(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025022149
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】撚糸機及び当該撚糸機を用いた複合糸の製造方法
(51)【国際特許分類】
D01H 7/02 20060101AFI20250206BHJP
D02G 3/36 20060101ALI20250206BHJP
D01H 13/02 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
D01H7/02 A
D02G3/36
D01H13/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023126450
(22)【出願日】2023-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】517424128
【氏名又は名称】興亜繊維工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145953
【弁理士】
【氏名又は名称】真柴 俊一郎
(72)【発明者】
【氏名】北村 一博
【テーマコード(参考)】
4L036
4L056
【Fターム(参考)】
4L036MA39
4L036PA21
4L036PA45
4L036RA24
4L056AA02
4L056AA47
4L056BC22
(57)【要約】
【課題】芯鞘構造の複合糸を製造できる撚糸機を得ること。
【解決手段】本発明は、芯繊維を供給する少なくとも1つの芯繊維束2、鞘繊維を供給する少なくとも1つの鞘繊維束3、トラベラー又はフライヤーを含む撚糸機構4、及び前記撚糸機構4により芯繊維周囲に鞘繊維を捲回させた複合糸を券回させるためのボビン5、を含む撚糸機であって、前記芯繊維束2及び鞘繊維束3と前記撚糸機構4との間に、少なくとも前記芯繊維束2から供給される芯繊維の進行方向を前記ボビン5の軸線方向と略同一に調整する少なくとも2つのガイド6を含んでいる撚糸機に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯繊維を供給する少なくとも1つの芯繊維束、
鞘繊維を供給する少なくとも1つの鞘繊維束、
トラベラー又はフライヤーを含む撚糸機構、及び
前記撚糸機構により芯繊維周囲に鞘繊維を捲回させた複合糸を券回させるためのボビン、を含む撚糸機であって、
さらに前記芯繊維束及び鞘繊維束と前記撚糸機構との間に、少なくとも前記芯繊維束から供給される芯繊維の進行方向を前記ボビンの中心軸線方向と略同一に調整する少なくとも2つのガイドを含む、撚糸機。
【請求項2】
芯繊維を供給する少なくとも1つの芯繊維束、
鞘繊維を供給する少なくとも1つの鞘繊維束、
トラベラー又はフライヤーを含む撚糸機構、及び
前記撚糸機構により芯繊維周囲に鞘繊維を捲回させた複合糸を券回させるためのボビン、を含む撚糸機であって、
さらに前記芯繊維束及び鞘繊維束と前記撚糸機構との間に、芯繊維及び鞘繊維を別々に通過させる穴を有したガイドであって、前記鞘繊維を通過させる穴の位置が、芯繊維を通過させる穴を中心とした仮想円上にあるガイドを含む、撚糸機。
【請求項3】
さらに、前記芯繊維を搬送するローラーと、鞘繊維を搬送するローラーとを含み、それぞれのローラーが個別に回転する、請求項1又は2に記載の撚糸機。
【請求項4】
前記少なくとも2つのガイドが、前記少なくとも2つのガイドにより調整される少なくとも芯繊維の軸線をボビンの中心軸線延長上に配置する位置にある、請求項1に記載の撚糸機。
【請求項5】
前記少なくとも2つのガイドのうち、撚糸機構側に備えられたガイドが、芯繊維及び鞘繊維を別々に通過させる穴を有したガイドであって、前記鞘繊維を通過させる穴の位置が、芯繊維を通過させる穴を中心とした仮想円上にある、請求項1に記載の撚糸機。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載する撚糸機を用いた、芯鞘構造を有する複合糸の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撚糸機及び当該撚糸機を用いた複合糸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
種類の異なる2種以上の繊維を組み合わせることにより、より性能の高い糸、例えば、剛性と柔軟性を兼ね備えた糸を製造できる場合がある。このような種類の異なる2種以上の繊維を組み合わせた糸(以下、「複合糸」という)の製造方法が種々検討されている。例えば、特許文献1は、リング精紡機の積極的に回転駆動するフロントボトムローラ(1)に、2つの軸方向に直結した大径および小径円柱体(2,3)を錘ごとに同軸に設け、前記円柱体にそれぞれ円筒形のフロントトップローラ(4,5)を独立に転動可能に配置してなることを特徴とする芯鞘型複合紡績糸製造装置の発明を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、芯鞘構造を有する複合糸を製造するに際し、芯構造を形成する芯繊維と鞘構造を形成する鞘繊維とを異なる種類の繊維とすることで、より性能の高い複合糸を製造することが可能となる。このような場合においては、鞘繊維が芯繊維の周囲にできるだけ小さい隙間を空けて捲回されることが好ましく、鞘繊維が隙間無く芯繊維の周囲を捲回することがさらに好ましい。例えば、剛性が高いが耐擦過性が低い芯繊維を、剛性は高くないが耐擦過性の高い繊維で隙間無く捲回して得られた複合糸は、糸全体としての剛性を高めつつ、繊維表面の耐擦過性を著しく高めることができる。しかしながら、特許文献1の製造装置を用いて芯鞘構造を有する複合糸を製造しても、鞘繊維が芯繊維の周囲に大きな隙間を空けて捲回した複合糸しか製造できなかった。したがって、上記のような問題を解決できる技術が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者が鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を有する装置により上記課題が解決できることを見いだし、本発明に至った。
すなわち本発明は、
[1]芯繊維を供給する少なくとも1つの芯繊維束、
鞘繊維を供給する少なくとも1つの鞘繊維束、
トラベラー又はフライヤーを含む撚糸機構、及び
前記撚糸機構により芯繊維周囲に鞘繊維を捲回させた複合糸を券回させるためのボビン、を含む撚糸機であって、
さらに前記芯繊維束及び鞘繊維束と前記撚糸機構との間に、少なくとも前記芯繊維束から供給される芯繊維の進行方向を前記ボビンの中心軸線方向と略同一に調整する少なくとも2つのガイドを含む、撚糸機、
[2]芯繊維を供給する少なくとも1つの芯繊維束、
鞘繊維を供給する少なくとも1つの鞘繊維束、
トラベラー又はフライヤーを含む撚糸機構、及び
前記撚糸機構により芯繊維周囲に鞘繊維を捲回させた複合糸を券回させるためのボビン、を含む撚糸機であって、
さらに前記芯繊維束及び鞘繊維束と前記撚糸機構との間に、芯繊維及び鞘繊維を別々に通過させる穴を有したガイドであって、前記鞘繊維を通過させる穴の位置が、芯繊維を通過させる穴を中心とした仮想円上にあるガイドを含む、撚糸機、
[3]さらに、前記芯繊維を搬送するローラーと、鞘繊維を搬送するローラーとを含み、それぞれのローラーが個別に回転する、[1]又は[2]に記載の撚糸機、
[4]前記少なくとも2つのガイドが、前記少なくとも2つのガイドにより調整される少なくとも芯繊維の軸線をボビンの中心軸線延長上に配置する位置にある、[1]に記載の撚糸機、
[5]前記少なくとも2つのガイドのうち、撚糸機構側に備えられたガイドが、芯繊維及び鞘繊維を別々に通過させる穴を有したガイドであって、前記鞘繊維を通過させる穴の位置が、芯繊維を通過させる穴を中心とした仮想円上にある、[1]に記載の撚糸機、並びに
[6][1]~[5]のいずれかに記載する撚糸機を用いた、芯鞘構造を有する複合糸の製造方法、
に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の撚糸機及び前記撚糸機を用いた製造方法により、芯糸の周囲にできるだけ小さい隙間を空けて、好ましくは隙間無く鞘糸が捲回されるため、より品質の高い芯鞘構造の複合糸が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】
図1とは別の形態の撚糸機を示す斜視図である。
【
図3】(A)
図1の撚糸機におけるガイド、撚糸機構及びボビンの部分を右方向から見た側面図及び(B)正面図である。
【
図4】(A)
図3のボビンの角度を変更した場合の右側面図及び(B)正面図である。
【
図5】(A)ガイドの正面図、(B)(A)のガイドの側面図、(C)(A)とは異なるガイドの正面図及び(D)(C)の側面図である。
【
図6】(A)ガイドの正面図、(B)(A)のガイドの側面図、(C)(A)とは異なるガイドの平面図、(D)(C)におけるA-B断面図、(E)(A)及び(C)とは異なるガイドの平面図、(F)(A)、(C)及び(E)とは異なるガイドの平面図及び(G)(F)のガイドの側面図である。
【
図7】
図1及び
図2とは別の形態の撚糸機を示す斜視図である。
【
図8】
図1、2及び7とは別の形態の撚糸機を示す斜視図である。
【
図9】
図1の撚糸機により糸が撚糸される際の状況を説明するための、ガイド付近の拡大模式図である。
【
図10】
図8の撚糸機により糸が撚糸される際の状況を説明するための、ガイド付近の拡大模式図である。
【
図11】従来の方法により得られた芯鞘構造を有する複合糸の拡大写真である(一部色調補正済)。
【
図12】本発明の方法により得られた撚芯鞘構造を有する複合糸の拡大写真である(一部鞘繊維の捲回が解かれている)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の好ましい実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態及び態様に限定されず、本発明の技術的範囲内で種々の変更が可能であることは言うまでもない。また、文中における「上下」、「前後」及び「左右」は、各図面に記載の方向を意味する。
【0009】
1.撚糸機
前記の通り、本発明の撚糸機1は、芯繊維を供給する少なくとも1つの芯繊維束2、鞘繊維を供給する少なくとも1つの鞘繊維束3、トラベラー又はフライヤーを含む撚糸機構4、及び前記撚糸機構4により芯繊維周囲に鞘繊維を捲回させた複合糸を券回させるためのボビン5、を含む撚糸機であって、前記芯繊維束2及び鞘繊維束3と前記撚糸機構4との間に、少なくとも前記芯繊維束2から供給される芯繊維の進行方向を前記ボビン5の中心軸線方向と略同一に調整する少なくとも2つのガイド6を含んでいる撚糸機である。また、本発明の撚糸機1は、芯繊維を供給する少なくとも1つの芯繊維束2、鞘繊維を供給する少なくとも1つの鞘繊維束3、トラベラー又はフライヤーを含む撚糸機構4、及び前記撚糸機構4により芯繊維周囲に鞘繊維を捲回させた複合糸を券回させるためのボビン5、を含む撚糸機であって、前記芯繊維束2及び鞘繊維束3と前記撚糸機構4との間に、芯繊維及び鞘繊維を別々に通過させる穴を有したガイド6であって、前記鞘繊維を通過させる穴の位置が、芯繊維を通過させる穴を中心とした仮想円上にあるガイド6を含む撚糸機である。以下に、図面等に基づいて詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明の撚糸機1の具体的形態例として、トラベラーを含んだ撚糸機構4を含むリング撚糸機としての一形態を示している。
図1の撚糸機1において、芯繊維CFを供給する芯繊維束2が1つ備えられている。なお、芯繊維束2は、必要に応じて2以上備えることができる。例えば、同種類の芯繊維CFを2本以上束ねる場合や、異なる種類の芯繊維CFを2種類以上束ねて使用する場合に、これら使用される芯繊維CFの数に応じて芯繊維束2の数を増やすことができる。なお、芯繊維束2の具体的な形態として、芯繊維CFを巻回させたボビンや芯繊維CFを巻き上げたコーン等が挙げられる。また、芯繊維束2に巻回される繊維は、短繊維であっても良いし、長繊維であっても良い。これらの繊維は原糸(撚糸前の繊維の状態)であっても良いし、撚糸後の糸であっても良い。
【0011】
図1の撚糸機1において、鞘繊維SFを供給する鞘繊維束3が2つ(鞘繊維束3’、3’’)備えられている。なお、鞘繊維束3は、必要に応じて1又はそれ以上備えることができる。例えば、1種類の鞘繊維SFを1本のみ芯繊維CF周囲に捲回させる場合には、鞘繊維束3を1つのみ備えることができる。一方で、1種類の鞘繊維のみを2本以上、又は異なる種類の鞘繊維を2本以上芯繊維CF周囲に捲回させる場合には、鞘繊維束3を2以上備えることもできる。なお、鞘繊維束3の具体的な形態として、鞘繊維SFを巻回させたボビンや鞘繊維を巻き上げたコーン等が挙げられる。また、鞘繊維束3に巻回される繊維は、短繊維であっても良いし、長繊維であっても良い。これらの繊維は原糸(撚糸前の繊維の状態)であっても良いし、撚糸後の糸であっても良い。
【0012】
本発明の撚糸機1には、前記芯繊維束2から供給される芯繊維CFを搬送するためのローラー21及び前記鞘繊維束3から供給される鞘繊維SFを搬送するためのローラー31(
図1においてはローラー31’及び31’’)を備えている。前記ローラー21及び31をモーター等の動力によって回転させることにより、芯繊維束2及び鞘繊維束3に巻回されている芯繊維CF及び鞘繊維SFを撚糸機構4側へと送り出すことができる。なお、前記ローラー21と31とを同一のローラーとすることもできるが、
図1に記載するようにローラー21とローラー31とをそれぞれ個別のローラーとする事もできる。ローラー21とローラー31とをそれぞれ個別のローラーとすることにより、それぞれのローラーの回転数を個別に調整可能となる。芯鞘構造の複合糸を製造する際には、芯繊維CFの周囲に鞘繊維SFを捲回させなければならないため、単位時間当たりの鞘繊維SFの供給量を芯繊維CFの供給量よりも増やさなければならない場合がある。前記のようにローラー21とローラー31とを個別のローラーにして、単位時間当たりのローラーの回転速度をそれぞれ調整する事で、芯繊維CFに対しての最適な鞘繊維の供給量をより容易にコントロールできる。
【0013】
本発明の撚糸機1は、トラベラー又はフライヤーを含む撚糸機構4を含んでいる。このような撚糸機構4は、一般的に、リング撚糸機やフライヤー撚糸機と呼ばれる撚糸機において使用されている撚糸機構がこれに当たる。
図1に記載の撚糸機1においては、トラベラー43を含む撚糸機構4が示されている。
図1の撚糸機構4においては、初期状態において後述するボビン5の上部をその中央に納めたバルーニング制御リング41及びボビン5の下部をその中央に納めたトラベラーリング42が備えられている。トラベラーリング42の任意の箇所に輪状の部材であるトラベラー43が備えられている。芯繊維束2から供給される芯繊維CF及び鞘繊維束3から供給される鞘繊維SFは、前述のバルーニング制御リング41の内側を通って、トラベラー43の輪の中を通り回転するボビン5に巻き取られるようになっている。
【0014】
一方で、撚糸機構4としてフライヤーを含む撚糸機構4を使用する場合が、
図2に記載されている。
図2において、
図1と同じ番号が振られている部分については、特に説明が無い限り
図1における説明と同様である。
図2における撚糸機構4は、後述するボビン5周囲を回転可能に保持されたフライヤー44が備えられている。前記フライヤー44には、各繊維を通すための輪45が備えられている。芯繊維束2から供給される芯繊維CF及び鞘繊維束3から供給される鞘繊維SFは、前述のフライヤー44の輪45の中を通されており、フライヤー44がボビン5の周囲を回転することによりボビン5に巻き取られるようになっている。
【0015】
本発明の撚糸機1は、ボビン5を含んでいる。前述の通り、ボビン5は、撚糸機1がトラベラー43を含む撚糸機構4を含む場合には、バルーニング制御リング41及びトラベラーリング42の内側に、撚糸機1がフライヤー44を含む撚糸機構4を含む場合には、フライヤー44の内側に備えられる。また、ボビン5は、ボビン5に複合糸を均一に巻き付けるため、必要に応じてボビン5の軸方向に対して上下動可能に保持される。
【0016】
本発明の撚糸機1は、前記芯繊維束2及び鞘繊維束3と前記撚糸機構4との間に、少なくとも前記芯繊維束2から供給される糸の進行方向を前記ボビン5の中心軸線方向と略同一に調整する少なくとも2つのガイド6を含む場合がある。
図1及び
図2の撚糸機1において、2つのガイド6であるガイド6U及びガイド6Lが備えられている。ガイド6Uは、ローラー21及び31の後に備えられている。もう一つのガイド6Lは、前記ガイド6Uの次でかつ撚糸機構4の前に備えられている。ガイド6Lの位置は、好ましくは、ガイド6Lを通過した芯繊維CF及び鞘繊維SFが、直接撚糸機構4に供給される位置である。ここで、ガイド6Uとガイド6Lの位置関係は、前記の通り少なくとも前記芯繊維束2から供給される芯繊維CFの進行方向を前記ボビン5の中心軸線方向と略同一に調整するような位置関係となっている。ここで「少なくとも~芯繊維CFの進行方向が」とは、芯繊維CFの進行方向がボビン5の中心軸線方向と略同一であれば、鞘繊維の進行方向がボビン5の中心軸線方向と略同一であっても良いし、略同一でなくても良い事を意味する。
図3は、
図1の撚糸機1におけるガイド6U、ガイド6L及びボビン5の位置関係を説明する図形である。
図3(A)及び(B)において、ボビン5はその中心軸線(言い換えると、ボビン5の回転軸)が垂直になるように設置されている。ボビン5の中心軸線の方向が点線αの方向である。
【0017】
一方、ローラー21から供給された芯繊維CFは、ガイド6Uを介してガイド6Lに供給される。ガイド6U~ガイド6Lまでの芯繊維CFの進行方向が
図3(A)における点線βの方向である。本発明におけるガイド6U及び6Lの位置関係は、前後方向及び左右方向から見た際に、前記αの方向とβの方向が略同一となるような位置関係である。ここで芯繊維CFの進行方向βは、ガイドLが芯繊維CFを通す穴、例えば、後述する
図6(A)に記載するような穴6L2や
図6(C)に記載するような穴6L4を有する場合、ガイド6Uから供給された芯繊維CFが前記穴の中心を通った際の方向として定義される。また、「前記αの方向とβの方向が略同一」とは、αとβの方向が全く同一である事が含まれるのはもちろんのこと、αとβとが全くの同一ではないが、鞘繊維SFが芯繊維CFに対してできるだけ小さい隙間を空けて捲回できる程度の角度が含まれる。具体的には、αとβの角度の差が、±10°程度の誤差が含まれる。αとβとが略同一である事により、撚糸機構4により発生するバルーニング等により芯繊維CF並びに鞘繊維SF’及びSF’’の位置ブレを抑えることができ、芯糸CFの周囲にできるだけ小さい隙間を空けて、好ましくは隙間無く鞘糸SFが捲回されるため、より品質の高い芯鞘構造の複合糸が得られる。前記の通りαとβとが略同一であれば良く、αとβの角度自体は自由に変更可能である。例えば、
図4(A)および(B)に示すように、ボビン5を設置する角度が地面に対して垂直ではない場合、ガイド6、特にガイド6Lの位置を調整して、芯繊維CFの進行方向βを当該ボビン5の中心軸線の方向αと略同一にできる。
【0018】
また、前記ガイド6U及び6Lが、これらにより調整される少なくとも芯繊維CFの軸線を、ボビン5の中心軸線(言い換えれば、ボビン5の回転軸の軸線)の延長上に配置することがより好ましい。すなわち、
図3の例において、前後方向及び左右方向から見た際に、ボビン5の中心軸線αを延長した際に、芯繊維CFの軸線、言い換えれば芯繊維CFの進行方向における中心軸の軸線と一致することがより好ましい。このように、ボビン5の中心軸線αと芯繊維CFの軸線βとを一致させることにより、撚糸機構4により発生するバルーニング等により芯繊維CF並びに鞘繊維SF’及びSF’’の位置ブレをより抑えることができ、芯糸CFの周囲にできるだけ小さい隙間を空けて、好ましくは隙間無く鞘糸SFが捲回されるため、より品質の高い芯鞘構造の複合糸が得られる。なお、前記「一致」には、完全一致が含まれることはもちろんのこと、鞘繊維SFが芯繊維CFに対してできるだけ小さい隙間を空けて捲回できる程度の誤差も含まれる。例えば、具体的には、ボビン5の中心軸線αを延長した線の角度と、芯繊維CFの軸線の角度とが、±10°程度の差を有している場合が挙げられる。
【0019】
ここで、ガイド6は、少なくとも芯繊維CFの進行方向を前記のように調整できることを条件として、その形状及び素材等について特に制限は無い。例えば
図5には、ガイド6Uの具体的な形態例が示されている。
図5(A)及び(B)は、中心に穴6U2を有するリング6U1であるリング状のガイド6Uが示されている。芯繊維CF及び鞘繊維SFは前記穴6U2を通ってガイド6Lに至る。穴6U2の大きさは、使用する芯繊維CF及び鞘繊維SFの種類及びこれらの太さ等に基づいて適宜調整可能である。具体的な穴6U2の大きさは、例えば、穴6U2を通過する芯繊維CF及び鞘繊維SFの合計の太さに対して、1~15倍程度の大きさである。
【0020】
図5(C)及び(D)には、ガイド6Uの別の形態例が示されている。
図5(C)及び(D)の形態例において、ガイド6Uは、円盤状である複数の壁部6U3、前記壁部6U3よりも小さい半径であり前記壁部6U3を接続する接続部6U4を含んでいる。当該ガイド6Uを側面から見ると、前記壁部6U3及び接続部6U4を貫通する穴6U5が空けられている。穴6U5には軸を差し込むことができ、当該軸は撚糸機1の筐体等に回転可能に保持される。芯繊維束2及び鞘繊維束3から供給される各芯繊維CF及び鞘繊維SFは、2つの壁部6U3により囲まれた領域、例えば芯繊維CF1本と鞘繊維SF2本をガイド6Uに通す場合、芯繊維CFを
図5(C)における接続部6U4’の領域に、残る2つの鞘繊維SF2本をそれぞれ
図5(C)における接続部6U4及び6U4’’の領域に通すことができる。このように、芯繊維CF及び鞘繊維SFをガイド6Uのそれぞれ別の領域に通過させることにより、芯繊維CF及び鞘繊維SFの配置を明確にし、芯糸CFの周囲にできるだけ小さい隙間を空けて、好ましくは隙間無く鞘糸SFが捲回されるため、より品質の高い芯鞘構造の複合糸が得られる。
【0021】
また、
図6には、ガイド6Lの具体的な形態例が示されている。
図6(A)及び(B)は、中心に穴6L2を有するリング6L1であるリング状のガイド6Lが示されている。芯繊維CF及び鞘繊維SFは前記穴6L2を通って撚糸機構4に至る。穴6L2の大きさは、使用する芯繊維CF及び鞘繊維SFの種類及びこれらの太さ等に基づいて適宜調整可能である。具体的な穴6L2の大きさは、例えば、穴6L2を通過する芯繊維CF及び鞘繊維SFの合計の太さに対して、1~15倍程度の大きさである。
【0022】
図6(C)及び(D)には、ガイド6Lの別の形態例が示されている。
図6(C)及び(D)に示すガイド6Lは、平板状の本体部6L3に上下方向に貫通する穴6L4及び前記穴6L4の周囲に複数の穴6L4’が空けられている。これらそれぞれの穴6L4及び6L4’は、それぞれ個別に芯繊維CF及び鞘繊維SFを通過させることができる穴となっている。このように芯繊維CF及び鞘繊維SFを別々に通過させる穴を有する事により、芯繊維CF及び鞘繊維SFの配置を明確にし、芯糸CFの周囲にできるだけ小さい隙間を空けて、好ましくは隙間無く鞘糸SFが捲回されるため、より品質の高い芯鞘構造の複合糸が得られる。なお、穴6L4及び6L4’の大きさは、それぞれ使用する芯繊維CF及び鞘繊維SFの種類及びこれらの太さ等に基づいて適宜調整可能である。具体的な穴6L4及び6L4’の大きさは、例えば、穴6L4及び6L4’を通過する芯繊維CF及び鞘繊維SFのそれぞれの太さに対して、1~15倍程度の大きさである。
【0023】
また、前記のようにガイド6Lが芯繊維CF及び鞘繊維SFを別々に通過させる穴を有する場合において、前記鞘繊維SFを通過させる穴の位置が、芯繊維CFを通過させる穴を中心とした仮想円上にある事がより好ましい。ここで、「前記鞘繊維SFを通過させる穴の位置が、芯繊維CFを通過させる穴を中心とした仮想円上にある」とは、例えば
図6(C)において芯繊維CFを通過させる穴が穴6L4であり鞘繊維SFを通過させる穴が穴6L4’である場合において、各穴6L4’の中心が、穴6L4の中心を中心として描いた仮想円(
図6(C)における点線円θ)上にある事を意味する。鞘繊維SFを通過させる穴の位置と芯繊維CFを通過させる穴の位置とを前記のように調整する事により、芯繊維CF及び鞘繊維SFの配置を明確にし、芯糸CFの周囲にできるだけ小さい隙間を空けて、好ましくは隙間無く鞘糸SFが捲回されるため、より品質の高い芯鞘構造の複合糸が得られる。なお、前記仮想円は、1つだけでなく複数想定されても良い。例えば、複合糸を製造する際に4つの鞘繊維SFが使用される場合において、
図6(E)に示すように、対向する2つの穴6L4’が仮想円θ1上に、もう一方の対向する2つの穴6L4’が仮想円θ23上に配置されても良い。
【0024】
図6(C)及び(D)においてガイド6Lはプレート状の部材として表されているがこの形態に限定されない。例えば、
図6(F)及び(G)に示すように、ガイド6Lを複数のパイプを接続させた形態、具体的には、芯繊維CFを通過させるためのパイプ6L5と、パイプ6L5の周囲に配置された鞘繊維SFを通過させるためのパイプ6L6が複数備えられた形態としても良い。なお、前記鞘繊維SFを通過させるための穴6L4’やパイプ6L6は、1つだけ設けても良いし、2以上設けても良い。
【0025】
前記ガイド6U及び6Lの素材としては、従来から撚糸機のガイドを製造する際に使用されているいかなる素材も使用可能である。このような素材として、例えば、鉄、鉄鋼及びアルミ等の金属素材、アクリル、ポリカーボネート及びポリ塩化ビニル等の樹脂素材、ガラス素材並びに天然ゴム及び合成ゴム等のゴム素材が挙げられる。また、ガイド6U及び6Lが各繊維を通過させる穴を有する場合には、当該穴の縁と各繊維が接触する箇所にゴム等の弾性素材を備えることにより繊維が通過する際の摩擦を軽減し、摩擦熱等による繊維の切断の可能性をより軽減できる。また、ガイド6U及び6Lが穴を有する場合、穴の形は各図面に記載するように円形でも良いし、三角形、四角形、五角形及び六角形等の多角形であっても良い。
【0026】
図7にはさらに別の形態の撚糸機1の形態例が示されている。
図7において、
図1及び2と同じ番号が振られている部分については、特に説明が無い限り
図1及び2における説明と同様である。
図7の撚糸機1は、ガイド6Lが1つだけ備えられており、当該ガイド6Lは、
図6(C)及び(D)に示すような、芯繊維CFを通過させる1つの穴6L4と、前記穴6L4を中心とした1つの仮想円上に配置された鞘繊維SFを通過させる2つの穴6L4’を備えている。前記のようなガイドを備えることにより、撚糸機構4が回転することにより発生する芯繊維CF及び鞘繊維SFのバルーニングの影響を抑え、さらに芯繊維CFと鞘繊維SFの位置関係を明確にすることで、芯糸CFの周囲にできるだけ小さい隙間を空けて、好ましくは隙間無く鞘糸SFが捲回されるため、より品質の高い芯鞘構造の複合糸が得られる。
【0027】
図8にはさらに別の形態の撚糸機1の形態例が示されている。
図8において、
図1、2及び7と同じ番号が振られている部分については、特に説明が無い限り
図1、2及び7における説明と同様である。
図8の撚糸機1は、
図1の撚糸機1におけるリング状のガイド6Lの代わりに、
図6(C)及び(D)に示すような形態のものをガイド6Lとして使用した事以外は
図1の撚糸機1と同様である。
図8の撚糸機1において、ガイド6Lは、
図6(C)及び(D)に示すような、芯繊維CFを通過させる1つの穴6L4と、前記穴6L4を中心とした1つの仮想円上に配置された鞘繊維SFを通過させる2つの穴6L4’を備えている。ガイド6Uと6Lとは、少なくとも芯繊維CFの進行方向がボビン5の中心軸の方向と略同一になり、かつ、ボビン5の中心軸線を延長した際に、芯繊維CFの軸線、言い換えれば芯繊維CFの進行方向における中心軸と一致するように調整されている。前記のようなガイド6Lを使用しつつ、少なくとも芯繊維CFの軸線を前記のように調整する事で、バルーニングの影響をより抑え、芯糸CFの周囲にできるだけ小さい隙間を空けて、好ましくは隙間無く鞘糸SFが捲回されるため、より品質の高い芯鞘構造の複合糸が得られる。
図7に示すようなガイド6Lを備えることによりバルーニング等の影響を抑えることができるが、さらに少なくとも芯繊維CFの進行方向をガイド6U及び6Lにより制御することで、バルーニング等の影響をさらに抑えることができる。
【0028】
2.撚糸機を用いた複合糸の製造方法
図1に記載の撚糸機1を用いて複合糸CYを製造する方法について説明する。
図1の例において、1つの芯繊維束2と2つの鞘繊維束3(3’,3’’)とが備えられている。前記芯繊維束2及び鞘繊維束3とは、それぞれ芯繊維CF及び鞘繊維SF(鞘繊維SF’及びSF’’)が巻回されている。ここで、芯繊維束2及び鞘繊維束3に巻回される繊維は、短繊維であっても良いし、長繊維であっても良い。これらの繊維は原糸であっても良いし、撚糸後の糸であっても良い。
本発明の撚糸機1は、前記のような構造を有していることにより、撚糸後の糸を使用した場合であっても効率よく芯鞘構造の複合糸CYを製造できる。撚糸機1を駆動させることにより、ローラー21、31’及び31’’並びにボビン5が回転する。芯繊維束2に巻回された芯繊維CFは回転を開始したローラー21によって送り出される。また、鞘繊維束3’及び3’’に巻回された鞘繊維SF’及びSF’’は、回転を開始したローラー31’及び31’’によってそれぞれ送り出される。ここで、前述のように、芯繊維CF及び鞘繊維SFを送り出すローラーを別々のローラーとすることにより、各ローラーの速度の調整がより容易となる。例えばローラー31’及び31’’の速度を、ローラー21の速度よりも早くすることにより、各繊維の供給速度を調整して、好ましくは鞘繊維SFが芯繊維CFにより隙間無くより効率的に捲回される。
【0029】
ローラーにより送り出された芯繊維CF及び鞘繊維SF’及びSF’’はガイドUを通過する。
図1の例において、ガイド6Uは、
図5(C)及び(D)に記載するような形状のガイドである。
図1の撚糸機1において、前記ガイド6Uは穴6U5を通した回転軸により回転可能に保持されている。送り出された芯繊維CFは、前記ガイド6Uの壁部6U3により囲まれた真ん中の領域、すなわち
図5(C)における接続部6U4’の領域を通過する。また、送り出された鞘繊維SFは、壁部6U3により囲まれた領域であって、鞘繊維CFが通過する領域以外の領域、すなわち
図5(C)における接続部6U4及び6U4’’の領域をそれぞれ通過する。
【0030】
前記ガイド6Uを通過した芯繊維CF及び鞘繊維SF(SF’、SF’’)は、ガイド6Lを通過する。ここで、前記のように、ガイド6Uと6Lとは、少なくとも芯繊維CFの進行方向がボビン5の中心軸、すなわちボビン5の回転軸の方向と略同一となるように位置調整がされている。ここで、鞘繊維SFの進行方向については、ボビン5の中心軸の方向と同一の方向であっても良いし、異なる方向であっても良い。このように調整する事により、芯繊維CFに鞘繊維SFが均一に巻き付いた芯鞘構造の複合糸CYをより効率的に製造できる。また、ガイド6Uと6Lとを、少なくとも芯繊維CFの進行方向がボビン5の中心軸の方向と略同一になり、かつ、ボビン5の中心軸線を延長した際に、芯繊維CFの軸線、言い換えれば芯繊維CFの進行方向における中心軸と一致するように調整する事で、撚糸機構4により発生するバルーニング等による芯繊維CF並びに鞘繊維SF’及びSF’’の位置ブレをより抑えることができ、芯糸CFの周囲にできるだけ小さい隙間を空けて、好ましくは隙間無く鞘糸SFが捲回されるため、より品質の高い芯鞘構造の複合糸が得られる。
【0031】
図1の撚糸機1において、ガイド6Lは、
図6(A)及び(B)に示すような、リング状のガイドである。前記ガイド6Uを通過した芯繊維CF及び鞘繊維SFは前記ガイド6Lの穴6L2を通過する。穴6L2を通過した芯繊維CF及び鞘繊維SFは、回転するボビン5により巻き取られつつボビン5の回転によって撚り合わされる(
図9参照)。なお、ボビンが回転することによりバルーニングが発生する場合にあっても、リング状のガイド6Lを使用することにより、バルーニングによるブレをガイド6Lの穴6L2の大きさの範囲内にとどめることができ(例えば、
図9において実線で記載された各繊維のブレが、点線で記載された箇所までで抑制される)、製造される複合糸CYの品質のブレをより抑えることができる。前記撚り合わせにおいて、少なくとも芯繊維CFの進行方向がボビン5の中心軸の方向と略同一になっているため、芯繊維CFの周囲に鞘繊維SFが確実に捲回し、鞘繊維SFがきれいに捲回した複合糸CYを得ることができる。捲回されることにより得られた複合糸CYは回転するボビン5により巻き取られる。ボビン5に規定の長さの複合糸CYが巻き取られたときには、例えば、撚糸機1を停止して糸が巻回されたボビンを、糸が巻回されていないボビンと置き換えて撚糸を再開しても良い。また、本発明の撚糸機1は、前記のような機構を2以上備えても良い。
【0032】
次に、
図2に記載の撚糸機1を用いて複合糸CYを製造する方法について説明する。なお、以下の説明において、
図1の撚糸機1を用いた場合と同様に行われる操作については説明を省略する。
図2の撚糸機1は、トラベラー43の代わりにフライヤー44が備えられている。
図2の撚糸機1は、
図1の撚糸機1においてはボビン5が回転するところ、
図2の撚糸機1においてはボビン5が回転せずフライヤー44が回転する点以外は
図1の撚糸機1と同様であり、前記
図1の撚糸機1を使用した場合と同様に複合糸CYを製造できる。
【0033】
次に、
図7に記載の撚糸機1を用いて複合糸を製造する方法について説明する。なお、以下の説明において、
図1及び2の撚糸機1を用いた場合と同様に行われる操作については説明を省略する。芯繊維束2及び鞘繊維束3’、3’’から供給された芯繊維CF及び鞘繊維SF’、SF’’は、ガイド6Lに至る。ガイド6Lにおける穴6L4を通過した芯繊維CF及び穴6L4’、6L4’を通過した鞘繊維SF’及びSF’’は、回転するボビン5により巻き取られつつボビン5の回転によって撚り合わされる(
図10参照)。前記のような形状のガイド6Lを使用することにより、バルーニング等により芯繊維CF並びに鞘繊維SF’及びSF’’の位置が大きくずれることがないため(例えば、
図10において実線で記載された各繊維が、それぞれ点線の位置まででブレが抑制される)、芯糸CFの周囲にできるだけ小さい隙間を空けて、好ましくは隙間無く鞘糸SFが捲回されるため、より品質の高い芯鞘構造の複合糸が得られる。
【0034】
次に、
図8に記載の撚糸機1を用いて複合糸CYを製造する方法について説明する。なお、以下の説明において、
図1、2及び7の撚糸機1を用いた場合と同様に行われる操作については説明を省略する。芯繊維束2及び鞘繊維束3’、3’’から供給された芯繊維CF及び鞘繊維SF’、SF’’は、ガイド6Uを通過した後、ガイド6Lに至る。ガイド6Lにおける穴6L4を通過した芯繊維CF及び穴6L4’、6L4’を通過した鞘繊維SF’及びSF’’は、回転するボビン5により巻き取られつつボビン5の回転によって撚り合わされる。少なくとも芯繊維CFの進行方向がボビン5の中心軸の方向と略同一になり、かつ、ボビン5の中心軸線を延長した際に、芯繊維CFの軸線、言い換えれば芯繊維CFの進行方向における中心軸と一致させ、かつ、前記のような形状のガイド6Lを使用することにより、バルーニング等により芯繊維CF並びに鞘繊維SF’及びSF’’の位置ブレをより抑えることができ、芯糸CFの周囲にできるだけ小さい隙間を空けて、好ましくは隙間無く鞘糸SFが捲回されるため、より品質の高い芯鞘構造の複合糸が得られる。
【0035】
3.得られる複合糸
本発明の撚糸機1を用いて製造された複合糸は、芯繊維の周囲により小さい隙間を空けて、好ましくは隙間無く鞘繊維が捲回した複合糸である。これに対して例えば、特許文献1の方法で製造された複合糸の写真が
図11である。
図11に示すように従来の方法で製造された複合糸は、鞘繊維が芯繊維の周囲に大きな隙間を空けて捲回しているため、芯繊維が表面に露出している。一方で、本発明により得られる複合糸、例えば
図8の撚糸機を用いて製造された複合糸は、
図12の写真で示されているように、芯糸の周囲にできるだけ小さい隙間を空けて(
図12においては隙間無く)鞘糸が捲回されている(
図12において、黒色の糸が鞘繊維、白色の糸が芯繊維である)。本発明の複合糸においては、さらに、芯と鞘の糸の種類を適宜組み合わせることにより、所望の性能を有する芯鞘構造の複合糸が得られる。
【0036】
以下に、本発明のさらなる形態について記載する。
[1]芯繊維を供給する少なくとも1つの芯繊維束、
鞘繊維を供給する少なくとも1つの鞘繊維束、
トラベラー又はフライヤーを含む撚糸機構、及び
前記撚糸機構により芯繊維周囲に鞘繊維を捲回させた複合糸を券回させるためのボビン、を含む撚糸機であって、
前記芯繊維束及び鞘繊維束と前記撚糸機構との間に、少なくとも前記芯繊維束から供給される芯繊維の進行方向を前記ボビンの中心軸線方向と略同一に調整する少なくとも2つのガイドを含む、撚糸機、
[2]芯繊維を供給する少なくとも1つの芯繊維束、
鞘繊維を供給する少なくとも1つの鞘繊維束、
トラベラー又はフライヤーを含む撚糸機構、及び
前記撚糸機構により芯繊維周囲に鞘繊維を捲回させた複合糸を券回させるためのボビン、を含む撚糸機であって、
前記芯繊維束及び鞘繊維束と前記撚糸機構との間に、芯繊維及び鞘繊維を別々に通過させる穴を有したガイドであって、前記鞘繊維を通過させる穴の位置が、芯繊維を通過させる穴を中心とした仮想円上にあるガイドを含む、撚糸機、
[3]前記少なくとも2つのガイドが、前記少なくとも2つのガイドにより調整される少なくとも芯繊維の軸線をボビンの中心軸線延長上に配置する位置にある、[1]に記載の撚糸機、
[4]前記少なくとも2つのガイドのうち、撚糸機構側に備えられたガイドが、芯繊維及び鞘繊維を別々に通過させる穴を有したガイドであって、前記鞘繊維を通過させる穴の位置が、芯繊維を通過させる穴を中心とした仮想円上にある、[1]に記載の撚糸機、並びに
[5]さらに、前記芯繊維を搬送するローラーと、鞘繊維を搬送するローラーとを含み、それぞれのローラーが個別に回転する、[1]~[4]のいずれかに記載の撚糸機、
[6][1]~[5]のいずれかに記載する撚糸機を用いた、芯鞘構造を有する複合糸の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の撚糸機及び当該撚糸機を用いた複合糸の製造方法により、鞘繊維が芯繊維の周囲をできるだけ小さい隙間を空けて、好ましくは隙間無く捲回している事からより品質が高く、芯繊維と鞘繊維との種類を様々に組み合わせることで様々な用途に適合した複合糸となることができる。
【符号の説明】
【0038】
1:撚糸機
2:芯繊維束、21:ローラー
3:鞘繊維束、31:ローラー
4:撚糸機構、41:バルーニング制御リング 、42:トラベラーリング、43:トラベラー、44:フライヤー
5:ボビン
6:ガイド
6U:上側ガイド、6U1:リング、6U2:穴、6U3:壁部、6U4:接続部、6U5:穴
6L:下側ガイド、6L1:リング、6L2:穴、6L3:本体部、6L4:穴、6L5:パイプ、6L6:パイプ
CF:芯繊維
SF:鞘繊維
CY:複合糸