(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025022119
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】ミシン及びミシン管理システム
(51)【国際特許分類】
D05B 19/12 20060101AFI20250206BHJP
【FI】
D05B19/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023126399
(22)【出願日】2023-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003399
【氏名又は名称】JUKI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今野 貴史
(72)【発明者】
【氏名】グエン バオ ゴック
(72)【発明者】
【氏名】中山 元
(72)【発明者】
【氏名】近藤 耕一
【テーマコード(参考)】
3B150
【Fターム(参考)】
3B150CE01
3B150CE03
3B150CE23
3B150CE24
3B150CE29
3B150GG10
3B150LA63
3B150LA92
3B150LB02
3B150NA59
3B150NA80
3B150NB18
3B150NB20
3B150QA06
3B150QA07
3B150QA08
(57)【要約】
【課題】操作パネルの操作性を向上すること。
【解決手段】ミシンは、複数の操作パネルと、複数の操作パネルのそれぞれと通信可能であり、少なくとも一つの操作パネルが操作されることにより生成された操作データを受信して、ミシン動作部を制御するミシンコントローラと、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の操作パネルと、
複数の前記操作パネルのそれぞれと通信可能であり、少なくとも一つの前記操作パネルが操作されることにより生成された操作データを受信して、ミシン動作部を制御するミシンコントローラと、を備える、
ミシン。
【請求項2】
複数の前記操作パネルのそれぞれに第1ソフトウエアがインストールされ、
前記ミシンコントローラに第2ソフトウエアがインストールされ、
前記第2ソフトウエアは、前記第1ソフトウエアからのリクエストに基づいて操作画面を前記第1ソフトウエアに提供する、
請求項1に記載のミシン。
【請求項3】
前記第1ソフトウエアは、Webブラウザであり、
前記第2ソフトウエアは、Webサーバである、
請求項2に記載のミシン。
【請求項4】
前記Webサーバは、前記操作パネルが操作されることにより生成されたカスタマイズデータを受信して、前記カスタマイズデータに基づいてカスタマイズした操作画面を前記Webブラウザに提供する、
請求項3に記載のミシン。
【請求項5】
前記操作パネルは、第1操作パネルと、前記第1操作パネルよりも外形が小さい第2操作パネルと、を含み、
前記第2操作パネルは、前記第1操作パネルよりもミシン針に近い位置に配置される、
請求項3に記載のミシン。
【請求項6】
前記第1ソフトウエアは、クライアントであり、
前記第2ソフトウエアは、サーバである、
請求項2に記載のミシン。
【請求項7】
請求項1に記載のミシンを管理する管理装置を備え、
前記管理装置は、入力装置と、複数の前記ミシンのそれぞれと通信可能であり、前記入力装置が操作されることにより生成された入力データに基づいて、少なくとも一つのミシンに制御指令を送信する管理コントローラと、を有する、
ミシン管理システム。
【請求項8】
前記管理装置は、表示装置を有し、
前記管理コントローラは、複数の前記ミシンのそれぞれのミシンデータを前記表示装置に表示させる、
請求項7に記載のミシン管理システム。
【請求項9】
前記管理コントローラは、前記ミシンデータを前記操作パネルに表示させる、
請求項8に記載のミシン管理システム。
【請求項10】
前記管理コントローラは、前記入力装置が操作されることにより生成されたカスタマイズデータに基づいて、前記操作パネルの操作画面をカスタマイズする、
請求項8に記載のミシン管理システム。
【請求項11】
前記管理コントローラは、前記入力装置及び前記操作パネルの少なくとも一方が操作されることにより生成された権限設定データに基づいて、前記管理装置と前記操作パネルとに操作権限を設定する、
請求項7に記載のミシン管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、ミシン及びミシン管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ミシンに係る技術分野において、特許文献1に開示されているような、操作パネルを有するミシンが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
操作パネルがミシンのオペレータにより操作されることにより、ミシンの動作条件が変更される。操作パネルの操作性の向上が要望されている。
【0005】
本明細書で開示する技術は、操作パネルの操作性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、ミシンを開示する。ミシンは、複数の操作パネルと、複数の操作パネルのそれぞれと通信可能であり、少なくとも一つの操作パネルが操作されることにより生成された操作データを受信して、ミシン動作部を制御するミシンコントローラと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本明細書で開示する技術によれば、操作パネルの操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るミシン管理システムを模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るミシン管理システムを示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るミシンを示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るミシンの動作を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施形態に係るログイン画面を示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る操作画面を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る操作画面をカスタマイズする手順を説明するための図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る管理装置の動作を説明するための図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る操作権限を説明するための図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係るミシンにエラーが生じた場合のミシン管理システムの動作を示す図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係るコンピュータシステムを示すブロック図である。
【
図12】
図12は、別の実施形態に係るミシンを示す図である。
【
図13】
図13は、別の実施形態に係るミシンを示す図である。
【
図14】
図14は、別の実施形態に係るミシンを示す図である。
【
図15】
図15は、別の実施形態に係るミシン管理システムを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本技術に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本技術は実施形態に限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0010】
[ミシン管理システム]
図1は、実施形態に係るミシン管理システム1を模式的に示す図である。
図2は、実施形態に係るミシン管理システム1を示すブロック図である。ミシン管理システム1は、ミシン2を管理する管理装置3を備える。ミシン2は、縫製工場に設置される。ミシン2は、縫製工場において稼働する。ミシン2は、工業用ミシンである。複数のミシン2が縫製工場に設置される。ミシン2により糸で縫製対象物が縫合されることにより、縫製品が生産される。縫製対象物として、生地が例示される。縫製品として、衣服が例示される。管理装置3は、ミシン2が設置された施設と同一の施設に設置される。すなわち、管理装置3は、縫製工場に設置される。
【0011】
縫製工場においては、複数のミシン2により縫製品が生産される。縫製工場には、用途に応じた複数種類のミシン2が設置される。縫製工場において、ミシン2は、縫製品を生産するための複数の工程のそれぞれに対応するように複数種類設置される。ミシン2の種類として、身頃を縫い合わせるための本縫いミシン、身頃にボタンを付けるためのボタン付け用ミシン、及び身頃にポケットを付けるためのポケット付け用ミシンが例示される。1つの縫製工場には、多種類且つ多数のミシン2が設置される。なお、説明を簡単にするため、
図1には3つのミシン2が示されている。第1ミシン2Aは、縫製品を生産するための第1工程において使用される。第2ミシン2Bは、縫製品を生産するための第2工程において使用される。第3ミシン2Cは、縫製品を生産するための第3工程において使用される。なお、縫製工場には、1つの種類のミシン2が複数台設置されてもよい。
【0012】
縫製工場において、管理者及びオペレータが勤務する。管理者は、オペレータ及びミシン2を管理する。オペレータは、ミシン2を操作して縫製処理を実施する。管理者及びオペレータは、ミシン2のユーザである。管理者は、1人でもよいし複数人でもよい。オペレータは、複数人でもよいし1人でもよい。例えば、1人のオペレータが複数台のミシン2を操作してもよい。
【0013】
管理装置3は、表示装置4と、入力装置5と、管理コントローラ6とを有する。表示装置4は、表示データを表示する。表示装置4は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイのようなフラットパネルディスプレイを含む。入力装置5は、管理者に操作されることにより、入力データを生成する。なお、入力装置5は、オペレータに操作されてもよい。入力装置5は、表示装置4の表示画面に配置されるタッチパネル(タッチセンサ)を含む。なお、入力装置5は、コンピュータ用キーボードでもよいし、マウスでもよいし、音声入力装置でもよい。管理コントローラ6は、コンピュータシステムを含む。管理コントローラ6は、少なくとも1つのプロセッサと、プロセッサが実行可能なコンピュータプログラムを格納するメインメモリとを有する。
【0014】
ミシン2は、複数の操作パネル7と、ミシンコントローラ8とを有する。操作パネル7は、表示装置9と、操作装置10と、マイクロコンピュータ11とを含む。表示装置9は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイのようなフラットパネルディスプレイを含む。操作装置10は、オペレータに操作されることにより、操作データを生成する。なお、操作装置10は、管理者に操作されてもよい。操作装置10は、表示装置9の表示画面に配置されるタッチパネル(タッチセンサ)を含む。なお、操作装置10は、コンピュータ用キーボードでもよいし、マウスでもよいし、音声操作装置でもよい。マイクロコンピュータは、少なくとも1つのプロセッサと、プロセッサが実行可能なコンピュータプログラムを格納するメインメモリとを有する。ミシンコントローラ8は、コンピュータシステムを含む。ミシンコントローラ8は、少なくとも1つのプロセッサと、プロセッサが実行可能なコンピュータプログラムを格納するメインメモリとを有する。
【0015】
ミシンコントローラ8は、複数の操作パネル7のそれぞれと通信可能である。第1ミシン2Aのミシンコントローラ8は、第1ミシン2Aの複数の操作パネル7のそれぞれと通信可能である。第2ミシン2Bのミシンコントローラ8は、第2ミシン2Bの複数の操作パネル7のそれぞれと通信可能である。第3ミシン2Cのミシンコントローラ8は、第3ミシン2Cの複数の操作パネル7のそれぞれと通信可能である。
【0016】
図1に示す例において、1台のミシン2は、2つの操作パネル7を有する。1台のミシン2が有する操作パネル7は、第1操作パネル71と、第1操作パネル71よりも外形が小さい第2操作パネル72とを含む。
【0017】
ミシンコントローラ8と操作パネル7とは、ケーブルを介して接続される。ミシンコントローラ8と操作パネル7とは、ケーブルを介して通信する。すなわち、ミシンコントローラ8と操作パネル7とは、有線通信する。なお、ミシンコントローラ8と操作パネル7とは、無線通信してもよい。
【0018】
ミシンコントローラ8は、ミシンコントローラ8に接続された複数の操作パネル7のうち少なくとも一つの操作パネル7が操作されることにより生成された操作データを受信して、ミシン動作部を制御する。ミシン動作部として、ミシン2が有するミシンモータ、並びにミシンモータが発生する動力により動作する針棒及び天秤が例示される。
【0019】
管理装置3は、縫製工場において複数のミシン2に共用される。管理装置3の数は、ミシン2の数よりも少ない。管理装置3は、複数のミシン2のそれぞれと通信可能である。管理装置3の管理コントローラ6は、ミシン2のミシンコントローラ8と通信する。管理コントローラ6とミシンコントローラ8とは、無線通信する。管理コントローラ6とミシンコントローラ8とは、ローカルエリアネットワーク(LAN:Local Area Network)を介して無線通信する。無線LANとして、Wifi(登録商標)が例示される。なお、管理コントローラ6とミシンコントローラ8とは、パーソナルエリアネットワーク(PAN:Personal Area Network)を介して無線通信してもよい。無線PANとして、Bluetooth(登録商標)が例示される。
【0020】
管理コントローラ6は、入力装置5が操作されることにより生成された入力データに基づいて、少なくとも一つのミシン2のミシンコントローラ8に制御指令を送信する。
【0021】
ミシンコントローラ8は、ミシンデータを管理コントローラ6に送信する。ミシンデータは、ミシン2の設定データ及びミシン2の稼働データを含む。ミシン2の設定データは、ミシン2の動作条件の設定値を含む。ミシン2の動作条件の設定値は、縫い目長さ、縫い目ピッチ、縫い目パターン、縫製対象物の送り速度、針数、糸の張力、及び縫製対象物の押さえ圧を含む。ミシン2の稼働データは、ミシン2の稼働履歴を示す。ミシン2の稼働履歴は、ミシン2の稼働日時、ミシン2の連続稼働時間、ミシン2の累積稼働時間、ミシン2が縫製した縫製対象物の種類、縫製時の針数、発生した警告やエラー情報、及びミシン2を操作したオペレータの少なくとも一つを含む。
【0022】
管理コントローラ6は、複数のミシン2のそれぞれのミシンデータを収集する。管理コントローラ6は、複数のミシン2のそれぞれのミシンデータを表示装置4に表示させる。また、管理コントローラ6は、収集したミシンデータを操作パネル7の表示装置9に表示させる。
【0023】
複数の操作パネル7のマイクロコンピュータ11のそれぞれに、第1ソフトウエアとしてWebブラウザ12がインストールされる。ミシンコントローラ8に、第2ソフトウエアとしてWebサーバ13がインストールされる。オペレータは、操作パネル7にインストールされているWebブラウザ12を介してWebサーバ13へアクセスする。Webサーバ13は、Webブラウザ12からのリクエストに基づいて、操作画面としてWebページ画面をWebブラウザ12に提供する。操作パネル7の表示装置9に操作画面としてWebページ画面が表示される。オペレータは、操作パネル7の表示装置9に表示された操作画面を操作することにより、ミシン2を操作することができる。
【0024】
操作パネル7のマイクロコンピュータ11にインストールされるWebブラウザ12は、Webブラウザアプリケーションソフトウエア(コンピュータプログラム)である。ミシンコントローラ8にインストールされるWebサーバ13は、操作パネル7のマイクロコンピュータ11にインストールされているWebブラウザ12からのリクエストに基づいて、ミシン2の操作パネル7の操作画面をWebブラウザ12に提供するアプリケーションソフトウエア(コンピュータプログラム)である。また、Webサーバ13は、操作パネル7において操作画面が操作されることにより生成された操作データを受信する。
【0025】
ミシンコントローラ8は、Webサーバ13からの操作データに基づいて、ミシン2を制御する制御指令を出力する。ミシンコントローラ8は、操作データに基づいて、ミシン動作部を制御する。
【0026】
ミシンコントローラ8は、ミシン2の動作条件をモニタする。ミシン2の動作条件は、縫い目長さ、縫い目ピッチ、縫い目パターン、縫製対象物の送り速度、針数、糸の張力、及び縫製対象物の押さえ圧を含む。ミシン2には、ミシン2の動作条件を検出するセンサが設けられる。センサとして、糸の張力を検出する張力センサ、及び縫製対象物の押さえ圧を検出する押さえ圧センサが例示される。ミシンコントローラ8は、センサの検出データを取得することにより、ミシン2の動作条件をモニタすることができる。また、ミシン2は、針棒及び天秤を動作させるためのミシンモータを有する。ミシンコントローラ8は、ミシンモータの駆動信号を取得することにより、ミシン2の動作条件をモニタすることができる。ミシンコントローラ8は、モニタされたミシン2の動作条件を記憶する。ミシンコントローラ8に記憶されるミシン2の動作条件は、現況動作条件及び履歴動作条件を含む。現況動作条件は、ミシン2の現在の動作条件を示す。履歴動作条件は、ミシン2の過去の動作条件を示す。
【0027】
Webサーバ13は、ミシンコントローラ8によりモニタされたミシン2の動作条件を示すパラメータを操作パネル7に送信する。操作パネル7は、Webサーバ13に操作データを送信する。ミシン2を操作するための操作データは、ミシン2のモータ制御命令、パラメータ変更命令、及びミシン動作モード変更命令を含む。
【0028】
[ミシン]
図3は、実施形態に係るミシン2を示す図である。ミシン2は、所謂本縫いミシンである。
図3に示すように、ミシン2は、ミシンテーブル22に設置される。ミシン2は、ミシンフレーム23を有する。
【0029】
ミシンフレーム23は、アーム23Aと、ベッド23Bと、ベース23Cと、ヘッド23Dとを有する。アーム23Aは、左右方向に長い。ベッド23Bは、アーム23Aの下方に配置される。ベッド23Bは、左右方向に長い。ベッド23Bは、アーム23Aと対向する。ベース23Cは、アーム23Aの右端部とベッド23Bとを繋ぐ。ベース23Cは、上下方向に長い。ヘッド23Dは、アーム23Aの左端部に設けられる。ヘッド23Dは、アーム23Aの左端部から下方に突出する。
【0030】
ミシン2は、針棒25と、天秤26と、針板27と、押さえ28と、糸調子29と、送り歯30と、ミシンモータ31とを備える。
【0031】
針棒25は、ミシン針24を保持する。針棒25は、上下方向に往復移動する。針棒25は、ヘッド23Dに支持される。ミシン針24は、上糸が通過する糸通し孔を有する。ミシン針24は、糸通し孔の内面で上糸を保持する。針棒25が上下方向に往復移動することにより、ミシン針24は、上糸を保持した状態で上下方向に往復移動する。
【0032】
天秤26は、ミシン針24に上糸を供給する。天秤26は、上下方向に往復移動する。天秤26は、アーム23Aに支持される。天秤26は、上糸を保持した状態で上下方向に往復移動する。天秤26は、上糸が通過する保持孔を有する。天秤26は、保持孔の内面で上糸を保持する。天秤26は、上下方向に往復移動することによって、縫製対象物の縫製に使用される上糸を繰り出したり、上糸を引き上げたりする。
【0033】
針板27は、針棒25の下方に配置される。針板27は、縫製対象物を下方から支持する。針板27は、針棒25の下方において縫製対象物を支持する。針棒25に保持されているミシン針24と針板27とは対向する。針板27は、ミシン針24が通過可能な針穴を有する。針板27に支持される縫製対象物を貫通したミシン針24は、針穴を通過する。針板27の下方に釜が配置される。釜は、縫製対象物に下糸を供給する。
【0034】
押さえ28は、針板27に支持される縫製対象物を上方から押さえる。押さえ28は、ミシン針24の周囲の少なくとも一部に配置される。押さえ28は、ヘッド23Dに支持される。押さえ28は、上下方向に移動可能である。
【0035】
糸調子29は、天秤26と針棒25との間において、ミシン針24に供給される上糸に張力を付与する。糸調子29は、ヘッド23Dに支持される。
【0036】
送り歯30は、針板27に支持される縫製対象物を前方に送るように動作する。送り歯30は、所定の送り軌道に従って移動することにより、縫製対象物を前方に送る。送り歯30は、針板27の下方に配置される。送り歯30は、送り軌道に従って移動することにより、針板27に設けられた開口から出没する。縫製対象物を送るとき、送り歯30の少なくとも一部は、針板27に設けられた開口を介して、針板27の上面から上方に突出する。
【0037】
ミシンモータ31は、針棒25、送り歯30、及び釜のそれぞれを動作させるための動力を発生する。ミシンモータ31は、針棒25を上下方向に往復移動させるための動力を発生する。ミシンモータ31は、釜を回転させるための動力を発生する。ミシンモータ31は、送り歯30を送り軌道に従って移動させるための動力を発生する。ミシンモータ31は、パルスモータを含む。ミシンモータ31は、アーム23Aの右部に支持される。
【0038】
第2操作パネル72は、第1操作パネル71よりもミシン針24に近い位置に配置される。
図3に示す例において、第1操作パネル71は、アーム23Aに配置される。第1操作パネル71は、第1操作パネル71の長手方向と左右方向とが一致するように配置される。第2操作パネル72は、ミシンテーブル22においてベッド23Bの左側に配置される。第2操作パネル72は、第2操作パネル72の長手方向と前後方向とが一致するように配置される。
【0039】
なお、第1操作パネル71は、第1操作パネル71の長手方向と上下方向とが一致するように配置されてもよい。第2操作パネル72は、第2操作パネル72の長手方向と左右方向とが一致するように配置される。
【0040】
[動作]
図4は、実施形態に係るミシン2の動作を示すフローチャートである。
図4は、オペレータが操作パネル7を通じてミシン2を操作する手順を示す。
【0041】
オペレータは、操作パネル7を通じてミシン2を操作するために、操作予定のミシン2の識別データを、操作装置10を介してマイクロコンピュータ11に入力する。ミシン2の識別データとして、相互に異なるIPアドレスが複数のミシン2のそれぞれに付されている場合、オペレータは、IPアドレスを操作装置10(タッチパネル)で入力する。マイクロコンピュータ11は、操作装置10からミシン2の識別データを取得する(ステップSA1)。Webブラウザ12は、操作装置10からの識別データに基づいて、Webサーバ13にリクエストを送信する。Webブラウザ12は、ログイン画面の提供をWebサーバ13にリクエストする(ステップSA2)。
【0042】
Webサーバ13は、Webブラウザ12からのリクエストに基づいて、ログイン画面をWebブラウザ12に提供する(ステップSB1)。
【0043】
図5は、実施形態に係るログイン画面100を示す図である。上述のように、縫製工場において、ミシン2は、縫製品を生産するための複数の工程のそれぞれに対応するように複数設けられる。Webサーバ13は、複数の工程から特定の工程を選択させるためのログイン画面100をWebブラウザ12に提供する。マイクロコンピュータ11は、Webブラウザ12に提供されたログイン画面100を表示装置9に表示させる(ステップSA3)。
【0044】
図5に示すように、ログイン画面100は、ログインIDの入力スペース49と、ログインボタン50と、第1の工程である工程Aを示す第1シンボル51と、第2の工程である工程Bを示す第2シンボル52と、第3の工程である点検を示す第3シンボル53と、第4の工程である調整を示す第4シンボル54とを含む。
【0045】
オペレータは、操作装置10を操作して、第1,第2,第3,第4の工程から、ミシン2を用いて実施予定の工程を選択する。例えば第1の工程である工程Aを選択した場合、オペレータは、工程Aに対応するログインIDを入力スペース49に入力した後、ログインボタン50をタップする。これにより、入力データとして、工程Aにログインするためのログインデータが生成される。マイクロコンピュータ11は、ログイン画面100が操作されることにより生成されたログインデータを操作装置10から取得する(ステップSA4)。Webブラウザ12は、操作装置10からのログインデータに基づいて、Webサーバ13にリクエストを送信する。Webブラウザ12は、操作画面の提供をWebサーバ13にリクエストする(ステップSA5)。
【0046】
Webサーバ13は、ログイン画面100が操作されることにより生成されたWebブラウザ12からのリクエストに基づいて、操作画面200をWebブラウザ12に提供する。Webサーバ13は、工程Aに基づいて、操作画面200をWebブラウザ12に提供する(ステップSB2)。
【0047】
図6は、実施形態に係る操作画面200を示す図である。Webサーバ13は、操作パネル7の表示装置9に表示させる操作画面200をWebブラウザ12に提供する。Webブラウザ12は、操作画面200をWebサーバ13から受信する。マイクロコンピュータ11は、Webブラウザ12に提供された操作画面200を表示装置9に表示させる(ステップSA6)。
【0048】
図6に示すように、操作画面200は、工程Aを特定するためのシンボル59と、可動画面60と、固定画面80とを含む。可動画面60は、画面移動ボタン67又は画面移動ボタン68が操作されることによりめくられる。可動画面60は、パターン一覧シンボル61と、ミシン針の往復回数を示す計数シンボル62と、選択された縫い形状を示す縫い形状シンボル63と、始め返し縫い機能を有効化又は無効化する選択ボタン64と、終り返し縫い機能を有効化又は無効化する選択ボタン65と、縫いピッチを選択するための縫いピッチボタン66とを含む。固定画面80は、糸切り回数を示す糸切りシンボル81と、ボビンの交換回数を示すボビンシンボル82とを含む。
【0049】
オペレータは、操作装置10を操作して、ミシン2の動作条件を選択する。マイクロコンピュータ11は、操作画面200が操作されることにより生成された操作データを操作装置10から取得する(ステップSA7)。Webブラウザ12は、操作画面200が操作されることにより生成された操作装置10からの操作データをWebサーバ13に送信する(ステップSA8)。
【0050】
Webサーバ13は、操作パネル7のWebブラウザ12からの操作データをミシンコントローラ8に送信する。操作データは、操作パネル7からWebサーバ13を介してミシンコントローラ8に送信される。ミシンコントローラ8は、操作データに基づいてミシン2を制御する(ステップSB3)。
【0051】
[操作画面のカスタマイズ]
Webサーバ13は、縫製品を生産するための工程に基づいて、操作画面200をカスタマイズすることができる。Webサーバ13は、例えば工程Aに適した操作画面200、工程Bに適した操作画面200、点検に適した操作画面200、及び調整に適した操作画面200を提供することができる。
【0052】
図7は、実施形態に係る操作画面200をカスタマイズする手順を説明するための図である。操作画面200をカスタマイズする場合、操作パネル7にカスタマイズ用画面300が表示される。オペレータは、カスタマイズ用画面が表示された操作パネル7を操作する。操作パネル7が操作されることにより生成されたカスタマイズデータは、Webサーバ13に送信される。Webサーバ13は、操作パネル7が操作されることにより生成されたカスタマイズデータを受信する。Webサーバ13は、カスタマイズデータに基づいて操作画面200をカスタマイズする。Webサーバ13は、カスタマイズした操作画面200をWebブラウザ12に提供する。
【0053】
例えば、第2操作パネル72の操作画面200においては、縫製対象物の送り速度及び縫い目ピッチのみが表示されるように操作画面200がカスタマイズされてもよい。
【0054】
[管理装置]
図8は、実施形態に係る管理装置3の動作を説明するための図である。複数のミシン2のそれぞれのミシンデータは、管理装置3に送信される。管理装置3の管理コントローラ6は、複数のミシン2のそれぞれのミシンデータを表示装置4に表示させる。なお、管理コントローラ6は、複数のミシン2のそれぞれのミシンデータを複数の操作パネル7のそれぞれに表示させてもよい。
【0055】
管理者は、入力装置5を操作して、複数の操作パネル7の操作画面200を一括して又は個別にカスタマイズすることができる。すなわち、管理コントローラ6は、入力装置5が操作されることにより生成されたカスタマイズデータに基づいて、操作パネル7の操作画面200を一括して又は個別にカスタマイズすることができる。
【0056】
また、管理コントローラ6は、入力装置5及び操作パネル7の少なくとも一方が操作されることにより生成された権限設定データに基づいて、管理装置3と操作パネル7とに操作権限を設定することができる。
【0057】
図9は、実施形態に係る操作権限を説明するための図である。例えば管理装置3に操作権限が設定された場合、すなわち、管理装置3の操作が操作パネル7の操作に優先するように設定された場合において、縫製対象物の送り速度が第1の値になるように管理装置3が操作された場合、縫製対象物の送り速度が第2の値になるように操作パネル7が操作されても、縫製対象物の送り速度は、第1の値に設定される。すなわち、ミシンコントローラ8は、縫製対象物の送り速度が第1の値になるようにミシン2を制御する。
【0058】
[ミシンにエラーが生じた場合の動作]
図10は、実施形態に係るミシン2にエラーが生じた場合のミシン管理システム1の動作を示す図である。第1のエラーが生じた場合、第1のエラーが生じたことを示す第1警告データが管理装置3の表示装置4に表示され、第2のエラーが生じた場合、第2のエラーが生じたことを示す第2警告データが操作パネル7の表示装置9に表示されてもよい。第1警告データは、操作パネル7の表示装置4には表示されない。なお、第1警告データが管理装置3の表示装置4及び操作パネル7の表示装置9の両方に表示されてもよい。第2警告データは、管理装置3の表示装置4には表示されない。なお、第2警告データが操作パネル7の表示装置9及び管理装置3の表示装置4の両方に表示されてもよい。
【0059】
第1のエラーがミシン2のメンテナンスを要するほどの過酷なエラーである場合、管理装置3に第1警告データが表示されることにより、管理者は、ミシン2に第1のエラーが生じたことを認識することができる。第2のエラーが糸切れなどの軽微なエラーである場合、操作パネル7に第2警告データが表示されることにより、オペレータは、ミシン2に第2のエラーが生じたことを認識することができる。
【0060】
[コンピュータシステム]
図11は、実施形態に係るコンピュータシステム1000を示すブロック図である。上述の管理コントローラ6、ミシンコントローラ8、及びマイクロコンピュータ11のそれぞれは、コンピュータシステム1000を含む。コンピュータシステム1000は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサ1001と、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリ及びRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含むメインメモリ1002と、ストレージ1003と、入出力回路を含むインターフェース1004とを有する。管理コントローラ6、ミシンコントローラ8、及びマイクロコンピュータ11のそれぞれの機能は、コンピュータプログラムとしてストレージ1003に記憶されている。プロセッサ1001は、コンピュータプログラムをストレージ1003から読み出してメインメモリ1002に展開し、コンピュータプログラムに従って上述の処理を実行する。なお、コンピュータプログラムは、ネットワークを介してコンピュータシステム1000に配信されてもよい。
【0061】
[効果]
以上説明したように、実施形態に係るミシン2は、複数の操作パネル7と、複数の操作パネル7のそれぞれと通信可能であり、少なくとも一つの操作パネル7が操作されることにより生成された操作データを受信して、ミシン動作部を制御するミシンコントローラ8と、を備える。
【0062】
実施形態によれば、ミシン2に複数の操作パネル7が設けられるので、操作パネル7の操作性が向上する。例えば、縫製対象物の送り速度又は縫い目ピッチのような頻繁に変更する可能性がある設定値については、オペレータの手元に配置される第2操作パネル72に表示されたり操作されたりすることにより、操作パネル7の操作性が向上する。第2操作パネル72の外形の寸法は小さいので、オペレータの作業を妨げることが抑制される。
【0063】
実施形態において、ミシンコントローラ8にインストールされているWebサーバ13は、操作パネル7にインストールされているWebブラウザ12からのリクエストに基づいて、操作パネル7の操作画面をWebブラウザ12に提供する。Webサーバ13は、操作パネル7が操作されることにより生成された操作データを受信して、ミシン2のミシン動作部を制御する。実施形態によれば、多数のアプリを操作パネル7にインストールしなくても、操作パネル7及びWebサーバ13を通じてミシン2が操作される。
【0064】
[別の実施形態]
図12、
図13、及び
図14のそれぞれは、別の実施形態に係るミシン2を示す図である。
図12に示すように、第1操作パネル71は、ミシンテーブル22の右部に配置されてもよい。第2操作パネル72は、ミシンテーブル22において針板27とオペレータとの間に配置されてもよい。
図13に示すように、第1操作パネル71は、ベース23Cに配置されてもよい。第2操作パネル72は、ヘッド23Dの左部に配置されてもよい。
図14に示すように、第2操作パネル72は、ヘッド23Dの右部に配置されてもよい。
【0065】
図15は、別の実施形態に係るミシン管理システム1を模式的に示す図である。
図15に示すように、Webブラウザ12がスマートフォン又はタブレット型パーソナルコンピュータのような携帯端末500にインストールされてもよい。Webブラウザ12がスマートウォッチのようなウェアラブル端末600にインストールされてもよい。
【0066】
上述の実施形態において、1つの操作パネル7が操作されることにより、複数台のミシン2のそれぞれの設定値が変更されてもよい。
【0067】
上述の実施形態においては、複数の操作パネル7のマイクロコンピュータ11のそれぞれに、第1ソフトウエアとしてWebブラウザ12がインストールされ、ミシンコントローラ8に、第2ソフトウエアとしてWebサーバ13がインストールされることとした。複数の操作パネル7のマイクロコンピュータ11のそれぞれに、第1ソフトウエアとしてクライアントがインストールされ、ミシンコントローラ8に、第2ソフトウエアとしてサーバがインストールされてもよい。操作パネル7のマイクロコンピュータ11にインストールされるクライアントは、アプリケーションソフトウエア(コンピュータプログラム)である。ミシンコントローラ8にインストールされるサーバは、操作パネル7のマイクロコンピュータ11にインストールされているクライアントからのリクエストに基づいて、ミシン2の操作パネル7の操作画面をクライアントに提供するアプリケーションソフトウエア(コンピュータプログラム)である。
【0068】
すなわち、ミシン管理システム1は、クライアント・サーバー型システムで構築されてもよい。ミシンコントローラ8に他のプロトコルで通信を実現するサーバが構築され、操作パネル7にこのサーバに対応したクライアントシステムが実装されてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1…ミシン管理システム、2…ミシン、2A…第1ミシン、2B…第2ミシン、2C…第3ミシン、3…管理装置、4…表示装置、5…入力装置、6…管理コントローラ、7…操作パネル、8…ミシンコントローラ、9…表示装置、10…操作装置、11…マイクロコンピュータ、12…Webブラウザ、13…Webサーバ、22…ミシンテーブル、23…ミシンフレーム、23A…アーム、23B…ベッド、23C…ベース、23D…ヘッド、24…ミシン針、25…針棒、26…天秤、27…針板、28…押さえ、29…糸調子、30…送り歯、31…ミシンモータ、49…入力スペース、50…ログインボタン、51…第1シンボル、52…第2シンボル、53…第3シンボル、54…第4シンボル、59…シンボル、60…可動画面、61…パターン一覧シンボル、62…計数シンボル、63…縫い形状シンボル、64…選択ボタン、65…選択ボタン、66…縫いピッチボタン、67…画面移動ボタン、68…画面移動ボタン、71…第1操作パネル、72…第2操作パネル、80…固定画面、81…糸切りシンボル、82…ボビンシンボル、100…ログイン画面、200…操作画面、300…カスタマイズ用画面、500…携帯端末、600…ウェアラブル端末、1000…コンピュータシステム、1001…プロセッサ、1002…メインメモリ、1003…ストレージ、1004…インターフェース。