(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021898
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】生成プログラム、生成方法および情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/02 20230101AFI20250206BHJP
【FI】
G06Q30/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125994
(22)【出願日】2023-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 崇史
【テーマコード(参考)】
5L030
5L049
【Fターム(参考)】
5L030BB01
5L049BB01
(57)【要約】
【課題】低コストで店舗内における利用客の動線解析を行う。
【解決手段】実施形態の生成プログラムは、設定する処理と、生成する処理とをコンピュータに実行させる。設定する処理は、商品の売上情報に基づき、購入商品の商品カテゴリの組み合わせそれぞれに対する重みを設定する。生成する処理は、記憶部に記憶された、購入商品の商品カテゴリの組み合せが異なる複数の購入パターンごとの、店舗内の利用者の行動履歴を可視化して示す基底可視化情報を、設定した重みに基づき合成し、売上情報に対応した利用者の行動履歴を可視化して示す可視化情報を生成する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品の売上情報に基づき、購入商品の商品カテゴリの組み合わせそれぞれに対する重みを設定し、
記憶部に記憶された、購入商品の商品カテゴリの組み合せが異なる複数の購入パターンごとの、店舗内の利用者の行動履歴を可視化して示す基底可視化情報を、設定した前記重みに基づき合成し、前記売上情報に対応した利用者の行動履歴を可視化して示す可視化情報を生成する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする生成プログラム。
【請求項2】
前記商品カテゴリごとの店舗内の配置を示す店舗情報に基づき、前記複数の購入パターンごとに、前記店舗内の利用者に対応するエージェントの移動をシミュレーションして前記基底可視化情報を生成する処理をさらにコンピュータに実行させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の生成プログラム。
【請求項3】
前記可視化情報を生成する処理は、時間帯ごとの前記売上情報に基づき設定した時間帯ごとの前記重みに基づいて前記基底可視化情報を合成し、時間帯ごとの前記可視化情報を生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の生成プログラム。
【請求項4】
商品の売上情報に基づき、購入商品の商品カテゴリの組み合わせそれぞれに対する重みを設定し、
記憶部に記憶された、購入商品の商品カテゴリの組み合せが異なる複数の購入パターンごとの、店舗内の利用者の行動履歴を可視化して示す基底可視化情報を、設定した前記重みに基づき合成し、前記売上情報に対応した利用者の行動履歴を可視化して示す可視化情報を生成する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする生成方法。
【請求項5】
商品の売上情報に基づき、購入商品の商品カテゴリの組み合わせそれぞれに対する重みを設定し、
記憶部に記憶された、購入商品の商品カテゴリの組み合せが異なる複数の購入パターンごとの、店舗内の利用者の行動履歴を可視化して示す基底可視化情報を、設定した前記重みに基づき合成し、前記売上情報に対応した利用者の行動履歴を可視化して示す可視化情報を生成する、
処理を実行する制御部を含むことを特徴とする情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、生成プログラム、生成方法および情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スーパーやコンビニエンスストアなどの小売店舗のマーケティング分野において、店内の各点における利用客の累積滞在時間を店内地図に重ねて表示したヒートマップを生成する従来技術がある。このヒートマップは、利用客の人流・動線を解析し(以下、動線解析)、混雑の緩和と言った店舗の効率改善や、アクセス・売上の改善を目的とする分析のために大変有用な可視化・分析ツールである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/0253740号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来技術では、ヒートマップの生成に多大なコストがかかり、利用客の動線解析を低コストで行うことが困難であるという問題がある。
【0005】
例えば、利用客の実際の動きを計測してヒートマップを作成する場合は、各時刻における店舗内の利用客の座標を、電波通信技術を用いた測位や、店舗内の全域を観測できるカメラによる撮影画像をもとに特定するための設備を用意する必要がある。
【0006】
また、POS(Point Of Sale)データをもとにしたエージェントシミュレーションにより利用客の店舗内の動きを模擬的にシミュレーションしてヒートマップを生成する場合は、POSデータに含まれる利用客それぞれをエージェントでシミュレーションすることから、多大な計算コストが生じる。また、朝、昼、夜の時間帯ごとに客層の異なる小売店舗では、時間帯ごとの動線解析を行うために、各時間帯に対応した複数のヒートマップを生成することとなる。このため、時間帯ごとに収集したPOSデータをもとに時間帯ごとのエージェントシミュレーションを行うために計算時間が長くなる。
【0007】
1つの側面では、低コストで店舗内における利用客の動線解析を行うことを可能とする生成プログラム、生成方法および情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの案では、生成プログラムは、設定する処理と、生成する処理とをコンピュータに実行させる。設定する処理は、商品の売上情報に基づき、購入商品の商品カテゴリの組み合わせそれぞれに対する重みを設定する。生成する処理は、記憶部に記憶された、購入商品の商品カテゴリの組み合せが異なる複数の購入パターンごとの、店舗内の利用者の行動履歴を可視化して示す基底可視化情報を、設定した重みに基づき合成し、売上情報に対応した利用者の行動履歴を可視化して示す可視化情報を生成する。
【発明の効果】
【0009】
1実施態様によれば、低コストで店舗内における利用客の動線解析を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態にかかる情報処理装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、店舗のレイアウト例を説明する説明図である。
【
図3】
図3は、POSデータの一例を説明する説明図である。
【
図4】
図4は、基底マップ生成処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、基底マップの一例を説明する説明図である。
【
図6A】
図6Aは、実施形態にかかる情報処理装置におけるヒートマップ生成の処理例を示すフローチャート(1)である。
【
図6B】
図6Bは、実施形態にかかる情報処理装置におけるヒートマップ生成の処理例を示すフローチャート(2)である。
【
図7】
図7は、POSデータに登場するレシートの一例を示す説明図である。
【
図8】
図8は、ヒストグラムの一例を示す説明図である。
【
図9】
図9は、生成したヒートマップの一例を示す説明図である。
【
図10】
図10は、コンピュータ構成の一例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、実施形態にかかる生成プログラム、生成方法および情報処理装置を説明する。実施形態において同一の機能を有する構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。なお、以下の実施形態で説明する生成プログラム、生成方法および情報処理装置は、一例を示すに過ぎず、実施形態を限定するものではない。また、以下の各実施形態は、矛盾しない範囲内で適宜組みあわせてもよい。
【0012】
図1は、実施形態にかかる情報処理装置の機能構成例を示すブロック図である。
図1に示すように、情報処理装置1は、通信部10、入力部20、表示部30、記憶部40、制御部50を有する。情報処理装置1としては、例えばPC(Personal Computer)などを適用できる。情報処理装置1は、店舗における商品の売上情報(POSデータ42)に基づき、POSデータ42が示す商品を購入した利用者の店舗内の行動履歴を可視化して示すヒートマップなどの可視化情報を生成する。
【0013】
通信部10は、ネットワークを介して外部装置等とデータ通信を実行する。例えば、通信部10は、制御部50の制御のもと、店舗に関する店舗情報41、店舗における商品の売上に関するPOSデータ42などを店舗のデータを管轄するサーバ装置等より取得する。通信部10は、取得した店舗情報41、POSデータ42を記憶部40に格納する。
【0014】
入力部20は、ユーザからの操作を受付ける。例えば、入力部20は、店舗内のレイアウト変更(例えば商品の陳列位置の変更)に伴う店舗情報41の修正指示をユーザより受け付ける。この修正指示に基づき、店舗情報41は、レイアウト変更に合わせた内容に修正される。
【0015】
表示部30は、制御部50の処理結果を表示する。例えば、表示部30は、制御部50が生成したヒートマップなどの可視化情報をディスプレイに表示する。
【0016】
記憶部40は、店舗情報41、POSデータ42、基底マップデータ43およびヒートマップデータ44を有する。例えば、記憶部40は、メモリ等により実現される。
【0017】
店舗情報41は、店舗のレイアウトなどを示す情報である。例えば、店舗情報41には、店舗内における利用者の出入り口、商品の陳列棚が並ぶ通路、レジなどのマップ(位置)情報が含まれる。また、店舗情報41には、店舗内における商品カテゴリ(アイス・パン、菓子、デザート、インスタント食品、非食品類等)ごとの商品の陳列位置を示す情報が含まれる。
【0018】
図2は、店舗のレイアウト例を説明する説明図である。具体的には、
図2では、利用客の動線解析の対象とする店舗ST1の平面レイアウトの一例を示している。
【0019】
図2に示すように、店舗ST1は、出入り口ST10から商品の陳列棚が並ぶ通路ST11~ST15を経てレジST16に至るレイアウトとなっている。店舗情報41には、このような店舗ST1のレイアウトを示すマップ情報が含まれている。
【0020】
また、店舗情報41には、通路ST11~ST15それぞれの陳列棚に配置される商品と、その商品に対応する商品カテゴリCAT01~CAT05の情報が含まれている。例えば、商品カテゴリCAT01がアイス・パンである場合、店舗情報41により、アイス・パンは、通路ST11の陳列棚に配置されていることがわかる。また、商品カテゴリCAT02が菓子である場合、店舗情報41により、菓子は、通路ST12の陳列棚に配置されていることがわかる。また、商品カテゴリCAT03がデザートである場合、店舗情報41により、デザートは、通路ST13の陳列棚に配置されていることがわかる。また、商品カテゴリCAT04が非食品類である場合、店舗情報41により、非食品類は、通路ST14の陳列棚に配置されていることがわかる。また、商品カテゴリCAT05がインスタント食品である場合、店舗情報41により、インスタント食品は、通路ST15の陳列棚に配置されていることがわかる。
【0021】
この通路ST11~ST15それぞれの陳列棚に配置される商品の商品カテゴリCAT01~CAT05の情報については、商品の配置換えのタイミングで情報処理装置1の利用者により更新されるものとする。
【0022】
図1に戻り、POSデータ42は、店舗ST1における商品の売上を示す売上情報の一例である。
図3は、POSデータ42の一例を説明する説明図である。
【0023】
図3に示すように、POSデータ42は、商品の売上ごとの情報を格納している。具体的には、POSデータ42は、売上ごとに、「年月日」、「時刻」、「レジ番号」、「レシート番号」、「JANコード」、「大分類」、「カテゴリ名」、「商品名」、「単価」、「数量」、「売上金額」などの情報を有する。
【0024】
「年月日」は、売上の年月日を示す。「時刻」は、売上の時刻を示す。「レジ番号」は、売上を記録したレジST16の識別番号を示す。「レシート番号」は、売上を記録したレシートの識別番号を示す。例えば、図示例における「レシート番号」が「3395」である6件の売上データについては、その番号で識別される1つのレシートに登録された売上であることを示している。
【0025】
「JANコード」は、売上を記録した商品を識別するJAN(Japanese Article Number)を示す。「大分類」は、売上を記録した商品の大分類(例えば、食品、非食、飲料、冷凍等)を示す。「カテゴリ名」は、売上を記録した商品のカテゴリ(野菜、日配、洗剤、菓子等)を示す。「商品名」は、売上を記録した商品の名称を示す。「単価」は、売上を記録した商品の単価を示す。「数量」は、売上を記録した商品の数量を示す。「売上金額」は、売上の金額を示す。
【0026】
図1に戻り、基底マップデータ43は、購入商品の商品カテゴリCAT01~CAT05の組み合せが異なる複数の購入パターンごとの、店舗ST1内の利用者の行動履歴を可視化して示す情報である。例えば、基底マップデータ43は、複数の購入パターン(基底)ごとに、店舗ST1の平面マップにおける利用者の行動履歴を重畳し、利用者の累積滞在時間の粗密度合いを濃淡で表現したヒートマップ(基底マップ)を含む。すなわち、基底マップデータ43は、基底可視化情報の一例である。
【0027】
ヒートマップデータ44は、POSデータ42に対応した利用者の行動履歴を可視化して示すヒートマップに関するデータである。すなわち、ヒートマップデータ44は、可視化情報の一例である。
【0028】
具体的には、ヒートマップデータ44は、POSデータ42に基づき、基底マップデータ43に含まれる基底マップを合成することで生成されたヒートマップのデータである(詳細は後述)。
【0029】
制御部50は、基底マップ生成部51、重み設定部52およびヒートマップ生成部53を有する。たとえば、制御部50は、プロセッサにより実現される。
【0030】
基底マップ生成部51は、商品カテゴリごとの店舗内の配置を示す店舗情報41に基づき、購入商品の商品カテゴリの組み合せが異なる複数の購入パターン(基底)ごとの、店舗ST1内の利用者の行動履歴を可視化したヒートマップ(基底マップ)を生成する処理部である。
【0031】
図4は、基底マップ生成処理の一例を示すフローチャートである。
図4に示すように、基底マップ生成部51は、店舗ST1に関する店舗情報41を取得する。これにより、基底マップ生成部51は、店舗ST1内のレジST16の位置、通路ST11~ST15(陳列棚)の位置、通路ST11~ST15の陳列棚に配置される商品および商品カテゴリCAT01~CAT05を取得する。ついで、基底マップ生成部51は、店舗情報41から商品カテゴリCAT01~CAT05の総数(ncat)を取得する(S1)。
【0032】
ついで、基底マップ生成部51は、商品カテゴリCAT01~CAT05の総数(ncat)をもとに、基底マップの総数(nd=2^ncat-1)を取得する(S2)。例えば、商品カテゴリCAT01~CAT05の総数(ncat)が5である場合、基底マップの総数はnd=2^5-1=31となる。すなわち、S2において、基底マップ生成部51は、商品カテゴリの組み合せが異なる複数の購入パターンの総数(nd)を求める。
【0033】
ついで、基底マップ生成部51は、商品カテゴリの組み合せが異なる複数の購入パターンに対応する、nd種類の仮想POSを作成する(S3)。
【0034】
具体的には、基底マップ生成部51は、1つの商品カテゴリに立ち寄る(商品カテゴリの商品を購入する)組み合わせから順に、最終的にncat個の商品カテゴリに立ち寄る組み合わせまでの購入パターンに対応する仮想POSを作成する。
【0035】
例えば、基底マップ生成部51は、まず、商品カテゴリCAT01~CAT05の中で1つの商品カテゴリに立ち寄る(商品カテゴリの商品を購入する)POSをncat個作成する(立寄確率は1)。同様に、基底マップ生成部51は、商品カテゴリCAT01~CAT05の中で2つの商品カテゴリに立ち寄るPOSをncatC2個作成する(立寄確率はそれぞれ1/2)。以降、基底マップ生成部51は、商品カテゴリCAT01~CAT05の中でk個の商品カテゴリに立ち寄るPOSをncatCk個作成する(立寄確率はそれぞれ1/k)。最終的に、基底マップ生成部51は、商品カテゴリCAT01~CAT05の中でncat個の商品カテゴリに立ち寄るPOSをncatCncat個作成する(立寄確率はそれぞれ1/ncat)。
【0036】
ついで、基底マップ生成部51は、処理番号(id)をid=0として初期化し(S4)、id<ndであるか否かを判定する(S5)。
【0037】
id<ndである場合(S5:Yes)、基底マップ生成部51は、idをインクリメントする(S6)。ついで、基底マップ生成部51は、id番目の仮想POSを読み込み、仮想POSに基づくエージェントシミュレーションを実行する(S7)。具体的には、基底マップ生成部51は、仮想POSにおいて立ち寄る(購入する)ものとする商品の商品カテゴリを経由することを前提とした公知のエージェントシミュレーションを実行する。
【0038】
ついで、基底マップ生成部51は、S7におけるエージェントシミュレーションの結果をもとにid番目の基底マップを取得し(S8)、S5へ処理を戻す。
【0039】
id<ndでない場合(S5:No)、基底マップ生成部51は、S5~S8の繰り返しにより、nd個の基底マップを取得する(S9)。ついで、基底マップ生成部51は、取得した基底マップを立ち寄った商品カテゴリの組み合わせを示す識別情報(id)とともに基底マップデータ43に格納して処理を終了する。
【0040】
図5は、基底マップの一例を説明する説明図である。
図5に示すように、基底マップ生成部51は、商品カテゴリCAT01~CAT05の組み合せが異なる複数の購入パターンについて、エージェントシミュレーションにより基底マップBM1、BM2、BM3…BMnを生成する。ついで、基底マップ生成部51は、生成した基底マップBM1、BM2、BM3…BMnそれぞれについて、購入パターン(商品カテゴリの組み合わせ)を示す識別情報を付与した上で、基底マップデータ43に格納する。
【0041】
上記の基底マップ生成部51による基底マップデータ43の生成は、店舗情報41における商品レイアウト(陳列棚に対応する商品カテゴリ)の更新時に1度行えばよい。すなわち、情報処理装置1では、店舗ST1内の商品レイアウトの更新がなければ、1度生成した基底マップデータ43を使い回すことができる。
【0042】
図1に戻り、重み設定部52は、POSデータ42に基づき、購入商品の商品カテゴリの組み合わせそれぞれに対する重みを設定する処理部である。
【0043】
ヒートマップ生成部53は、重み設定部52が設定した重みに基づき、基底マップデータ43に含まれる基底マップBM1、BM2、BM3…BMnを合成し、POSデータ42に対応した利用者の行動履歴を可視化して示すヒートマップデータ44を生成する処理部である。
【0044】
ここで、重み設定部52およびヒートマップ生成部53の処理について詳細に説明する。
図6A、
図6Bは、実施形態にかかる情報処理装置1におけるヒートマップ生成の処理例を示すフローチャートである。
【0045】
図6A、
図6Bに示すように、処理が開始されると、重み設定部52は、POSデータ42を読み込む(S10)。ここで、重み設定部52は、所定の時間帯(朝(6:00~10:00)、昼(10:00~18:00)、夜(18:00~22:00))に関するヒートマップを生成する場合は、対応する時間帯のPOSデータ42を読み込むものとする。
【0046】
例えば、昼(10:00~18:00)に関するヒートマップを生成する場合、
図3の例では、「レシート番号」が「3395」、「3983」、「4011」の売上データが読み込まれることとなる。ついで、夜(18:00~22:00)に関するヒートマップを生成する場合、
図3の例では、「レシート番号」が「4433」の売上データが読み込まれることとなる。
【0047】
ここで、重み設定部52は、読み込んだPOSデータ42について、そのPOSデータ42に含まれるレシートの枚数をnposとする。例えば、昼(10:00~18:00)の時間帯に対応するPOSデータ42を読み込んだ場合は、「レシート番号」が「3395」、「3983」、「4011」の3つあることから、npos=3とする。また、重み設定部52は、各レシートの記載されている購入商品の種類数(商品カテゴリ数)、すなわち利用客が立ち止まった回数をnstopとする。また、重み設定部52は、各購入商品に対応付けられている商品カテゴリをicatとする。
【0048】
ついで、重み設定部52は、購入商品の商品カテゴリの組み合わせそれぞれに対する重み(ヒストグラム)を初期化する(S11)。具体的には、重み設定部52は、上記のヒストグラムをhist(id)とし、hist(1)、hist(2)、…、hist(nd)で参照できる関数とする。上述したとおり、idは商品カテゴリの組み合わせを示す識別情報であり、ndは組み合わせの種類数である。重み設定部52は、このhist(id)を、hist(1:nd)=0として初期化する。
【0049】
ついで、重み設定部52は、npos>0であるか否かを判定する(S12)。一番最初にPOSを読み込んだ初回の処理ではレシートの枚数はnposであり、以後の処理(S14)では、レシートを1枚1枚処理するたびに、nposの値を一つずつ減らしていく。したがって、nposの値が正である間は処理を継続することで、すべてのレシートに対する処理を行うことができる。そして、npos>0でない場合(S12:No)はすべてのレシートを処理(重み付け)したことから、重み設定部52は、S17へ処理を進める。
【0050】
npos>0である場合(S12:Yes)、重み設定部52は、レシートごとに、立ち寄ったカテゴリについて重複のないリスト(list配列)を作成する。このlist配列は、整数配列であり、サイズがncatであるものとする。ここで、重み設定部52は、list(1:ncat)=0とし、list配列のすべての値をゼロに初期化する(S13)。ついで、重み設定部52は、nposの値を1つ減らし(S14)、リスト作成の処理を行う(S15)。
【0051】
リスト作成の処理において、重み設定部52は、各レシートから読み取れる利用客の立止まり回数nstopがnstop>0であるか否かを判定する(S20)。初回の処理では立止まり回数はnstopであり、以後の処理(S21)では、商品を処理するたびにnstopの値を一つずつ減らしてく。したがって、nstopの値が正である間は処理を継続することで、レシートにあるすべての商品に対する処理を行うことができる。nstop>0でない場合(S20:No)、重み設定部52は、レシートにあるすべての商品に対する処理が終わったことから、S16へ処理を進める。
【0052】
nstop>0である場合(S20:Yes)、重み設定部52は、購入イベント(レシートに記載された購入商品)が発生したカテゴリicatを識別する(S22)。
【0053】
図7は、POSデータに登場するレシートの一例を示す説明図である。
図7に示すように、POSデータ42よりレシートRE1、RE2、RE3が読み取られているものとする。重み設定部52は、このレシートRE1、RE2、RE3それぞれについて、購入イベント(レシートに記載された購入商品)が発生したカテゴリicatを識別する。例えば、レシートRE2からは、cat02、cat02、cat02、cat04が識別される。
【0054】
ついで、重み設定部52は、list(icat)=0であるか否かを判定し(S23)、list(icat)=0の場合(S23:Yes)、list(icat)=1とし(S24)、S20へ処理を戻す。list(icat)=0でない場合(S23:No)、重み設定部52は、S24を行わずにS20へ処理を戻す。
【0055】
これにより、重み設定部52は、立ち寄って買い物をした商品カテゴリだけlist(icat)=1のフラグを立てることができる。すなわち、重み設定部52は、POSデータ42の各レシートに立ち寄った商品カテゴリのリスト(list配列)が得られる。
【0056】
このようなリスト作成についで、重み設定部52は、リストをもとに、購入商品の商品カテゴリの組み合わせそれぞれに対する重み(ヒストグラム)のカウントを行う(S16)。
【0057】
具体的には、重み設定部52は、次のような足し算をする。
nsb=sum_{1≦id≦nd}list(id)*2^(id-1)
【0058】
例えば、list(1)=1、list(2)=1、list(3)=1、list(4)=0、list(5)=1の場合、nsbは次のような値となる。
nsb=1*2^0+1*2^1+1*2^2+0*2^(3)+1*2^4
=1+2+4+0+16
=23
【0059】
このようにして得た数値nsbは1からndまでのすべての整数値を一つずつ取る。そこで、重み設定部52は、この値を用いてidを探すことができる。
【0060】
より具体的には、重み設定部52は、nsb=0;icat=0として初期化する(S30)。
【0061】
ついで、重み設定部52は、list(icat+1)=0であるか否かを判定する(S31)。list(icat+1)=0の場合(S31:Yes)、重み設定部52は、pbs=0とし(S32)、S34へ処理を進める。list(icat+1)=0でない場合(S31:No)、重み設定部52は、pbs=2^icatとし(S33)、S34へ処理を進める。S34において、重み設定部52は、nsb+=psb;icat++とする。このように、重み設定部52は、nsbの足し合わせを行う。
【0062】
ついで、重み設定部52は、icat=ncatであるか否かを判定し(S35)、否定判定(No)の場合はS31へ処理を戻す。
【0063】
S35において肯定判定(Yes)の場合、重み設定部52は、nsbとidとの対応表を参照し、nsbの値から商品カテゴリの組み合わせidを決定する(S36)。ついで、重み設定部52は、商品カテゴリの組み合わせidが決定したので、hist(id)++としてヒストグラムにカウントを足し(S37)、S12へ処理を戻す。
【0064】
図8は、ヒストグラムの一例を示す説明図である。hist(id)++としてカウントしていくことで、
図8に示すように、商品カテゴリ(1~4)の組み合わせ{1}、{2}…{1,2,3,4}ごとのヒストグラムG1を得ることができる。
【0065】
すべてのレシートを処理(重み付け)した後のS17において、ヒートマップ生成部53は、基底マップデータ43に含まれる基底マップBM1、BM2…BMnを、重み設定部52が設定した重みに基づき合成してヒートマップを作成する。
【0066】
具体的には、ヒートマップ生成部53は、ヒストグラムhist(:)を取得する(S40)。ついで、ヒートマップ生成部53は、商品カテゴリの組み合わせidごとに準備されている基底マップBM1、BM2…BMnを、hist(id)を乗じて足し合わせる(S41)。ついで、ヒートマップ生成部53は、S41の足し合わせにより合成したヒートマップをヒートマップデータ44として出力し(S42)、処理を終了する。
【0067】
図9は、生成したヒートマップの一例を示す説明図である。
図9において、ヒートマップHM1は、POSデータ42をもとに情報処理装置1が生成したヒートマップである。ヒートマップHM2は、POSデータ42が得られたときの実際の利用客の動きを測定して得られた、すなわち実測値によるヒートマップである。
【0068】
図9に示すように、情報処理装置1が生成したヒートマップHM1は、実測値によるヒートマップHM2とほぼ同じものであり、精度のよい結果が得られていることがわかる。
【0069】
これは、ヒートマップの出力に関しては、エージェント同士の相互作用の影響が少なく、基底マップBM1、BM2…BMnの重ね合わせが有効であるためと言える。
【0070】
例えば、店舗ST1内での利用客の相互作用には、レジ待ち、待ち、混雑、すれ違い回避などがある。しかしながら、実際にはこのような相互作用が生じるケースは、極めてまれなことである。一例として、待ち、混雑が発生するのは、営業時間内において極限られた時間であり、このような短時間における相互作用は十分に無視できる。したがって、基底マップBM1、BM2…BMnを、POSデータ42に基づく重みをもとに合成して生成したヒートマップHM1については、精度よく人流を表現したものとなる。
【0071】
以上のように、情報処理装置1は、POSデータ42に基づき、購入商品の商品カテゴリの組み合わせそれぞれに対する重みを設定する。情報処理装置1は、記憶部40に記憶された、購入商品の商品カテゴリの組み合せが異なる複数の購入パターンごとの、店舗ST1内の利用者の行動履歴を可視化して示す基底マップBM1、BM2…BMnを、設定した重みに基づき合成する。この基底マップBM1、BM2…BMnの合成により、情報処理装置1は、POSデータ42に対応した利用者の行動履歴を可視化して示すヒートマップHM1を生成する。
【0072】
これにより、情報処理装置1は、店舗ST1内の利用者の動きの測定や、エージェントシミュレーションによる利用者の動きの再現を行うことなく、POSデータ42に対応した利用者の行動履歴を可視化して示すヒートマップHM1を得ることができる。このため、情報処理装置1では、店舗ST1内における利用者の動線解析を低コストで行うことができる。
【0073】
また、情報処理装置1は、商品カテゴリごとの店舗内の配置を示す店舗情報41に基づき、複数の購入パターンごとに、店舗内の利用者に対応するエージェントの移動をシミュレーションして基底マップBM1、BM1、BM2…BMnを生成する。これにより、情報処理装置1は、商品カテゴリごとの店舗内の配置に対応する、複数の購入パターンごとの基底マップBM1、BM1、BM2…BMnを、商品配置を変えるたびに利用者の動きを測定することなく、容易に取得することができる。
【0074】
また、情報処理装置1は、時間帯ごとのPOSデータ42に基づき設定した時間帯ごとの重みに基づいて基底マップBM1、BM1、BM2…BMnを合成し、時間帯ごとのヒートマップHM1を生成する。これにより、情報処理装置1は、店舗ST1内の利用者の動きの測定や、エージェントシミュレーションによる利用者の動きの再現を時間帯ごとに行うことなく、時間帯ごとのPOSデータ42に対応するヒートマップHM1を容易に得ることができる。
【0075】
なお、図示した各装置の各構成要素は、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0076】
また、情報処理装置1の制御部50で行われる基底マップ生成部51、重み設定部52およびヒートマップ生成部53の各種処理機能は、CPU(またはMPU、MCU(Micro Controller Unit)等のマイクロ・コンピュータ)上で、その全部または任意の一部を実行するようにしてもよい。また、各種処理機能は、CPU(またはMPU、MCU等のマイクロ・コンピュータ)で解析実行されるプログラム上、またはワイヤードロジックによるハードウエア上で、その全部または任意の一部を実行するようにしてもよいことは言うまでもない。また、情報処理装置1で行われる各種処理機能は、クラウドコンピューティングにより、複数のコンピュータが協働して実行してもよい。
【0077】
ところで、上記の実施形態で説明した各種の処理は、予め用意されたプログラムをコンピュータで実行することで実現できる。そこで、以下では、上記の実施形態と同様の機能を有するプログラムを実行するコンピュータ構成(ハードウエア)の一例を説明する。
図10は、コンピュータ構成の一例を説明する説明図である。
【0078】
図10に示すように、コンピュータ200は、各種演算処理を実行するCPU201と、データ入力を受け付ける入力装置202と、モニタ203と、スピーカ204とを有する。また、コンピュータ200は、記憶媒体からプログラム等を読み取る媒体読取装置205と、各種装置と接続するためのインタフェース装置206と、有線または無線により外部機器と通信接続するための通信装置207とを有する。また、コンピュータ200は、各種情報を一時記憶するRAM208と、ハードディスク装置209とを有する。また、コンピュータ200内の各部(201~209)は、バス210に接続される。
【0079】
ハードディスク装置209には、上記の実施形態で説明した機能構成(例えば基底マップ生成部51、重み設定部52およびヒートマップ生成部53)における各種の処理を実行するためのプログラム211が記憶される。また、ハードディスク装置209には、プログラム211が参照する各種データ212が記憶される。入力装置202は、例えば、操作者から操作情報の入力を受け付ける。モニタ203は、例えば、操作者が操作する各種画面を表示する。インタフェース装置206は、例えば印刷装置等が接続される。通信装置207は、LAN(Local Area Network)等の通信ネットワークと接続され、通信ネットワークを介した外部機器との間で各種情報をやりとりする。
【0080】
CPU201は、ハードディスク装置209に記憶されたプログラム211を読み出して、RAM208に展開して実行することで、上記の機能構成(例えば基底マップ生成部51、重み設定部52およびヒートマップ生成部53)に関する各種の処理を行う。なお、プログラム211は、ハードディスク装置209に記憶されていなくてもよい。例えば、コンピュータ200が読み取り可能な記憶媒体に記憶されたプログラム211を読み出して実行するようにしてもよい。コンピュータ200が読み取り可能な記憶媒体は、例えば、CD-ROMやDVDディスク、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の可搬型記録媒体、フラッシュメモリ等の半導体メモリ、ハードディスクドライブ等が対応する。また、公衆回線、インターネット、LAN等に接続された装置にこのプログラム211を記憶させておき、コンピュータ200がこれらからプログラム211を読み出して実行するようにしてもよい。
【0081】
以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0082】
(付記1)商品の売上情報に基づき、購入商品の商品カテゴリの組み合わせそれぞれに対する重みを設定し、
記憶部に記憶された、購入商品の商品カテゴリの組み合せが異なる複数の購入パターンごとの、店舗内の利用者の行動履歴を可視化して示す基底可視化情報を、設定した前記重みに基づき合成し、前記売上情報に対応した利用者の行動履歴を可視化して示す可視化情報を生成する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする生成プログラム。
【0083】
(付記2)前記商品カテゴリごとの店舗内の配置を示す店舗情報に基づき、前記複数の購入パターンごとに、前記店舗内の利用者に対応するエージェントの移動をシミュレーションして前記基底可視化情報を生成する処理をさらに前記コンピュータに実行させる、
ことを特徴とする付記1に記載の生成プログラム。
【0084】
(付記3)前記可視化情報を生成する処理は、時間帯ごとの前記売上情報に基づき設定した時間帯ごとの前記重みに基づいて前記基底可視化情報を合成し、時間帯ごとの前記可視化情報を生成する、
ことを特徴とする付記1に記載の生成プログラム。
【0085】
(付記4)商品の売上情報に基づき、購入商品の商品カテゴリの組み合わせそれぞれに対する重みを設定し、
記憶部に記憶された、購入商品の商品カテゴリの組み合せが異なる複数の購入パターンごとの、店舗内の利用者の行動履歴を可視化して示す基底可視化情報を、設定した前記重みに基づき合成し、前記売上情報に対応した利用者の行動履歴を可視化して示す可視化情報を生成する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする生成方法。
【0086】
(付記5)前記商品カテゴリごとの店舗内の配置を示す店舗情報に基づき、前記複数の購入パターンごとに、前記店舗内の利用者に対応するエージェントの移動をシミュレーションして前記基底可視化情報を生成する処理をさらに前記コンピュータが実行する、
ことを特徴とする付記4に記載の生成方法。
【0087】
(付記6)前記可視化情報を生成する処理は、時間帯ごとの前記売上情報に基づき設定した時間帯ごとの前記重みに基づいて前記基底可視化情報を合成し、時間帯ごとの前記可視化情報を生成する、
ことを特徴とする付記4に記載の生成方法。
【0088】
(付記7)商品の売上情報に基づき、購入商品の商品カテゴリの組み合わせそれぞれに対する重みを設定し、
記憶部に記憶された、購入商品の商品カテゴリの組み合せが異なる複数の購入パターンごとの、店舗内の利用者の行動履歴を可視化して示す基底可視化情報を、設定した前記重みに基づき合成し、前記売上情報に対応した利用者の行動履歴を可視化して示す可視化情報を生成する、
処理を実行する制御部を含むことを特徴とする情報処理装置。
【0089】
(付記8)前記商品カテゴリごとの店舗内の配置を示す店舗情報に基づき、前記複数の購入パターンごとに、前記店舗内の利用者に対応するエージェントの移動をシミュレーションして前記基底可視化情報を生成する処理をさらに前記制御部が実行する、
ことを特徴とする付記7に記載の情報処理装置。
【0090】
(付記9)前記可視化情報を生成する処理は、時間帯ごとの前記売上情報に基づき設定した時間帯ごとの前記重みに基づいて前記基底可視化情報を合成し、時間帯ごとの前記可視化情報を生成する、
ことを特徴とする付記7に記載の情報処理装置。
【符号の説明】
【0091】
1…情報処理装置
10…通信部
20…入力部
30…表示部
40…記憶部
41…店舗情報
42…POSデータ
43…基底マップデータ
44…ヒートマップデータ
50…制御部
51…基底マップ生成部
52…重み設定部
53…ヒートマップ生成部
200…コンピュータ
201…CPU
202…入力装置
203…モニタ
204…スピーカ
205…媒体読取装置
206…インタフェース装置
207…通信装置
208…RAM
209…ハードディスク装置
210…バス
211…プログラム
212…各種データ
BM1~BMn…基底マップ
CAT01~CAT05…商品カテゴリ
G1…ヒストグラム
HM1、HM2…ヒートマップ
RE1~RE3…レシート
ST1…店舗
ST10…出入り口
ST11~ST15…通路
ST16…レジ