(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025022181
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】太陽光発電装置
(51)【国際特許分類】
H02S 50/00 20140101AFI20250206BHJP
H02S 30/20 20140101ALI20250206BHJP
E06B 5/00 20060101ALI20250206BHJP
E06B 9/264 20060101ALI20250206BHJP
E06B 9/42 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
H02S50/00
H02S30/20
E06B5/00 A
E06B9/264 B
E06B9/42 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023126526
(22)【出願日】2023-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000128175
【氏名又は名称】株式会社エフ・シー・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】大橋 達之
(72)【発明者】
【氏名】永濱 龍也
(72)【発明者】
【氏名】池戸 裕美
【テーマコード(参考)】
2E043
2E239
5F251
【Fターム(参考)】
2E043AA01
2E043BB12
2E043BB14
2E043BB15
2E043DB05
2E239AA01
2E239AA09
5F251BA05
5F251EA02
5F251JA14
5F251JA30
5F251KA03
5F251KA08
(57)【要約】
【課題】太陽電池アレイ毎の故障診断を容易に行うことができ、太陽電池アレイ毎に交換可能とすることができる太陽光発電装置を提供する。
【解決手段】ブラインド1の開閉状態を検出する開閉状態検出手段(2、3)と、太陽光を受けて発電を行う太陽電池モジュールTが直列に接続されるとともに、ブラインド1の開閉方向に対して垂直になるようにブラインド1に設置された太陽電池アレイ4と、ブラインド1の開閉方向に対して複数の太陽電池アレイ4を並列に設置し、かつ並列に接続した太陽電池パネル5と、太陽電池パネル5の発電電力を出力可能な電力変換装置6とを具備した太陽光発電装置であって、開閉状態検出手段で検出されたブラインド1の開閉状態に応じて発電電力を測定することにより、太陽電池アレイ4毎に故障診断を行う故障検出装置7を具備したものである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開状態と閉状態とを任意に切り替え可能な日よけ手段と、
前記日よけ手段の開閉状態を検出する開閉状態検出手段と、
太陽光を受けて発電を行う太陽電池モジュールが直列に接続されるとともに、前記日よけ手段の開閉方向に対して垂直になるように前記日よけ手段に設置された太陽電池アレイと、
前記日よけ手段の開閉方向に対して複数の前記太陽電池アレイを並列に設置し、かつ並列に接続した太陽電池パネルと、
前記太陽電池パネルの発電電力を出力可能な電力変換装置と、
を具備した太陽光発電装置であって、
前記開閉状態検出手段で検出された前記日よけ手段の開閉状態に応じて前記発電電力を測定することにより、前記太陽電池アレイ毎に故障診断を行う故障検出装置を具備したことを特徴とする太陽光発電装置。
【請求項2】
前記故障検出装置は、前記日よけ手段の開閉時、前記開閉状態検出手段で検出された前記日よけ手段の開閉状態に応じて前記発電電力を計測するとともに、前記太陽電池アレイが、所定値以上の電力を発電した場合、その太陽電池アレイが正常と判定する正常判定を行うことを特徴とする請求項1記載の太陽光発電装置。
【請求項3】
前記故障検出装置は、前記日よけ手段が全開状態から全閉状態に変更された開閉時間を計測し、前記正常判定は、前記開閉時間が所定時間以内に行われたときに行うことを特徴とする請求項2記載の太陽光発電装置。
【請求項4】
前記故障検出装置は、前記正常判定で正常と判定された太陽電池アレイと、正常と判定されなかった太陽電池アレイとがある場合、前記正常と判定されなかった前記太陽電池アレイを故障と判定することを特徴とする請求項2記載の太陽光発電装置。
【請求項5】
前記故障検出装置は、前記太陽電池アレイが所定回数連続して前記故障と判定されたとき、故障を確定することを特徴とする請求項4記載の太陽光発電装置。
【請求項6】
特定の前記太陽電池アレイの故障が確定されたとき、その故障と確定された太陽電池アレイを表示する故障表示装置を具備したことを特徴とする請求項5記載の太陽光発電装置。
【請求項7】
前記太陽電池アレイが、前記日よけ手段に対して着脱して交換可能とされたことを特徴とする請求項1記載の太陽光発電装置。
【請求項8】
前記日よけ手段は、ブラインド、カーテンまたはオーニングであることを特徴とする請求項1記載の太陽光発電装置。
【請求項9】
前記日よけ手段は、前記ブラインドから成るとともに、前記ブラインドの開閉状態を検出する開閉状態検出手段は、ストロークセンサ及びスラットアングルセンサとされ、スラットアングルセンサが所定値以上を検出したとき、前記故障検出装置による前記故障診断を行うことを特徴とする請求項8記載の太陽光発電装置。
【請求項10】
前記電力変換装置は、前記太陽電池パネルから発電電力を出力する際、最大電力点追従制御を行うことを特徴とする請求項1記載の太陽光発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光を受けて発電を行うための太陽光発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、光起電力効果を利用して光エネルギを電気エネルギ(電力)に変換するもので、太陽光から直接に電力を得ることができることから、近時において、環境にやさしい発電手段として普及しつつある。かかる太陽電池を利用した太陽光発電装置は、太陽電池の最小単位であるセルを組み合わせて機能化した太陽電池モジュールを具備し、モジュールが直列又は並列に接続されたアレイを複数並べて太陽電池パネルを構成している。
【0003】
このような太陽光発電装置の故障を診断するため、従来、太陽電池パネル毎の出力電流量を取得し、出力電流量の時間変化が予め設定された閾値より大きいものを故障した太陽電池パネルと診断する技術が提案されている(特許文献1参照)。これにより、複数の太陽電池パネルから故障した太陽電池パネルを容易に特定することができ、新たな太陽電池パネルに迅速に交換することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術においては、太陽電池パネル毎に故障を診断するため、太陽電池パネル毎に故障検出ユニットを設置する必要があり、設置費用が嵩んでしまうという課題がある。また、近時においては、ペロブスカイト太陽電池のようなフィルム状で柔軟性に優れた太陽電池も提案されており、このような簡易の太陽光発電装置においては、太陽電池アレイ毎に故障を診断して短いサイクルで太陽電池アレイ毎に交換する要求が高まっている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、太陽電池アレイ毎の故障診断を容易に行うことができ、太陽電池アレイ毎に交換可能とすることができる太陽光発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、開状態と閉状態とを任意に切り替え可能な日よけ手段と、前記日よけ手段の開閉状態を検出する開閉状態検出手段と、太陽光を受けて発電を行う太陽電池モジュールが直列に接続されるとともに、前記日よけ手段の開閉方向に対して垂直になるように前記日よけ手段に設置された太陽電池アレイと、前記日よけ手段の開閉方向に対して複数の前記太陽電池アレイを並列に設置し、かつ並列に接続した太陽電池パネルと、前記太陽電池パネルの発電電力を出力可能な電力変換装置とを具備した太陽光発電装置であって、前記開閉状態検出手段で検出された前記日よけ手段の開閉状態に応じて前記発電電力を測定することにより、前記太陽電池アレイ毎に故障診断を行う故障検出装置を具備したことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の太陽光発電装置において、前記故障検出装置は、前記日よけ手段の開閉時、前記開閉状態検出手段で検出された前記日よけ手段の開閉状態に応じて前記発電電力を計測するとともに、前記太陽電池アレイが、所定値以上の電力を発電した場合、その太陽電池アレイが正常と判定する正常判定を行うことを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の太陽光発電装置において、前記故障検出装置は、前記日よけ手段が全開状態から全閉状態に変更された開閉時間を計測し、前記正常判定は、前記開閉時間が所定時間以内に行われたときに行うことを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項2記載の太陽光発電装置において、前記故障検出装置は、前記正常判定で正常と判定された太陽電池アレイと、正常と判定されなかった太陽電池アレイとがある場合、前記正常と判定されなかった前記太陽電池アレイを故障と判定することを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の太陽光発電装置において、前記故障検出装置は、前記太陽電池アレイが所定回数連続して前記故障と判定されたとき、故障を確定することを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の太陽光発電装置において、特定の前記太陽電池アレイの故障が確定されたとき、その故障と確定された太陽電池アレイを表示する故障表示装置を具備したことを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の発明は、請求項1記載の太陽光発電装置において、前記太陽電池アレイが、前記日よけ手段に対して着脱して交換可能とされたことを特徴とする。
【0014】
請求項8記載の発明は、請求項1記載の太陽光発電装置において、前記日よけ手段は、ブラインド、カーテンまたはオーニングであることを特徴とする。
【0015】
請求項9記載の発明は、請求項8記載の太陽光発電装置において、前記日よけ手段は、前記ブラインドから成るとともに、前記ブラインドの開閉状態を検出する開閉状態検出手段は、ストロークセンサ及びスラットアングルセンサとされ、スラットアングルセンサが所定値以上を検出したとき、前記故障検出装置による前記故障診断を行うことを特徴とする。
【0016】
請求項10記載の発明は、請求項1記載の太陽光発電装置において、前記電力変換装置は、前記太陽電池パネルから発電電力を出力する際、最大電力点追従制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明によれば、開閉状態検出手段で検出された日よけ手段の開閉状態に応じて発電電力を測定することにより、太陽電池アレイ毎に故障診断を行う故障検出装置を具備したので、太陽電池アレイ毎の故障診断を容易に行うことができ、太陽電池アレイ毎に交換可能とすることができる。
【0018】
請求項2記載の発明によれば、故障検出装置は、日よけ手段の開閉時、開閉状態検出手段で検出された日よけ手段の開閉状態に応じて発電電力を計測するとともに、太陽電池アレイが、所定値以上の電力を発電した場合、その太陽電池アレイが正常と判定する正常判定を行うので、故障診断時、太陽電池アレイの正常判定を正確に行うことができる。
【0019】
請求項3記載の発明によれば、故障検出装置は、日よけ手段が全開状態から全閉状態に変更された開閉時間を計測し、正常判定は、開閉時間が所定時間以内に行われたときに行うので、太陽光の時間的変化の影響を抑制することができ、故障診断時の正常判定をより正確に行わせることができる。
【0020】
請求項4記載の発明は、故障検出装置は、正常判定で正常と判定された太陽電池アレイと、正常と判定されなかった太陽電池アレイとがある場合、正常と判定されなかった太陽電池アレイを故障と判定するので、夜間や周囲の影の影響で全ての太陽電池アレイが発電されない状況のとき、誤って故障と判定するのを防止することができる。
【0021】
請求項5記載の発明は、故障検出装置は、太陽電池アレイが所定回数連続して故障と判定されたとき、故障を確定することを特徴とするので、故障診断時、より一層確実に故障を判定することができる。
【0022】
請求項6記載の発明は、特定の太陽電池アレイの故障が確定されたとき、その故障と確定された太陽電池アレイを表示する故障表示装置を具備したので、故障した太陽電池アレイを視覚的に報知してユーザに容易に把握させることができ、その故障した太陽電池アレイの交換を円滑に行わせることができる。
【0023】
請求項7記載の発明は、太陽電池アレイが、日よけ手段に対して着脱して交換可能とされたので、日よけ手段の交換を不要としつつ太陽電池アレイのみを交換することができ、太陽電池アレイの交換時のコストを低減することができる。
【0024】
請求項8記載の発明は、日よけ手段は、ブラインド、カーテンまたはオーニングであるので、汎用的な日よけ手段を流用することができ、太陽光発電装置の設置コストを低減することができる。
【0025】
請求項9記載の発明は、日よけ手段は、ブラインドから成るとともに、ブラインドの開閉状態を検出する開閉状態検出手段は、ストロークセンサ及びスラットアングルセンサとされ、スラットアングルセンサが所定値以上を検出したとき、故障検出装置による故障診断を行うので、汎用的な日よけ手段であるブラインドを流用することができるとともに、ブラインドの開閉状態を確実に判別することができ、故障診断の精度を向上させることができる。
【0026】
請求項10記載の発明は、電力変換装置は、太陽電池パネルから発電電力を出力する際、最大電力点追従制御(MPPT)を行うので、安定して発電電力を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施形態に係る太陽光発電装置を示すブロック図
【
図3】同太陽光発電装置における太陽電池アレイを説明するための模式図
【
図4】同太陽光発電装置における太陽電池モジュールを説明するための模式図
【
図5】同太陽光発電装置における日よけ手段及び太陽電池アレイを示す斜視図
【
図6】同太陽光発電装置における日よけ手段及び太陽電池アレイを示す斜視図
【
図7】同太陽光発電装置の制御内容(メインフロー)を示すフローチャート
【
図8a】同太陽光発電装置の制御内容(故障診断)を示すフローチャート
【
図8b】同太陽光発電装置の制御内容(故障診断)を示すフローチャート
【
図9】同太陽光発電装置の制御内容(故障診断におけるスラットOK判定)を示すフローチャート
【
図10】同太陽光発電装置の故障診断におけるOK判定の例を示す表
【
図11】同太陽光発電装置の制御内容(故障診断におけるスラットNG判定)を示すフローチャート
【
図12】同太陽光発電装置の故障診断におけるNG判定の例を示す表
【
図13】同太陽光発電装置の故障診断におけるNG確定の例を示す表
【
図14】同太陽光発電装置の故障診断におけるOK判定フラグ、発電電力変化及び発電電力の例を示すグラフ
【
図15】同太陽光発電装置の故障診断におけるスラットポジションの算出(
図8のS12)を示すグラフ
【
図16】同太陽光発電装置の故障診断におけるスラットアングル(スラット角度)の算出(
図8のS13)を示すグラフ
【
図17】本発明の他の実施形態(日よけ手段がカーテン又はオーニング)に係る太陽光発電装置を示すブロック図
【
図19】本発明の他の実施形態(日よけ手段の開閉をモータで行う)に係る太陽光発電装置を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る太陽光発電装置は、太陽光を受けて発電を行うためのもので、
図1、2に示すように、日よけ手段としてのブラインド1と、操作手段(昇降コードS1、ラダーコードS2)と、開閉状態検出手段としてのストロークセンサ2及びスラットアングルセンサ3と、太陽電池アレイ4を複数有した太陽電池パネル5と、電力変換装置6と、故障検出装置7と、故障表示装置8とを具備している。
【0029】
ブラインド1は、開状態と閉状態とを任意に切り替え可能なもので、複数のスラット1aと、本体部1bとを具備して構成されている。スラット1aは、
図2に示すように、紐等の連結手段にて上下方向に複数設置されており、操作手段(昇降コードS1及びラダーコードS2)によって、上下に移動してストロークを変化させ得るとともに、それぞれが回動して角度(スラットアングル)を変化させ得るようになっている。
【0030】
すなわち、全開状態においては、スラット1aは、最下段に位置する板1c上に全て積層配置されるとともに、操作手段(昇降コードS1)を操作することにより、最下段に位置する板1cがスラット1aの1枚分だけ下方に移動すると、
図5に示すように、上から1枚のスラット1a分が閉状態となる。続けて操作手段(昇降コードS1)を操作して、最下段に位置する板1cがスラット1aの1枚分だけさらに下方に移動すると、
図6に示すように、上から2枚のスラット1a分が閉状態となるとともに、例えば最下段に位置する板1cが最下方まで移動すると、
図2に示すように、全て(本実施形態においては5枚)のスラット1aが全閉状態となる。
【0031】
また、スラット1aは、操作手段(ラダーコードS2)によって、
図16のグラフ下の模式図に示すように、太陽電池アレイ4に対して太陽光を遮光する遮光位置と太陽電池アレイ4に対して太陽光を採光する採光位置との間で角度(スラットアングル)を調整可能とされている。このように、本実施形態のブラインド1によれば、複数のスラット1aが移動及び回転することにより、上下方向に開閉して太陽電池アレイ4に対して太陽光を任意に採光及び遮光させ得るようになっている。なお、本実施形態においては、スラット1aが上下方向に移動して開閉(すなわち、開閉方向が上下方向)するよう構成されているが、左右方向等、他の方向に移動して開閉するものであってもよい。
【0032】
さらに、本実施形態に係るブラインド1は、上部位置に本体部1bが取り付けられており、この本体部1b内には、ブラインド1(日よけ手段)の開閉状態を検出する開閉状態検出手段としてのストロークセンサ2及びスラットアングルセンサ3が配設されている。ストロークセンサ2は、スラット1aの移動寸法を検出し得るセンサから成るもので、例えばスラット1aを昇降する昇降コードS1の巻き上げ量により検出される。また、スラットアングルセンサ3は、スラット1aの角度を検出し得るセンサから成るもので、スラット1aの角度を変化させるラダーコードS2の巻き上げ量によりスラット1aの角度を検出し、各スラット1aの太陽電池アレイ4に対する採光及び遮光状態の判別を可能としている。
【0033】
太陽電池アレイ4は、
図3に示すように、太陽光を受けて発電を行う複数の太陽電池モジュールTが直列に接続されるとともに、
図2に示すように、ブラインド1(日よけ手段)の開閉方向に対して垂直(本実施形態においてはスラット1aの延設方向、図中左右方向)になるようにブラインド1の各スラット1aに設置されたものである。すなわち、太陽電池モジュールTは、
図4に示すように、太陽電池の最小の単位である複数の太陽電池セルCが耐候性パッケージに封入されて成るもので、
図3に示すように、それら複数の太陽電池モジュールTが直列に接続されて太陽電池アレイ4を構成している。また、各太陽電池アレイ4には、逆流防止のためダイオードgが接続されている。なお、ペロブスカイト太陽電池のようなフィルム状で柔軟性に優れた太陽電池の太陽電池アレイ4から成るものとしてもよい。
【0034】
太陽電池パネル5は、
図1、2に示すように、ブラインド1(日よけ手段)の開閉方向に対して複数の太陽電池アレイ4を並列に設置し、かつ並列に接続したもので、ブラインド1が全閉状態のとき、太陽電池パネル5を構成する全ての太陽電池アレイ4が太陽光を受けて発電可能とされている。電力変換装置6は、各太陽電池アレイ4と接続されるとともに、太陽電池パネル5の発電電力を外部の負荷に出力可能とされている。
【0035】
ここで、本実施形態に係る電力変換装置6は、太陽電池パネル5から発電電力(PV)を出力する際、最大電力点追従制御を行うものとされている。最大電力点追従制御(MPPT:Maximum Power Point Tracking)とは、太陽電池が発電する時に出力を最大化できる最適な電流×電圧の値(最大電力点、あるいは最適動作点)を自動で求める制御をいい、気象条件等の変化で常に変動する最適動作点に追従しながら動作することができる。
【0036】
例えば、最大電力点追従制御のうち例えば登り法なる制御においては、電圧と電力とをグラフ化したP-V曲線において電圧を一方向(増加または減少)に変化させていき、電力が増加から減少に転換すると電圧を変化させる方向を逆方向にするよう制御される。そして、これを繰り返すことにより、常に電力が最大となる最適動作点に制御することができる。このように、本実施形態に係る電力変換装置6は、太陽電池パネル5から発電電力を出力する際、最大電力点追従制御を行うので、安定して発電電力を出力することができる。
【0037】
故障検出装置7は、ストロークセンサ2及びスラットアングルセンサ(開閉状態検出手段)で検出されたブラインド1(日よけ手段)の開閉状態に応じて発電電力(PV)を測定することにより、太陽電池アレイ4毎に故障診断を行うものである。具体的には、故障検出装置7は、故障診断で行われるブラインド1の開閉時、ストロークセンサ2及びスラットアングルセンサ3で検出されたブラインド1の開閉状態に応じて発電電力(PV)を計測するとともに、太陽電池アレイ4が、所定値以上の電力を発電した場合、その太陽電池アレイ4が正常と判定する正常判定(正常と判定されない場合、故障と判定することができる)を行うよう構成されている。
【0038】
具体的には、ストロークセンサ2及びスラットアングルセンサ3でブラインド1の開閉状態、すなわち各スラット1aの移動状態を検出するとともに、1枚のスラット1aが移動して閉状態となったとき(
図5参照)、2枚のスラット1aが移動して閉状態となったとき(
図6)、続いて3~5枚のスラット1aが順次移動して閉状態となったとき、それぞれ発電電力(PV)を測定することにより、各スラット1aに配設された太陽電池アレイ4の正常判定(正常または故障の判定)を行うことができる。
【0039】
例えば、スラットポジション1~5において、スラットポジション2のみ故障である場合、OK判定、発電電力変化および発電電力について、
図14に示すような結果となる。すなわち、発電電力は、すべてのスラットポジション1~5が正常の場合と比べて、スラットポジション2以降低下して推移し、スラットポジション2のみ所定値(OK判定値)以下となるとともに、スラットポジション2のOK判定のフラグのみ0とされる。
【0040】
したがって、本実施形態に係る太陽光発電装置によれば、ストロークセンサ2及びスラットアングルセンサ3で検出されたブラインド1の開閉状態に応じて発電電力を測定することにより、太陽電池アレイ4毎に故障診断を行う故障検出装置7を具備したので、太陽電池アレイ4毎の故障診断を容易に行うことができ、太陽電池アレイ4毎に交換可能とすることができる。
【0041】
特に、本実施形態に係る故障検出装置7は、ブラインド1の開閉時、ストロークセンサ2及びスラットアングルセンサ3で検出されたブラインド1の開閉状態に応じて発電電力(PV)を計測するとともに、太陽電池アレイ4が、所定値以上の電力を発電した場合、その太陽電池アレイ4が正常と判定する正常判定を行うので、故障診断時、太陽電池アレイ4の正常判定を正確に行うことができる。
【0042】
また、本実施形態に係る故障検出装置7は、ブラインド1が全開状態から全閉状態に変更された開閉時間を計測し、正常判定は、開閉時間が所定時間以内に行われたときに行うよう構成されている。これにより、太陽光の時間的変化(例えば、時間帯による太陽光の強弱の変化)の影響を抑制することができ、故障診断時の正常判定をより正確に行わせることができる。
【0043】
さらに、本実施形態に係る故障検出装置7は、正常判定で正常と判定された太陽電池アレイ4と、正常と判定されなかった太陽電池アレイ4とがある場合、正常と判定されなかった太陽電池アレイ4を故障と判定するよう構成されている。これにより、夜間や周囲の影の影響で全ての太陽電池アレイ4が発電されない状況のとき、誤って故障と判定するのを防止することができる。
【0044】
またさらに、本実施形態に係る故障検出装置7は、太陽電池アレイ4が所定回数連続して故障と判定されたとき、故障を確定するようになっている。これにより、故障診断時、より一層確実に故障を判定することができる。なお、故障検出装置7により故障と確定する回数は、任意に設定することができるとともに、1回だけ正常と判定されなかったときに故障を確定するようにしてもよい。
【0045】
また、本実施形態においては、特定の太陽電池アレイ4の故障が確定されたとき、その故障と確定された太陽電池アレイ4を表示する故障表示装置8を具備している。これにより、故障した太陽電池アレイ4を視覚的に報知してユーザに容易に把握させることができ、その故障した太陽電池アレイ4の交換を円滑に行わせることができる。かかる故障表示装置8は、故障検出装置7と有線又は無線で接続された表示装置であってもよく、ユーザが携帯する端末(スマートフォン等)であってもよい。
【0046】
加えて、本実施形態においては、太陽電池アレイ4がブラインド1(日よけ手段)に対して着脱して交換可能とされている。これにより、ブラインド1の交換を不要としつつ太陽電池アレイ4のみを交換することができ、太陽電池アレイ4の交換時のコストを低減することができる。また、本実施形態において、日よけ手段は、ブラインド1から成るとともに、ブラインド1の開閉状態を検出する開閉状態検出手段は、ストロークセンサ2及びスラットアングルセンサ3とされ、スラットアングルセンサ3が所定値以上を検出したとき、故障検出装置7による故障診断を行うので、汎用的な日よけ手段であるブラインド1を流用することができるとともに、ブラインド1の開閉状態を確実に判別することができ、故障診断の精度を向上させることができる。
【0047】
次に、本実施形態に係る太陽光発電装置(スラット5枚のブラインド)の制御方法(メインフロー)について、
図7のフローチャートに基づいて説明する。
まず、S1にて最大電力点追従制御(MPPT)により発電量が最大になるPV電圧を決定した後、S2にて故障診断制御にて故障検出装置7による故障診断が行われる。その後、S3にてPV電圧制御が行われ、S1で決定したPV電圧になるように電力変換装置6を制御するとともに、S4にて負荷電圧制御が行われ、負荷に応じて電力変換装置6の出力電圧を制御する。
【0048】
次に、メインフローにおける故障診断制御S2について、
図8(a)(b)のフローチャートに基づいて以下に説明する。
故障診断制御S2が行われると、S11にて発電電力(PV)を算出した後、S12にてスラットポジション(SP)及びS13にてスラットアングル(スラット角度)(SA)をそれぞれ算出する。スラットポジション(SP)は、
図15に示すように、ストロークセンサ2で検出されたブラインドストローク(BS)を各スラット1aに関連付けして算出されるとともに、スラットアングル(SA)は、
図16に示すように、スラットアングルセンサ3で検出されたスラットアングル(SA)に関連付けして算出される。
【0049】
そして、S14にてスラットポジション(SP)が0より大きいか否か(少なくとも1枚のスラット1aが閉状態であるか否か)が判定され、0より大きい場合、S15にてスラットポジション(SP)が6より小さいか否か(全閉か否か)が判定され、6より小さい場合、S16に進む。S16においては、スラットアングル(SA)が所定値(
図16参照)より大きいか否か判定され、スラットアングル(SA)が所定値より大きい場合、S17にて予め設定されたタイマ(TM)が0か否か判定される。
【0050】
S17にてタイマ(TM)が0である場合、S18に進み、SPOが0であるか否か判定され、SPOが0である場合、正常判定のフラグであるF_OK判定を1とする。その後、S20にてタイマ(TM)がセットされ、スラットOK判定の制御(後述する
図9のフローチャートに基づく制御)が行われるとともに、S22にてSPO=SPとして制御を終了する。
【0051】
一方、S15にてスラットポジション(SP)が6より小さくないと判定された場合(全閉状態の場合)、S23にて正常判定のフラグであるF_OK判定が1であるか否か判定される。S23にてF_OK判定が1であると判定されると、S24にてF_OK判定を0とし、S25にてタイマ(TM)を0とする。そして、S26にてスラットNG判定の制御(後述する
図11のフローチャートに基づく制御)が行われた後、S22に進んでSPO=SPとし、制御を終了する。なお、S23にてF_OK判定が1でないと判定されると、S24~S26はスキップされてS22に進むこととなる。
【0052】
一方、S14にてスラットポジション(SP)が0より大きくないと判定された場合(全開状態の場合)、S16にてスラットアングル(SA)が所定値より大きくないと判定された場合、またはS18にてSPOが0でないと判定された場合、S28にてF_OK判定を0とし、S29にてタイマ(TM)を0とするとともに、S30にてSPOKを0とし、S22に進む。また、S17においてタイマ(TM)が0でないと判定された場合、S27に進んでタイマ(TM)を減算し、S21に進むこととなる。
【0053】
次に、スラットOK判定S21について、
図9のフローチャートに基づいて以下に説明する。
故障診断フロー(
図8b参照)においてスラットOK判定S21が行われると、S40にてスラットポジション(SP)がSPOより小さいか否か判定され、スラットポジション(SP)がSPOより小さいと判定された場合、S41にてスラットポジション(SP)がSPOと等しいか否か判定する。そして、スラットポジション(SP)がSPOと等しいと判定された場合、S42に進み、発電電力(PV)がPB(SP)minより小さいか否か判定され、発電電力(PV)がPB(SP)minより小さいと判定されると、S43にてPB(SP)min=発電電力(PV)とした後、S44に進む。
【0054】
また、S42にて発電電力(PV)がPB(SP)minより小さくないと判定された場合、S43をスキップしてS44に進むこととなる。一方、S41にてスラットポジション(SP)がSPOと等しくないと判定された場合、S48に進み、PV(SP)max=発電電力(PV)とした後、S42をスキップしてS43に進むこととなる。
【0055】
S44においては、発電電力(PV)がPB(SP)maxより大きいか否か判定され、発電電力(PV)がPB(SP)maxより大きいと判定されると、S45にてPB(SP)max=発電電力(PV)とした後、S46に進む。一方、S44にて発電電力(PV)がPB(SP)maxより大きくないと判定されると、S45をスキップしてS46に進むこととなる。
【0056】
S46においては、PB(SP)max-PB(SP)minなる演算値がOK判定値より大きいか否か判定され、当該演算値がOK判定値より大きいと判定されると、S47にてスラットのOK判定のフラグであるF_OK(SP)を1として制御を終了する。また、S46において、当該演算値がOK判定値より大きくないと判定されると、S47をスキップして制御を終了する。一方、S40にてスラットポジション(SP)がSPOより小さくないと判定された場合、S41~S47をスキップして制御を終了する。なお、F_OK(SP)について、例えば、1~5(CPUの処理が8ビット単位のため数値は8となっている)のスラットポジション(SP)が設定された場合であって、そのうちスラットポジション(SP)=2のみ正常判定がなかった場合、
図10に示すようなフラグが付与されることとなる。
【0057】
次に、スラットNG判定S26について、
図11のフローチャートに基づいて以下に説明する。
故障診断フロー(
図8b参照)においてスラットNG判定S26が行われると、S50にてスラットのOK判定のフラグであるSPOKが0より大きいか否か判定され、SPOKが0より大きい場合、S51にてSPOK<00011111B(ビット)か否か判定される。そして、S51にてSPOK<00011111B(ビット)であると判定されると、S52にてX=1に設定され、S53にてF_OK(X)=0か否か判定され、F_OK(X)=0の場合、S54に進む。
【0058】
S54においては、スラットのOK判定が連続で出ない回数であるSPNG(X)をSPNG(X)+1として1増加させ、S55にてSPNG(X)が所定値より大きいか否か判定する。そして、SPNG(X)が所定値より大きい場合、S56にてF_NG(X)=1としてNG判定確定のフラグを立てた後、S57にてX=X+1とし、S58にてXが5より大きいか否か判定するとともに、Xが5より大きい場合は制御を終了する。また、S50にてSPOKが0より大きくないと判定された場合、及びS51にてSPOK<00011111B(ビット)でないと判定された場合、制御を終了する。
【0059】
一方、S53において、F_OK(X)=0でないと判定された場合、S59にてSPNG=0とし、S60にてF_NG(X)=0とした後、S54~S56をスキップしてS57に進むこととなる。さらに、S55にてSPNG(X)が所定値より大きくない場合、S56をスキップしてS57に進むとともに、S58にてXが5より大きくないと判定された場合、S53に戻って以降の制御が進むこととなる。
【0060】
なお、SPNG(SP)について、例えば、1~5(CPUの処理が8ビット単位のため数値は8となっている)のスラットポジション(SP)が設定された場合であって、そのうちスラットポジション(SP)=2のみN回連続して正常判定がなかった場合、
図12に示すようなフラグが付与されることとなる。その場合、F_NG(SP)について、
図13に示すようなNG確定(故障)であるフラグが付与されることとなる。
【0061】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば
図17、18に示すように、日よけ手段としてのブラインド1に代えて、カーテンまたはオーニングから成る開閉手段9としてもよい。かかる開閉手段9は、布またはシート状の遮光部9aと、遮光部9aを巻き取って収納可能な本体部9bとを具備しており、遮光部9aが上下方向に開閉可能とされている。
【0062】
本実施形態に係る太陽電池アレイ4は、太陽光を受けて発電を行う太陽電池モジュールTが直列に接続されるとともに、開閉手段9(日よけ手段)の開閉方向に対して垂直になるように遮光部9aに設置されている。また、本実施形態に係る太陽電池パネル5は、開閉手段9(日よけ手段)の開閉方向に対して複数の太陽電池アレイ4を並列に設置し、かつ並列に接続して構成されており、開閉状態検出手段で検出された開閉手段9の開閉状態に応じて発電電力を測定することにより、太陽電池アレイ4毎に故障診断を行う故障検出装置7を具備している。
【0063】
さらに、
図19に示すように、開閉手段としてのブラインド1の開閉動作を操作手段(昇降コードS1及びラダーコードS2)による手動操作に代えてモータMにて行うものとしてもよい。この場合、モータMをサーボモータなど高精度に回転制御可能な駆動源とすることにより、モータMの回転数に応じてブラインド1の開閉状態を検出し得るので、先の実施形態の如きストロークセンサ2及びスラットアングルセンサ3等の別個のセンサを不要とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明と同様の趣旨であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 ブラインド(日よけ手段)
1a スラット
1b 本体部
2 ストロークセンサ(開閉状態検出手段)
3 スラットアングルセンサ(開閉状態検出手段)
4 太陽電池アレイ
5 太陽電池パネル
6 電力変換装置
7 故障検出装置
8 故障表示装置
9 開閉手段(カーテンまたはオーニングから成る日よけ手段)
9a 遮光部
9b 本体部
T 太陽電池モジュール
C 太陽電池セル
g ダイオード
S1 昇降コード(操作手段)
S2 ラダーコード(操作手段)
M モータ