(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025022158
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】無線通信システム、マスタ機器、スレイブ機器、無線通信方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 52/02 20090101AFI20250206BHJP
H04W 84/10 20090101ALI20250206BHJP
H04W 84/20 20090101ALI20250206BHJP
H04W 48/10 20090101ALI20250206BHJP
H04L 67/141 20220101ALI20250206BHJP
H04L 69/14 20220101ALI20250206BHJP
【FI】
H04W52/02 111
H04W84/10 110
H04W84/20
H04W48/10
H04L67/141
H04L69/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023126464
(22)【出願日】2023-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】向山 健太
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA43
5K067DD11
5K067DD17
5K067DD27
5K067EE02
5K067EE10
5K067HH24
(57)【要約】
【課題】データ通信を効率よく行なうことが可能な無線通信システムを提供する。
【解決手段】関数電卓20はPC10からのブロードキャスト通信による送信スリープ信号BC1を受信して送信スリープ状態に移行する。PC10は関数電卓20をデータ通信の対象として優先順に2台ずつ1台置きに選択し、選択した2台の関数電卓20の電卓IDを含む送信パケット信号BC2,BC3,…をブロードキャスト通信で順番に入れ換えながら送信する。関数電卓20は送信パケット信号BC2,BC3,…に自機の電卓IDが含まれ且つ送信スリープ状態である場合、非スリープ状態に移行し、優先順が先の関数電卓20はアドバタイズ信号を送信してPC10との通信接続DC1,DC2,…を1対1で確立し送信対象データを取得してPC10へ送信し、送信スリープ状態に再移行する。優先順が後の関数電卓20は、送信対象データを送信バッファに記憶(準備)する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つのマスタ機器と複数のスレイブ機器とが無線通信を行なう無線通信システムにおいて、
前記マスタ機器は、第1処理として、
複数のスレイブ機器の中から、予め決められた台数のスレイブ機器をデータ通信の対象となる対象スレイブ機器として選択し、
ブロードキャスト通信により、前記対象スレイブ機器が選択されたことを示す機器選択情報を含む第1無線信号を送信し、
第1無線信号の送信後に、前記対象スレイブ機器との1対1での通信接続を確立し、
1対1での通信接続を確立した前記対象スレイブ機器との間でデータの受信または送信を行なう、
処理を実行する第1制御部を備え、
前記複数のスレイブ機器のそれぞれは、第2処理として、
ブロードキャスト通信による前記第1無線信号を受信し、
受信した前記第1無線信号に含まれる前記機器選択情報により自機が前記対象スレイブ機器として選択されているか否かを判定し、
自機がスリープ状態であって且つ前記対象スレイブ機器として選択されていると判定した場合には、自機が前記スリープ状態から非スリープ状態に移行するとともに前記マスタ機器との1対1での通信接続を確立して前記マスタ機器との間でデータの送信または受信を行ない、
自機が前記非スリープ状態において、1対1での通信接続が確立されている前記マスタ機器との間でデータの送信または受信が完了した場合、または、自機が前記対象スレイブ機器として選択されていないと判定した場合には、自機が前記マスタ機器との1対1での通信接続を切断するとともに前記スリープ状態に移行する、
処理を実行する第2制御部を備える、
無線通信システム。
【請求項2】
前記マスタ機器の第1制御部は、
特定の目的のためにデータの送信または受信を行なわせる複数のスレイブ機器を特定し、
特定した前記複数のスレイブ機器のうち、前記対象スレイブ機器として選択する前記予め決められた台数のスレイブ機器を入れ換えながら前記第1処理を繰り返し実行する、
請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記非スリープ状態は、無線信号の送信が可能な状態であり、
前記スリープ状態は、無線信号の送信が不可とされた状態である、
請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記非スリープ状態は、前記スリープ状態よりも消費電力が高い状態であり、
前記スリープ状態は、前記非スリープ状態よりも消費電力が低い状態である、
請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記マスタ機器の第1制御部は、
特定した前記複数のスレイブ機器が所定数以上である場合に前記第1処理を実行する、
請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記非スリープ状態は、通信接続が確立されている状態を維持するために定期的に送信する必要がある第1種類の無線信号の送信およびデータを送信するための第2種類の無線信号の送信の両方が許可された状態であり、
前記スリープ状態は、無線信号を受信できるが、前記第1種類の無線信号の送信および前記第2種類の無線信号の送信の両方が許可されていない状態である、
請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項7】
前記ブロードキャスト通信は、通信接続を確立していないスレイブ機器を含めた複数のスレイブ機器を対象としてデータの送信を行なう通信である、
請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項8】
前記予め決められた台数は2台以下であり、
前記複数のスレイブ機器のうち、前記対象スレイブ機器として選択されていないスレイブ機器の全てを前記スリープ状態とする、
請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項9】
前記予め決められた台数は1台である、請求項8に記載の無線通信システム。
【請求項10】
前記予め決められた台数は2台であり、
前記マスタ機器の第1制御部は、前記第1無線信号の送信により、前記2台の前記対象スレイブ機器に対して決められた順番でのデータ送信を要求する処理を実行する、
請求項8に記載の無線通信システム。
【請求項11】
前記スレイブ機器の第2制御部は、受信した前記第1無線信号により、前記2台の前記対象スレイブ機器に対して決められた順番でのデータ送信が要求されている場合には、前記2台の前記対象スレイブ機器が同時にデータを送信しないように、タイミングをずらして順番にデータを送信するように制御する、
請求項10に記載の無線通信システム。
【請求項12】
前記スレイブ機器の第2制御部は、受信した前記第1無線信号により、前記2台の前記対象スレイブ機器に対して決められた順番でのデータ送信が要求されている場合において、自機の順番が1番目のときには前記マスタ機器に対してデータを送信し、自機の順番が2番目のときには前記1番目の前記対象スレイブ機器がデータを送信している間に前記マスタ機器に対する送信データの準備を行なう、
請求項11に記載の無線通信システム。
【請求項13】
前記予め決められた台数は2台であり、
前記マスタ機器の第1制御部は、前記第1無線信号の送信により、前記2台の前記対象スレイブ機器のうちの一方の前記対象スレイブ機器にデータ送信を要求し、他方の前記対象スレイブ機器にデータ送信の準備を要求する処理を実行する、
請求項8に記載の無線通信システム。
【請求項14】
前記マスタ機器の第1制御部は、前記複数のスレイブ機器のうちの、第1のスレイブ機器を前記対象スレイブ機器として選択するとともに、第2のスレイブ機器を準備スレイブ機器として選択する処理を実行し、
前記機器選択情報には、前記複数のスレイブ機器のうちのいずれのスレイブ機器が前記準備スレイブ機器として選択されたかをスレイブ機器が判定するための情報を含み、
前記複数のスレイブ機器の第2制御部のそれぞれは、
受信した前記第1無線信号に含まれる前記機器選択情報により自機が前記準備スレイブ機器として選択されているか否かを判定し、
前記準備スレイブ機器として選択されていると判定した場合には、前記第1種類の無線信号の送信は許可されているが、前記第2種類の無線信号の送信が許可されていない準備状態に移行する処理を実行する、
請求項6に記載の無線通信システム。
【請求項15】
前記マスタ機器は、授業を行なう先生が操作する機器であり、前記スレイブ機器は前記授業を受ける複数の生徒のそれぞれが操作する機器であり、
前記マスタ機器と前記スレイブ機器との間で前記授業に関するデータの送信または受信を行なう、請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項16】
前記スレイブ機器は生徒が操作する関数電卓であり、
前記授業において前記先生が操作する機器から計算に関する課題が前記複数の生徒が操作する複数の関数電卓に送信されたことに応じて、前記複数の関数電卓から前記先生が操作する機器に対して前記課題に対する解答のデータを送信する場合に、前記第1処理および前記第2処理を実行する、請求項15に記載の無線通信システム。
【請求項17】
前記準備スレイブ機器として選択された前記スレイブ機器の第2制御部は、送信の対象となるデータを送信バッファに記憶する処理を実行し、
前記対象スレイブ機器として選択された前記スレイブ機器の第2制御部は、1対1での通信接続を確立した前記マスタ機器に前記送信バッファに記憶されたデータを送信する処理を実行する、
請求項14に記載の無線通信システム。
【請求項18】
複数のスレイブ機器との間で無線通信を行なうマスタ機器において、
前記複数のスレイブ機器の中から予め決められた台数のスレイブ機器をデータ通信の対象となる対象スレイブ機器として選択し、
ブロードキャスト通信により前記複数のスレイブ機器に対して送信する無線信号であって、前記複数のスレイブ機器のうちの前記対象スレイブ機器として選択されていない非スレイブ機器をスリープ状態にし、前記対象スレイブ機器を非スリープ状態にすることを示す機器選択情報を含む第1無線信号を送信し、
第1無線信号の送信後に、前記対象スレイブ機器との1対1での通信接続を確立し、
1対1での通信接続を確立した前記対象スレイブ機器からデータを受信する、
処理を実行する制御部を備えるマスタ機器。
【請求項19】
前記制御部は、
前記複数のスレイブ機器の中から第1の前記スレイブ機器と第2の前記スレイブ機器とをデータ通信の対象となる対象スレイブ機器として選択し、
1対1での通信接続を確立した第1の前記対象スレイブ機器から受信したデータを、1対1での通信接続を確立した第2の前記対象スレイブ機器へ送信する処理を実行する、
請求項18に記載のマスタ機器。
【請求項20】
マスタ機器との間で無線通信を行なうスレイブ機器において、
前記マスタ機器がブロードキャスト通信により複数のスレイブ機器に対して送信した無線信号であって、前記複数のスレイブ機器の中から予め決められた台数のスレイブ機器をデータ通信の対象となる対象スレイブ機器として選択したことを示す機器選択情報を含む第1無線信号を受信し、
受信した前記第1無線信号に含まれる前記機器選択情報により自機が前記対象スレイブ機器として選択されているか否かを判定し、
自機がスリープ状態であって且つ前記対象スレイブ機器として選択されていると判定した場合には、自機が前記スリープ状態から非スリープ状態に移行するとともに前記マスタ機器との1対1での通信接続を確立して前記マスタ機器に対してデータの送信を行ない、
自機が前記非スリープ状態において、1対1での通信接続が確立されている前記マスタ機器との間でデータの送信または受信が完了した場合、または、自機が前記対象スレイブ機器として選択されていないと判定した場合には、自機が前記マスタ機器との1対1での通信接続を切断するとともに前記スリープ状態に移行する、
処理を実行する制御部を備えるスレイブ機器。
【請求項21】
1つのマスタ機器と複数のスレイブ機器とが無線通信を行なうための無線通信方法であって、
前記マスタ機器の第1制御部により、第1処理として、
複数のスレイブ機器の中から、予め決められた台数のスレイブ機器をデータ通信の対象となる対象スレイブ機器として選択し、
ブロードキャスト通信により、前記対象スレイブ機器が選択されたことを示す機器選択情報を含む第1無線信号を送信し、
第1無線信号の送信後に、前記対象スレイブ機器との1対1での通信接続を確立し、
1対1での通信接続を確立した前記対象スレイブ機器との間でデータの受信または送信を行なう、
処理を実行し、
前記複数のスレイブ機器それぞれの第2制御部により、第2処理として、
ブロードキャスト通信による前記第1無線信号を受信し、
受信した前記第1無線信号に含まれる前記機器選択情報により自機が前記対象スレイブ機器として選択されているか否かを判定し、
自機がスリープ状態であって且つ前記対象スレイブ機器として選択されていると判定した場合には、自機が前記スリープ状態から非スリープ状態に移行するとともに前記マスタ機器との1対1での通信接続を確立して前記マスタ機器との間でデータの送信または受信を行ない、
自機が前記非スリープ状態において、1対1での通信接続が確立されている前記マスタ機器との間でデータの送信または受信が完了した場合、または、自機が前記対象スレイブ機器として選択されていないと判定した場合には、自機が前記マスタ機器との1対1での通信接続を切断するとともに前記スリープ状態に移行する、
処理を実行する、
ようにする無線通信方法。
【請求項22】
1つのマスタ機器と複数のスレイブ機器とが無線通信を行なう無線通信システムを機能させるためのプログラムであって、
前記マスタ機器の第1制御部を、第1処理として、
複数のスレイブ機器の中から、予め決められた台数のスレイブ機器をデータ通信の対象となる対象スレイブ機器として選択し、
ブロードキャスト通信により、前記対象スレイブ機器が選択されたことを示す機器選択情報を含む第1無線信号を送信し、
第1無線信号の送信後に、前記対象スレイブ機器との1対1での通信接続を確立し、
1対1での通信接続を確立した前記対象スレイブ機器との間でデータの受信または送信を行なう、
処理を実行するように機能させ、
前記複数のスレイブ機器それぞれの第2制御部を、第2処理として、
ブロードキャスト通信による前記第1無線信号を受信し、
受信した前記第1無線信号に含まれる前記機器選択情報により自機が前記対象スレイブ機器として選択されているか否かを判定し、
自機がスリープ状態であって且つ前記対象スレイブ機器として選択されていると判定した場合には、自機が前記スリープ状態から非スリープ状態に移行するとともに前記マスタ機器との1対1での通信接続を確立して前記マスタ機器との間でデータの送信または受信を行ない、
自機が前記非スリープ状態において、1対1での通信接続が確立されている前記マスタ機器との間でデータの送信または受信が完了した場合、または、自機が前記対象スレイブ機器として選択されていないと判定した場合には、自機が前記マスタ機器との1対1での通信接続を切断するとともに前記スリープ状態に移行する、
処理を実行するように機能させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、無線通信システム、マスタ機器、スレイブ機器、無線通信方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、同時に通信接続を維持させておくことが可能な台数が制限されている無線通信ネットワークのサーバ装置(マスタ機器)において、サーバ装置が複数のクライアント装置(スレイブ機器)を制御し、優先順位に従った順番でクライアント装置を無線通信ネットワークへ接続および切断させることで、同時接続可能な台数を超えた台数のクライアント装置を無線通信に参加させるようにした技術が考えられている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のサーバ装置では、無線通信ネットワークに通信接続させるクライアント装置を順番に切り替えることで複数のクライアント装置を特定の目的のための無線通信に参加させる場合において、複数のクライアント装置による接続の不公平を無くすことは考慮されているが、それ以外のデータ通信を効率よく行なうことについては考慮されていない。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、1つのマスタ機器と複数のスレイブ機器とが無線通信を行なう場合においてデータ通信を効率よく行なうことが可能になる無線通信システム、マスタ機器、スレイブ機器、無線通信方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る無線通信システムは、
1つのマスタ機器と複数のスレイブ機器とが無線通信を行なう無線通信システムにおいて、
前記マスタ機器は、第1処理として、
複数のスレイブ機器の中から、予め決められた台数のスレイブ機器をデータ通信の対象となる対象スレイブ機器として選択し、
ブロードキャスト通信により、前記対象スレイブ機器が選択されたことを示す機器選択情報を含む第1無線信号を送信し、
第1無線信号の送信後に、前記対象スレイブ機器との1対1での通信接続を確立し、
1対1での通信接続を確立した前記対象スレイブ機器との間でデータの受信または送信を行なう、処理を実行する第1制御部を備え、
前記複数のスレイブ機器のそれぞれは、第2処理として、
ブロードキャスト通信による前記第1無線信号を受信し、
受信した前記第1無線信号に含まれる前記機器選択情報により自機が前記対象スレイブ機器として選択されているか否かを判定し、
自機がスリープ状態であって且つ前記対象スレイブ機器として選択されていると判定した場合には、自機が前記スリープ状態から非スリープ状態に移行するとともに前記マスタ機器との1対1での通信接続を確立して前記マスタ機器との間でデータの送信または受信を行ない、
自機が前記非スリープ状態において、1対1での通信接続が確立されている前記マスタ機器との間でデータの送信または受信が完了した場合、または、自機が前記対象スレイブ機器として選択されていないと判定した場合には、自機が前記マスタ機器との1対1での通信接続を切断するとともに前記スリープ状態に移行する、
処理を実行する第2制御部を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、データ通信を効率よく行なうことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る無線通信システム1の全体の構成を示す図。
【
図2】無線通信システム1におけるPC10(マスタ機器)の電子回路の構成を示すブロック図。
【
図3】無線通信システム1における関数電卓20((1)201~(n)20n)(スレイブ機器)の電子回路の構成を示すブロック図。
【
図4】無線通信システム1のPC10による無線通信制御処理(第1処理)を示すフローチャート。
【
図5】無線通信システム1の関数電卓20による無線通信制御処理(第2処理)を示すフローチャート。
【
図6】PC10と関数電卓20との無線通信制御処理に従って全ての関数電卓20(1)201~(n)20nを送信スリープ状態に移行させる場合の通信動作を示す図。
【
図7】PC10と関数電卓20との無線通信制御処理に従って関数電卓(1)201にデータ送信を行なわせるとともに関数電卓(2)202にデータ送信の準備を行なわせる場合の通信動作を示す図。
【
図8】PC10と関数電卓20との無線通信制御処理に従って関数電卓(2)202にデータ送信を行なわせるとともに関数電卓(3)203にデータ送信の準備を行なわせる場合の通信動作を示す図。
【
図9】PC10からブロードキャスト通信により送信する送信パケット信号BC2のパケットフォーマットを示す図。
【
図10】関数電卓(1)201とPC10との通信接続DC1により関数電卓(1)201から送信する送信パケット信号のパケットフォーマットを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図面により本発明の実施の形態について説明する。
【0010】
(実施形態の構成)
図1は、本発明の実施形態に係る無線通信システム1の全体の構成を示す図である。
無線通信システム1は、無線通信機能を備えたマスタ機器と、当該マスタ機器との無線通信機能を備えた複数のスレイブ機器とを含んだ無線通信ネットワークとして構成される。
【0011】
実施形態の無線通信システム1は、学校の授業を想定し、マスタ機器を授業を行なう先生が使用するBLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)を搭載したPC(personal computer)10、スレイブ機器を授業を行なう教室内で複数の生徒が各々使用するBLEを搭載した関数電卓20((1)201,(2)202,…,(n)20n)(特定の目的のために特定されたスレイブ機器)と仮定する。
BLEを用いた無線通信ネットワークでは、マスタ機器はセントラル機器、スレイブ機器はペリフェラル機器とも呼称する。
【0012】
なお、実施形態の無線通信システム1は、BLEを用いた無線通信ネットワークに限らず、別の種類の無線通信機能を備えたサーバ装置(マスタ機器)と複数のクライアント装置(スレイブ機器)とを含んで構成される無線通信ネットワークに適用してよい。
また、マスタ機器と複数のスレイブ機器は、何れも相互に通信接続可能な無線通信機能を備えた電子機器(タブレット型のPDA(personal digital assistants)、携帯電話、携帯ゲーム機、電子ブックなど)であればよく、PC10と関数電卓20((1)201~(n)20n)に限らないのは勿論、特定の目的が授業に限らないのも勿論である。
【0013】
<PC10(マスタ機器)の機能>
実施形態の無線通信システム1において、PC10(マスタ機器)は少なくとも以下の機能(a1)~(a4)を有する。
(a1)関数電卓20((1)201~(n)20n)を送信スリープ状態(無線信号を受信するが送信しない状態)に移行させるための送信スリープ信号BC1を、ブロードキャスト通信により送信する機能。
(a2)関数電卓(1)201~(n)20n各々の通信アドレスでもある電卓(1)ID~電卓(n)ID(機器情報)を記憶する機能。なお、電卓(1)ID~電卓(n)IDは、関数電卓(1)201~(n)20n各々の予め決められた規則に従った順番(優先順)を識別可能な情報(連続する番号や記号など)を含んでよい。
(a3)一時的なデータ通信の対象(データ通信を要求する対象)となる関数電卓(1)201~(n)20nを予め決められた台数である例えば1台ずつまたは2台ずつ、予め決められた規則に従った順番で1台置きに対象スレイブ機器として選択し(2台選択した場合、順番が後の関数電卓20は通信準備の対象(データ通信の準備を要求する対象)である準備スレイブ機器となる)、選択した関数電卓20(対象スレイブ機器)(準備スレイブ機器)の電卓ID(機器選択情報)を含む送信パケット信号BC2,BC3,…,BCn(第1無線信号)を、順番にブロードキャスト通信により送信する機能。
(a4)選択した関数電卓20からのアドバタイズ信号(第1種類の無線信号)が受信されるのに応じて、当該選択した関数電卓20との1対1での通信接続DC1,DC2,…,DCnを順番に確立し、選択した関数電卓20とデータ通信する機能。
【0014】
<関数電卓20(スレイブ機器)の機能>
実施形態の無線通信システム1において、関数電卓(1)201~(n)20n(スレイブ機器)は、少なくとも以下の機能(b1)~(b5)を有する。
(b1)PC10からのブロードキャスト通信により受信される送信スリープ信号BC1に応じて、無線信号を受信するが送信しない送信スリープ状態に移行する機能。
(b2)PC10からのブロードキャスト通信により受信される送信パケット信号BC2,BC3,…,BCnに2台の電卓ID(機器選択情報)が含まれ、当該2台の電卓IDのうち予め決められた規則に従った順番が先(優先)である電卓ID(機器選択情報)が自機の電卓IDで自機が送信スリープ状態である場合、またはブロードキャスト通信により受信される送信パケット信号BC2,BC3,…,BCnに1台の電卓ID(機器選択情報)が含まれ、当該電卓IDが自機の電卓IDで自機が送信スリープ状態である場合、送信スリープ状態を解除し、送信スリープ状態から復帰した非スリープ状態(アクティブ)に移行する。そして、アドバタイズ信号(第1種類の無線信号)を送信しPC10との1対1での通信接続DC1,DC2,…,DCnを確立してデータ通信(第2種類の無線信号)する機能。
(b3)PC10からのブロードキャスト通信により受信される送信パケット信号BC2,BC3,…,BCnに2台の電卓ID(機器選択情報)が含まれ、当該2台の電卓IDのうち予め決められた規則に従った順番が後である電卓ID(機器選択情報)が自機の電卓IDで自機が送信スリープ状態である場合、またはブロードキャスト通信により受信される送信パケット信号BC2,BC3,…,BCnに1台の電卓ID(機器選択情報)が含まれ、当該電卓IDの予め決められた規則に従った次の順番の電卓IDが自機の電卓IDで自機が送信スリープ状態である場合、送信スリープ状態を解除して非スリープ状態(アクティブ)に移行する。そして、送信対象データを送信バッファに記憶(格納)してデータ通信の準備をする機能。
(b4)PC10からのブロードキャスト通信により受信される送信パケット信号BC2,BC3,…,BCnに2台の電卓ID(機器選択情報)が含まれ、当該2台の電卓IDのうち予め決められた規則に従った順番が先(優先)である電卓ID(機器選択情報)が自機の電卓IDで自機が非スリープ状態(データ通信の準備をした状態)である場合、またはブロードキャスト通信により受信される送信パケット信号BC2,BC3,…,BCnに1台の電卓ID(機器選択情報)が含まれ、当該電卓IDが自機の電卓IDで自機が非スリープ状態(データ通信の準備をした状態)である場合、アドバタイズ信号を送信してPC10と1対1での通信接続DC2,DC3,…,DCnを確立し、送信バッファに記憶されているデータを送信(第2種類の無線信号)する機能。
(b5)PC10とのデータ通信が完了したことに応じて通信接続を切断し送信スリープ状態に移行する機能。なお、ブロードキャスト通信により受信される送信パケット信号BC2,BC3,…,BCnに2台の電卓ID(機器選択情報)が含まれ、何れの電卓ID(機器選択情報)も自機の電卓IDではない場合、またはブロードキャスト通信により受信される送信パケット信号BC2,BC3,…,BCnに1台の電卓ID(機器選択情報)が含まれ、当該電卓IDと予め決められた規則に従った次の順番の電卓IDとの何れも自機の電卓IDではない場合に、PC10との通信接続を切断して送信スリープ状態に移行してもよい。
【0015】
<PC10(マスタ機器)の構成>
図2は、無線通信システム1におけるPC10(マスタ機器)の電子回路の構成を示すブロック図である。
PC10は、コンピュータである制御部(CPU:central processing unit)11(第1制御部)と、記憶部12と、記録媒体読取部13と、Wi-Fi(登録商標)などによる通信部14と、BLEによる近距離無線通信部15と、キーボードやポインティングデバイスを含む入力部16と、表示部17と、を備える。制御部11は、複数のプロセッサを含んでよい。
【0016】
制御部11は、記憶部12に記憶されているPC制御プログラム12aおよび近距離無線通信制御プログラム12bに従い回路各部の動作を制御し、入力部16からのユーザ操作に応じた入力信号、あるいは通信ネットワークN(インターネット)上のWebサーバ30からの通信部14による受信信号、あるいは複数の関数電卓(1)201,(2)202,…,(n)20nからの近距離無線通信部15による受信信号に応じた各種の処理を実行する。
PC制御プログラム12aおよび近距離無線通信制御プログラム12bは、記憶部12に予め記憶されていてもよいし、あるいはCD-ROMなどの外部記録媒体Mから記録媒体読取部13を介して記憶部12に読み込まれて記憶されたものでもよいし、あるいは通信ネットワークN上のWebサーバ30(この場合はプログラムサーバ)から通信部14を介して記憶部12に記憶されたものであってもよい。
近距離無線通信制御プログラム12bは、PC制御プログラム12aと連携して機能し、少なくとも前述の機能(a1)~(a4)を含む無線通信制御機能を実行するためのプログラムを含む。
【0017】
記憶部12には、さらに、関数電卓データ記憶領域12c、作業データ記憶領域12dなどの各種のデータ記憶領域が確保される。
関数電卓データ記憶領域12cには、例えば先生の使用するPC10とのデータ通信を必要とする複数の生徒の関数電卓(1)201,(2)202,…,(n)20n各々の電卓(1)ID~電卓(n)ID(機器情報)と、ユーザ名(生徒名)と、通信データ(受信データおよび(または)送信データを含む)とが対応付けられて記憶される。
作業データ記憶領域12dには、制御部11による各部の動作の制御に応じて生成または取得される各種のデータが必要に応じて一時的に記憶される。
【0018】
このように構成されたPC10(マスタ機器)は、制御部11がPC制御プログラム12aおよび近距離無線通信制御プログラム12bに記述された命令に従い回路各部の動作を制御し、ソフトウエアとハードウエアとが協働して動作することにより、後述の動作説明で述べるような無線通信制御機能を実現する。
【0019】
<関数電卓20(スレイブ機器)の構成>
図3は、無線通信システム1における関数電卓20((1)201~(n)20n)(スレイブ機器)の電子回路の構成を示すブロック図である。
なお
図3では、関数電卓(1)201の構成を代表して示す。
関数電卓(1)201は、コンピュータである制御部(CPU)21(第2制御部)と、記憶部22と、記録媒体読取部23と、キー入力部24と、液晶ドットマトリクス式の表示部25と、BLEによる近距離無線通信部26と、を備える。制御部21は、複数のプロセッサを含んでよい。
【0020】
制御部21は、記憶部22に記憶されている電卓制御プログラム22aおよび通信制御プログラム22bに従い回路各部の動作を制御し、キー入力部24からのキー入力信号および外部の通信機器(例えばPC10(マスタ機器))から近距離無線通信部26を介して受信される受信信号に応じた各種の処理を実行する。
電卓制御プログラム22aおよび通信制御プログラム22bは、記憶部22に予め記憶されていてもよいし、あるいはメモリカードなどの外部記録媒体Mから記録媒体読取部23を介して記憶部22に読み込まれて記憶されたものであってもよい。電卓制御プログラム22aおよび通信制御プログラム22bは、ユーザがキー入力部24の操作によって書き換えできないようになっている。
通信制御プログラム22bは、電卓制御プログラム22aと連携して機能し、少なくとも前述の機能(b1)~(b5)を含む無線通信制御機能を実行するためのプログラムを含む。
【0021】
記憶部22には、さらに、電卓データ記憶領域22c、計算データ記憶領域22d、通信データ記憶領域(送信/受信バッファ)22e、作業データ記憶領域22fなどの各種のデータ記憶領域が確保される。
電卓データ記憶領域22cには、関数電卓(1)201の電卓機器番号などである電卓(1)ID(機器情報)が記憶される。
計算データ記憶領域22dには、キー入力部24により入力される計算式や計算結果のデータなどが記憶される。
通信データ記憶領域(送信/受信バッファ)22eには、PC10に対し送信対象とするデータ(送信データ:例えば計算データ記憶領域22dに記憶された計算式や計算結果のデータ)あるいはPC10から受信されたデータ(受信データ:例えば正解の計算式や計算結果のデータ、他の生徒の関数電卓20から取得された計算式や計算結果のデータ)が記憶される。通信データ記憶領域22eは、送信バッファあるいは受信バッファとして機能するデータ記憶領域を含んでよい。
作業データ記憶領域22fには、制御部21による各部の動作の制御に応じて生成または取得される各種のデータが必要に応じて一時的に記憶される。
【0022】
このように構成された関数電卓(スレイブ機器)20((1)201~(n)20n)は、制御部21が電卓制御プログラム22aおよび通信制御プログラム22bに記述された命令に従い回路各部の動作を制御し、ソフトウエアとハードウエアとが協働して動作することにより、後述の動作説明で述べるような無線通信制御機能を実現する。
【0023】
(実施形態の動作)
次に、実施形態の無線通信システム1の動作について説明する。
図4は、無線通信システム1のPC10による無線通信制御処理(第1処理)を示すフローチャートである。
図5は、無線通信システム1の関数電卓20による無線通信制御処理(第2処理)を示すフローチャートである。
図6は、PC10と関数電卓20との無線通信制御処理に従って全ての関数電卓20(1)201~(n)20nを送信スリープ状態に移行させる場合の通信動作を示す図である。
図7は、PC10と関数電卓20との無線通信制御処理に従って関数電卓(1)201にデータ送信を行なわせるとともに関数電卓(2)202にデータ送信の準備を行なわせる場合の通信動作を示す図である。
図8は、PC10と関数電卓20との無線通信制御処理に従って関数電卓(2)202にデータ送信を行なわせるとともに関数電卓(3)203にデータ送信の準備を行なわせる場合の通信動作を示す図である。
【0024】
ここでは、各生徒が各々の関数電卓(1)201~(n)20nを使用して授業を受ける際に、関数電卓(1)201~(n)20nの電源が投入され、
図6の(A)に示すように、関数電卓(1)201~(n)20nは、各々の近距離無線通信部26から一定時間間隔で定期的にアドバタイズ信号AD1,AD2,…,ADnが送信される非スリープ状態(アクティブ)であると仮定する。
先生のPC10の制御部11において、例えば、入力部16に対するユーザ操作または記憶部12に記憶されたアプリケーションプログラムに応じて、データ通信の対象となる生徒の関数電卓20との必要な接続台数が複数台あると判定されると(ステップP1(複数台))、制御部11は、
図6の(B)に示すように、ブロードキャスト通信により送信スリープ信号BC1を送信する(ステップP2)。
各生徒の関数電卓20((1)201~(n)20n)において、PC10からブロードキャスト通信により送信された送信スリープ信号BC1が受信されると(ステップS1(Yes))、制御部21は、近距離無線通信部26による無線信号の受信はするが送信はしない送信スリープ状態に移行する(ステップS11)。関数電卓20((1)201~(n)20n)は送信スリープ状態に移行することで消費電力の抑制が図られる。
【0025】
PC10の制御部11は、関数電卓データ記憶領域12cに記憶されている各関数電卓(1)201~(n)20nの電卓ID(電卓(1)ID~電卓(n)ID)の中からデータ通信の対象となる関数電卓20の電卓IDを、予め決められた規則に従った順番で選択(ここでは電卓(1)ID~電卓(n)IDを順番に2つずつ選択)する(ステップP3)。
制御部11は、
図7の(A)に示すように、選択した2つの関数電卓20の電卓ID(最初は電卓(1)IDと電卓(2)ID)を含む送信パケット信号BC2を、ブロードキャスト通信により送信する(ステップP4)。
図9は、PC10からブロードキャスト通信により送信する送信パケット信号BC2のパケットフォーマットを示す図である。
ステップP3において選択された電卓(1)IDと電卓(2)IDは、
図9に示すように、送信パケット信号BC2のプロトコルデータユニット(Protocol Data Unit)を構成するアドバタイズデータ(Advertisement Data)に付加(格納)してブロードキャスト通信により送信される。
【0026】
関数電卓(1)201~(n)20nの制御部21は、PC10からのブロードキャスト通信により自機の電卓IDを含む送信パケット信号BC2が受信されたか否かを判定する(ステップS2)。
関数電卓(1)201,(2)202において、自機の電卓ID(電卓(1)IDと電卓(2)ID)を含む送信パケット信号BC2が受信されたと判定されると(ステップS2(Yes))、制御部21は、現在、送信スリープ状態にあると判定し(ステップS3(Yes))、送信スリープ状態を解除して非スリープ状態(アクティブ)に移行する(ステップS4)。
ここで、自機の電卓IDを含む送信パケット信号BC2が受信されなかった関数電卓(3)203~(n)20nは、消費電力を抑制する送信スリープ状態が維持される。
【0027】
非スリープ状態(アクティブ)に移行した関数電卓(1)201,(2)202の制御部21は、PC10から受信した送信パケット信号BC2に含まれる2つの電卓ID(電卓(1)IDと電卓(2)ID)のうち、自機の電卓IDの順番が先(優先)か否かを判定する(ステップS5)。
ここで、関数電卓(1)201の制御部21は、自機の電卓IDの順番が先(優先)であると判定し(ステップS5(Yes))、
図7の(B)に示すように、アドバタイズ信号AD1を送信し(ステップS6)、PC10からのスキャン要求信号の受信とPC10へのスキャン応答信号の送信とを経て、当該PC10との1対1での電波干渉の無い通信接続DC1を確立する(ステップS7)。
関数電卓(1)201の制御部21は、通信データ記憶領域22eの送信バッファにPC10への送信対象のデータ(送信対象データ)が記憶(準備)されているか否かを判定する(ステップS8)。送信対象データが送信バッファに記憶(準備)されていない場合(ステップS8(No))、制御部21は、送信対象データを例えば計算データ記憶領域22dから取得し(ステップS9)、
図7の(B)に示すように、取得した送信対象データd1をPC10へ送信する(ステップS10)。そして再び送信スリープ状態に移行する(ステップS11)。
なお、実施形態での送信対象データは、関数電卓20により得られる計算の解答のデータであるが、解答のデータとしては、計算式の計算結果に限らず、複数の座標点のリストを含むグラフのデータなど、データ量が大きい解答のデータも対象となるのは勿論である。
【0028】
図10は、関数電卓(1)201とPC10との通信接続DC1により関数電卓(1)201から送信する送信パケット信号のパケットフォーマットを示す図である。
関数電卓(1)201の送信対象データd1は、
図10に示すように、送信パケット信号のプロトコルデータユニット(Protocol Data Unit)を構成するペイロード(Payload)に付加(格納)してPC10へ送信される。
【0029】
一方、関数電卓(2)202の制御部21は、PC10から受信した送信パケット信号BC2に含まれる2つの電卓ID(電卓(1)IDと電卓(2)ID)のうち、自機の電卓IDの順番が後であると判定し(ステップS5(No))、例えば計算データ記憶領域22dから取得した送信対象データd2を、
図7の(B)に示すように、通信データ記憶領域22eの送信バッファに記憶させ、データ送信の準備をする(ステップS12)。
【0030】
PC10において、
図7の(B)で示したように、データ通信の対象として選択した関数電卓(1)201からのアドバタイズ信号AD1が受信されると(ステップP5(Yes))、制御部11は、関数電卓(1)201へのスキャン要求信号の送信と関数電卓(1)201からのスキャン応答信号の受信とを経て、当該関数電卓(1)201との1対1での電波干渉の無い通信接続DC1を確立する(ステップP6)。
制御部11は、通信接続された関数電卓(1)201からの送信対象データd1を受信し(ステップP7)、例えば関数電卓データ記憶領域12cの当該関数電卓(1)201の電卓(1)IDに対応付けて記憶(保存)する(ステップP8)。
【0031】
制御部11は、関数電卓データ記憶領域12cに記憶されている関数電卓(n)20nの電卓(n)IDに対応した送信対象データdnが取得されたか否か、すなわちデータ通信の対象となる全ての生徒の関数電卓(1)201~(n)20nからの送信対象データd1~dnの取得が完了したか否かを判定する(ステップP9)。
ここで、電卓(n)IDに対応した送信対象データdnが取得されていないと判定されると(ステップP9(No))、制御部11は、データ通信の対象となる次の関数電卓20の電卓ID(ここでは電卓(2)IDと電卓(3)ID)を選択し(ステップP3)、前述同様の処理を経て、次の関数電卓(2)202からの送信対象データd2を取得する(ステップP4~P8)。
すなわち、PC10の制御部11は、
図8の(A)に示すように、選択した2つの関数電卓20の電卓ID(電卓(2)IDと電卓(3)ID)を含む送信パケット信号BC3を、ブロードキャスト通信により送信する(ステップP4)。
【0032】
関数電卓(2)202において、自機の電卓(2)IDを含む送信パケット信号BC3が受信されたと判定されると(ステップS2(Yes))、制御部21は、現在、非スリープ状態(アクティブ)であると判定し(ステップS3(No))、
図8の(B)に示すように、アドバタイズ信号AD2を送信し(ステップS6)、PC10からのスキャン要求信号の受信とPC10へのスキャン応答信号の送信とを経て、当該PC10との1対1での通信接続DC2を確立する(ステップS7)。
関数電卓(2)202の制御部21は、通信データ記憶領域22eの送信バッファにPC10への送信対象データd2が記憶(準備)されていると判定し(ステップS8(Yes))、
図8の(B)に示すように、送信バッファ(22e)の送信対象データd2をPC10へ送信する(ステップS10)。そしてPC10との1対1での通信接続を切断し、再び送信スリープ状態に移行する(ステップS11)。
【0033】
また関数電卓(3)203の制御部21は、自機の電卓(3)IDを含む送信パケット信号BC3が受信されたと判定するとともに(ステップS2(Yes))、現在、送信スリープ状態にあると判定し(ステップS3(Yes))、送信スリープ状態を解除して非スリープ状態(アクティブ)に移行する(ステップS4)。
ここで、関数電卓(3)203の制御部21は、PC10から受信した送信パケット信号BC3に含まれる2つの電卓ID(電卓(2)IDと電卓(3)ID)のうち、自機の電卓IDの順番が後であると判定し(ステップS5(No))、例えば計算データ記憶領域22dから取得した送信対象データd3を、
図8の(B)の示すように、通信データ記憶領域22eの送信バッファに記憶させ、データ送信の準備をする(ステップS12)。
【0034】
PC10において、
図8の(B)で示したように、データ通信の対象として選択した次の関数電卓(2)202からのアドバタイズ信号AD2が受信されると(ステップP5(Yes))、制御部11は、関数電卓(2)202へのスキャン要求信号の送信と関数電卓(2)202からのスキャン応答信号の受信とを経て、当該関数電卓(2)202との1対1での電波干渉の無い通信接続DC2を確立する(ステップP6)。
制御部11は、通信接続された関数電卓(2)202からの送信対象データd2を受信し(ステップP7)、例えば関数電卓データ記憶領域12cの当該関数電卓(2)202の電卓(2)IDに対応付けて記憶(保存)する(ステップP8)。
【0035】
制御部11は、電卓(n)IDに対応した送信対象データdnが取得されていないと判定し(ステップP9(No))、データ通信の対象となる次の関数電卓20の電卓ID(ここでは電卓(3)IDと電卓(4)ID)を選択し(ステップP3)、前述同様の処理を経て、次の関数電卓(3)203(送信対象データd3が送信バッファ(22e)に準備されている)からの送信対象データd3を取得する(ステップP4~P8)。
この後、PC10と関数電卓(4)204~(n)20nとにおいても、前述同様の無線通信制御処理を繰り返し実行することで、関数電卓(4)204以降の送信対象データd4~dnも順番に1対1での通信接続を確立してPC10に受信され、関数電卓データ記憶領域12cに記憶される。
そしてPC10の制御部11において、電卓(n)IDに対応した送信対象データdnが取得されたと判定されると(ステップP9(Yes))、関数電卓(1)201~(n)20nとの一連の無線通信制御処理を終了する。
【0036】
一方、PC10の制御部11において、例えば、入力部16に対するユーザ操作または記憶部12に記憶されたアプリケーションプログラムに応じて、データ通信の対象となる生徒の関数電卓20との必要な接続台数が1台であると判定されると(ステップP1(1台))、制御部11は、各関数電卓(1)201~(n)20nから各々受信されるアドバタイズ信号のうち、データ通信の対象とする関数電卓20からのアドバタイズ信号に基づいて、当該1台の関数電卓20へのスキャン要求信号の送信と当該関数電卓20からのスキャン応答信号の受信を経て1対1での通信接続を確立し(ステップP10)、当該関数電卓20とのデータ通信を実行する(ステップP11)。
【0037】
関数電卓20の制御部21において、PC10から受信した送信パケット信号に自機の電卓IDが含まれないと判定された場合において(ステップS2(No))、現在、送信スリープ状態にある場合は(ステップS13(Yes))、PC10との通信接続を確立せずにスリープ状態を維持し(ステップS14)、送信スリープ状態にない場合は(ステップS13(No))、送信スリープ状態に強制的に移行する(ステップS15)。
【0038】
なお、ここで説明した実施形態の動作では、特定の目的のため、PC10との間でデータ通信を必要とする特定した複数の関数電卓(1)201~(n)20nのうち、PC10により予め決められた規則に従い順番に選択される通信対象の関数電卓20を、2台ずつその1台目はデータ通信の対象、2台目は通信準備の対象として選択し、選択した2台の電卓ID(機器選択情報)を含む送信パケット信号BC2,BC3,…をブロードキャスト通信に基づき順番に送信する。そして関数電卓20(1)201~(n)20nは、PC10から受信される2台の電卓ID(機器選択情報)のうち、先(優先)の電卓IDが自機の電卓IDである場合、アドバタイズ信号を送信してPC10との1対1での通信接続を確立し、送信対象データをPC10へ送信する。PC10から受信される2台の電卓ID(機器選択情報)のうち、後の電卓IDが自機の電卓IDである場合、送信対象データを送信バッファ(22e)に記憶(準備)した。
PC10により順番に選択される通信対象の関数電卓20が1台ずつであっても、関数電卓20の無線通信制御処理(
図5)のステップS2において、PC10からの送信パケット信号BC2,BC3,…に含まれる電卓ID(機器選択情報)が自機の電卓IDであると判定した場合は勿論、アドバタイズ信号を送信してPC10との通信接続を確立し、送信対象データをPC10へ送信する(ステップS5~S10)。そしてPC10からの送信パケット信号BC2,BC3,…に含まれる電卓ID(機器選択情報)の次の順番の電卓IDが自機の電卓IDであることを判定することで、送信対象データを送信バッファ(22e)に記憶(準備)すればよい(ステップS12)。
【0039】
また、実施形態の動作において、PC10(マスタ機器)と関数電卓20((1)201~(n)20n)(スレイブ機器)とのデータ通信は、各関数電卓(1)201~(n)20nの送信対象データd1~dnをPC10へ送信する場合のデータ通信として説明したが、例えばPC10が受信した関数電卓(1)201からの送信対象データd1を、当該PC10を介して次の順番で通信接続を確立する関数電卓(2)202へ送信して転送し、送信対象データd1の共有を図るなど、データの送受信を含めてよいのは勿論である。
【0040】
(実施形態のまとめ)
実施形態の無線通信システム1によれば、関数電卓(1)201~(n)20nは、PC10からのブロードキャスト通信による送信スリープ信号BC1を受信して無線信号の受信は許可されるが送信(アドバタイズ信号(第1種類の無線信号)やデータを送信する信号(第2種類の無線信号)を含む)は許可されない送信スリープ状態に移行し、消費電力の抑制を図る。PC10は、関数電卓(1)201~(n)20nを一時的なデータ通信の対象(データ通信を要求する対象である対象スレイブ機器)として予め決められた優先順に予め決められた台数(ここでは2台:2台目は通信準備の対象(データ通信の準備を要求する対象である準備スレイブ機器))ずつ1台置きに選択し、選択した2台の関数電卓20(対象スレイブ機器)(準備スレイブ機器)の電卓ID(機器選択情報)を含む送信パケット信号BC2,BC3,…(第1無線信号)をブロードキャスト通信により順番に入れ換えながら送信する。
関数電卓(1)201~(n)20nは、PC10からの送信パケット信号BC2,BC3,…に自機の電卓IDが含まれ且つ送信スリープ状態である場合、送信スリープ状態から復帰した非スリープ状態(アクティブ)に移行し、そのうち優先順が先の関数電卓20(m)は、アドバタイズ信号(第1種類の無線信号)を送信してPC10との通信接続DC1,DC2,…を1対1で確立し、送信対象データを取得してPC10へ送信(第2種類の無線信号)する。優先順が後の関数電卓20(m+1)は、非スリープ状態であるがアドバタイズ信号(第1種類の無線信号)の送信は許可されデータを送信する信号(第2種類の無線信号)の送信は許可されない送信準備状態であり、送信対象データを送信バッファ(22e)に記憶(準備)する。
また関数電卓(2)202~(n)20nは、PC10からの送信パケット信号BC2,BC3,…に自機の電卓IDが優先順が先の電卓IDとして含まれ且つ送信スリープ状態ではない非スリープ状態である場合、アドバタイズ信号(第1種類の無線信号)を送信してPC10との通信接続DC2,DC3,…を1対1で確立し送信バッファ(22e)に記憶(準備)された送信対象データをPC10へ送信(第2種類の無線信号)する。
関数電卓(1)201~(n)20nは、送信対象データを送信するとPC10との通信接続を切断し再び送信スリープ状態に移行して消費電力の抑制を図る。
【0041】
このように、実施形態の無線通信システム1によれば、PC10(マスタ機器)と複数の関数電卓(1)201~(n)20n(スレイブ機器)との間でデータ通信を行なう場合に、PC10からのブロードキャスト通信による送信パケット信号BC2,BC3,…によりデータ通信の対象として順番に選択した1台ずつの関数電卓20からのアドバタイズ信号に基づき、PC10との1対1での通信接続を順番に確立してデータ通信を行なうので、電波干渉や通信接続の確立に障害が生じることなく、通信エラーの発生やエラーデータの再送を抑制できる。
また、PC10によりデータ通信の対象または通信準備の対象として選択した関数電卓20を選択的に非スリープ状態(アクティブ)に移行させ、それ以外の関数電卓20は送信スリープ状態に移行するようにしたので、データ通信のための消費電力の増加を大幅に抑制できる。
さらに、PC10により通信準備の対象として選択されるデータ通信を次に行なう関数電卓20では、送信対象データを送信バッファ(22e)に記憶(準備)し、次にPC10によりデータ通信の対象として選択されたときには、PC10との通信接続を確立して直ぐに送信対象データを送信するので、送信対象データを取得して準備する時間を短縮できる。
よって、実施形態の無線通信システム1によれば、データ通信を効率よく行なうことが可能になる。
【0042】
なお、前述の実施形態では、関数電卓20における送信スリープ状態を、無線信号の受信はするが送信はしない状態であるとし、PC10が通信対象として選択した関数電卓20だけが送信スリープ状態を解除して1対1での通信接続を確立することで電波干渉の無いデータ通信を可能にするとともに、消費電力の抑制が図れる状態であると説明した。すなわち前述の実施形態では、PC10が通信対象として選択した関数電卓20の送信スリープ状態を一時的に解除してデータ通信を行ない、各関数電卓(1)201~(n)20nの消費電力の抑制を図るので、このことを電波の送信は行うが消費電力を抑制する電力スリープ状態と呼称してよい。
【0043】
また、BLEを用いたマスタ機器と複数のスレイブ機器との無線通信ネットワークにおいて、周波数ホッピングによりチャンネルを切り替えながら通信接続することで、マスタ機器に対して数多くのスレイブ機器を同時接続可能にする技術がある。しかし周波数ホッピングを利用した場合、スレイブ機器からアドバタイズ信号を送信するチェンネルの数が所定数に限られるため、スレイブ機器の台数が多くなるほど、電波干渉、消費電力、通信接続確立時間の何れにおいてもデータ通信の効率が低下する。従って、特定されたスレイブ機器(授業を行なう教室内で生徒が使用する関数電卓20)の台数が、周波数ホッピングが有効な所定の台数(例えば15台)以上である場合に、実施形態の無線通信システム1での処理を実行する構成としてもよい。あるいは、周波数ホッピングが無効な状況では、スレイブ機器が少ない台数(例えば5台)であっても、実施形態の無線通信システム1での処理を実行する構成としてもよい。
【0044】
以上の実施形態において記載した無線通信システム1による各処理の手法、すなわち、
図4のフローチャートに示すPC10(マスタ機器)の無線通信制御処理、
図5のフローチャートに示す関数電卓20(スレイブ機器)の無線通信制御処理などの各手法は、何れもコンピュータに実行させることができるプログラムとして、メモリカード(ROMカード、RAMカードなど)、磁気ディスク(フロッピ(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD-ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの外部記録装置の媒体に格納して配布することができる。そして、電子機器の制御部(CPU)は、この外部記録装置の媒体に記録されたプログラムを記憶装置に読み込み、この読み込んだプログラムによって動作が制御されることにより、実施形態において説明した各種の機能を実現し、前述した手法による同様の処理を実行することができる。
【0045】
また、各手法を実現するためのプログラムのデータは、プログラムコードの形態として通信ネットワーク(N)上を伝送させることができ、この通信ネットワーク(N)に接続されたコンピュータ装置(プログラムサーバ)から、前記プログラムのデータを電子機器に取り込んで記憶装置に記憶させ、前述した各種の機能を実現することもできる。
【0046】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、前記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0047】
1 …無線通信システム
10 …PC(マスタ機器)
11 …制御部(CPU)(第1制御部)
12c…関数電卓データ記憶領域
15 …近距離無線通信部
201,202,203,20n…関数電卓(スレイブ機器)
21 …制御部(CPU)(第2制御部)
22e…通信データ記憶領域(送信/受信バッファ)
26 …近距離無線通信部
AD1,AD2,AD3…アドバタイズ信号
BC1…送信スリープ信号(ブロードキャスト通信)
BC2,BC3,BCn…機器選択情報を含む送信パケット信号(ブロードキャスト通信)
DC1,DC2,DC3,DCn…1対1での通信接続
d1,d2,d3…送信対象データ(通信データ)