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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025022103
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】エンジンの燃料系異常診断装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 41/22 20060101AFI20250206BHJP
   F02D 41/38 20060101ALI20250206BHJP
   F02D 17/04 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
F02D41/22
F02D41/38
F02D17/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023126365
(22)【出願日】2023-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】狩川 信吾
(72)【発明者】
【氏名】白井 裕久
(72)【発明者】
【氏名】橋坂 明
(72)【発明者】
【氏名】菅 俊也
【テーマコード(参考)】
3G092
3G301
【Fターム(参考)】
3G092BB08
3G092DE06Y
3G092DF07
3G092DG01
3G092EA09
3G092EA11
3G092EA16
3G092FA31
3G092FA44
3G092FB03
3G092FB06
3G092GA01
3G092HB03Y
3G092HE01Y
3G092HF05Y
3G092HF19Y
3G301JA08
3G301JB09
3G301KA01
3G301LB13
3G301NE22
3G301PB08B
3G301PE01B
3G301PF16B
(57)【要約】
【課題】エンジンの動作不良の抑制と、高燃圧ポンプのより正確な故障判定と、を両立する。
【解決手段】コントローラ10は、エンジンEの始動に際してリリーフ弁25が開弁したと判定された場合には、高燃圧ポンプ23における故障の有無の決定を保留してエンジンEを停止するとともに、リリーフ弁25の閉弁を待つように、該停止から所定期間にわたって待機した後にエンジンEを再始動し、その再始動に際してリリーフ弁25が開弁したと再び判定された場合には、高燃圧ポンプ23に故障が生じていると決定する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの駆動軸に連結され、燃料を高圧化して吐出する高燃圧ポンプと、
前記高燃圧ポンプから吐出される高圧燃料を流通させる燃料配管と、
前記燃料配管に接続され、高圧燃料を噴射するインジェクタと、
前記燃料配管内の燃圧が所定の開弁圧まで上昇したときに開弁する一方、所定の閉弁圧まで下降したときに閉弁する機械式のリリーフ弁と、
前記高燃圧ポンプから吐出された前記燃料配管内の燃圧を検出する燃圧センサと、
前記燃圧センサが検出した燃圧に基づいて、該燃圧が前記開弁圧に到達し得るか否かを判定するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記燃料配管内の燃圧が前記開弁圧に到達し得ると判定された後に該燃圧が所定の第1閾値を下回った場合に、前記リリーフ弁が開弁したと判定するとともに、該判定結果に基づいて前記高燃圧ポンプにおける故障の有無を決定し、
前記コントローラは、
前記エンジンの始動に際し、前記リリーフ弁が開弁したと判定された場合には、前記故障の有無の決定を保留して前記エンジンを停止するとともに、前記リリーフ弁の閉弁を待つように、該停止から所定期間にわたって待機した後に前記エンジンを再始動し、
前記エンジンの再始動に際し、前記リリーフ弁が開弁したと再び判定された場合には、前記高燃圧ポンプに故障が生じていると決定する
ことを特徴とするエンジンの燃料系異常診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたエンジンの燃料系異常診断装置において、
前記エンジンは、単気筒エンジンであり、
前記コントローラは、前記エンジンの始動及び再始動に際し、始動装置によってエンジン回転数を常用回転まで上昇させる
ことを特徴とするエンジンの燃料系異常診断装置。
【請求項3】
請求項2に記載されたエンジンの燃料系異常診断装置において、
前記エンジンは、車両の駆動輪に対して非連結とされた、発電専用のエンジンである
ことを特徴とするエンジンの燃料系異常診断装置。
【請求項4】
請求項2に記載されたエンジンの燃料系異常診断装置において、
前記開弁圧以下であり、かつ前記第1閾値以上の圧力値を第2閾値とすると、
前記コントローラは、前記エンジンの始動又は再始動に際して前記エンジン回転数が上昇している最中に前記燃圧が前記第2閾値を超えた場合に、前記燃料配管内の燃圧が前記開弁圧に到達し得ると判定する
ことを特徴とするエンジンの燃料系異常診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エンジンの燃料系異常診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、リリーフ弁の開弁判定装置が開示されている。この開弁判定装置は、燃料を高圧化して吐出する高燃圧ポンプ(燃料ポンプ)と、蓄圧容器内における高圧燃料の燃圧を検出する圧力センサと、その燃圧が所定の開弁圧まで上昇することで開弁するリリーフ弁と、を備えている。
【0003】
前記特許文献1に係る開弁判定装置は、圧力センサの検出圧が開弁圧まで上昇したと判定した場合において、その検出圧が上昇から低下に転じた後の圧力低下の傾き又はその相関値を示す圧力低下パラメータを取得する。前記開弁判定装置は、取得した圧力低下パラメータに基づいて、リリーフ弁が開弁状態にあることを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-052609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載されているようにリリーフ弁が開弁状態にあることを判定することで、高燃圧ポンプ、例えばその吐出系に故障が生じていると判断することが知られている。
【0006】
ところが、エンジンの構成次第では、高燃圧ポンプに係る燃料系統の容積が小さく、前記燃圧が上昇し易くなる。加えて、エンジンの停止時には、燃料の温度が上昇し、燃圧の高圧化を招く可能性がある。
【0007】
前述した要因と、エンジンの始動装置に起因したリリーフ弁の振動とが相まって、エンジンの始動時に、リリーフ弁が開弁してしまう可能性があることが新たにわかった。そうした開弁は、高燃圧ポンプの故障に起因したものではない。
【0008】
始動時におけるリリーフ弁の開弁は、エンジンの動作不良を招くばかりでなく、前述のように、高燃圧ポンプの故障判定に際して誤判定を招くことになるため不都合である。
【0009】
本開示は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、エンジンの動作不良の抑制と、高燃圧ポンプのより正確な故障判定と、を両立することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、エンジンの燃料系異常診断装置に関する。この燃料系異常診断装置は、エンジンの駆動軸に連結され、燃料を高圧化して吐出する高燃圧ポンプと、前記高燃圧ポンプから吐出される高圧燃料を流通させる燃料配管と、前記燃料配管に接続され、高圧燃料を噴射するインジェクタと、前記燃料配管内の燃圧が所定の開弁圧まで上昇したときに開弁する一方、所定の閉弁圧まで下降したときに閉弁する機械式のリリーフ弁と、前記高燃圧ポンプから吐出された前記燃料配管内の燃圧を検出する燃圧センサと、前記燃圧センサが検出した燃圧に基づいて、該燃圧が前記開弁圧に到達し得るか否かを判定するコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記燃料配管内の燃圧が前記開弁圧に到達し得ると判定された後に該燃圧が所定の第1閾値を下回った場合に、前記リリーフ弁が開弁したと判定するとともに、該判定結果に基づいて前記高燃圧ポンプにおける故障の有無を決定する。
【0011】
そして、本開示によれば、前記コントローラは、前記エンジンの始動に際し、前記リリーフ弁が開弁したと判定された場合には、前記故障の有無の決定を保留して前記エンジンを停止するとともに、前記リリーフ弁の閉弁を待つように、該停止から所定期間にわたって待機した後に前記エンジンを再始動し、前記エンジンの再始動に際し、前記リリーフ弁が開弁したと再び判定された場合には、前記高燃圧ポンプに故障が生じていると決定する。
【0012】
前記構成によると、コントローラは、エンジンの始動に際してリリーフ弁が開弁していることが判定された場合には、エンジンを停止して待機した後に、これを再始動する。これにより、リリーフ弁の閉弁を待ってからエンジンを再始動することができるため、エンジンの動作不良を抑制することができる。
【0013】
さらに、前記構成によると、コントローラは、エンジンの再始動に際してリリーフ弁が開弁していることが再び判定された場合には、高燃圧ポンプになんらかの故障が生じていると判断する。これにより、燃料の温度上昇、始動装置等から受ける振動等による開弁を誤判定することなく、高燃圧ポンプのより正確な故障判定を実現することができる。
【0014】
また、前記エンジンは、単気筒エンジンであり、前記コントローラは、前記エンジンの始動及び再始動に際し、始動装置によってエンジン回転数を常用回転まで上昇させる、としてもよい。
【0015】
前記構成によると、エンジンは単気筒エンジンであるから、複数気筒のエンジンと比べて、燃料供給系全体の容積はコンパクトなものとなる。この場合、燃圧は相対的に高まり易くなるから、燃料の温度上昇等の事情と相まって、燃圧の高圧化を招き易くなる。そのため、前述の如き正確な故障判定が、取り分け有効なものとなる。
【0016】
また、前記エンジンは、車両の駆動輪に対して非連結とされた、発電専用のエンジンである、としてもよい。
【0017】
前記構成によると、エンジンは発電専用のエンジンであるから、車両走行用のエンジンと比べて、燃料供給系全体の容積はコンパクトなものとなる。この場合、燃圧は相対的に高まり易くなるから、燃料の温度上昇等の事情と相まって、燃圧の高圧化を招き易くなる。そのため、前述の如き正確な故障判定が、取り分け有効なものとなる。
【0018】
また、発電専用のエンジンであるから、その始動をリトライしたとしても、車両走行用のエンジンと比べて、走行フィーリングに与える影響を、可能な限り抑えることができる。
【0019】
また、前記開弁圧以下であり、かつ前記第1閾値以上の圧力値を第2閾値とすると、前記コントローラは、前記エンジンの始動又は再始動に際して前記エンジン回転数が上昇している最中に前記燃圧が前記第2閾値を超えた場合に、前記燃料配管内の燃圧が前記開弁圧に到達し得ると判定する、としてもよい。
【0020】
前記構成は、高燃圧ポンプのより正確な故障判定に資する。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本開示によれば、エンジンの動作不良の抑制と、高燃圧ポンプのより正確な故障判定と、を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、エンジンを備えた車両を例示する図である。
図2図2は、エンジンの概略構成を例示する図である。
図3図3は、エンジンの燃料系異常診断装置の構成を例示する機能ブロック図である。
図4図4は、車両の駆動力制御に関する処理を例示するフローチャートである。
図5図5は、エンジンの始動処理と、リリーフ弁の開弁判定と、その判定結果に基づいた故障判定に関する処理を例示するフローチャートである。
【0023】

図6図6は、前記開弁判定に関する処理を例示するフローチャートである。
図7図7は、前記開弁判定のリトライに関する処理を例示するフローチャートである。
図8図8は、リリーフ弁の開弁判定における燃圧の推移を模式化して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本開示の実施形態について説明する。なお、以下の説明は例示である。図1は、エンジンEを備えた車両100を例示する図である。図2は、エンジンEの概略構成を例示する図である。図3は、エンジンEの燃料系異常診断装置1の構成を例示する機能ブロック図である。
【0025】
(全体構成)
車両100は、いわゆるシリーズハイブリッド自動車である。車両100は、駆動装置Pと、コントローラ10と、を備えている。駆動装置Pは、電力を利用して車両100を走行させるための電気駆動ユニット110と、発電用のエンジンEと、を有している。コントローラ10は、駆動装置Pと電気的に接続されており、該駆動装置Pの各機能を制御する。
【0026】
電気駆動ユニット110は、モータ111と、減速機112と、ジェネレータ113と、を有している。モータ111は、電力供給を受けて作動する。減速機112は、モータ111の出力を減速させる。ジェネレータ113は、モータ111に供給する電気を発電する。
【0027】
ここで、ジェネレータ113は、始動装置と発電機を兼ね備えたスタータジェネレータである。ジェネレータ113は、エンジンEを始動させる始動装置として機能するとともに、エンジンEから動力を受けて発電する発電機としても機能する。後述の図3に示すように、エンジンEは、燃料供給システム2によってインジェクタ3から高圧燃料を噴射するとともに、点火プラグ4によって点火することで運転を開始する。
【0028】
エンジンEは、単気筒エンジンである。エンジンEは、例えば1ロータのロータリエンジンである。詳細は後述するが、コントローラ10は、エンジンEの始動及び再始動に際し、始動装置としてのジェネレータ113によってエンジン回転数を常用回転まで上昇させる。ここでいう「常用回転」とは、エンジンEによる発電に適した回転域をいう。
【0029】
エンジンEは、車両100の駆動輪101(ここでは前輪)に対して非連結とされた、発電専用のエンジンである。すなわち、車両100を走行させるための動力は、モータ111により生成される。モータ111により生成された動力は、減速機112により変速された後、デファレンシャル装置を介して駆動輪101(ここでは前輪)に伝達される。
【0030】
車両100は、バッテリBを備えている。バッテリBは、ジェネレータ113によって発電された電気を、発電用のインバータを介して充電する。バッテリBは、そこに充電された電気をモータ用のインバータによって変換し、モータ111に出力する。
【0031】
(エンジンの概略構成)
図2に示すように、本実施形態に係るエンジンEは、発電用の燃料をインジェクタ3から噴射させるための燃料供給システム2と、コントローラ10と、を備えている。この燃料供給システム2は、前述のインジェクタ3に加えて、燃料タンク21と、低燃圧ポンプ22と、高燃圧ポンプ23と、燃料配管24と、リリーフ弁25と、を備えている。
【0032】
ここで、燃料配管24は、低圧側配管24aと、高圧側配管24bと、バイパス配管24cと、を有している。低圧側配管24aは、低燃圧ポンプ22及び高燃圧ポンプ23を接続している。高圧側配管24bは、高燃圧ポンプ23及びインジェクタ3を接続している。バイパス配管24cは、高燃圧ポンプ23をバイパスして高圧側配管24b及び低圧側配管24aを接続している。
【0033】
燃料タンク21は、発電用の燃料を貯留する。燃料タンク21は、車両100内に配置されている。
【0034】
低燃圧ポンプ22は、燃料タンク21内の燃料を吸入し、これを加圧した後に吐出する。低燃圧ポンプ22は、燃料タンク21の内部に配置されている。低燃圧ポンプ22は、例えばバッテリBから電力を受けて作動する。低燃圧ポンプ22から吐出された燃料は、低圧側配管24aを介して高燃圧ポンプ23に供給される。
【0035】
高燃圧ポンプ23は、エンジンEの駆動軸E1に連結され、燃料を高圧化して吐出するように構成されている。具体的に、この高燃圧ポンプ23は、圧力室23aと、スピル弁23bと、プランジャ23cと、吐出弁23dと、を有している。
【0036】
圧力室23aは、低圧側配管24aから燃料を受け入れる。圧力室23aにおける燃料の入口は、スピル弁23bによって開閉される。圧力室23aは、高圧側配管24bに燃料を吐出する。圧力室23aにおける燃料の出口は、吐出弁23dによって開閉される。圧力室23aは、「プランジャ室」と呼ぶこともできる。
【0037】
スピル弁23bは、コントローラ10に電気的に接続された電磁弁である。スピル弁23bの閉弁時期、ひいては圧力室23aへの燃料の供給量は、コントローラ10からスピル弁23bに入力される制御信号によって制御される。
【0038】
プランジャ23cは、圧力室23a内の圧力を変化させる。プランジャ23cは、カム23eに連結されている。このカム23eは、エンジンEの駆動軸E1に連結されており、エンジンEの回転数(エンジン回転数)に応じて回転する。カム23eが回転することで、プランジャ23cが下降と上昇を繰り返す。プランジャ23cが動作することで、圧力室23a内の燃料が高圧化される。
【0039】
吐出弁23dは、逆止弁である。吐出弁23dが前記出口を開放することで、プランジャ23cによって高圧化された燃料が、圧力室23aから高圧側配管24bへと吐出される。吐出弁23dは、高圧側配管24bから圧力室23aへの燃料の逆流を防止する。吐出弁23dは、「チェック弁」と呼ぶこともできる。
【0040】
高圧燃料の吐出メカニズムについて説明する。
【0041】
高燃圧ポンプ23は、プランジャ23cが下降する行程でスピル弁23bを開き、低圧側から圧力室23aに燃料を吸入する。その後、プランジャ23cが上昇する行程初期ではスピル弁23bは開かれているので、圧力室23aに吸入した燃料は、上昇行程初期では低圧側に流出する(燃料が戻る)。その後、燃料の吐出量に見合ったタイミングでスピル弁23bを閉じると、低圧側への燃料の流出が遮断されて圧力室23a内の燃料が昇圧し、吐出側のチェック弁(逆止弁23d)が開かれて燃料が吐出される。高圧燃料が吐出されるタイミングでは、スピル弁23bは閉じられるようになっている
燃料配管24の高圧側配管24bは、高燃圧ポンプ23から吐出される高圧燃料を流通させる。高圧側配管24bには、高圧燃料を噴射するインジェクタ3が接続されている。本実施形態に係るエンジンEは、前述のように単気筒エンジンである。したがって、1つのインジェクタ3のみが、高圧側配管24bに接続されている。
【0042】
図2に示すように、燃料配管24のバイパス配管24cは、高圧側配管24bに接続される上流端部と、高燃圧ポンプ23を迂回して低圧側配管24aに接続される下流端部と、を有している。このバイパス配管24cには、リリーフ弁25が設けられている。
【0043】
具体的に、本実施形態に係るリリーフ弁25は、高圧側配管24b内の燃圧が所定の開弁圧まで上昇したときに開弁する一方、所定の閉弁圧まで下降したときに閉弁する機械式のリリーフ弁である。リリーフ弁25が開弁することで、高圧側配管24b内の高圧燃料が、バイパス配管24cを通じて低圧側配管24aへと戻り、高圧側配管24b内の燃圧が低下する。
【0044】
また、高圧側配管24bには、燃圧センサ11が設けられている。この燃圧センサ11は、高燃圧ポンプ23から吐出された高圧側配管24b内の燃圧を検出するように構成されている。そして、燃圧センサ11の検出信号は、コントローラ10に送られるようになっている。なお、燃圧センサ11は、インジェクタ3内の燃圧を検出したり、バイパス配管24c内におけるリリーフ弁25の上流側(バイパス配管24cの入口側)の燃圧を検出したりするものであってもよい。なお、燃圧センサ11の出力上限Plは、例えば図8に示すように、リリーフ弁25の開弁圧以下であってもよい。
【0045】
(車両の制御系)
図3は、エンジンEの燃料系異常診断装置1の構成を例示する機能ブロック図である。この燃料系異常診断装置1は、燃圧センサ11と、エンジンEの燃料供給システム2、インジェクタ3及び点火プラグ4と、コントローラ10と、を備えている。
【0046】
コントローラ10は、CPU、ROM、RAM、入出力バス等を有するマイクロコンピュータである。コントローラ10は、バッテリ用のモジュール、パワートレイン全体を司るモジュール、モータ111用のモジュール、ジェネレータ113用のモジュール、エンジンE用のモジュール等、複数のモジュールを組み合わせたものであってもよい。
【0047】
コントローラ10には、前記燃圧センサ11の検出信号に加え、バッテリBの電圧センサ12及び電流センサ13それぞれの検出信号と、車両100のアクセル開度センサ14及び車速センサ15それぞれの検出信号と、エンジンEの回転数を検出するエンジン回転センサ16の検出信号と、が入力されるようになっている。
【0048】
コントローラ10は、各種センサから入力された検出信号に基づいて、車両100を構成する各アクチュエータに制御信号を入力する。制御信号の入力対象には、電気駆動ユニット110と、エンジンEの燃料供給システム2、インジェクタ3及び点火プラグ4と、が含まれている。それらアクチュエータに制御信号を入力することで、コントローラ10が、車両100の走行を制御する。
【0049】
これらのセンサ及びアクチュエータは、それぞれ、通信経路5を介してコントローラ10に接続されている。通信経路5は、各センサ及びアクチュエータと、コントローラ10との間で信号を送受させる。通信経路5における通信プロトコロルには、例えばCAN(Controller Area Network)を採用してもよい。
【0050】
例えば、コントローラ10は、車両100の駆動力制御に際しては、図4に示す処理を実行する。この図4は、車両100の駆動力制御に関する処理を例示するフローチャートである。
【0051】
まず、図4のステップS1において、コントローラ10は、車両100が起動状態にあるか否か(Ready ON?)を判定する。この判定がYESになるまで、コントローラ10はステップS1の判定を繰り返す。
【0052】
続くステップS2において、コントローラ10は、電圧センサ12及び電流センサ13の検出信号に基づいて、バッテリBのSOCと、を決定する。また、このステップS2において、コントローラ10は、後述の発電禁止フラグも読み込む。
【0053】
続くステップS3において、コントローラ10は、アクセル開度センサ14及び車速センサ15の検出信号に基づいて、モータ111の要求駆動力を計算する。なお、このステップS3、又は、後続のステップS4において、前記発電禁止フラグを読み込んでもよい。ステップS2とステップS3の順番を入れ替えてもよい。
【0054】
続くステップS4において、コントローラ10は、ステップS2で計算したSOCと、ステップS3で計算した要求駆動力とに基づいて、モータ111の要求電力量を算出し、その算出結果に基づいてエンジンEによる発電の要否を判定する。この判定がNOの場合(つまり、エンジンEの運転が不要な場合)、コントローラ10は、後述のステップS5及びステップS6をスキップして、制御プロセスをステップS7へと進める。
【0055】
一方、ステップS4の判定がYESの場合(つまり、エンジンEの運転が必要な場合)、コントローラ10は、制御プロセスをステップS5に進める。
【0056】
ステップS5において、コントローラ10は、ステップS3で読み込んだ発電禁止フラグに基づいて、エンジンEによる発電が許容されているか否か(発電許容?)を判定する。発電禁止フラグが0の場合、コントローラ10は、エンジンEによる発電が許容されていると判断する。発電禁止フラグが1の場合、コントローラ10は、エンジンEによる発電が禁止されていると判断する。ステップS5の判定がNOの場合(つまり、エンジンEによる発電が禁止されている場合)、コントローラ10は、ステップS6をスキップして、制御プロセスをステップS7に進める。
【0057】
なお、本実施形態では、エンジンEの燃料供給システム2、特にその高燃圧ポンプ23に故障が生じたときに、エンジンEによる発電が禁止されるようになっている。
【0058】
一方、ステップS5の判定がYESの場合(つまり、エンジンEによる発電が禁止されていない場合)、コントローラ10は、制御プロセスをステップS6に進める。
【0059】
続くステップS6において、コントローラ10は、ジェネレータ113の要求発電量を計算するとともに、その要求発電量を実現するように、エンジンEの要求エンジン駆動力を計算する。その後、コントローラ10は、それらの計算結果に基づいて、エンジンEを駆動させる。コントローラ10は、エンジンEの要求エンジン駆動力に基づいて、燃料供給システム2における高圧燃料の目標燃圧を定め、その目標燃圧を実現するように、スピル弁23bの閉弁時期等を定める。コントローラ10は、そうして定めた閉弁時期等に基づいて、高燃圧ポンプ23の各部を作動させる。これにより、エンジンEが駆動される。
【0060】
続くステップS7において、コントローラ10は、ステップS3で算出した要求駆動力を実現するように、モータ111等のアクチュエータに制御信号を入力し、これを駆動する。
【0061】
(燃料系の異常診断に関する処理)
続いて、燃料系の異常診断(特に、燃料供給システム2の故障判定)に関する処理について、図5図8を参照して詳細に説明する。ここで、図5は、エンジンEの始動処理と、リリーフ弁25の開弁判定と、その判定結果に基づいた故障判定に関する処理を例示するフローチャートである。また、図6は、前記開弁判定に関する処理を例示するフローチャートであり、図7は、前記開弁判定のリトライに関する処理を例示するフローチャートである。
【0062】
その他、図8は、リリーフ弁25の開弁判定における燃圧の推移を模式化して示す図である。なお、図8の横軸は時間を示しており、図8縦軸は燃圧の大きさを示している。
【0063】
まず、図5のステップS101において、コントローラ10は、エンジンEの発電が要求されているという条件と、エンジンEの発電が禁止されていないという条件と、が双方とも満足されているか否かを判定する。この判定は、図4のフローにおいて、ステップS4及びステップS25を経由してステップS6に進む条件が整っているか否かを判断することに等しい。
【0064】
ステップS101の判定がNOの場合、コントローラ10は、ステップS101の判定に戻る。ステップS101の判定がYESの場合、コントローラ10は、制御プロセスをステップS102に進める。コントローラ10は、ステップS101の判定がYESになるまで、同ステップの判定を繰り返す。
【0065】
ステップS102において、コントローラ10は、エンジンEの始動処理を実行する。具体的に、コントローラ10は、始動装置としてのジェネレータ113によってエンジンEを始動させ、そのエンジン回転数を常用回転数に向けて立ち上げる。エンジンEの始動に伴いプランジャ23cが動作を開始することになるから、その開始と前後してスピル弁23bを作動させることで、前述した吐出メカニズムに基づき、高圧側配管24bに高圧燃料が吐出される。エンジン回転数の立ち上げ完了後、コントローラ10は、インジェクタ3から高圧燃料を吐出させ、点火プラグ4によって高圧燃料に点火することで、エンジンEの運転を開始させる。
【0066】
エンジンEの運転を開始する前に、コントローラ10は、ステップS102から続くステップS103の処理を実行する。ステップS103の処理は、例えば、エンジンEの始動と同期して開始されるようになっている。
【0067】
具体的に、コントローラ10は、ステップS103において第1タイマ10aによるカウントを開始する。このカウント時間は、エンジンEの始動を開始してからの経過時間に相当する。
【0068】
続くステップS104において、コントローラ10は、燃圧センサ11の検出信号に基づいて、第1タイマ10aによるカウント開始時点(つまり、エンジンEの始動開始時点)における燃圧の値を記録する。
【0069】
続くステップS105において、コントローラ10は、リリーフ弁25が開弁したか否かを判定する。詳しくは、ステップS105において、コントローラ10は、燃圧センサ11が検出した燃圧に基づいて、該燃圧がリリーフ弁25の開弁圧Poに到達し得るか否かを判定する。
【0070】
さらに、ステップS105において、コントローラ10は、燃料配管24内における高圧側の燃圧が開弁圧Poに到達し得ると判定された後に、該燃圧が所定の第1閾値P1を下回った場合に、リリーフ弁25が開弁したと判定する。
【0071】
具体的に、ステップS105では、図6に示すフローが実行される。このフローでは、まず、そのステップS201において、各種センサの検出信号が読み込まれる。ステップS201で読み込まれる検出信号には、例えば、エンジン回転センサ16の検出信号と、燃圧センサ11の検出信号と、が含まれる。
【0072】
続くステップS202において、コントローラ10は、例えばジェネレータ113がエンジンEを始動させたことで、エンジンEの駆動軸E1が回転中であるか否かを判定する。
【0073】
ここで、前記駆動軸E1が回転中であるということは、高燃圧ポンプ23のプランジャ23cが動作していると判断することができる。その場合、高燃圧ポンプ23のスピル弁23bが仮に故障しているならば、該高燃圧ポンプ23から多量の高圧燃料が吐出されて、その結果、リリーフ弁25が開弁する可能性があると判断することができる。一方、前記駆動軸E1が回転していない場合、そもそも高燃圧ポンプ23は作動しておらず、リリーフ弁25が開弁する可能性はないと判断することができる。
【0074】
そこで、ステップS202の判定がYESの場合、コントローラ10は、リリーフ弁25が開弁し得ると判断し、制御プロセスをステップS203に進める。一方、ステップS202の判定がNOの場合、リリーフ弁25が開弁する可能性はないと判断し、図6に示すフローからリターンする。後者の場合、コントローラ10は、「リリーフ弁25は開弁していない」と判断する。
【0075】
続いて、ステップS203において、コントローラ10は、燃圧センサ11によって検出された燃圧が、所定の第2閾値P2を超えたか否かを判定する。第2閾値P2は、リリーフ弁25の開弁圧及び燃圧センサ11の出力上限Pl以下であり、かつ後述の第1閾値P1以上の値としてもよい(図8を参照)。
【0076】
ステップS203の処理を言い換えると、コントローラ10は、エンジンEの始動又は再始動に際してエンジン回転数が上昇している最中に、燃圧が第2閾値P2と交差して該第2閾値P2を超えた場合に、燃料配管24、特にその高圧側配管24b内の燃圧が開弁圧に到達し得ると判定することになる。
【0077】
ステップS203の判定がYESの場合、コントローラ10は、制御プロセスをステップS204に進める。このステップS204において、コントローラ10は、エンジンEの始動又は再始動に際して燃圧が第2閾値P2を超えたことを経験したことを示す、経験フラグを1にする。この経験フラグは、例えば、エンジンEが始動される度に、その値がゼロにリセットされるようになっている。その後、コントローラ10は、制御プロセスをステップS205に進める。
【0078】
一方、ステップS203の判定がNOの場合、コントローラ10は、ステップS204をスキップして、制御プロセスをステップS205に進める。
【0079】
ステップS205において、コントローラ10は、前記経験フラグが1であるか否かを判定し、この判定がYESの場合は制御プロセスをステップS206に進め、NOの場合は制御プロセスをステップS202に戻す。
【0080】
つまり、エンジンEが回転している限り、燃圧が前記第2閾値P2を超えたことが一度でも経験されると、ステップS205からステップS206に制御プロセスが進むことになる。一方、燃圧が前記第2閾値P2を超えない限り、ステップS205からステップS206に制御プロセスが進まないようになっている。
【0081】
ステップS206において、コントローラ10は、燃圧センサ11によって検出された燃圧が、所定の第1閾値P1を下まわったか否かを判定する。第1閾値P1は、リリーフ弁25の開弁圧及び燃圧センサ11の出力上限Pl未満の値であって、かつ前述の第1閾値P1未満の値としてもよい。
【0082】
ステップS206の判定がYESの場合、コントローラ10は、制御プロセスをステップS207に進める。このステップS207において、コントローラ10は、第2タイマ10bによるタイムカウントを開始する。このカウント時間は、燃圧が第1閾値P1を下まわってからの経過時間に相当する。
【0083】
一方、ステップS206の判定がNOの場合、コントローラ10は、制御プロセスを、ステップS206からステップS202に戻す。
【0084】
そして、ステップS208において、コントローラ10は、第2タイマ10bによるカウントを開始してから所定の第1期間T1内に、燃圧センサ11によって検出された燃圧が、高圧燃料の目標燃圧未満の第3閾値P3以下になったことと、第2タイマ10bによるカウントを開始してから所定の第2期間T2(>第1期間T1)に至るまで、前記燃圧が、前記第3閾値P3以下になって以降、その状態を維持していることと、をそれぞれ判定する(図8を参照)。
【0085】
ここで、第1期間T1は、後述の第3期間及び第4期間よりも短い。第1期間T1は、例えば120ms以上240ms以下、さらに詳細には150ms以上210ms以下としてもよい。一方、第2期間T2は、第1期間T1よりも長く、かつ第3期間及び第4期間よりも短い。第2期間T2は、例えば400ms以上800ms以下、さらに詳細には500ms以上700ms以下としてもよい(図8を参照)。
【0086】

ステップS208の条件が双方とも満足された場合、コントローラ10は、「リリーフ弁25は開弁している(リリーフ弁:開弁)」と判断する(ステップS209)。一方、ステップS208の条件の少なくとも一方が満足されなかった場合、コントローラ10は、「リリーフ弁25は開弁していない(リリーフ弁:閉弁)」と判断する(ステップS210)。
【0087】
続いて、図6に示すフローから、図5のフローに戻る。そして、ステップS106以降の処理において、コントローラ10は、ステップS105でリリーフ弁25が開弁したと判定された場合に、該判定結果に基づいて高燃圧ポンプ23における故障の有無を決定する。
【0088】
具体的に、ステップS105から続くステップS106において、コントローラ10は、リリーフ弁25が開弁しているか否か(リリーフ有り?)を判定する。この判定がNOの場合、コントローラ10は、高燃圧ポンプ23に故障は生じていないと判定すべく、制御プロセスをステップS112に進める。それに続くステップS113において、コントローラ10は、前記発電禁止フラグに0を代入する。
【0089】
一方、ステップS106の判定がYESの場合、コントローラ10は、制御プロセスをステップS108に進め、ステップS105及び図6に例示したリリーフ判定のリトライ条件を判定する。
【0090】
その後、続くステップS107-ステップS115において、コントローラ10は、エンジンEの始動に際してリリーフ弁25が開弁したと判定された場合には、故障の有無の決定を保留してエンジンEを停止するとともに、リリーフ弁25の閉弁を待つように、該停止から所定の第3期間にわたって待機した後にエンジンEを再始動する。そして、コントローラ10は、エンジンEの再始動に際し、リリーフ弁25が開弁したと再び判定された場合には、高燃圧ポンプ23に故障が生じていると決定する。
【0091】

具体的に、ステップS107では、図7に示すフローが実行される。このフローでは、まず、そのステップS301において、各種センサの検出信号が読み込まれる。ステップS301で読み込まれる検出信号には、例えば、第1タイマ10aによるカウントと、燃圧センサ11の検出信号と、が含まれる。
【0092】
続くステップS302において、コントローラ10は、図5のステップS104で記録したエンジン始動時の燃圧が、所定の第3閾値P3以上であったか否かを判定する。第3閾値P3は、例えば、前記第1閾値P1以上、かつ燃圧センサ11の出力上限Pl以下の値としてもよい(図8を参照)。このステップS302の判定は、必須ではない。
【0093】
ステップS302の判定がYESの場合、燃圧が始動時にある程度高まっていたことに起因して、リリーフ弁25が開弁してしまったと判断することができる。この場合、コントローラ10は、後述の要因に起因してリリーフ弁25が開弁した、すなわち、燃料供給システム2に故障が生じていない可能性が考えられるため、リトライ条件を成立させるべく、制御プロセスをステップS303に進める。
【0094】
一方、ステップS302の判定がNOの場合、燃圧が始動時にさほど高まっていないにも関わらず、リリーフ弁25が開弁してしまったと判断することができる。この場合、コントローラ10は、後述の要因以外の事象に起因してリリーフ弁25が開弁した、すなわち、燃料供給システム2になんらかの故障が生じているものと判断されるため、制御プロセスをステップS305に進める。この場合、コントローラ10は、リトライ条件を成立させることなく図7のフローを終了する。
【0095】
ステップS303において、コントローラ10は、図5のステップS103からカウントを介した第1タイマ10aのカウント時間(エンジンEの始動を開始してからの経過間)が、所定の第4期間を下まわっているか否かを判定する。この第4期間は、エンジンEの始動に要する時間程度に設定すればよい。第4期間は、例えば3秒以上7秒以下、さらに詳細には4秒以上6秒以下に設定してもよい。
【0096】
ステップS303の判定がYESの場合、リトライ前の初回始動時であると判断することができる。この場合、コントローラ10は、ステップS105のリリーフ判定をリトライすべく、制御プロセスをステップS304に進める。コントローラ10は、ステップS304でリトライ条件が成立したと判断する。
【0097】
一方、ステップS303の判定がNOの場合、リトライ後の再始動時であると判断することができる。この場合、コントローラ10は、リリーフ判定を繰り返しリトライしないように、制御プロセスをステップS305に進める。コントローラ10は、ステップS305でリトライ条件が不成立であると判断する。
【0098】
図7のフローから図5のフローに戻ると、コントローラ10は、制御プロセスをステップS108に進める。ステップS108において、コントローラ10は、リトライ条件が成立したか否かを判定する。
【0099】
ステップS108の判定がYESの場合(リトライ条件が成立している場合)、コントローラ10は、故障の有無の決定を保留してエンジンEを一旦停止させるべく、制御プロセスをステップS109に進める。
【0100】
一方、ステップS108の判定がNOの場合(リトライ条件が不成立の場合)、コントローラ10は、高燃圧ポンプに故障が生じていると決定すべく、制御プロセスをステップS114に進める。続くステップS115において、コントローラ10は、前記発電禁止フラグに1を代入する。
【0101】
ステップS109において、コントローラ10は、エンジンEの始動をストップする。具体的に、コントローラ10は、点火プラグ4の点火を停止させるとともに、インジェクタ3からの燃料噴射を停止させる。これにより、高燃圧ポンプ23の駆動も停止する。
【0102】
続くステップS110において、コントローラ10は、エンジンEの始動ストップ後、所定の第3期間にわたって、これを再始動させることなく待機する。高燃圧ポンプ23に故障が生じていない場合、この待機によって燃圧が低下して、リリーフ弁25が閉弁することになる。第3期間の長さは、本実施形態では第4期間に一致している。第3期間は、例えば3秒以上7秒以下、さらに詳細には4秒以上6秒以下に設定してもよい。
【0103】
続くステップS111おいて、コントローラ10は、エンジンEを再始動させる(始動リトライ)。具体的に、コントローラ10は、インジェクタ3からの燃料噴射を再開させるとともに、点火プラグ4の点火を再開させる。これにより、高燃圧ポンプ23の駆動も再開する。
【0104】
ステップS111の処理が完了すると、コントローラ10は、制御プロセスをステップS104に戻す。再始動後のステップS104では、再始動時における燃圧の値が記録される。
【0105】
その後、仮にステップS106の判定が再びYESになったものとする。この状況は、再始動に際し、リリーフ弁25が開弁していることが再び検知された状況に相当する。この場合、リトライ前のステップS109で待機したことで、リトライ後のステップS107では、図7のステップS303の判定が必然的にNOとなる。これにより、始動リトライ時にリリーフ弁25が開弁していることが再び検知された場合に、高燃圧ポンプ23になんらかの故障が生じていると判断することができる。
【0106】
以上説明したように、本実施形態によれば、コントローラ10は、エンジンEの始動に際してリリーフ弁25が開弁していることが判定された場合には、エンジンEを停止して待機した後に、これを再始動する(図5のステップS106-ステップS111を参照)。これにより、リリーフ弁25の閉弁を待ってからエンジンEを再始動することができるため、エンジンEの動作不良を抑制することができる。
【0107】
さらに、図5のステップS106-ステップS108及び図7に例示したように、コントローラ10は、エンジンEの再始動に際してリリーフ弁25が開弁していることが再び判定された場合には、高燃圧ポンプ23(例えば、スピル弁23b)に故障が生じていると判断する。これにより、燃料の温度上昇、ジェネレータ113等から受ける振動等による開弁を誤判定することなく、高燃圧ポンプ23のより正確な故障判定を実現することができる。
【0108】
また、図2に例示したように、エンジンEは、1つのインジェクタ3を備えた単気筒エンジンであるから、複数気筒のエンジンと比べて、燃料供給系全体の容積はコンパクトなものとなる。この場合、燃圧は相対的に高まり易くなるから、燃料の温度上昇等の事情と相まって、燃圧の高圧化を招き易くなる。そのため、前述の如き正確な故障判定が、取り分け有効なものとなる。
【0109】
また、図1に例示したように、エンジンEは、発電専用のエンジンEであるから、車両走行用のエンジンと比べて、燃料供給系全体の容積はコンパクトなものとなる。この場合、燃圧は相対的に高まり易くなるから、燃料の温度上昇等の事情と相まって、燃圧の高圧化を招き易くなる。そのため、前述の如き正確な故障判定が、取り分け有効なものとなる。
【0110】
また、発電専用のエンジンEであるから、その始動をリトライしたとしても、車両走行用のエンジンEと比べて、走行フィーリングに与える影響を、可能な限り抑えることができる。
【符号の説明】
【0111】
100 車両
101 駆動輪
110 電気駆動ユニット
113 ジェネレータ(始動装置)
E エンジン
E1 駆動軸
1 燃料系異常診断装置
2 燃料供給システム
23 高燃圧ポンプ
23b スピル弁
24b 高圧側配管(燃料配管)
25 リリーフ弁
3 インジェクタ
10 コントローラ
11 燃圧センサ
Po 開弁圧
P1 第1閾値
P2 第2閾値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8