(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025022044
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】共重合体、共重合体を含むアニオン交換膜、アニオン交換膜型水電解セル又は燃料電池、アニオン交換膜水電解セルを用いた水素の製造方法、重合体の製造方法、及び重合体に含まれるモノマー
(51)【国際特許分類】
C08G 61/12 20060101AFI20250206BHJP
H01M 8/1023 20160101ALI20250206BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20250206BHJP
H01B 1/06 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
C08G61/12
H01M8/1023
H01M8/10 101
H01B1/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023126268
(22)【出願日】2023-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】518427074
【氏名又は名称】LG Japan Lab株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】河津 貴大
(72)【発明者】
【氏名】石崎 博基
(72)【発明者】
【氏名】孝治 慎之助
【テーマコード(参考)】
4J032
5G301
5H126
【Fターム(参考)】
4J032BA12
4J032BA25
4J032BB06
4J032BC02
4J032BC12
4J032BD01
4J032BD07
5G301CA30
5G301CD01
5H126AA05
5H126BB06
5H126GG18
(57)【要約】
【課題】従来技術で得られる共重合体は、アニオン交換膜としての機能を維持しながら、イオン伝導度及びイオン交換容量を高めることが難しかった。
【解決手段】繰り返し単位式(I)と、繰り返し単位式(IIA)及び/又は(IIB)とを含む、共重合体、共重合体を含むアニオン交換膜、アニオン交換膜型水電解セル又は燃料電池、アニオン交換膜水電解セルを用いた水素の製造方法、重合体の製造方法、及び重合体に含まれるモノマーによって達成される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰り返し単位式(I)と、繰り返し単位式(IIA)及び/又は(IIB)とを含む、共重合体:
【化1】
[式(I)中、XはC
1~C
12のアルキレン基であり、Xは隣接する芳香環の炭素と共に5員環又は6員環を形成してもよく、芳香環に結合する水素は、それぞれ独立して、ハロゲン、C
1~C
12のアルキル基、C
1~C
12のアルコキシ基、又はC
6~C
12のアリール基で置換されてもよく、Xの少なくとも一つの炭素に、二つの-L
A-R
Aが結合しており、L
Aは2価の連結基であり、R
AはN
+を含む有機基であり、式(I)はカウンターアニオンを含む]
【化2】
[式(IIA)中、L
Bは2価の連結基であり、R
BはN
+を含む有機基であり、式(IIB)中、R
cはN
+を含む有機基であり、結合する炭素と共に、5員環又は6員環を形成し、式(IIA)及び/又は(IIB)はカウンターアニオンを含む]。
【請求項2】
C6~C20のアリーレン基の繰り返し単位をさらに含む、請求項1に記載の共重合体。
【請求項3】
前記LA及びLBは、それぞれ独立して、C1~C20のアルキレン基、C3~C20のシクロアルキレン基、C2~C20のアルケニレン基、C1~C20のポリオキシアルキレン基、C6~C20のアリーレン基、並びに-O-、-S-、-CO-、-COO-、-NH-、及び-N(C1~C20のアルキル)-で中断されてもよいC1~C20のアルキレン基からなる群から選択される、請求項1に記載の共重合体。
【請求項4】
前記RA及びRBは、それぞれ独立して、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピリジニウムイオン、ピリダジニウムイオン、ピリミジニウムイオン、ピラジニウムイオン、ピラゾリウムイオン及びピペリジニウムイオンからなる群から選択されるN+を含む有機基であり、前記Rcは、結合する炭素と共に、イミダゾリウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピリジニウムイオン、ピリダジニウムイオン、ピリミジニウムイオン、ピラジニウムイオン、ピラゾリウムイオン及びピペリジニウムイオンからなる群から選択されるN+を含む有機基を形成する、請求項1に記載の共重合体。
【請求項5】
前記カウンターアニオンは、OH-、COO-、F-、Cl-、Br-、I-、CO3
2-、NO3
-、SO4
2-及びPO4
3-からなる群から選択される1以上である、請求項1に記載の共重合体。
【請求項6】
前記式(I)は、下記式(III)及び式(IV)からなる群から選択される1以上である、請求項1に記載の共重合体:
【化3】
【化4】
[式(III)及び式(IV)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して水素及びC
1~C
12のアルキル基からなる群から選択され、Y
-は、それぞれ独立してカウンターアニオンであり、a及びbは、それぞれ独立して1~10の整数である]。
【請求項7】
前記式(IIA)は、下記式(V)である、請求項1に記載の共重合体:
【化5】
[式(V)中、R
3は、それぞれ独立して水素及びC
1~C
12のアルキル基からなる群から選択され、Y
-は、カウンターアニオンであり、Lは2価の連結基である]。
【請求項8】
前記式(IIB)は、下記式(VI)である、請求項1に記載の共重合体:
【化6】
[式(VI)中、R
4は、それぞれ独立して水素及びC
1~C
12のアルキル基からなる群から選択され、Y
-は、カウンターアニオンである]。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の共重合体を含む、アニオン交換膜。
【請求項10】
請求項9に記載のアニオン交換膜を備えた、アニオン交換膜型水電解セル。
【請求項11】
請求項10に記載のアニオン交換膜型水電解セルを用いて、水を電気分解する工程を含む、水素の製造方法。
【請求項12】
請求項9に記載のアニオン交換膜を備えた、燃料電池。
【請求項13】
式(VII):
【化7】
又は、式(VIII):
【化8】
[式(VII)及び式(VIII)中、c及びdは、それぞれ独立して1~10の整数であり、Z
1及びZ
2は、それぞれ独立してFを除くハロゲンである]で表されるモノマーを重合させる工程を含む、重合体の製造方法。
【請求項14】
式(VII):
【化9】
[式(VII)中、cは、それぞれ独立して1~10の整数であり、Z
1は、それぞれ独立してFを除くハロゲンである]で表される、化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共重合体、共重合体を含むアニオン交換膜、アニオン交換膜型水電解セル又は燃料電池、アニオン交換膜水電解セルを用いた水素の製造方法、重合体の製造方法、及び重合体に含まれるモノマーに関する。
【背景技術】
【0002】
温室効果ガスを発生させる化石燃料依存の社会から脱却するため、二酸化炭素排出を実質ゼロにする、クリーンエネルギーの生産及び使用が求められている。水電解で製造される水素は、燃焼によって二酸化炭素を排出せず、また、得られた水素から製造される燃料電池も二酸化炭素を排出しない。これらの材料は、クリーンエネルギーとして有用であるため、活発に研究が行われている。
【0003】
水電解や燃料電池には、イオン交換膜(電解質膜)が用いられており、イオン伝導性に優れるとともに、膜としての耐久性が求められる。特に、アニオン交換膜を用いて水を電気分解し、水素を製造するアニオン交換膜型電解技術が注目を集めており、アニオン交換膜のイオン伝導度及びイオン交換容量の向上、並びにアルカリ条件下での高耐久化についての研究が進められてきた。
【0004】
特許文献1及び2には、エーテル結合を含まない強固な芳香族ポリマー骨格に導入された、アルカリ安定性のカチオンであるピペリジニウムを有する、ポリ(アリールピペリジニウム)ポリマーから形成されたヒドロキシド交換膜またはヒドロキシド交換アイオノマーが開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2に開示されたポリマーから製造されるアニオン交換膜は、分子内に含まれるカチオンの数が少ないため、イオン伝導度、及びイオン交換容量が不十分であった。
【0006】
特許文献3には、イオン伝導性及び成膜性に優れた特定のポリマー及びその容易な製造方法、該ポリマー製造に適したプリカーサ、該ポリマーを用いた化学的耐久性及び膜強度に優れた電解質膜、該電解質膜を用いた燃料電池が開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献3に開示されたポリマーから製造されるアニオン交換膜も、イオン伝導度、及びイオン交換容量が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2019-518809号公報
【特許文献2】特表2020-536165号公報
【特許文献3】特開2021-42351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来技術で得られるポリマーは、アニオン交換膜としての機能を維持しながら、イオン伝導度及びイオン交換容量を高めることが難しかった。
【0010】
本発明は、前記課題を解決すべくなされたものであり、高いイオン伝導度及びイオン交換容量を有するアニオン交換膜を製造するための共重合体、共重合体を含むアニオン交換膜、アニオン交換膜型水電解セル又は燃料電池、アニオン交換膜水電解セルを用いた水素の製造方法、重合体の製造方法、及び重合体に含まれるモノマーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは前記課題について鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明の目的は、繰り返し単位式(I)と、繰り返し単位式(IIA)及び/又は(IIB)とを含む、共重合体によって達成される:
【化1】
[式(I)中、XはC
1~C
12のアルキレン基であり、Xは隣接する芳香環の炭素と共に5員環又は6員環を形成してもよく、芳香環に結合する水素は、それぞれ独立して、ハロゲン、C
1~C
12のアルキル基、C
1~C
12のアルコキシ基、又はC
6~C
12のアリール基で置換されてもよく、Xの少なくとも一つの炭素に、二つの-L
A-R
Aが結合しており、L
Aは2価の連結基であり、R
AはN
+を含む有機基であり、式(I)はカウンターアニオンを含む]
【化2】
[式(IIA)中、L
Bは2価の連結基であり、R
BはN
+を含む有機基であり、式(IIB)中、R
cはN
+を含む有機基であり、結合する炭素と共に、5員環又は6員環を形成し、式(IIA)及び/又は(IIB)はカウンターアニオンを含む]。
【0012】
本発明の共重合体は、C6~C20のアリーレン基の繰り返し単位をさらに含むことが好ましい。
【0013】
本発明の共重合体の、LA及びLBは、それぞれ独立して、C1~C20のアルキレン基、C3~C20のシクロアルキレン基、C2~C20のアルケニレン基、C1~C20のポリオキシアルキレン基、C6~C20のアリーレン基、並びに-O-、-S-、-CO-、-COO-、-NH-、及び-N(C1~C20のアルキル)-で中断されてもよいC1~C20のアルキレン基からなる群から選択されることが好ましい。
【0014】
本発明の共重合体の、RA及びRBは、それぞれ独立して、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピリジニウムイオン、ピリダジニウムイオン、ピリミジニウムイオン、ピラジニウムイオン、ピラゾリウムイオン及びピペリジニウムイオンからなる群から選択されるN+を含む有機基であり、Rcは、結合する炭素と共に、イミダゾリウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピリジニウムイオン、ピリダジニウムイオン、ピリミジニウムイオン、ピラジニウムイオン、ピラゾリウムイオン及びピペリジニウムイオンからなる群から選択されるN+を含む有機基を形成することが好ましい。
【0015】
本発明の共重合体の、カウンターアニオンは、OH-、COO-、F-、Cl-、Br-、I-、CO3
2-、NO3
-、SO4
2-及びPO4
3-からなる群から選択される1以上であることが好ましい。
【0016】
本発明の共重合体の、式(I)は、下記式(III)及び式(IV)からなる群から選択される1以上であることが好ましい:
【化3】
【化4】
[式(III)及び式(IV)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して水素及びC
1~C
12のアルキル基からなる群から選択され、Y
-は、それぞれ独立してカウンターアニオンであり、a及びbは、それぞれ独立して1~10の整数である]。
【0017】
本発明の共重合体の、式(IIA)は、下記式(V)であることが好ましい:
【化5】
[式(V)中、R
3は、それぞれ独立して水素及びC
1~C
12のアルキル基からなる群から選択され、Y
-は、カウンターアニオンであり、Lは2価の連結基である]。
【0018】
本発明の共重合体の、式(IIB)は、下記式(VI)であることが好ましい:
【化6】
[式(VI)中、R
4は、それぞれ独立して水素及びC
1~C
12のアルキル基からなる群から選択され、Y
-は、カウンターアニオンである]。
【0019】
また、本発明の目的は、上記共重合体を含む、アニオン交換膜によって達成される。
【0020】
さらに、本発明の目的は、アニオン交換膜を備えた、アニオン交換膜型水電解セルによって達成される。
【0021】
加えて、本発明の目的は、アニオン交換膜型水電解セルを用いて、水を電気分解する工程を含む、水素の製造方法によって達成される。
【0022】
また、本発明の目的は、アニオン交換膜を備えた、燃料電池によって達成される。
【0023】
さらに、本発明の目的は、式(VII):
【化7】
又は、式(VIII):
【化8】
[式(VII)及び式(VIII)中、c及びdは、それぞれ独立して1~10の整数であり、Z
1及びZ
2は、それぞれ独立してFを除くハロゲンである]で表されるモノマーを重合させる工程を含む、重合体の製造方法によって達成される。
【0024】
加えて、本発明の目的は、式(VII):
【化9】
[式(VII)中、cは、それぞれ独立して1~10の整数であり、Z
1は、それぞれ独立してFを除くハロゲンである]で表される、化合物によって達成される。
【発明の効果】
【0025】
本発明の繰り返し単位式(I)と、繰り返し単位式(IIA)及び/又は(IIB)とを含む、共重合体によれば、高いイオン伝導度及び高いイオン交換容量を有する、アニオン交換膜、アニオン交換膜型水電解セル又は燃料電池、アニオン交換膜水電解セルを用いた水素の製造方法を提供することができる。
【0026】
また、本発明は、式(VII)、又は式(VIII)で表されるモノマーを重合させる、重合体の製造方法、及び式(VII)で表される化合物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[共重合体]
以下、まずは本発明の共重合体について詳細に説明する。本発明の共重合体は、繰り返し単位式(I)と、繰り返し単位式(IIA)及び/又は(IIB)とを含むことを特徴とする:
【化10】
[式(I)中、XはC
1~C
12のアルキレン基であり、Xは隣接する芳香環の炭素と共に5員環又は6員環を形成してもよく、芳香環に結合する水素は、それぞれ独立して、ハロゲン、C
1~C
12のアルキル基、C
1~C
12のアルコキシ基、又はC
6~C
12のアリール基で置換されてもよく、Xの少なくとも一つの炭素に、二つの-L
A-R
Aが結合しており、L
Aは2価の連結基であり、R
AはN
+を含む有機基であり、式(I)はカウンターアニオンを含む]
【化11】
[式(IIA)中、L
Bは2価の連結基であり、R
BはN
+を含む有機基であり、式(IIB)中、R
cはN
+を含む有機基であり、結合する炭素と共に、5員環又は6員環を形成し、式(IIA)及び/又は(IIB)はカウンターアニオンを含む]。
【0028】
一実施形態において、C1~C12のアルキレン基は、直鎖又は分岐鎖の2価の飽和炭化水素基であり、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、及びドデシレンからなる群から選択されてもよい。C1~C12のアルキレン基は、好ましくは、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、又はヘキシレンであり、より好ましくは、メチレンである。
【0029】
一実施形態において、C1~C12のアルキル基は、直鎖又は分岐鎖の1価の飽和炭化水素基であり、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、へプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、及びドデシルからなる群から選択されてもよい。
【0030】
一実施形態において、C1~C12のアルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、へプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ウンデシルオキシ、及びドデシルオキシからなる群から選択されてもよい。
【0031】
一実施形態において、C6~C12のアリール基は、置換又は非置換の1価の芳香族基であり、フェニル、トリル、キシリル、ベンジル、エチルベンジル、ナフチル、及びビフェニルからなる群から選択されてもよい。芳香族基が置換される場合、水酸基、ハロゲン、C1~C12のアルキル基、又はC1~C12のアルコキシ基で置換されていてもよい。
【0032】
一実施形態において、繰り返し単位式(I)と、繰り返し単位式(IIA)及び/又は(IIB)のモル比[(I):((IIA)+(IIB))]は、1:0.8~1:15の範囲であってもよく、好ましくは、1:0.9~1:12、より好ましくは、1:0.9~1:10である。
【0033】
一実施形態において、繰り返し単位式(I)と、繰り返し単位式(IIA)又は(IIB)とは、交互に連結していてもよい。共重合体が、繰り返し単位式(I)と、繰り返し単位式(IIA)又は(IIB)とを含むことによって、高いイオン伝導度とイオン交換容量のアニオン交換膜を得ることができる。
【0034】
一実施形態おいて、本発明の共重合体は、C6~C20のアリーレン基の繰り返し単位をさらに含んでもよい。共重合体が、C6~C20のアリーレン基の繰り返し単位を含むことによって、アニオン交換膜としての強度が得られる。
【0035】
一実施形態において、C6~C20のアリーレン基は、置換又は非置換の2価の芳香族基であって、芳香族基は、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、フェノール、ベンジルアルコール、アニソール、アセトフェノン、クレゾール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ベンゾフェノン、ナフタレン、ビフェニル、アントラセン、フェナントレン、ターフェニル、トリフェニルメタン、ピレン及びテトラセンからなる群から選択されてもよく、好ましくは、フェニル、ビフェニル又はターフェニルであり、より好ましくは、ビフェニル又はターフェニルである。芳香族基が置換される場合、水酸基、ハロゲン、C1~C12のアルキル基、又はC1~C12のアルコキシ基で置換されていてもよい。
【0036】
一実施形態において、繰り返し単位式(I)及びアリーレン基の繰り返し単位は、繰り返し単位式(IIA)又は(IIB)を介して結合していてもよい。
【0037】
一実施形態において、繰り返し単位式(I)と、アリーレン基の繰り返し単位とのモル比[(I):アリーレン基]は、1:0.8~1:12であってもよく、好ましくは、1:0.9~1:10であり、より好ましくは1:0.9~1:9である。
【0038】
一実施形態において、アリーレン基の繰り返し単位と、繰り返し単位式(IIA)及び/又は(IIB)とのモル比[(アリーレン基:((IIA)+(IIB))]は、1:0.8~1:2.0であってもよく、好ましくは、1:0.9~1:1.5であり、より好ましくは1:0.9~1:1.3である。
【0039】
一実施形態において、繰り返し単位式(I)及びアリーレン基の繰り返し単位と、繰り返し単位式(IIA)及び/又は(IIB)とのモル比[((I)+アリーレン基):((IIA)+(IIB))]は、1:0.8~1:1.5の範囲であってもよく、好ましくは、1:0.9~1:1.2、より好ましくは、1:0.9~1:1.1である
【0040】
一実施形態において、LA及びLBは、それぞれ独立して、C1~C20のアルキレン基、C3~C20のシクロアルキレン基、C2~C20のアルケニレン基、C1~C20のポリオキシアルキレン基、C6~C20のアリーレン基、並びに-O-、-S-、-CO-、-COO-、-NH-、及び-N(C1~C20のアルキル)-で中断されてもよいC1~C20のアルキレン基からなる群から選択されてもよい。LA及びLBは、好ましくは、C1~C20のアルキレン基又はC6~C20のアリーレン基であり、より好ましくは、C1~C12のアルキレン基、さらに好ましくは、C1~C6のアルキレン基である。
【0041】
一実施形態において、C1~C20のアルキレン基は、直鎖又は分岐鎖の2価の飽和炭化水素基であり、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、へキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン、トリデシレン、テトラデシレン、ペンタデシレン、ヘキサデシレン、ヘプタデシレン、オクタデシレン、ノナデシレン、及びエイコシレンからなる群から選択されてもよい。
【0042】
一実施形態において、C6~C20のアリーレン基は上述のとおりである。
【0043】
一実施形態において、RA及びRBは、それぞれ独立して、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピリジニウムイオン、ピリダジニウムイオン、ピリミジニウムイオン、ピラジニウムイオン、ピラゾリウムイオン及びピペリジニウムイオンからなる群から選択されるN+を含む有機基であってもよく、Rcは、結合する炭素と共に、イミダゾリウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピリジニウムイオン、ピリダジニウムイオン、ピリミジニウムイオン、ピラジニウムイオン、ピラゾリウムイオン及びピペリジニウムイオンからなる群から選択されるN+を含む有機基を形成してもよい。
【0044】
好ましい実施形態において、RA及びRBは、それぞれ独立して、アンモニウムイオン、ピロリジニウムイオン及びピペリジニウムイオンからなる群から選択され、より好ましくは、アンモニウムイオンである。
【0045】
好ましい実施形態において、Rcは、ピロリジニウムイオン、又はピペリジニウムイオンを形成し、より好ましくは、ピペリジニウムイオンを形成する。
【0046】
共重合体中に、RA並びにRB及び/又はRCが含まれることによって、高いイオン伝導度及びイオン交換容量のアニオン交換膜を得ることができる。一実施形態において、RAと、RB及び/又はRCが形成するN+を含む有機基とは、異なることが好ましい。異なるN+を含む有機基が共重合体中に含まれることによって、一方のN+を含む有機基が劣化した場合に、もう一方のN+を含む有機基が同時に劣化しないため、耐久性に優れる。
【0047】
一実施形態において、カウンターアニオンは、OH-、COO-、F-、Cl-、Br-、I-、CO3
2-、NO3
-、SO4
2-及びPO4
3-からなる群から選択される1以上であってもよい。カウンターアニオンは、好ましくは、OH-、COO-、Cl-、又はI-であり、より好ましくはOH-である。
【0048】
一実施形態において、Xは、隣接する芳香環の炭素と共に5員環又は6員環を形成することが好ましい。式(I)の好ましい構造は、下記式(IX)又は式(X)からなる群から選択される1以上である。より好ましくは、式(I)は、式(IX)の構造を有する:
【化12】
【化13】
[式(IX)及び式(X)中、L
A'及びL
A"は、それぞれ独立して上述のL
Aのとおりであり、R
A'及びR
A"は、それぞれ独立して上述のR
Aのとおりであり、式(IX)及び式(X)はカウンターアニオンを含む]。
【0049】
一実施形態において、式(I)は、下記式(III)及び式(IV)からなる群から選択される1以上であってもよい:
【化14】
【化15】
[式(III)及び式(IV)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して水素及びC
1~C
12のアルキル基からなる群から選択され、Y
-は、それぞれ独立してカウンターアニオンであり、a及びbは、それぞれ独立して1~10の整数である]。
【0050】
一実施形態において、C1~C12のアルキル基は上述のとおりである。
【0051】
好ましい実施形態において、R1及びR2は、それぞれ独立して水素、メチル又はエチルであり、より好ましくはメチルである。
【0052】
一実施形態において、カウンターアニオンは上述のとおりである。
【0053】
好ましい実施形態において、a及びbは、それぞれ独立して2~8の整数であり、より好ましくは4~6の整数である。
【0054】
一実施形態において、式(IIA)は、下記式(V)であってもよい:
【化16】
[式(V)中、R
3は、それぞれ独立して水素及びC
1~C
12のアルキル基からなる群から選択され、Y
-は、カウンターアニオンであり、Lは2価の連結基である]。
【0055】
一実施形態において、C1~C12のアルキル基は上述のとおりである。
【0056】
好ましい実施形態において、R3は、それぞれ独立して水素、メチル又はエチルであり、より好ましくはメチルである。
【0057】
一実施形態において、カウンターアニオンは上述のとおりである。
【0058】
一実施形態において、Lは、それぞれ独立して、C1~C20のアルキレン基、C3~C20のシクロアルキレン基、C2~C20のアルケニレン基、C1~C20のポリオキシアルキレン基、C6~C20のアリーレン基、並びに-O-、-S-、-CO-、-COO-、-NH-、及び-N(C1~C20のアルキル)-で中断されてもよいC1~C20のアルキレン基からなる群から選択されてもよい。Lは、好ましくは、C1~C20のアルキレン基又はC6~C20のアリーレン基であり、より好ましくは、C1~C12のアルキレン基、さらに好ましくは、C1~C6のアルキレン基である。
【0059】
一実施形態において、式(IIB)は、下記式(VI)であってもよい:
【化17】
[式(VI)中、R
4は、それぞれ独立して水素及びC
1~C
12のアルキル基からなる群から選択され、Y
-は、カウンターアニオンである]。
【0060】
一実施形態において、C1~C12のアルキル基は上述のとおりである。
【0061】
好ましい実施形態において、R4は、それぞれ独立して水素、メチル又はエチルであり、より好ましくはメチルである。
【0062】
一実施形態において、カウンターアニオンは上述のとおりである。
【0063】
一実施形態において、共重合体は5000~500000の重量平均分子量を有することが好ましい。重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析によって測定されてもよい。
[アニオン交換膜]
【0064】
本発明のアニオン交換膜は、上記共重合体を含むことを特徴とする。
【0065】
一実施形態において、上記共重合体を溶解可能な溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド、アルコール、アルコール水溶液等)に溶解させて、ポリマー溶液を調製し、当技術分野で周知の塗布手段を用いて塗膜とし、乾燥することにより、アニオン交換膜を製造してもよい。
【0066】
一実施形態において、アニオン交換膜の厚さは特に限定されないが、例えば、1μm~200μmであってもよく、具体的には5μm~200μmであってもよく、より具体的には10μm~200μmであってもよい。アニオン交換膜の厚さが上記範囲にあることで、電気的ショート(Electric Short)および電解質や燃料電池における原料、電気分解における生成物等のクロスオーバー(Cross Over)を低下させることができる。
【0067】
一実施形態において、アニオン交換膜のイオン伝導度は、20mS/cm~500mS/cmであり、好ましくは50mS/cm~300mS/cmであり、より好ましくは100mS/cm~250mS/cmである。
【0068】
アニオン交換膜のイオン伝導度は、交流インピーダンス測定により測定されてもよい。具体的な測定方法は、当技術分野で知られる方法であれば、特に限定されないが、例えば、アニオン交換膜を、2つの白金電極間距離を1.0cmになるように固定したガラスプレートで挟み込み、温度80℃、相対湿度95%の条件下で、FRA(FRA51615、NF回路ブロック)を用いてAC Amplitude10~100mV、周波数範囲10MHzから0.1Hzまで走査する。
【0069】
一実施形態において、アニオン交換膜のイオン伝導度は、加湿条件で測定されてもよい。本明細書において、加湿条件とは、相対湿度(RH)10%~100%を意味する。より好ましくは、アニオン交換膜のイオン伝導度は、相対湿度(RH)95%で測定される。
【0070】
一実施形態において、アニオン交換膜のイオン交換容量(IEC)値は、2.5meq/g~7.5meq/gであり、好ましくは3.0meq/g~6.0meq/gであり、より好ましくは、4.0meq/g~5.5meq/gである。アニオン交換膜のイオン交換容量が上記範囲内であることで、アニオン交換膜においてイオンチャネルが形成され、共重合体がイオン伝導することができる。
【0071】
アニオン交換膜のイオン交換容量は、硝酸銀を用いたモール法による滴定により測定されてもよい。具体的な測定方法は、当技術分野で知られる方法であれば、特に限定されないが、例えば、アニオン交換膜(OH-交換処理前)の重量を測定し、1.0mol/LのNaNO3水溶液に24時間浸漬させ、アニオン交換膜を取り出し、K2CrO4水溶液を指示薬として、濃度既知のAgNO3水溶液で滴定を行い、中和点まで要したAgNO3量からイオン交換容量が算出される。
[アニオン交換膜型水電解セル]
【0072】
本発明のアニオン交換型水電解セルは、上記アニオン交換膜を備えることを特徴とする。
【0073】
一実施形態において、アニオン交換型水電解セルは、特に限定されないが、例えば、アニオン交換膜で隔てられたアノード及びカソードを備えた膜電極複合体、セパレーター、電圧を印加する電源、セルに水を供給するシステム、アノードで生成する酸素を排出するシステム、並びにカソードの水素を排出するシステム等を備えていてもよい。これらは、当技術分野で周知の方法によって組み立てられ得る。
[水素の製造方法]
【0074】
本発明の水素の製造方法は、上記アニオン交換膜型水電解セルを用いて、水を電気分解する工程を含むことを特徴とする。
【0075】
一実施形態において、水電解セルのアノード及びカソードでの反応は、例えば、下記のとおりであってもよい。
(アノード)4OH-→O2+2H2O+4e-
(カソード)4H2O+4e-→2H2+4OH-
本発明のアニオン交換膜を介してカソードからアノードへOH-イオンが供給される。
【0076】
上記反応では、セルの系中がアルカリ性になるが、本発明のアニオン交換膜は、アルカリ性条件においても安定であるため、アニオン交換膜として機能することができる。
【0077】
カソードで得られた水素は、当技術分野で周知の方法で回収され、例えば燃料電池の材料として使用されてもよい。
[燃料電池]
【0078】
本発明の燃料電池は、上記アニオン交換膜を備えることを特徴とする。
【0079】
一実施形態において、燃料電池は、特に限定されないが、例えば、アニオン交換膜で隔てられたアノード及びカソードを備えた膜電極複合体、アノードに含まれるカソード触媒層及びアノード気体拡散層、並びにカソードに含まれるカソード触媒層及びカソード気体拡散層を備えていてもよい。これらは、当技術分野で周知の方法によって組み立てられ得る。
【0080】
一実施形態において、燃料は当技術分野において周知のものの中から選択することができ、例えば、水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、又は天然ガス等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
水素を燃料とする燃料電池のアノード及びカソードでの反応は、例えば、下記のとおりであってもよい。
(アノード)2OH-+H2→2H2O+2e-
(カソード)O2+2H2O+4e-→4OH-
本発明のアニオン交換膜を介してカソードからアノードへOH-イオンが供給される。
[重合体の製造方法]
【0082】
本発明の重合体の製造方法は、式(VII):
【化18】
又は、式(VIII):
【化19】
[式(VII)及び式(VIII)中、c及びdは、それぞれ独立して1~10の整数であり、Z
1及びZ
2は、それぞれ独立してFを除くハロゲンである]で表されるモノマーを重合させる工程を含むことを特徴とする。
【0083】
好ましい実施態様において、c及びdは、それぞれ独立して2~8の整数であり、より好ましくは4~6の整数である。
【0084】
好ましい実施態様において、Z1及びZ2はClである。
【0085】
一実施態様において、重合体の製造方法は、式(VII)又は式(VIII)で表されるモノマー、及び式(VII)又は式(VIII)で表されるモノマーと反応する別のモノマーを縮合重合することによって共重合させる方法であってもよい。
【0086】
一実施態様において、式(VII)又は式(VIII)で表されるモノマーと反応する別のモノマーは、例えば式(XI)及び(XII)で表されるモノマーが挙げられる:
【化20】
[式(XI)中、R
5はそれぞれ独立して、C
1~C
20のアルキレン基である]
【化21】
[式(XII)中、R
6は、水素又はC
1~C
12のアルキル基である]。
【0087】
一実施態様において、重合体の製造方法は、式(VII)又は式(VIII)で表されるモノマー、式(XI)又は(XII)で表されるモノマー、及びC6~C20の芳香族基を縮合重合することによって共重合させる方法であってもよい。
【0088】
一実施態様において、C6~C20の芳香族基は、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、フェノール、ベンジルアルコール、アニソール、アセトフェノン、クレゾール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ベンゾフェノン、ナフタレン、ビフェニル、アントラセン、フェナントレン、ターフェニル、トリフェニルメタン、ピレン及びテトラセンからなる群から選択されてもよく、好ましくは、フェニル、ビフェニル又はターフェニルであり、より好ましくは、ビフェニル又はターフェニルである。
【0089】
一実施態様において、重合体の製造方法は、Z1及び/又はZ2のハロゲンをイオン化する工程を含んでいてもよい。例えば、重合体とN(R7)3を反応させることによって、Z1及び/又はZ2をイオン化することができる。R7は、それぞれ独立して、水素及びC1~C12のアルキル基からなる群から選択される。
【0090】
一実施態様において、重合体の製造方法は、式(XI)のClをイオン化する工程を含んでいてもよい。例えば、重合体とN(R8)3を反応させることによって、式(XI)のClをイオン化することができる。R8は、それぞれ独立して、水素及びC1~C12のアルキル基からなる群から選択される。
【0091】
一実施態様において、重合体の製造方法は、式(XII)のNをイオン化する工程を含んでいてもよい。例えば、重合体とR9-Z3を反応させることによって、式(XII)のNをイオン化することができる。R9は、水素及びC1~C12のアルキル基からなる群から選択され、Z3は、Br又はIである。
【0092】
一実施態様において、重合体の製造方法は、重合体に含まれるアニオンを交換する工程を含んでいてもよい。例えば、イオン化された重合体とNaOH又はKOHと反応させることによって、OH-をカウンターアニオンとして有する重合体を得ることができる。
[式(VII)の化合物]
【0093】
本発明の式(VII)で表される化合物は以下の特徴を有する:
【化22】
[式(VII)中、cは、それぞれ独立して1~10の整数であり、Z
1は、それぞれ独立してFを除くハロゲンである]。
【0094】
好ましい実施形態において、cは、それぞれ独立して2~8の整数であり、より好ましくは4~6の整数である。
【0095】
好ましい実施態様において、Z1はClである。
【0096】
以下、本発明に関して実施例を挙げて説明するが、本発明は、これらによって限定されるものではない。
【実施例0097】
(実施例1)共重合体の製造
1.式(VII)で表される化合物の製造
【化23】
【0098】
500mLナスフラスコにKOH(150g)とn-Bu4NCl(556mg)を加え、Ar気流下で300mLの純水に溶解させ、90℃で撹拌した。フルオレン(2.5g)を1,6-ジクロロヘキサン(23.3g)に溶解させ、ナスフラスコに一気に加えた。3時間後、室温まで冷却し、ジクロロメタン(200mL)で3回抽出した。硫酸ナトリウム(50g)で乾燥後、ろ紙を用いてろ過した後、真空下で濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒; ヘキサン:ジクロロメタン=9:1)にて精製し、収量1.78g、収率54%で化合物を得た。
【0099】
【0100】
13.5mLマイティバイアルに1で得られた化合物(161mg)、1-メチル-4-ピペリドン(498mg)、ビフェニル(555mg)、ジクロロメタン(3.2mL)を加えた。さらにトリフルオロ酢酸(0.48mL)を加え、0℃で撹拌した。さらにトリフルオロメタンスルホン酸(3.2mL)を少しずつ加え、0℃で24時間撹拌した。反応後の溶液を、1M KOH水溶液(100mL)に注いだ。吸引ろ過にて共重合体を回収し、純水でpHが中性になるまで洗浄した。回収した共重合体を真空下、80℃で3時間乾燥し、収量1.6gで共重合体を得た。
【0101】
【0102】
2で得られた共重合体(1.6g)を300mLビーカーに加え、DMSO(40mL)を加え、80℃で1時間撹拌した。溶液を室温になるまで冷ました後、炭酸カリウム(2.5g)及びヨードメタン(0.82mL)を加えた。溶液を遮光した状態で24時間撹拌した。反応溶液を、エバポレーター(真空、70℃、1時間)を用いて、未反応のヨードメタンを除去した。溶液に残った炭酸カリウムをろ過によって除去し、溶液を得た。
【0103】
【0104】
3で得られた共重合体のDMSO溶液を100mLマイティバイアルに加え、トリメチルアミン(3.2M メタノール溶液、1.25mL)を加え、100℃で24時間撹拌した。反応溶液を酢酸エチル(400mL)に加え、析出した固体を吸引ろ過にて回収し、純水200mLで洗浄した。得られた共重合体を真空下、80℃で3時間乾燥させ、収量2.45gで本発明の共重合体を得た。
【0105】
(実施例2)共重合体の製造
実施例1の2.共重合体の製造においてビフェニルの代わりに、ターフェニル(829mg)を用いた以外は、同様の操作を行って、以下の本発明の共重合体を収量3.45gで得た。
【化27】
【0106】
(実施例3)共重合体の製造
実施例1の2.共重合体の製造においてビフェニルを用いなかった以外は、同様の操作を行って、以下の本発明の共重合体を得た。
【化28】
【0107】
(アニオン交換膜の作製)
実施例1~3で得られた共重合体を、ジメチルスルホキシド(DMSO)に200mg/10mLの濃度で80℃に加温しながら溶解させ、共重合体溶解液を得た。その後、10cm×10cmのガラスプレート上に前記共重合体溶解液をキャストし、乾燥させることで厚さ20μmのアニオン交換膜を得た。得られたアニオン交換膜(Cl-体)のイオン交換容量を測定した。得られたアニオン交換膜を1.0Mの水酸化カリウム水溶液中に24時間浸漬させることでOH-交換処理を行ったのち、得られたアニオン交換膜のイオン伝導度を測定した。結果を表1に示す。
【0108】
(イオン伝導度)
イオン伝導度は、交流インピーダンス測定により測定した。アニオン交換膜を、2つの白金電極間距離を1.0cmになるように固定したガラスプレートで挟み込み、温度80℃、相対湿度95%の条件下で測定を行った。FRA(FRA51615、NF回路ブロック)を用いてAC Amplitude10~100mV、周波数範囲10MHzから0.1Hzまで走査してイオン伝導度を測定した。結果を表1に示す。
【0109】
(イオン交換容量)
イオン交換容量は、硝酸銀を用いたモール法による滴定により測定した。まず、アニオン交換膜(OH-交換処理前、Cl-体)の重量を測定し、1.0mol/LのNaNO3水溶液に24時間浸漬させる。アニオン交換膜を取り出し、K2CrO4水溶液を指示薬として、濃度既知のAgNO3水溶液で滴定を行い、中和点まで要したAgNO3量からイオン交換容量を算出した。結果を表1に示す。
【0110】
【0111】
表1の結果から、市販のアニオン交換膜と比較して、本発明のアニオン交換膜は高いイオン伝導度とイオン交換容量を有することがわかった。
本発明の共重合体を含むアニオン交換膜は、高いイオン伝導度及びイオン交換容量を有することから、例えば、アニオン交換膜型水電解において高い性能を示すことができる。これにより水素ガスを水から効率的に取り出すことが可能になるため、エネルギー問題の解決に寄与できる。