(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025022126
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】ホットメルト組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/14 20060101AFI20250206BHJP
C08L 45/02 20060101ALI20250206BHJP
C09J 123/00 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
C08L23/14
C08L45/02
C09J123/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023126409
(22)【出願日】2023-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】グエン ヴァン タイ
【テーマコード(参考)】
4J002
4J040
【Fターム(参考)】
4J002BB14W
4J002BB14X
4J002BK00Y
4J002FD34Y
4J002GJ01
4J002HA09
4J040DA001
4J040JB01
4J040KA26
4J040KA29
4J040LA02
(57)【要約】
【課題】 溶融粘度が適度であることから塗布作業性が良好で、固化した後の機械的物性に優れており、低温環境下においても一定の耐久性を維持することができるホットメルト組成物を提供する。
【解決手段】 オレフィン系エラストマー(A)と、粘着付与剤(B)と、を含有し、オレフィン系エラストマー(A)の溶融粘度(190℃)が100~30,000mPa・sであり、オレフィン系エラストマー(A)として、針入度(ASTM D-1321)が、30dmm以上であるオレフィン系エラストマー(a1)と、25dmm以下であるオレフィン系エラストマー(a2)と、を含有することを特徴とするホットメルト組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系エラストマー(A)と、粘着付与剤(B)と、を含有し、
オレフィン系エラストマー(A)の溶融粘度(190℃)が100~30,000mPa・sであり、
オレフィン系エラストマー(A)として、針入度(ASTM D-1321)が、30dmm以上であるオレフィン系エラストマー(a1)と、25dmm以下であるオレフィン系エラストマー(a2)と、を含有することを特徴とするホットメルト組成物。
【請求項2】
オレフィン系エラストマー(A)が、非晶性ポリアルファオレフィンであることを特徴とする請求項1記載のホットメルト組成物。
【請求項3】
フィルターに用いることを特徴とする請求項1又は2記載のホットメルト組成物。
【請求項4】
請求項1又は2記載のホットメルト組成物を用いて製造された物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ホットメルト組成物について、広く研究開発が行われている。ホットメルト組成物は、加熱することにより溶融し、23℃程度の常温まで冷却させると固化することから、接着剤として好適に用いられている。その特徴としては、無溶剤で環境に優しく、短時間で硬化可能で、非常に扱いやすい材料であることが挙げられ、製造現場における作業環境を改善することが可能であることから、様々な分野において幅広く用いられている。
【0003】
過去に、本願の出願人は、オレフィン系エラストマー(A)と、粘着付与剤(B)と、ワックス(C)と、を含有し、オレフィン系エラストマー(A)として、メルトフローレート(ASTM D-1238、230℃/2.16kg)が1~500g/10minであるオレフィン系エラストマー(a1)と、溶融粘度(190℃)が100~30,000mPa・sであるオレフィン系エラストマー(a2)と、を含むことを特徴とするホットメルト組成物を発明した(特許文献1)。このホットメルト組成物は、繊維質素材に対して接着力を発揮し、オープンタイムが長く溶融粘度が適度であることから作業性が良好で、耐衝撃性にも優れているものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【0005】
従来から、各種分野において、排熱やろ過、異物混入防止のために、製品内部に繊維質素材からなるフィルターが設けられており、製品ごとの内部構造に合わせて、フィルターの形状を加工し固定するために、ホットメルト組成物が好ましく用いられている。
【0006】
例えば、輸送用機器や電気製品に設置されるフィルターに、ホットメルト組成物を用いる場合、塗布作業性の向上のため一定水準の溶融粘度が必要とされたり、固化した後の機械的物性の向上が求められたりしている。また、冬季の厳しい低温環境下において、一定の耐久性を維持できることも要求されている。ここで、特許文献1にかかるホットメルト組成物においては、機械的物性の向上と、低温環境下における耐久性を両立することがやや難しく、改善の余地があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、溶融粘度が適度であることから塗布作業性が良好で、固化した後の機械的物性に優れており、低温環境下においても一定の耐久性を維持することができるホットメルト組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
オレフィン系エラストマー(A)と、粘着付与剤(B)と、を含有し、オレフィン系エラストマー(A)の溶融粘度(190℃)が100~30,000mPa・sであり、オレフィン系エラストマー(A)として、針入度(ASTM D-1321)が、30dmm以上であるオレフィン系エラストマー(a1)と、25dmm以下であるオレフィン系エラストマー(a2)と、を含有することを特徴とするホットメルト組成物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかるホットメルト組成物は、溶融粘度が適度であることから塗布作業性が良好で、固化した後の機械的物性に優れており、低温環境下においても一定の耐久性を維持することができるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<オレフィン系エラストマー>
本発明では、オレフィン系エラストマー(A)を用いる。当該(A)成分は、本発明にかかるホットメルト組成物のベースポリマーとして用いられる。
【0011】
当該(A)成分としては、プロピレンを構成単位として含むことが好ましい。当該(A)成分の種類としては、プロピレンのホモポリマーの他、プロピレンと、エチレン・1-ブテン・1-ヘキセンから選択されるモノマーとの、コポリマー又はターポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、プロピレン・エチレンコポリマー、又は、プロピレン・1-ブテンコポリマーは、安定性が高く取り扱いが容易であるため、好適に用いることができる。
【0012】
また、当該(A)成分の溶融粘度(190℃、ASTM D-3236)としては、100~30,000mPa・sである必要があり、1,000~25,000mPa・sであることが好ましく、2,000~20,000mPa・sであることがさらに好ましく、3,000~15,000mPa・sであることが特に好ましい。この範囲内であることにより、ホットメルト組成物としての溶融粘度を適切な範囲内に収めることができるほか、室温で保管する際や、高温にて溶融させた際の安定性が向上する傾向がある。
【0013】
さらに、当該(A)成分としては、針入度(ASTM D-1321)が、30dmm以上であるオレフィン系エラストマー(a1)と、25dmm以下であるオレフィン系エラストマー(a2)と、を含有する必要がある。
【0014】
当該(a1)成分の針入度(ASTM D-1321)としては、30dmm以上である必要があり、33dmm以上であることが好ましく、35dmm以上であることがより好ましく、38dmm以上であることがさらに好ましく、40dmm以上であることが特に好ましい。
【0015】
当該(a1)成分の具体例は、例えば、非晶性ポリアルファオレフィンとして、RT2585(商品名、レックスタック社製、プロピレン・エチレンコポリマー、溶融粘度(190℃、ASTM D-3236):8,500mPa・s)、針入度(ASTM D-1321):45dmm)などが挙げられる。
【0016】
また、当該(a2)成分の針入度(ASTM D-1321)としては、25dmm以下である必要があり、22dmm以下であることが好ましく、20dmm以下であることがより好ましく、18dmm以下であることがさらに好ましく、15dmm以下であることが特に好ましい。
【0017】
当該(a2)成分の具体例は、例えば、非晶性ポリアルファオレフィンとして、RT2788(商品名、レックスタック社製、プロピレン・1-ブテンコポリマー、溶融粘度(190℃、ASTM D-3236):8,500mPa・s)、針入度(ASTM D-1321):10dmm未満)などが挙げられる。
【0018】
ここで、当該(a1)成分のみ用いた場合は、固化した後の強度や伸びに欠けることから、機械的物性に劣る傾向がある。また、当該(a2)成分のみ用いた場合は、-20℃での可撓性が低いことから低温耐久性に劣る傾向がある。
【0019】
本発明の発明者は、当該(a1)・(a2)成分をともに用いることにより、固化した後の強度・伸びが高いことから機械的物性に優れており、-20℃での可撓性が高いことから低温耐久性に優れていることを見出し、本発明を完成させた。このような作用効果を奏する要因の一つとしては、針入度の異なる2種のオレフィン系エラストマーを含有することにより、高分子鎖の絡み合いが良化し、その分子間の相互作用が増加するためではないかと推測される。
【0020】
当該(a1)と当該(a2)成分との配合割合(重量比)としては、1:0.1~20であることが好ましく、1:0.5~15であることがより好ましく、1:1~12であることがさらに好ましく、1:3~10であることが特に好ましい。
【0021】
<粘着付与剤>
本発明では、粘着付与剤(B)を用いる。当該(B)成分の種類としては、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジン系樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、脂環族系炭化水素樹脂、及び、その水添物又は変性物などが挙げられる。
【0022】
当該(B)成分の軟化点としては、60~250℃であることが好ましく、70~200℃であることがさらに好ましく、80~180℃であることが特に好ましい。
【0023】
当該(B)成分の配合割合としては、上記(A)成分の合計100重量部に対して、1~1000重量部配合することが好ましく、2~500重量部配合することがさらに好ましく、3~100重量部配合することが特に好ましい。
【0024】
当該(B)成分の具体例としては、YSレジン PX1250(商品名、ヤスハラケミカル社製、テルペン樹脂、軟化点:120℃~130℃)、タマノル 803L(商品名、荒川化学工業社製、テルペンフェノール樹脂、軟化点:145~160℃)、パインクリスタル KR-85(商品名、荒川化学工業社製、ロジン系樹脂、軟化点:80~87℃)、HM-1000(商品名、Henghe社製、芳香族系炭化水素樹脂、軟化点:100℃)、T-REZ HA125(商品名、ENEOS社製、水添脂環族系炭化水素樹脂、軟化点:120℃~130℃)などが挙げられる。
【0025】
<その他の成分>
その他、本発明の効果を損なわない範囲内において、可塑剤(X)を用いることができる。当該(X)成分を用いることにより、可塑性を付与することができるほか、上記(A)・(B)成分の分散性が良好となることから、被着体表面の濡れ性を高めることができ、その層間の密着性を向上させることができる。
【0026】
当該(X)成分としては、例えば、常温(23℃)において固体状である有機系化合物を例示することができる。その具体例としては、ワックスが挙げられ、その種類としては、天然ワックスや合成ワックスがあり、天然ワックスとしてはパラフィンワックスやマイクロクリスタリンワックスなどが、合成ワックスとしてはポリエチレンワックスやポリプロピレンワックスなどが挙げられる。これらの中でも、合成ワックスは、安定性が高く取り扱いが容易であるため、好適に用いることができる。
【0027】
当該(X)成分の配合割合としては、上記(A)成分100重量部に対して、1~300重量部配合することが好ましく、2~200重量部配合することがより好ましく、3~100重量部配合することが特に好ましい。
【0028】
当該(X)成分の具体例としては、ハイワックス 800P(商品名、三井化学社製、ポリエチレンワックス)、PE H-110(商品名、SQI Thailand社製、軟化点:110℃、ポリエチレンワックス)、H-506(商品名、QINGDAO SINOPLAS社製、ポリプロピレンワックス)などが挙げられる。
【0029】
なお、本発明では、添加剤として、酸化防止剤を用いることができる。当該成分の種類としては、例えば、亜リン酸塩系、ナフチルアミン系、p-フェニレンジアミン系、キノリン系、ヒドロキノン系、ビス・トリス・ポリフェノール系、チオビスフェノール系、ヒンダードフェノール系などが挙げられ、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。当該成分の具体例としては、Sumilizer GP(商品名、住友化学社製)、Songnox 1010(商品名、Songwon社製)などが挙げられる。
【0030】
その他、本発明においては、炭酸カルシウム、タルク、クレーなどの充填材や、防腐剤、着色剤などの各種添加剤が含まれていても良い。
【0031】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定されるものではない。
【実施例0032】
<実施例及び比較例>
表1に示す配合において、180℃に調整したフラスコ内にて十分に混練し、実施例及び比較例のホットメルト組成物を製造した。ここで、表1における数値は、重量部を表すものとする。以下に、使用した原材料を示す。
RT2585(商品名、レックスタック社製、プロピレン・エチレンコポリマー、溶融粘度(190℃、ASTM D-3236):8,500mPa・s)、針入度(ASTM D-1321):45dmm)
RT2788(商品名、レックスタック社製、プロピレン・1-ブテンコポリマー、溶融粘度(190℃、ASTM D-3236):8,500mPa・s)、針入度(ASTM D-1321):10dmm未満)
HM-1000(商品名、Henghe社製、芳香族系炭化水素樹脂、軟化点:100℃)
H-506(商品名、QINGDAO SINOPLAS社製、ポリプロピレンワックス)
Songnox 1010(商品名、Songwon社製、酸化防止剤)
【0033】
【0034】
上記の実施例等にて製造したホットメルト組成物について、以下の要領で各種の物性評価を行った。この結果を表2に示す。
【0035】
<溶融粘度>
ブルックフィールド粘度計により、ホットメルト組成物10gを180℃にて溶融させ、10分間静置させた後、スピンドルNo.27、回転数5rpmにて回転を開始し、10分後の溶融粘度(mPa・s)を測定した。
【0036】
<軟化点>
JIS K 6863に準拠し、各ホットメルト組成物の軟化点(℃)を測定した。
【0037】
<引張強度・引張伸び>
ホットメルト組成物を180℃にて溶融させ、厚みが2mmのシートとした後、JIS K 6251に準拠したダンベル3号形状の試験片を作製した。そして、試験片を23℃にて24時間養生させた後、23℃において20mm/minの引張速度により、試験片の引張強度(N/mm2)と引張伸び(mm)を測定した。
引張強度が1.5N/mm2以上のものを◎と、1.5N/mm2未満で1.0N/mm2以上のものを〇と、1.0N/mm2未満で0.5N/mm2以上のものを△と、0.5N/mm2未満のものを×と評価した。また、引張伸びが80mm以上のものを◎と、80mm未満で60mm以上のものを〇と、60mm未満で40mm以上のものを△と、40mm未満のものを×と評価した。
【0038】
<-20℃可撓性>
ホットメルト組成物を180℃にて溶融させ、厚みが2mmのシートとした後、10cm×1cmにカットし、試験片を作製した。そして、試験片を-20℃にて24時間養生させた後、その中央部分を直角に曲げ、その結果を目視で観察した。
試験片の一部にひびが入らなかったものを◎と、試験片の一部にひびが入ったものを△と、試験片が割れたものを×と評価した。
25mm)とした。
【0039】
【0040】
実施例・比較例にかかるホットメルト組成物を製造したところ、180℃における溶融粘度や、軟化点については、同程度であったものの、実施例の方が、比較例よりも、固化した後の強度・伸びが高いことから機械的物性に優れており、-20℃での可撓性が高いことから低温耐久性に優れているものであった。