(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025022183
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】電力変換装置、および、電力システム
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20250206BHJP
【FI】
H02M7/48 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023126528
(22)【出願日】2023-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(72)【発明者】
【氏名】小林 亮
(72)【発明者】
【氏名】北村 高嗣
(72)【発明者】
【氏名】大堀 彰大
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770BA11
5H770BA20
5H770CA06
5H770DA10
5H770DA22
5H770FA05
5H770FA12
5H770HA03Y
5H770JA17Y
(57)【要約】
【課題】インバータ回路と開閉部との間に電圧センサを備えていなくても、並列自立運転を可能にする電力変換装置、および、電力システムを提供する。
【解決手段】電力変換装置A1は、直流電力を交流電力に変換するインバータ回路11と、インバータ回路11を制御する制御回路14と、インバータ回路11の交流側の出力端子に直列接続され、開放状態と閉鎖状態とで切り替えられる開閉部12と、開閉部12に対してインバータ回路11とは反対側に配置されて、インバータ回路11の出力電圧を検出する電圧センサ13とを備えている。制御回路14は、自立運転中は、目標電圧Vrefと電圧センサ13が検出したフィードバック電圧Vfbとの差電圧ΔVに基づいて、インバータ回路11を制御し、自立運転の開始時には、開閉部12を開放させた状態で、差電圧ΔVの代わりに固定値Vxを設定し、所定時間Txが経過したときに開閉部12を閉鎖させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力を交流電力に変換するインバータ回路と、
前記インバータ回路を制御する制御回路と、
前記インバータ回路の交流側の出力端子に直列接続され、開放状態と閉鎖状態とで切り替えられる開閉部と、
前記開閉部に対して前記インバータ回路とは反対側に配置されて、前記インバータ回路の出力電圧を検出する電圧センサと、
を備え、
前記制御回路は、
自立運転中は、目標電圧と前記電圧センサが検出したフィードバック電圧との差電圧に基づいて、前記インバータ回路を制御し、
自立運転の開始時には、前記開閉部を開放させた状態で、前記差電圧の代わりに固定値を設定し、所定時間が経過したときに前記開閉部を閉鎖させる、
電力変換装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記自立運転の開始時において、前記所定時間が経過したときに前記固定値を「0」に変更してから、前記開閉部を閉鎖させる、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記制御回路は、
第1入力と第2入力との差を算出する減算器と、
前記第1入力を前記固定値とし、前記第2入力を「0」とした第1状態と、前記第1入力を前記目標電圧とし、前記第2入力を前記フィードバック電圧とした第2状態と、を切り替える切替部と、
を備え、
前記切替部は、自立運転の開始時には前記第1状態であり、前記開閉部を閉鎖させた後に、前記第2状態に切り替わる、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
直流電力を交流電力に変換するインバータ回路と、
前記インバータ回路を制御する制御回路と、
前記インバータ回路の交流側の出力端子に直列接続され、開放状態と閉鎖状態とで切り替えられる開閉部と、
前記開閉部に対して前記インバータ回路とは反対側に配置されて、前記インバータ回路の出力電圧を検出する電圧センサと、
前記電圧センサに対して前記インバータ回路とは反対側に接続され、開放状態と閉鎖状態とで切り替えられる第2開閉部と、
を備え、
前記制御回路は、
自立運転中は、目標電圧と前記電圧センサが検出したフィードバック電圧との差電圧に基づいて、前記インバータ回路を制御し、
自立運転の開始時には、前記第2開閉部を開放させた状態で、前記開閉部を閉鎖させ、前記フィードバック電圧が前記目標電圧に一致したときに前記第2開閉部を閉鎖させる、
電力変換装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の電力変換装置を複数備え、
前記複数の電力変換装置の交流側の出力端子は、互いに並列接続されている、
電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置、および、電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、系統連系インバータシステムが開示されている。当該系統連系インバータシステムは、直流電源から入力される直流電圧を交流電圧に変換して出力するインバータ回路と、電力系統との接続および切り離しを行うための開閉器と、開閉器と電力系統との間に配置され、系統電圧を検出する系統電圧センサと、を備えている。当該系統連系インバータシステムは、電力系統に連系するとき、自身の出力電圧を系統電圧に近づけていき、一致した段階で開閉器を閉鎖する。これにより連系した瞬間の突入電流を抑制できる。開閉器が開放されている状態では電流が流れないので、インバータ回路の出力電圧は、オープンループ制御で制御可能である。したがって、インバータ回路と開閉器との間に電圧センサを設ける必要はない。
【0003】
また、系統連系インバータシステムには、電力系統から切り離された場合に、自立的に電圧源として起動する自立運転機能が搭載されているものがある。特許文献1に開示された系統連系インバータシステムにおいても、先に開閉器を閉鎖して、系統電圧センサでインバータ回路の出力電圧を検出すれば、自立運転機能を搭載することは可能である。すなわち、電圧フィードバック制御を行いながら、インバータ回路の出力電圧の目標電圧を定格電圧まで徐々に上昇させればよい。なお、インバータ回路には負荷が繋がっていて電圧に応じて電流が流れるので、オープンループ制御では出力電圧を制御できず、電圧フィードバック制御が必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インバータ回路と開閉器との間に電圧センサを備えていない系統連系インバータシステムを複数、並列接続させて、並列自立運転を行う場合、問題が生じる。すなわち、2台目の系統連系インバータシステムを並列接続する際に、当該系統連系インバータシステムの出力電圧を上昇させる前に開閉器を閉鎖すると、1台目の系統連系インバータシステムから2台目の系統連系インバータシステムに電流が流れて、過電流が検出される場合がある。一方、インバータ回路と開閉器との間に電圧センサを備えていないので、開閉器を閉鎖する前に、インバータ回路の電圧を検出できない。
【0006】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、インバータ回路と開閉部との間に電圧センサを備えていなくても、並列自立運転を可能にする電力変換装置、および、電力システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面によって提供される電力変換装置は、直流電力を交流電力に変換するインバータ回路と、前記インバータ回路を制御する制御回路と、前記インバータ回路の交流側の出力端子に直列接続され、開放状態と閉鎖状態とで切り替えられる開閉部と、前記開閉部に対して前記インバータ回路とは反対側に配置されて、前記インバータ回路の出力電圧を検出する電圧センサと、を備え、前記制御回路は、自立運転中は、目標電圧と前記電圧センサが検出したフィードバック電圧との差電圧に基づいて、前記インバータ回路を制御し、自立運転の開始時には、前記開閉部を開放させた状態で、前記差電圧の代わりに固定値を設定し、所定時間が経過したときに前記開閉部を閉鎖させる。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記制御回路は、前記自立運転の開始時において、前記所定時間が経過したときに前記固定値を「0」に変更してから、前記開閉部を閉鎖させる。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記制御回路は、第1入力と第2入力との差を算出する減算器と、前記第1入力を前記固定値とし、前記第2入力を「0」とした第1状態と、前記第1入力を前記目標電圧とし、前記第2入力を前記フィードバック電圧とした第2状態と、を切り替える切替部と、を備え、前記切替部は、自立運転の開始時には前記第1状態であり、前記開閉部を閉鎖させた後に、前記第2状態に切り替わる。
【0010】
本発明の第2の側面によって提供される電力変換装置は、直流電力を交流電力に変換するインバータ回路と、前記インバータ回路を制御する制御回路と、前記インバータ回路の交流側の出力端子に直列接続され、開放状態と閉鎖状態とで切り替えられる開閉部と、前記開閉部に対して前記インバータ回路とは反対側に配置されて、前記インバータ回路の出力電圧を検出する電圧センサと、前記電圧センサに対して前記インバータ回路とは反対側に接続され、開放状態と閉鎖状態とで切り替えられる第2開閉部と、を備え、前記制御回路は、自立運転中は、目標電圧と前記電圧センサが検出したフィードバック電圧との差電圧に基づいて、前記インバータ回路を制御し、自立運転の開始時には、前記第2開閉部を開放させた状態で、前記開閉部を閉鎖させ、前記フィードバック電圧が前記目標電圧に一致したときに前記第2開閉部を閉鎖させる。
【0011】
本発明の第3の側面によって提供される電力システムは、本発明の第1~2の側面によって提供される電力変換装置を複数備え、前記複数の電力変換装置の交流側の出力端子は、互いに並列接続されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、制御回路は、自立運転の開始時に、開閉部を開放させた状態で、差電圧の代わりに固定値を設定してインバータ回路を制御する。これにより、インバータ回路の出力電圧は、固定値に応じて増加していく。出力電圧が定格電圧まで増加するために必要な時間(所定時間)はあらかじめ取得可能である。制御回路は、所定時間が経過したときに開閉部を閉鎖させることで、出力電圧が定格電圧になったときに、並列接続させることができる。このように、本発明に係る電力変換装置は、インバータ回路と開閉部との間に電圧センサを備えていなくても、並列自立運転を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係る電力変換装置を説明するための図であり、(a)は電力変換装置を備えている電力システムの全体構成を示すブロック図であり、(b)は制御回路の内部構成を示すブロック図である。
【
図2】第1実施形態に係る自立運転起動処理を示すフローチャートの一例である。
【
図3】第1実施形態に係る自立運転起動処理を説明するためのタイミングチャートである。
【
図4】変形例に係る制御回路の内部構成を示すブロック図である。
【
図5】第2実施形態に係る電力変換装置を説明するための図であり、(a)は電力変換装置の内部構成を示すブロック図であり、(b)は制御回路の内部構成を示すブロック図である。
【
図6】第2実施形態に係る自立運転起動処理を示すフローチャートの一例である。
【
図7】第2実施形態に係る自立運転起動処理を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、添付図面を参照して具体的に説明する。
【0015】
図1は、第1実施形態に係る電力変換装置A1を説明するための図である。
図1(a)は、電力変換装置A1を備えている電力システムBの全体構成を示すブロック図である。
図1(b)は、電力変換装置A1の制御回路14の内部構成を示すブロック図である。
【0016】
電力システムBは、蓄電池を備えており、電力系統から供給される電力で蓄電池を充電し、所定の場合に、蓄電池を放電させて、電力を出力する。電力システムBは、通常は、電力系統に連系して連系運転を行っており、停電時には自立運転を行う。電力システムBは、
図1(a)に示すように、それぞれに蓄電池2が接続された複数の電力変換装置A1、および、開閉部3,4を備えている。本実施形態では、電力システムBが3台の電力変換装置A1を備えている場合について説明する。なお、電力変換装置A1の数は限定されず、電力システムBは、2台または4台以上の電力変換装置A1を備えていてもよい。複数の電力変換装置A1は、交流側の出力端子が、接続点5で互いに並列接続されている。接続点5は、接続点5側の開閉部3および電力系統側の開閉部4を介して、電力系統に接続している。開閉部3と開閉部4とを接続する接続線には、負荷Lが接続されている。開閉部3,4は、例えば遮断器である。連系運転時には、開閉部3,4がともに閉鎖されており、電力システムBは、電力系統に連系して、電力系統との間で送受電可能である。負荷Lは、複数の電力変換装置A1(蓄電池2)または電力系統から電力を供給される。
【0017】
電力系統で事故が発生した場合などには、電力系統側に設けられた保護装置によって、開閉部3,4が開放されて、電力システムBおよび負荷Lが電力系統から切り離される(停電状態)。この場合、電力システムBは、自立運転に切り替えられて、開閉部4は開放したまま、開閉部3を閉鎖して、負荷Lに電力を供給する。各電力変換装置A1は、接続点5に接続される際に出力電圧が一致していないと、他の電力変換装置A1との間で電流が流れて、過電流によって停止する場合がある。各電力変換装置A1は、自立運転起動処理によって、出力電圧が定格電圧になったときに接続点5に接続される。自立運転起動処理は、自立運転を開始するために電力変換装置A1を起動させるための処理であり、詳細は後述する。
【0018】
蓄電池2は、本実施形態では、繰り返し充放電を行うことができる二次電池であり、例えば、リチウムイオン電池である。なお、蓄電池2は、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、鉛蓄電池などの他の二次電池であってもよい。なお、蓄電池2は、二次電池ではなく、電気二重層コンデンサなどのコンデンサであってもよい。
【0019】
電力変換装置A1は、いわゆるパワーコンディショナであり、蓄電池2を充放電させる。各電力変換装置A1は、直流側の出力端子が蓄電池2に接続されており、交流側の出力端子が接続点5で互いに並列接続されている。電力変換装置A1は、インバータ回路11、開閉部12、電圧センサ13、および制御回路14を備えている。なお、実際には、電力変換装置A1は他の構成も備えているが、記載および説明を省略する。
【0020】
インバータ回路11は、直流側の出力端子に蓄電池2が接続され、当該蓄電池2の充放電を行う。インバータ回路11は、交流側から入力される交流電力を直流電力に変換して蓄電池2に供給することで、蓄電池2を充電する。また、インバータ回路11は、蓄電池2に蓄積された直流電力を交流電力に変換して、交流側に出力することで、蓄電池2を放電させる。インバータ回路11が行う充放電は、制御回路14によって制御される。インバータ回路11は、制御回路14から入力される駆動信号に基づいてスイッチング素子(図示しない)のオンとオフとを切り替えることで、直流電力と交流電力との変換を行う。
【0021】
開閉部12は、インバータ回路11の交流側の出力端子に直列接続され、開放状態と閉鎖状態とで切り替えられる。開閉部12は、限定されないが、例えば電磁接触器であり、制御回路14からの指令に応じて、開放状態と閉鎖状態とを切り替える。開閉部12が閉鎖状態のとき、電力変換装置A1(インバータ回路11)は接続点5に接続されている。一方、開閉部12が開放状態のとき、電力変換装置A1(インバータ回路11)は接続点5から切り離されている。
【0022】
電圧センサ13は、開閉部12の下流側(開閉部12に対してインバータ回路11とは反対側)で、開閉部12と接続点5とを接続する接続線に配置されている。電圧センサ13は、開閉部12が閉鎖状態のときには、インバータ回路11の出力電圧を検出し、検出した電圧検出信号を制御回路14に出力する。
【0023】
制御回路14は、例えばマイクロコンピュータなどによって実現されており、電力変換装置A1を制御する。制御回路14は、開閉部12に指令を入力することで、開閉部12の開閉を制御する。開閉部12が閉鎖されている場合、電圧センサ13は、インバータ回路11の出力電圧を検出できる。制御回路14は、電圧センサ13から入力される電圧検出信号に基づいて、フィードバック電圧Vfbを算出する。フィードバック電圧Vfbは、インバータ回路11の出力電圧の実効値である。また、制御回路14は、駆動信号を生成してインバータ回路11に入力することで、インバータ回路11による電力変換を制御する。
【0024】
制御回路14は、連系運転中および自立運転中は、開閉部12を閉鎖させているので、インバータ回路11の出力電圧を電圧センサ13によって検出できる。制御回路14は、フィードバック電圧Vfbと目標電圧Vrefとの差電圧ΔV(=Vref-Vfb)に基づいて生成した駆動信号をインバータ回路11に出力することで、インバータ回路11の出力電圧をフィードバック制御する。
【0025】
一方、連系運転を停止して自立運転を開始するとき、制御回路14は、開閉部12を開放させているので、インバータ回路11の出力電圧を取得できない。しかし、インバータ回路11の出力電圧が低いときに開閉部12を閉鎖して、電力変換装置A1を接続点5に接続させると、他の電力変換装置A1から電流が流れ込んで過電流が検出される場合がある。制御回路14は、過電流を検出すると、開閉部12を開放させ、インバータ回路11を停止させるので、電力変換装置A1は並列自立運転に参加できない。本実施形態では、制御回路14は、自立運転を開始するとき、開閉部12を開放させた状態で、差電圧ΔVの代わりに固定値Vxを設定し、所定時間Txが経過したときに開閉部12を閉鎖させる自立運転起動処理を行う。所定時間Txは、差電圧ΔVの代わりに固定値Vxを設定したときに、インバータ回路11の出力電圧が定格電圧まで増加するための時間であり、あらかじめ実験やシミュレーションによって取得されている。固定値Vxが大きいほど、インバータ回路11の出力電圧の増加率が大きくなるので、所定時間Txは小さくなる。したがって、起動にかかる時間を短くしたい場合は、固定値Vxとして大きい値を設定すればよい。また、固定値Vxとして小さい値を設定することで、インバータ回路11の出力電圧がゆっくり増加するので、制御回路14は、より確実に、出力電圧が定格電圧になったタイミングで、開閉部12を閉鎖させることができる。なお、各電力変換装置A1を並列接続する際には、各電力変換装置A1のインバータ回路11の出力電圧の位相が、十分同期している必要がある。位相を同期させる方法は限定されず、周知の方法を用いればよい。
【0026】
制御回路14は、
図1(b)に示すように、機能構成として、タイマ141、切替部142、減算器143、制御部144、および駆動信号生成部145を備えている。なお、各部は、デジタル回路で構成されてもよいし、アナログ回路で構成されてもよい。なお、制御回路14は、その他の機能構成を含んでいるが、自立運転起動処理に関係ない機能構成の記載および説明を省略している。
【0027】
タイマ141は、自立運転起動処理の開始からの時間を計時するための機能構成である。タイマ141は、計時した時間を、切替部142に出力する。
【0028】
切替部142は、減算器143に入力する値を切り替えるための機能構成である。切替部142は、自立運転起動処理が開始したときから、減算器143の第1入力に固定値Vx(>0)を入力し、第2入力に「0」を入力する(以下ではこの状態を「第1状態」とする)。そして、切替部142は、タイマ141から入力される時間が所定時間Txになったときに、減算器143の第1入力に「0」を入力し、開閉部12に閉鎖を指令する。その後は、切替部142は、減算器143の第1入力に目標電圧Vrefを入力し、第2入力に電圧センサ13の検出に基づくフィードバック電圧Vfbを入力する(以下ではこの状態を「第2状態」とする)。
【0029】
減算器143は、減算処理を行うための機能構成であり、第1入力から第2入力を減算した値を、制御部144に出力する。したがって、減算器143は、切替部142が第1状態の場合、固定値Vxを出力する。一方、減算器143は、切替部142が第2状態の場合、目標電圧Vrefとフィードバック電圧Vfbとの差電圧ΔVを出力する。
【0030】
制御部144は、減算器143からの入力に基づいて、PI制御(比例積分制御)による補償値を算出して、補償値信号として駆動信号生成部145に出力する。なお、制御部144は、PI制御以外の制御を行ってもよい。
【0031】
駆動信号生成部145は、制御部144より入力される補償値信号に基づいて、駆動信号を生成する。なお、駆動信号生成部145には、制御部144より入力される補償値信号以外の補償値信号も入力されてもよい。駆動信号生成部145は、これらの補償値信号に基づいて指令値信号を生成し、指令値信号と三角波などのキャリア信号とを比較することで駆動信号を生成する。なお、駆動信号生成部145が駆動信号を生成する方法は限定されない。切替部142が第2状態の場合、差電圧ΔVが制御部144に入力されるので、駆動信号生成部145は、フィードバック電圧Vfbを目標電圧Vrefにする(差電圧ΔVを「0」にする)駆動信号を生成する。一方、切替部142が第1状態の場合、固定値Vx(>0)が制御部144に入力されるので、駆動信号生成部145は、インバータ回路11の出力電圧を増加させる駆動信号を生成する。駆動信号生成部145が生成した駆動信号は、インバータ回路11に出力される。
【0032】
図2は、制御回路14が行う自立運転起動処理を示すフローチャートの一例である。自立運転起動処理は、自立運転を開始するときに実行される。
【0033】
まず、差電圧ΔVに代えて固定値Vxが設定される(S1)。具体的には、切替部142が第1状態になって、減算器143の第1入力に固定値Vxを入力し、第2入力に「0」を入力する。次に、計時が開始される(S2)。具体的には、タイマ141が計時を開始する。次に、計時時間が所定時間Txになったか否かが判別される(S3)。計時時間が所定時間Txになっていない場合(S3:NO)、ステップS3に戻って、ステップS3の判別が繰り返される。計時時間が所定時間Txになった場合(S3:YES)、ステップS4に進む。すなわち、制御回路14は、計時時間が所定時間Txになるまで待っている。この間、制御回路14は、差電圧ΔVの代わりに固定値Vxを用いて駆動信号を生成してインバータ回路11に出力する。これにより、インバータ回路11の出力電圧は、「0」から増加して定格電圧になる。
【0034】
次に、固定値Vxから「0」に変更される(S4)。具体的には、切替部142が、減算器143の第1入力への入力を固定値Vxから「0」に変更する。制御回路14は、差電圧ΔVの代わりに「0」を用いて駆動信号を生成してインバータ回路11に出力する。これにより、インバータ回路11の出力電圧は、定格電圧で固定される。次に、開閉部12が閉鎖される(S5)。具体的には、制御回路14が、開閉部12に閉鎖指令を出力する。次に、「0」から差電圧ΔVに変更され(S6)、自立運転起動処理は終了する。具体的には、切替部142が第2状態になって、減算器143の第1入力に目標電圧Vrefを入力し、第2入力にフィードバック電圧Vfbを入力する。開閉部12が閉鎖されているので、電圧センサ13は、インバータ回路11の出力電圧を検出できる。自立運転起動処理が終了すると、制御回路14は、差電圧ΔVに基づいて、インバータ回路11の出力電圧をフィードバック制御する。なお、
図2のフローチャートに示す処理は一例であって、制御回路14が行う自立運転起動処理は上述したものに限定されない。
【0035】
図3は、制御回路14が行う自立運転起動処理を説明するためのタイミングチャートである。同図(a)は、減算器143の出力の時間変化を示している。同図(b)は、タイマ141の出力の時間変化を示している。同図(c)は、インバータ回路11の出力電圧の時間変化を示している。同図(d)は、開閉部12の状態の時間変化を示している。
【0036】
時刻t0において、自立運転起動処理が開始され、減算器143の出力が固定値Vxになり、タイマ141の計時が開始している。減算器143の出力が固定値Vxであることで、インバータ回路11の出力電圧が時間とともに増加している。そして、時刻t0から所定時間Txが経過した時刻t1において、タイマ141の計時時間が所定時間Txになって、インバータ回路11の出力電圧が定格電圧になっている。このときに、減算器143の出力が「0」に切り替えられて、開閉部12が開放状態から閉鎖状態に切り替えられている。その後は、インバータ回路11の出力電圧が定格電圧になるように(減算器143の出力が「0」になるように)制御される。
【0037】
次に、本実施形態に係る電力変換装置、および、電力システムの作用および効果について説明する。
【0038】
本実施形態によると、制御回路14は、自立運転の開始時に、開閉部12を開放させた状態で、差電圧ΔVの代わりに固定値Vxを設定してインバータ回路11を制御する。これにより、インバータ回路11の出力電圧は、固定値Vxに応じて増加していく。そして、制御回路14は、所定時間Txが経過したときに開閉部12を閉鎖させる。所定時間Txは、固定値Vxを設定したときにインバータ回路11の出力電圧が定格電圧まで増加するための時間なので、制御回路14は、出力電圧が定格電圧になったときに、開閉部12を閉鎖させることができる。このように、電力変換装置A1は、インバータ回路11と開閉部12との間に電圧センサを備えていなくても、並列自立運転を可能にする。また、電力変換装置A1は、制御回路14の制御方法を変更するだけであり、従来のハード構成をそのまま用いることができるので、さらにハード構成を追加する必要がない。したがって、電力変換装置A1は、ハード構成を追加する場合と比較して、コストを抑制でき、また、小型化および軽量化が可能である。
【0039】
また、本実施形態によると、制御回路14は、第1入力と第2入力との差を算出する減算器143と、第1入力を固定値Vxとし、第2入力を「0」とした第1状態と、第1入力を目標電圧とし、第2入力をフィードバック電圧Vfbとした第2状態とを切り替える切替部142とを備えている。切替部142は、自立運転の開始時には第1状態であり、開閉部12を閉鎖させた後に、第2状態に切り替わる。これにより、制御回路14は、自立運転の開始時の制御と、自立運転中の制御とを切り替えることができる。
【0040】
また、本実施形態によると、制御回路14は、自立運転の開始時において、所定時間Txが経過したときに固定値Vxを「0」に変更してから、開閉部12を閉鎖させる。これにより、制御回路14は、インバータ回路11の出力電圧を定格電圧に固定した状態で、開閉部12を閉鎖させることができる。
【0041】
なお、本実施形態においては、各電力変換装置A1に蓄電池2が接続されている場合について説明したが、これに限られない。電力変換装置A1は、太陽電池または燃料電池などの直流電力を生成する直流電源が接続されてもよい。また、電力変換装置A1は、ディーゼルエンジン発電機または風力タービン発電機などにより生成された交流電力を直流電力に変換して出力する電源が接続されてもよい。
【0042】
図4は、第1実施形態に係る電力変換装置A1の制御回路14の変形例を説明するための図であり、制御回路14の内部構成を示すブロック図である。なお、当該変形例では、制御回路14以外の構成は第1実施形態と共通するので、図示および説明を省略する。
【0043】
図4に示すように、変形例に係る制御回路14では、減算器143が目標電圧Vrefとフィードバック電圧Vfbとの差電圧ΔVを出力する。そして、切替部142が、第1状態の場合に固定値Vxを出力し、第2状態の場合に、減算器143からの入力を出力する。本変形例においても、制御回路14は、自立運転の開始時に、開閉部12を開放させた状態で、差電圧ΔVの代わりに固定値Vxを設定してインバータ回路11を制御し、所定時間Txが経過したときに開閉部12を閉鎖させることができる。
【0044】
図5は、第2実施形態に係る電力変換装置A2を説明するための図である。
図5(a)は、電力変換装置A2の内部構成を示すブロック図である。
図5(b)は、電力変換装置A2の制御回路16の内部構成を示すブロック図である。
図5において、第1実施形態に係る電力変換装置A1と同一または類似の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。本実施形態に係る電力変換装置A2は、開閉部15をさらに備えており、自立運転起動処理の内容が異なる点で、第1実施形態に係る電力変換装置A1とは異なる。
【0045】
第2実施形態に係る電力変換装置A2は、開閉部15をさらに備えている。開閉部15は、電圧センサ13の下流側(電圧センサ13に対してインバータ回路11とは反対側)に接続され、開放状態と閉鎖状態とで切り替えられる。開閉部15は、限定されないが、例えば遮断器であり、制御回路16からの指令に応じて、開放状態と閉鎖状態とを切り替える。
【0046】
第2実施形態に係る電力変換装置A2は、制御回路14の代わりに制御回路16を備えている。制御回路16は、自立運転を開始するときの自立運転起動処理の内容と、さらに開閉部15の開閉を制御する点以外は、制御回路14と同様である。本実施形態では、制御回路16は、自立運転を開始するとき、開閉部15を開放させた状態で開閉部12を閉鎖させ、フィードバック電圧Vfbが目標電圧Vref(定格電圧)に一致したときに開閉部15を閉鎖させる。
【0047】
制御回路16は、
図5(b)に示すように、機能構成として、減算器143、制御部144、駆動信号生成部145、および判定部146を備えている。減算器143、制御部144、および駆動信号生成部145は、制御回路14と共通する。制御回路16では、減算器143は、目標電圧Vrefとフィードバック電圧Vfbとの差電圧ΔVを出力する。
【0048】
判定部146は、フィードバック電圧Vfbに基づいて、開閉部15の開閉を指令するための機能構成である。判定部146は、フィードバック電圧Vfbを入力され、フィードバック電圧Vfbが目標電圧Vref未満の間は開閉部15に開放を指令し、フィードバック電圧Vfbが目標電圧Vrefになったときに開閉部15に閉鎖を指令する。本実施形態では、自立運転起動処理のときの目標電圧Vrefとして定格電圧が設定される。
【0049】
図6は、第2実施形態に係る制御回路16が行う自立運転起動処理を示すフローチャートの一例である。自立運転起動処理は、自立運転を開始するときに実行される。
【0050】
まず、開閉部12が閉鎖される(S11)。具体的には、制御回路16が、開閉部12に閉鎖指令を出力する。これにより、電圧センサ13がインバータ回路11の出力電圧を検出できるようになり、制御回路16は、フィードバック電圧Vfbを取得できるようになる。次に、目標電圧Vrefに定格電圧が設定される(S12)。次に、フィードバック電圧Vfbが目標電圧Vrefになったか否かが判別される(S13)。フィードバック電圧Vfbが目標電圧Vrefになっていない場合(S13:NO)、ステップS13に戻って、ステップS13の判別が繰り返される。フィードバック電圧Vfbが目標電圧Vrefになった場合(S13:YES)、開閉部15が閉鎖され(S14)、自立運転起動処理は終了する。具体的には、制御回路16が、開閉部15に閉鎖指令を出力する。なお、
図6のフローチャートに示す処理は一例であって、制御回路16が行う自立運転起動処理は上述したものに限定されない。
【0051】
図7は、制御回路16が行う自立運転起動処理を説明するためのタイミングチャートである。同図(a)は、開閉部12の状態の時間変化を示している。同図(b)は、電圧センサ13が検出した、インバータ回路11の出力電圧の時間変化を示している。同図(c)は、開閉部15の状態の時間変化を示している。
【0052】
時刻t2において、自立運転起動処理が開始され、開閉部12が開放状態から閉鎖状態に切り替えられている。これにより、電圧センサ13がインバータ回路11の出力電圧を検出できるようになっている。また、目標電圧Vrefに定格電圧が設定される。これにより、フィードバック電圧Vfbが、「0」から時間とともに増加している。そして、時刻t3において、フィードバック電圧Vfbが目標電圧Vref(定格電圧)になったので、開閉部15が開放状態から閉鎖状態に切り替えられている。その後は、フィードバック電圧Vfbが目標電圧Vref(定格電圧)になるように(減算器143の出力が「0」になるように)制御される。
【0053】
本実施形態によると、制御回路16は、自立運転の開始時に、開閉部15を開放させた状態で開閉部12を閉鎖させる。これにより、制御回路16は、フィードバック電圧Vfbを取得できるようになる。フィードバック電圧Vfbは、目標電圧Vref(定格電圧)になるように増加していく。そして、制御回路16は、フィードバック電圧Vfbが目標電圧Vref(定格電圧)に一致したときに開閉部15を閉鎖させる。このように、電力変換装置A2は、インバータ回路11と開閉部12との間に電圧センサを備えていなくても、並列自立運転を可能にする。また、電力変換装置A2は、電力変換装置A1と共通する構成により、電力変換装置A1と同等の効果を奏する。
【0054】
本発明に係る電力変換装置および電力システムは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る電力変換装置および電力システムの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0055】
A1,A2:電力変換装置、11:インバータ回路、12,15:開閉部、13:電圧センサ、14:制御回路、142:切替部、143:減算器、B:電力システム