IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三井化学株式会社の特許一覧

特開2025-21994液晶滴下工法用シール剤、これを用いた液晶表示パネル、および液晶表示パネルの製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021994
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】液晶滴下工法用シール剤、これを用いた液晶表示パネル、および液晶表示パネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1339 20060101AFI20250206BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20250206BHJP
   C08G 59/18 20060101ALI20250206BHJP
   C08G 59/68 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
G02F1/1339 500
C09K3/10 L
C09K3/10 B
C08G59/18
C08G59/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023126167
(22)【出願日】2023-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有間 晃平
【テーマコード(参考)】
2H189
4H017
4J036
【Fターム(参考)】
2H189EA04Y
2H189EA11Y
2H189FA22
2H189FA47
2H189FA52
2H189HA12
4H017AA04
4H017AB08
4H017AC04
4H017AC16
4H017AC17
4H017AD02
4H017AE05
4J036AA01
4J036AA05
4J036AB01
4J036AB07
4J036AC02
4J036AD01
4J036AD07
4J036AD08
4J036AD15
4J036AF01
4J036AF06
4J036AF08
4J036CA21
4J036CA22
4J036DA01
4J036DA02
4J036DA10
4J036DC26
4J036DD02
4J036EA01
4J036EA02
4J036EA04
4J036EA09
4J036FA05
4J036FA10
4J036FA12
4J036GA06
4J036HA02
4J036JA07
(57)【要約】
【課題】液晶を汚染し難く、活性エネルギー線の照射によって硬化させることが可能であり、基板との接着強度が高く、さらに透湿性が低い封止材を形成可能な液晶滴下工法用シール剤を提供すること。
【解決手段】上記課題を解決する液晶滴下工法用シール剤は、硬化性化合物と、活性エネルギー線の照射により、グアニジン系化合物を生成する光塩基発生剤と、光増感剤と、チオール基を有する硬化促進剤と、を含み、前記硬化性化合物は、エポキシ基を有するエポキシ系化合物を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性化合物と、
活性エネルギー線の照射により、グアニジン系化合物を生成する光塩基発生剤と、
光増感剤と、
チオール基を有する硬化促進剤と、
を含み、
前記硬化性化合物は、エポキシ基を有するエポキシ系化合物を含む、
液晶滴下工法用シール剤。
【請求項2】
前記光塩基発生剤の量が、前記硬化性化合物100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下である、
請求項1に記載の液晶滴下工法用シール剤。
【請求項3】
前記硬化促進剤の量が、前記硬化性化合物100質量部に対して0.5質量部以上50質量部以下である、
請求項1に記載の液晶滴下工法用シール剤。
【請求項4】
前記光増感剤の量が、前記光塩基発生剤の量100質量部に対して1質量部以上50質量部以下である、
請求項1に記載の液晶滴下工法用シール剤。
【請求項5】
前記硬化促進剤は、1級チオール化合物である、
請求項1に記載の液晶滴下工法用シール剤。
【請求項6】
前記硬化性化合物が、ラジカル重合性基を有するラジカル重合性化合物をさらに含む、
請求項1に記載の液晶滴下工法用シール剤。
【請求項7】
一対の基板と、
前記一対の基板間に挟み込まれた液晶層と、
前記一対の基板間に配置され、前記液晶層を封止するための枠状の封止材と、
を有する液晶表示パネルであり、
前記封止材が請求項1~6のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用シール剤の硬化物である、
液晶表示パネル。
【請求項8】
一対の基板を準備する工程と、
一方の基板上に、請求項1~6のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用シール剤を塗布し、枠状封止パターンを形成する工程と、
前記枠状封止パターンが未硬化の状態で、前記枠状封止パターンの内側、および/または他方の基板の対応する領域に、液晶材料を滴下する工程と、
前記一対の基板を、前記液晶材料を介して重ね合わせ、前記枠状封止パターンに活性エネルギー線を照射する工程と、
を含む、液晶表示パネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶滴下工法用シール剤、これを用いた液晶表示パネル、および液晶表示パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種表示を行うための液晶表示パネルは、通常、一対の基板と、これらの間に配置された枠状の封止材と、当該封止材で囲まれた領域内に封入された液晶材料とを有する。このような液晶表示パネルの製造方法の一つに、液晶滴下工法がある。
【0003】
液晶滴下工法では、一対の基板の一方に、ディスペンス法により液晶シール剤を塗布し、矩形状の枠状封止パターンを作製する。次いで、液晶シール剤が未硬化の状態で、枠状封止パターン内、および/または他方の基板の対応する領域に、液晶材料を滴下する。そして、真空下で基板どうしを貼り合わせ、枠状封止パターンに紫外線等の活性エネルギー線を照射して仮硬化を行う。その後、加熱して本硬化を行い、液晶表示パネルを作製する。このような液晶表示パネルの液晶シール剤としては、光硬化性化合物、熱硬化性化合物、光重合開始剤、および熱硬化剤を含む樹脂組成物が多く知られている(例えば特許文献1)。また、保存安定性を高めたり、液晶への汚染を低減したりするため、熱硬化剤の代わりに、光塩基発生剤を使用することも提案されている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-102912号公報
【特許文献2】特開2013-011881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、脱炭素化など、環境配慮のために、低消費エネルギーで各種製品を製造することが求められており、液晶表示パネルにおいても、より低消費エネルギーで作製することが求められている。
【0006】
例えば、上記液晶滴下工法における液晶表示パネルの製造時に、液晶シール剤を活性エネルギー線の照射のみによって硬化させることができれば、消費エネルギーを低減でき、さらにプロセスを簡略化できる。しかしながら、従来の液晶シール剤の組成から、熱硬化性化合物や熱硬化剤を除くと、得られる封止材の低透湿性を実現し難く、得られる液晶表示パネルに不具合が生じることがあった。また、基板と封止材との接着強度という観点でも、不具合が生じることがあった。さらに、上記接着強度や低透湿性を実現するため、様々な成分を添加すると、これらの成分が液晶に滲出し、液晶が汚染されてしまうという課題もあった。つまり、液晶シール剤を活性エネルギー線の照射のみで硬化させるように液晶シール剤を設計することは難しかった。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものである。液晶を汚染し難く、活性エネルギー線の照射によって硬化させることが可能であり、さらに基板との接着強度が高く、かつ透湿性が低い封止材を形成可能な液晶滴下工法用シール剤、これを用いた液晶表示パネル、および液晶表示パネルの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、硬化性化合物と、活性エネルギー線の照射により、グアニジン系化合物を生成する光塩基発生剤と、光増感剤と、チオール基を有する硬化促進剤と、を含み、前記硬化性化合物は、エポキシ基を有するエポキシ系化合物を含む、液晶滴下工法用シール剤を提供する。
【0009】
本発明は、一対の基板と、前記一対の基板間に挟み込まれた液晶層と、前記一対の基板間に配置され、前記液晶層を封止するための枠状の封止材と、を有する液晶表示パネルであり、前記封止材が上記液晶滴下工法用シール剤の硬化物である、液晶表示パネルをさらに提供する。
【0010】
本発明はさらに、一対の基板を準備する工程と、一方の基板上に、上述の液晶滴下工法用シール剤を塗布し、枠状封止パターンを形成する工程と、前記枠状封止パターンが未硬化の状態で、前記枠状封止パターンの内側、および/または他方の基板の対応する領域に、液晶材料を滴下する工程と、前記一対の基板を、前記液晶材料を介して重ね合わせ、前記枠状封止パターンに活性エネルギー線を照射する工程と、を含む、液晶表示パネルの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の液晶滴下工法用シール剤は、液晶を汚染し難く、活性エネルギー線の照射によって硬化させることが可能である。また当該液晶滴下工法用シール剤から得られる封止材は、基板との接着強度が高く、さらに透湿性が低い。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0013】
1.液晶滴下工法用シール剤
本発明の液晶滴下工法用シール剤(以下、単に「液晶シール剤」とも称する)は、活性エネルギー線の照射によって硬化可能な組成物である。つまり、加熱を行わなくても硬化が可能な組成物である。なお、本明細書における活性エネルギー線の例には、電子線、紫外線、可視光線などが含まれる。
【0014】
上述のように、液晶シール剤を少ない消費エネルギーで硬化させることが求められている。そこで、例えば活性エネルギー線の照射のみによって液晶シール剤を硬化させること等が検討されている。しかしながら、ラジカル重合性の化合物を主に含むように液晶シール剤を設計すると、得られる封止材の透湿性が高かったり、封止材と基板との接着強度が不十分であったりする等、様々な課題が生じやすかった。また、このような課題を解決するため、エポキシ系化合物を使用することも考えられるが、エポキシ系化合物を活性エネルギー線の照射によって十分に硬化させることが難しく、液晶の汚染等が生じることがあった。
【0015】
これに対し、本発明者らの鋭意検討によれば、エポキシ系化合物等の硬化性化合物と共に、活性エネルギー線の照射によりグアニジン系化合物を生成する光塩基発生剤、光増感剤、およびチオール基を有する硬化促進剤を使用することで、活性エネルギー線の照射のみで液晶シール剤を十分に硬化可能であることが見出された。そして、当該液晶シール剤から得られる封止材は、基板との接着性が良好であり、その透湿性も低い。また当該液晶シール剤は、液晶を汚染し難いという利点もある。その理由は定かではないが、以下のように考えられる。活性エネルギー線の照射によって光塩基発生剤から生成するグアニジン系化合物は比較的強塩基であり、当該グアニジン系化合物が、エポキシ系化合物のエポキシ基と反応する。ただし、グアニジン系化合物とエポキシ系化合物との反応は比較的緩やかであり、これらの反応だけでは、エポキシ系化合物(硬化性化合物)の硬化が不十分になりやすい。これに対し、チオール基を有する硬化促進剤をさらに組み合わせることで、エポキシ系化合物の硬化速度が高まったり、硬化促進剤とエポキシ系化合物との反応によって、封止材中の架橋密度が高まったりする。その結果、液晶シール剤中の成分が液晶を汚染し難くなり、封止材の透湿性が低くなると考えられる。さらに、チオール基を有する硬化促進剤によれば、得られる封止材の柔軟性が適度になり、封止材と基板との密着性を高まると考えられる。
以下、本発明の液晶シール剤の各成分について説明する。
【0016】
(1)硬化性化合物
硬化性化合物は、エポキシ基を有するエポキシ系化合物を含んでいればよく、エポキシ系化合物以外の化合物を含んでいてもよく、例えば(メタ)アクリル系化合物等、ラジカル重合性基を有するラジカル重合性化合物をさらに含んでいてもよい。ラジカル重合性化合物の種類は特に制限されないが、(メタ)アクリル系化合物が、反応性等の観点で好ましい。硬化性化合物として、エポキシ系化合物、および(メタ)アクリル系化合物の両方を含むことが、その硬化性や得られる封止材の基板との強度等の観点で好ましい。以下、これらの化合物について説明するが、硬化性化合物は、これらに限定されない。なお、本明細書において、(メタ)アクリルとは、メタクリル、アクリル、およびこれら両方を表す。(メタ)アクリロイルとは、メタクリロイル、アクリロイル基、およびこれら両方を表す。(メタ)アクリレートとは、メタクリレート、アクリレート、およびこれら両方を表す。
【0017】
・エポキシ系化合物
本明細書において、エポキシ系化合物とは、分子内にエポキシ基を1つ以上有する化合物であればよく、例えばエポキシ基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物(以下、「(メタ)アクリル変性エポキシ化合物」とも称する)であってもよい。硬化性化合物は、エポキシ系化合物を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。硬化性化合物は、エポキシ基を有し、かつ(メタ)アクリル基を有さない化合物(以下、「エポキシ樹脂」とも称する)と、上記(メタ)アクリル変性エポキシ化合物との両方を含むことが好ましい。以下、これらについてそれぞれ説明する。
【0018】
本明細書におけるエポキシ樹脂は、1分子内にエポキシ基を1つ以上有する化合物(ただし、後述の(メタ)アクリル変性エポキシ化合物は、エポキシ樹脂に含まないものとする)であればよい。硬化性化合物は、当該エポキシ樹脂を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。また、エポキシ樹脂が含むエポキシ基の数は、1以上であればよいが、液晶シール剤の硬化性の観点で、2以上が好ましい。当該エポキシ樹脂の例には、公知の芳香族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂が含まれる。これらの中でも、得られる封止材の低透湿性を実現しやすいとの観点で、芳香族エポキシ樹脂が好ましい。
【0019】
芳香族エポキシ樹脂の例には、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、ビスフェノールAD等で代表される芳香族ジオール類や、これらの芳香族ジオールをエチレングリコール、プロピレングリコール、アルキレングリコール等で変性したジオール類と、エピクロルヒドリンとの反応で得られた芳香族多価グリシジルエーテル化合物;フェノールまたはクレゾールとホルムアルデヒドとから誘導されたノボラック樹脂、ポリアルケニルフェノールやそのコポリマー等で代表されるポリフェノール類と、エピクロルヒドリンとの反応で得られたノボラック型多価グリシジルエーテル化合物;キシリレンフェノール樹脂のグリシジルエーテル化合物類等が含まれる。
【0020】
中でも、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリフェノールエタン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂またはビフェニル型エポキシ樹脂が好ましい。
【0021】
ここで、エポキシ樹脂は、液状であってもよく、固体状であってもよい。封止材の低透湿性を実現しやすいとの観点では、固体状のエポキシ樹脂が好ましい。固体状のエポキシ樹脂の軟化点は、40℃以上150℃以下が好ましい。軟化点は、JIS K7234に規定する環球法によって測定できる。
【0022】
また、エポキシ樹脂の重量平均分子量は500~10000が好ましく、1000~5000がより好ましい。エポキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算にて測定される。
【0023】
エポキシ樹脂の総量は、硬化性化合物の総量に対して5質量%以上60質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましい。エポキシ樹脂の量が5質量%以上であると、封止材の透湿性がさらに低くなりやすい。一方、エポキシ樹脂の量が60質量%以下であると、後述の(メタ)アクリル系化合物の量等が多くなり、得られる封止材の光重合性がさらに向上しやすい。
【0024】
一方、エポキシ系化合物の一種である(メタ)アクリル変性エポキシ化合物は、分子内に1個以上のエポキシ基と、1個以上の(メタ)アクリロイル基とを有していればよい。硬化性化合物は、(メタ)アクリル変性エポキシ化合物を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
【0025】
(メタ)アクリル変性エポキシ化合物におけるエポキシ基および(メタ)アクリロイル基の数は特に制限されず、それぞれ1つのみであってもよく、2つ以上であってもよい。当該(メタ)アクリル変性エポキシ化合物は、上記エポキシ樹脂、および後述の(メタ)アクリル系化合物のいずれとも相溶性が良好である。したがって、硬化性化合物として、(メタ)アクリル変性エポキシ化合物を含むと、異なる種類の硬化性化合物の相溶性が良好になりやすく、液晶シール剤が均一に硬化しやすくなる。
【0026】
(メタ)アクリル変性エポキシ化合物は、2官能以上のエポキシを有する化合物の、少なくとも1つのエポキシ基を(メタ)アクリロイル基で変性して得られる。当該(メタ)アクリル変性エポキシ化合物は、例えば、2官能以上のエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸とを塩基性触媒の存在下で反応させて得られる。
【0027】
(メタ)アクリロイル基で変性するエポキシ化合物は、分子内に2以上のエポキシ基を有する多官能のエポキシ化合物であればよく、架橋密度が高まりすぎて封止材の接着強度が過剰低下することを抑制する観点では、2官能のエポキシ化合物が好ましい。2官能のエポキシ化合物の例には、ビスフェノール型エポキシ化合物(ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、2,2’-ジアリルビスフェノールA型、ビスフェノールAD型、及び水添ビスフェノール型等)、ビフェニル型エポキシ化合物、およびナフタレン型エポキシ化合物が含まれる。中でも、液晶シール剤の塗布性が良好になりやすいとの観点から、ビスフェノールA型およびビスフェノールF型のビスフェノール型エポキシ化合物が好ましい。ビスフェノール型エポキシ化合物由来の(メタ)アクリル変性エポキシ化合物は、ビフェニルエーテル型エポキシ化合物由来の(メタ)アクリル変性エポキシ化合物と比べて塗布性に優れる等の利点がある。
【0028】
(メタ)アクリル変性エポキシ化合物は、エポキシ基のモル数1に対する(メタ)アクリロイル基のモル数の比率が1以上であることが好ましく、2以上がより好ましい。(メタ)アクリロイル基のモル数の比率を高めることで、液晶シール剤の液晶への溶出を抑制しやすくなる。
【0029】
(メタ)アクリル変性エポキシ化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量は、300~500であることが好ましい。
【0030】
また、(メタ)アクリル変性エポキシ化合物の量は、硬化性組成物の総量に対して10質量%以上80質量%以下が好ましく、15質量%以上60質量%以下がより好ましい。(メタ)アクリル変性エポキシ化合物の量が10質量%以上であると、上述のエポキシ樹脂と後述の(メタ)アクリル化合物との相溶性がさらに高まりやすい。一方で、(メタ)アクリル変性エポキシ化合物の量が80質量%以下であると、得られる封止材において、低い透湿性や高い接着強度をさらに実現しやすくなる。
【0031】
・(メタ)アクリル系化合物
本明細書において、(メタ)アクリル系化合物とは、分子内に(メタ)アクリロイル基を1つ以上有する化合物をいい、上述の(メタ)アクリル変性エポキシ化合物(すなわち、一分子中にエポキシ基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物)は含まないものとする。硬化性化合物は、(メタ)アクリル系化合物を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。なお、硬化性化合物が、当該(メタ)アクリル系化合物を含む場合には、本発明の目的および効果を損なわない範囲において、光重合開始剤を併用してもよい。当該光重合開始剤は、公知の液晶シール剤が含む光重合開始剤と同様のものとすることができる。
【0032】
ここで、(メタ)アクリル系化合物が、1分子内に含む(メタ)アクリロイル基の数は、1つであってもよく、2つ以上であってもよい。1分子内に(メタ)アクリロイル基を1つ含む(メタ)アクリル系化合物の例には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、および(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルエステル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが含まれる。
【0033】
1分子内に2以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系化合物の例には、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等に由来するジ(メタ)アクリレート;トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートに由来するジ(メタ)アクリレート:1モルのネオペンチルグリコールに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールに由来するジ(メタ)アクリレート;1モルのビスフェノールA又はビスフェノールFに2モルのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドを付加して得たジオールに由来するジ(メタ)アクリレート(ビスフェノールA又はF型エポキシ(メタ)アクリレート);1モルのトリメチロールプロパンに2モル又は3モルのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たポリオールに由来するジもしくはトリ(メタ)アクリレート;1モルのビスフェノールAに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオール由来のジ(メタ)アクリレート;トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート又はそのオリゴマー;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートまたはそのオリゴマー;ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート;トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート;カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート;カプロラクトン変性トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート;アルキル変性ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート;カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート;ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート;カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート;エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート;エチレンオキサイド変性アルキル化リン酸(メタ)アクリレート;ならびにネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールのオリゴ(メタ)アクリレート等が含まれる。中でも、1モルのビスフェノールA又はビスフェノールFに2モルのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドを付加して得たジオールに由来するジ(メタ)アクリレート(ビスフェノールA又はF型エポキシ(メタ)アクリレート)が好ましい。
【0034】
(メタ)アクリル系化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量は、200~10000が好ましく、200~5000がより好ましい。
【0035】
(メタ)アクリル系化合物の重量平均分子量は、310~1000程度が好ましい。当該重量平均分子量は、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算にて測定される値である。
【0036】
ここで、(メタ)アクリル系化合物の総量は、硬化性化合物の総量に対して、3質量%以上60質量%以下が好ましく、5質量%以上40質量%以下がより好ましい。(メタ)アクリル系化合物の総量が3質量%以上であると、液晶シール剤の硬化性がさらに良好になりやすい。一方、(メタ)アクリル系化合物の総量が60質量%以下であると、相対的に、上記エポキシ系化合物の量が十分になり、得られる封止材の接着強度や低透湿性がさらに良好になりやすい。
【0037】
・その他
硬化性化合物は、本発明の目的および効果を損なわない範囲で、上記で説明した以外の硬化性化合物をさらに含んでいてもよい。
【0038】
ここで、硬化性化合物の総量は、液晶シール剤の総量に対して30質量%以上85質量%以下が好ましく、40質量%以上75質量%以下がより好ましい。硬化性化合物の総量が30質量%以上であると、得られる封止材の強度が十分に高まり、液晶の漏出等を抑制しやすくなる。一方、硬化性化合物の総量が85質量%以下であると、後述の光塩基発生剤や、光増感剤、硬化促進剤等の量が十分に多くなり、液晶シール剤の硬化性がさらに良好になったり、液晶シール剤の粘度が所望の範囲になったりしやすい。
【0039】
(2)光塩基発生剤
光塩基発生剤は、活性エネルギー線の照射前は安定であり、かつ活性エネルギー線の照射によって、グアニジン系化合物を生成可能な化合物であればよい。当該光塩基発生剤は、グアニジン系化合物の塩等であり、活性エネルギー線の照射によって、これらがイオン化したり、分子が開裂したりして、グアニジン系化合物が生成される。液晶シール剤は、光塩基発生剤を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
【0040】
ここで、本明細書におけるグアニジン系化合物とは、グアニジノ基を有する化合物であればよく、ビグアニドであってもよい。光塩基発生剤が生成するビグアニドは、下記一般式で表される。
【化1】
上記一般式において、R~Rは、それぞれ独立に水素原子、または炭素数が1以上6以下の炭化水素基を表す。当該炭化水素基は、直鎖状または分岐鎖状であってもよく、環状であってもよい。さらに、当該炭化水素基は飽和であってもよく、不飽和であってもよい。R~Rは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0041】
~Rの具体例には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等の直鎖状炭化水素基;イソプロピル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基等の分岐状炭化水素基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基等の環状炭化水素基;等が含まれる。これらの中でも特に、RおよびRは、それぞれ独立に、イソプロピル基、セカンダリーブチル基等の分岐状炭化水素基、またはシクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状炭化水素基であることが好ましい。一方、R~Rはそれぞれ独立に、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等の直鎖状炭化水素基であることが好ましい。
【0042】
一方、上記グアニジン系化合物と塩を形成する化合物の種類は特に制限されず、その例には、n-ブチルトリフェニルボラートや、テトラキス(3-フルオロフェニル)ボラート、2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオネート等が含まれる。
【0043】
これらの中でも、活性エネルギー線の照射によって、ラジカルを発生させる化合物であることがより好ましく、上記の中でもn-ブチルトリフェニルボラートが好ましい。n-ブチルトリフェニルボラートは、ブチルラジカルを生成させる。活性エネルギー線の照射によって、光塩基発生剤がラジカルを発生させると、当該ラジカルが、硬化性化合物中の(メタ)アクリル系化合物等のラジカル重合のための重合開始剤として機能する。したがって、さらに効率よく、液晶シール剤を硬化させることが可能となる。
【0044】
上記光塩基発生剤の量は、上述の硬化性化合物100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下が好ましく、1質量部以上5質量部以下がより好ましい。また、上記光塩基発生剤の量は、液晶シール剤の総量に対して0.05質量%以上5質量%以下が好ましく、0.5質量%以上3質量%以下がより好ましい。光塩基発生剤の量が当該範囲であると、上述の硬化性化合物中のエポキシ系化合物と、上記グアニジン系化合物とがさらに反応しやすくなり、液晶シール剤の硬化性がさらに良好になりやすい。
【0045】
(3)光増感剤
光増感剤は、活性エネルギー線の照射による光塩基発生剤のグアニジン系化合物の生成を補助するための化合物である。上述の光塩基発生剤は、その種類や、活性エネルギー線の波長などによっては、活性エネルギー線を十分に吸収できないことがある。これに対し、光増感剤によってグアニジン系化合物の生成を補助することで、効率的にグアニジン系化合物とエポキシ系化合物との反応を生じさせることが可能となる。なお、当該光増感剤は、光塩基発生剤のグアニジン系化合物の生成の補助だけでなく、光重合開始剤として機能するものであってもよい。
【0046】
当該光増感剤の種類は、照射する活性エネルギー線の種類に応じて適宜選択される。光増感剤の具体例には、アルキルフェノン系化合物(2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(BASF社製、IRGACURE 651)等のベンジルジメチルケタール系化合物;2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン(BASF社製、IRGACURE 907)等のα-アミノアルキルフェノン系化合物;1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(BASF社製、IRGACURE 184)等のα-ヒドロキシアルキルフェノン系化合物;2,4,6-トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキサイド系化合物;ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム等のチタノセン系化合物;ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン等のアセトフェノン系化合物;メチルフェニルグリオキシエステル等のフェニルグリオキシレート系化合物、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;および1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)](BASF社製、IRGACURE OXE01)、エタノン-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(0-アセチルオキシム)(BASF社製、IRGACURE OXE02)等のオキシムエステル系化合物;ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル-4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;チオキサントン、2-クロロチオキサントン(東京化成工業社製)、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、1-クロロ-4-エトキシチオキサントン(Lambson Limited社製、Speedcure CPTX)、2-イソプロピルキサントン(Lambson Limited社製、Speedcure ITX)、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン(Lambson Limited社製、Speedcure DETX)、2,4-ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系化合物;2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-ヒドロキシアントラキノン(東京化成工業社製、2-Hydroxyanthraquinone)、2,6-ジヒドロキシアントラキノン(東京化成工業社製、Anthraflavic Acid)、2-ヒドロキシメチルアントラキノン(純正化学社製、2-(Hydroxymethyl)anthraquinone)等のアントラキノン系化合物;およびベンジル系化合物が含まれる。
【0047】
光増感剤の吸収波長は、照射する活性エネルギー線の種類に応じて適宜選択されるが、波長360nm以上に吸収波長を有することが好ましく、可視光領域に極大吸収波長を有することがより好ましく、波長360~430nmに極大吸収波長を有することがさらに好ましい。光増感剤が当該範囲に極大吸収波長を有すると、可視光の照射によって液晶シール剤を硬化させることが可能となる。
【0048】
波長360nm以上に吸収波長を有する光増感剤の例には、アルキルフェノン系化合物、アシルホスフィンオキサイド系化合物、チタノセン系化合物、オキシムエステル系化合物、チオキサントン系化合物、アントラキノン系化合物が含まれ、中でもチオキサントン系化合物が好ましい。
【0049】
なお、光増感剤の構造は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)と、NMR測定またはIR測定とを組み合わせることで特定できる。
【0050】
光増感剤の分子量は、例えば200以上5000以下が好ましい。分子量が200以上であると、光増感剤が液晶材料に溶出し難い。一方、分子量が5000以下であると、光増感剤と硬化性化合物や光塩基発生剤との相溶性が高まりやすく、液晶シール剤の硬化性が良好になりやすい。光増感剤の分子量は、230以上3000以下がより好ましく、230以上1500以下がさらに好ましい。
【0051】
光増感剤の分子量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC:High Performance Liquid Chromatography)で分析したときに検出されるメインピークの、分子構造の「相対分子質量」として求めることができる。
【0052】
具体的には、光増感剤をTHF(テトラヒドロフラン)に溶解させた試料液を調製し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)測定を行う。そして、検出されたピークの面積百分率(各ピークの面積の合計に対する比率)を求め、メインピークの有無を確認する。メインピークとは、各化合物に特徴的な検出波長(例えばチオキサントン系化合物であれば400nm)で検出された全ピークのうち、最も強度が大きいピーク(ピークの高さが最も高いピーク)をいう。検出されたメインピークのピーク頂点に対応する相対分子質量は、液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS:Liquid Chromatography Mass Spectrometry)により測定できる。
【0053】
光増感剤の量は、上述の光塩基発生剤の量100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。また、光増感剤の量は、液晶シール剤の総量に対して0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.1質量%以上1質量%以下がより好ましい。光増感剤の量が当該範囲であると、液晶シール剤の硬化性が良好になりやすい。一方で、光増感剤の量が上記範囲であれば、液晶の汚染が生じ難く、より高品質な液晶表示パネルが得られやすい。
【0054】
(4)硬化促進剤
硬化促進剤は、チオール基を有する化合物であり、上述のエポキシ系化合物の硬化を促進可能な化合物であればよい。液晶シール剤は、当該硬化促進剤を一種以上含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
【0055】
当該硬化促進剤が含むチオール基の数は、1つであってもよく、2つ以上であってもよく、2以上4以下がより好ましい。硬化促進剤が有するチオール基の数が当該範囲であると、液晶シール剤の硬化性がさらに良好になる。また特に、チオール基の数が4以下であると、得られる封止材の柔軟性が高まりやすい。
【0056】
また、当該硬化促進剤が有するチオール基は、1級であってもよく、2級であってもよく、3級であってもよい。また、1つの分子中に、これらが混在していてもよい。ただし、エポキシ基との反応性の観点で、チオール基は、1級チオールまたは2級チオールが好ましく、1級チオールが特に好ましい。硬化促進剤は、分子内のチオール基が全て2級アである2級チオール化合物を含んでいてもよいが、分子内のチオール基が全て1級チオールである1級チオール化合物を含むことが特に好ましい。
【0057】
1級チオール化合物の例には、ペンタエリスリトールトリプロパンチオール、1,2-エタンジチオール、1,3-プロパンジチオール、1,4-ブタンジチオール、2,3-ブタンジチオール、1,5-ペンタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,8-オクタンジチオール、1,10-デカンジチオール、1,3-ベンゼンジチオール、1,4-ベンゼンジチオール、4,4’-チオビスベンゼンチオール、4,4’-ビフェニルジチオール、1,5-ジメルカプトナフタレン、4,5-ビス(メルカプトメチル)-オルト-キシレン、1,3,5-ベンゼントリチオール、1,4-ブタンジオールビス(チオグリコレート)、ジチオエチスリトール、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオール、3,7-ジチア-1,9-ノナンジチオール、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド、エチレングリコールビス(メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトイソブチレート)、ブタンジオールビス(メルカプトアセテート)、ブタンジオールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ブタンジオールビス(3-メルカプトイソブチレート)、ペンタエリトリトールトリ(メルカプトアセテート)、ペンタエリトリトールトリ(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリトリトールトリ(3-メルカプトイソブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトイソブチレート)、トリメチロールエタン(メルカプトアセテート)、トリメチロールエタン(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタン(3-メルカプトイソブチレート)、トリメチロールプロパントリス(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトイソブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトイソブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトプロピルオキシ)ブタン、トリス[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)等が含まれる。
【0058】
また、2級チオール化合物の例には、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス(2-(3-メルカプトブチリルオキシ)エチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン等が含まれる。
【0059】
上記硬化促進剤の量は、上記硬化性化合物100質量部に対して、0.5質量部以上50質量部以下であることが好ましく、5質量部以上30質量部以下がより好ましい。また、硬化促進剤の量は、液晶シール剤の総量に対して0.1質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上20質量%以下がより好ましい。硬化促進剤の量が当該範囲であると、エポキシ系化合物の硬化を促進しやすく、液晶シール剤の硬化性が良好になりやすい。一方、硬化促進剤の量が当該範囲であると、液晶の汚染が生じ難く、より高品質な液晶表示パネルが得られやすい。
【0060】
(5)その他
液晶シール剤は、本発明の目的および効果を損なわない範囲で、上記以外の成分を含んでいてもよい。その例には、無機充填材や、コアシェル型粒子、シランカップリング剤、各種添加剤等が含まれる。
【0061】
無機充填剤の例には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸ジルコニウム、酸化鉄、酸化チタン、窒化チタン、上記以外のアルミナ、酸化亜鉛、酸化ケイ素(シリカ)、チタン酸カリウム、カオリン、タルク、ガラスビーズ、セリサイト活性白土、ベントナイト、窒化アルミニウム、および窒化ケイ素等が含まれる。これらのうち、入手容易性や安定性等の観点で、シリカ、アルミナ、またはタルクが好ましい。
【0062】
無機充填剤の形状は、球状、板状、針状等、定形状であってもよく、非定形状であってもよい。無機充填剤が球状である場合、無機充填剤の平均一次粒子径は、1.5μm以下が好ましい。また、無機充填剤の比表面積は、0.5m/g以上20m/g以下が好ましい。無機充填剤の平均一次粒子径は、JIS Z8825(2013年)に記載のレーザー回折法により測定することができる。充填剤の比表面積は、JIS Z8830(2013年)に記載のBET法により測定される。
【0063】
無機充填剤の量は、液晶シール剤の総量に対して、10質量%以上が好ましく、13質量%以上30質量%以下がより好ましい。無機充填剤の含有量が多いと、得られる封止材の透湿性が低くなりやすい。ただし、過度に多くなると、液晶シール剤の塗布性が低下するため、上記範囲が好ましい。
【0064】
一方、コアシェル型微粒子は、所望の物性を有するコアと、当該コアを覆うシェル部とを有する微粒子である。シェル部によって、他の成分との相溶性を高めたり、他の成分と一部反応させたりすることが可能である。
【0065】
コアシェル型微粒子の例には、共役ジエン系ゴム及びシリコーンゴム等を含む弾性のコアと、(メタ)アクリレートや、ビニルモノマー、エポキシモノマー等の重合体からなるシェル部と、を有する有機微粒子が含まれる。
【0066】
また、コアシェル型微粒子の別の例には、無機粒子からなるコアと、コアを覆うポリマー層からなるシェル部とを有し、表面に炭素-炭素二重結合を含む官能基を有する微粒子も含まれる。当該コアシェル型微粒子が有する炭素-炭素二重結合を含む官能基の例には、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基等が含まれる。なお、当該コアシェル型微粒子におけるコアの例には、上記無機充填剤と同様の粒子が含まれる。中でも、熱安定性に優れる観点から、シリカ粒子であることが好ましい。
【0067】
液晶シール剤は、コアシェル型微粒子を一種のみ含んでもよく、二種以上含んでもよい。コアシェル型微粒子の平均一次粒子径は、0.1~1.0μmが好ましく、0.2~0.8μmがより好ましく、0.3~0.5μmがさらに好ましい。コアシェル型微粒子の平均一次粒子径は、顕微法により特定できる。具体的には電子顕微鏡の画像解析により測定することができる。より具体的には、液晶シール剤について画像解析し、粒子径が1μm以下の有機フィラーを50個選別して、粒子径を測定した場合の平均値を平均粒子径とする。
【0068】
コアシェル型微粒子の量は、液晶シール剤の総量に対して、1質量%以上12質量%以下が好ましく、5質量%以上10質量%以下がより好ましい。コアシェル型微粒子の含有量が当該範囲であると、得られる封止材の物性を所望の範囲にさらに調整しやすくなる。
【0069】
また、液晶シール剤は、必要に応じてシランカップリング剤や、各種添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0070】
シランカップリング剤の例には、ビニルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が含まれる。
【0071】
シランカップリング剤の量は、液晶シール剤の総量に対して0.5質量%以上20質量%以下が好ましい。シランカップリング剤の含有量が当該範囲であると、得られる封止材と基板や配向膜との接着強度がさらに高まりやすい。
【0072】
また、各種添加剤の例には、イオントラップ剤、イオン交換剤、レベリング剤、顔料、染料、増感剤、可塑剤及び消泡剤等が含まれる。
【0073】
さらに、液晶シール剤は、液晶表示パネルのギャップを調整するためのスペーサー等を含んでいてもよい。
【0074】
各種添加剤の合計量は、液晶シール剤の総量に対して1質量%以上50質量%以下が好ましく、1質量%以上25質量%以下がより好ましい。各種添加剤の量が液晶シール剤の50質量%以下であると、液晶シール剤の粘度が過度に上昇し難く、液晶シール剤の安定性が損なわれにくい。
【0075】
なお、本発明の液晶シール剤は、上述のように加熱することなく硬化させることができる。したがって、一般的な熱硬化剤を含む必要がない。すなわち、本発明の液晶シール剤では、熱硬化剤(例えば潜在性熱硬化剤)の量が、液晶シール剤の質量に対して通常10質量%以下であり、5質量%以下が好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。
【0076】
(6)液晶シール剤の物性
本発明の液晶シール剤の、E型粘度計の25℃、2.5rpmにおける粘度は、200~450Pa・sが好ましく、250~400Pa・sがより好ましい。粘度が上記範囲にあると、液晶シール剤をディスペンサー等で塗布しやすくなる。
【0077】
ここで、液晶シール剤は、上述のように液晶シール剤として用いることができる。液晶シール剤は、上記液晶シール剤のみ含んでいてもよく、必要に応じて液晶シール剤とさらに他の成分とを混合したものであってもよい。
【0078】
当該液晶シール剤は、主に液晶表示パネルのシール剤として有用であるが、液晶表示パネル以外の表示素子、例えば有機EL素子やLED素子のシール剤としても有用である。
【0079】
2.液晶表示パネルおよびその製造方法
(液晶表示パネルの構造)
本発明の液晶表示パネルは、一対の基板と、前記一対の基板の間に配置された一対の配向膜と、前記一対の配向膜に挟み込まれた液晶層と、液晶層を封止するための封止材と、を含む。上記封止材が、上述の液晶シール剤の硬化物である。
【0080】
一対の基板は、いずれも透明基板である。透明基板の材質は、ガラス等の無機材料であってもよく、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォンおよびPMMA等のプラスチックであってもよい。各基板の表面には、それぞれマトリックス状のTFT、カラーフィルタ、ブラックマトリクス等が配置されていてもよい。
【0081】
また、各基板の内側(液晶層側)には、通常、配向膜が配置される。配向膜の種類は特に制限されず、公知の有機配向剤や無機配向剤からなる膜が含まれる。配向膜は、各基板の一方の面の略全てを覆うように、すなわち基板の一方の端部から他方の端部まで延在するように配向膜が配置されていてもよい。また、配向膜は、基板の一部領域のみを覆うように配置されていてもよく、配向膜の端部と基板の端部との間に間隙をあけて配置されていてもよい。
【0082】
さらに、液晶層は、上記配向膜の間に挟み込まれた液晶材料からなる層であればよく、液晶材料の種類等は特に限定されない。
封止材は、上記液晶層を囲むように配置された枠状の構造体である。本発明の液晶表示パネルでは、当該封止材が配向膜に挟み込まれるように配置されてもよい。
【0083】
(液晶表示パネルの製造方法)
液晶表示パネルは、本発明の液晶シール剤を用いて製造される。液晶表示パネルの製造方法には、一般に、液晶滴下工法と、液晶注入工法とがあるが、本発明の液晶表示パネルは、液晶滴下工法で製造される。
【0084】
当該液晶表示パネルの製造方法は、
1)配向膜が配置された基板を2枚準備する工程と、
2)一方の基板の配向膜が形成された面上に、上述の液晶シール剤を塗布し、枠状封止パターンを形成する工程と、
3)枠状封止パターンが未硬化の状態において、一方の基板の枠状封止パターンの内側、または他方の基板上に液晶を滴下する工程と、
4)一方の基板および他方の基板を、液晶を介して重ね合わせる工程と、
5)枠状封止パターンに活性エネルギー線を照射して、これを硬化させる工程と、
を含む。
【0085】
2)の工程において、液晶シール剤を塗付する領域は、所望の液晶表示パネルの構造に応じて適宜選択される。液晶シール剤の塗布方法は、所望の幅で液晶シール剤を塗布可能であれば特に制限されないが、例えばディスペンサ等によって塗布可能である。
【0086】
一方、3)の工程において、枠状封止パターンが未硬化の状態とは、液晶シール剤の硬化反応がゲル化点までは進行していない状態を意味する。また、3)の工程で他方の基板上に液晶を滴下する場合、4)の工程で2枚の基板を重ね合わせた際に、液晶が枠状封止パターンの内側に収まるように、液晶を滴下する。
【0087】
5)の工程では、活性光線を照射することで、上記枠状封止パターンを硬化させる。照射する活性エネルギー線は、上述の液晶シール剤中の光増感剤の種類等に応じて適宜選択されるが、可視光領域の光が好ましく、例えば波長370~450nmの光であることが好ましい。上記波長の光は、液晶材料や駆動電極に与えるダメージが比較的少ない。活性光線エネルギーの照射は、紫外線や可視光を発する公知の光源を使用できる。可視光を照射する場合、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、蛍光灯等を使用できる。
【0088】
活性エネルギー線の照射量は、硬化性化合物が十分に硬化可能なエネルギーであればよい。照射時間は、液晶シール剤の組成にもよるが、例えば30秒~10分程度である。
【実施例0089】
以下、実施例を参照して本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲は実施例の記載に限定されない。
【0090】
1.材料の準備
(硬化性化合物)
・ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製、YL983U)
・アクリル変性エポキシ化合物(KSM社製、BAEM-50)
・ビスフェノールA型ジアクリレートエステル(アクリル系化合物、ダイセル・オルネクス社製、Ebecryl 3700)
【0091】
(光塩基発生剤)
・1,2-ジシクロヘキシル-4,4,5,5-テトラメチルビグアニジウム=n-ブチルトリフェニルボラート(富士フィルム和光純薬社製、WPBG300)
・N,N-ジエチルカルバミン酸9-アントリルメチル(富士フィルム和光純薬社製、WPBG018)
【0092】
(光増感剤)
・2,4-ジエチルチオキサントン(サートマー社、SpeedCureDETX)
【0093】
(硬化促進剤)
・1級チオール化合物(三井化学社製、GSH)
・ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)(カレンズ社製 PE1(4官能2級チオール化合物))
【0094】
(無機充填剤)
・シリカ粒子(SO-C1、アドマテックス社製)
【0095】
(コアシェル型微粒子)
・微粒子ポリマー(F351、アイカ工業社製)
【0096】
(シランカップリング剤)
・シランカップリング剤(KBM-403、信越化学社製)
【0097】
2.シール剤の調製
(実施例1~6、および比較例1~4)
表1に示す質量比で、硬化性化合物、光塩基発生剤、光増感剤、硬化促進剤、およびその他の成分を3本ロールにて混合し、シール剤を得た。
【0098】
3.評価
得られた液晶シール剤の硬化物について、以下の方法により、接着強度、透湿量(耐湿性)、および液晶汚染性を評価した。結果を表1に示す。
【0099】
(接着強度)
得られた液晶シール剤を、ディスペンサー(ショットマスター、武蔵エンジニアリング社製)を用いて、透明電極と配向膜が予め形成された40mm×45mmガラス基板(RT-DM88-PIN、EHC社製)上に、38mm×38mmの四角形の枠状封止パターン(断面積2500μm)を形成した。
次いで、枠状封止パターンを形成したガラス基板に対して垂直になるように、対になるガラス基板を減圧下で貼り合せた後、大気開放して貼り合わせた。そして、貼り合わせた2枚のガラス基板を1分間遮光ボックス内で保持した後、3000mJ/cmの可視光を含む光(波長370~450nmの光)を照射し、試験片を得た。
得られた試験片の枠状封止パターンの隅から4.5mm外側の部分を、押込み試験機(Model210、インテスコ社製)を用いて、5mm/分の速度で垂直に押込んだ。この操作を、10枚のガラス基板について行い(n=10)、ガラス基板が割れた枚数をカウントした。そして、以下の基準で接着強度を評価した。
◎:ガラス基板が割れた枚数が10枚
○:ガラス基板が割れた枚数が6~9枚
△:ガラス基板が割れた枚数が1~5枚
×:ガラス基板が割れた枚数が0枚
ガラス基板が割れた枚数が多いほど、接着強度が高いと判断できる。△以上であれば実用上問題ないレベルであり、良好と判断した。
【0100】
(耐湿性)
得られた液晶シール剤を、離型紙の上にアプリケーターを用いて100μmの厚みで塗布した。その後、塗布した液晶シール剤を窒素置換用の容器に入れて窒素パージを5分実施したのち、3000mJ/cm(波長365nmセンサーで校正した光)の光を照射して、硬化フィルムを作製した。
【0101】
吸湿剤として塩化カルシウム(無水)を封入したアルミカップに硬化フィルムを2枚乗せ、さらにアルミリングを乗せてねじ締をしたのち、アルミカップ全体の初期の重量を計測した。その後、60℃90%Rhに設定した恒温槽にアルミカップを入れて、24時間経過した後、アルミカップを取り出して重量を計測した。得られた重量値を、以下の計算式に代入して、透湿量を算出した。
計算式:
透湿量=(試験後重量-試験前重量)×フィルム厚み/(フィルム面積×100)
そして、以下の基準に基づいて評価した。
◎:透湿量が80g/m以下
○:透湿量が80g/m超100g/m以下
×:透湿量が100g/m
〇以上であれば実用上問題ないレベルであり、良好と判断した。
【0102】
(液晶汚染性)
実施例および比較例で得られた液晶シール剤を、ディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製、ショットマスター)を用いて、透明電極と配向膜とが形成された40mm×45mmのガラス基板(イーエッチシー社製、RT-DM88-PIN)上に、35mm×35mmの四角形のメインシールパターン(断面積3500μm)と、その外周に38mm×38mmの四角形のサブシールパターンとを形成した。
次いで、得ようとする液晶表示パネルの液晶の内容量に相当する量の、液晶材料(メルク社製、MLC-7026-100)をメインシールの枠内にディスペンサーを用いて精密に滴下した後、5分間静置した。そして、上記ガラス基板と、上記ガラス基板と対になるガラス基板を、4Paの減圧下で貼り合わせた後、大気圧に開放した。貼り合わせた2枚のガラス基板を1分間、遮光ボックス内で保持した後、メインシールを36mm×36mmの四角形のブラックマトリックスを形成した基板でマスクし、この状態で、波長370~450nmの光を1J/cmでガラス基板に照射し、メインシールを硬化させて液晶セルを得た。そして、得られた液晶セルの両面に偏光フィルムを貼り付けて、液晶表示パネルを得た。
得られた液晶パネルの表示特性について、以下の基準で評価した。
◎:液晶表示パネルのメインシール際まで液晶が配向されて色ムラや輝点がない
○:メインシール際の近傍に1mm未満の範囲にわたり色ムラあるいは輝点が発生する
×:メインシール際の近傍に1mm以上の範囲にわたり色ムラあるいは輝点が発生する
〇以上であれば実用上問題ないレベルであり、良好と判断した。
【0103】
【表1】
【0104】
上記表1に示すように、硬化性化合物、グアニジン系化合物を生成する光塩基発生剤、光増感剤、およびチオール基を有する硬化促進剤を含むシール剤では、液晶汚染が少なく、光の照射のみで硬化させることが可能であった。また当該液晶シール剤が得られる封止材は、基板との接着強度が高く、耐湿性が良好であった(実施例1~6)。
【0105】
これに対し、グアニジン系化合物を生成しない光塩基発生剤を使用した場合には、得られた封止材の接着強度が低く、耐湿性が十分でなかった(比較例1)。当該光塩基発生剤によって生成した化合物(アミン)は、エポキシ系化合物のエポキシ基と十分に反応できなかったと考えられる。また、グアニジン系化合物を生成する光塩基発生剤を使用したとしても、硬化促進剤を使用しなかった場合には、得られた封止材の基板との接着強度が低く、耐湿性が十分でなかった(比較例2)。当該比較例2の結果から、光塩基発生剤によってグアニジン化合物が生成しても、エポキシ系化合物とグアニジン系化合物との反応だけでは、所望の接着強度や耐湿性が得られないことが示唆される。
【0106】
また、グアニジン系化合物を生成する光塩基発生剤、および硬化促進剤を使用したとしても、光増感剤を使用しなかった場合には、得られた封止材の基板との接着強度が低く、耐湿性が十分でなかった(比較例3)。この場合、光増感剤がないと、光塩基発生剤から、グアニジン系化合物が十分に生成しなかったと考えられる。
【0107】
さらに、グアニジン系化合物を生成する塩基発生剤を使用したとしても、光増感剤を使用せず、さらに2級チオール化合物を硬化促進剤として用いた場合には、液晶汚染が生じた(比較例4)。上述のように、光増感剤がないと、光塩基発生剤から、グアニジン系化合物が十分に生成しなかったと考えられ、さらに2級チオール化合物では、反応性が十分でなく、未硬化成分が多く生じたと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明によれば、液晶を汚染することなく、活性エネルギー線の照射のみによって硬化させることが可能であり、かつ基板との接着強度が高く、かつ耐湿性が高い封止材を形成可能な液晶シール剤等が得られる。したがって、液晶表示パネルを低消費エネルギーで製造することが可能である。