(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002199
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】発炎筒携行容器
(51)【国際特許分類】
G08B 5/40 20060101AFI20241226BHJP
F41H 9/08 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
G08B5/40 B
F41H9/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102207
(22)【出願日】2023-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】591051966
【氏名又は名称】株式会社サンライン
(72)【発明者】
【氏名】宮原 秀一
(72)【発明者】
【氏名】北村 賢史
(72)【発明者】
【氏名】水津 啓太
(57)【要約】
【課題】
気密性や止水性を保ちながら発炎筒を携行可能とし、非常時に発煙筒を単純動作で容易に取り出すことのできる発炎筒携行容器を提供する。
【解決手段】
発炎筒を密閉して収納する筒状の発炎筒携行容器であって、容器側壁に溝を備えることを特徴とする発炎筒携行容器である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発炎筒を密閉して収納する筒状の発炎筒携行容器であって、容器側壁に溝を備えることを特徴とする発炎筒携行容器。
【請求項2】
前記溝に力を加えることで、前記容器側壁が割れ、発炎筒が取り出し可能となる請求項1記載の発炎筒携行容器。
【請求項3】
前記溝が、容器側壁の周方向に延在するものである請求項1記載の発炎筒携行容器。
【請求項4】
発炎筒を収納する発炎筒収納部と、内部空間とを備える請求項1記載の発炎筒携行容器。
【請求項5】
前記内部空間に、蛍光塗料又は乾燥材を収納する請求項4記載の発炎筒携行容器。
【請求項6】
容器側壁と蓋とを備え、前記容器側壁と前記蓋との接触面がプラズマ処理を施されたものである請求項1記載の発炎筒携行容器。
【請求項7】
前記蛍光塗料がフルオレセインである請求項5記載の発炎筒携行容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発炎筒携行容器に関し、詳しくは、容器側壁に溝を備える発炎筒携行容器に関する。
【背景技術】
【0002】
アウトドアでの行動時、不確定の要素で危険が発生する。釣り人などのマリンスポーツの愛好者が海、河、湖等の水域で転落事故や漂流事故に遭ったとき、事故発生と発生場所を他者に知らせるための救難信号を発信する事が必要となる。特に遭難においては、いち早く他者へ遭難者の位置を知らせ救援する事が、生存率を高める上で必要である。
【0003】
救援方式として、近年では、GPSを用いた救難信号発信装置が市販されている。
現在市販されているGPSを用いた救難信号は非常に高価であり、自己の所在を第三者に伝える手段として高価な専用装置を携帯するという方式は現実的ではない。また、市販されるGPSを用いた救難信号発生装置は、日本の電波法により使用エリアが海上に限定された装置が多く、同様の使用目的であっても陸や空など他エリアでの使用が法律によって認められていない。日本の電波法において特定小電力無線(周波920Mhz帯出力20mW以下の周波数帯)であればエリアの制限なく誰にでも使用可能なGPSを用いた救難信号発信装置の実現が期待されている。しかし、上記周波数帯において遠距離での通信を可能とする技術は非常に難しく、一般に普及するに至っていない。また、GPSを用いた救難信号発信装置の稼働時間は16時間から25時間であるが、低温環境下における稼働時間はアルカリ乾電池の場合7割減少、ニッケル水素電池の場合3割減少するため、遭難時の環境によっては適していない。
【0004】
携帯電話が普及する今日で言えば、アウトドア等の災害時にも身の安全や所在は携帯電話の通話やGPS位置情報などの通信機能によって伝達が可能である。しかし、遭難の危険性がある海上や山間部では、携帯電話の電波を十分に、または全く受送信することできない。また、携帯電話等の携帯端末が水没などによって破損した場合には、事故の所在を知らせる手段が失われる。
【0005】
比較的安価な救難信号発生装置の1つとして、発煙筒が市販されている。発煙筒は、火薬の燃焼によって生じる煙を視覚信号として発信する救難信号発信装置であり、容器本体内部に、発煙薬のほか、発煙薬を加熱するための加熱薬及び点火薬などの火薬を含んでいるのが一般的であり、点火の際には火薬と他の物とを摩擦させて着火する必要がある。着火部が吸湿している場合、着火ができないことから水上や降水時の使用が不可能である。そのため、発煙筒は多湿及び浸水する環境を避けて保管する必要がある(特許文献1参照)
【0006】
そのため、発炎筒を密封し、水分から守りながら携行可能とする発炎筒の携行容器が求められている。さらに、発炎筒携行容器には、非常時に発煙筒を容易に取り出すことのできることが求められている。これは、遭難という非常事態に遭遇することにより気が動転している遭難者においては、複数の操作を手順よく実施するのは困難であるため、単純動作で発炎筒を取り出し、救難信号を発信することができるようにする必要があるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、気密性や止水性を保ちながら発炎筒を携行可能とし、非常時に発煙筒を単純動作で容易に取り出すことのできる発炎筒携行容器を提供することを目的とする。
【課題を解決する為の手段】
【0009】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、発炎筒携行容器の容器側壁に溝を設けることで上記課題を解決可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の[1]~[7]である。
[1]発炎筒を密閉して収納する筒状の発炎筒携行容器であって、容器側壁に溝を備えることを特徴とする発炎筒携行容器。
[2]前記溝に力を加えることで、前記容器側壁が割れ、発炎筒が取り出し可能となる[1]の発炎筒携行容器。
[3]前記溝が、容器側壁の周方向に延在するものである[1]の発炎筒携行容器。
[4]発炎筒を収納する発炎筒収納部と、内部空間とを備える[1]の発炎筒携行容器。
[5]前記内部空間に、蛍光塗料又は乾燥材を収納する[4]の発炎筒携行容器。
[6]容器側壁と蓋とを備え、前記容器側壁と前記蓋との接触面がプラズマ処理を施されたものである[1]の発炎筒携行容器。
[7]前記蛍光塗料がフルオレセインである[5]の発炎筒携行容器。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、気密性や止水性を保ちながら発炎筒を携行可能とし、非常時に発煙筒を単純動作で容易に取り出すことのできる発炎筒携行容器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る発炎筒携行容器の模式図である
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の発炎筒携行容器は、発炎筒を密閉して収納する筒状の発炎筒携行容器であって、容器側壁に溝を備えることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の発炎筒携行容器の容器側壁に備えられる溝は、外部からの衝撃によって溝から容器を割ることによって破壊し、容易に容器を開封することができるようにするためのものである。容器の側壁とは、容器の外壁又は内壁のいずれであってもよい。溝は、好ましくは、容器の長手方向に対して垂直に1本以上の溝を設ける。容器が断面円形の場合、円周方向に延在することが好ましい。溝の断面形状は特に限定されないが、凹状またはU状またはV状が好ましい。溝の深さは容器の厚みの50%~95%が好ましい。溝の位置は容器長手方向の両端から30%から80%の位置が望ましく、さらには容器長手方向の50%に位置することが好ましい。
【0015】
本発明の発炎筒携行容器の素材は特に限定されないが、プラスチックまたは金属が好ましく、軽量で携帯性に優れるプラスチックがより好ましい。プラスチックの素材はアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリアミド樹脂、またはガラス繊維強化樹脂、炭素繊維強化樹脂が望ましい。また、プラスチックの場合、難燃性のプラスチックであることが好ましい。
【0016】
金属としてはアルミニウム、ステンレス、チタン、スチール、またはこれら金属の合金が好ましい。蓄光や蛍光の顔料や染料などの着色剤を容器の表面に塗布または染色してもよく、あらかじめ樹脂の成型段階で樹脂原料中に混合してもよい。難燃剤や紫外線吸収剤、撥水剤、親水剤を樹脂原料中に分散または容器の表面に塗布してもよい。容器表面を鍍金処理してもよい。
【0017】
本発明の発炎筒携行容器は、発炎筒を収納できるような形状であれば形状は特に限定されない。断面形状の例としては、円形、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形といった多角形が挙げられる。好ましくは、断面形状が円形である。
【0018】
本発明の発炎筒携行容器の寸法は特に限定されない。発炎筒を内部に収納可能な大きさであればよい。例えば、本発明の発炎筒携行容器の内部容積は70ml~300ml、好ましくは80mlから120mlが好ましく、さらに好ましくは100から110mlである。容器の高さは、例えば30~300mm、好ましくは40~200mm、より好ましくは50mmから100mm、さらに好ましくは50mmから60mmである。厚みは、例えば、0.1~10mm、好ましくは0.5mmから5mm、さらに好ましくは、1mmから3mmである。
【0019】
本発明の発炎筒携行容器は、発炎筒を収納する発炎筒収納部と、内部空間とを備えることが好ましい。これは、発炎筒を収納する空間以外に内部空間を有するということであり、このような内部空間を備える場合、その内部空間に、発炎筒以外の物を収納することができる。そのような発炎筒以外の物の例として、蛍光塗料や乾燥材が挙げられる。蛍光塗料や乾燥材の薬品、例えば、緊急時に役立つような薬品、笛なども収納対象の例として挙げられる。内部空間は、発炎筒収納部との間に仕切りを設けていてもよい。仕切りを設けることで万が一、一方の空間が浸水しても他方の空間が浸水から守られることが期待できる。
【0020】
蛍光塗料の種類は特に限定されないが、ローダミン、フルオレセインナトリウムが好ましい。前述した蛍光塗料は、海難事故の際、水面に溶出することでシーマーカーとして機能するため、捜索の際に有効な救難信号の発信が可能である。乾燥材は、密封時の容器中の水分を吸湿することにより、発煙筒の吸湿を軽減することで保存性の向上が可能である。
【0021】
本発明の発炎筒携行容器が発炎筒を収納する発炎筒収納部と、内部空間とを備える場合、容器底部付近の内壁には凸溝を備えることが好ましい。この凸溝を設けることで一つの内部空間に発炎筒を収納した後に、余分な空間を別の物を収納するための空間として使用することができる。凸溝があることによって、発炎筒よりも携行容器内部の空間が大きくとも、発炎筒が移動することを規制し、空間を確保することができる。このような凸溝は、容器底部から1.0mmから3.0mm離れた位置にあることが好ましい。凸溝の断面形状は半円でも三角でも良く、凸溝の厚みは携帯容器の50%~95%が好ましい。凸溝によって確保される容器底部の空洞には、上記のように蛍光塗料や乾燥材を封入することができる。
【0022】
本発明の発炎筒携行容器は、容器側壁と蓋とを備え、前記容器側壁と前記蓋との接触面がプラズマ処理を施されたものであることが好ましい。内部空間に発炎筒を収納する容器を製造するにあたっては、蓋と側壁を備える容器とし、内部に発炎筒を収納した後に蓋を閉めて密封するという製造方法が考えられる。この場合、蓋と側壁との接着性が、密封性、防水性に寄与する。本発明者は、蓋と側壁を接着させる際に、接触面をプラズマ処理することで、接着性が高まり、ひいては、容器の密封性や防水性を向上させることができることを見出した。
【0023】
プラズマ処理をする場合、プラズマ処理をしてから接着剤を塗布してもよい。プラズマ処理表面は接着剤の接着性が高まり、接着面の強度が高く保つことが可能であり、降水時、水中においても発煙筒の保管が可能となる。プラズマ処理の方法は特に限定されず、公知の方法をいずれも採用することができるが、大気圧プラズマであることが好ましい。使用するプラズマガスは窒素、酸素が好ましい。プラズマ処理によって、蓋と側部の接触面の何れか又は双方を、水接触角50°以下の親水状態とすることが好ましい。
【0024】
本発明の発炎筒携行容器は、容器の蓋部にフック用穴を備えてもよい。このようなフック用穴を備えることにより、カラビナやフックを使用し容易に持ち運びが可能となる。
【0025】
本発明の発炎筒携行容器は、発炎筒封入時には容器内部をガスで満たし封入してもよい。これにより、発炎筒の保存性を高めることができる。内部に満たすガスは窒素、二酸化炭素、酸素が好ましい。
【0026】
以下、
図1を参照しつつ、本発明の実施形態の一例を詳説する
【0027】
図1で示される発炎筒携行容器は、円筒状に形成されている。具体的には、円筒の容器部と蓋部に分かれて構成されている。容器の中心付近に位置している1はV字型で深さ及び幅が0.5mmから1.5mmの溝であり、非常時には容器の端部を持って地面に打ち付けるなど衝撃を加えることで、その溝部を起点に容器が割断され、収納されている発炎筒を取り出すことが可能である。
【0028】
図1の2は、発炎筒収納部とは別の内部空間である。発炎筒携行容器の底部の0.5mmから1.0mm位置に、凸部を備えることで発炎筒はそこより下への移動が規制される。そのため、内部空間は高さ1.5mmから2cmの空洞となる。空洞には乾燥材や蛍光塗料の封入が可能であり、保存性の向上、溶出時にはシーマーカーとしての利用が可能となる。
【0029】
図1の3は蓋部である。蓋部3と容器側壁4との接着面は、発炎筒を封入した後、接着剤にて接着される。接着面には予めプラズマ処理しておくことで、気密性が高く接着強度の高い接着が可能である。
また、この実施形態では、蓋部3にフック用穴が設けられている。