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特開2025-21983プリンタ、プリンタの制御方法、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021983
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】プリンタ、プリンタの制御方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 3/407 20060101AFI20250206BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20250206BHJP
   B41J 29/00 20060101ALI20250206BHJP
   B41J 11/42 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
B41J3/407
B41J29/38 401
B41J29/00 C
B41J11/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023126133
(22)【出願日】2023-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 敦
【テーマコード(参考)】
2C058
2C061
【Fターム(参考)】
2C058AB03
2C058AC06
2C058AD06
2C058AE04
2C058AF06
2C058AF31
2C058GA11
2C058GA14
2C061AP10
2C061AQ04
2C061AS08
2C061AS11
2C061BB35
2C061CG15
2C061HK06
2C061HK11
(57)【要約】
【課題】それぞれRFIDインレイを有する複数枚の印字媒体を順に発行する場合に、1枚目の印字媒体が無駄になることを防止する。
【解決手段】本発明のある一態様に係るプリンタは、RFIDインレイを有する印字媒体を発行するプリンタである。このプリンタは、印字媒体を搬送するプラテンローラと、発熱部を有し、発熱部と前記プラテンローラとで印字媒体を挟持しながら印字媒体上に印字を行う印字ヘッドと、印字ヘッドの発熱部よりも印字媒体の搬送経路の下流側に配置される無線アンテナと、無線アンテナを介して印字媒体のRFIDインレイと通信を行うリーダライタと、印字媒体の印字開始位置から搬送方向に所定量搬送させた通信位置においてリーダライタにより印字媒体のRFIDインレイと通信を行うように制御する制御部と、を備える。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFIDインレイを有する印字媒体を発行するプリンタであって、
印字媒体を搬送するプラテンローラと、
ライン状に配置された複数の発熱体からなる発熱部を有し、前記発熱部と前記プラテンローラとで印字媒体を挟持しながら印字媒体上に印字を行う印字ヘッドと、
前記印字ヘッドの前記発熱部よりも印字媒体の搬送経路の下流側に配置される無線アンテナと、
前記無線アンテナを介して印字媒体のRFIDインレイと通信を行うリーダライタと、
前記印字媒体の印字開始位置から搬送方向に所定量搬送させた通信位置において前記リーダライタにより前記印字媒体のRFIDインレイと通信を行うように制御する制御部と、
を備えたプリンタ。
【請求項2】
前記制御部は、前記リーダライタにより前記印字媒体のRFIDインレイと通信を行った後に前記印字媒体を上流側に搬送させて、前記印字媒体に対して印字開始位置から印字を行うように制御する、
請求項1に記載されたプリンタ。
【請求項3】
前記制御部は、
前記発熱部と前記プラテンローラとで印字媒体を挟持する位置である挟持位置と、前記印字媒体の印字開始位置と、が一致するようにして前記印字媒体を待機させ、
前記印字媒体を発行する場合に、前記印字媒体を搬送経路の下流側に搬送させて、前記リーダライタにより前記印字媒体のRFIDインレイと通信を行い、次いで、前記印字媒体を上流側に搬送させて、前記印字媒体に対して印字開始位置から印字を行うように制御する、
請求項2に記載されたプリンタ。
【請求項4】
前記制御部は、
前記通信位置において前記印字媒体を待機させ、
前記印字媒体を発行する場合に、前記リーダライタにより前記印字媒体のRFIDインレイと通信を行い、次いで、前記印字媒体を上流側に搬送させて、前記印字媒体に対して印字開始位置から印字を行うように制御する、
請求項2に記載されたプリンタ。
【請求項5】
前記制御部は、
前記発熱部と前記プラテンローラとで印字媒体を挟持する位置である挟持位置と、前記印字媒体の印字開始位置と、が一致するようにして前記印字媒体を待機させ、
前記印字媒体を発行する場合に、前記印字媒体を搬送経路の下流側に搬送させながら前記印字媒体に対して印字を行い、
前記印字媒体が前記通信位置にある場合に、前記リーダライタにより前記印字媒体のRFIDインレイと通信を行い、
前記印字媒体をさらに前記搬送経路の下流側に搬送させながら前記印字媒体に対して印字を行うように制御する、
請求項1に記載されたプリンタ。
【請求項6】
前記制御部は、前記印字媒体が前記通信位置に達した場合に、前記印字媒体の搬送を一時的に停止させる、
請求項5に記載されたプリンタ。
【請求項7】
前記制御部は、
前記印字媒体を搬送方向に沿って所定間隔ごと離れた複数の位置の各々に順に搬送させ、各位置において前記リーダライタによる電磁波の送信出力を所定間隔で順に増加させて、前記印字媒体のRFIDインレイと前記リーダライタとの通信可否を判定し、
前記通信可否の判定結果に基づき、前記リーダライタが最小の送信出力で、かつ所定数の連続した位置において前記RFIDインレイと通信可能である場合、前記所定数の連続した位置の中央位置を前記通信位置とする、
請求項1から6のいずれか一項に記載されたプリンタ。
【請求項8】
RFIDインレイを有する印字媒体を搬送するプラテンローラと、ライン状に配置された複数の発熱体からなる発熱部と、で前記印字媒体を挟持しながら前記印字媒体上に印字を行い、前記発熱部よりも印字媒体の搬送経路の下流側に配置される無線アンテナを備えたプリンタの制御方法であって、
前記印字媒体の印字開始位置から搬送方向に沿って所定量の位置である通信位置まで前記印字媒体を搬送させるステップと、
前記印字媒体が前記通信位置にあるときに、リーダライタにより前記無線アンテナを介して前記印字媒体のRFIDインレイと通信を行うステップと、
を含むプリンタの制御方法。
【請求項9】
RFIDインレイを有する印字媒体を搬送するプラテンローラと、ライン状に配置された複数の発熱体からなる発熱部と、で前記印字媒体を挟持しながら前記印字媒体上に印字を行い、前記発熱部よりも印字媒体の搬送経路の下流側に配置される無線アンテナを備えたプリンタにインストールされたときに、コンピュータに、
前記印字媒体の印字開始位置から搬送方向に沿って所定量の位置である通信位置まで前記印字媒体を搬送させる手順と、
前記印字媒体が前記通信位置にあるときに、リーダライタにより前記無線アンテナを介して前記印字媒体のRFIDインレイと通信を行う手順と、
を実行させるプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ICチップ及びアンテナを有するRFID(Radio Frequency Identification)インレイ(以下、単に「インレイ」という。)が組み込まれたラベルに印字を行うプリンタが知られている。このようなプリンタでは、ラベルに印字を行う際に、ラベルに組み込まれたインレイに対して、プリンタに搭載されたリーダライタによってデータの読み出し、及びデータの書き込みを行う。インレイに対するデータの読み出し、及びデータの書き込みを行うために、リーダライタは、電波を送受信するRFIDアンテナに接続される。従来のプリンタでは、RFIDアンテナは、ラベルの搬送経路において、印字ヘッドの発熱体が形成された位置を基準として上流側に配置されていた(特許文献1の図4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-157521号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のプリンタのように、RFIDアンテナがラベルの搬送経路において、印字ヘッドの発熱体が形成された位置(発熱体位置)を基準として上流側に配置されている場合、1枚目のラベルが無駄になる場合がある。この問題について以下説明する。
【0005】
通常、連続的に配置された複数枚のラベルの各々を発行する場合、1枚目のラベルの印字開始位置が印字ヘッドの発熱体位置に位置する状態で待機し、各ラベルを発行する際には、プリンタは、各ラベルのインレイに対してデータの読み書きを行ってから印字を行う。ここで、RFIDアンテナが発熱体位置よりも上流側にある場合、1枚目のラベルのインレイに対するデータの読み書きにとって適切な位置となるようにラベルを逆搬送させる必要がある。しかし、特に小ピッチ(搬送方向の長さが短い)ラベルの場合に1枚目のラベルを逆搬送させると、1枚目のラベルの先端側が印字ヘッドの発熱体位置から脱落する場合がある。ラベルの搬送経路においてRFIDアンテナを発熱体位置のすぐ近くに配置できれば1枚目のラベルの先端側が印字ヘッドの発熱体位置から脱落することを防止し得るが、印字ヘッドの構造上、RFIDアンテナを発熱体位置に十分に近付けることは困難である。そのため、従来、1枚目のラベルを発行せずに無駄にし、2枚目のラベルから発行することが行われている。この問題は特に、小ピッチラベルの場合やRFIDアンテナの位置が発熱体位置から離れている場合に生じやすい。
【0006】
また、2枚目以降の各ラベルについてもインレイに対するデータの読み書きを行うために各ラベルを逆搬送させる必要があるが、RFIDアンテナの位置が発熱体位置から離れている場合には、データの読み書きのためのラベルの逆搬送距離が長くなってスループットが低下する。ここで、上記したように、印字ヘッドの構造上、RFIDアンテナを発熱体位置に十分に近付けることは困難であるため、スループットを向上させることに限界がある。
【0007】
そこで、本発明は、それぞれRFIDインレイを有する複数枚の印字媒体を順に発行する場合に、1枚目の印字媒体が無駄になることを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様は、RFIDインレイを有する印字媒体を発行するプリンタであって、
印字媒体を搬送するプラテンローラと、
ライン状に配置された複数の発熱体からなる発熱部を有し、前記発熱部と前記プラテンローラとで印字媒体を挟持しながら印字媒体上に印字を行う印字ヘッドと、
前記印字ヘッドの前記発熱部よりも印字媒体の搬送経路の下流側に配置される無線アンテナと、
前記無線アンテナを介して印字媒体のRFIDインレイと通信を行うリーダライタと、
前記印字媒体の印字開始位置から搬送方向に所定量搬送させた通信位置において前記リーダライタにより前記印字媒体のRFIDインレイと通信を行うように制御する制御部と、
を備えたプリンタである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のある態様によれば、それぞれRFIDインレイを有する複数枚の印字媒体を順に発行する場合に、1枚目の印字媒体が無駄になることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態のプリンタの斜視図である。
図2】内部が見える状態の一実施形態のプリンタの側面図である。
図3】一実施形態のプリンタにおいて、印字ヘッドユニットが開放状態のときの印字部の斜視図である。
図4】一実施形態のプリンタのラベル支持機構部の斜視図である。
図5】一実施形態のプリンタのラベル支持機構部の一部断面図である。
図6】一実施形態のプリンタにおいてRFIDアンテナの実装方法を説明する図である。
図7図7Aは一実施形態のプリンタにおいてRFIDアンテナがリボン調整板に取り付けられた状態の斜視図であり、図7Bはプリンタの部分断面図である。
図8】内部が見える状態の一実施形態のプリンタの部分側面図であり、RFIDアンテナとリーダライタの間の配線経路を示す。
図9】一実施形態のプリンタの概略的なブロック図である。
図10】一実施形態のプリンタの搬送制御の一例を説明する図である。
図11】一実施形態のプリンタの搬送制御の一例を説明する図である。
図12】一実施形態のプリンタの搬送制御の一例を説明する図である。
図13】一実施形態のプリンタにおいて、通信位置を決定するためのデータ取得手順を説明する図である。
図14図13に示したデータ取得手順において記録される通信データセットを例示する図である。
図15図13に示したデータ取得手順の後に通信位置を決定する処理を示すフローチャートである。
図16図13に示したデータ取得手順の後に通信位置を決定する処理を示すフローチャートである。
図17】例示的なラベルに対するデータ取得結果と通信位置を示す図である。
図18】例示的なラベルに対するデータ取得結果と通信位置を示す図である。
図19】例示的なラベルに対するデータ取得結果と通信位置を示す図である。
図20】例示的なラベルに対するデータ取得結果と通信位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に記載する形態は、図面の簡単な説明により説明される図面に限定されるものではない。
【0012】
本発明のある態様の第1の態様は、RFIDインレイを有する印字媒体を発行するプリンタであって、
印字媒体を搬送するプラテンローラと、
ライン状に配置された複数の発熱体からなる発熱部を有し、前記発熱部と前記プラテンローラとで印字媒体を挟持しながら印字媒体上に印字を行う印字ヘッドと、
前記印字ヘッドの前記発熱部よりも印字媒体の搬送経路の下流側に配置される無線アンテナと、
前記無線アンテナを介して印字媒体のRFIDインレイと通信を行うリーダライタと、
前記印字媒体の印字開始位置から搬送方向に所定量搬送させた通信位置において前記リーダライタにより前記印字媒体のRFIDインレイと通信を行うように制御する制御部と、
を備えたプリンタである。
【0013】
本発明のある態様の第1の態様によれば、発熱部よりも前記印字媒体の搬送経路の下流側にある無線アンテナに向かって印字媒体を搬送させてから通信を行うため、1枚目の印字媒体が印字媒体から脱落することがない。そのため、それぞれRFIDインレイを有する複数枚の印字媒体を順に発行する場合に、1枚目の印字媒体が無駄になることを防止できる。
【0014】
本発明のある態様の第2の態様は、前記制御部が、前記リーダライタにより前記印字媒体のRFIDインレイと通信を行った後に前記印字媒体を上流側に搬送させて、前記印字媒体に対して印字開始位置から印字を行うように制御する、前記第1の態様に記載のプリンタである。
【0015】
本発明のある態様の第2の態様によれば、RFIDインレイとの通信の後に印字開始位置から印字媒体の全領域の印字を行うため、良好な印字品質が得られる。
【0016】
本発明のある態様の第3の態様は、前記制御部が、
前記発熱部と前記プラテンローラとで印字媒体を挟持する位置である挟持位置と、前記印字媒体の印字開始位置と、が一致するようにして前記印字媒体を待機させ、
前記印字媒体を発行する場合に、前記印字媒体を搬送経路の下流側に搬送させて、前記リーダライタにより前記印字媒体のRFIDインレイと通信を行い、次いで、前記印字媒体を上流側に搬送させて、前記印字媒体に対して印字開始位置から印字を行うように制御する、前記第2の態様に記載のプリンタである。
【0017】
本発明のある態様の第3の態様によれば、RFIDインレイとの通信の後に印字開始位置から印字媒体の全領域の印字を行うため、良好な印字品質が得られる。
【0018】
本発明のある態様の第4の態様は、前記制御部が、
前記通信位置において前記印字媒体を待機させ、
前記印字媒体を発行する場合に、前記リーダライタにより前記印字媒体のRFIDインレイと通信を行い、次いで、前記印字媒体を上流側に搬送させて、前記印字媒体に対して印字開始位置から印字を行うように制御する、前記第2の態様に記載のプリンタである。
【0019】
本発明のある態様の第4の態様によれば、RFIDインレイとの通信の後に印字開始位置から印字媒体の全領域の印字を行うため、良好な印字品質が得られる。
【0020】
本発明のある態様の第5の態様は、前記制御部が、
前記発熱部と前記プラテンローラとで印字媒体を挟持する位置である挟持位置と、前記印字媒体の印字開始位置と、が一致するようにして前記印字媒体を待機させ、
前記印字媒体を発行する場合に、前記印字媒体を搬送経路の下流側に搬送させながら前記印字媒体に対して印字を行い、
前記印字媒体が前記通信位置にある場合に、前記リーダライタにより前記印字媒体のRFIDインレイと通信を行い、
前記印字媒体をさらに前記搬送経路の下流側に搬送させながら前記印字媒体に対して印字を行うように制御する、前記第1の態様に記載のプリンタである。
【0021】
本発明のある態様の第5の態様によれば、リーダライタがRFIDインレイと通信を行った後に印字媒体を逆方向に搬送させる必要がないため、スループットが向上する。
【0022】
本発明のある態様の第6の態様は、前記制御部が、前記印字媒体が前記通信位置に達した場合に、前記印字媒体の搬送を一時的に停止させる、前記第5の態様に記載のプリンタである。
【0023】
本発明のある態様の第6の態様によれば、通信位置においてリーダライタがRFIDインレイと安定的に通信を行うことができる。
【0024】
本発明のある態様の第7の態様は、前記制御部が、
前記印字媒体を搬送方向に沿って所定間隔ごと離れた複数の位置の各々に順に搬送させ、各位置において前記リーダライタによる電磁波の送信出力を所定間隔で順に増加させて、前記印字媒体のRFIDインレイと前記リーダライタとの通信可否を判定し、
前記通信可否の判定結果に基づき、前記リーダライタが最小の送信出力で、かつ所定数の連続した位置において前記RFIDインレイと通信可能である場合、前記所定数の連続した位置の中央位置を前記通信位置とする、前記第1から第6の態様のいずれかに記載のプリンタである。
【0025】
本発明のある態様の第7の態様によれば、RFIDインレイとリーダライタとの間で安定的に通信を行うことができ、かつ通信対象とする印字媒体以外の印字媒体のRFIDインレイに対して誤ってデータを書き込むことを防止できる。
【0026】
本発明のある態様の第8の態様は、RFIDインレイを有する印字媒体を搬送するプラテンローラと、ライン状に配置された複数の発熱体からなる発熱部と、で前記印字媒体を挟持しながら前記印字媒体上に印字を行い、前記発熱部よりも印字媒体の搬送経路の下流側に配置される無線アンテナを備えたプリンタの制御方法であって、
前記印字媒体の印字開始位置から搬送方向に沿って所定量の位置である通信位置まで前記印字媒体を搬送させるステップと、
前記印字媒体が前記通信位置にあるときに、リーダライタにより前記無線アンテナを介して前記印字媒体のRFIDインレイと通信を行うステップと、
を含むプリンタの制御方法である。
【0027】
本発明のある態様の第8の態様によれば、発熱部よりも前記印字媒体の搬送経路の下流側にある無線アンテナに向かって印字媒体を搬送させてから通信を行うため、1枚目の印字媒体が印字媒体から脱落することがない。そのため、それぞれRFIDインレイを有する複数枚の印字媒体を順に発行する場合に、1枚目の印字媒体が無駄になることを防止できる。
【0028】
本発明のある態様の第9の態様は、RFIDインレイを有する印字媒体を搬送するプラテンローラと、ライン状に配置された複数の発熱体からなる発熱部と、で前記印字媒体を挟持しながら前記印字媒体上に印字を行い、前記発熱部よりも印字媒体の搬送経路の下流側に配置される無線アンテナを備えたプリンタにインストールされたときに、コンピュータに、
前記印字媒体の印字開始位置から搬送方向に沿って所定量の位置である通信位置まで前記印字媒体を搬送させる手順と、
前記印字媒体が前記通信位置にあるときに、リーダライタにより前記無線アンテナを介して前記印字媒体のRFIDインレイと通信を行う手順と、
を実行させるプログラムである。
【0029】
本発明のある態様の第9の態様によれば、発熱部よりも前記印字媒体の搬送経路の下流側にある無線アンテナに向かって印字媒体を搬送させてから通信を行うため、1枚目の印字媒体が印字媒体から脱落することがない。そのため、それぞれRFIDインレイを有する複数枚の印字媒体を順に発行する場合に、1枚目の印字媒体が無駄になることを防止できる。
【0030】
以下、図面を参照して、実施形態について詳細に説明する。
図1に一実施形態のプリンタ1の外観を示す。以下では、説明の便宜のために、図1に示すように、XYZ座標を定義する。すなわち、+X,-Xはそれぞれプリンタ1の左右方向を示し、+Y,-Yはそれぞれプリンタ1の前後方向を示し、+Z,-Zはそれぞれプリンタ1の上下方向を示す。
プリンタ1の前面のフロントカバー2には、印字したラベルを発行(排出)するための発行口5が設けられている。プリンタ1の片側側面には、オープンカバー6が2箇所のヒンジ7により上下方向に開閉自在の状態で装着されている。
【0031】
図2は、内部が見える状態のプリンタ1の要部の側面図である。図3は、印字ヘッドユニット13が開放状態のときの印字部11の斜視図である。
プリンタ1の内部には、後方に配置された用紙供給部10と、前方に配置された印字部11と、上方に配置されたインクリボン部12とが設置されている。
【0032】
用紙供給部10には、ロール紙Rが装填されている。図2に示すように、ロール紙Rは、連続紙CPがロール状に巻回されたものである。連続紙CPは、帯状の台紙PMと、台紙PM上に間隔を空けて剥離可能に取り付けられた複数枚のラベルPLと、を含む。台紙PMにおいてラベルPLの粘着面が接触する面(表面)には、シリコーン等のような剥離剤がコーティングされており、ラベルPLを容易に剥離することが可能になっている。ラベルPLには、RFIDインレイIL(以下、単に「インレイIL」という。)が組み込まれている。台紙PMにおいてラベルPLが貼られていない面(裏面)には、長手方向に沿って予め決められた間隔毎にラベルの位置を示す位置検出マークIMが形成されていてもよい。
ラベルPLは、感熱紙を使用する場合と普通紙を使用する場合とがある。感熱紙の場合は、その表面に、予め決められた温度領域に達すると特定の色(黒や赤等)に発色する感熱発色層が形成されている。図示しないが、用紙供給部10には、印字面の裏側に粘着剤が塗布された粘着面が形成された台紙無しラベルをロール状に巻回されたロール紙を装填することもできる。
【0033】
用紙供給部10は、支持軸10aとロールガイド10bを備え、ロール紙Rを保持するとともにロール紙Rから繰り出される連続紙CPを印字部11に供給する。支持軸10aは、ロール紙Rを回転自在の状態で支持する。ロールガイド10bは、ロール紙Rの幅に応じて位置を変えられるように支持軸10aの軸方向に沿って移動自在の状態で設置されている。
【0034】
印字部11は、印字ヘッドユニット13と、印字ヘッドユニット13の下方に配置された支持台14と、ダンパ15とを備え、連続紙CPのラベルPLに印字を行う。
印字ヘッドユニット13は、後述するように開閉自在の状態でプリンタ1の内部に設置されている。印字ヘッドユニット13が閉止状態の場合に、印字ヘッドユニット13と支持台14との間に通紙ルートが形成される。通紙ルートは、発行口5(図1参照)に繋がっている。
支持台14には、印字ヘッドユニット13の閉止状態を維持するヘッドロックレバー16が設置されている。ヘッドロックレバー16を操作すると印字ヘッドユニット13の閉止状態が解除され、図3に示すように印字ヘッドユニット13の前方部が持ち上がり、印字ヘッドユニット13が開く(プラテンローラ23に対して離間する)ようになっている。
ダンパ15は、連続紙CPに張力を付与可能なように揺動自在の状態で設置されている。
【0035】
図2及び図3に示すように、連続紙CPは、ダンパ15からラベル支持機構部70を通って搬送され、印字後に発行口5(図1)から排出される。ラベル支持機構部70は、連続紙CPの搬送経路において、サーマルヘッド18(印字ヘッドの一例)及びプラテンローラ23よりも上流側に設置されている。
【0036】
インクリボン部12は、リボン供給部12aとリボン巻き取り部12bとを備え、印字用インクを塗布したインクリボンRBを供給し、巻き取る。リボン供給部12aは、ロール状に巻き取られたインクリボンRBを回転自在の状態で支持する。リボン巻き取り部12bは、印字済みのインクリボンRBを巻き取り回収する。インクリボンRBを使用する場合は、リボン供給部12aから引き出されたインクリボンRBを印字ヘッドユニット13の下に通してリボン巻き取り部12bで巻き取る。
リボン供給部12a及びリボン巻き取り部12bは、プリンタ1の筐体の内壁102に連結されている(取り付けられている)。
【0037】
図3に示すように、印字ヘッドユニット13においてサーマルヘッド18よりも前方には、リボン調整板66(リボン調整部の一例)が設置されている。リボン調整板66は、両端に形成された長孔(図7の長孔665)を挿通する一対のねじ664により内部フレーム(図示せず)に固定されている。それぞれのねじ664を緩めることでリボン調整板66を上下方向に移動させたり左右方向に傾斜させたりすることで、インクリボンRBの張り具合(張力)を調整することができる。
【0038】
プリンタ1においては、用紙供給部10にあるロール紙Rから繰り出された連続紙CPは、ダンパ15を介して印字ヘッドユニット13と支持台14との間の通紙ルートに搬送され、その途中において連続紙CPのラベルPLに印字処理がなされる。このとき、サーマルヘッド18は、発熱部18Lとプラテンローラ23とで連続紙CPとインクリボンRBを挟持しながら、連続紙CPの各ラベルPLに印字を行う。印字処理の後、連続紙CPは、発行口5からプリンタ1の外部に排出されるようになっている。
【0039】
図2に示すように、プリンタ1の発行口5付近にはラベル有無検出センサ64が設置されている。ラベル有無検出センサ64は、サーマルヘッド18の下流側に配置され、発行口5から発行(排出)されたラベルPLを検出可能である。ラベル有無検出センサ64は、光反射型のセンサであるが、光透過型センサとして構成することもできる。ラベル有無検出センサ64の検出結果(出力信号)は、連続紙CPの搬送制御に利用される。
【0040】
次に、上記した印字部11の構成について図3を参照して説明する。
図3に示すように、印字ヘッドユニット13が後方に設けられる揺動軸S1を中心にX軸回りに揺動(すなわち、開閉)自在となるように、揺動軸S1がプリンタ1のメインフレーム(図示せず)に支持されている。
【0041】
印字ヘッドユニット13の下面(通紙ルートを向く面)には、サーマルヘッド18が発熱部18Lを通紙ルートに向けた状態で設置されている。サーマルヘッド18の発熱部18Lは、サーマルヘッド18の基板に対して所定量(例えば数10μm)突出したグレーズ層によって構成され、通電により発熱する複数の発熱抵抗体(発熱体)を含み、連続紙CPのラベルPLに印字を行う。この複数の発熱抵抗体は、連続紙CPの幅方向(連続紙CPの搬送方向に対し直交する方向)に沿って並んで配置されている。
【0042】
印字ヘッドユニット13の前方側の下面にはサーマルヘッド18を挟むように一対の係合爪19(図3参照)が設けられている。印字ヘッドユニット13において係合爪19の後方には、印字ヘッドユニット13の両側面から外方に突出するピン20が設けられている。
【0043】
印字ヘッドユニット13は、揺動軸S1に装着された捩りばね(図示せず)により開方向に付勢されているが、印字ヘッドユニット13の下部の一対のピン20に、支持台14の一対のロック爪22がそれぞれ引っ掛かることにより閉止状態が維持されている。印字ヘッドユニット13の閉止状態時には、印字ヘッドユニット13の一対の係合爪19がプラテンローラ23の回転軸の両端部に嵌められるようになっている。
ロック爪22は、ヘッドロックレバー16を後方に操作すると、それに連動して後方に移動し、ピン20から外れるようになっている。ロック爪22がピン20から外れると、図3に示すように、印字ヘッドユニット13は、捩りばねの付勢力により自動的に開くようになっている。
【0044】
プラテンローラ23は、用紙供給部10から繰り出された連続紙CPを通紙ルートに沿って発行口5(図1参照)へ搬送する。プラテンローラ23は、正逆方向に回転可能な状態で支持台14の上部に設置され、印字時にはサーマルヘッド18とともに連続紙CPを挟持しながら回転する。
連続紙CPが普通紙である場合、プラテンローラ23は、印字時にはサーマルヘッド18とともに連続紙CPとインクリボンRBを挟持しながら回転する。この場合、インクリボンRBは、リボン供給部12aから、印字ヘッドユニット13に設けられているリボンローラ121,122(図3参照)を介して搬送されて、リボン巻き取り部12bに巻き取られる。
【0045】
図3に示したように、ラベル支持機構部70は、支持台14上に配置されている。
図4には、幅狭のラベル用のガイド位置と幅広のラベル用のガイド位置の各々の場合において、ラベル支持機構部70の斜視図が示される。
図4に示すように、ラベル支持機構部70は、ラベル支持部71、センサ組立体72、及びラベルガイド部73を有する。ラベル支持部71は、プラテンローラ23に向かう連続紙CPを下側から支持する支持面711を有する。
センサ組立体72は、連続紙CPの幅方向にスライド操作可能な状態でラベル支持部71に取り付けられており、光透過型センサと反射型センサを内蔵する。ラベルガイド部73は、センサ組立体72に取り付けられており、プラテンローラ23に向かって搬送される連続紙CPをラベル支持部71の支持面711との間で挟み込み、連続紙CPを上側からガイドする役割を果たす。
ラベル支持機構部70には、後述するリーダライタ91が内蔵されている。リーダライタ91は、ラベルPLに組み込まれたインレイILに対してデータを書き込み、あるいはインレイILからデータを読み出すために設けられる。
【0046】
図5は、搬送される連続紙CPの紙面に直交し、かつ連続紙CPの幅方向(X方向)に延びる平面でラベル支持機構部70を切断したときの、センサ組立体72とラベルガイド部73の概略的な断面を示している。
図5に示すように、ラベルガイド部73がセンサ組立体72に取り付けられている。ラベルガイド部73の下面とラベル支持部71の支持面711には僅かな間隙g1が形成され、この間隙g1が連続紙CPの搬送経路となる。
ラベル支持部71には、センサ組立体72と係合するガイド突起712及びガイド溝713が長手方向に設けられている。センサ組立体72は、使用するラベル幅に応じて、ラベル支持部71のガイド突起712及びガイド溝713と係合しながら長手方向(つまり連続紙CPの幅方向)に摺動可能である。
センサ組立体72は、上方にある揺動部721と、下方にある摺動部722と、が揺動軸723により揺動可能に連結された構造となっている。摺動部722は、ラベル支持部71のガイド突起712及びガイド溝713と係合して長手方向に摺動可能である。揺動部721は、揺動軸723を中心に、摺動部722に近接する図5に示す位置(プリンタ1の動作時の位置)から、摺動部722と離間する方向(つまり、図5で反時計方向)に揺動可能であり、それによって新たな連続紙CPをプリンタ1にセットすることができる。
【0047】
図5に示すように、センサ組立体72は、ラベル位置検出センサ74が内蔵されている。ラベル位置検出センサ74は、発光素子621と受光素子622を含む。揺動部721に発光素子621が配置され、摺動部722に受光素子622が配置されている。発光素子621と受光素子622は互いに対向している。インクリボンRBの搬送経路は、ラベルガイド部73よりも上方にあるため、受光素子622よりも上方にある発光素子621は、インクリボンRBの搬送経路と連続紙CPの搬送経路の間に配置されている。光透過型センサ62は、発光素子621から出射した光を受光素子622で受光する際に、ラベルPLと台紙PMを透過した光と、台紙PMのみを透過した光とで受光強度に差があることに基づき、連続紙CPの搬送方向における各ラベルPLの端部を検出する。ラベル位置検出センサ74の検出結果(出力信号)は、連続紙CPの搬送制御に利用される。
【0048】
次に、プリンタ1内で搬送される連続紙CPの各ラベルPLに組み込まれたインレイILに対して電磁波を送信するRFIDアンテナ311(無線アンテナの一例)の配置について、図6及び図7を参照して説明する。
図6は、プリンタ1においてRFIDアンテナ311の実装方法を説明する図である。
図6を参照すると、アンテナ組立体31は、RFIDアンテナ311、配線312、及び、一対の組付け用部材313を含む。配線312は、RFIDアンテナ311の一端に連結され、後述するリーダライタ91と電気的に接続するための配線である。一対の組付け用部材313は、アンテナ組立体31をアンテナケース32に組み付ける際の作業性を向上させるための部材である。
【0049】
アンテナケース32は、アンテナ組立体31を収容するための部材である。アンテナケース32は、後述するように、リボン調整板66に取り付けられる。図6に示すように、アンテナケース32は、長尺状のケース本体321と、ケース本体321から上方に突出する3箇所の突出部322と、を有する。突出部322の上端には係合爪322cが形成されている。
【0050】
ケース本体321は、アンテナ組立体31を一方から受け入れるために、概ね断面コの字状の形状を有する。
ケース本体321には、アンテナ組立体31の一対の組付け用部材313をそれぞれ受け入れるための一対の開口3211が形成されている。ケース本体321の内部には、RFIDアンテナ311を載置するための載置面3212が形成されるとともに、RFIDアンテナ311及び組付け用部材313に当接してアンテナ組立体31のX方向の位置決めを行うためのストッパ3213が設けられている。ケース本体321の内部には、RFIDアンテナ311を上から押圧するための複数の押圧部位3214と、配線312を圧入するための複数の圧入部位3215と、が設けられている。
アンテナ組立体31がアンテナケース32に組み付けられると、アンテナ組立体31は、アンテナケース32に保持され、アンテナケース32に対して相対移動しない。
【0051】
アンテナ組立体31を保持するアンテナケース32は、図7Aに示すように、リボン調整板66の後面に取り付けられる。リボン調整板66は、横方向に延びる平坦部661と、平坦部661が下端で折り曲げられることで形成される溝部662と、を有する。平坦部661には、3箇所の孔663が形成されている。アンテナケース32のリボン調整板66に対する取り付けは、アンテナケース32の3箇所の係合爪322cがそれぞれ3箇所の孔663に係合し、かつアンテナケース32のケース本体321の一部が溝部662に係合することで行われる(図7B参照)。
【0052】
図7Bは、RFIDアンテナ311が設置された状態において、RFIDアンテナ311の近傍のプリンタ1の断面を示している。
図7Bに示すように、RFIDアンテナ311は、サーマルヘッド18の発熱部18Lよりも連続紙CPの搬送経路の下流側であって、かつ搬送される連続紙CPのラベル印字面側に配置される。
RFIDアンテナ311が連続紙CPのラベル印字面側に配置されている理由は、以下のとおりである。ラベルPLを金属等の導電性材料に貼付する際に、インレイILに対する電磁波がキャンセルされる現象を防止するため、インレイILに対して粘着剤層の側に金属シートを設けることがある。この場合、ラベルPLは、基材の上面側にインレイIL、サーマル層の順に積層され、基材の下面側に金属シート(例えばアルミニウムシート)、粘着剤層の順に積層されるように構成されている。そのため、RFIDアンテナ311から放射される電磁波によるインレイILとの通信が可能となるように、RFIDアンテナ311が連続紙CPのラベル印字面側に配置されている。
【0053】
次に、図8を参照して、RFIDアンテナ311とリーダライタ91の好ましい接続方法について説明する。図8は、図2と同様に内部が見える状態のプリンタ1の一部の側面図である。RFIDアンテナ311及びリーダライタ91は実際には側面から見えないが、説明のために見える状態で示してある。図8では、RFIDアンテナ311とリーダライタ91を、中継基板を介して接続する場合の配線経路を示している。
前述したように、RFIDアンテナ311はリボン調整板66に隣接して配置され、リーダライタ91はラベル支持機構部70に内蔵されているため、RFIDアンテナ311とリーダライタ91を配線で電気的に接続する必要がある。RFIDアンテナ311とリーダライタ91を単一の配線で直接的に接続してもよいが、中継基板を介して両者を接続することで作業性が向上する。
図8に示すように、中継基板24が印字ヘッドユニット13の支持板171に固定されている。配線312の一端がRFIDアンテナ311に接続され、他端に取り付けられたコネクタ312cが中継基板24のコネクタ(図示せず)に接続される。配線912の一端がリーダライタ91に接続され、他端に取り付けられたコネクタ912cが中継基板24のコネクタ(図示せず)に接続される。中継基板24には、配線312と配線912を電気的に接続する配線が実装されている。この構成では、RFIDアンテナ311とリーダライタ91の間を結線する場合、中継基板24においてコネクタ312cとコネクタ912cを挿し込む作業となるため、RFIDアンテナ311とリーダライタ91を1本の配線で接続する場合と比較して作業性が向上する。
【0054】
次に、プリンタ1の電気的構成について図9のブロック図を参照して説明する。
図9に示すように、プリンタ1の制御部8は、CPU81、ROM82、RAM83、入力インタフェース(I/F)84、表示制御部85、モータコントローラ86、ヘッドコントローラ87、センサインタフェース(I/F)88、及び、リーダライタインタフェース(I/F)89、通信バス90を備える。図示しないが、プリンタ1の制御部8を構成する制御ユニットがプリンタ1に内蔵されている。
【0055】
CPU81は、ROM82に格納されているファームウェアをRAM83にロードして実行し、プリンタ1の各種の機能を実現する。
ファームウェアは、ラベル位置検出センサ74、及びラベル有無検出センサ64の各センサの出力信号に基づいて、連続紙CPの搬送を制御する。ファームウェアはまた、リーダライタ91がインレイILから読み取ったデータを記録し、リーダライタ91が各ラベルのインレイILに書き込むべきデータを、リーダライタインタフェース89を介してリーダライタ91に送信する。
入力インタフェース84は、入力ボタン3に対する操作入力を受け付け、CPU81に送信するインタフェースである。表示制御部85は、CPU81から受信する表示データを基に表示パネル4に画像を表示させる。
モータコントローラ86は、ファームウェアから送られる制御信号に基づいてモータ9を駆動する駆動回路を含む。制御信号には、例えば連続紙CPの搬送量に関する情報が含まれる。
ヘッドコントローラ87は、イメージバッファを含み、ファームウェアから送られる制御信号(例えばストローブ信号等)を基に、印字データに応じてサーマルヘッド18の発熱部18Lに含まれる複数の発熱体に選択的に電流が流れるように制御する。
センサインタフェース88は、ラベル位置検出センサ74、及びラベル有無検出センサ64の各センサの出力信号を受信し、デジタル値に変換してCPU81に送信する。
リーダライタインタフェース89は、制御部8とリーダライタ91との間のインタフェースであり、ファームウェアからの読み書きのための指示信号をリーダライタ91に送信する。リーダライタインタフェース89は、リーダライタ91から読み取りデータを受信するとともに、インレイILに書き込むべきデータをリーダライタ91に送信する。
【0056】
次に、プリンタ1によるラベルPLの発行の際のラベル搬送方法の例について、図10図12を参照して説明する。図10図12の各々では、連続紙(1枚目のラベルPL#1,2枚目のラベルPL#2,…を含む。)の時系列に沿った各状態において、印字ヘッドの発熱部18Lの位置(発熱体位置)、ラベル位置検出センサ74の検出位置、及び、RFIDアンテナ311の位置関係を示している。
前述したように、RFIDアンテナ311は、サーマルヘッド18の発熱部18Lよりも連続紙CPの搬送経路の下流側に配置される。そのため、複数枚のラベルPLを順に発行する場合に、図10図12のいずれかに記載されたラベル搬送方法により1枚目のラベルPLが無駄になることを防止できる。
【0057】
(I)ラベル搬送方法の第1例(図10
図10を参照すると、第1例では、連続紙の各ラベルを発行する場合、プリンタ1は、1枚目のラベルPL#1の印字開始位置を発熱体位置に位置する状態で待機させ(状態ST11)、各ラベルを発行する際には、各ラベルのインレイに対してデータの書き込みを行ってから印字を行う。
この状態で、プリンタ1は、図示しないホストコンピュータから印字データを受信し、ラベルの発行を開始する。先ず、プリンタ1は、1枚目のラベルPL#1を、RFIDアンテナ311を介して1枚目のラベルPL#1のインレイILとの通信を行う通信位置まで順方向Fに(下流側に)搬送する(状態ST12)。発熱体位置とRFIDアンテナ311の基準位置(例えば、RFIDアンテナ311の搬送方向の中央位置)の距離が既知であるため、状態ST11から状態ST12までの搬送量(「最適オフセット量」という。)は、インレイILに対するデータの読み書きが最適となるように予め定められている。
状態ST12において1枚目のラベルPL#1のインレイILに対してデータの書き込みを行った後、連続紙CPを逆方向に(上流側に)搬送し、状態ST11と同様に1枚目のラベルPL#1の印字開始位置が発熱体位置に位置する状態とした後(状態ST13)、1枚目のラベルPL#1に対して印字を行う(状態ST14)。
2枚目のラベルPL#2以降の各ラベルの発行についても1枚目と同様である。なお、各ラベルの印字開始位置を発熱体位置に位置させる場合、ラベル位置検出センサ74が各ラベルの端部を検出し、ラベル位置検出センサ74の位置から発熱体位置までの距離に応じた所定量、連続紙CPを搬送させる。
【0058】
ラベル搬送方法の第1例によれば、1枚目のラベルPL#1のインレイILにデータの書き込みを行う際に待機位置(状態ST11の位置)から順方向に搬送させるため、1枚目のラベルPL#1を発熱体位置から脱落させることなく発行することが可能である。そのため、1枚目のラベルPL#1を無駄にすることがない。ラベル搬送方法の第1例では、インレイILとの通信の後に印字開始位置からラベルPLの全領域の印字を行うため、良好な印字品質が得られる。
【0059】
(II)ラベル搬送方法の第2例(図11
図11を参照すると、第2例では、連続紙の各ラベルを発行する場合、プリンタ1は、1枚目のラベルPL#1を通信位置(つまり、RFIDアンテナ311と1枚目のラベルPL#1のインレイILが通信を行う位置)で待機させる。(状態ST21)。プリンタ1は、各ラベルを発行する際には、各ラベルのインレイに対してデータの書き込みを行ってから印字を行う。
状態ST21においてプリンタ1は、図示しないホストコンピュータから印字データを受信し、ラベルの発行を開始する。先ず、プリンタ1は、状態ST21において1枚目のラベルPL#1のインレイILに対してデータの書き込みを行った後、連続紙CPを逆方向に(上流側に)搬送し、1枚目のラベルPL#1の印字開始位置が発熱体位置に位置する状態とした後(状態ST22)、1枚目のラベルPL#1を順方向Fに搬送させながら印字を行う(状態ST23)。その後、プリンタ1は、さらに連続紙CPを順方向Fに搬送させて、2枚目のラベルPL#2を通信位置で待機させる。
2枚目のラベルPL#2以降の各ラベルの発行についても1枚目と同様である。
なお、各ラベルを通信位置に位置させる場合、ラベル位置検出センサ74が各ラベルの端部を検出し、ラベル位置検出センサ74の位置から既知の通信位置までの距離に応じた所定量、連続紙CPを搬送させる。
【0060】
ラベル搬送方法の第2例によれば、1枚目のラベルPL#1のインレイILにデータの書き込みを行う際に待機位置から搬送させる必要がなく、印字のために逆搬送させた場合も連続紙CPが発熱体位置から脱落することがない。そのため、1枚目のラベルPL#1を発行することが可能であり、1枚目のラベルPL#1を無駄にすることがない。ラベル搬送方法の第2例では、インレイILとの通信の後に印字開始位置からラベルPLの全領域の印字を行うため、良好な印字品質が得られる。
【0061】
(III)ラベル搬送方法の第3例(図12
図12を参照すると、第3例では、連続紙の各ラベルを発行する場合、プリンタ1は第1例と同様に、1枚目のラベルPL#1を印字開始位置が発熱体位置に位置する状態で待機させる(状態ST31)。第3例では、各ラベルを発行する際に、途中まで印字を行った後にインレイに対するデータの書き込みを行い、さらに残りの印字を行う。すなわち、1枚目のラベルPL#1を発行する場合、プリンタ1は、状態ST31から連続紙CPを順方向Fに(下流側に)搬送しながら1枚目のラベルPL#1の印字を途中まで行う。プリンタ1は、1枚目のラベルPL#1が通信位置にある状態で連続紙CPの搬送を停止させ(状態ST32)、1枚目のラベルPL#1のインレイILに対してデータの書き込みを行う。次いでプリンタ1は、連続紙CPをさらに順方向Fに搬送させながら1枚目のラベルPL#1の残りの印字を行う(状態ST33)。
2枚目のラベルPL#2以降の各ラベルの発行についても1枚目と同様である。なお、各ラベルの印字開始位置を発熱体位置に位置させる場合、ラベル位置検出センサ74が各ラベルの端部を検出し、ラベル位置検出センサ74の位置から発熱体位置までの距離に応じた所定量、連続紙CPを搬送させる。1枚目のラベルPL#1の印字が完了した後、連続紙CPの搬送を停止させることなく2枚目のラベルPL#2の印字を開始してもよい。
【0062】
ラベル搬送方法の第3例によれば、1枚目のラベルPL#1のインレイILにデータの書き込みを行う際に待機位置から順方向に搬送させるのみでよいため、1枚目のラベルPL#1を発熱体位置から脱落させることなく発行することが可能である。そのため、1枚目のラベルPL#1を無駄にすることがない。ラベル搬送方法の第3例では、リーダライタがインレイILと通信を行った後にラベルPLを逆方向に搬送させる必要がないため、スループットが向上する。
ラベル搬送方法の第3例では、状態ST32において連続紙CPの搬送を停止してもよいし、停止しなくてもよい。インレイに対するデータの書き込みに要する時間は短時間であるため、通信位置の前後において連続紙CPを搬送させながらインレイに対するデータの書き込みを行うことができる。状態ST32において連続紙CPの搬送を停止させることで、通信位置においてリーダライタがRFIDインレイと安定的に通信を行うことができるという利点がある。
【0063】
ラベル搬送方法の第1例から第3例を参照して説明したように、制御部8は、ラベルPLの印字開始位置から搬送方向に、上記最適オフセット量搬送させた通信位置においてリーダライタ91によりラベルPLのインレイILと通信を行うように制御する
上記ラベル搬送方法の各例では、ラベルのインレイに対する書き込みを行う場合について説明したが、書き込みを行うタイミングの前後でラベルのインレイに対するデータの読み出しを行ってもよい。
【0064】
以上説明したように、上述したプリンタ1では、サーマルヘッド18の発熱部18Lよりも連続紙CPの搬送経路の下流側にRFIDアンテナ311が配置されている。そのため、1枚目のラベルのインレイに対してデータの書き込みを行う際に1枚目のラベルの先端側が印字ヘッドの発熱体位置から脱落することがない。すなわち、サーマルヘッド18の発熱体位置よりも下流側にRFIDアンテナ311が配置されているため、1枚目のラベルのインレイに対してデータの書き込みを行う際に連続紙CPを逆方向に搬送させる必要がなく、1枚目のラベルが発熱体位置から脱落することが避けられる。そのため、1枚目のラベルを無駄なく発行させることができる。
【0065】
図7では、RFIDアンテナがリボン調整板に配置される例を示したが、RFIDアンテナは他の場所に配置することもできる。例えば、サーマルヘッド18の先端部分や、サーマルヘッド18の下流にカッター(図示せず)が配置される場合には当該カッターの近傍、あるいは、発行口5に設けてもよい。
【0066】
次に、上記最適オフセット量(ラベルの印字開始位置から通信位置(インレイがRFIDアンテナを介してリーダライタと通信を行う位置)までの搬送量)の決定方法について、図13図16を参照して説明する。
最適オフセット量を決定するには、先ず、様々な条件での通信結果に関するデータ(通信データ)を取得し、次いで、取得した通信データを基に所定のプログラムを実行する。
【0067】
以下、通信結果に関するデータの取得手順について説明する。
図13は、通信データを取得するときの、連続紙CPの搬送方法を説明する図である。状態MS1は、データ取得前の状態を示しており、ラベルPLがセットされた状態である。この例では、状態MS1において発熱体位置がラベルPL#1の発行開始位置にある。
次いで、ラベルPLの先端がRFIDアンテナと一致する位置まで連続紙CPを搬送させる(状態MS2)。このときの搬送量は、ラベル位置検出センサ74の検出結果に基づいて搬送量が決定される。なお、ラベルPLの位置検出マークIMを検出するセンサを使用し、当該センサの検出結果に基づく場合には、状態MS2において必ずしもラベルPLの先端がRFIDアンテナと一致しない。
状態MS2から通信データを開始する。通信データの取得は、連続紙CPを1mmずつ搬送させて停止させ、各位置においてリーダライタ91からの電磁波の送信出力を所定の範囲内で変化させてリーダライタとRFIDアンテナの通信可否の結果を取得することにより行われる。通信データは、「WRITE OK」(データの書き込み可)、「READ ONLY」(データの読み出しのみ可)、あるいは通信不可(データの書き込みも読み出しも不可)のいずれかである。なお、通常、データの書き込みに要する送信出力はデータの読み出しに要する送信電力よりも大きいため、通信データが「WRITE OK」である場合には、データの読み出しも可である。
【0068】
制御部8は、取得した通信データを通信データセット(図14参照)に記録する。
図14に示すように、通信データセットには、データ取得開始からのデータ取得位置(mm)を列とし、RFIDアンテナの送信出力(dBm)を行としたときの通信データがマトリクス状に記録されている。通信データは、通信結果に応じて●(WRITE OK)又は〇(READ ONLY)により示されている。記録されていない箇所は、データの書き込みも読み出しも不可であることを意味する。
図14に示す例では、連続紙CPを1mmずつ搬送させ、各データ取得位置においてRFIDアンテナの送信出力を0~24dBmの間で1dBmごとに変化させた場合を例にしているが、その限りではない。隣接するデータ取得位置の間隔(図14では1mm)や送信出力の変化量(図14では1dBm)は、適宜変更することができる。
【0069】
図13の状態MS2が、図14のデータ取得位置が「0mm」である場合に相当する。データ取得位置が「0mm」のときに、送信出力が0,1,2,…,24dBmの各々において通信データを取得し、次いで連続紙CPを1mm搬送させてデータ取得位置が「1mm」のときに送信出力が0,1,2,…,24dBmの各々において通信データを取得する、といった具合に通信データが取得される。そして、データ取得位置が所定の最大値(図14の例では100mm)となるとき(図13の状態MS3)、データ取得が終了となる。
【0070】
通信データの取得が終了すると、制御部8は、得られた通信データセットに基づいて、最適オフセット量を決定する処理(最適オフセット量決定処理)を実行する。図15及び図16は、最適オフセット量を決定する処理を示すフローチャートである。
最適オフセット量決定処理では、先ず、インレイにデータを書き込むときの最適位置であるWRITE最適位置と、データを書き込むときのRFIDアンテナによる最適な送信出力であるWRITE最適出力と、を決定する。次いで、インレイのデータを読み出すときの最適な送信出力であるREAD最適出力と、最適オフセット量と、を決定する。
【0071】
図15及び図16に示すフローチャートにおいて、WRITE最適位置は、通信データセットのデータ取得位置から最終的に決定される変数である。WRITE最適出力とREAD最適出力は、通信データセットの送信出力から最終的に決定される変数である。
図15を参照すると、制御部8は、先ずWRITE出力(P)を「0」(dbm)とし(ステップS2)、データ取得位置を「0」(mm)とする(ステップS4)。次いで制御部8は、通信データセットにおいて送信出力が0dBmの行に注目し、データ取得位置が0mmから所定の最大値(MP_max;図18の例では100mm)の間にN箇所連続して●(WRITE OK)が記録されているか判定する(ステップS6~S10)。Nは限定しないが、例えば6~10mmの間の任意の値に設定でき、代表的には8mmである。N箇所連続して●(WRITE OK)が記録されていない場合には、制御部8は、通信データセットにおいて、送信出力(WRITE出力)を所定の出力最大値(P_max;図18の例では24dBm)を越えない限り1dBm増加させた行に注目し(ステップS12,S14)、再度、データ取得位置が0mmから所定の最大値(MP_max)の間にN箇所連続して●(WRITE OK)が記録されているか判定する(ステップS6~S10)。
以上のようにして、制御部8は、通信データセットにおいて送信出力(WRITE出力)を1dBmずつ増加させた行に順に注目していき、N箇所連続して●(WRITE OK)が記録されている場合(ステップS6:YES)、そのときの送信出力をWRITE最適出力とする(ステップS16)。さらに制御部8は、ステップS6でN箇所連続して●(WRITE OK)であると判定したときのN箇所のデータ取得位置の中央位置をWRITE最適位置(MP_best)とする(ステップS16)。
【0072】
図16において、ステップS18~S30は、READ最適出力を決定する処理である。インレイに対するデータの書き込み、及びインレイからのデータの読み出しは、処理対象となるインレイを含むラベルを移動させずに行うため、データ読み出しではステップS16で決定したWRITE最適位置(MP_best)が基準となる。
【0073】
図16を参照すると、制御部8は、先ずREAD出力(P)を「0」(dbm)とし(ステップS18)、データ取得位置をWRITE最適位置(MP_best)とする(ステップS20)。次いで制御部8は、通信データセットにおいて送信出力が0dBmの行に注目し、データ取得位置がWRITE最適位置からN箇所連続して●(WRITE OK)又は〇(READ ONLY)が記録されているか判定する(ステップS22~S26)。N箇所連続して●(WRITE OK)又は〇(READ ONLY)が記録されていない場合には、制御部8は、通信データセットにおいて、送信出力(READ出力)を所定の出力最大値(P_max)を越えない限り1dBm増加させた行に注目し(ステップS28,S30)、再度、データ取得位置がWRITE最適位置からN箇所連続して●(WRITE OK)又は〇(READ ONLY)が記録されているか判定する(ステップS22~S26)。
以上のようにして、制御部8は、通信データセットにおいて送信出力(READ出力)を1dBmずつ増加させた行に順に注目していき、WRITE最適位置からN箇所連続して●(WRITE OK)又は〇(READ ONLY)が記録されている場合(ステップS22:YES)、そのときの送信出力をREAD最適出力とする(ステップS32)。
【0074】
最後に制御部8は、最適オフセット量を算出して記録する(ステップS40)。最適オフセット量(OFFSET)は、WRITE最適位置(MP_best)に、搬送経路における印字開始位置からRFIDアンテナまでの既知の距離を加えることで算出される(図13参照)。
【0075】
図15及び図16に示した最適オフセット量決定処理を実行することで、搬送方向にN箇所(例えば8mm)連続して書き込みが可能となるときのN箇所の範囲の中央位置において書き込みを行うように最適オフセット量、つまり通信位置が決定される。ここで、連続紙CPの搬送停止位置、インレイILのラベルPLに対する取付位置、あるいはラベル位置検出センサ74の取付位置は、累積して例えば±3~4mm程度の搬送方向における誤差があり得る。その場合でも、例えば書き込み可能な8mm(N=8の場合)の範囲の中央位置に通信位置が設定されるため、インレイILとリーダライタ91との間で安定的に通信を行うことが可能となる。
また、搬送方向にN箇所連続して書き込みが可能となるときの最小の送信電力をWRITE最適出力としているため、通信対象とするラベルに隣接する他のラベルに対して誤ってデータを書き込むことを防止できる。
上記最適オフセット量決定処理では、N箇所連続して●(WRITE OK)が記録されている位置を、「0」(mm)のデータ取得位置から探索するため、極力印字開始位置に近い位置に通信位置を設定することができる。そのため、データの書き込み、及び、印字に伴う搬送距離が短くなりスループットが向上する。
【0076】
最適オフセット量決定処理は、それぞれ様々なインレイが組み込まれた複数のタイプのラベルの各々に対して実行し、予め各タイプのラベルごとに最適オフセット量を決定しておき、制御部8のメモリに記憶しておいてもよい。その場合、プリンタ1は、複数のタイプの中からいずれかのタイプのラベルを利用者が選択可能に構成される。制御部8は、利用者に選択されたタイプのラベルに対応する最適オフセット量を設定し、設定された最適オフセット量に対応する通信位置においてインレイに対するデータの書き込み等を行うように搬送制御する。
最適オフセット量決定処理は、プリンタ1が図示しないホストコンピュータからラベル発行要求を受け付けた後に実行してもよい。この場合、制御部8は、ラベル発行前に図13に示した搬送処理を行って通信データを取得し、得られた通信データセットを基に最適オフセット量決定処理を実行する。次いで、ラベルを発行する際には、制御部8は、ラベル発行要求を受け付けた後に実行した最適オフセット量決定処理により決定された最適オフセット量に対応する通信位置においてインレイに対するデータの書き込み等を行うように搬送制御する。
【0077】
図17図20はそれぞれ、第1例~第4例のラベルに対するデータ取得結果(図14の通信データセットを可視化したもの)と通信位置を示す図である。第1例~第4例のラベルPLex1~PLex4はそれぞれ異なる形状のインレイ(各図に、アンテナANとICチップCを示す。)を有している。各図では、通信データセットと、最適オフセット量決定処理により決定された最適オフセット量に対応する通信位置におけるインレイの位置と、を示している。
各例では、N=8とし、通信データセットにおいて8mm連続して●(WRITE OK)が記録されているときにその8mmの区間の中央位置を通信位置としている。また、各例では、発熱体位置とRFIDアンテナ位置までの距離はいずれも7.5mmである。各例では、インレイの先端がRFIDアンテナ位置よりも搬送方向の下流側にある位置においてインレイの通信位置となる。
図17~20に示すように、ラベルのタイプに応じて通信位置(発熱体位置を基準とした搬送方向の距離)がそれぞれ異なることがわかる。
【0078】
一実施形態は、(i),(ii)の各ステップを備えたプリンタ1の制御方法である。
(i)ラベルPLの印字開始位置から搬送方向に沿って所定量の位置である通信位置までラベルPLを搬送させること
(ii)ラベルPLが通信位置にあるときに、リーダライタ91によりRFIDアンテナ311を介してラベルPLのインレイILと通信を行うこと
【0079】
一実施形態は、プリンタ1にインストールされたときにコンピュータに、上記(i),(ii)の手順を実行させるプログラムである。
【0080】
以上、本発明のプリンタの実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。また、上記の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更が可能である。
【符号の説明】
【0081】
1…プリンタ
2…フロントカバー
3…入力ボタン
4…表示パネル
5…発行口
6…オープンカバー
7…ヒンジ
8…制御部
81…CPU、82…ROM、83…RAM、84…入力インタフェース、85…表示制御部、86…モータコントローラ、87…ヘッドコントローラ、88…センサインタフェース、89…リーダライタインタフェース、90…通信バス
9…モータ
10…用紙供給部
10a…支持軸、10b…ロールガイド
11…印字部
12…インクリボン部
12a…リボン供給部、12b…リボン巻き取り部、121,122…リボンローラ
13…印字ヘッドユニット
14…支持台
15…ダンパ
16…ヘッドロックレバー
17,171…支持板
18…サーマルヘッド、18L…発熱部
19…係合爪
20…ピン
22…ロック爪
23…プラテンローラ
24…中継基板
31…アンテナ組立体
311…RFIDアンテナ、312…配線、312c…コネクタ、313…組付け用部材
32…アンテナケース
321…ケース本体、322…突出部、322c…係合爪
35…ヘッド機構部
39…ヘッドカバー
42…操作部
64…ラベル有無検出センサ
66…リボン調整板
661…平坦部、662…溝部、663…孔、664…ねじ、665…長孔
70…ラベル支持機構部
71…ラベル支持部、73…ラベルガイド部、74…ラベル位置検出センサ
91…リーダライタ
912…配線、912c…コネクタ
CP…連続紙、PM…台紙、PL…ラベル、IL…RFIDインレイ、IM…位置検出マーク、RB…インクリボン、R…ロール紙
S1…揺動軸
図1
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