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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002196
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】属性推定装置
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20241226BHJP
【FI】
G06T7/00 660B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102194
(22)【出願日】2023-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】511121768
【氏名又は名称】今井 龍一
(71)【出願人】
【識別番号】500063228
【氏名又は名称】田中 成典
(71)【出願人】
【識別番号】517305883
【氏名又は名称】山本 雄平
(71)【出願人】
【識別番号】519113745
【氏名又は名称】Intelligent Style株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092956
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 栄男
(74)【代理人】
【識別番号】100101018
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 正
(72)【発明者】
【氏名】今井 龍一
(72)【発明者】
【氏名】田中 成典
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄平
(72)【発明者】
【氏名】姜 文渊
(72)【発明者】
【氏名】中原 匡哉
(72)【発明者】
【氏名】中畑 光貴
(72)【発明者】
【氏名】高野 精久
(72)【発明者】
【氏名】山中 亮
(72)【発明者】
【氏名】平野 順俊
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096AA09
5L096CA04
5L096DA02
5L096FA18
5L096FA60
5L096FA64
5L096FA66
5L096FA69
5L096HA11
5L096KA04
5L096KA15
(57)【要約】
【課題】 歩行する人物など形態が変化する対象物について、精度よくその属性を判断することのできる技術を提供する。
【解決手段】 計測器2は、歩行中の人物(歩行者)の表面各点までの距離を計測し、これに基づいて当該歩行者の三次元点群データを生成する。三次元点群データ群の生成処理4においては、歩行者の歩行中に計測して得た時系列の複数の三次元点群データに基づいて、時系列を区別可能な三次元点群データ群を生成する。属性推定処理6では、生成した三次元点群データ群に基づいて歩行者の属性を推定する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の表面各点までの距離を計測して三次元点群データを生成する計測器を備え、
移動中に外形形態が時間経過とともに変化する対象物について複数の位置における三次元点群データを計測器から取得し、
前記取得した三次元点群データに基づいて、時系列を区別可能に統合した三次元点群データ群を生成し、
三次元点群データ群に基づいて、対象物の属性を推定する属性推定装置。
【請求項2】
対象物の表面各点までの距離を計測して三次元点群データを生成する計測器を備え、
少なくとも一つのプロセッサと、
当該少なくとも一つのプロセッサによって実行されるように構成された少なくとも一つのプログラムを記録するメモリと、
を備えた属性推定装置であって、
前記少なくとも一つのプログラムは、
移動中に外形形態が時間経過とともに変化する対象物について複数の位置における三次元点群データを計測器から取得し、
前記取得した三次元点群データに基づいて、時系列を区別可能に統合した三次元点群データ群を生成し、
三次元点群データ群に基づいて、対象物の属性を推定する属性推定装置。
【請求項3】
属性推定装置をコンピュータによって実現するための属性推定プログラムであって、
移動中に外形形態が時間経過とともに変化する対象物について複数の位置における三次元点群データを計測器から取得し、
前記取得した三次元点群データに基づいて、時系列を区別可能に統合した三次元点群データ群を生成し、
三次元点群データ群に基づいて、対象物の属性を推定する命令を備える属性推定プログラム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかの装置またはプログラムにおいて、
前記計測器は、LIDARであることを特徴とする装置またはプログラム。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかの装置またはプログラムにおいて、
前記移動中に外形形態が時間経過とともに変化する対象物は、歩行中の人物であることを特徴とする装置またはプログラム。
【請求項6】
請求項1~3のいずれかの装置またはプログラムにおいて、
前記時系列を区別可能に統合した三次元点群データ群は、各点の色、濃度または形状によって区別可能とした各時点の三次元点群データを重畳または並べたものであることを特徴とする装置またはプログラム。
【請求項7】
請求項1~3のいずれかの装置またはプログラムにおいて、
前記属性の推定は、前記三次元点群データ群の少なくとも縦、横、高さ寸法のいずれかを用いて、少なくとも大人であるか子供であるかを判断することを特徴とする装置またはプログラム。
【請求項8】
請求項1~3のいずれかの装置またはプログラムにおいて、
前記属性の推定は、三次元点群データ群に基づいて学習した推定モデルに、前記三次元点群データ群を与えて、属性を推定するものであることを特徴とする装置またはプログラム。
【請求項9】
請求項5の装置またはプログラムにおいて、
前記属性の推定は、歩行者が杖を持っているか、かばんやバッグを持っているか、スーツケースを持っているか、ベビーカーを押しているか、シルバーカーを使用しているかの少なくともいずれかの推定を行うものであることを特徴とする装置またはプログラム。
【請求項10】
移動中に外形形態が時間経過とともに変化する対象物について複数の位置における三次元点群データを取得し、
前記取得した三次元点群データに基づいて、時系列を区別可能に統合した三次元点群データ群を生成し、
三次元点群データ群に基づいて、対象物の属性を推定する属性推定装置。
【請求項11】
少なくとも一つのプロセッサと、
当該少なくとも一つのプロセッサによって実行されるように構成された少なくとも一つのプログラムを記録するメモリと、
を備えた属性推定装置であって、
前記少なくとも一つのプログラムは、
移動中に外形形態が時間経過とともに変化する対象物について複数の位置における三次元点群データを取得し、
前記取得した三次元点群データに基づいて、時系列を区別可能に統合した三次元点群データ群を生成し、
三次元点群データ群に基づいて、対象物の属性を推定する属性推定装置。
【請求項12】
属性推定装置をコンピュータによって実現するための属性推定プログラムであって、
移動中に外形形態が時間経過とともに変化する対象物について複数の位置における三次元点群データを取得し、
前記取得した三次元点群データに基づいて、時系列を区別可能に統合した三次元点群データ群を生成し、
三次元点群データ群に基づいて、対象物の属性を推定する命令を備える属性推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、人物等の属性を推定する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
都市計画やマーケティングのために、人物の流動を計数することが行われている。従前は、調査員が目視にて子供・大人・杖をつく人、かばんを持つ人などの属性を判断し、通行量等を計数していた。
【0003】
近年、ディープラーニングを用いて撮像した物体の種類を判別することが行われている(たとえばYOLOモデル)。この物体検知モデルを種々の人物によって学習し、学習済モデルにて人物の属性を判別する装置を実現することができる。
【0004】
しかしながら、上記のような学習済モデルによる人物の属性判定においては、人物の腕や脚が動くため、その属性の判断が困難であった。これを解決するため、特許文献1においては、人物の骨格情報を生成し、当該骨格情報から手や足などの情報を削除し、学習を行って推定を行うようにしている。これにより、歩行者についても、同一人物であるか否かを適切に判断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-90760
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のシステムでは、同一の人物であるかどうかの判断をできるものの、人物の属性までは推定することはできなかった。また、骨格情報を作成しなければならず、処理が煩雑であった。
【0007】
このような問題は、人物だけでなく、形態が変化する物体について共通する問題である。
【0008】
この発明は、上記のような問題点を解決して、歩行する人物など形態が変化する対象物について、精度よくその属性を判断することのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の独立してまたは組み合わせて適用可能な特徴を以下に列挙する。
【0010】
(1)(2)(3)この発明に係る属性推定装置は、対象物の表面各点までの距離を計測して三次元点群データを生成する計測器を備え、移動中に外形形態が時間経過とともに変化する対象物について複数の位置における三次元点群データを計測器から取得し、前記取得した三次元点群データに基づいて、時系列を区別可能に統合した三次元点群データ群を生成し、三次元点群データ群に基づいて、対象物の属性を推定する。
【0011】
時系列を区別可能に統合した三次元点群データ群に基づいて、対象物の属性を推定するようにしているので、より正確な推定を行うことができる。
【0012】
(4)この発明に係る属性推定装置は、計測器が、LIDARであることを特徴としている。
【0013】
したがって、夜間であっても計測を行って推定を行うことができる。
【0014】
(5)この発明に係る属性推定装置は、移動中に外形形態が時間経過とともに変化する対象物が、歩行中の人物であることを特徴としている。
【0015】
したがって、歩行者の属性を推定することができる。
【0016】
(6)この発明に係る属性推定装置は、時系列を区別可能に統合した三次元点群データ群が、各点の色、濃度または形状によって区別可能とした各時点の三次元点群データを重畳または並べたものであることを特徴としている。
【0017】
したがって、時間経過によって変化する外形を考慮して属性の推定を行うことができる。
【0018】
(7)この発明に係る属性推定装置は、属性の推定が、三次元点群データ群の少なくとも縦、横、高さ寸法のいずれかを用いて、少なくとも大人であるか子供であるかを判断することを特徴としている。
【0019】
したがって、三次元点群データ群の寸法に基づいて、より正確に判断することができる。
【0020】
(8)この発明に係る属性推定装置は、属性の推定が、三次元点群データ群に基づいて学習した推定モデルに、前記三次元点群データ群を与えて、属性を推定するものであることを特徴としている。
【0021】
したがって、学習済の推定モデルに基づいて、より正確に推定を行うことができる。
【0022】
(9)この発明に係る属性想定装置は、属性の推定が、歩行者が杖を持っているか、かばんやバッグを持っているか、スーツケースを持っているか、ベビーカーを押しているか、シルバーカーを使用しているかの少なくともいずれかの推定を行うものであることを特徴としている。
【0023】
したがって、これらの所持物などに基づく属性を推定することができる。
【0024】
(10)-(12)この発明に係る属性推定装置は、移動中に外形形態が時間経過とともに変化する対象物について複数の位置における三次元点群データを取得し、前記取得した三次元点群データに基づいて、時系列を区別可能に統合した三次元点群データ群を生成し、三次元点群データ群に基づいて、対象物の属性を推定することを特徴としている。
【0025】
時系列を区別可能に統合した三次元点群データ群に基づいて、対象物の属性を推定するようにしているので、より正確な推定を行うことができる。
【0026】
「装置」とは、1台のコンピュータによって構成されるものだけでなく、ネットワークなどを介して接続された複数のコンピュータによって構成されるものも含む概念である。したがって、本発明の手段(あるいは手段の一部でもよい)が複数のコンピュータに分散されている場合、これら複数のコンピュータが装置に該当する。
【0027】
「プログラム」とは、CPUにより直接実行可能なプログラムだけでなく、ソース形式のプログラム、圧縮処理がされたプログラム、暗号化されたプログラム、オペレーティングシステムと協働してその機能を発揮するプログラム等を含む概念である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】この発明の一実施形態による属性推定装置の機能的構成である。
図2】属性推定装置におけるカメラ28の設置状態を示す図である。
図3】属性推定装置のハードウエア構成を示す図である。
図4】属性推定プログラム26のフローチャートである。
図5図5Aは、三次元点群データの例である。図5Bは、推定モデルによって人が推定され、人(歩行者)がバウンダリボックス42にて囲われた状態を示す図である。図5Cは、時間的変化による人の移動を追跡するための処理を説明する図である。
図6図6Aは、時系列に並べた同一歩行者の三次元点群データである。図6Bは、重ね合わせて生成した三次元点群データ群である。
図7】属性推定の処理の詳細を示すフローチャートである。
図8】三次元点群データ群を内包するバウンダリーボックス50を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
1.全体的構成としての処理の流れ
図1に、この発明の一実施形態による属性推定装置の全体構成を示す。計測器2は、歩行中の人物(歩行者)の表面各点までの距離を計測し、これに基づいて当該歩行者の三次元点群データを生成する。三次元点群データ群の生成処理4においては、歩行者の歩行中に計測して得た時系列の複数の三次元点群データに基づいて、時系列を区別可能な三次元点群データ群を生成する。
【0030】
属性推定処理6では、生成した三次元点群データ群に基づいて歩行者の属性を推定する。
【0031】
上記のように、時系列の三次元点群データ群に基づいて歩行者の属性を推定するようにしているので、各三次元点群データの外形に変化が生じていても、その変化も考慮して、より正確な推定を行うことができる。また、各時刻における三次元点群データが粗であっても、複数時刻の三次元点群データを用いて推定を行うので、属性をより正確に判定することができる。
【0032】
2.ハードウエア構成
図2に、計測器であるLIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)28の設置状態を示す。この実施形態では、道路の電柱などにLIDAR28を設置している。
【0033】
LIDAR28は、機器の設置方向である中心軸34を中心として、上下左右の全周方向に所定角度θの範囲にて、レーザを照射しその反射を受信するものである。LIDAR28は、照射から反射までの時間を計測し、対象物までの距離を算出する。これに基づいて対象物表面の各点の座標を算出し、三次元点群データとして出力する。なお、LIDAR28は、中心軸34をY軸とし、中心軸34に対して上下方向に垂直な軸40をZ軸とし、中心軸34に対して左右方向に垂直な軸(紙面に垂直な方向)をX軸とした座標にて、三次元点群データを出力する。
【0034】
図3に、属性推定装置のハードウエア構成を示す。CPU10には、メモリ12、ディスプレイ14、通信回路16、SSD18、DVD-ROMドライブ20、キーボード/マウス22、LIDAR28が接続されている。通信回路16は、インターネットに接続するための回路である。
【0035】
LIDAR28は、レーザ光を歩行者などの対象物に照射しその反射光を受光するまでの時間によって対象物表面までの距離を計測し、これに基づいて対象物表面の各点の三次元座標を示す三次元点群データを生成するものである。
【0036】
SSD18には、オペレーティングシステム24、属性推定プログラム26が記録されている。属性推定プログラム26は、オペレーティングシステム24と協働してその機能を発揮するものである。これらプログラムは、DVD-ROM30に記録されていたものを、DVD-ROMドライブ20を介して、SSD18にインストールしたものである。
【0037】
3.属性推定処理
図4に、属性推定プログラム26のフローチャートを示す。CPU10は、LIDAR28から1フレーム分の三次元点群データを取得する(ステップS2)。取得した三次元点群データの例を、図5Aに示す。図に示すように、歩行者だけでなく、道路表面なども含まれた三次元点群データが得られている。なお、この三次元点群データの座標は、図2に示したように、LIDAR28の設置方向である中心軸34をY軸とする三次元座標である。
【0038】
次に、CPU10は、この三次元点群データから歩行者部分の三次元点群データを抽出する(ステップS3)。図5Bに示すように、歩行者を囲うバウンダリーボックス42を得て、歩行者を抽出するようにしている。
【0039】
この実施形態においては、三次元点群データから歩行者部分をバウンダリーボックスにて囲って抽出するよう学習された学習済の推定モデルを用いるようにしている。学習データとしては、図5Aに示すような三次元点群データと、これに含まれる歩行者のバウンダリーボックスを特定する座標との組を用いる。なお、推定モデルとしては、三次元に適合させたYOLOであるOpenPC Detを用いることができる。
【0040】
続いて、図5Bに示すように、バウンダリーボックスの中心44(座標としての中心)を算出する(ステップS5)。CPU10は、当該中心44が、予め設定した第1面36(図2参照)よりLIDAR28に近い側にあるかどうかを判断する(ステップS6)。第1面36は、道路面に対してほぼ垂直な仮想面である。
【0041】
遠い側にあれば、そのバウンダリーボックスを処理対象としない。近い側にあれば、図5Cに示すように、バウンダリーボックス42の中心44と、前回のフレームにおけるバウンダリーボックス42Pの中心44Pとの距離に基づいて、両者を同一の歩行者として関連づける(ステップS8)。歩行者は概ね所定範囲内の速度で走行しているので、前回のフレームとの移動距離に基づいて関連づけることが可能である。
【0042】
当該歩行者が移動し、バウンダリーボックス42の中心44が第2面38よりLIDAR28に近い側に位置すると(ステップS7)、それ以降のバウンダリーボックスは処理対象としない。
【0043】
CPU10は、ステップS8において追跡した同一歩行者の複数の三次元点群データを統合して三次元点群データ群を生成すする(ステップS9)。
【0044】
歩行者は手や足を動かして歩行している。このため、各時刻における三次元点群データは異なる形状となる。この実施形態では、時間経過に伴う形状変化も考慮に入れた上で推定をするため、時系列情報を加味した上で、各時刻の三次元点群データを統合するようにしている。
【0045】
図6にその例を示す。図6Aに示すように、CPU10は、三次元点群データに対し時刻ごとに異なる色を付す。図6Aにおいては、左側から、時刻t1、t2、t3において取得した三次元点群データが示されている。この実施形態では、時刻t1の三次元点群データの各点を「青色」、時刻t2の三次元点群データの各点を「黄色」、時刻t3の三次元点群データの各点を「赤色」としている。
【0046】
CPU10は、図6Bに示すように、これらを重ね合わせて三次元点群データ群を生成するようにしている。なお、重ね合せの際には、バウンダリボックスの中心(重心)をそろえるようにして、位置合わせをするようにしている。
【0047】
続いて、CPU10は、図6Bの三次元点群データ群に基づいて、歩行者の属性を推定する(ステップS10)。この実施形態では、まず、大人であるか子供であるかの属性を推定した後、スーツケースを持っているか否かなどの属性を推定するようにしている。
【0048】
図7に、歩行者の属性推定の詳細フローチャートを示す。CPU10は、図8に示すように、三次元点群データ群を内包する最小のバウンダリーボックス50を生成する。CPU10は、生成したバウンダリーボックス50の高さHを算出する(ステップS21)。算出した高さHに基づいて、当該歩行者が大人であるか子供であるかを判断する(ステップS22)。
【0049】
この実施形態では、高さHが所定値(たとえば110cm)以上であれば、大人と判断し、所定値未満であれば子供と判断するようにしている。
【0050】
以上のようにして、大人か子供かを判断すると、CPU10は、三次元点群データ群に基づいて、大人であれば大人に関する属性を推定し(ステップS24)、子供であれば子供に関する属性を推定する(ステップS25)。この実施形態では、歩行者の歩行による時系列の三次元点群データ(三次元点群データ群)に基づいて推定を行っているので、推定の精度を向上させることができる。
【0051】
ステップS24の推定には、大人である歩行者が白杖、杖、スーツケース、かばん、ベビーカー、シルバーカー、シルバーカートなどを持っているかどうかの属性を推定するように学習された推定モデル(ニューラルネットワーク)を用いる。学習データとしては、三次元点群データ群と、当該三次元点群データ群によって表される歩行者が、白杖、杖、スーツケース、かばん、ベビーカー、シルバーカー、シルバーカートなどを有するかどうかを示すラベルとの組を用いる。
【0052】
ステップS25の推定には、子供である歩行者が、ランドセル、かばんなどを持っているかどうかの属性を推定するように学習された推定モデル(ニューラルネットワーク)を用いる。学習データとしては、三次元点群データ群と、当該三次元点群データ群によって表される歩行者が、ランドセル、かばんなどを有するかどうかを示すラベルとの組を用いる。
【0053】
なお、ステップS2~ステップS10はフレームごとに繰り返される。また、ステップS5~S10は、フレームに映し出された歩行者ごとに繰り返される。
【0054】
以上のようにして、歩行者の属性を推定することができる。
【0055】
この実施形態では、レーザを用いているので、夜間であっても精度良く推定を行うことができる。
【0056】
4.その他変形例
(1)上記実施形態では、図6Bに示すように、各時刻の三次元点群データの点に異なる色を付して重ね合わせて、三次元点群データ群を得るようにしている。
【0057】
しかし、点の濃度を変えたり、点の形状を変えたりして区別可能な表示形態にして重ね合わせるようにしてもよい。
【0058】
また、図6Aに示すように、重ね合わせずに三次元点群データ群を生成し、これを推定に用いるようにしてもよい。
【0059】
いずれにしても、時系列が分かるように三次元点群データ群を生成して推定に用いればよいので、図6Aにおいて色を区別せずに、場所(左、真ん中、右)によって時刻の違いを表すようにしてもよい。また、推定モデルとしてRNNを用いて、時刻情報(時刻の順番情報でもよい)とともに三次元点群データを順次与えるようにしてもよい。この場合には、時刻情報の付された複数の三次元点群データが、三次元点群データ群となる。
【0060】
(2)上記実施形態では、時間経過によって外形の変化する対象物として歩行者を例として属性推定について説明した。しかし、犬、ロボットなどを時間経過によって外形の変化する対象物としてその属性を推定するようにしてもよい。
【0061】
(3)上記実施形態では、大人・子供の判定を行った後、杖などの所有物の属性を推定するようにしている。しかし、大人・子供の判定を行わずに、所有物の属性推定を行うようにしてもよい。また、大人・子供のみの判定を行うようにしてもよい。
【0062】
(4)上記実施形態では、LIDAR28の設置方向の中心軸34をY軸とした座標を用いて、ステップS3の抽出処理、ステップS10の推定処理を行うようにしている。いずれの処理においても、LIDAR28の設置方向によって、三次元点群データの座標が異なることとなる。したがって、上記推定処理に用いる推定モデルを学習する際の学習データとして、同じ三次元点群データについて異なる座標のものを多数用意することが好ましい。
【0063】
そこで、実測した三次元点群データを学習データとして用いる際に、X軸、Y軸、Z軸のそれぞれについて、-10度から+10度の範囲(所定角度範囲)にて、2度ごと(所定角度ごと)に回転させて、多数の学習データを生成することが好ましい。このようにすれば、大量の学習データを容易に得ることができる。
【0064】
また、上記のようにLIDAR28の設置方向の中心軸34をY軸にせず、道路に水平な面をXY軸による平面とし、これに垂直な方向をZ軸とした、座標を用いて三次元点群データを表現するようにしてもよい。このようにすれば、LIDAR28の設置方向に影響を受けずに三次元点群データを得ることができるので、上記のように回転を行って学習データを生成する必要がなくなる(あるいは、回転させて生成する学習データの数を減らすことができる)。
【0065】
(5)上記実施形態では、各フレームにおける同一歩行者の追跡のために、バウンダリーボックス42の中心点44を用いている。しかし、中心点44以外のバウンダリーボックス42を代表する点(いずれかのコーナー点、いずれかの面の中心点、三次元点群データの重心点など)を用いるようにしてもよい。
【0066】
また、上記処理に加えてあるいは代えて、三次元点群データによる形状の特徴(バウンダリボックスの寸法など)を算出し、当該特徴に基づいて各フレームの同一歩行者を紐付けるようにしてもよい。
【0067】
(6)上記実施形態では、第1面36と第2面38を操作者が設定するようにしている。しかし、CPU10が、三次元点群データに映し出された道路表面に垂直な方向に、所定間隔で第1面36、第2面38を設定するようにしてもよい。
【0068】
(7)上記実施形態では、バウンダリーボックスの中心44が、第1面36を超えてから、第2面38を超えるまでの間の、各フレームの三次元点群データを重ね合わせて三次元点群データ群を生成している。
【0069】
しかし、中心44以外のバウンダリーボックス42を代表する点を用いるようにしてもよい。また、第1面36と第2面38において、異なる代表点を用いるようにしてもよい。
【0070】
(8)上記実施形態では、向かってくる歩行者を対象として歩行者の属性を判断するようにしている。しかし、遠ざかる歩行者を対象として歩行者の属性を判断するようにしてもよい。
【0071】
(9)上記実施形態では、歩行者の属性を推定するようにしている。しかし、これに代えて、あるいは加えて、通過した歩行者の人数を計測するようにしてもよい。
【0072】
この場合、バウンダリーボックスの中心44が第1面36を超えた後、第2面38を超えれば、1人の歩行者が通過したと判定できる。これに、上記の歩行者の属性推定を加味すれば、いずれの属性の歩行者が何人通過したかを計測することができる。
【0073】
なお、遠ざかる歩行者については、バウンダリーボックスの中心44が第2面38を超えた後、第1面36を超えれば、通過したものと判定することができる。このように、第1面36、第2面38の通過順序により、向かってくる歩行者か遠ざかる歩行者かを判断できる。
【0074】
(10)上記実施形態では、図8に示すバウンダリーボックスの高さHに基づいて、大人・子供を判断している。しかし、バウンダリボックスの幅や奥行きに基づいて、あるいは幅や奥行きも併せて考慮して判断してもよい。また、これら寸法に基づいて、大人・子供以外の属性(太り具合など)を判断するようにしてもよい。
【0075】
(11)上記実施形態では、対象物の表面各点までの距離を計測して三次元点群データを生成する計測器として、LiDARを用いるようにしている。しかし、ステレオカメラを用いて三次元点群データを生成するようにしてもよい。
【0076】
また、対象物の表面各点までの距離を計測するのではなく、SFM(Structure from Motion)を用いて、角度の異なる複数の画像から対象物の三次元点群データを生成し、これを用いるようにしてもよい。
【0077】
(12)上記実施形態では、図1の処理をCPUを用いて実現している。しかし、その一部又は全部を論理回路によって実現するようにしてもよい。
【0078】
(13)上記変形例は、互いに組み合わせて実施可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8