(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002218
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】航海データ記憶装置および航海データ記憶方法
(51)【国際特許分類】
G08G 3/00 20060101AFI20241226BHJP
B63B 49/00 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
G08G3/00 A
B63B49/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102239
(22)【出願日】2023-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】増渕 修
(72)【発明者】
【氏名】下住 明久
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA25
5H181BB17
5H181CC11
5H181FF10
5H181FF27
(57)【要約】
【課題】目的とする情報を効率的に取得可能にする航海データ記憶装置を提供する。
【解決手段】船舶内での音声を集音する集音機器2と、集音機器2で集音された音声データを日時と関連付けて記憶する音声記憶部3と、集音機器2で集音された音声データから、人の声および所定の音の少なくとも一方をイベントデータとして抽出して日時と関連付けて記憶するイベント記憶部4と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶内での音声を集音する集音手段と、
前記集音手段で集音された音声データを日時と関連付けて記憶する音声記憶手段と、
前記集音手段で集音された音声データから、人の声および所定の音の少なくとも一方をイベントデータとして抽出して日時と関連付けて記憶するイベント記憶手段と、
を備えることを特徴とする航海データ記憶装置。
【請求項2】
前記集音手段を複数備え、
前記音声記憶手段は、前記集音手段ごとに前記音声データを記憶し、
前記イベント記憶手段は、前記集音手段ごとに前記イベントデータを抽出して記憶する、
ことを特徴とする請求項1に記載の航海データ記憶装置。
【請求項3】
船舶内での音声を集音するステップと、
集音した音声データを日時と関連付けて記憶するステップと、
集音した音声データから、人の声および所定の音の少なくとも一方をイベントデータとして抽出して日時と関連付けて記憶するステップと、
を備えることを特徴とする航海データ記憶方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶内の音声やレーダ画像などを記憶する航海データ記憶装置(VDR;Voyage Data Recorder)および航海データ記憶方法に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の船舶にはVDRを搭載することが義務付けられており、このVDRには、日時に対応した船位、船速、船首の方位などのセンサーデータのほかに、音声データやレーダ画像データ、各種アラームなどの航海データが記憶される。この航海データは、事故調査の他、船主による運行管理の分析、検査、保守サービスなどを目的として取得および分析される。
【0003】
このようなVDRの航海データは、近年、高品質化が要求されており、特に音声データや画像データが大容量となる傾向にある。一方、記録日時と紐づいて航海データが記憶されているため、ユーザは、日時の範囲を指定して航海データを取得する。しかし、目的とする情報の記録日時がわからない場合や曖昧な場合などには、十分広い範囲のデータを取得し、その中から目的とする情報を見つけ出していた。
【0004】
また、音声データについては、VDRに接続された複数のマイクユニットやVHF(Very High Frequency)無線機からの音声データが記憶される。しかし、目的とする情報が含まれる音声データがどの機器から収集されているかがわからない場合や曖昧な場合などには、すべての機器を対象として音声データを取得して、目的とする情報を見つけ出していた。
【0005】
一方、警告音を発した船内装置を特定することが可能な航海データ記憶装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この航海データ記憶装置は、航海中の音声を記録する音声記録装置と、装置名と該装置が発する警告音を関連づけてデータベース化した警告音記録装置と、音声記録装置に収録された音声と警告音記録装置に格納された警告音を解析し比較する音声比較装置と、音声比較装置の比較結果を表示する表示装置と、を備えるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来、目的とする情報の記録日時や機器がわからない場合などには、広い範囲の音声データやすべての機器の音声データを取得して、その中から目的とする情報を見つけ出さなければならず、多大な労力と時間を要していた。特に、VDRが搭載された船舶上で情報の取得を行う場合が多く、作業時間が船舶の運航スケジュールに基づいて制限されるため、目的とする情報を効率的に取得できるようにする技術が求められていた。一方、特許文献1に記載の航海データ記憶装置では、警告音を発した船内装置を特定することは可能であるが、目的とする情報を効率的に取得することはできない。
【0008】
そこで本発明は、目的とする情報を効率的に取得可能にする航海データ記憶装置および航海データ記憶方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、船舶内での音声を集音する集音手段と、前記集音手段で集音された音声データを日時と関連付けて記憶する音声記憶手段と、前記集音手段で集音された音声データから、人の声および所定の音の少なくとも一方をイベントデータとして抽出して日時と関連付けて記憶するイベント記憶手段と、を備えることを特徴とする航海データ記憶装置である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の航海データ記憶装置において、前記集音手段を複数備え、前記音声記憶手段は、前記集音手段ごとに前記音声データを記憶し、前記イベント記憶手段は、前記集音手段ごとに前記イベントデータを抽出して記憶する、ことを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、船舶内での音声を集音するステップと、集音した音声データを日時と関連付けて記憶するステップと、集音した音声データから、人の声および所定の音の少なくとも一方をイベントデータとして抽出して日時と関連付けて記憶するステップと、を備えることを特徴とする航海データ記憶方法である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1および請求項3に記載の発明によれば、船舶内での音声データが日時と関連付けて記憶されるとともに、人の声や所定の音がイベントデータとして日時と関連付けて記憶される。このため、まず、イベントデータを確認し、特定のイベントデータの日時に対応する音声データを確認することで、目的とする情報を取得することが可能となる。つまり、従来のように、広範囲にわたる音声データから所望の情報を見つけ出す必要がなく、イベントデータを確認して日時を特定してから音声データを確認すればよいため、目的とする情報を効率的に取得することが可能となる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、集音手段ごとに音声データが記憶されるとともに、集音手段ごとにイベントデータが記憶される。このため、まず、集音手段ごとにイベントデータを確認し、特定の集音手段の特定のイベントデータの日時に対応する音声データを確認することで、集音手段を複数備える場合であっても、目的とする情報を効率的に取得することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】この発明の実施の形態に係る航海データ記憶装置を示す概略構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0016】
図1は、この発明の実施の形態に係る航海データ記憶装置1を示す概略構成ブロック図である。この航海データ記憶装置1は、船舶に搭載され、船位、船速、船首の方位などのセンサーデータや音声データ、レーダ画像データなどの航海データを記憶する装置であり、主として、音声データの記憶に関する機能・構成が従来の航海データ記憶装置と異なる。このため、音声データの記憶に関する機能・構成について、主として以下に説明する。
【0017】
航海データ記憶装置1は、主に、集音機器(集音手段)2と、音声記憶部(音声記憶手段)3と、イベント記憶部(イベント記憶手段)4と、データ取得部(データ取得手段)5と、を備える。
【0018】
集音機器2は、船舶内での音声を集音する機器であり、マイクユニットやVHF無線機などで構成されている。このような集音機器2を複数備え、各集音機器2は、音声が発生される場所、例えば、船員が所在する操舵室やアラーム音を発する装置の周辺などに、それぞれ配設されている。
【0019】
音声記憶部3は、各集音機器2で集音された音声データを日時と関連付けて記憶するものであり、集音機器2ごとに音声データを記憶する。具体的には、データ記憶処理部31と音声データベース32とを備え、データ記憶処理部31は、各集音機器2で集音された音声データを、音声データベース32の集音機器2ごとの記憶エリアに時系列・連続的に日時とともに入力する。これにより、集音機器2ごとに音声データが時系列・連続的に日時と関連付けて音声データベース32に記憶、蓄積される。
【0020】
イベント記憶部4は、各集音機器2で集音された音声データから、人の声(会話)および所定の音をイベントデータとして抽出して、日時と関連付けて記憶するものであり、集音機器2ごとにイベントデータを抽出して記憶する。すなわち、データ分析処理部41と分析データベース42とを備え、データ分析処理部41は、音声データを分析して人の声や所定の音をイベントデータとして抽出する。
【0021】
具体的には、自動音声認識機能(ASR; Automatic Speech Recognition)および音声テキスト化機能(STT; Speech To Text)を備えて、音声データのなかから人の声・言語を認識し、その言語を文字・テキストに変換してイベントデータとして抽出する。また、衝撃音や爆発音のような急激な音圧レベルの上昇(音圧レベルが所定値以上である所定の音の発生)をイベントデータとして抽出したり、船舶内の各装置のアラーム音などの特定の周波数成分を有する所定の音をイベントデータとして抽出したりする。ここで、このような所定の音の音圧レベルや周波数成分などを予め記憶し、記憶された音圧レベルや周波数成分などに基づいて所定の音を抽出する。
【0022】
そして、このようにして各集音機器2の音声データから抽出したイベントデータを、分析データベース42の集音機器2ごとの記憶エリアに時系列に日時(イベントデータの発生日時)とともに入力する。これにより、集音機器2ごとにイベントデータが時系列に日時と関連付けて分析データベース42に記憶、蓄積される。
【0023】
例えば、次のように記憶、蓄積される。
・〇月〇日 △時△分:衝撃音発生
・〇月〇日 △時△分:アラーム音発生
・〇月〇日 △時△分:人による会話「××××××××××××××××××」
【0024】
データ取得部5は、ユーザUが音声データを聞いたりイベントデータを見たりするためのインターフェイスであり、音声データ取得部51と分析データ表示部52とを備える。音声データ取得部51は、音声データベース32から所望の集音機器2の所望の日時の音声データを取得して出力・拡声する装置である。また、分析データ表示部52は、分析データベース42から所望の集音機器2の所望の日時のイベントデータを取得して出力・表示する装置である。このような音声データ取得部51と分析データ表示部52は、別体で構成してもよいが、汎用のパーソナルコンピュータなどで1体として構成してもよい。
【0025】
次に、このような構成の航海データ記憶装置1による航海データ記憶方法について説明する。
【0026】
まず、各集音機器2によって船舶内での音声を集音し(集音ステップ)、各集音機器2で集音した音声データをデータ記憶処理部31によって、集音機器2ごとに日時と関連付けて音声データベース32に入力、記憶する(音声記憶ステップ)。同時に、各集音機器2で集音した音声データをデータ分析処理部41によって分析し、人の声や所定の音をイベントデータとして抽出して、集音機器2ごとに日時と関連付けて分析データベース42に入力、記憶する(イベント記憶ステップ)。このような集音ステップ、音声記憶ステップおよびイベント記憶ステップを常時、継続的に行う。
【0027】
一方、ユーザUが事故調査などのために音声データを確認したい場合には、まず、分析データ表示部52で分析データベース42から各集音機器2のイベントデータを表示、確認する。そして、特定のイベントデータ(例えば、衝撃音発生)の日時に対応する(周辺日時の)音声データを、音声データ取得部51を介して音声データベース32から取得して聞くことで、目的とする情報を取得・知得する。
【0028】
このように、この航海データ記憶装置1および航海データ記憶方法によれば、船舶内での音声データが日時と関連付けて記憶されるとともに、人の声や所定の音がイベントデータとして日時と関連付けて記憶される。このため、まず、イベントデータを確認し、特定のイベントデータの日時に対応する音声データを確認することで、目的とする情報を取得することが可能となる。つまり、従来のように、広範囲にわたる音声データから所望の情報を見つけ出す必要がなく、イベントデータを確認して日時を特定してから音声データを確認すればよいため、目的とする情報を効率的に取得することが可能となる。
【0029】
また、集音機器2ごとに音声データが記憶されるとともに、集音機器2ごとにイベントデータが記憶される。このため、まず、集音機器2ごとにイベントデータを確認し、特定の集音機器2の特定のイベントデータの日時に対応する音声データを確認することで、集音機器2を複数備える場合であっても、目的とする情報を効率的に取得することが可能となる。
【0030】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、人の声および所定の音の双方をイベントデータとして抽出、記憶しているが、船舶の種類や航行の目的などに応じて、人の声および所定の音の一方のみをイベントデータとして抽出、記憶するようにしてもよい。
【0031】
また、音声データの記憶とイベントデータの記憶とを同時に並行して行っているが、所定時間音声データを記憶、蓄積した後にイベントデータの抽出、記憶を行うようにしてもよい。また、音声データ取得部51と分析データ表示部52をともに航海データ記憶装置1に備えているが、一方または双方を航海データ記憶装置1と別体に設けるようにしてもよい。さらに、分析データベース42の記憶エリアを集音機器2ごとに分けてイベントデータを記憶しているが、どの集音機器2からのイベントデータかがわかれば、分析データベース42の記憶エリアを集音機器2ごとに分けなくてもよい。
【0032】
1 航海データ記憶装置
2 集音機器(集音手段)
3 音声記憶部(音声記憶手段)
31 データ記憶処理部
32 音声データベース
4 イベント記憶部(イベント記憶手段)
41 データ分析処理部
42 分析データベース
5 データ取得部(データ取得手段)
51 音声データ取得部
52 分析データ表示部