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特開2025-22029コイル疵検査システム及びコイル疵検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025022029
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】コイル疵検査システム及びコイル疵検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/952 20060101AFI20250206BHJP
   G01N 21/88 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
G01N21/952
G01N21/88 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023126237
(22)【出願日】2023-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼▲崎▼ あかり
(72)【発明者】
【氏名】山田 清士朗
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA37
2G051AB02
2G051BA20
2G051BB01
2G051BB11
2G051CA03
2G051CA04
2G051CA06
2G051EA20
(57)【要約】
【課題】製造現場における作業者の安全上のリスクを排除しつつ、金属帯コイルの底面に照度ムラが生じることなく、金属帯コイルの底面に生じた疵を高い検出率で検出することができる、コイル疵検査システム及びコイル疵検査方法を提供する。
【解決手段】コイル疵検査システム1は、金属帯をコイル状に巻き取った金属帯コイルCの底面かの疵を検出するコイル疵検査システムであって、吊り上げられた金属帯コイルCよりも上方の位置に設置された光源10と、吊り上げられた金属帯コイルCよりも下方の位置に設置され、金属帯コイルCの底面Caを撮像する撮像装置2と、撮像装置2で撮像した撮像画像Iに対し疵fの検出を行う画像診断装置4とを備える。撮像装置2の下方あるいは撮像装置2に対して水平で隣接する位置には、光源10からの照明光10aを反射させて金属帯コイルCの底面Caに対して均一の照度で照射させる拡散板7が設置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属帯をコイル状に巻き取った金属帯コイルの底面の疵を検出するコイル疵検査システムであって、
吊り上げられた前記金属帯コイルよりも上方の位置に設置された光源と、
吊り上げられた前記金属帯コイルよりも下方の位置に設置され、前記金属帯コイルの底面を撮像する撮像装置と、
該撮像装置で撮像した撮像画像に対し疵の検出を行う画像診断装置とを備え、
前記撮像装置の下方あるいは前記撮像装置に対して水平で隣接する位置に、前記光源からの照明光を反射させて前記金属帯コイルの底面に対して均一の照度で照射させる拡散板を設置したことを特徴とするコイル疵検査システム。
【請求項2】
前記画像診断装置は、前記金属帯コイルの外径情報及び前記金属帯コイルの位置情報に基づいて前記撮像装置による撮像範囲における前記金属帯コイルの底面の位置を算出し、算出した前記撮像範囲における前記金属帯コイルの底面の位置に基づいて前記撮像画像における画像判定範囲を決定し、決定した前記画像判定範囲の画像に対し疵の検出を行うことを特徴とする請求項1に記載のコイル疵検査システム。
【請求項3】
前記画像診断装置は、決定した前記画像判定範囲の画像を複数の画像に分割し、分割された前記複数の画像のそれぞれに対して画像判定を行って疵を検知し、さらに、画像判定を行った前記複数の画像のそれぞれを再結合した再結合画像に対して疵の検出を行うことを特徴とする請求項2に記載のコイル疵検査システム。
【請求項4】
金属帯をコイル状に巻き取った金属帯コイルの底面の疵を検出するコイル疵検査方法であって、
前記金属帯コイルの底面を、吊り上げられた前記金属帯コイルよりも下方の位置に設置された撮像装置が撮像する撮像ステップと、
該撮像ステップで撮像した撮像画像に対し画像診断装置が疵の検出を行う画像診断ステップとを含み、
前記撮像ステップでは、吊り上げられた前記金属帯コイルよりも上方の位置に設置された光源からの照明光を、前記撮像装置の下方あるいは前記撮像装置に対して水平で隣接する位置に設置された拡散板により反射させて前記金属帯コイルの底面に対して均一の照度で照射させた前記金属帯コイルの底面を前記撮像装置が撮像することを特徴とするコイル疵検査方法。
【請求項5】
前記画像診断ステップは、前記画像診断装置が、前記金属帯コイルの外径情報及び前記金属帯コイルの位置情報に基づいて前記撮像装置による撮像範囲における金属帯コイルの底面の位置を算出し、算出した前記撮像範囲における前記金属帯コイルの底面の位置に基づいて前記撮像画像における画像判定範囲を決定する画像判定範囲決定ステップと、前記画像診断装置が、前記画像判定範囲決定ステップで決定した前記画像判定範囲の画像に対し疵の検出を行う疵検出ステップとを含むことを特徴とする請求項4に記載のコイル疵検査方法。
【請求項6】
前記画像診断ステップにおける前記疵検出ステップでは、前記画像診断装置が、前記画像判定範囲決定ステップで決定した前記画像判定範囲の画像を複数の画像に分割し、分割された前記複数の画像のそれぞれに対して画像判定を行って疵を検知し、さらに、画像判定を行った前記複数の画像のそれぞれを再結合した再結合画像に対して疵の検出を行うことを特徴とする請求項5に記載のコイル疵検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属帯をコイル状に巻き取った金属帯コイルの底面の疵を検出するコイル疵検査システム及びコイル疵検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、金属帯の製造ライン、例えば、冷間圧延ラインや熱間圧延ラインでは、金属帯がコイル状に巻き取られた形で出荷される。製造されたコイル、すなわち金属帯をコイル状に巻き取った金属帯コイルは、コイル置台の上に載せられるが、コイル置台に異物が付着していたり、あるいは設備不具合が生じた場合には、コイル置台と接している金属帯コイルの底面に疵が生じてしまう。一度、コイル置台に異物が付着したり、あるいは設備不具合が生じると、金属帯コイルの底面に疵が連続して発生し続けてしまうため、金属帯コイルの底面に存在する疵を正しく検出し、作業者に通知することが非常に重要である。
【0003】
ここで、鋼板の表面欠陥を検出する鋼板の欠陥検査装置として、従来、例えば、特許文献1に示す鋼板の欠陥検査装置が提案されている。
特許文献1に示す鋼板の欠陥検査装置は、光源から鋼板の表面に照明光を照射し、照明光が照射された鋼板の表面画像を撮像装置により撮影し、表面画像の輝度値に基づいて鋼板の表面欠陥を検出するものである。そして、鋼板の欠陥検査装置は、鋼板の光沢度を測定する光沢度計と、光沢度計によって測定された鋼板の光沢度に応じて光源及び撮像装置の少なくとも一方の位置及び/又は角度を調整する制御装置とを備えている。
【0004】
この鋼板の欠陥検査装置によれば、鋼板の品種がGA鋼板とGI鋼板のように表面性状が大きく変わるような変化をした場合であっても表面欠陥を精度よく検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-138900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示す鋼板の欠陥検査装置は、走行する鋼板の表面欠陥を検査する装置であり、コイル置台に置かれたような金属帯コイルの底面に生じた疵を検出するのに適していない。
一方、金属帯コイルの底面の疵を検出するに際し、クレーンで金属帯を吊り上げた状態で、下方から点検者が金属帯コイルの底面を確認する方法が考えられる。しかし、この方法では、吊り具の落下等といった安全上のリスクがある。
【0007】
また、安全上のリスクを回避するために、クレーンで金属帯を吊り上げた状態で、下方から撮像装置によって金属帯コイルの底面を撮像し、撮像された撮像画像に対して画像診断装置により疵の検出を行う方法も考えられる。この場合、安全上のリスクはないが、光源からの照明光による金属帯コイルの底面に対する照度が不足し、金属帯コイルの底面が暗く映ってしまう。このため、金属帯コイルの底面を撮像した撮像画像に対して画像診断装置による疵の検出が困難になってしまう課題がある。この課題に対し、金属帯コイルの底面に対して下方から照明光を照射することが考えられる。しかし、この方法では、金属帯の表面性状によっては、金属帯コイルの底面に照度ムラが生じてしまうため、同じく金属帯コイルの底面を撮像した撮像画像に対して画像診断装置による疵の検出が困難になってしまう課題がある。
【0008】
従って、本発明はこれら従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、製造現場における作業者の安全上のリスクを排除しつつ、金属帯コイルの底面に照度ムラが生じることなく、金属帯コイルの底面に生じた疵を高い検出率で検出することができる、コイル疵検査システム及びコイル疵検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るコイル疵検査システムは、 金属帯をコイル状に巻き取った金属帯コイルの底面の疵を検出するコイル疵検査システムであって、吊り上げられた前記金属帯コイルよりも上方の位置に設置された光源と、吊り上げられた前記金属帯コイルよりも下方の位置に設置され、前記金属帯コイルの底面を撮像する撮像装置と、該撮像装置で撮像した撮像画像に対し疵の検出を行う画像診断装置とを備え、前記撮像装置の下方あるいは前記撮像装置に対して水平で隣接する位置に、前記光源からの照明光を反射させて前記金属帯コイルの底面に対して均一の照度で照射させる拡散板を設置したことを要旨とする。
【0010】
また、本発明の別の態様に係るコイル疵検査方法は、金属帯をコイル状に巻き取った金属帯コイルの底面の疵を検出するコイル疵検査方法であって、前記金属帯コイルの底面を、吊り上げられた前記金属帯コイルよりも下方の位置に設置された撮像装置が撮像する撮像ステップと、該撮像ステップで撮像した撮像画像に対し画像診断装置が疵の検出を行う画像診断ステップとを含み、前記撮像ステップでは、吊り上げられた前記金属帯コイルよりも上方の位置に設置された光源からの照明光を、前記撮像装置の下方あるいは前記撮像装置に対して水平で隣接する位置に設置された拡散板により反射させて前記金属帯コイルの底面に対して均一の照度で照射させた前記金属帯コイルの底面を前記撮像装置が撮像することを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るコイル疵検査システム及びコイル疵検査方法によれば、製造現場における作業者の安全上のリスクを排除しつつ、金属帯コイルの底面に照度ムラが生じることなく、金属帯コイルの底面に生じた疵を高い検出率で検出することができる、コイル疵検査システム及びコイル疵検査方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係るコイル疵検査システムの概略構成を示す図である。
図2図1に示すコイル疵検査システムにおける処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図3図2に示すフローチャートにおけるステップS2(画像診断ステップ)の処理の詳細な流れを説明するためのフローチャートである。
図4図3に示すフローチャートにおけるステップS23(疵検出ステップ)の処理の詳細な流れを説明するためのフローチャートである。
図5図1に示すコイル疵検査システムにおいて、撮像装置が撮像した金属帯コイルの底面の撮像画像を示す図である。
図6】第1参考例に係るコイル疵検査システムの概略構成を示す図である。
図7図6に示す第1参考例に係るコイル疵検査システムにおいて、撮像装置が撮像した金属帯コイルの底面の撮像画像を示す図である。
図8】第2参考例に係るコイル疵検査システムの概略構成を示す図である。
図9図8に示す第2参考例に係るコイル疵検査システムにおいて、撮像装置が撮像した金属帯コイルの底面の撮像画像を示す図である。
図10】画像診断装置が決定した撮像画像(撮像範囲)における画像判定範囲について説明するもので、(a)は金属帯コイルの底面が大きい場合の画像判定範囲について説明する図、(b)は金属帯コイルの底面が小さい場合の画像判定範囲について説明する図である。
図11】画像診断装置が撮像画像(撮像範囲)全体を画像判定範囲とした場合の画像判定範囲について説明するもので、(a)は金属帯コイルの底面が大きい場合の画像判定範囲について説明する図、(b)は金属帯コイルの底面が小さい場合の画像判定範囲について説明する図である。
図12図4に示すフローチャートにおけるステップS23(疵検出ステップ)の処理の詳細な流れを説明するため説明図であり、(a)は画像診断装置が画像判定範囲の画像を取得した状態の説明図、(b)は画像診断装置が画像判定範囲の画像を複数の画像に分割した状態の説明図、(c)は画像診断装置が分割された複数の画像のそれぞれに対して画像判定を行って疵を検知した状態の説明図、(d)は画像診断装置が画像判定を行った複数の画像のそれぞれを再結合して疵の検出を行った状態の説明図である。
図13】画像診断装置が画像判定範囲の画像を複数の画像に分割せずに疵の検出を行う場合の処理の詳細な流れを説明するため説明図であり、(a)は画像診断装置が画像判定範囲の画像を取得した状態の説明図、(b)は画像診断装置が画像判定範囲の画像を圧縮した圧縮画像の説明図、(c)は画像診断装置が圧縮画像に対して画像判定を行って疵を検知した状態の説明図、(d)は画像診断装置が画像判定を行った圧縮画像に対し疵の検出を行った状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
また、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0014】
図1には、本発明の一実施形態に係るコイル疵検査システムの概略構成が示されている。
図1に示すコイル疵検査システム1は、金属帯の製造ラインである冷間圧延ラインにおいて、金属帯がコイル状に巻き取られた金属帯コイルCの底面Caの疵f(図12参照)を検出するものである。
【0015】
製造された金属帯コイルCは、コイル置台(図示せず)の上に載せられるが、コイル置台に異物が付着していたり、あるいは設備不具合が生じた場合には、コイル置台と接している金属帯コイルCの底面Caに疵が生じてしまう。一度、コイル置台に異物が付着したり、あるいは設備不具合が生じると、金属帯コイルCの底面Caに疵fが連続して発生し続けてしまうため、金属帯コイルCの底面Caに存在する疵fを正しく検出し、作業者に通知することが非常に重要である。
【0016】
そこで、本実施形態にあっては、コイル置台から出荷に至るまでのクレーン(図示せず)による搬送途中において、コイル疵検査システム1により、金属帯がコイル状に巻き取られた金属帯コイルCの底面Caの疵fを検出するようにしている。
コイル疵検査システム1は、撮像装置2、撮像装置制御装置3、画像診断装置4、コイル情報PC5、表示装置6、及び拡散板7を備えている。
【0017】
撮像装置2は、金属帯コイルCがクレーン(図示せず)の吊り具11によって吊り上げられたコイル置台からの搬送経路の途中の位置において、床F上に設置される。つまり、撮像装置2は、吊り上げられた金属帯コイルCの下方(真下)に設置され、金属帯コイルCの底面Caを下方から撮像する。撮像装置2は、CCDカメラやCMOSカメラ等の撮像装置である。
【0018】
ここで、撮像装置2による金属帯コイルCの底面Caを撮像するには、金属帯コイルCの底面Caを照明光によって照射して明るくする必要がある。
そのため、本実施形態にあっては、工場内に設置された複数の光源(場内照明)10からの照明光10aを金属帯コイルCの底面Caに照射するようにしている。各光源10は、ストロボ光源、LED光源、メタルハイランドランプ等の光源により構成される。
【0019】
ここで、各光源10は、図1に示すように、吊り上げられた金属帯コイルCよりも上方の位置に設置され、各光源10からの照明光10aは金属帯コイルCの底面Caに照射されづらい。
このため、図6に示す第1参考例に係るコイル疵検査システム100のように、吊り上げられた金属帯コイルCよりも上方の位置に設置された複数の光源10から照明光10aを金属帯コイルCの底面Caに照射するだけでは、その照明光10aの照度が小さく、当該底面Caは暗くなる。このときの撮像装置2が撮像した金属帯コイルCの底面Caの撮像画像Iは図7に示すように照度不足で暗くなり、金属帯コイルCの底面Caに生じた疵を検出するのが困難となる。
【0020】
これに対して、図8に示す第2参考例に係るコイル疵検査システムのように、吊り上げられた金属帯コイルCの底面Caよりも下方の位置に設置された光源10から照明光10aを金属帯コイルCの底面Caに直接照射するようにし、当該底面Caを明るくする方法も考えられる。しかしながら、この方法で金属帯コイルCの底面Caを明るく照らした場合、金属帯の表面性状によっては、金属帯コイルCの底面Caに照度ムラが生じてしまう。このときの撮像装置2が撮像した金属帯コイルCの底面Caの撮像画像Iは図9に示すようになる。このように、金属帯コイルCの底面Caに照度ムラが生じてしまうため、金属帯コイルCの底面Caに生じた疵を検出するのが困難となる。
【0021】
一方、本実施形態に係るコイル疵検査システム1にあっては、図1に示すように、撮像装置2の下方の位置に、吊り上げられた金属帯コイルCよりも上方の位置に設置された複数の光源(場内照明)10からの照明光10aを反射させて金属帯コイルCの底面Caに対して均一の照度で照射させる拡散板7を設置している。具体的に述べると、金属帯コイルCがクレーン(図示せず)の吊り具11によって吊り上げられたコイル置台からの搬送経路の途中の位置において、床F上に拡散板7を設置し、その拡散板7の上に撮像装置2を設置している。
【0022】
ここで、「金属帯コイルCの底面Ca」は、図1に示すように、金属帯コイルCの底側のコイル全周に対して1/6程度の長さの円弧面である。また、「均一の照度」とは、金属帯コイルCの底面Caにおける照明光10aの照度が底面Ca全体にわたってほぼ等しくなっていることをいう。例えば、「均一の照度」というためには、照明光10aの照度が底面Caにおいて所定の照度(100ルクス)に対して±50ルクスの範囲内に収まればよい。
【0023】
拡散板7は、均一な照度で照明光10aを反射させる必要があるため、表面は鏡面ではなく平坦な粗面で、色は光沢のない白色が理想である。拡散板7の大きさ及び形状は、撮像する金属帯コイルCの形状によるが、例えば、1.5~2.0m×2.0~3.0m程度の長方形である。
光源10からの照明光10aは拡散板7によって反射され、金属帯コイルCの底面Caに対して均一の照度で照射される。このときの撮像装置2が撮像した金属帯コイルCの底面Caの撮像画像Iは図5に示すようになる。このように、光源10からの照明光10aを拡散板7によって反射させ、金属帯コイルCの底面Caに対して均一の照度で照射させることで、金属帯コイルCの底面Caに照度ムラが生じることなく、金属帯コイルCの底面Caを明るくすることができ、金属帯コイルCの底面Caに生じた疵を検出するのを容易なものとすることができる。
【0024】
また、コイル疵検査システム1の撮像装置制御装置3は、撮像装置2が金属帯コイルCの底面Caの撮像動作を開始してから終了にいたるまでの撮像装置2の動作を制御するものであり、演算処理機能を有するコンピュータによって構成される。
また、画像診断装置4は、撮像装置2で撮像した撮像画像Iに対し疵fの検出を行うものである。画像診断装置4は、疵検出機能をコンピュータソフトウェア上でプログラムを実行することで実現するための演算処理機能を有するコンピュータシステムである。そして、このコンピュータシステムは、ROM,RAM,CPU等を備えて構成され、ROM等に予め記憶された各種専用のプログラムを実行することにより、前述した機能をソフトウェア上で実現する。
【0025】
撮像装置2で撮像した撮像画像Iのデータは、撮像装置制御装置3に入力される。そして、撮像装置制御装置3に入力された撮像画像Iのデータは、撮像装置制御装置3から画像診断装置4に対して出力される。
そして、画像診断装置4は、撮像画像Iのデータを取得してからその撮像画像Iでの疵fを検出する。
【0026】
画像診断装置4における疵fの検出について、具体的に述べると、画像診断装置4は、撮像画像Iのデータを取得した後、図10(a),(b)に示すように、その撮像画像I(撮像範囲IA)における画像判定範囲JAを決定する。
この撮像画像I(撮像範囲IA)における画像判定範囲JAの決定処理について述べると、画像診断装置4は、金属帯コイルCの外径情報及び金属帯コイルCの位置情報に基づいて撮像装置2による撮像範囲IAにおける金属帯コイルCの底面Caの位置を算出する。そして、画像診断装置4は、算出した撮像範囲IAにおける金属帯コイルCの底面Caの位置に基づいて撮像画像Iにおける画像判定範囲JAを決定する。
【0027】
金属帯コイルCの外径情報は、疵検出を行うときの金属帯コイルCの外径D(図1参照)の情報であり、画像診断装置4に接続されているコイル情報PC5から画像診断装置4に入力される。また、金属帯コイルCの位置情報は、図1において、金属帯コイルCの中心線CLのxy座標上の位置CL(x、y)、金属帯コイルCの中心線CLに沿う方向の幅、及び金属帯コイルCの中心線CLに沿う方向の幅の中心位置である。この金属帯コイルCの位置情報も、コイル情報PC5から画像診断装置4に入力される。コイル情報PC5には、金属帯の製造情報、製造条件、金属帯コイルCの形状情報、及び撮像装置2の設置位置、撮像範囲IAの情報等の情報が格納されている。
【0028】
このように、画像診断装置4が、金属帯コイルCの外径情報及び金属帯コイルCの位置情報に基づいて撮像装置2による撮像範囲IAにおける金属帯コイルCの底面Caの位置を算出し、算出した撮像範囲IAにおける金属帯コイルCの底面Caの位置に基づいて撮像画像I(撮像範囲IA)における画像判定範囲JAを決定する。この理由について以下に説明する。
【0029】
撮像装置2による撮像範囲IAは一定であるため、撮像画像Iに占める金属帯コイルCの底面Caの割合は金属帯コイルCの大きさによって異なる。このような場合において、撮像画像I(撮像範囲IA)全体を画像判定範囲JAとしたとすると、金属帯コイルCの底面Ca以外の範囲における画像情報を疵として誤検知してしまうことがある。図11には、画像診断装置4が撮像画像I(撮像範囲IA)全体を画像判定範囲JAとした場合が示されており、(a)には金属帯コイルCの底面Caが大きい場合の画像判定範囲JAが示され、(b)には金属帯コイルCの底面Caが小さい場合の画像判定範囲JAが示されている。図11(a)の場合、金属帯コイルCの底面Caの面積が大きいので、画像判定範囲JAの面積と金属帯コイルCの底面Caの面積との差が小さく、金属帯コイルCの底面Ca以外の範囲における画像情報を疵として誤検知してしまうおそれは比較的少ない。これに対して、図11(b)の場合、金属帯コイルCの底面Caの面積が小さいので、画像判定範囲JAの面積と金属帯コイルCの底面Caの面積との差が大きく、金属帯コイルCの底面Ca以外の範囲における画像情報を疵として誤検知してしまうおそれが多い。
【0030】
一方、本実施形態においては、画像診断装置4が、図10(a),(b)に示すように、金属帯コイルCの外径情報及び金属帯コイルCの位置情報に基づいて撮像装置2による撮像範囲IAにおける金属帯コイルCの底面Caの位置を算出し、算出した撮像範囲IAにおける金属帯コイルCの底面Caの位置に基づいて撮像画像I(撮像範囲IA)における画像判定範囲JAを決定する。これにより、画像判定範囲JAの面積と金属帯コイルCの底面Caの面積との差が小さくなり、金属帯コイルCの底面Ca以外の範囲における画像情報を疵として誤検知してしまう誤検知率を下げることができる。
【0031】
そして、画像診断装置4は、撮像画像I(撮像範囲IA)における画像判定範囲JAを決定した後、画像判定範囲JAの画像に対する疵fの検出を行う。
画像判定範囲JAの画像に対する疵fの検出処理について述べる。画像診断装置4は、図12(a),(b)に示すように、決定した画像判定範囲JAの画像を複数(本実施形態では4つ)の画像I~Iに分割する。そして、画像診断装置4は、図12(c)に示すように、分割された複数の画像I~Iのそれぞれに対して画像判定を行って疵fを検知する。さらに、画像診断装置4は、図12(d)に示すように、画像判定を行った複数の画像I~Iのそれぞれを再結合した再結合画像I(1+2+3+4)に対して疵fの検出を行う。このように、決定した画像判定範囲JAの画像を複数の画像I~Iに分割して疵fの検出処理を行う理由について以下に述べる。
【0032】
図13は、画像診断装置4が画像判定範囲JAの画像を複数の画像I~Iに分割せずに疵fの検出を行う場合の処理の詳細な流れを説明するため説明図である。
この場合、図13(a)に示すように、画像診断装置4が決定した撮像画像I(撮像範囲IA)における画像判定範囲JAの画像を取得する。この画像判定範囲JAの画像はデータ量が多いため、通常は、図13(b)に示すように、画像処理工程で画像判定範囲JAの画像を圧縮し、圧縮画像JApを得る。
【0033】
次いで、図13(c)に示すように、画像判定工程において、圧縮画像JApに対し画像判定を行って疵fを検知する。この時点で、圧縮画像JApは画像が粗いため、細かな疵fが検知できなくなってしまうことがある。図13(c)の場合、図13(a)に示す画像判定範囲JAの画像では疵fが3つあったにもかわららず、細かな疵fが検知できずに、2つの疵fを検知している。
【0034】
そして、図13(d)に示すように、最終判定工程において、画像判定を行った圧縮画像JApに対して疵fの検出を行う。図13(d)の場合、図13(c)で行った画像判定で疵fを2つ検知しているので、最終判定工程で2つの疵fを検出する。
このように、画像診断装置4が画像判定範囲JAの画像を複数の画像I~Iに分割せずに画像を圧縮して疵fの検出を行う場合、疵の検知率が低くなり、疵の誤検出率が高くなってしまう問題がある。
【0035】
これ対して、本実施形態のように、画像診断装置4が決定した画像判定範囲JAの画像を複数(本実施形態では4つ)の画像I~Iに分割し、分割された複数の画像I~Iのそれぞれに対して画像判定を行って疵fを検知し、画像判定を行った複数の画像I~Iのそれぞれを再結合した再結合画像I(1+2+3+4)に対して疵fの検出を行う。これにより、疵の検知率を上げることができ、疵の誤検出率を低くすることができる。図12(a)~(d)に示す例では、図12(a)に示す画像判定範囲JAの画像で疵fが3つあった場合に最終的に図12(d)において3つの疵fを検出している。
【0036】
そして、画像診断装置4は、疵fの検出結果を金属帯コイルCの情報や疵検出時刻などの情報とともに表示装置6に対して出力する。
表示装置6は、疵fの検出結果を金属帯コイルCの情報や疵検出時刻などの情報とともに表示する。作業者は、表示装置6に表示された疵fの検出結果、金属帯コイルCの情報、疵検出時刻などの情報を知ることができる。
【0037】
このように、本実施形態に係るコイル疵検査システム1によれば、吊り上げられた金属帯コイルCよりも上方の位置に設置された光源10と、吊り上げられた金属帯コイルCよりも下方の位置に設置され、金属帯コイルCの底面Caを撮像する撮像装置2と、撮像装置2で撮像した撮像画像Iに対し疵fの検出を行う画像診断装置4とを備えている。そして、撮像装置2の下方の位置には、光源10からの照明光10aを反射させて金属帯コイルCの底面Caに対して均一の照度で照射させる拡散板7が設置されている。
【0038】
これにより、金属帯コイルCの底面Caに照度ムラが生じることなく、金属帯コイルCの底面Caを明るくすることができ、金属帯コイルCの底面Caに生じた疵を検出するのを容易なものとすることができる。このため、金属帯コイルCの底面Caに生じた疵fを高い検出率で検出することができる。
なお、クレーン(図示せず)の吊り具11で金属帯コイルCを吊り上げた状態で、下方から撮像装置2によって金属帯コイルCの底面Caを撮像し、撮像された撮像画像Iに対して画像診断装置4により疵fの検出を行っているので、作業者が金属帯コイルCの下側に回り込む必要はなく、製造現場における作業者の安全上のリスクを排除できる。
【0039】
また、本実施形態に係るコイル疵検査システム1によれば、画像診断装置4は、金属帯コイルCの外径情報及び金属帯コイルCの位置情報に基づいて撮像装置2による撮像範囲IAにおける金属帯コイルCの底面Caの位置を算出し、算出した撮像範囲IAにおける金属帯コイルCの底面Caの位置に基づいて撮像画像Iにおける画像判定範囲JAを決定する。そして、画像診断装置4は、決定した画像判定範囲JAの画像に対し疵fの検出を行う。
【0040】
これにより、画像判定範囲JAの面積と金属帯コイルCの底面Caの面積との差が小さくなり、金属帯コイルCの底面Ca以外の範囲における画像情報を疵fとして誤検知してしまう誤検知率を下げることができる。
また、本実施形態に係るコイル疵検査システム1によれば、画像診断装置4は、決定した画像判定範囲JAの画像を複数の画像I~Iに分割し、分割された複数の画像I~Iのそれぞれに対して画像判定を行って疵fを検知し、さらに、画像判定を行った複数の画像I~Iのそれぞれを再結合した再結合画像I(1+2+3+4)に対して疵fの検出を行う。
【0041】
これにより、圧縮画像JApを用いることなく、疵fの検知率を上げることができ、疵fの誤検出率を低くすることができる。
次に、本実施形態に係るコイル疵検査方法を表すコイル疵検査システム1における処理の流れを図2に示すフローチャートを参照して説明する。
先ず、ステップS1において、コイル疵検査システム1の撮像装置2は、金属帯コイルCがクレーン(図示せず)の吊り具11によって吊り上げられたコイル置台からの搬送経路の途中の位置において、金属帯コイルCの底面Caを下方から撮像する(撮像ステップ)。
【0042】
このステップS1(撮像ステップ)では、吊り上げられた金属帯コイルCよりも上方の位置に設置された光源10からの照明光10aを、撮像装置2の下方の位置に設置された拡散板7により反射させて金属帯コイルCの底面Caに対して均一の照度で照射させた金属帯コイルCの底面Caを撮像装置2が撮像する。
ステップS1(撮像ステップ)で撮像した撮像画像I(図5参照)のデータは、撮像装置2から撮像装置制御装置3に送出される。
【0043】
次いで、ステップS2において、画像診断装置4は、ステップS1(撮像ステップ)で撮像した撮像画像Iに対し疵fの検出を行う(画像診断ステップ)。
ステップS2(画像診断ステップ)の具体的な処理について、図3を参照して説明する。
先ず、ステップS21において、画像診断装置4は、撮像装置制御装置3から撮像画像Iのデータを取得する(撮像画像取得ステップ)。
【0044】
次いで、ステップS22において、画像診断装置4は、図10(a),(b)に示すように、その撮像画像I(撮像範囲IA)における画像判定範囲JAを決定する(画像判定範囲決定ステップ)。
このステップS22(画像判定範囲決定ステップ)について具体的に述べると、画像診断装置4は、金属帯コイルCの外径情報及び金属帯コイルCの位置情報に基づいて撮像装置2による撮像範囲IAにおける金属帯コイルCの底面Caの位置を算出する。そして、画像診断装置4は、算出した撮像範囲IAにおける金属帯コイルCの底面Caの位置に基づいて撮像画像Iにおける画像判定範囲JAを決定する。
【0045】
金属帯コイルCの外径情報は、前述したように、疵検出を行うときの金属帯コイルCの外径D(図1参照)の情報であり、画像診断装置4に接続されているコイル情報PC5から画像診断装置4に入力される。また、金属帯コイルCの位置情報は、図1において、金属帯コイルCの中心線CLのxy座標上の位置CL(x、y)、金属帯コイルCの中心線CLに沿う方向の幅、及び金属帯コイルCの中心線CLに沿う方向の幅の中心位置である。この金属帯コイルCの位置情報も、コイル情報PC5から画像診断装置4に入力される。
【0046】
このように、ステップS22において、画像診断装置4が、金属帯コイルCの外径情報及び金属帯コイルCの位置情報に基づいて撮像装置2による撮像範囲IAにおける金属帯コイルCの底面Caの位置を算出し、算出した撮像範囲IAにおける金属帯コイルCの底面Caの位置に基づいて撮像画像I(撮像範囲IA)における画像判定範囲JAを決定する。これにより、前述したように、画像判定範囲JAの面積と金属帯コイルCの底面Caの面積との差が小さくなり、金属帯コイルCの底面Ca以外の範囲における画像情報を疵として誤検知してしまう誤検知率を下げることができる。
【0047】
次いで、ステップS23において、画像診断装置4は、決定した画像判定範囲JAの画像に対する疵fの検出を行う(疵検出ステップ)。
このステップS23(疵検出ステップ)での処理について図4を参照して詳細に説明する。
先ず、ステップS231において、画像診断装置4は、図12(a)に示すように、ステップS22(画像判定範囲決定ステップ)で決定した画像判定範囲JAの画像のデータを取得する。
【0048】
次いで、ステップS232において、画像診断装置4は、ステップS231で取得した画像判定範囲JAの画像を、図12(b)に示すように、複数(本実施形態では4つ)の画像I~Iに分割する。
次いで、ステップS233において、画像診断装置4は、図12(c)に示すように、分割された複数の画像I~Iのそれぞれに対して画像判定を行って疵fを検知する。
【0049】
次いで、ステップS234において、画像診断装置4は、図12(d)に示すように、画像判定を行った複数の画像I~Iのそれぞれを再結合した再結合画像I(1+2+3+4)に対して疵fの検出を行う。
このように、決定した画像判定範囲JAの画像を複数の画像I~Iに分割して疵fの検出処理を行うことにより、圧縮画像JApを用いることなく、疵の検知率を上げることができ、疵の誤検出率を低くすることができる。図12(a)~(d)に示す例では、図12(a)に示す画像判定範囲JAの画像で疵fが3つあった場合に最終的に図12(d)において3つの疵fを検出している。
【0050】
ステップS234での処理が終了したらステップS23が終了し、ステップS24に移行する。
ステップS24において、画像診断装置4は、疵fの検出結果を金属帯コイルCの情報や疵検出時刻などの情報とともに表示装置6に対して出力する。
ステップS24での処理が終了したらステップS2が終了し、ステップS3に移行する。
【0051】
そして、ステップS3において、表示装置6は、疵fの検出結果を金属帯コイルCの情報や疵検出時刻などの情報とともに表示する。作業者は、表示装置6に表示された疵fの検出結果、金属帯コイルCの情報、疵検出時刻などの情報を知ることができる。
このように、本実施形態に係るコイル疵検査方法によれば、
金属帯コイルCの底面Caを、吊り上げられた金属帯コイルCよりも下方の位置に設置された撮像装置2が撮像する撮像ステップ(ステップS1)と、撮像ステップ(ステップS1)で撮像した撮像画像Iに対し画像診断装置4が疵fの検出を行う画像診断ステップ(ステップS2)とを含んでいる。そして、撮像ステップ(ステップS1)では、吊り上げられた金属帯コイルCよりも上方の位置に設置された光源10からの照明光10aを、撮像装置2の下方の位置に設置された拡散板7により反射させて金属帯コイルCの底面Caに対して均一の照度で照射させた金属帯コイルCの底面Caを撮像装置2が撮像する。
【0052】
これにより、金属帯コイルCの底面Caに照度ムラが生じることなく、金属帯コイルCの底面Caを明るくすることができ、金属帯コイルCの底面Caに生じた疵fを検出するのを容易なものとすることができる。このため、金属帯コイルCの底面Caに生じた疵fを高い検出率で検出することができる。
なお、クレーン(図示せず)の吊り具11で金属帯コイルCを吊り上げた状態で、下方から撮像装置2によって金属帯コイルCの底面Caを撮像し、撮像された撮像画像Iに対して画像診断装置4により疵fの検出を行っているので、作業者が金属帯コイルCの下側に回り込む必要はなく、製造現場における作業者の安全上のリスクを排除できる。
【0053】
また、本実施形態に係るコイル疵検査方法によれば、画像診断ステップ(ステップS2)は、画像診断装置4が、金属帯コイルCの外径情報及び金属帯コイルCの位置情報に基づいて撮像装置2による撮像範囲IAにおける金属帯コイルCの底面Caの位置を算出し、算出した撮像範囲IAにおける金属帯コイルCの底面Caの位置に基づいて撮像画像Iにおける画像判定範囲JAを決定する画像判定範囲決定ステップ(ステップS22)を含む。また、画像診断ステップ(ステップS2)は、画像診断装置4が、画像判定範囲決定ステップ(ステップS22)で決定した画像判定範囲JAの画像に対し疵の検出を行う疵検出ステップ(ステップS23)を含む。
【0054】
これにより、画像判定範囲JAの面積と金属帯コイルCの底面Caの面積との差が小さくなり、金属帯コイルCの底面Ca以外の範囲における画像情報を疵fとして誤検知してしまう誤検知率を下げることができる。
また、本実施形態に係るコイル疵検査方法によれば、画像診断ステップ(ステップS2)における疵検出ステップ(ステップS23)では、画像診断装置4が、画像判定範囲決定ステップ(ステップS22)で決定した画像判定範囲JAの画像を複数の画像I~Iに分割する。また、疵検出ステップ(ステップS23)では、分割された複数の画像I~Iのそれぞれに対して画像判定を行って疵fを検知し、さらに、画像判定を行った複数の画像I~Iのそれぞれを再結合した再結合画像I(1+2+3+4)に対して疵fの検出を行う。
【0055】
これにより、圧縮画像JApを用いることなく、疵fの検知率を上げることができ、疵fの誤検出率を低くすることができる。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに種々の変更、改良を行うことができる。
例えば、コイル疵検査システム1は、冷間圧延ラインにおいて、金属帯がコイル状に巻き取られた金属帯コイルCの底面Caの疵fを検出する場合に限らず、冷間圧延ライン以外の他の金属帯の製造ライン、例えば、熱間圧延ラインにおいて、金属帯がコイル状に巻き取られた金属帯コイルCの底面Caの疵fを検出するようにしてもよい。
【0056】
また、拡散板7は、撮像装置2の下方の位置のみならず、撮像装置2に対して水平で隣接する位置に設置してもよい。このように設置された拡散板7によっても、光源10からの照明光10aを反射させて金属帯コイルCの底面Caに対して均一の照度で照射させることができる。
【符号の説明】
【0057】
1 コイル疵検査システム
2 撮像装置
3 撮像装置制御装置
4 画像診断装置
5 コイル情報PC
6 表示装置
7 拡散板
10 光源
10a 照明光
11 吊り具
C 金属帯コイル
Ca 底面
F 床
f 疵
I 撮像画像
IA 撮像範囲
JA 画像判定範囲
JAp 圧縮画像
~I 分割された画像
(1+2+3+4) 再結合画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13