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特開2025-21953パウチ容器、およびパウチ容器の再封方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021953
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】パウチ容器、およびパウチ容器の再封方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 33/24 20060101AFI20250206BHJP
【FI】
B65D33/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023126083
(22)【出願日】2023-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】306018376
【氏名又は名称】クラシエ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】湯澤 太路
(72)【発明者】
【氏名】高山 千廣
(72)【発明者】
【氏名】森下 佳昌
(72)【発明者】
【氏名】横山 卓未
【テーマコード(参考)】
3E064
【Fターム(参考)】
3E064AB23
3E064BA17
3E064BA22
3E064BC08
3E064BC14
3E064BC18
3E064FA04
3E064FA06
3E064HM01
3E064HN04
3E064HP01
3E064HP02
(57)【要約】
【課題】外部からパウチ容器に力が加わっても、内容物が外部へ漏洩することを抑制できるパウチ容器、およびパウチ容器の再封方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に係るパウチ容器は、対向されたフィルムシートの周縁部をシールして形成されるとともに、内容物を収納する収納部と、収納部から内容物を取り出す開封可能な取出部と、を備えたパウチ容器であって、パウチ容器の外面に、開封された取出部を巻き込むようにフィルムシートを2回以上折り曲げた状態で固定する粘着層を有し、粘着層の粘着力が、開封された取出部を巻き込むようにフィルムシートを2回以上折り曲げた状態で固定する際に生じるフィルムシートの反発力よりも大きい。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向されたフィルムシートの周縁部をシールして形成されるとともに、内容物を収納する収納部と、収納部から内容物を取り出す開封可能な取出部と、を備えたパウチ容器であって、
パウチ容器の外面に、開封された取出部を巻き込むようにフィルムシートを2回以上折り曲げた状態で固定する粘着層を有し、
粘着層の粘着力が、開封された取出部を巻き込むようにフィルムシートを2回以上折り曲げた状態で固定する際に生じるフィルムシートの反発力よりも大きい、パウチ容器。
【請求項2】
折り曲げ目安を有し、
折り曲げ目安に基づいてフィルムシートが折り曲げられることで、開封された取出部を巻き込む、請求項1に記載のパウチ容器。
【請求項3】
粘着層の粘着力が、開封された取出部を巻き込むようにフィルムシートを2回以上折り曲げた状態で固定する際に生じるフィルムシートの反発力の10倍以上である、請求項1または2に記載のパウチ容器。
【請求項4】
対向されたフィルムシートの周縁部をシールして形成されるとともに、内容物を収納する収納部と、収納部から内容物を取り出す開封可能な取出部と、を備えたパウチ容器の再封方法であって、
パウチ容器の外面に粘着層を有し、
開封された取出部を巻き込むようにフィルムシートを2回以上折り曲げる折り曲げ工程と、
フィルムシートを粘着層に貼着して、開封された取出部を巻き込むようにフィルムシートを2回以上折り曲げた状態を固定する貼着工程と、を含み、
粘着層の粘着力が、開封された取出部を巻き込むようにフィルムシートを2回以上折り曲げた状態で固定する際に生じるフィルムシートの反発力よりも大きい、パウチ容器の再封方法。
【請求項5】
折り曲げ目安を有し、
折り曲げ目安に基づいてフィルムシートが折り曲げられることで、開封された取出部を巻き込む、請求項4に記載のパウチ容器の再封方法。
【請求項6】
粘着層の粘着力が、開封された取出部を巻き込むようにフィルムシートを2回以上折り曲げた状態で固定する際に生じるフィルムシートの反発力の10倍以上である、請求項4または5に記載のパウチ容器の再封方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パウチ容器、およびパウチ容器の再封方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シャンプー、ボディーソープ等の皮膚洗浄剤、コンディショナー、トリートメント等の毛髪化粧料、化粧水、乳液等の皮膚化粧料、衣類、食器等の家庭用洗浄剤等の分野では、詰め替え用製品が増加している。詰め替え用製品は、例えばプラスチック、ガラス等から形成されるボトル等に収納された内容物を使い終わったときに、新たな内容物を補充するための製品である。このような詰め替え用製品は、一般的に、パウチ容器に内容物を収納した形態で供されることが多い。
【0003】
パウチ容器は、フィルムシートの周縁部をシールして形成され、内容物を収納する収納部と、収納部から内容物を取り出す取出部を有している。このようなパウチ容器のうち、内容物を一回で使い切らない場合、内容物がパウチ容器内に残存するため、再度使用可能なパウチ容器が用いられる。
【0004】
再度使用可能なパウチ容器として、例えば、特許文献1に開示されるように、取り出し口にスパウトと呼ばれる樹脂製の部材とそれに螺合するキャップが取り付けられているものがある。しかしながら、スパウトが取り付けられたパウチ容器は、フィルムシートとは別部材であるスパウトを取り付けるため、製造コストを上昇させてしまう。さらに、使用する樹脂材料が増加するため、環境負荷も高くなる。
【0005】
また、再度使用可能なパウチ容器として、例えば、特許文献2には、内容物を注出する注出口が下向きになるようにフィルムシートを折り曲げるパウチ容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-203397号公報
【特許文献2】特開2001-151250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、スパウトを用いずにフィルムシートを折り曲げるパウチ容器は、スパウトを用いないため製造コスト、環境負荷を抑制できるものの、再封したパウチ容器が転倒、落下等により外部からパウチ容器に力が加わった場合、パウチ容器から内容物が外部へ漏洩してしまうといった問題がある。
【0008】
そこで、製造コスト、環境負荷を抑制できるスパウトを用いないパウチ容器において、パウチ容器を再封した際、外部からパウチ容器に力が加わっても、内容物が外部へ漏洩することを抑制できるパウチ容器が望まれている。
【0009】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、パウチ容器を再封した際、外部からパウチ容器に力が加わっても、内容物が外部へ漏洩することを抑制できるパウチ容器、およびパウチ容器の再封方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るパウチ容器は、対向されたフィルムシートの周縁部をシールして形成され
るとともに、内容物を収納する収納部と、収納部から内容物を取り出す開封可能な取出部と、を備えたパウチ容器であって、パウチ容器の外面に、開封された取出部を巻き込むようにフィルムシートを2回以上折り曲げた状態で固定する粘着層を有し、粘着層の粘着力が、開封された取出部を巻き込むようにフィルムシートを2回以上折り曲げた状態で固定する際に生じるフィルムシートの反発力よりも大きい。
【0011】
本発明に係るパウチ容器は、斯かる構成により、パウチ容器を再封した際、外部からパウチ容器に力が加わっても、内容物が外部へ漏洩することを抑制できる。
【0012】
本発明に係るパウチ容器は、折り曲げ目安を有し、折り曲げ目安に基づいてフィルムシートが折り曲げられることで、開封された取出部を巻き込んでもよい。
【0013】
本発明に係るパウチ容器は、斯かる構成により、開封された取出部の巻き込みをより容易に行うことができる。
【0014】
本発明に係るパウチ容器は、粘着層の粘着力が、開封された取出部を巻き込むようにフィルムシートを2回以上折り曲げた状態で固定する際に生じるフィルムシートの反発力の10倍以上であってもよい。
【0015】
本発明に係るパウチ容器は、斯かる構成により、開封された取出部を巻き込むようにフィルムシートを2回以上折り曲げた状態での固定をより強固に行うことができ、内容物が外部へ漏洩することをより抑制できる。
【0016】
本発明に係るパウチ容器の再封方法は、対向されたフィルムシートの周縁部をシールして形成されるとともに、内容物を収納する収納部と、収納部から内容物を取り出す開封可能な取出部と、を備えたパウチ容器の再封方法であって、パウチ容器の外面に粘着層を有し、開封された取出部を巻き込むようにフィルムシートを2回以上折り曲げる折り曲げ工程と、フィルムシートを粘着層に貼着して、開封された取出部を巻き込むようにフィルムシートを2回以上折り曲げた状態を固定する貼着工程と、を含み、粘着層の粘着力が、開封された取出部を巻き込むようにフィルムシートを2回以上折り曲げた状態で固定する際に生じるフィルムシートの反発力よりも大きい。
【0017】
本発明に係るパウチ容器の再封方法は、斯かる構成により、パウチ容器を再封した際、外部からパウチ容器に力が加わっても、内容物が外部へ漏洩することを抑制できる。
【0018】
本発明に係るパウチ容器の再封方法は、折り曲げ目安を有し、折り曲げ目安に基づいてフィルムシートが折り曲げられることで、開封された取出部を巻き込んでもよい。
【0019】
本発明に係るパウチ容器の再封方法は、斯かる構成により、開封された取出部の巻き込みをより容易に行うことができる。
【0020】
本発明に係るパウチ容器の再封方法は、粘着層の粘着力が、開封された取出部を巻き込むようにフィルムシートを2回以上折り曲げた状態で固定する際に生じるフィルムシートの反発力の10倍以上であってもよい。
【0021】
本発明に係るパウチ容器の再封方法は、斯かる構成により、開封された取出部を巻き込むようにフィルムシートを2回以上折り曲げた状態での固定をより強固に行うことができ、内容物が外部へ漏洩することをより抑制できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、パウチ容器を再封した際、外部からパウチ容器に力が加わっても、内容物が外部へ漏洩することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1A】未開封状態の本実施形態に係るパウチ容器を第一の面部側から見た概略図である。
図1B】本実施形態に係るパウチ容器の側面断面を示す概略図である。
図1C】開封状態の本実施形態に係るパウチ容器を第一の面部側から見た概略図である。
図2A】本実施形態に係るパウチ容器のフィルムシートを1回折り曲げた状態を第二の面部側から見た概略図である。
図2B】本実施形態に係るパウチ容器のフィルムシートを2回折り曲げた状態を第二の面部側から見た概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<パウチ容器>
以下、本発明の実施形態に係るパウチ容器1について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付しその説明は繰り返さない。
【0025】
図1Aは、未開封状態の本実施形態に係るパウチ容器1を第一の面部11側から見た概略図である。図1Bは、本実施形態に係るパウチ容器の側面断面を示す概略図である。図1Cは、開封状態の本実施形態に係るパウチ容器1を第一の面部11側から見た概略図である。本実施形態に係るパウチ容器1は、収納部2と、取出部3と、粘着層4と、を少なくとも備える。
【0026】
本実施形態に係るパウチ容器1は、フィルムシートによって形成された第一の面部11、第二の面部12および底面部13を有している。第一の面部11および第二の面部12は、フィルムシートの厚さ方向に重なり合うように対向してパウチ容器1の胴部を形成し、底面部13はパウチ容器1の底面を形成する。
【0027】
第一の面部11および第二の面部12は、対向するフィルムシートの周縁部である左右両端のシール部14及び上部のシール部15がシールされる。図1Bに示すように底面部13は、二つ折にしたフィルムシートが第一の面部11の下部と第二の面部12の下部との間に挟み込まれる。第一の面部11および底面部13は、対向するフィルムシートの周縁部であるシール部16がシールされ、第二の面部12および底面部13は、対向するフィルムシートの周縁部であるシール部17がシールされる。なお、シール部14~17をシールする方法としては、接着することができればよく、特に制限はない。シールする方法としては、例えば、熱接着等が挙げられる。
【0028】
本実施形態に係るパウチ容器1に用いられるフィルムシートとしては特に制限はなく、一般的に用いられるものが使用できる。フィルムシートとしては、二層以上の積層フィルムシートが好ましい。積層フィルムシートの具体例としては、シール効果及び融着効果の高いポリエチレン、ポリプロピレン等を内層とし、遮光性、強度、ガスバリアー性を付与するアルミ箔、ナイロン、ポリエステル等を中間層とし、印刷適正、強度を付与するナイロン、ポリエステル等を外層とするものが挙げられる。該積層フィルムシートを用いる場合には、パウチ容器1の内面が内層となるようにフィルムシートを重ね合わせる。
【0029】
収納部2は、対向するフィルムシートの非シール部分に配され内容物を収納し、シール部14~17によって封止されている。収納部2には、液状または粉末状の皮膚洗浄剤、
毛髪化粧料、皮膚化粧料、家庭用洗浄剤、調味料等を内容物として収納することができる。
【0030】
取出部3は、収納部2から内容物を取り出す箇所であり、開封可能に形成されている。本実施形態に係るパウチ容器1では、パウチ容器1の上端部の一方の側に、ノッチ5が形成されている。そして、図1Cに示すように例えば、ノッチ5からフィルムシートを引き裂く、はさみ等により切断することで取出部3が開封され開口を形成し、該開口より内容物が取り出される。
【0031】
粘着層4は、パウチ容器1の外面に設けられており、開封された取出部3を巻き込むようにフィルムシートを2回以上折り曲げた状態を保持するようにフィルムシートを固定する。そして、粘着層4の粘着力は、後述する該状態で固定する際に生じるフィルムシートの反発力よりも大きい。粘着層4は、開封された取出部3を巻き込むようにフィルムシートを2回以上折り曲げた状態を保持できればよく、その粘着力は該状態で固定する際に生じるフィルムシートの反発力よりも大きいものであれば、特に制限はない。粘着層4としては、例えば、接着剤、基材に接着層を設けた粘着テープ等を用いることができる。また、粘着層4は、剥離材を備えることが好ましい。剥離材を備えた粘着層4を用いる場合、粘着層4は、パウチ容器1の開封された取出部3を再封する際に、剥離材を剥離させて、フィルムシートが貼着される部分を露出させる。
【0032】
粘着層4が設けられる場所は、パウチ容器1の外面で、開封された取出部3を巻き込むようにフィルムシートを2回以上折り曲げた状態を保持できる位置であれば、特に制限はない。本実施形態に係るパウチ容器1では、フィルムシートを2回折り曲げるものとして、第一の面部11の開封された取出部3の開口近傍に粘着層4の少なくとも一部が設けられている。また、粘着層4は、開口に最も近い粘着層4の一辺が、ノッチ5からフィルムシートを引き裂いた、または切断された方向と略平行であることが好ましい。なお、本明細書において、開口近傍とは、フィルムシートを引き裂いた、または切断した方向に垂直な方向において、フィルムシートの開口端部と開口から最も離れたフィルムシートの端部との距離に対し、開口からの距離が20%以内の第一の面部11または第二の面部12における領域をいう。また、本明細書において、ノッチ5からフィルムシートを引き裂いた、または切断した方向と略平行とは、ノッチ5からフィルムシートを引き裂いた、または切断された方向に延びる直線を引いたときに、その直線に対しほとんど傾かない(例えば、傾斜角度±10度以内)ことをいう。
【0033】
また、本明細書における粘着層4の粘着力は、以下のように規定される。
【0034】
粘着層の粘着力[N]=単位面積当たりの粘着力[N/cm]×粘着面積[cm
【0035】
なお、本明細書における単位面積当たりの粘着力[N/cm]は、次のように測定される。
(1)第一のフィルムシート表面に15mm×15mmの粘着層を貼着する。
(2)(1)で粘着層が貼着された第一のフィルムシートに重なるように第二のフィルムシートを積層させる。
(3)(2)で積層されたフィルムシートに質量2kgのローラーを1往復させて、粘着層を両フィルムシートに接着させる。
(4)ロードセル等により積層されたフィルムシートを担持して垂直方向の粘着力[N/2.25cm]を測定し、単位面積当たりの粘着力[N/cm]とする。
【0036】
パウチ容器1は、取出部3を開封した後、収納部2に内容物を収納した状態で再封される。パウチ容器1の再封は、開封された取出部3を巻き込むようにフィルムシートを2回
以上折り曲げた状態で固定することで行われる。
【0037】
パウチ容器1は、開封された取出部3を巻き込むようにして2回以上折り曲げればよく、どのように折り曲げるかは特に制限はない。本実施形態に係るパウチ容器1のフィルムシートを2回折り曲げる一例を図2A、2Bに示す。図2Aは、本実施形態に係るパウチ容器1のフィルムシートを1回折り曲げた状態を第二の面部12側から見た概略図である。図2Bは、本実施形態に係るパウチ容器1のフィルムシートを2回折り曲げた状態を第二の面部12側から見た概略図である。
【0038】
本実施形態に係るパウチ容器1におけるフィルムシートの1回目の折り曲げは、粘着層4が外側を向くように折り曲げられる。この時、フィルムシートの折り曲げは、ノッチ5からフィルムシートを引き裂いた、または切断した方向と略平行な直線(図1C中、A-A線)に沿って行われる(図2A)。
【0039】
本実施形態に係るパウチ容器1におけるフィルムシートの2回目の折り曲げは、開封された取出部3を巻き込むように、ノッチ5からフィルムシートを引き裂いた、または切断した方向と略平行な直線(図1C中、B-B線)に沿って行われる(図2B)。2回目の折り曲げにより、1回目の折り曲げによって外側を向いていた粘着層4が内側を向くことになり、粘着層4は、第二の面部12の表面と対向して、第二の面部12の表面に貼着される。粘着層4にフィルムシートが貼着されることで、パウチ容器1は再封されることとなる。
【0040】
また、パウチ容器1においてフィルムシートをn回(nは3以上の整数を表す。)折り曲げる場合には、粘着層4は、n-1回目の折り曲げ時に、粘着層4が外側に折り曲げられる位置に設けられる。
【0041】
本実施形態に係るパウチ容器1は、開封された取出部3を巻き込むようにフィルムシートを2回以上折り曲げる。開封された取出部3を巻き込むようにフィルムシートを折り曲げることにより、取出部3の開封により形成された開口が、パウチ容器1の外部との接触する部分が少なくなる。その結果、取出部3が開封されたパウチ容器1は、収納部2の収納された内容物の劣化を抑制しつつ保管することができる。また、フィルムシートを2回以上折り曲げることで、内容物の漏洩を抑制することができ、折り曲げる回数が増えることで漏洩をより防ぐことができる。しかしながら、フィルムシートを折り曲げると、フィルムシートは折り曲げられていない状態に戻ろうとするため反発力が大きくなる。そこで、フィルムシートが2回以上折り曲げられた状態を保持するために、粘着層4の粘着力を、該状態を固定する際に生じるフィルムシートの反発力(以下、単に「フィルムシートの反発力」と記載することがある。)よりも大きくする。
【0042】
本明細書におけるフィルムシートの反発力は、以下の方法で測定される。
(1)質量2kgのローラーを1往復させてパウチ容器を谷折りで折り曲げる。
(2)折り曲げ回数m回(mは2以上の整数を表す。)に応じて、質量2kgのローラーを1往復させて(1)で折り曲げた場所を巻き込むように折り曲げる。
(3)水平面から高さ2mmにおける、折り曲げ回数m-1回目の折り目部分の反発力[N]をロードセル等により測定し、m回折り曲げたフィルムシートの反発力とする。
【0043】
粘着層4の粘着力は、上記のフィルムシートの反発力よりも大きければよく、その大きさに特に制限はない。粘着層4の粘着力としては、開封された取出部3を巻き込むようにフィルムシートを2回以上折り曲げた状態での固定をより強固にする観点から、上記のフィルムシートの反発力の10倍以上であることが好ましい。また、粘着層4の粘着力としては、開封されたパウチ容器1を再封した後、再度内容物を取出部3から取り出す際の扱
いを容易とする観点から、100[N]以下であることが好ましい。
【0044】
本実施形態に係るパウチ容器1は、パウチ容器1の外面に、開封された取出部3を巻き込むようにフィルムシートを2回以上折り曲げた状態で固定する粘着層4を有し、粘着層4の粘着力が、開封された取出部3を巻き込むようにフィルムシートを2回以上折り曲げた状態で固定する際に生じるフィルムシートの反発力よりも大きくすることよって、内容物の外部への漏洩を抑制する状態を強固に保持できる。したがって、本実施形態に係るパウチ容器1は、パウチ容器1を再封した際、外部からパウチ容器に力が加わっても、内容物が外部へ漏洩することを抑制できる。
【0045】
さらに、本実施形態に係るパウチ容器1は、スパウトとキャップを有することなく再封できるので、低コストで製造ができ、環境負荷を低くすることができる。また、本実施形態に係るパウチ容器1は、内容物を一度に使い切る必要がなく、長期間内容物を劣化することなく保管することができる。
【0046】
以上、本発明のパウチ容器の一実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0047】
例えば、上記本実施形態に係るパウチ容器1では、開封された取出口を巻き込むためにフィルムシートの任意の場所を2回以上折り曲げている。しかしながら、本発明は当該構成に制限されるものではなく、開封された取出口の巻き込みをより容易に行えるように、パウチ容器1にあらかじめ折り曲げる箇所が決められた折り曲げ目安を設けてもよい。折り曲げ目安としては、例えば、第一の面部11および/または第二の面部12において、折り曲げる箇所に(例えば、図1C中A-A線、B-B線に沿うように)折れ線を設けてもよいし、印刷によるマークを付けてもよい。折り曲げ目安としては、折り曲げやすくする観点から折れ線を設けることが好ましい。折れ線は、ライン状に形成したフィルムシートの肉薄部あるいは表面が凸、裏側が凹となる条等によって形成してもよい。
【0048】
また、上記本実施形態に係るパウチ容器1では、取出部3は、上端の一方の側に形成されている。しかしながら、本発明は当該構成に制限されるものではなく、取出部3は、上端のすべてにわたって形成されてもよい。すなわち、パウチ容器の上部のシール部すべてが取り除かれて、開封によりパウチ容器の上部全体にわたり取出部3の開口が形成される。その場合、フィルムシートは、パウチ容器の上部すべてにわたって形成された取出部3の開口を巻き込むように折り曲げられる。
【0049】
また、上記本実施形態に係るパウチ容器1では、粘着層4は折り曲げられる側のフィルムシートに設けられている。しかしながら、本発明は、当該構成に制限されるものではなく、粘着層は、開封された取出部を巻き込むようにフィルムシートが2回以上折り曲げた後に、第一の面部または第二の面部の折り曲げたフィルムシートに対向する位置に設けてもよい。
【0050】
<パウチ容器の再封方法>
本実施形態に係るパウチ容器1の再封方法は、対向されたフィルムシートの周縁部をシールして形成されるとともに、内容物を収納する収納部2と、収納部2から内容物を取り出す開封可能な取出部3と、を備えたパウチ容器1の再封方法であって、パウチ容器1の外面に粘着層4を有し、開封された取出部3を巻き込むようにフィルムシートを2回以上折り曲げる折り曲げ工程と、フィルムシートを粘着層4に貼着して、開封された取出部3を巻き込むようにフィルムシートを2回以上折り曲げた状態を固定する貼着工程と、を含み、粘着層4の粘着力が、開封された取出部3を巻き込むようにフィルムシートを2回以
上折り曲げた状態で固定する際に生じるフィルムシートの反発力よりも大きい。パウチ容器1が備える収納部2、取出部3、粘着層4の説明は上述の通りである。
【0051】
折り曲げ工程は、開封された取出部3を巻き込むようにフィルムシートを2回以上折り曲げる。フィルムシートを2回以上折り曲げて、開封された取出部3が巻き込まれることで、収納部2内に収納された内容物の漏洩を抑制することができる。
【0052】
貼着工程は、開封された取出部3を巻き込むように折り曲げられたフィルムシートを粘着層4に貼着して、フィルムシートが2回以上折り曲げられた状態を固定する。フィルムシートが貼着される粘着層4は、上記で説明したように、当該状態で固定する際に生じるフィルムシートの反発力よりも大きい粘着力を有しているので、当該状態を保持することができる。
【0053】
本実施形態に係るパウチ容器1の再封方法は、パウチ容器1の外面に粘着層4を有し、折り曲げ工程、貼着工程を含み、粘着層4の粘着力が、開封された取出部3を巻き込むようにフィルムシートを2回以上折り曲げた状態で固定する際に生じるフィルムシートの反発力よりも大きくすることよって、内容物の外部への漏洩を抑制する状態を強固に保持できる。したがって、本実施形態に係るパウチ容器1の再封方法は、パウチ容器1を再封した際、外部からパウチ容器に力が加わっても、内容物が外部へ漏洩することを抑制できる。
【0054】
さらに、本実施形態に係るパウチ容器1の再封方法は、スパウトとキャップを有することなく再封できるので、低コストで製造ができ、環境負荷を低くすることができる。また、本実施形態に係るパウチ容器1の再封方法は、内容物を一度に使い切る必要がなく、長期間内容物を劣化することなく保管することができる。
【実施例0055】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に制限されるものではない。
【0056】
(パウチ容器)
表1に示す各実施例および比較例の粘着力を有する剥離紙を有した粘着層をパウチ容器に貼着して、粘着層を有するパウチ容器を作製した。また、パウチ容器の取出部を上端の一方に形成したもの(取出部(1))、上端のすべてにわたって形成したもの(取出部(2))を用いた。なお、粘着層は、パウチ容器を構成するフィルムシートを所定の回数折り曲げた際、折り曲げた状態を固定できる位置に貼着した。使用したパウチ容器、および粘着層を以下に示す。
【0057】
パウチ容器(1)(大日本印刷株式会社製):フィルムシート層構成(外層/中間層/内層=二軸延伸ナイロンフィルム(15μm)/アルミ蒸着PET(12μm)/直鎖状低密度ポリエチレン(90μm))
パウチ容器(2)(株式会社フジシール製):フィルムシート層構成(外層/中間層/内層=二軸延伸ナイロンフィルム(15μm)/アルミ蒸着PET(12μm)/直鎖状低密度ポリエチレン(150μm))
パウチ容器(3)(藤森工業株式会社製):フィルムシート層構成(外層/中間層/内層=二軸延伸ナイロンフィルム(15μm)/アルミ蒸着PET(12μm)/直鎖状低密度ポリエチレン(130μm))
【0058】
粘着層(1):ナイスタック(登録商標) 一般タイプ(ニチバン株式会社製)
粘着層(2):TL-202(リンテック株式会社製)
粘着層(3):ナイスタック 強力タイプ(ニチバン株式会社製)
【0059】
表1に示す各実施例および比較例のパウチ容器を用い、フィルムシートを所定回数折り曲げ、下記の測定、試験を行い評価した。結果を表1に示す。
【0060】
(粘着層の単位面積当たりの粘着力測定)
粘着層の単位面積当たりの粘着力の測定は以下の方法で行った。
(1)第一のフィルムシート表面に15mm×15mmの粘着層を貼着した。
(2)(1)で粘着層が貼着された第一のフィルムシートに重なるように第二のフィルムシートを積層した。
(3)(2)で積層されたフィルムシートに質量2kgのローラーを1往復させて、粘着層を両フィルムシートに接着させた。
(4)ロードセル(AND社製 MCT-2150)により積層されたフィルムシートを担持して垂直方向の粘着力[N/2.25cm]を測定し、単位面積当たりの粘着力[N/cm]とした。
【0061】
(粘着層の粘着力の算出)
粘着層の面積(各実施例および比較例の粘着層の寸法を表1に示す。)に上記で測定した単位面積当たりの粘着力を乗じて粘着層の粘着力を算出した。
【0062】
(フィルムシートの反発力の測定)
フィルムシートの反発力の測定は以下の方法で行った。
(1)フィルムシートを2回折り曲げる場合
[1]質量2kgのローラーを1往復させてパウチ容器を谷折りで折り曲げる。
[2]質量2kgのローラーを1往復させて[1]で折り曲げた場所を巻き込むように谷折りして折り曲げる(2回目)。
[3]水平面から高さ2mmにおける、折り曲げ回数2回目の折り目部分の反発力[N]をロードセル(AND社製 MCT-2150)により測定し、フィルムシートの反発力とする。
(2)フィルムシートを3回折り曲げる場合
[1]質量2kgのローラーを1往復させてパウチ容器を谷折りで折り曲げる(1回目)。
[2]質量2kgのローラーを1往復させて[1]で折り曲げた場所を巻き込むように谷折りして折り曲げる(2回目)。
[3]質量2kgのローラーを1往復させて[1]で折り曲げた場所をさらに巻き込むように谷折りして折り曲げる(3回目)。
[4]水平面から高さ2mmにおける、折り曲げ回数3回目の折り目部分の反発力[N]をロードセルにより測定し、フィルムシートの反発力とする。
【0063】
(落下試験)
パウチ容器の落下試験を以下の方法で行った。
[1]パウチ容器の収納部に350mlの内容物(水)を収納。
[2][1]で用意したパウチ容器の取出部を開封し、開封された取出部を巻き込むようにフィルムシートを2回または3回折り曲げ、粘着層にフィルムシートを貼着してパウチ容器を再封。
[3][2]で再封したパウチ容器のフィルムシートが折り曲げられた方を下にして、高さ100cmからコンクリートへ落下させた。
[4][3]によるコンクリートへの落下を複数回行った。
[5]内容物の漏洩が確認された回数の1つ前の回数を記録。落下回数の最大値は10回とした。
【0064】
(耐圧試験)
パウチ容器の耐圧試験を以下の方法で行った。
[1]パウチ容器の収納部に350mlの内容物(水)を収納。
[2][1]で用意したパウチ容器の取出部を開封し、開封された取出部を巻き込むようにフィルムシートを2回または3回折り曲げ、粘着層にフィルムシートを貼着してパウチ容器を再封。
[3][2]で再封したパウチ容器を横倒しにして、フィルムシートの折り曲げられた箇所を押さえつけないように、鉛直方向からパウチ容器に荷重した。荷重は、10秒ごとに5kg増加した。
[4]内容物の漏洩が確認された荷重の1つ前の荷重を記録。荷重の最大値は70kgとした。
【0065】
(パウチ容器の評価)
パウチ容器において、取出部の浮き、落下、および耐圧における評価を行った。各項目の評価基準を下記に示す。
取出部の浮き 〇:目視判断、粘着層に貼着後、7日で浮きが見られない。
△:目視判断、粘着層に貼着後、7日未満で浮きが見られる。
×:目視判断、粘着層に貼着直後に浮きが見られる。
落下評価 ◎:落下試験における記録回数が6回以上。
〇:落下試験における記録回数が4回または5回。
△:落下試験における記録回数が2回または3回。
×:落下試験における記録回数が1回以下。
耐圧評価 ◎:耐圧試験における記録荷重が50kg以上
〇:耐圧試験における記録荷重が20kg以上50kg未満
△:耐圧試験における記録荷重が10kg以上20kg未満
×:耐圧試験における記録荷重が10kg未満
【0066】
【表1】

【0067】
実施例1~15のパウチ容器は、いずれも取出部の浮き、落下および耐圧に対する評価は十分なものであった。したがって、実施例1~15のパウチ容器は、パウチ容器を再封した際、外部からパウチ容器に力が加わっても、内容物が外部へ漏洩することを抑制できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のパウチ容器、およびパウチ容器の再封方法は、パウチ容器を再封した際、外部からパウチ容器に力が加わっても、内容物が外部へ漏洩することを抑制できる。したがって、パウチ容器、パウチ容器の再封方法を扱う業者にとって有用である。
【符号の説明】
【0069】
1…パウチ容器、11…第一の面部、12…第二の面部、13…底面部、14、15、16、17…シール部、2…収納部、3…取出部、4…粘着層、5…ノッチ
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B