を基準とできるので、避雷器の劣化の程度を容易に把握できる。これにより常に避雷器の性能を確保することができる。
【0015】
また、本発明に係る避雷器劣化評価方法は、前記基準電流値決定工程において、前記複数の酸化亜鉛素子の一部が、劣化した酸化亜鉛素子と交換された試験避雷器に、あらかじめ定められた電流となるように直流電圧を課し、前記複数の酸化亜鉛素子の全てが正常酸化亜鉛素子である場合と比較することにより、基準電流値を決定する。この態様により、雷撃により避雷器の一部が劣化した避雷器と類似した状態で基準電流値を決定することができる。
【0016】
また、本発明に係る避雷器劣化評価方法は、前記基準電流値決定工程において、前記直流電圧は、雷インパルス発生装置により課される。この態様により、雷インパルス発生装置により、直流電圧が付加されるので、雷撃による劣化に、より類似させることができる。
【0017】
また、本発明に係る避雷器劣化評価方法は、前記劣化した酸化亜鉛素子は、直流電流で1mAを付加したときの電圧値があらかじめ定められた値以下である。この態様により、雷撃による劣化に、より類似させることができる。
【0018】
また、本発明に係る避雷器劣化評価方法は、前記基準電流値決定工程では、前記酸化亜鉛素子の一つを、劣化した酸化亜鉛素子と交換して直流電圧を課す第1工程と、前記酸化亜鉛素子の二以上を、劣化した酸化亜鉛素子と交換して直流電圧を課す第2工程と、を含む。この態様により、一つの酸化亜鉛素子が劣化した状態に基づいて基準電流値を求めることができる。
【0019】
また、本発明に係る避雷器劣化評価方法は、前記基準電流値が1mAである。この態様により、劣化の程度の判定が容易になる。
【0020】
(実施形態)
図1には本発明の実施形態に係る避雷器劣化評価方法のフロー図を示す。
図1に示すように本実施形態の避雷器劣化評価方法は、複数の酸化亜鉛素子11の積層体を含む避雷器10(
図4(A)参照)を対象としている。本実施形態の避雷器劣化評価方法は、ステップ01(以下、S01のように記載する)の基準電流値決定工程と、S02の接続工程と、S03の測定工程と、を包含している。以下、各工程について説明する。
【0021】
(基準電流値決定工程)
避雷器劣化評価方法の実施者は、S01の基準電流値決定工程において、その後の測定工程で用いられる基準電流値を決定する。
図4(A)に示すように、本実施形態の避雷器劣化評価方法の対象となる避雷器10は、
図4(A)の紙面における上部から下部へ向けて、長い軸心を有する形状をしている。そして、その内部に複数の酸化亜鉛素子11を軸心方向に積層し、その積層体の外周面に、絶縁外被体12が被着されている。避雷器10は、上部と下部との間の抵抗値が、その構成要素の酸化亜鉛素子11の有する性質により、非直線となる性質を有する。
【0022】
図2には、避雷器10を構成する酸化亜鉛素子11の積層体の模式図を示す。
図2(A)は第1試験避雷器を構成する第1積層体11aを、
図2(B)は第2試験避雷器を構成する第2積層体11bを示している。
【0023】
一般的に用いられる避雷器10内には、酸化亜鉛素子11をその軸心方向に複数個(例えば、
図2においては10個)積み上げた積層体が用いられている。この酸化亜鉛素子11は、避雷器10として組み上げる前に、一個ずつ検査され、所定の基準をクリアした正常酸化亜鉛素子20が積層されて、避雷器10に用いられる。
【0024】
本実施形態では、基準電流値決定工程において、複数の酸化亜鉛素子11の一部が、劣化した酸化亜鉛素子と交換された試験避雷器に、あらかじめ定められた電流となるように直流電圧を課し、複数の酸化亜鉛素子の全てが正常酸化亜鉛素子である場合と比較することにより、基準電流値を決定する。
【0025】
図2(A)に示す第1積層体11aは、その軸心方向に積層されている10個の酸化亜鉛素子11のうち、正常酸化亜鉛素子20が9つ、劣化した酸化亜鉛素子21が1つである。また
図2(B)に示す第2積層体11bは、その軸心方向に積層されている10個の酸化亜鉛素子11のうち、正常酸化亜鉛素子20が8つ、劣化した酸化亜鉛素子21が2つである。例として10%の劣化管理を行うには、
図2に示すように、酸化亜鉛素子11の積層数が10個の第1積層体11aに対して1個の劣化した酸化亜鉛素子21を用いて直流電流1mAを付加したときの電圧値を劣化規定値とする。
【0026】
図3には、避雷器劣化評価方法において、試験避雷器に課された直流電圧の値を示すグラフである。このグラフの横軸は、避雷器10を構成する酸化亜鉛素子11に含まれる劣化した酸化亜鉛素子21の個数であり、縦軸は、あらかじめ定められた直流電流を流した際の直流電圧の値を示している。
【0027】
まず避雷器劣化評価方法の実施者は、正常酸化亜鉛素子20のみで構成される避雷器10について、1mA、0.1mA、0.01mAの各直流電流を付加した際に、正常な避雷器10が取り得る電圧値を測定する。
図3において1mAの直流電流を付加した場合、その電圧値は、特定の幅を持つ。
図3の一番上の帯状のドットで表した区間が、1mAを付加した際の電圧値である。次に上から二番目の帯状のドットで表した区間が、0.1mAを付加した際の電圧値である。そして、一番下の帯状のドットで表した区間が、0.01mAを付加した際の電圧値である。このように付加する直流電流の値により、避雷器10の正常な電圧の値が異なるのは、避雷器10の内部にある酸化亜鉛素子11の特性のためである。
【0028】
図3の帯状のドットで表した区間は、例えばあらかじめ定められた数量の正常酸化亜鉛素子20のみで構成される避雷器10に対して、1mA等の電流を付加し、その際の電圧値を測定した結果で決定される。その決定方法は特に限定されない。例えば、その電圧値の3σ区間(平均値から±3σの区間)を、帯状のドットで表した区間としたり、その最大値と最小値との間を帯状のドットで表した区間としたりすることができる。すなわち3σ区間の方法を採用した場合、電圧値の小さいほうの閾値は、平均値から3σだけ小さい値であり、最大値最小値の方法を採用した場合は、測定された電圧値の最小値が、電圧値の小さいほうの閾値となる。
【0029】
次に避雷器劣化評価方法の実施者は、避雷器10の中の一つの正常酸化亜鉛素子20を劣化した酸化亜鉛素子21と交換し、各直流電流を付加する(第1工程)。
図3において、1mAの際の電圧値を符号〇、0.1mAの際の電圧値を△、0.01mAの際の電圧値を□で表す。続けてその実施者は、避雷器10の中の正常酸化亜鉛素子20のさらに一つ、計2つを劣化した酸化亜鉛素子21と交換し、各直流電流を付加する(第2工程の一つ)。最後にその実施者は、避雷器10の中の正常酸化亜鉛素子20のさらに1つ、計3つを劣化した酸化亜鉛素子21と交換し、各直流電流を付加する(第2工程の一つ)。
【0030】
図3に示すように、1mA、0.1mA、0.01mAの直流電流が付加されたいずれの場合においても、劣化した酸化亜鉛素子21への交換した個数が増えるに従い、直流電圧の値は小さくなっている。しかし、正常酸化亜鉛素子20でのみ構成された際の電圧値を表す区間との差を比較すると、1mAの場合は、劣化した酸化亜鉛素子21の個数が1個であっても差が生じていることがわかるが、0.1mA、0.01mAの場合は、劣化した酸化亜鉛素子21の個数が1個の場合は差がほとんど生じていないことがわかる。これにより、例えば、基準電流値を1mAと定めることができる。このように本実施形態では、劣化した酸化亜鉛素子21と交換された試験避雷器に、あらかじめ定められた電流となるように直流電圧を課すことにより基準電流値を決定する。
【0031】
複数の酸化亜鉛素子11の一部が、劣化した酸化亜鉛素子21と交換された試験避雷器を用いて基準電流値を決定することにより、雷撃により避雷器の一部が劣化した避雷器と類似した状態で基準電流値を決定することができる。また、避雷器10に対して基準電流値で直流電流を付加することにより抵抗分漏れ電流を基準とできるので、避雷器10の劣化の程度を容易に把握できる。これにより常に避雷器10の性能を確保することができる。
【0032】
なお、劣化した酸化亜鉛素子21は、例えば正常酸化亜鉛素子20に雷インパルス発生装置により課せられることが好ましい。例えば雷インパルス発生装置は、単極性あるいは振動性波形のインパルス電流を発生することができる装置であり、実際に使用する標準的な電流波形は、規約波頭長/規約波尾長が、制限電圧試験では8/20μs、放電耐量試験ではさらに4/10μsの電流波形である。この雷インパルス電流を付加し、直流電流1mAが付加されたときの直流電圧値があらかじめ定められた値以下であることが好ましい。具体的にその値は、例えば5kV以下のものとすることが好ましい。直流電流で1mAを付加したときの電圧値が5kVとなる酸化亜鉛素子を、劣化した酸化亜鉛素子21として用いることにより、雷撃による劣化に、より類似させることができる。
【0033】
また、基準電流値決定工程において、酸化亜鉛素子11の一つを劣化した酸化亜鉛素子21と交換して直流電圧を課す第1工程と、酸化亜鉛素子11の二以上を劣化した酸化亜鉛素子21と交換して直流電圧を課す第2工程と、を含むことにより、一つの酸化亜鉛素子11が劣化した状態に基づいて基準電流値を求めることができる。
【0034】
(接続工程)
次に、本実施形態に係る避雷器劣化評価方法の実施者は、評価対象となる避雷器10を、直流電流を流すことができる装置へ接続する接続工程を実施する。この装置は、直流電流を流すものであれば、特に限定されない。例えばこの装置は、ダイオードのはしご回路で、直流電流を昇圧できるものであることが好ましい。
【0035】
(測定工程)
次に、本実施形態に係る避雷器劣化評価方法の実施者は、装置に接続された避雷器10に対し、基準電流値で直流電流を付加し、その際の電圧を測定する測定工程を実施する。ここで基準電流値は、基準電流値決定工程で決定された数値を用いる。例えば、
図3に示すような結果となった場合、基準電流値は1mAとすることが好ましい。基準電流値が1mAであることにより、劣化の程度の判定が容易になる。
【0036】
(その他)
本実施形態では、基準電流値決定工程、接続工程、および測定工程をこの順で実施すると説明した。しかし、基準電流値決定工程により基準電流値が決定した後は、接続工程、測定工程のみが実施されることがある。この場合でも、一度基準電流値決定工程が実施されている場合、接続工程および測定工程の実施は、本発明の実施に該当する。
【符号の説明】
【0037】
10 避雷器
11 酸化亜鉛素子
12 絶縁外被体
20 正常酸化亜鉛素子
21 劣化した酸化亜鉛素子