(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002192
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】トラブル早期発見システム、トラブル早期発見プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/00 20230101AFI20241226BHJP
【FI】
G06Q10/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102187
(22)【出願日】2023-06-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】512049225
【氏名又は名称】公益社団法人 子どもの発達科学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100215027
【弁理士】
【氏名又は名称】留場 恒光
(72)【発明者】
【氏名】片山 泰一
(72)【発明者】
【氏名】和久田 学
(72)【発明者】
【氏名】大須賀 優子
(72)【発明者】
【氏名】西村 倫子
(72)【発明者】
【氏名】奥山 清
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA04
5L049AA04
(57)【要約】
【課題】いじめやハラスメントといったトラブルの予防や早期発見、そしてリスクレベルの高い調査対象者(児童生徒・従業員など)の抽出と、そのトラブル対応を適切に実現する。
【解決手段】(1)調査対象者からのトラブル申告情報およびトラブル発見情報を含む質問回答情報や調査対象者個人の情報を取得するデータ取得部と、(2)前記質問回答情報や調査対象者個人情報と、トラブルリスクとの関係を学習する学習部と、(3)前記学習をもとに、アンケートの回答などからトラブルリスクを推論する推論部とを備えるトラブル早期発見システムにより、本人からのトラブル被害の申告がなくとも、トラブルが生じること、または生じていることを推測する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)調査対象者からのトラブル被害申告に関する情報、
(2)調査対象者からのトラブル発見に関する情報、および
(3)調査対象者の精神状態、身体状態、または環境に関する情報、を含む質問回答情報と、調査対象者個人情報と、を取得するデータ取得部と、
前記質問回答情報と、前記調査対象者個人情報と、を学習データとして、
前記調査対象者個人情報、および、調査対象者の精神状態、身体状態、または環境に関する情報と、調査対象者からのトラブル被害申告またはトラブル発見に関する情報に基づくトラブルリスクとの関係を学習するトラブル学習部と、
調査対象者個人情報、および、調査対象者の精神状態、身体状態、または環境に関する情報を入力データとして、トラブルリスクについて定量化した値を出力するトラブル推論部と、
を備えることを特徴とする、トラブル早期発見システム。
【請求項2】
さらに、前記調査対象者に対し、ネットワークを通じて質問を提示する質問提示部を備えることを特徴とする、請求項1に記載のトラブル早期発見システム。
【請求項3】
さらに、前記トラブルリスクについて定量化した値が閾値以上の値である場合に、あらかじめ定められたユーザに情報を送信するトラブル報知部を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載のトラブル早期発見システム。
【請求項4】
さらに、前記質問回答情報において、トラブル被害申告またはトラブル発見があることが情報として含まれる場合、そのトラブル被害の深刻度を数値化して出力するトラブル深刻度評価部を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載のトラブル早期発見システム。
【請求項5】
さらに、前記質問回答情報と、前記調査対象者個人情報とを含む調査担当者画面を表示する、調査担当者画面表示部を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載のトラブル早期発見システム。
【請求項6】
コンピュータを、
調査対象者に対し、ネットワークを通じて質問を提示する質問提示手段、
(1)調査対象者からのトラブル被害申告に関する情報、
(2)調査対象者からのトラブル発見に関する情報、および
(3)調査対象者の精神状態、身体状態、または環境に関する情報、を含む質問回答情報と、調査対象者個人情報と、を取得するデータ取得手段、
前記質問回答情報と、前記調査対象者個人情報と、を学習データとして、
前記調査対象者個人情報、および、調査対象者の精神状態、身体状態、または環境に関する情報と、調査対象者からのトラブル被害申告またはトラブル発見に関する情報に基づくトラブルリスクとの関係を学習する、トラブル学習手段、
調査対象者個人情報、および、調査対象者の精神状態、身体状態、または環境に関する情報を入力データとして、トラブルリスクについて定量化した値を出力するトラブル推論手段、および、
前記トラブルリスクについて定量化した値が閾値以上の値である場合に、あらかじめ定められたユーザに情報を送信するトラブル報知手段、
として機能させるためのトラブル早期発見プログラム。
【請求項7】
学習済み機械学習モデルであって、
(1)調査対象者からのトラブル被害申告に関する情報、
(2)調査対象者からのトラブル発見に関する情報、および
(3)調査対象者の精神状態、身体状態、または環境に関する情報、を含む質問回答情報と、調査対象者個人情報と、を学習データとして、
前記調査対象者個人情報、および、調査対象者の精神状態、身体状態、または環境に関する情報と、調査対象者からのトラブル被害申告またはトラブル発見に関する情報に基づくトラブルリスクとの関係を学習し、
調査対象者個人情報、および、調査対象者の精神状態、身体状態、または環境に関する情報を入力データとして、トラブルリスクについて定量化した値を出力するようコンピュータを機能させるための、学習済み機械学習モデル。
【請求項8】
制御部及び記憶部を備えるコンピュータに用いられるデータ構造であって、
前記データ構造はデータ要素として、少なくとも、
(1)調査対象者からのトラブル被害申告に関する情報、
(2)調査対象者からのトラブル発見に関する情報、および
(3)調査対象者の精神状態、身体状態、または環境に関する情報、を含む質問回答情報と、調査対象者個人情報とを含み、
前記質問回答情報と、前記調査対象者個人情報と、を学習データとして、
前記調査対象者個人情報、および、調査対象者の精神状態、身体状態、または環境に関する情報と、調査対象者からのトラブル被害申告またはトラブル発見に関する情報に基づくトラブルリスクとの関係を学習し、また、
調査対象者個人情報、および、調査対象者の精神状態、身体状態、または環境に関する情報を入力データとして、トラブルリスクについて定量化した値を出力するトラブル早期発見処理に用いられることを特徴とする、データ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラブル早期発見システムおよびトラブル早期発見プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
社会生活において、人間関係のトラブルなどが生じた場合に、トラブルやその予兆を早期に発見でき、予防または解決できることが好ましい。また、そのトラブルの深刻度に応じて、適切な対応ができることが好ましい。
【0003】
しかしながら、上記のようなトラブルを早期発見することは一般に難しい。例えば、被害者本人が申告できない場合、トラブルは顕在化しにくいと考えられる。
また、被害者が被害を申告したとしても、申告を受けた者や組織がその深刻度を見誤る場合など、適切な対応ができない場合も考えられる。さらに、申告を受けた組織内または組織間でそのトラブルが共有化されず、上手く連携できない場合も考えられる。
そして、いじめやハラスメントなどの場合、機密性の高い内容を取り扱うため、その取扱いは慎重である必要がある。
【0004】
人間関係のトラブルの中でも特に、学校生活等で生じる子どもに対するいじめについては、被害者である子どもが通常未成熟であることもあり、自力での解決は極めて難しい。また、一般社会で起こるハラスメントも、多くの場合に弱い立場の者が被害にあうため、同様に自力での解決が難しい。よって、このようなトラブルを解決するためには、学校といった教育機関やハラスメント対応部局などの公的な他者の介入が必要となる場合が多い。
【0005】
特許文献1には、子どもへの虐待若しくはいじめ又はそれらの予兆を、定点観測によって検知することを可能とする検知システムなどが開示されている。
児童又は生徒から虐待又はいじめに関する質問に対する回答を取得し、集計した結果又は回答内容に応じて、教育機関の指定スタッフが用いるクライアント装置へアラートを通知する。
【0006】
特許文献2には、児童相談所などの職員の意思決定を支援するための技術について開示されている。具体的には、(A)虐待の通告に係る子供に関する情報と当該子供のリスクアセスメント情報とに関する第1の複数の項目の少なくともいずれかについて入力されたデータを端末装置から受信すると、当該入力されたデータを記憶装置に格納するステップと、(B)第1の複数の項目のうち既入力項目のデータを、過去の虐待事例の第1の学習済みモデルに入力して、上記子供について一時保護発生の蓋然性を表す第1の指標値を特定するステップと、(C)第1の指標値を端末装置に出力するステップとを含む情報処理方法が開示されている。
【0007】
特許文献3には、生徒へのいじめの兆候を判別するいじめ兆候判別プログラムにおいて、判別対象の生徒を撮像した画像情報を取得する情報取得ステップと、過去において撮像した生徒の参照用画像情報と、その生徒へのいじめの可能性との連関度を利用し、上記情報取得ステップにおいて取得した画像情報に応じた参照用画像情報に基づき、生徒へのいじめの可能性を判別する判別ステップとをコンピュータに実行させる技術が開示されている。
具体的に、入力データとして参照用画像情報が入力され、出力データとしていじめ可能性が出力され、入力ノードと出力ノードの間に少なくとも1以上の隠れ層が設けられる機械学習の例が挙げられている。
【0008】
ここで、トラブルの発見において、現場の情報収集がとても重要になる。例えば、学校における児童生徒や、企業などの組織体における従業員が見聞きした情報を収集することは、トラブルを顕在化させるためのひとつの有効な手段である。
また、多くのデータを効率的に処理し、その多くのデータから傾向を分析するには、機械学習などの処理ができると好ましい。
【0009】
上記特許文献1の発明は、収集した何らかのデータについて機械学習処理をさせるものではない。また、上記特許文献2や特許文献3は、現場の人間から情報を収集するものではない。
また、上記特許文献のいずれも、トラブル被害を受けている者およびトラブル被害を発見した者の双方から多面的に情報を収集するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2022-040068号公報
【特許文献2】特開2020-184185号公報
【特許文献3】特開2021-096836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
解決しようとする問題点は、主に集団生活において生じる人間関係などのトラブルが早期に発見しにくい点である。
よって本発明は、いじめやハラスメントといったトラブルの予防や早期発見、そしてリスクレベルの高い調査対象者(児童生徒・従業員など)の抽出と、そのトラブル対応を適切に実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、児童生徒などの調査対象者がオンラインで入力する質問の回答を、機械学習により分析し、トラブルリスクの有無などについて判定することを最も主要な特徴とする。
特に、被害者本人からのトラブル被害情報のみならず、被害者以外の調査対象者によるトラブル発見情報を含めて入力データとすることにより、よりトラブルを見逃しにくくすることを特徴とする。
【0013】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、例えば以下の手段を採用している。すなわち、(1)調査対象者からのトラブル被害申告に関する情報、(2)調査対象者からのトラブル発見に関する情報、および(3)調査対象者の精神状態、身体状態、または環境に関する情報、を含む質問回答情報と、調査対象者個人情報と、を取得するデータ取得部と、
前記質問回答情報と、前記調査対象者個人情報と、を学習データとして、
前記調査対象者個人情報、および、調査対象者の精神状態、身体状態、または環境に関する情報と、調査対象者からのトラブル被害申告またはトラブル発見に関する情報に基づくトラブルリスクとの関係を学習するトラブル学習部と、
調査対象者個人情報、および、調査対象者の精神状態、身体状態、または環境に関する情報を入力データとして、トラブルリスクについて定量化した値を出力するトラブル推論部と、を備えることを特徴とする、トラブル早期発見システムを提供する。
【0014】
本発明のトラブル早期発見システムは、トラブル被害申告情報のみならず、トラブル発見情報を質問項目にしているため、トラブル被害にあっている本人からの申告が無くても、トラブルを発見できる。
【0015】
具体的には、本発明のトラブル早期発見システムは、機械学習モデルの学習段階において、トラブルがあるという内容の質問回答情報にラベルを付け、ほかの入力データとともに機械学習させる。これにより、どのような個人がどのような回答をした場合にトラブルが生じているか、その関係性を見出す。
【0016】
そして推論段階において、学習済み機械学習モデルにアンケートの回答を入力すると、例えばそのアンケートが、いじめなどのトラブル被害の本人申告や発見がないとするものであったとしても、トラブル被害の存在を検知し得る。
【発明の効果】
【0017】
本発明のトラブル早期発見システムは、トラブルリスクの高い調査対象者の抽出を可能にし、トラブルの予防や早期発見に資する、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】トラブル早期発見システム1の概要を示す図である。
【
図2】トラブル早期発見システム1の概要を示すネットワーク図である。
【
図3】いじめに関するアンケートの回答結果を4つの区分に分けた図である。
【
図6】いじめ被害に関する質問画面を示す図である。
【
図7】いじめ発見等に関する質問画面を示す図である。
【
図11】気持ちに関する質問画面(UI-126f)を示す図である。
【
図14】クラス全児童生徒一覧画面を示す図である。
【
図15】個別児童生徒アセスメント結果画面を示す図である。
【
図17】質問提示処理に係るフローチャートを示す図である。
【
図18】データ取得処理に係るフローチャートを示す図である。
【
図19】トラブル学習処理に係るフローチャートを示す図である。
【
図20】トラブル推論処理に係るフローチャートを示す図である。
【
図21】サーバ10のハードウェア構成を示す図である。
【
図22】(調査対象者用)端末20のハードウェア構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の各実施形態では、同一又は対応する部分については同一の符号を付して説明を適宜省略する場合がある。また、以下に用いる図面は本実施形態を説明するために用いるものであり、実際の画面表示態様やレイアウトとは異なる場合がある。
【0020】
(実施形態の概要)
本実施形態の概要について、
図1を用いて説明する。
図1は、本実施形態のトラブル早期発見プログラムP1による処理を行うシステム(以下「トラブル早期発見システム1」とする。)の概要を示す図である。
【0021】
以下では、トラブルの内容として、学校生活におけるいじめを例に挙げて説明する。つまり、調査対象者は児童生徒である。また、調査対象者である児童生徒は、以下で説明するアンケートの回答者である。
【0022】
図1に示すように、児童生徒はいじめに関するアンケート(いじめアンケート)に回答する。いじめアンケートには、いじめ被害の有無や、いじめ発見の有無、つまりいじめの有無に関する質問がある。つまり、いじめ被害やいじめ発見があるという回答がある場合は、いじめがあることを示す。
また、いじめアンケートには、上記のほか、回答者の精神状態、身体状態、または環境に関する質問がある。
【0023】
まず、児童生徒からいじめの被害にあっているという回答があった場合など、いじめ被害が明確に検知される場合、トラブル早期発見システム1はメール(いじめ被害連絡メール)を学校・担任等に送信する。
【0024】
また、トラブル早期発見システム1は、児童生徒のアンケートへの回答をAI(Artificial Intelligence・人工知能)により分析する。
そして、いじめ被害が明確に検知されるような回答がなかったとしても、トラブル早期発見システム1が、いじめによる被害が高い確度で生じ得るまたは生じていると判定(いじめ被害ハイリスク判定)したときは、いじめ被害連絡メールを学校・担任等に送信する。
【0025】
なお、いじめ被害連絡メールがなくとも、学校・担任等はトラブル早期発見システム1を閲覧等することができる。
トラブル早期発見システム1からいじめ被害連絡メールを受け取った、またはトラブル早期発見システム1の閲覧によりいじめ被害やそのおそれを発見した学校・担任は、児童生徒に話を聞くなどしてその問題に介入することができる。
【0026】
図2は、本実施形態のトラブル早期発見プログラムP1による処理を行うシステム(以下「トラブル早期発見システム1」とする。)の概要を示す図(ネットワーク図)である。サーバ10はトラブル早期発見プログラムP1を備える。
【0027】
児童生徒などの調査対象者は、調査対象者用端末20(以下「端末20」とする。)を用いてアンケートに回答し、その結果をサーバ10に送信する。
サーバ10は、機械学習に係る処理を含む各種処理を行うプロセッサ122を備える。
サーバ10において、取得したアンケートの回答を入力データとして、機械学習モデルが学習を行う。十分に学習した機械学習モデルは、アンケートの回答を入力すると、いじめ被害リスクの有無を判定して出力する。
調査担当者用端末30(以下「端末30」とする。)は、サーバ10の管理等を行うための端末である。
【0028】
ここで、いじめリスクの有無を推論する機械学習について簡単に説明する。
図3は、いじめアンケートの回答結果を4つの区分に分けた図である。
いじめアンケートにおいて、児童生徒本人からいじめ被害申告がある場合(
図3A、B)は、いじめが発生していると見ることができる。
また、児童生徒によるいじめの発見がある場合(
図3A、C)も、いじめが発生していると見ることができる。
【0029】
よって、学習プロセスにおいて、本実施形態のプロセッサ122は、表3のA、B、Cに結び付くアンケート回答がある場合、「いじめがある」としてそのアンケート回答にラベル付けを行う。
より詳細に説明すると、表3のA、Bに結び付くアンケート回答がある場合、プロセッサ122は「いじめ被害の申告」があるとしてそのアンケート回答にラベル付けを行う。
また、表3のA、Cに結び付くアンケート回答がある場合、プロセッサ122は「いじめ(被害)の発見」があるとしてそのアンケート回答にラベル付けを行う。
【0030】
学習プロセスにおいて、機械学習モデルは、児童生徒個人情報と、アンケートの回答データを含む各種データを学習データとする。また、機械学習モデルは、記憶部14に蓄積している過去のデータを学習データとすることができる。
機械学習モデルは、学習を繰り返すことで、児童生徒個人情報と、いじめがあったこと(いじめ被害申告、いじめ発見があったこと)と、いじめアンケートのその他の質問項目の回答傾向との関連を見出す。
【0031】
推論プロセスにおいて、学習済み機械学習モデルにアンケート結果の入力を行うと、今度は、例えいじめ被害の本人申告が無いケース(表3におけるCまたはdのケース)であっても、プロセッサ122は、いじめ被害申告またはいじめ発見がなされるリスク、つまりいじめ発生のリスク(いじめリスク)を検知することができる(いじめリスク度評価)。
いじめリスクは、いじめリスク度などの定量化した値で評価される。なお、本実施形態のいじめリスクはトラブルリスクの一例である。
【0032】
そのほか、本実施形態の機械学習モデルは、いじめ被害の申告情報が入力データとして含まれている場合(
図3A、Bの場合)などに、そのいじめの深刻度についても、推測して出力することができる。
【0033】
さらに、いじめリスクの指標がある一定以上の値になった場合、プロセッサ122は、いじめが発生する、あるいは発生しているリスクが高いと判断し(ハイリスク判定)、あらかじめ定められた連絡先(学校等)に報知する(トラブル報知処理)。
また、いじめ深刻度の指標がある一定以上の値になった場合も、プロセッサ122は、いじめによる深刻な被害が発生する、あるいは発生しているリスクが高いと判断し(ハイリスク判定)、上記と同じように報知を行う。
【0034】
(実施形態の詳細)
以下、本実施形態に係るトラブル早期発見システム1について、詳細を説明する。
トラブル早期発見システム1は、調査対象者から得たアンケート結果を分析し、いじめリスクの有無などについて判断するシステムである。本システムはオンラインで提供される。
トラブル早期発見システム1は、トラブル早期発見プログラムP1による情報処理が、ハードウェア資源を用いて具体的に実現される。
以下、トラブル早期発見システム1を構成する、1.ユーザーインターフェース、2.プログラム処理、3.データ、および4.ハードウェア構成、について順に説明する。
【0035】
(用語の定義)
ここで、いくつか言葉の定義を行う。
「トラブル」は、主に学校や会社などの集団生活において生じる、人間関係上のトラブルである。具体的には、いじめやハラスメントなどが挙げられる。
よって、トラブルリスクという場合、例えばいじめが発生しているリスク(いじめリスク)や、ハラスメントが発生しているリスク(ハラスメントリスク)をいう。
トラブルリスクは、トラブル被害申告またはトラブル発見に関する情報に基づく。つまり、トラブル被害申告またはトラブル発見がある場合に、トラブルリスクがある(存在している)という。トラブルリスクがあるとは、例えば、アンケートなどからトラブルの存在が確認できることや、トラブルが推認できることをいう。
このほか、「トラブルリスク」の語について、例えば調査対象者についてトラブルリスクがあるという場合は、その調査対象者がトラブル被害にあっている可能性があることを意味してもよい。同様に、ある組織においてトラブルリスクがあるという場合は、その組織内にトラブルが存在する可能性があることを意味してもよい。
【0036】
「調査対象者」は、トラブル早期発見システム1を用いることによる、トラブルに関する調査の対象者である。具体的には、トラブルが保育施設や学校における児童生徒のいじめ(学校等におけるいじめ)であれば「児童生徒」であり、トラブルが会社等の組織における職員へのハラスメント(会社等におけるハラスメント)であれば「組織の従業員」などである。トラブルに関する調査は、アンケート形式で行われる。
「調査担当者」は、トラブル早期発見システム1を用いてトラブルに関する調査を行う担当者である。例えば、トラブルが学校等におけるいじめであれば調査担当者は「学校の教職員」や「教育関連機関の職員」であり、トラブルが会社等におけるハラスメントであれば調査担当者は「経営者」、「役職者」、または「人事部員」などである。
「ユーザ」は、トラブル早期発見システム1を使用する者である。調査対象者や調査担当者を含む。ユーザはアンケートを実施する組織の人員に限らず、機械学習モデルに学習等をさせるシステム担当者やエンジニアであってもよい。
【0037】
「アンケート」は、調査対象者に質問を出して回答を求めるものである。
「アンケート」は複数の「質問」を含むが、「質問」のまとまりを総称して「質問」と称する、つまり、「アンケート」そのものを「質問」と称する場合もあり、「アンケート」と「質問」が同義である場合もある。「アンケート」と「質問」の語は前後の文脈から判断し、必ずしも区別しない。
【0038】
また、アンケートは複数の質問項目を含む。例えば、「トラブル(いじめやハラスメント)の有無に関する質問」と、それ以外の質問である。
「トラブル(いじめやハラスメント)の有無に関する質問」は、少なくとも回答者本人に生じているトラブル被害の申告に関する質問と、回答者以外に対するトラブルの発見に関する質問を含む。
【0039】
「トラブル(いじめやハラスメント)の有無に関する質問」以外の質問は、例えば「回答者の精神状態、身体状態、または環境に関する質問」を含む。
ここで、精神状態に関する質問はメンタルヘルスに関する質問を含み、身体状態に関する質問は体調に関する質問を含むものとする。
【0040】
つまり、回答者の精神状態、身体状態、または環境に関する質問は、回答者のメンタルヘルス、体調、環境に関する質問を含む。
ただし、いじめ(ハラスメント)の有無に関する質問以外の質問はこれに限られるものではなく、回答者の名前や年齢など、回答者の精神状態、身体状態、または環境を答えさせる質問以外の質問を含んでよい。
【0041】
「調査対象者個人情報」は、次項に掲げる「質問回答情報」以外の、調査対象者個人に関する情報である。例えば、所属(学校名、学年、クラス、会社名、部署名)、性別や身長・体重などの身体的特徴、居住地、または管理者名(担任教師名、上司名)などである。
【0042】
「質問回答情報」は、アンケートの回答に関する情報である。本実施形態において、質問回答情報は、下記(1)、(2)、および(3)の情報を含む。
(1)調査対象者からのトラブル被害申告に関する情報
(2)調査対象者からのトラブル発見に関する情報
(3)調査対象者の精神状態、身体状態、または環境に関する情報
ここで(3)の情報は、調査対象者の精神状態に関する情報、身体状態に関する情報、調査対象者を取り巻く環境に関する情報のうちいずれかを備える。
【0043】
「いじめ」は、文部科学省の定義を引用すると、児童生徒が、一定の人間関係のある者から、心理的、物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているものをいう。ただし、「いじめ」の発生を定義することは難しいため、以下においては、児童生徒本人からいじめの申告や発見がある場合はいじめが発生しているものとする。
また、これはハラスメントも同様であり、ハラスメントの申告や発見がある場合はハラスメントが発生しているものとする。
「いじめの発見」とは、アンケートに回答している児童生徒本人以外の児童生徒が被害を受けているいじめについて発見を言う。ただし、いじめの瞬間を目撃した場合に限らず、直接的あるいは間接的に、いじめの発生を認識した場合も含む。
【0044】
「ハイリスク児童生徒」とは、いじめ被害にあっている生徒、またはいじめ被害にあっている可能性の高い生徒である。また本実施形態において、後述するいじめ被害深刻度が高いと判定される生徒は、ハイリスク児童生徒に含まれ得る。
「閾値」は、いじめ被害深刻度およびいじめ被害リスク度のそれぞれについて、あらかじめ定めた数値基準である。この数値基準に基づいてプロセッサはハイリスク判定を行う。本実施形態のプロセッサ122が行うハイリスク判定については後述する。
【0045】
「AI」は、Artificial Intelligenceの略であり、人工知能のことである。本実施形態におけるAI分析とは、機械学習による分析である。
【0046】
前提として、ユーザは、トラブル早期発見システム1の管理者により、一意のIDと認証手段を付与される。本実施形態において、認証手段はパスワードである。
IDは、後述するユーザ情報データベースD20に記憶される。パスワードは、ユーザなどがシステムにアクセスするためのパスワードである。
【0047】
なお以下において、簡単のため、「サーバ10のプロセッサ122が、端末(端末20や端末30)からのリクエストを受けて、当該端末のブラウザに表示するためのデータを返す」ことを、「プロセッサ122が端末のブラウザに表示する(させる)」または「プロセッサ122が表示する(させる)」などと記載する場合がある。
また同様に、「サーバ10のプロセッサ122が、記憶部14のデータ格納部14bにデータを保存させる」ことを、「プロセッサが(データを)保存する(させる)」などと記載する場合がある。
【0048】
1.ユーザーインターフェース(UI)
まず、本実施形態のトラブル早期発見システム1が端末20に表示させるインターフェース(UI)について、図を用いて説明する。
下記に例示するユーザーインターフェースは、児童生徒または教職員などのユーザが、端末20または端末30にインストールされているトラブル早期発見システム1を動作させるためのソフトウェア(後述の調査対象者端末用アプリケーションプログラムP20など)を起動し、操作することにより、プロセッサ122が端末のブラウザに表示させるものである。
【0049】
それぞれの図は、ユーザが用いる端末(端末20または端末30)のブラウザに表示されるものを簡略化したものである(以下、ユーザーインターフェースを示す図について同じ。)。
以下において、説明に必要な機能に関わるアイコン等のみ表示することとし、それ以外のアイコンなどは省略する。
例えば、直前に表示されていたページに戻るための戻るボタンなどは省略する。
【0050】
図4は、ユーザ認証を行うログイン画面を示す図である(UI-122)。
本実施形態において、プロセッサ122は、IDやパスワードの入力を受け付けるためのテキストボックスUI-242をログイン画面UI-122に表示させる。
ユーザが適切なIDとパスワードの組み合わせをそれぞれのテキストボックスUI-242に入力し、OKボタンUI-262を押下(クリック)して選択することにより、個々のユーザの個人ページ(次項)にログインすることができる。
なお、以下において、ボタン(UI-26)を「押下(クリック)する」ことを「選択する」と称する。
【0051】
言い換えると、プロセッサ122は、ユーザの持つIDとパスワードの組み合わせについて認証を行う。認証に成功すると、プロセッサ122は次項の個人メニュー画面を表示させる。
なお、認証手段はパスワード(知識認証)に限られない。例えば、ユーザが使用する端末による所有物認証や、生体認証によりログインできるようにしてもよい。
【0052】
図5は、ユーザにメニューを表示する個人メニュー画面を示す図である(UI-124)。本実施形態において、プロセッサ122は、個人メニューにログインしているユーザの名前を表示するほか、個人のメニューに応じた選択ボタンを備える。
本実施形態の個人メニュー画面は、選択ボタンとして、アンケートを開始するためのボタンUI-264を備える。
アンケートを開始するためのボタンUI-264のほか、過去のアンケート結果を参照するための参照ボタンなどがあってもよい。
なお以下において、画面ごとにおける各種ボタン(OKボタンUI-262など)の役割は異なるが、簡単のため同じ符号を付して説明する。
【0053】
本実施形態において、児童生徒の学校名、学年、クラス、性別などの調査対象者(児童生徒)個人情報はすでに記憶部14のデータ格納部14bに格納済みであるが、調査対象者個人情報を入力させるためのページを表示してもよい(不図示)。
【0054】
図6から
図9は、児童生徒への質問(アンケート)を表示する、質問表示画面を示す図である(UI-126)。
図6は、回答者本人のいじめ被害に関する質問画面(いじめ被害に関する質問画面UI-126a)を示す図である。プロセッサ122は、質問画面UI-126aに質問とその回答選択肢に応じたボタン(回答ボタンUI-266)を表示させる。
なお、本実施形態の質問画面が、質問とその回答選択肢に応じたボタンを備える点は以下も同様であるため以後説明を省略する。
【0055】
図6に示すように、本実施形態のいじめ被害に関する質問例は、「この2、3か月の間に友達があなたのことをわざとたたいたり、けったり、押したり、閉じ込めたりしたことがありましたか。」である。
そして、その問題に対する回答選択肢は、「なし」、「1回か2回くらい」、「1か月に2、3回くらい」、「1週間に1回くらい」、および「1週間に何回も」の5者択一式である。
【0056】
「なし」の回答が、いじめのリスクが少ないという点で一番「良い」評価であり、つづく「1回か2回くらい」、「1か月に2、3回くらい」、「1週間に1回くらい」、および「1週間に何回も」の順に「悪い」評価となる。
また以下において、「良い」評価と「悪い」評価の間を「普通」の評価と称する場合がある。
【0057】
本実施形態のプロセッサ122は学習段階において、回答者の回答によるこれらの評価について数値化する(初期値)。
例えばいじめ被害に関する上記
図6の質問について、「なし」という回答なら1(点)、「1か月に2、3回くらい」であれば3(点)、「1週間に何回も」であれば5(点)、といった形である。
【0058】
数値化による値は、このまま使用されるか、加工されて使用される。
例えば、複数の質問で得られた各値について平均値を取り、その値を段階評価に区分して表示することが考えられる。
【0059】
本実施形態において、「悪い」評価ほど値が高くなるように設定している。
ただしこれに限られるものではなく、「悪い」評価ほど値が低くなるようにしてもよい。
プロセッサ122が、アンケートの回答を数値化したデータとして取得する点は以下のアンケートでも同じである。
ただし、上述した初期値は学習により変更され得る。
【0060】
なお、ここでいう「良い」、「悪い」などは、選択肢の内容に傾斜(グラデーション)があることを示すための表現であり、機械学習モデルはここでいう「良い」、「悪い」とは別の判断を行い得る。
例えば、アンケートで「最も悪い」評価で回答している児童生徒よりも、「2番目に悪い」評価を回答している児童生徒の方がいじめリスクが高い、といった結果を機械学習モデルは見出し得る。この例については後述する。
【0061】
このように、プロセッサ122は、調査対象者である児童生徒に対して、トラブル被害、ここではいじめ被害、を受けているか否かについての質問を表示し、その回答入力を受け付ける。
【0062】
プロセッサ122は、児童生徒による選択入力を受け付けたあと、次の質問を表示させるなどの処理を行う。詳細はプログラム処理の項で後述する。
【0063】
上記以外のいじめ被害に関する質問は例えば、「この2、3か月の間に友達があなたのことをからかったり、変な名前で呼んだり言葉で傷つけたりしたことがありましたか。」や、「この2、3か月の間に友達があなたのことをわざと仲間はずれにしたり、無視したりしたことがありましたか。」などである。
これらの質問に対する回答選択肢は、上記と同じ内容の5者択一式である。
【0064】
ただし、回答形式はこれに限られるものではなく、例えば「いじめ被害にあっていますか」という質問に対して、「はい」、「いいえ」の2者択一式で回答させるものなど、5者択一式以外の択一式であってもよい。また、択一式に限らず、あてはまる回答選択肢を複数回答させるもの(以下「複数選択式」とする。)であってもよい。
【0065】
また、質問の内容について、回答者本人のいじめ被害に関するものであれば特に制限はない。
例えば、上で例示したように、いじめの頻度に関する質問に限るものではなく、いじめ被害の被害度を問うものであってもよい。例えば、友達にたたかれた結果、どのようなけがを負ったかを問うようなものであってもよい。この場合の選択肢は、「跡は残らなかった」、「あざができた」、「血が出た」などである。
また、1つの質問の質問形式に限られるものではなく、上述した質問形式を複数組み合わせてもよい。
【0066】
図7は、回答者を除く調査対象者に対するいじめ被害に関する質問画面(いじめ発見に関する質問画面126b)を示す図である。
【0067】
図7に示すように、本実施形態の質問は「この2、3か月の間に、友達や知っている子が、別の人にわざとたたかれたり、けられたり、押されたり、閉じ込められたりしたのを見たり聞いたりしましたか。」である。
そして、その問題に対する回答選択肢は、「していない」または「した」の2者択一式である。
【0068】
このように、プロセッサ122は、調査対象者である児童生徒に対して、自分以外の児童生徒がいじめ被害を受けていることを発見・認識(例えば目撃)しているか否かについての質問を表示し、その回答入力を受け付ける。
【0069】
上記以外の質問は例えば、「この2、3か月の間に、友達や知っている子が、別の人から、からかわれたり、変な名前で呼ばれたり、言葉で傷つけられたりしたのを見たり聞いたりしましたか。」や、「この2、3か月の間に、友達や知っている子が、別の人からわざと仲間はずれにされたり、無視されたりしたのを見たり聞いたりしましたか。」などである。
これらの質問に対する回答選択肢は、上記と同じ内容の2者択一式である。
【0070】
ただし、いじめの発見に関する質問形式はこれに限られるものではなく、回答形式が2者択一式以外の択一式や、複数選択式であってもよい。
【0071】
また、質問の内容について、いじめの発見に関するものであれば特に制限はない。
例えば、上で例示したように、いじめの有無に関する質問に限るものではなく、いじめ被害の頻度や被害度を問うものであってもよい。
また、1つの質問の質問形式に限られるものではなく、上述した質問形式を複数組み合わせてもよい。
【0072】
図8は、いじめ詳細入力画面(UI-126c)を示す図である。
回答者本人がいじめ被害を受けていると回答した場合(いじめ被害申告の場合)や、回答者以外の児童生徒がいじめ被害を受けていることを回答者が認識していると回答した場合(いじめ発見の場合)に、プロセッサ122がいじめ詳細入力画面UI-126cを表示する。
【0073】
図8は、回答者がいじめ被害を受けていると回答した場合(
図6参照)の例である。
上述の、「この2、3か月の間に友達があなたのことをわざとたたいたり、けったり、押したり、閉じ込めたりしたことがありましたか。」という質問に対し、回答者が「なし」以外の選択肢を選択した場合(つまり、「1回か2回くらい」、「1か月に2、3回くらい」、「1週間に1回くらい」、および「1週間に何回も」のいずれかを選択した場合)に表示する。
【0074】
本実施形態において、いじめ詳細入力画面UI-126cは、質問と、回答者にいじめ被害の詳細を回答させるためのテキストボックスUI-242とを備える。
児童生徒がテキストボックスUI-242に詳細を入力し、OKボタンUI-262を選択すると、プロセッサ122は、その入力を受け付けて次の質問に進む。
【0075】
ここで、いじめ発見の場合におけるいじめ詳細入力画面UI-126cにおいて、回答者は、そのいじめ被害を受けているのが誰かを入力できる(不図示)。
【0076】
誰がいじめ被害を受けているかが分かることにより、後述する機械学習モデルは、そのいじめ被害を受けている児童生徒の個人情報(児童生徒個人情報)やいじめアンケートの回答と、いじめトラブルの発生とを紐づけられるからである。
【0077】
誰がいじめ被害にあっているかが分かればより実態が明確になるが、仮に「誰が」までのアンケート回答はなくとも、そのアンケート回答者の周辺でいじめが生じていることが分かるため、後述する機械学習モデルはそのようないじめが生じている環境について学習する。
【0078】
また、いじめ被害申告の場合か、いじめ発見の場合かを問わず、回答者は、いじめていた児童生徒が誰かを記入できるようにしてもよい。
これにより、より情報が充実するほか、いじめ加害者がいじめ被害者である場合もあることから、いじめの全体概要がより明確になり得る。
【0079】
なお、いじめ被害の細部までを問うことは必須ではない。また
図8のように、回答方式もテキストボックスに限られない。これは、回答者が小学校低学年などの場合、テキストボックスに文章を入力することができない場合もあるからである。
【0080】
よって、回答者に応じて、詳細回答画面を省略したり、回答方式を変更したりすることができる。
回答方式の変更とは例え文章入力方式をボタン選択方式に変更することなどである。これにより、文章を入力することが困難な児童生徒であっても、いじめ被害の詳細、例えばいつ、どこで、だれが、などについて入力することができる。
【0081】
具体的には、「いつ」の質問に対する回答選択肢は例えば「数日以内」、「数週間以内」、または「授業中」、「放課後」などである。
「どこで」の質問に対する回答選択肢は例えば「被害者のクラスの教室」、「廊下」、「トイレ」、または「校外」などである。
「だれが(被害者や加害者)」の質問に対する回答方法は、例えばプロセッサ122が各クラスの生徒氏名を一覧でボタン表示することなどが挙げられる。
「どのように」の質問に対する回答選択肢は例えば「暴力(直接)」、「無視(直接)」、「所有物の損壊(直接、間接)」、「悪口(直接、間接)」などである。ここで、直接、間接とは上述した直接的ないじめや間接的ないじめを意味する。
【0082】
図9は、学校生活に関する質問画面(UI-126d)を示す図である。
図9に示すように、UI-126dにおいてプロセッサ122は、「この学校の児童生徒と先生の関係はよい。」という質問を表示している。
そして、本質問の回答選択肢は、「あてはまる」、「どちらともいえない」、「あてはまらない」の3者択一式である。
【0083】
つまり、
図9に示すように、回答者である児童生徒は「あてはまる(児童生徒と先生との関係はよい)」、「どちらともいえない」、「あてはまらない(児童生徒と先生の関係はよくない)」のうちから自分の気持ちに最も近いものを回答する。回答者は回答を選択した後、OKボタンを選択することで、次の質問に進むことができる。
【0084】
なお、ここで例示した選択肢は、3択であったが、これに限られない。例えば、本実施形態において、調査対象者が小学校1年から3年の児童生徒の場合は上記の3者択一式であるが、調査対象者が小学校4年以上の児童生徒の場合は5者択一式となる。
この5者択一式の回答選択肢とは、「あてはまる」、「どちらかといえばあてはまる」、「どちらともいえない」、「どちらかといえばあてはまらない」、および「あてはまらない」の5つである。
【0085】
「学校生活」の質問について、上記以外の質問は例えば、「この学校の児童生徒は、一人一人のちがいを大事にされている。」、「私の担任の先生は、私に自信をもたせてくれる。」、または「この学校の先生は、いじめなどをしっかりと注意してくれる」などである。
これらの質問に対する回答選択肢は、上記と同じ内容の3者択一式または5者択一式である。
【0086】
図10は、体調に関する質問画面(UI-126e)を示す図である。
図10に示すように、UI-126eにおいてプロセッサ122は、「今日の体調はどうですか?」という質問を表示している。
【0087】
そして、本質問の回答選択肢は、「元気です」、「おなかが痛い」などであり、回答者はここから当てはまるものを複数選択する。つまり、本質問の回答選択肢は複数回答式である。
図10では、回答者は「元気です」という選択肢のほか、「朝起きるのが大変だった」という選択肢を選択している。
回答者は回答を選択した後、OKボタンを選択することで、次の質問に進むことができる。
【0088】
なお、
図10で省略している回答選択肢をここに記載すると、「元気です」、「おなかが痛い」、「頭が痛い」、「気持ちが悪い」、「夜寝るのが遅かった」、「朝起きるのが大変だった」、「朝ごはんを食べていない」、「疲れやすい、体がだるい」、「けがをしている」、「かぜをひいている(せき、鼻水、のどが痛いなど)」、および「その他、何か体調が悪い」である。
【0089】
図11は、気持ちに関する質問画面(UI-126f)を示す図である。
図11に示すように、UI-126fにおいてプロセッサ122は、「今の気持ちはどうですか?」という質問を表示している。
そして、本質問の回答選択肢は
図11に示すように、「しあわせ、おだやか、元気、やる気あり」、「疲れている、だるい、眠い、心配、悲しい」、「いらいら、ぴりぴり、落ち着かない、不満」、そして「むかむか、怒っている、興奮、パニック」の4者択一式である。
回答者はこの選択から自分の気持ちに最も近いものを回答する。回答者は回答を選択した後、OKボタンを選択することで、次の質問に進むことができる。
【0090】
図示は省略するが、本実施形態では、上記以外に「友人関係」、「学校の安全性」について質問する項目がある。
【0091】
「友人関係」の質問とは、例えば、「この学校の児童生徒は、学校の活動を友だちと一緒にすることを楽しんでいる」、「この学校の児童生徒は、お互いのことを尊重している」、または「クラスみんなで協力して何かをやりとげ、うれしかったことがある」などである。
【0092】
そして、これらの質問に対する回答選択肢は、「あてはまる」、「どちらともいえない」、および「あてはまらない」の3者択一式(小学校1~3年生)か、「あてはまる」、「どちらかといえばあてはまる」、「どちらともいえない」、「どちらかといえばあてはまらない」、および「あてはまらない」の5者択一式(小学校4年生~)である。
【0093】
同様に、「学校の安全性」の質問とは、例えば「学校は安全な場所であると思う。」などである。
そして、これらの質問に対する回答選択肢は、「あてはまる」、「どちらかといえばあてはまる」、「どちらともいえない」、「どちらかといえばあてはまらない」、および「あてはまらない」の5者択一式などである。
【0094】
以上の様に、プロセッサ122は、調査対象者である児童生徒の精神状態、身体状態、もしくは環境に関する情報を得るための質問として、上述した「学校生活」、「体調」、「友人関係」、「学校の安全性」の質問を表示する。
【0095】
なお、「学校生活」、「友人関係」、「体調」、「学校の安全性」の質問は、精神状態、身体状態、もしくは環境に関する情報を得るための質問の一例であり、これに限られない。
【0096】
回答者がすべての質問への回答を終えたら、プロセッサ122は回答を終了するか否かの質問を提示し(不図示)、児童生徒がOKボタンを選択したら質問を終了する。
【0097】
そして、プロセッサ122は、児童生徒による回答を保存する。保存するタイミングは任意のタイミングでよいが、本実施形態では、上記回答を終了するか否かの質問に対するOKボタンの選択を受け付けた時である。
【0098】
以上まとめると、本実施形態において、プロセッサ122は、調査対象者でありアンケート回答者である児童生徒に対して、「回答者本人のいじめ被害に関する質問」、「回答者を除く調査対象者に対するいじめ被害に関する質問(いじめの発見に関する質問)」、さらに「調査対象者の精神状態、身体状態、もしくは環境に関する質問」を提示する。
本実施形態において、「調査対象者の精神状態、身体状態、もしくは環境に関する質問」は、具体的には「学校生活に関する質問」、「体調に関する質問」、「友人関係に関する質問」、「学校の安全性に関する質問」である。
そして、児童生徒からの入力を受け付けることにより、プロセッサ122は、いじめ被害やいじめ発見に関する情報や、児童生徒の精神状態、身体状態、もしくは環境に関する情報を取得する。
【0099】
続いて、本実施形態のトラブル早期発見システム1が端末30に表示させるインターフェース(UI)について、図を用いて説明する。本実施形態において、調査担当者は学校の教職員(学校・担任)、または教育委員会の委員である。
【0100】
図12から
図15は、調査担当者画面を示す図である(UI-14)。
プロセッサ122は、調査担当者画面を調査担当者用端末30のブラウザに表示する(調査担当者画面表示処理)。調査担当者画面UI-14により、調査担当者は質問回答情報や調査対象者個人情報、またはこれらの情報を基づく評価(指数)などを閲覧することができる。
【0101】
本実施形態において、調査担当者画面UI-14には、UI-142調査担当者検索画面、全学年クラス一覧画面UI-144、クラス全児童生徒一覧画面UI-146、個別児童生徒アセスメント結果画面UI-148が含まれる。調査担当者画面は、調査担当者がブラウザ等で見る画面である。以下図面を参照しながら説明する。
【0102】
図12は、調査担当者検索画面を示す図である(UI-142)。
図12に示すように、画面上部は調査担当者入力部(UI-142a)であり、画面下部は抽出結果(絞り込み結果)を表示する全学校一覧表示部(UI-142b)である。
【0103】
図12に示すように、本実施形態において、調査担当者入力部UI-142aは、学校名を直接入力できるテキストボックスと、学校種別を選択できるラジオボタンと、エリア(地域)を選択できるチェックボックスを備える。
【0104】
本実施形態において、エリアとは地理的な区画、例えば通学区域、町名、番地などである。ただし、これに限られるものではなく、例えば市区名などでエリアを分けてもよい。
【0105】
教職員などの調査担当者が、調査担当者入力部に所望の検索条件を入力し、絞り込むボタンを選択すると、全学校一覧表示部142bに検索条件に合致する全ての学校が一覧表示され、またその学校におけるハイリスク児童生徒数が表示される。ハイリスク児童生徒の認定については後述する。
【0106】
図12に示すように、例えば、学校名を入力せず、学校種別として「小学校」を選択し、エリアとして「3」の地域を選択して絞り込むと、全学校一覧表示部142bにはエリア3の小学校の一覧が表示され、小学校ごとのハイリスク児童生徒の数(ハイリスク状態生徒数)が表示される。
【0107】
なお、検索条件に合致する学校数が多い場合、全学校一覧表示部142bは複数のページに学校名を表示する。
図12に示す例の場合、検索結果は8ページに分けて表示され、現在表示されているのはその第2ページである。
【0108】
以上により、教育委員会など、地域の学校を統括・監督する立場にある組織などにおけるユーザは、いじめ被害リスクを負っている児童生徒がどの学校でどれくらいいるか、一覧で見ることができる。
つまり、本システムのメニュー(ダッシュボード)上において、学校全体、市内全体の結果表示をする際に、学校ごとに「ハイリスク判定」の児童生徒の数を簡潔に表示することができるため、いじめ発生リスクの見逃しを防ぐ。
【0109】
そのほか、調査担当者検索画面UI-142は、保存ボタンやログアウトボタンを備える。
図12に示すように、教職員などのユーザは保存ボタンを選択することにより、表示されている画面に関するデータ、ここでは検索条件と検索結果とを含むデータを保存することができる。データ形式に制限は無いが、例えばcsvファイル、xlsxファイルなどを用いることができる。
また、教職員などのユーザはログアウトボタンを選択することにより、トラブル早期発見システム1からログアウトすることができる。
他の画面でもプロセッサ122が保存ボタンやログアウトボタンを表示する場合があるが、以降では説明を省略する。
【0110】
図12中の点線で示すように、学校を表示する部分は、選択可能なボタン(学校選択ボタンUI-268)になっている。ユーザがこの学校選択ボタンUI-268を選択すると、プロセッサ122は次項の全学年クラス一覧画面を表示する。
【0111】
なお図中において、便宜上、学校選択ボタンUI-268(点線部分)は一番上の一か所にのみ表示しているが、表示されている行ごと、ここでは小学校名ごと、に学校選択ボタンUI-268が配設されている。この描画方法は、以下の図においても同じであるため、説明は省略する。
【0112】
図13は、全学年クラス一覧画面を示す図である(UI-144)。
図13に示すように、全学年クラス一覧画面UI-144は、画面上部にプルダウン形式のアンケート選択部UI-270を備える。ユーザがプルダウンから所望のアンケートを選択すると、プロセッサ122はクラス(組)ごとのハイリスク児童生徒数を示す、クラス別ハイリスク児童生徒数リストUI-144aを表示する。
図13の例では、2020年5月に実施されたアンケートが選択されていることを示す。
【0113】
図13に示すように、本実施形態において、クラス別ハイリスク児童生徒数リストUI-144aは、学年、クラス(組)と、その各クラスにおけるハイリスク児童生徒数を一覧表示する。
また、
図13に示すように、特別支援学級など、学年やクラスとは別の枠組みでハイリスク児童生徒数を示すこともできる。
【0114】
全学年クラス一覧画面UI-144により、教職員などのユーザは、ある学校において、どの学年やクラスの生徒がいじめ被害リスクを負っているか、一覧で見ることができる。
【0115】
図中点線で示すように、クラス(組)を表示する部分は選択可能なボタン(クラス選択ボタン)UI-272になっている。ユーザがこのクラス選択ボタンUI-272を選択すると、プロセッサ122は次項のクラス全児童生徒一覧画面を表示する。
【0116】
図14は、クラス全児童生徒一覧画面を示す図である(UI-146)。
図14に示すように、プロセッサ122はクラス全児童生徒一覧画面UI-146に、選択したクラスにおける各生徒の結果一覧を表示する、生徒別結果リストUI-146aを表示する。
本実施形態において、生徒別結果リストUI-146aは、児童生徒ID、出席番号、生徒の氏名、ハイリスク判定、リスク度、深刻度、およびその他質問の回答を表示する。
ハイリスク判定、リスク度、深刻度、メンタルヘルスについては後述する。
【0117】
また、
図14に示すように、クラス全児童生徒一覧画面UI-146は、画面上部にアンケートを選択するためにプルダウンボタンUI-270を備える。
クラス全児童生徒一覧画面が表示される際、このプルダウンボタン部に表示される内容は、前項の全学年クラス一覧画面でユーザが選択した内容が引き継がれる。
ただしユーザが、プルダウンに表示されているものとは別のアンケートを選択すると、プロセッサ122はそのアンケートにおける結果を表示する。
【0118】
クラス全児童生徒一覧画面UI-146により、教職員などの調査担当者は、あるクラスの生徒について、どの生徒がいじめ被害リスクを負っているか、そして生徒のいじめ被害のリスク度、深刻度等はどれくらいであるか、一覧で見ることができる。
【0119】
図中点線で示すように、生徒の氏名等を表示する部分は、選択可能なボタン(児童生徒選択ボタンUI-274)になっている。ユーザがこの児童生徒選択ボタンUI-274を選択すると、プロセッサ122は次項の個別児童生徒アセスメント結果画面を表示する。
【0120】
図15は、個別児童生徒アセスメント結果画面を示す図である(UI-148)。
図15に示すように、プロセッサ122はハイリスク判定表示部UI-148aに、選択されている生徒の児童生徒ID、出席番号、氏名を表示する。またこのほか、ある回のアンケートについて、ハイリスク判定、いじめリスク度、いじめ深刻度のほか、児童生徒のメンタルヘルスについて値(以下「指数」とも称する。)を表示する。
【0121】
また、プロセッサ122は、個人状態情報表示部UI-148bに、本人のいじめ申告の概要や、他者によるいじめ発見の概要を表示する。そのほか、プロセッサ122は、個人状態情報表示部UI-148bに、アンケートの結果(学校生活、友人関係、体調、および学校の安全性に係る結果)を表示する。
【0122】
ここで、児童生徒のアンケート結果として示されるリスクやその値(指数)について説明する。
「いじめリスク度」、「いじめ深刻度」、「メンタルヘルス」、「学校生活」、「友人関係」、「体調」、「学校の安全性」の欄の値(指数)は段階評価で表示される。本実施形態では5段階評価である。いじめリスク度、いじめ深刻度、ハイリスク判定の詳細については後述する。
【0123】
なお、
図15に示すように、本実施形態において、いじめリスク度、メンタルヘルスの欄は常に何かしらの値を表示する一方で、いじめ深刻度は、アンケートに回答した本人がいじめ被害の申告をしていない場合は原則表示されない。
【0124】
図15に示されている、「学校生活」、「友人関係」、「体調」、「学校の安全性」の値(指数)には、それぞれに関連する質問(回答者の精神状態、身体状態、または環境に関する質問など)に対し、児童生徒がどのような回答をしたかが反映される。
【0125】
例えば、プロセッサ122が「学校生活」に関する質問を複数提示し、児童生徒から回答を得る。その回答はプロセッサ122が数値化し、平均値を取ることで1つの値が得られる。この値を段階評価に区分し、
図15に示すような値(指数)を得る。
ただし、ここで示した指数を得る方法は一例であり、これに限られない。
【0126】
そのほかの実施形態として例えば、質問ごとに回答の得点配分を変更することが挙げられる。
具体的には、「学校生活」に関する質問について、ある質問は5者択一式の回答について1、2、3、4、5点を付与するのに対し、別の質問は2、4、6、8、10点を付与する場合などである。
【0127】
また、ある1つの質問の回答が、複数の項目に影響してもよい。
例えば、ある1つの質問の回答が、「学校生活」だけではなく、「友人関係」にも影響する場合などである。
【0128】
上記では平均値を取る例を挙げたが、ほかの計算方法であってもよい。例えば、ある質問には比重をかける、より複雑な計算式を用いる、などである。これは、適用する心理学のロジックなどによって適宜変わり得る。
また、上記では段階評価であったが、段階評価に区分しない数値などで表示してもよい。
【0129】
さらに、各欄の値(指数)を導出するにあたり、ある特定の計算式に固定されず、機械学習の結果を反映させてもよい。
【0130】
例えば、「学校は安全な場所であると思う。」という質問に対し、回答選択肢が「あてはまる」、「どちらかといえばあてはまる」、「どちらともいえない」、「どちらかといえばあてはまらない」、および「あてはまらない」であったとする。
この場合、「あてはまらない」という回答が「最も悪い」(ネガティブな)回答であるが、例えば、「2番目に悪い」回答である「どちらかといえばあてはまらない」と回答している児童生徒の方がいじめリスクが高いという傾向があった場合でも、後述の機械学習モデルはその傾向を見出し、適切に学習し得る。
【0131】
各欄の値(指数)を導出するにあたり、機械学習モデルが見出すこのような傾向を反映させてもよい。
つまり、「2番目に悪い」回答である「どちらかといえばあてはまらない」と回答している児童生徒について、ある評価に関する値(指数)がより「悪く」出る可能性があり得る。
【0132】
以上により、「学校生活」、「友人関係」、「体調」、「学校の安全性」の欄は、いじめと相関がある指数を表示する。これは後述するいじめリスク判定(いじめ被害判定)、いじめ深刻度判定、ハイリスク判定とも関連する。
【0133】
図15に示す「メンタルヘルス」の値(指数)は、「いじめやハラスメントの有無に関する質問」を含む各種質問に対し、児童生徒がどのような回答をしたかが反映される。
つまり、「いじめの有無に関する質問」や「回答者の精神状態、身体状態、または環境に関する質問」の回答から、横断的に複数の回答を取得し、平均値を取るなどの処理を行って算出する。
【0134】
ただし、メンタルヘルスの値(指数)の算出方法は、これに限られるものではなく、「学校生活」、「友人関係」、「体調」、「学校の安全性」の値の算出方法と同様、「メンタルヘルス」について問うための質問を用意してもよい。
【0135】
「メンタルヘルス」の値(指数)があることにより、いじめリスク度、いじめ被害深刻度が低い場合でも、メンタルヘルスの状態を鑑みて、早期発見と介入の手がかりとすることができる。
【0136】
図15に戻り、調査担当者は、個別児童生徒アセスメント結果画面UI-148により、一人の児童生徒の状況について、詳細に確認することができる。
【0137】
図15に示すように、プロセッサ122は、回答詳細表示ボタンUI-276を表示する。ユーザは、回答詳細表示ボタンUI-276を選択することにより、本人のアンケート回答結果を閲覧することができる。例えば、本人のいじめ申告に関する回答の生データである。ただし、これに限られるものではなく、概要などを閲覧できるようにしてもよい。
【0138】
このほか、
図15にはアイコンを描画していないが、他者からのいじめ発見についても、児童生徒の報告を見ることができる。この場合、本実施形態においては、プロセッサ122は報告者名(他の児童生徒の名前)を表示しないが、これを表示するようにしてもよい。
【0139】
ここで、各情報に対するアクセス権限について説明する。いじめに関する情報は、高度に情報が保護されるべきものであるため、本実施形態のトラブル早期発見システム1は、アクセス権限を厳密に設けている。
【0140】
図16は、アクセス権限の設定を示す図である。本実施形態において、プロセッサ122は、調査担当者用端末30を利用する調査担当者の職域ごとに、アクセスできる情報の権限を設定している。
【0141】
例えば、
図16に示すように、調査担当者が教育委員会の職員であれば、(1)全学校一覧、(2)全学年のクラス一覧、(3)クラスの全児童生徒の一覧、(4)個別児童生徒アセスメント結果、および(5)個別アンケート回答データの、全ての情報にアクセスできる。
【0142】
調査担当者がある学校において最大限の権限を与えられている者(例えば学校長など)の場合、
図16中で(2)から(5)の情報、すなわち自分の所属する学校の情報にアクセスできるが、他の学校の情報にはアクセスできない。
【0143】
同様に、調査担当者がクラスの担任などの教職員の場合、
図16中で(3)から(5)の情報、すなわち自分の担当するクラスの情報にアクセスできるが、他の学年やクラスなどの情報にはアクセスできない。
【0144】
アクセス権限が厳格に定められることにより、調査担当者は自分の職域を超えた情報へのアクセスができないため、機密性の高い情報について、情報漏洩等のリスクを抑制することができる。
【0145】
以上に述べたように、プロセッサ122は、ユーザーインターフェースとして質問表示画面(UI-126)やアンケート結果表示画面(UI-144)などを表示し、各端末の表示部(ディスプレイなど)に視覚的に見易く表示する。
つまり、プロセッサ122はユーザにグラフィカル・ユーザ・インターフェース(GUI)を提供する。GUIにより、ユーザは直感的にソフトウェアの操作を行うことができる。
【0146】
例えば、ユーザは、画面要素(UI-20)であるカーソルUI-22を用いて画面を操作する。カーソルUI-22は、ポインティングデバイスやユーザのタッチ(タッチパネルディスプレイの場合)に従って動作するものであり、ユーザはカーソルUI-22を用いて画面内の任意の場所を選択できる。
またユーザは、テキストボックスなどの記入型入力受付部UI-24や、ボタンなどの選択型入力受付部UI-26を操作し、入力を行うことができる。
これは、コンピュータ操作に慣れない小学生などの利用に特にメリットがある。
【0147】
2.プログラム処理
<トラブル早期発見処理>
本実施形態において、プロセッサ122は、トラブル早期発見プログラムP1に基づき、トラブル早期発見処理を行う。
【0148】
例えば、トラブル早期発見プログラムP1は、トラブル早期発見処理の実行により、コンピュータをトラブル早期発見手段として機能させるプログラムである。またこの際、プロセッサ122を備える制御部12は、トラブル早期発見部130(またはトラブル早期発見装置)として機能する。
【0149】
トラブル早期発見処理は、トラブルリスクの有無について、機械学習による推論を行うという特徴を有する。よって、まずその機械学習に関して説明する。
また以下では、トラブルが児童生徒におけるいじめである例で説明する。
【0150】
機械学習の一態様として、例えば、ディープラーニング(Deep Learning(DL))を用いることができる。ディープラーニングで用いるアルゴリズムとして、例えば畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network(CNN))や再帰型ニューラルネットワーク(Reccurent Neural Network(RNN))など、公知の方法を用いることができる。
また、機械学習で用いるアルゴリズムとして、例えばSVM(Support Vector Machine)などを用いることもできる。
【0151】
本実施形態において、機械学習モデルの判断(推論)に影響するパラメータ(例えば重みやバイアス)は、管理者が適宜調整することができる。
機械学習モデルは、学習により、各種判断に資する一定の判断基準を有する分類器ともいえる。
【0152】
図3に示すように、児童生徒のアンケート回答結果は、大きく4つに分類できる。
Aは、いじめ被害の本人申告有りかつ児童生徒によるいじめ発見有りの区分である。
Bは、いじめ被害の本人申告有りかつ児童生徒によるいじめ発見無しの区分である。
Cは、いじめ被害の本人申告無しかつ児童生徒によるいじめ発見有りの区分である。
Dは、いじめ被害の本人申告無しかつ児童生徒によるいじめ発見無しの区分である。
【0153】
児童生徒に対するアンケートにおいて、児童生徒本人からいじめ被害の申告がある場合(
図3A、B)は、いじめが発生していると見ることができる。
しかしながらその一方で、児童生徒からいじめ被害の本人申告がなかった場合(
図3C、D)であっても、いじめが発生していないとは言い切れない。
例えば、いじめ被害を受けている本人が申告しない、できないこともあり得るためである。さらに、本人が認識できていないいじめ(あるいはその兆候)もありえる。
【0154】
いじめの問題は、顕在化しにくいことが一つの問題であると考えられる。そこで、いじめの対象となっている児童生徒とは別の児童生徒からのいじめ発見情報が重要となる。
通常、教師の目の前でいじめが発生することは考えにくい。また、教師がいじめに関わっている場合もあり得る。そして、学校組織において、通常教師の数よりも児童生徒の数の方が多い。よって、教師よりも、児童生徒の方がいじめの現場を発見する可能性が高いと考えられる。
【0155】
そこで、本実施形態のトラブル早期発見システム1は、別の児童生徒からのいじめ発見情報を入力データとすることで、いじめ被害をより検知しやすくしている。
1回のアンケート実施で、いじめ被害者といじめ発見者の2つの情報を収集する点が本システムの特長である。
以下、具体的な処理(いじめリスク度評価といじめ深刻度評価)について説明する。
【0156】
(いじめリスク度評価)
いじめリスク度はいじめリスクについて定量化した値である。いじめリスク度評価は、トラブルリスク度評価のひとつである。
本実施形態のトラブル早期発見システム1において、プロセッサ122は、児童生徒へのアンケートに基づく、多くのアンケートデータを収集する。そして、表3のA、B、およびCの区分に結び付くアンケート回答については「いじめがある」としてラベル付けを行う。
【0157】
上述したように、本実施形態のいじめアンケートは、いじめの被害申告や発見に関する質問のほか、児童生徒(調査対象者、回答者)の精神状態、身体状態、もしくは環境に関する質問を備える。
また記憶部14は、児童生徒の所属する学校やクラスに関する調査対象者個人情報(児童生徒個人情報)や、過去分のいじめアンケートにおける質問回答情報などを備える。
【0158】
まず、機械学習モデルの学習段階について説明する。
いじめアンケートの回答や調査対象者個人情報(児童生徒個人情報)のデータを得て(過去分のデータがある場合は過去分も含む)、機械学習モデルを構成するプロセッサ122は学習を繰り返す(トラブル学習プロセス)。
そして、いじめがあったことと、その児童生徒のその他の質問項目の回答傾向(各項目の指数)や生徒の所属(学校やクラスなど)、過去のデータなどとの関係性を、プロセッサ122は見出し得る。
【0159】
つまり、児童生徒からのいじめ被害申告情報またはいじめ発見情報から、いじめが発生していること、つまりいじめリスクが存在していることを機械学習モデルは学習する。
そして、機械学習モデルは、児童生徒個人情報や精神状態、身体状態、または環境に関するアンケートの回答と、いじめリスクが存在していることとの関係を学習する。
【0160】
例えば、ある生徒Aがいじめアンケートでいじめ被害を申告している場合において、その生徒Aが「友人関係」と「体調」に関するアンケートで相対的に「悪い」評価となる回答をしていたとする。
そうすると、機械学習モデルは、「友人関係」と「体調」に関するアンケートで相対的に「悪い」評価がついているアンケート回答者について、いじめ被害にあっている可能性があること、またはいじめ被害にあっている傾向があることなどを学習する。
また、アンケートの回答のほか、生徒Aの所属している学校や学年、クラスにおいて、いじめトラブルが発生する可能性があること、またはいじめ被害が生じる傾向にあることなどを機械学習モデルは学習する。
【0161】
また別の例として、生徒A本人はいじめ被害の申告をしていないが、生徒Aがいじめ被害にあっていることを生徒Bが発見し、その旨をいじめアンケートで回答したとする。
さらに、ここで生徒Bが、いじめられている児童生徒が生徒Aであることをアンケートで回答している場合、機械学習モデルは、生徒Aのいじめアンケートの回答と、生徒Aがいじめ被害にあっていることとを紐づけて学習する。
【0162】
また、仮に生徒Bがいじめられている児童生徒の名前(生徒Aの名前)を開示しなかったとしても、生徒Bの置かれている環境(学年、クラスなど)でいじめが発生していることを機械学習モデルは学習する。
【0163】
このほか、機械学習モデルは、いじめがない(いじめ被害申告やいじめ発見がない)ことと、児童生徒の個人情報(生徒児童個人情報)やアンケートの回答との関係を学習する。
例えば、ある学校のある学年でいじめ被害申告やいじめ発見が無い場合、その学年ではいじめが発生していない傾向・風土を機械学習モデルは学習する。
【0164】
アンケートの質問について、ある特定のパラメータ(例えば「学校生活」)の値(指数)が高いと、いじめが発生していることが多いという傾向を機械学習モデルが学習したとする。
このような関連を見出した場合、当該パラメータにより大きな重みを付けるなどをして機械学習モデルを調整する。
【0165】
以上まとめると、学習段階において、機械学習モデルは、質問回答情報((1)調査対象者からのトラブル被害申告に関する情報、(2)調査対象者からのトラブル発見に関する情報、および(3)調査対象者の精神状態、身体状態、または環境に関する情報)と、調査対象者個人情報とを学習データとして学習する。
具体的には、機械学習モデルは、前記調査対象者個人情報、および、調査対象者の精神状態、身体状態、または環境に関する情報と、トラブルリスク(いじめ被害申告やいじめ発見など、トラブルの存在が確認できるアンケート情報)との関係を学習する。
ここで、上述したように、トラブルリスクの有無は、調査対象者からのトラブル被害申告またはトラブル発見に関する情報に基づく。
【0166】
続いて、機械学習モデルの推論段階について説明する。
機械学習モデルが十分な学習を終えたあと、アンケート結果の入力を行うと(トラブル推論プロセス)、今度は、例えいじめ被害の本人申告が無いケース(表3のCまたはdのケース)であっても、機械学習モデルはいじめの発生を検知し得る(いじめリスク度評価)。
【0167】
いじめリスク度評価の結果は値で出力される。本実施形態において、出力は5段階評価(多段階評価)によりなされる。ただし、これに限られるものではなく、「いじめが発生している確率は、○○%です。」といった百分率などであってもよい。
【0168】
以上まとめると、いじめリスク度評価では、機械学習モデルが、児童生徒個人情報、および、いじめアンケートにより取得している児童生徒の精神状態、身体状態、または環境に関する情報を入力データとして、いじめ(トラブル)リスクについて定量化した値(いじめリスク度)を出力する。
【0169】
より詳しく説明すると、本実施形態の機械学習モデルは、児童生徒のいじめ被害申告やいじめ発見がある可能性について定量化した値を出力する。そして、これらの定量化した値から、機械学習モデルはいじめ(トラブル)リスクについて定量化した値を出力する。
【0170】
いじめ(トラブル)リスクについての定量化した値は、例えば、トラブル被害申告が生じている確率にある係数をかけたものと、トラブル発見が生じている確率にある係数をかけたものの和などが挙げられる。ここで、トラブル被害申告やトラブル発見が生じている確率は機械学習モデルにより導出される。
この場合、例えばトラブル被害申告を重視し、トラブル被害申告側の係数により重きを置くことなどが考えられる。
【0171】
このほか、トラブル被害申告がなされる確率と、トラブル発見がなされる確率の、より高い方の数値を、いじめリスクについて定量化した値として機械学習モデルは出力してもよい。
ただし、これらはあくまで例えであり、算出するための式やパラメータは、適宜調整され、改善され得る。
【0172】
いじめリスク度は、
図3の4分類のうち、CとDの児童生徒(本人によるいじめ被害申告無し)についても提示される。つまり、本人から被害報告が上がっていない場合でも、プロセッサ122はいじめ被害リスクの可能性がある児童生徒をAI分析により発見する。
判定の元となる分析(推論処理)には、いじめの被害申告や発見に関する質問や、児童生徒本人の精神状態、身体状態、または環境に関する情報、そして児童生徒本人の個人に関する情報などが関わる。
なお、この値は後述するハイリスク判定の元になる。
【0173】
(いじめ深刻度評価)
いじめ深刻度はいじめの深刻さについて定量化する値である。いじめ深刻度評価は、トラブル深刻度評価のひとつである。
本実施形態のトラブル早期発見システム1は、例えばいじめ被害の本人申告があるケース(表3でA、Bのケース)において、さらにそのいじめ被害の深刻度を算出して表示する。
なお、この深刻度の値は後述するハイリスク判定の元になる。
【0174】
例えば、いじめ被害を申告している本人が精神状態、身体状態、または環境に関する質問項目で悪い評価を入力している場合、その度合いに応じていじめ被害が深刻であるとする。
【0175】
より具体的には、いじめ被害にあっていると申告した児童生徒のうち、「学校生活」と「友人関係」の質問にどちらも「悪い」評価を付けた児童生徒は、双方の質問に「普通」の評価を付けた児童生徒に比べ、より深刻であると一般的に判断し得る。
【0176】
本実施形態のトラブル早期発見システム1は、一例として、アンケートの回答を数値化し、項目ごとに平均値等を取得する。この値を多段階評価に区分していじめ深刻度として表示することができる。
【0177】
また、いじめ被害を申告している本人がいじめ被害を受けていることについて、他の児童生徒が発見しているケースや、さらに、その発見頻度が多いほど、プロセッサ122はいじめ被害が深刻であると判断する。
このほか、数回のアンケートに渡っていじめ被害を申告している児童生徒が見出された場合、それは1回だけいじめ被害を申告している児童生徒と比較して、いじめ被害が長期的に解決しておらず、よりいじめ被害の深刻度が高いなどとプロセッサ122は判断し得る。
【0178】
このほか、教師などがいじめ被害を発見し、そのいじめの深刻度が高いと評価した場合は、調査担当者がいじめ深刻度を変更・更新するようにしてもよい。
【0179】
以上まとめると、本実施形態のプロセッサ122を含む制御部12は、トラブル深刻度評価部130eとして機能し、質問回答情報に調査対象者のトラブル被害申告情報が含まれる場合は、そのトラブル被害の深刻度を数値化して出力することができる。このような処理を「トラブル深刻度評価処理」とする。
【0180】
本実施形態のトラブル早期発見システム1は、機械学習を用いることにより、いじめ被害の深刻度を推測し、定量化することもできる。
【0181】
例えば、ある児童生徒が複数のアンケートに渡っていじめ被害の申告をしたとする。最初のころは、学校生活等についてのアンケート結果がまだ悪くなく、深刻度が高くなかったが、アンケートを重ねるごとに、アンケートの結果が悪くなる、つまりその深刻度が高くなる場合があり得る。
【0182】
本実施形態のトラブル早期発見システム1は、過去のアンケートデータ等も含めて学習するため、いじめ被害が徐々に悪化する傾向を見出していた場合は、深刻ないじめ被害が生じる前に、その被害を予測し、警告を発することができる。
【0183】
つまり、機械学習モデルが十分な学習を終えたあと、児童生徒がいじめ被害の申告情報を入力した場合(表3でA、Bのケース)において(推論プロセス)、機械学習モデルはいじめの深刻度を評価することができる。
【0184】
この場合、いじめ深刻度評価の結果は数値で出力される。本実施形態において、出力は5段階評価(多段階評価)によりなされる。
ただし、これに限られるものではなく、「いじめ被害深刻度は、○○%です。」といった百分率などであってもよい。
なお、この値を後述するハイリスク判定の元にしてもよい。
【0185】
つまり、本実施形態のトラブル早期発見システム1は、質問回答情報に調査対象者のトラブル被害申告情報が含まれる場合、そのトラブル被害の深刻度を数値化して出力するトラブル深刻度評価部130eを備え、
また、上述したトラブル推論部130dはさらに、入力データに前記調査対象者のトラブル被害申告が含まれる場合、そのトラブル被害の深刻度を推論し、数値化して出力することができる。
【0186】
上記のほか、アンケート回答者本人のいじめ申告がなく、ほかの児童生徒からある児童生徒がいじめ被害を受けていることが分かった場合(
図3Cの場合)でも、プロセッサ122がいじめ深刻度評価を行うようにしてもよい。
【0187】
この場合、児童生徒がいじめ被害の申告情報を入力していない場合であっても、その児童生徒について別の児童生徒によるいじめの発見があった場合、機械学習モデルはいじめの深刻度を評価することができる。なお、いじめ深刻度の評価は、上述した方法を用いることができる。
これにより、いじめをより広く検知し、かつそのいじめの深刻度について容易に把握することができる。
【0188】
以上まとめると、いじめ深刻度は、アンケート(質問)回答情報に、いじめ被害申告またはいじめ発見があることが情報として含まれる場合に提示される。
また、本実施形態のトラブル早期発見システム1において、本人による被害報告がどの程度深刻であるかをAI等が判定し、数値を提示することもできる。
この場合、判定の元となる分析には、児童生徒からのいじめ発見情報や、児童生徒本人の精神状態、身体状態、または環境に関する情報、児童生徒本人の所属などの情報が関連する。
いじめ深刻度評価により、例えばいじめの深刻度別に順次対応することなどができる。
【0189】
(ハイリスク判定)
いじめ被害深刻度またはいじめ被害リスク度のいずれかが、それぞれにあらかじめ定めた数値基準(以下「閾値」とも称する。)以上の値の場合、プロセッサ122は、いじめが生じる、あるいは生じているリスクが高いとする判定(ハイリスク判定)を行う。
【0190】
例えば本実施形態において、いじめリスク度またはメンタルヘルスの値が5段階評価で4以上の場合、ハイリスク判定を行う。
また本実施形態において、児童生徒本人からいじめ被害申告がある場合、つまりいじめ被害深刻度が評価されるような場合、プロセッサ122は常にハイリスク判定を行う。
【0191】
ハイリスク判定が出た場合、プロセッサ122はその旨について教職員等に報知する。
なお、この閾値はトラブル早期発見システム1の設計者また調査担当者などが適宜設定することができる。
【0192】
以下では、本実施形態のトラブル早期発見システム1において行われるプログラム処理について、フローチャートを用いて説明する。
【0193】
トラブル早期発見プログラムP1は、質問提示プログラムP11、データ取得プログラムP12、トラブル学習プログラムP13、トラブル推論プログラムP14、トラブル深刻度評価プログラムP15、およびトラブル報知プログラムP16を含み、これらの各プログラムに基づき、プロセッサ122は、質問提示処理、データ取得処理、トラブル学習処理、トラブル推論処理、トラブル深刻度評価処理、トラブル報知処理、および調査担当者画面表示処理をそれぞれ実行する。
つまりこれらの各プログラムはそれぞれ、コンピュータを質問提示手段、データ取得手段、トラブル学習手段、トラブル推論手段、トラブル深刻度評価手段、トラブル報知手段、および調査担当者画面表示手段として機能させる。
【0194】
またこの際、プロセッサ122を備えるサーバ10の制御部12(トラブル早期発見部130)は、質問提示部130a、データ取得部130b、トラブル学習部130c、トラブル推論部130d、トラブル深刻度評価部130e、トラブル報知部130f、および調査担当者画面表示部130gとしても機能する。
【0195】
ここで、調査対象者であるユーザが、端末20を用いてトラブル早期発見システム1と通信等を行うためのソフトウェアを、調査対象者端末用アプリケーションプログラムP20とする。
以下、調査対象者端末用アプリケーションプログラムP20を「調査対象者用アプリP20」とする。調査対象者用アプリP20は、端末20にインストールされる。
【0196】
また、調査担当者であるユーザが、端末30を用いてトラブル早期発見システム1と通信等を行うためのソフトウェアを、調査担当者端末用アプリケーションプログラムP30とする。以下、調査担当者端末用アプリケーションプログラムP30を「調査担当者用アプリP30」とする。調査担当者用アプリP30は、端末30にインストールされる。
【0197】
ユーザが調査対象者用アプリP20または調査担当者用アプリP30を起動すると、対応する端末のプロセッサはサーバ10との通信を確立し、ブラウザにログイン画面(
図4参照)を表示させる。
サーバ10のプロセッサ122は、ユーザによるIDとパスワードの入力を受け付け、適格者によるログインであるか、認証を行う。
以下、ログイン成功後の処理について説明する。
【0198】
<質問提示処理>
質問提示処理において、プロセッサ122は、調査対象者である児童生徒に対して質問を提示する。
本実施形態において、調査対象者(児童生徒)用端末20(端末20)の求めに応じ、サーバ10は、端末20のブラウザにアンケートの質問を表示させる。
サーバ10のプロセッサ122は、質問提示プログラムP11に基づき、質問提示処理を行う。
【0199】
なお、端末20が十分に用意できず、アンケートを紙で配るような場合は、この質問提示処理は含めなくてもよい。
ただし、アンケートを紙で配る場合は、アンケート終了後に児童生徒の回答を入力して電子化しなければならないため、質問提示処理を実行できるようにしている方が好ましい。
【0200】
図17は、質問提示処理に係るフローチャートを示す図である。
本実施形態では、ログイン画面で認証後、児童生徒がアンケート開始ボタンUI-264を選択すると(
図5参照)、プロセッサ122はその入力を受け付けて質問提示処理を開始する。
【0201】
図17に示すように、プロセッサ122は質問を表示する(ステップ1)。児童生徒から回答があるまでプロセッサ122は待機し(ステップ2No)、回答があったら(ステップ2Yes)次のステップに進む。
すなわち、プロセッサ122は最後の質問でなければ(ステップ3No)次の問題を表示し、最後の質問であれば(ステップ3Yes)、児童生徒にアンケートを終了してよいか確認する(ステップ4)。
プロセッサ122は、児童生徒からアンケート終了ボタンの選択があるまで待機する(ステップ4No)。アンケート終了ボタンの選択入力を受け付けると(ステップ4Yes)、プロセッサ122は回答データを保存して(ステップ5)、質問提示処理を終了する。
【0202】
<データ取得処理>
データ取得処理において、プロセッサ122は、質問回答情報などの情報を取得する。つまり、機械学習の処理に先立って、プロセッサ122は、データ格納部24bに格納していた児童生徒個人情報や質問回答情報を取得する。また、機械学習の必要に応じて、プロセッサ122は、前処理を行う。
サーバ10のプロセッサ122は、データ取得プログラムP12に基づき、データ取得処理を行う。
【0203】
図18は、データ取得処理に係るフローチャートを示す図である。
本実施形態において、前項の質問提示処理が終了すると、プロセッサ122はデータ取得処理を開始する。
ただしフロー開始のタイミングこれに限られるものではなく、機械学習処理を行う際に処理が開始されるようにしてもよい。
【0204】
図18に示すように、プロセッサ122は記憶部14に保存された質問回答情報を取得する(ステップ11)。
続いてプロセッサ122は、質問回答情報についてラベル付けを行う(ステップ12)。
ラベル付けは上述したとおり、いじめ被害の本人申告やいじめ発見報告に関する情報が含まれるかに基づいて行われる。
【0205】
ただし、児童生徒からの申告や報告がなくとも、例えば、教職員がいじめを認識した場合や、過去のデータなどからいじめの特徴が発見された場合は、「いじめがある」として、調査担当者などのユーザがラベル付けに係るデータを修正するなどしてもよい。
【0206】
プロセッサ122は機械学習用にデータの前処理を行う(ステップ13)。前処理とは、機械学習モデルへの入力に適した形にデータを整える処理である。例えば、ブランクデータがある場合は所定の文字等でそのブランクを埋める処理などである。
プロセッサ122は、適切に前処理が終了したら各種データを保存し(ステップ14)、データ取得処理を終了する。
【0207】
<トラブル学習処理>
トラブル学習処理(本実施形態におけるいじめ学習処理)において、児童生徒個人情報や質問回答情報を学習データとして機械学習モデルが学習を行う。
プロセッサ122は、学習プログラムP13に基づき、トラブル学習処理を行う。
【0208】
図19は、トラブル学習処理に係るフローチャートを示す図である。
本実施形態において、例えば、調査担当者またはシステム管理者などのユーザが、端末30の調査担当者用アプリP30からトラブル学習処理の開始を指示することにより、プロセッサ122はトラブル学習処理を開始する。
【0209】
図19に示すように、プロセッサ122は、前処理済みの児童生徒個人情報と、質問回答情報とを取得する(ステップ21)。
つづいてプロセッサ122は、取得しているデータから、訓練用データ、検証用データなどとしてサンプルを抽出し(ステップ22)、モデルのトレーニングを行う。このモデルのトレーニングにより、プロセッサ122は特徴量を抽出する(ステップ23)。
【0210】
続いて、プロセッサ122は、モデルのテストを行う(ステップ24)。学習が十分であれば(ステップ25Yes)、プロセッサ122は、その機械学習モデルを保存して(ステップ26)トラブル学習処理を終了する。
ここで、学習が十分かどうかは、実際の事例との比較などによる。または、学習回数などによって区切ってもよい。
学習が十分でない場合には(ステップ25No)、再度サンプル抽出を行い、学習を進める。
【0211】
<トラブル推論処理>
プロセッサ122は、トラブル推論プログラムP14に基づき、トラブル推論処理を行う。
トラブル推論処理(本実施形態におけるいじめ推論処理)は、児童生徒個人情報と、調査対象者(児童生徒)の精神状態、身体状態、または環境に関する情報とを入力データとして、調査対象者のいじめリスク(トラブルリスク)について定量化した値を出力する。
【0212】
図20は、トラブル推論処理に係るフローチャートを示す図である。
本実施形態において、例えば、調査担当者またはシステム管理者などのユーザが、端末30の調査担当者用アプリP30から対象となるアンケートなどを指定してトラブル推論処理の開始を指示することにより、プロセッサ122はトラブル推論処理を開始する。
【0213】
まずプロセッサ122は、推論を行う対象となる調査対象者(児童生徒)個人情報や質問回答情報を取得し(ステップ31)、学習済みモデルへの入力を行う(ステップ32)。そして、プロセッサ122は、いじめリスクに係る機械学習による推論を行い、出力する(ステップ33)。
【0214】
そして
図20に示すように、プロセッサ122は、ハイリスク判定となった児童生徒がいるかどうか、判定する(ステップ34)。
プロセッサ122は、ハイリスク判定の児童生徒がいると判定した場合(ステップ34Yes)、調査担当者によりあらかじめ定められた連絡先に報知を行う(ステップ35)。本実施形態において、報知方法はメールである。
【0215】
つまり、プロセッサ122は、ハイリスク判定された児童生徒については、緊急性が高いと判断し、学校・担任へ「いじめ被害連絡メール」を即時に自動配信する。
なお、報知方法はメールに限られない。例えば、携帯電話端末へのショートメッセージや電話などでもよい。または、プロセッサ122が、端末30のUIに目立つように表示させるものであってもよい。さらに、プロセッサ122は、報知手段を複数組み合わせて報知してもよい。
【0216】
また、本実施形態において報知する内容は、ハイリスク判定だけではなく、いじめ被害リスク度およびいじめ被害深刻度などに係る各数値(指標)を含む。
また本実施形態において、報知する内容には、いじめ被害リスク度等の情報(例えば個別児童生徒アセスメント結果画面)を参照するためのリンクを含む。
【0217】
このような、いじめリスクを推論して得た値が閾値以上の値である場合など、いじめの存在を感知できる場合に、あらかじめ定められたユーザに情報を送信する処理が「いじめ報知処理」である。「いじめ報知処理」は「トラブル報知処理」の一例である。
【0218】
ただし、プロセッサ122がトラブル(いじめ)報知処理を実行するのは、トラブルリスクの推論時に限られない。学習段階においても、回収したアンケートにトラブル(いじめ)の存在を発見できる要素がある場合(例えばいじめ被害申告やいじめ発見がある場合)は、プロセッサ122がトラブル(いじめ)報知処理を実行できるようにしてもよい。
【0219】
図20に示すように、指定の連絡先に報知した後や、ハイリスク判定の児童生徒がいないと判定した場合(ステップ34No)、プロセッサ122は、各種データを保存し(ステップ36)、トラブル推論処理を終了する。
なお、上述したフローチャートは一例であり、これに限られない。
【0220】
3.データ
以下、本実施形態のトラブル早期発見システム1が扱うデータについて、図を用いて説明する。
本実施形態のトラブル早期発見システム1は、サーバ10の記憶部14に、トラブル早期発見データベースD1を備える。本実施形態のトラブル早期発見データベースD1は、学校データベースD12、および児童生徒データベースD14を備える。
そのほか、トラブル早期発見データベースD1は、各種プログラムの実行等に必要なデータを備える。
【0221】
【0222】
表1は、学校データベースD12を示す。本実施形態において、学校データベースD12は、児童生徒の所属する学校に関するデータベースである。
本実施形態の学校データベースD12は、学校ごとに割り振られる一意の学校IDのほか、小学校や中学校などの種別を示す学校種別および学校種別コード、学校が所属する都道府県名および対応する都道府県コード、学校が所属する地域を示すエリア名および対応するエリアコード、学校名を含む。
【0223】
なお、表1では説明のため、例えば都道府県名と都道府県コードの双方を示したが、例えば、記憶部14に都道府県データベースを別途用意して、そこに都道府県と対応する都道府県コードを格納したうえで、組織データベースには都道府県名か都道府県コードのどちらかを含むようにしてもよい。これは学校種別と学校種別コード、エリア名とエリアコード、学校IDと学校名も同様である。
【0224】
【0225】
表2は、児童生徒データベースD14を示す。本実施形態において、調査対象者データベースは、児童生徒に関するデータベースである。
本実施形態の児童生徒データベースD14は、児童生徒ごとに割り振られる一意の児童生徒IDのほか、学校などの所属、学年、出席番号、氏名、アンケートに対する回答を含む。
【0226】
表2に示すように、本実施形態において、選択肢を選ばせる形式の質問については、回答選択肢に応じた値が格納されている。
【0227】
児童生徒データベースD14に格納される内容はこれに限られない。上記以外の児童生徒個人情報(性別や住所、身長・体重などの身体的特徴、担任教師名など)や、担任教師による当該児童生徒についてのコメントなどが含まれていてもよい。
【0228】
また、児童生徒データベースD14は、調査対象者個人情報と質問回答情報とを分けてデータベース化してもよい。更新頻度が異なるデータベースを別にすることにより、処理負担が減るという利点がある。
【0229】
なお、児童生徒を特定する情報と、アンケート結果に係る情報とを分離してデータベース化してもよい。ビッグデータとして活用しつつ、個人情報を保護するためである。
【0230】
4.ハードウェア構成
<トラブル早期発見システム1>
トラブル早期発見システム1は、トラブル早期発見プログラムP1を備えるハードウェアを含み、トラブル早期発見プログラムP1による処理を実現するシステムである。
図2に示すように、本実施形態におけるトラブル早期発見システム1は、サーバ10、調査対象者用端末20(端末20)、および調査担当者用端末30(端末30)を備える。
また、これらの各装置は、ネットワークNを介して接続されている。ネットワークNは例えばインターネットなどである。
【0231】
なお、トラブル早期発見システム1において、端末20や端末30などの各装置はそれぞれプロセッサを備えるが、単にプロセッサという場合は、トラブル早期発見プログラムP1による処理を行うプロセッサ、本実施形態ではサーバ10のプロセッサ122、を指すものとする。
以下、各ハードウェアについて説明する。
【0232】
<サーバ10>
サーバ10は、トラブル早期発見プログラムP1を備えるコンピュータである。当該トラブル早期発見プログラムP1の機能により、上述したトラブル早期発見処理などの各種処理がサーバ10により実行される。
サーバ10は、ネットワークNを通じて端末20や端末30と接続されており、端末20や端末30からの要求に応じて、該当するデータを送信するなどの機能を有する。
【0233】
なお
図2において、サーバ10は1台のみ図示しているが、数は1台に限られるものではなく、複数のサーバにより実現してもよい。例えば、アンケート(質問)の提示や回答取得等の処理と、機械学習に係る処理とを別のサーバで行わせるなどの機能分散がなされていてもよい。機械学習に限らず、負荷分散や可用性の観点から、複数のサーバを用いてもよい。
【0234】
図21は、サーバ10のハードウェア構成図である。
図21に示すように、サーバ10は、制御部12、記憶部14、および通信制御部16を備える。
【0235】
制御部12は、プロセッサ122、ROM124、RAM126、計時部128を備える。
なお、本実施形態において、機器間の接続態様(ネットワークトポロジ)は特に限定されない。例えばバス型であってもよいし、スター型、メッシュ型などであってもよい(以下に説明するハードウェアおいて同じ)。
【0236】
プロセッサ122は、ROM124や記憶部14などに記憶されたプログラムに従って、情報処理や各種装置の制御を行う。本実施形態において、プロセッサ122はCPU(Central Processing Unit)である。
【0237】
なお、プロセッサ122はCPUに限られるものではない。CPU、DSP(Degital Signal Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、またはGPGPU(General Purpose computing on GPU)など、各種プロセッサを単独で、あるいは組み合わせて用いてもよい。
例えば、CPUとGPUを統合したプロセッサはAPU(Accelerated Proessing Unit)などと呼ばれるが、このようなプロセッサを用いてもよい。
【0238】
プロセッサ122を含む制御部12は、サーバ10においてトラブル早期発見部130(およびトラブル早期発見部130が含む質問提示部130a、データ取得部130b、トラブル学習部130c、トラブル推論部130d、トラブル深刻度評価部130e、トラブル報知部130f、および調査担当者画面表示部130g)としても機能する(不図示)。トラブル早期発見部130は、トラブル早期発見プログラムP1を実行してトラブル早期発見処理を行う。
トラブル早期発見処理は、機械学習による処理を含む。上述したように、機械学習による処理は別のサーバなどで処理してもよい。
【0239】
一のプログラムは、別のプログラムを含んでいてもよい。例えば本実施形態において、トラブル早期発見プログラムP1は、質問提示プログラムP11やデータ取得プログラムP12などを含む。
【0240】
図21に戻り、ROM124は、プロセッサ122が各種制御や演算を行うための各種プログラムやデータがあらかじめ格納された、リードオンリーメモリである。
【0241】
RAM126は、プロセッサ122にワーキングメモリとして使用されるランダムアクセスメモリである。このRAM126には、本実施形態の各種処理を行うための各種エリアが確保可能になっている。
すなわち、記憶部14に格納された、トラブル早期発見プログラムP1などの各種プログラムや、トラブル早期発見データベースD1に含まれる各種データがプロセッサ122により読み出され、RAM126に記録(格納)される。
【0242】
計時部128は、計時処理を行う。本実施形態において、計時部128は例えば、アンケート回答時間の記録などに用いられる。
【0243】
記憶部14は、プログラムやデータなどの情報を記憶するための装置である。記憶部はストレージとも称する。本実施形態において、記憶部14はサーバ10に内蔵されるが、これに限られるものではなく、専用HDD(ハードディスクドライブ)等の外部記憶を備えていてもよい。
【0244】
記憶部14は、データの読み書きが可能な記憶媒体と、当該記憶媒体に読み書きするドライブとを含む。
当該記憶媒体は、特に制限されないが、例えば、内蔵型でも外付型でもよく、HD(ハードディスク)、CD-ROMなどが挙げられる。
当該ドライブは、特に制限されないが、例えばHDD(ハードディスクドライブ)、SSD(ソリッドステートドライブ)等が挙げられる。
【0245】
図21に示すように、記憶部14は、プログラム格納部14aとデータ格納部14bを備える。
プログラム格納部14aには、本実施形態に係るトラブル早期発見プログラムP1のほか、サーバ10に接続されている機器を制御するための制御プログラム、例えば通信制御部16を制御する通信制御プログラムなど、各種プログラムが格納されている。
【0246】
図21に示すように、通信制御部16は、サーバ10と、外部にある端末等との間で通信を行うための装置である。外部にある端末とは例えば、後述する端末20や端末30などである。
図2に示すように、通信制御部16は、サーバ10をネットワークNに接続する。
本実施形態における通信制御部16の通信方式は有線LANによる方式であるが、通信方式は公知のものを適宜用いることができる。
【0247】
上記のほか、サーバ10は、命令やデータの入力を行うための入力部(例えばキーボード)や、情報を何らかの形で出力するための出力部(例えば音声出力装置)などを備えていてもよい(不図示)。また、本実施形態の用途のために追加的に必要な装置や、本実施形態の用途について利便性を向上させるための装置を備えていてもよい。
【0248】
以上のように、本実施形態のサーバ10は、
調査対象者である児童生徒に対し、ネットワークを通じて質問を提示する質問提示部(130a)と、
(1)児童生徒からのいじめ(トラブル)被害申告に関する情報と、(2)児童生徒からのいじめ(トラブル)発見に関する情報と、(3)児童生徒の精神状態、身体状態、または環境に関する情報と、を含む質問回答情報と、児童生徒個人情報と、を取得するデータ取得部(130b)と、
前記質問回答情報と、前記児童生徒個人情報と、を学習データとして、
前記児童生徒個人情報、および、児童生徒の精神状態、身体状態、または環境に関する情報と、児童生徒からのいじめ(トラブル)被害申告またはいじめ(トラブル)発見に関する情報に基づくいじめ(トラブル)リスクとの関係を学習するトラブル学習部(130c)と、
児童生徒個人情報、および、児童生徒の精神状態、身体状態、または環境に関する情報を入力データとして、いじめ(トラブル)リスクについて定量化した値を出力するトラブル推論部(130d)と、
前記質問回答情報において、児童生徒のいじめ(トラブル)被害申告またはトラブル発見があることが情報として含まれる場合、そのいじめ(トラブル)被害の深刻度を数値化して出力するトラブル深刻度評価部(130e)と、
前記いじめ(トラブル)リスクについて定量化した値が閾値以上の値である場合に、あらかじめ定められたユーザ(調査担当者)に情報を送信するトラブル報知部(130f)と、
前記質問回答情報と、前記児童生徒個人情報とを含む調査担当者画面を表示する、調査担当者画面表示部(130g)と、を備える。
【0249】
これにより、いじめトラブルの予防や早期発見、そしていじめリスクレベルの高い児童生徒の抽出と、そのトラブル対応を適切に実現することができる。
特に、被害者本人からのトラブル被害情報のみならず、被害者以外の調査対象者によるトラブル発見情報を含めて入力データとすることにより、よりトラブルを見逃しにくくできる。
【0250】
<調査対象者用端末20(端末20)>
端末20は、例えば児童生徒などの調査対象者が、トラブル早期発見システム1を利用するための情報処理装置である。調査対象者は、端末20を用いて、サーバ10にアクセスすることにより、トラブル早期発見システム1を利用する。
【0251】
本実施形態において、端末20はデスクトップPCである。ただし、端末20はこれに限られるものではなく、スマートフォンやタブレットなどの携帯型端末であってもよい。
図2において、1台の端末20のみ図示しているが、数は1台に限られるものではなく、たとえば児童生徒全員がそれぞれ利用可能な複数の端末により利用できる。
【0252】
図22は、端末20のハードウェア構成図である。
図22に示すように、端末20は、制御部22、記憶部24、通信制御部26、および入出力部28を備える。各部の機能について、説明済みの内容と重複するものは説明を省略する。
【0253】
端末20のプログラム格納部24aには、本実施形態に係る調査対象者端末用アプリケーションプログラムP20(調査対象者用アプリP20)が格納(インストール)されており、当該ソフトウェアの機能により、プロセッサ222が各種処理を実行する。
【0254】
各種処理とは、サーバ10から取得した情報などに基づく出力(画面表示、音声出力)や、ユーザの入力受付、または各種通信を含む。
例えば、ユーザである調査対象者が調査対象者用アプリP20を起動すると、端末20のプロセッサ222はネットワークNを通じてサーバ10と通信を行い、各種処理を実行する。
なお本実施形態において、調査対象者用アプリP20は、ネットワークNを通じて、または調査対象者用アプリP20を格納している記憶媒体を通じて端末20にインストールされる。これは後述の調査担当者端末用アプリケーションプログラムP30も同様である。
【0255】
制御部22は、サーバ10の制御部12同様、プロセッサ(プロセッサ222)のほか、ROM、RAM、および計時部を備える。これらの基本的な機能は上記で説明したものに準ずるため、説明は省略する。
【0256】
通信制御部26は、端末20と、外部にある端末等との間で通信を行うための装置である。外部にある端末等とは例えば、サーバ10である。通信制御部26は、
図2に示すように、端末20をネットワークNに接続する。
本実施形態における通信制御部16の通信方式は、有線でも無線でもよい。端末20がデスクトップPCであれば有線、無線の両方の場合が考えられる。また、端末20がスマートフォンであれば、無線による通信方式が考えられる。
【0257】
有線であれば、例えばIEEE802.3(例えばバス型やスター型の有線LAN)で規定される通信方式を好適に用いることができるが、それ以外にも、IEEE802.5(例えばリング型の有線LAN)で規定される通信方式などを用いてもよい。
無線であれば、例えばIEEE802.11(例えばWi-Fi)で規定される通信方式を好適に用いることができるが、それ以外にも、IEEE802.15(例えばブルートゥース(登録商標)、BLE(ブルートゥース(登録商標)ローエナジー)など)、IEEE802.16(例えばWiMAX)、または赤外線通信などの光通信で規定される通信方式などを用いてもよい。
【0258】
図22に示すように、入出力部28は、端末20に対する入出力を担う装置である。入出力部28は、入力部282と出力部284を備える(不図示)。
入力部282はユーザからの入力を受け付ける装置である。このような入力部282として例えば、キーボード、ポインティングデバイスとしてのマウス、トラックパッド、タブレット、またはタッチパネルなどが挙げられる。
【0259】
端末20がスマートフォンなどであって、入力部282がタッチパネルの場合、入力部282はタッチスクリーンなど、画像などを表示する表示部(表示部284a)の表面に配置される。この場合、入力部282は、表示部284aに表示される各種操作キーに対応した、ユーザのタッチ位置を特定し、当該操作キーの入力を受け付ける。
【0260】
表示部284aに入力受付領域(選択入力受付領域や筆記入力受付領域)が表示されている場合は、ユーザのタッチ位置を特定し、ユーザによる入力を受け付ける。
【0261】
出力部284は例えば、画像や音声、帳票などを出力するための装置である。
出力部284として例えば、タッチスクリーンやディスプレイ(液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ)などの表示装置や、スピーカなどの音声出力装置、プリンタなどの帳票出力装置が挙げられる。
【0262】
<調査担当者用端末30(端末30)>
端末30は、例えば教職員などの調査担当者がトラブル早期発見システム1を利用するための情報処理装置である。調査担当者は、端末30を用いて、サーバ10にアクセスすることにより、トラブル早期発見システム1を利用する。
【0263】
端末30のプログラム格納部には、本実施形態に係る調査担当者端末用アプリケーションプログラムP30(調査担当者用アプリP30)が格納(インストール)されており、当該ソフトウェアの機能により、プロセッサが各種処理を実行する。
例えば、上述した調査担当者画面表示処理は、端末30の表示部に調査担当者画面を表示させるが、端末30のプロセッサはこれに対応する処理を行う。
【0264】
端末30は汎用的なコンピュータであり、コンピュータ端末としての機能は端末20と同様である。端末30は、制御部、記憶部、通信制御部、および入出力部を備えるが、各部の機能について、説明済みの内容と重複するものは説明を省略する。
【0265】
なお、端末を調査対象者用端末20と調査担当者用端末30とを分けて本実施形態を説明しているが、これらは必ずしも別のコンピュータである必要はなく、同一の端末であってもよい。この場合、ログイン処理で調査対象者と調査担当者を区別する。
【0266】
またトラブル早期発見システム1に用いる端末は、調査対象者用端末20と調査担当者用端末30に限られない。例えば、本実施形態の機械学習を実行させるため端末、例えばシステム管理者やエンジニア用の端末、をさらに備えていてもよい。
【0267】
以上のような構成により、調査対象者は端末20を用いてアンケートに回答し、そのデータはサーバ10に送信される。そして、サーバ10は、端末30からの指示に基づき、受け付けたアンケート回答や調査対象者個情報に係るデータを用いて、機械学習(学習・推論)などの処理を実行する。
【0268】
(変形例)
本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
【0269】
上記実施形態では、学校などで生じる児童生徒へのいじめ被害を例挙げたが、会社などの組織で生じる、従業員などの構成員へのハラスメント被害にも応用することができる。
この場合、上記実施形態で挙げた「いじめ」は「ハラスメント」に、「児童生徒」は例えば従業員など、「(組織の)構成員」に、児童生徒のいじめ被害を確認する「学校・担任」は「組織の役職者」や「経営者」、「人事部(員)」などに置き換えられる。また、トラブルリスクはハラスメントリスクとなる。
同様に、「学校生活」は例えば会社などの「組織における生活」に、「友人関係」は例えば同僚や上司など「組織の他のメンバーとの関係」に、「学校の安全性」は「組織の安全性」に置き換えることができる。
【0270】
プロセッサ122は、回答者に応じて表示態様を適宜調整してもよい。例えば、回答者が小学校低学年である場合は漢字をひらがな表記にする、回答者が日本語を母国語としない場合は適切な言語で表示する、などである。
【0271】
上記の実施形態では、アンケートの配布もオンラインで完結していた。つまり、端末20がサーバ10にアクセスしてアンケートの質問を取得し、児童生徒などのユーザがそれに回答してサーバに送信している。
しかしながら、上述したように、オンライン環境が整っていない場合、アンケートを紙で配布し、回答済みのアンケートを回収する場合も考えられる。その場合は、アンケート結果を教職員等がコンピュータに打ち込み、サーバ10に送信させてもよい。
【0272】
また、端末20がネットワークに接続されているオンライン状態でなければアンケートに回答できないようにしてもよい。調査対象者がアンケートに回答し、アンケートの回答内容に係るデータがサーバ10に送信されたあと、そのデータが端末20に残らないようにすれば、アンケートの回答内容のような機密性の高い情報は秘密に守られる。
【0273】
一方、プロセッサ222は、一部の処理について、オフライン状態で処理を行ってもよい。例えば、アンケートを提示する質問提示プログラムP11やその関連データを端末20に予めダウンロードするなどし、その機能を端末20に移しておいてもよい。この場合、アンケート回答時にサーバ10からデータを取得しないで済むため、処理速度の向上が期待できる。
【0274】
本実施形態を含む発明は、換言すると以下の特徴を備える。下記は本願出願時における特許請求の範囲と対応する。ただし、出願後における特許請求の範囲の補正により、当該補正後の特許請求の範囲の記載とは異なる場合がある。
(1)第1の発明は、(一)調査対象者からのトラブル被害申告に関する情報、(二)調査対象者からのトラブル発見に関する情報、および(三)調査対象者の精神状態、身体状態、または環境に関する情報、を含む質問回答情報と、調査対象者個人情報と、を取得するデータ取得部と、
前記質問回答情報と、前記調査対象者個人情報と、を学習データとして、
前記調査対象者個人情報、および、調査対象者の精神状態、身体状態、または環境に関する情報と、調査対象者からのトラブル被害申告またはトラブル発見に関する情報に基づくトラブルリスクとの関係を学習するトラブル学習部と、
調査対象者個人情報、および、調査対象者の精神状態、身体状態、または環境に関する情報を入力データとして、トラブルリスクについて定量化した値を出力するトラブル推論部と、を備えることを特徴とする、トラブル早期発見システムを提供する。
(2)第2の発明は、さらに、前記調査対象者に対して質問を提示する質問提示部を備えることを特徴とする、第1の発明に記載のトラブル早期発見システムを提供する。
この場合、アンケートの配布を手作業で行う必要が無いため、調査担当者側の負担が軽減される。また、例えば紙のアンケート用紙で調査対象者に回答してもらう場合、回収したアンケートの回答を調査担当者が端末等に入力しなければならないため、入力ミスが発生し得る。第2の発明により、このような入力ミスを排除することができる。
(3)第3の発明は、さらに、前記トラブルリスクについて定量化した値が閾値以上の値である場合に、あらかじめ定められたユーザに情報を送信するトラブル報知部を備えることを特徴とする、第1の発明または第2の発明に記載のトラブル早期発見システムを提供する。
この場合、調査担当者がトラブル早期発見システムにアクセスしていなくても、トラブル早期発見システムが能動的な通知を行うことにより、調査担当者等のユーザがトラブルに気づきやすくなるという利点がある。
(4)第4の発明は、さらに、前記質問回答情報において、トラブル被害申告またはトラブル発見があることが情報として含まれる場合、そのトラブル被害の深刻度を数値化して出力するトラブル深刻度評価部を備えることを特徴とする、第1の発明または第2の発明に記載のトラブル早期発見システムを提供する。
この場合、単純なトラブルのあるなしだけでなく、どの程度深刻であるかについて調査担当者等が一目で判断できることにより、対応の優先順位をつけるなど、深刻な被害について早期対応が可能になる。
(5)第5の発明は、さらに、前記質問回答情報と、前記調査対象者個人情報とを含む調査担当者画面を表示する、調査担当者画面表示部を備えることを特徴とする、第1の発明または第2の発明に記載のトラブル早期発見システムを提供する。
この場合、一覧表示されている調査対象者の情報を閲覧できるため、例えばトラブルが生じている調査対象者の周囲の状況等について調査担当者が確認することができ、トラブルへの早期対処が可能になる。
(6)第6の発明は、コンピュータを、
調査対象者に対して質問を提示する質問提示手段、
(一)調査対象者からのトラブル被害申告に関する情報、(二)調査対象者からのトラブル発見に関する情報、および(三)調査対象者の精神状態、身体状態、または環境に関する情報、を含む質問回答情報と、調査対象者個人情報と、を取得するデータ取得手段、
前記質問回答情報と、前記調査対象者個人情報と、を学習データとして、
前記調査対象者個人情報、および、調査対象者の精神状態、身体状態、または環境に関する情報と、調査対象者からのトラブル被害申告またはトラブル発見に関する情報に基づくトラブルリスクとの関係を学習する、トラブル学習手段、
調査対象者個人情報、および、調査対象者の精神状態、身体状態、または環境に関する情報を入力データとして、トラブルリスクについて定量化した値を出力するトラブル推論手段、および、
前記トラブルリスクについて定量化した値が閾値以上の値である場合に、あらかじめ定められたユーザに情報を送信するトラブル報知手段、
として機能させるためのトラブル早期発見プログラムを提供する。
(7)第7の発明は、学習済み機械学習モデルであって、
(一)調査対象者からのトラブル被害申告に関する情報、(二)調査対象者からのトラブル発見に関する情報、および(三)調査対象者の精神状態、身体状態、または環境に関する情報、を含む質問回答情報と、調査対象者個人情報と、を学習データとして、
前記調査対象者個人情報、および、調査対象者の精神状態、身体状態、または環境に関する情報と、調査対象者からのトラブル被害申告またはトラブル発見に関する情報に基づくトラブルリスクとの関係を学習し、
調査対象者個人情報、および、調査対象者の精神状態、身体状態、または環境に関する情報を入力データとして、トラブルリスクについて定量化した値を出力するようコンピュータを機能させるための、学習済み機械学習モデルを提供する。
(8)第8の発明は、制御部及び記憶部を備えるコンピュータに用いられるデータ構造であって、前記データ構造はデータ要素として、少なくとも、(一)調査対象者からのトラブル被害申告に関する情報、(二)調査対象者からのトラブル発見に関する情報、および(三)調査対象者の精神状態、身体状態、または環境に関する情報、を含む質問回答情報と、調査対象者個人情報とを含み、
前記質問回答情報と、前記調査対象者個人情報と、を学習データとして、
前記調査対象者個人情報、および、調査対象者の精神状態、身体状態、または環境に関する情報と、調査対象者からのトラブル被害申告またはトラブル発見に関する情報に基づくトラブルリスクとの関係を学習し、また、調査対象者個人情報、および、調査対象者の精神状態、身体状態、または環境に関する情報を入力データとして、トラブルリスクについて定量化した値を出力するトラブル早期発見処理に用いられることを特徴とする、データ構造を提供する。
【産業上の利用可能性】
【0275】
上記実施形態では子どものいじめについて例示したが、アンケート対象を変更することで、例えば会社等の組織におけるハラスメントなど、子供のいじめ以外の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0276】
(ハードウェア・機能部)
1 トラブル早期発見システム
10 サーバ
12 制御部
122 プロセッサ
124 ROM
126 RAM
128 計時装置
130 トラブル早期発見部
130a 質問提示部
130b データ取得部
130c トラブル学習部
130d トラブル推論部
130e トラブル深刻度評価部
130f トラブル報知部
130g 調査担当者画面表示部
14 記憶部
14a プログラム格納部
14b データ格納部
16 通信制御部
20 調査対象者用端末
22 制御部
222 プロセッサ
24 記憶部
26 通信制御部
28 入出力部
282 入力部
284 出力部
284a 表示部
30 調査担当者用端末
(ユーザーインターフェース)
UI-10 ブラウザ表示画面
UI-12 調査対象者画面
UI-122 ログイン画面
UI-124 個人メニュー画面
UI-126 質問表示画面
UI-126a いじめ被害に関する質問画面
UI-126b いじめ発見に関する質問画面
UI-126c いじめ詳細入力画面
UI-126d 学校生活に関する質問画面
UI-14 調査担当者画面
UI-142 調査担当者検索画面
UI-142a 調査担当者入力部
UI-142b 全学校一覧表示部
UI-144 全学年クラス一覧画面
UI-144a クラス別ハイリスク児童生徒数リスト
UI-146 クラス全児童生徒一覧画面
UI-146a 生徒別結果リスト
UI-148 個別児童生徒アセスメント結果画面
UI-148a ハイリスク判定表示部
UI-148b 個人状態情報表示部
UI-20 画面要素
UI-22 カーソル
UI-24 記入型入力受付部
UI-242 テキストボックス
UI-26 選択型入力受付部
UI-262 OKボタン
UI-264 アンケート開始ボタン
UI-266 回答ボタン
UI-268 学校選択ボタン
UI-270 プルダウンボタン
UI-272 クラス選択ボタン
UI-274 児童生徒選択ボタン
UI-276 回答詳細表示ボタン
UI-30 表示部
UI-32 ハイリスク判定部
UI-34 個人状態情報表示部
(プログラム)
P1 トラブル早期発見プログラム
P11 質問提示プログラム
P12 データ取得プログラム
P13 トラブル学習プログラム
P14 トラブル推論プログラム(トラブルリスク推論プログラム)
P15 トラブル深刻度評価プログラム
P16 トラブル報知プログラム
P20 調査対象者端末用アプリケーションプログラム(調査対象者用アプリ)
P30 調査対象者端末用アプリケーションプログラム(調査担当者用アプリ)
(データベース)
D1 トラブル早期発見データベース
D12 学校データベース
D14 児童生徒データベース
【手続補正書】
【提出日】2023-09-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)調査対象者からのトラブル被害申告に関する情報、
(2)調査対象者からのトラブル発見に関する情報、および
(3)調査対象者の精神状態、身体状態、または環境に関する情報、を含む質問回答情報と、調査対象者個人情報と、を学習データとして、
前記調査対象者個人情報、および、調査対象者の精神状態、身体状態、または環境に関する情報と、調査対象者からのトラブル被害申告またはトラブル発見に関する情報に基づくトラブルリスクとの関係を学習するトラブル学習部と、
調査対象者個人情報、および、調査対象者の精神状態、身体状態、または環境に関する情報を入力データとして、トラブルリスクについて定量化した値を出力するトラブル推論部と、
を備えることを特徴とする、トラブル早期発見システム。
【請求項2】
さらに、前記調査対象者に対し、ネットワークを通じて質問を提示する質問提示部を備えることを特徴とする、請求項1に記載のトラブル早期発見システム。
【請求項3】
さらに、前記トラブルリスクについて定量化した値が閾値以上の値である場合に、あらかじめ定められたユーザに情報を送信するトラブル報知部を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載のトラブル早期発見システム。
【請求項4】
さらに、前記質問回答情報において、トラブル被害申告またはトラブル発見があることが情報として含まれる場合、そのトラブル被害の深刻度を数値化して出力するトラブル深刻度評価部を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載のトラブル早期発見システム。
【請求項5】
さらに、前記質問回答情報と、前記調査対象者個人情報とを含む調査担当者画面を表示する、調査担当者画面表示部を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載のトラブル早期発見システム。
【請求項6】
コンピュータを、
調査対象者に対し、ネットワークを通じて質問を提示する質問提示手段、
(1)調査対象者からのトラブル被害申告に関する情報、
(2)調査対象者からのトラブル発見に関する情報、および
(3)調査対象者の精神状態、身体状態、または環境に関する情報、を含む質問回答情報と、調査対象者個人情報と、を学習データとして、
前記調査対象者個人情報、および、調査対象者の精神状態、身体状態、または環境に関する情報と、調査対象者からのトラブル被害申告またはトラブル発見に関する情報に基づくトラブルリスクとの関係を学習する、トラブル学習手段、
調査対象者個人情報、および、調査対象者の精神状態、身体状態、または環境に関する情報を入力データとして、トラブルリスクについて定量化した値を出力するトラブル推論手段、および、
前記トラブルリスクについて定量化した値が閾値以上の値である場合に、あらかじめ定められたユーザに情報を送信するトラブル報知手段、
として機能させるためのトラブル早期発見プログラム。