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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025022215
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】作業機械、および作業機械の制御方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/84 20060101AFI20250206BHJP
   E02F 3/85 20060101ALI20250206BHJP
   F15B 11/028 20060101ALI20250206BHJP
   F15B 11/08 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
E02F3/84 Z
E02F3/85 C
F15B11/028 A
F15B11/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023126589
(22)【出願日】2023-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】中川 裕太
(72)【発明者】
【氏名】大▲高▼ 慎一
(72)【発明者】
【氏名】大西 章仁
(72)【発明者】
【氏名】矢津田 修
【テーマコード(参考)】
2D003
3H089
【Fターム(参考)】
2D003AA02
2D003AB01
2D003AB07
2D003BA08
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB02
2D003DB06
3H089AA02
3H089AA16
3H089AA24
3H089AA72
3H089AA87
3H089BB01
3H089BB15
3H089BB17
3H089CC08
3H089DA02
3H089DA03
3H089DA13
3H089DB03
3H089DB09
3H089DB38
3H089DC03
3H089EE36
3H089FF10
3H089GG02
3H089JJ01
(57)【要約】
【課題】コストを抑え、燃費を向上することが可能な作業機械を提供すること。
【解決手段】作業機械1は、油圧式操向装置61と、補充油路62と、チャージポンプ63と、排出油路64と、バイパス油路69と、可変リリーフ弁70と、コントローラ51と、を備える。補充油路62は、油圧式操向装置61に油を補充する。チャージポンプ63は、補充油路62に配置され、油圧式操向装置61に油を供給する。排出油路64は、油圧式操向装置61から油を排出する。バイパス油路69は、補充油路62のチャージポンプ63より下流側の部分と排出油路64の間を接続し、油圧式操向装置61をバイパスする。可変リリーフ弁70は、バイパス油路69に配置されている。コントローラ51は、非旋回時であるか否かを判定し、非旋回時であると判定した場合、チャージポンプ63から吐出された油が、旋回時よりも低い圧力値でバイパス油路69を通過可能となるように可変リリーフ弁70を制御する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回の補助または旋回を行う油圧式操向装置と、
前記油圧式操向装置に油を補充する補充油路と、
前記補充油路に配置され、前記油圧式操向装置に油を供給する定容量形ポンプと、
前記油圧式操向装置から油を排出する排出油路と、
前記補充油路の前記定容量形ポンプより下流側の部分と前記排出油路の間を接続し、前記油圧式操向装置をバイパスする第1バイパス油路と、
前記第1バイパス油路に配置された制御弁と、
非旋回時であるか否かを判定し、前記非旋回時であると判定した場合、前記定容量形ポンプから吐出された油が、旋回時よりも低い圧力値で前記第1バイパス油路を通過可能となるように前記制御弁を制御するコントローラと、を備えた、
作業機械。
【請求項2】
旋回の補助または旋回を行う油圧式操向装置と、
前記油圧式操向装置に油を補充する補充油路と、
前記補充油路に配置され、前記油圧式操向装置に油を供給する定容量形ポンプと、
前記油圧式操向装置から油を排出する排出油路と、
前記補充油路の前記定容量形ポンプより下流側の部分と前記排出油路の間を接続し、前記油圧式操向装置をバイパスする第1バイパス油路と、
前記第1バイパス油路に配置された制御弁と、
低温始動時であるか否かを判定し、前記低温始動時であると判定した場合、前記定容量形ポンプから吐出された油が、低温以外の始動時よりも低い圧力値で前記第1バイパス油路を通過可能となるように前記制御弁を制御するコントローラと、を備えた、
作業機械。
【請求項3】
前記制御弁は、可変リリーフ弁であり、
前記非旋回時のリリーフ圧力値は、前記旋回時のリリーフ圧力値よりも低い、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項4】
前記制御弁は、可変リリーフ弁であり、
前記低温始動時のリリーフ圧力値は、前記低温以外の始動時のリリーフ圧力値よりも低い、
請求項2に記載の作業機械。
【請求項5】
前記補充油路の前記定容量形ポンプより下流側の部分と前記排出油路の間を接続し、前記油圧式操向装置をバイパスする第2バイパス油路と
前記第2バイパス油路に配置され、所定の第1圧力値で開放される安全弁と、を更に備え、
前記低い圧力値は、前記第1圧力値よりも低い、
請求項1または2に記載の作業機械。
【請求項6】
前記排出油路に配置され、所定の第2圧力値で開放される排出弁を更に備え、
前記低い圧力は、前記第2圧力値よりも低い、
請求項1または2に記載の作業機械。
【請求項7】
前記定容量形ポンプは、エンジンの回転に応じて駆動するギヤポンプである、
請求項1または2に記載の作業機械。
【請求項8】
前記油圧式操向装置は、
エンジンによって駆動する操向ポンプと、
前記操向ポンプから吐出される油によって駆動する操向モータと、
前記操向ポンプと前記操向モータの間を接続する第1油路と、
前記操向ポンプと前記操向モータの間を接続する第2油路と、を有し、
前記操向ポンプと前記操向モータと前記第1油路と前記第2油路とで閉回路を構成する、
請求項1または2に記載の作業機械。
【請求項9】
前記制御弁は、前記油圧式操向装置の安全弁の機能を兼ねており、
前記旋回時のリリーフ圧力値は、前記安全弁の圧力値に設定される、
請求項3に記載の作業機械。
【請求項10】
前記制御弁は、前記油圧式操向装置の安全弁の機能を兼ねており、
前記低温以外の始動時のリリーフ圧力値は、前記安全弁の圧力値に設定される、
請求項4に記載の作業機械。
【請求項11】
前記コントローラは、前記旋回時のリリーフ圧力値と前記非旋回時のリリーフ圧力値の間において、段階的にリリーフ圧力値を変更するように前記制御弁を制御する、
請求項3に記載の作業機械。
【請求項12】
前記油圧式操向装置を操作する操作部材と、
前記操作部材の操作状態を検出する操作検出部と、
エンジンの稼働状態を検出する稼働検出部と、を備え、
前記コントローラは、前記操作検出部および前記稼働検出部からの検出信号に基づいて、前記エンジンが稼働され、前記操作部材が操作されたことを検出した場合、前記旋回時と判定する、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項13】
エンジンの始動状態を検出する始動検出部と、
低温状態を検出する低温検出部と、を備え、
前記コントローラは、前記始動検出部および前記低温検出部の検出信号からの検出信号に基づいて、前記エンジンが始動され、低温であることを検出した場合、前記低温開始時と判定する、
請求項2に記載の作業機械。
【請求項14】
旋回の補助または旋回を行う油圧式操向装置と、
前記油圧式操向装置に油を補充する補充油路と、
前記補充油路に配置され、前記油圧式操向装置に油を供給する定容量形ポンプと、
前記油圧式操向装置から油を排出する排出油路と、
前記補充油路の前記定容量形ポンプより下流側の部分と前記排出油路の間を接続し、前記油圧式操向装置をバイパスする第1バイパス油路と、
前記第1バイパス油路に配置された制御弁と、を備えた作業機械の制御方法であって、
非旋回時であるか否かを判定する判定ステップと、
前記非旋回時と判定した場合に、前記定容量形ポンプから吐出された油が、旋回時よりも低い圧力値で前記第1バイパス油路を通過可能となるように前記制御弁を制御する制御ステップと、を備えた、
作業機械の制御方法。
【請求項15】
旋回の補助または旋回を行う油圧式操向装置と、
前記油圧式操向装置に油を補充する補充油路と、
前記補充油路に配置され、前記油圧式操向装置に油を供給する定容量形ポンプと、
前記油圧式操向装置から油を排出する排出油路と、
前記補充油路の前記定容量形ポンプより下流側の部分と前記排出油路の間を接続し、前記油圧式操向装置をバイパスする第1バイパス油路と、
前記第1バイパス油路に配置された制御弁と、を備えた作業機械の制御方法であって、
低温始動であるか否かを判定する判定ステップと、
前記低温始動と判定した場合に、前記定容量形ポンプから吐出された油が、低温以外の始動時よりも低い圧力値で前記第1バイパス油路を通過可能となるように前記制御弁を制御する制御ステップと、を備えた、
作業機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械、および作業機械の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブルドーザ等の作業機械において、HSS(Hydrostatic Steering System)等の油圧式操向装置が用いられている(例えば、特許文献1参照。)。このような油圧式操向装置は、ポンプとモータを含む閉回路を有しており、閉回路内の漏れによる油の減少を補充するためにチャージポンプが作業機械に搭載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-181823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、旋回しない場合は閉回路内において作動油が流れないため、チャージポンプで作動油を補充する必要がなくチャージポンプの仕事が全てロス馬力となり燃費が悪くなる。ロス馬力を低減するために、チャージポンプに可変容量形ポンプを用いることが考えられるが、可変容量形ポンプは高価であり、また複雑な構造のためメンテナンスの工数も多くなる。
【0005】
また、チャージポンプに可変容量形ポンプを用いた場合、低温始動時は、作動油の抵抗が大きくなるので、大きな駆動トルクが必要となり、始動性が悪くなる。
【0006】
本開示は、コストを抑え、燃費を向上することが可能な作業機械および作業機械の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様の作業機械は、油圧式操向装置と、補充油路と、定容量形ポンプと、排出油路と、第1バイパス油路と、制御弁と、コントローラと、を備える。補充油路は、油圧式操向装置に油を補充する。定容量形ポンプは、補充油路に配置され、油圧式操向装置に油を供給する。排出油路は、油圧式操向装置から油を排出する。第1バイパス油路は、補充油路の定容量形ポンプより下流側の部分と排出油路の間を接続し、油圧式操向装置をバイパスする。制御弁は、第1バイパス油路に配置されている。コントローラは、非旋回時であるか否かを判定し、非旋回時であると判定した場合、定容量形ポンプから吐出された油が、旋回時よりも低い圧力値で第1バイパス油路を通過可能となるように制御弁を制御する。
【0008】
本開示の第2の態様の作業機械は、油圧式操向装置と、補充油路と、定容量形ポンプと、排出油路と、第1バイパス油路と、制御弁と、コントローラと、を備える。補充油路は、油圧式操向装置に油を補充する。定容量形ポンプは、補充油路に配置され、油圧式操向装置に油を供給する。排出油路は、油圧式操向装置から油を排出する。第1バイパス油路は、補充油路の定容量形ポンプより下流側の部分と排出油路の間を接続し、油圧式操向装置をバイパスする。制御弁は、第1バイパス油路に配置されている。コントローラは、低温始動時であるか否かを判定し、低温始動時であると判定した場合、定容量形ポンプから吐出された油が、低温以外の始動時よりも低い圧力値で第1バイパス油路を通過可能となるように制御弁を制御する。
【0009】
本開示の第3の態様の作業機械の制御方法は、判定ステップと、制御ステップと、を備える。作業機械は、油圧式操向装置と、補充油路と、定容量形ポンプと、排出油路と、第1バイパス油路と、制御弁と、を備える。補充油路は、油圧式操向装置に油を補充する。定容量形ポンプは、補充油路に配置され、油圧式操向装置に油を供給する。排出油路は、油圧式操向装置から油を排出する。第1バイパス油路は、補充油路の定容量形ポンプより下流側の部分と排出油路の間を接続し、油圧式操向装置をバイパスする。制御弁は、第1バイパス油路に配置されている。判定ステップは、非旋回時であるか否かを判定する。制御ステップは、非旋回時と判定した場合に、定容量形ポンプから吐出された油が、旋回時よりも低い圧力値で第1バイパス油路を通過可能となるように制御弁を制御する。
【0010】
本開示の第4の態様の作業機械の制御方法は、判定ステップと、制御ステップと、を備える。作業機械は、油圧式操向装置と、補充油路と、定容量形ポンプと、排出油路と、第1バイパス油路と、制御弁と、を備える。補充油路は、油圧式操向装置に油を補充する。定容量形ポンプは、補充油路に配置され、油圧式操向装置に油を供給する。排出油路は、油圧式操向装置から油を排出する。第1バイパス油路は、補充油路の定容量形ポンプより下流側の部分と排出油路の間を接続し、油圧式操向装置をバイパスする。制御弁は、第1バイパス油路に配置されている。判定ステップは、低温始動であるか否かを判定する。制御ステップは、低温始動と判定した場合に、定容量形ポンプから吐出された油が、低温以外の始動時よりも低い圧力値で第1バイパス油路を通過可能となるように制御弁を制御する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、コストを抑え、燃費を向上することが可能な作業機械および作業機械の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示にかかる実施形態1における作業機械の斜視図である。
図2】本開示にかかる実施形態1における作業機械の上面図である。
図3】本開示にかかる実施形態1における作業機械の駆動系を示すブロック図である。
図4】本開示にかかる実施形態1における作業機械のステアリング機構および制御システムを示すブロック図である。
図5】本開示にかかる実施形態1における作業機械の制御方法を示すフロー図である。
図6】本開示にかかる実施形態2における作業機械のステアリング機構および制御システムを示すブロック図である。
図7】本開示にかかる実施形態2における作業機械の制御方法を示すフロー図である。
図8】本開示にかかる実施形態3における作業機械のステアリング機構を示すフロー図である。
図9】本開示にかかる実施形態2の変形例における作業機械のステアリング機構を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態に係る作業機械の制御システムおよび制御方法について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る作業機械1を示す斜視図である。図2は、作業機械1の上面図である。本実施形態に係る作業機械1は、ブルドーザである。作業機械1は、車体11と、走行装置12と、作業機13と、を備えている。車体11は、運転室14と動力室15とを有する。運転室14には、図示しない運転席が配置されている。動力室15は、運転室14の前方に配置されている。
【0015】
走行装置12は、車体11の下部に取り付けられている。走行装置12は、左駆動輪16と、右駆動輪17と、左履帯18と、右履帯19とを含む。左駆動輪16と右駆動輪17とは、車体11に回転可能に支持されている。左履帯18は、左駆動輪16に巻回されている。右履帯19は、右駆動輪17に巻回されている。左右の駆動輪16,17が回転して、左右の履帯18,19が駆動されることによって、作業機械1が走行する。
【0016】
作業機13は、車体11に取り付けられている。作業機13は、リフトフレーム21,22と、ブレード23と、リフトシリンダ24,25と、チルトシリンダ26,27とを含む。リフトフレーム21,22は、上下に動作可能に車体11に取り付けられている。リフトフレーム21,22は、ブレード23を支持している。
【0017】
ブレード23は、車体11の前方に配置されている。リフトシリンダ24,25は、車体11とブレード23とに連結されている。リフトシリンダ24、25によるブレード23の上下動に伴って、リフトフレーム21,22は上下動する。或いは、リフトシリンダ24,25は、車体11とリフトフレーム21,22とに連結されてもよい。この場合、リフトシリンダ24,25が伸縮することによって、リフトフレーム21,22の上下動に伴い、ブレード23が上下動する。チルトシリンダ26,27は、リフトフレーム21,22とブレード23とに連結されている。チルトシリンダ26,27が伸縮することで、ブレード23の左右の端部が上下にチルト動作する。
【0018】
作業機械1は、左履帯18と右履帯19を駆動する駆動系2と、制御システム3と、を含む。図3は、作業機械1の駆動系2の構成を示すブロック図である。
【0019】
(駆動系2)
図3に示すように、駆動系2は、エンジン31と駆動装置32とを備えている。エンジン31と駆動装置32とは、車体11に搭載される。駆動装置32は、エンジン31からの駆動力により左駆動輪16と右駆動輪17とを回転させる。なお、駆動系2は、作業機13用の油圧ポンプ(図示せず)を備えている。作業機13用の油圧ポンプは、エンジン31によって駆動され、上述したシリンダ24-27を駆動するための作動油を吐出する。
【0020】
駆動装置32は、PTO(Power Take Off)33と、トランスミッション34と、トランスファー35と、ステアリング機構36とを含む。PTO33は、エンジン31からの駆動力を、トランスミッション34とステアリング機構36とに分配する。トランスミッション34は、PTO33を介してエンジン31に接続されている。トランスミッション34は、例えばクラッチと複数の変速ギアとを含む。トランスミッション34は、トランスファー35を介して、左駆動輪16と右駆動輪17とに接続されている。
【0021】
駆動装置32は、左クラッチ37と、左ブレーキ38と、左リンク機構39とを含む。左クラッチ37と、左ブレーキ38と、左リンク機構39とは、左駆動輪16に接続されている。左クラッチ37は、トランスミッション34から左駆動輪16への駆動力の伝達と遮断とを切り替える。左ブレーキ38は、左駆動輪16を制動する。左リンク機構39は、左駆動輪16とステアリング機構36とを接続する。左リンク機構39は、例えば遊星歯車機構を含む。
【0022】
駆動装置32は、右クラッチ41と、右ブレーキ42と、右リンク機構43とを含む。右クラッチ41と、右ブレーキ42と、右リンク機構43とは、右駆動輪17に接続されている。右クラッチ41は、トランスミッション34から右駆動輪17への駆動力の伝達と遮断とを切り替える。右ブレーキ42は、右駆動輪17を制動する。右リンク機構43は、右駆動輪17とステアリング機構36とを接続する。右リンク機構43は、例えば遊星歯車機構を含む。
【0023】
ステアリング機構36は、左駆動輪16と右駆動輪17とに回転速度差を発生させることで、車体11の旋回を補助する。例えば、ステアリング機構36は、左駆動輪16を右駆動輪17よりも増速することで、車体11の右方への旋回を補助する。ステアリング機構36は、右駆動輪17を左駆動輪16よりも増速することで、車体11の左方への旋回を補助する。ステアリング機構36は、油圧ポンプ81と油圧モータ82とを含む油圧式操向装置61を有する。
【0024】
油圧ポンプ81は、PTO33を介してエンジン31に接続されている。油圧ポンプ81は、エンジン31によって駆動されることで、作動油を吐出する。油圧モータ82は、油圧回路83を介して油圧ポンプ81と接続されている。油圧モータ82は、油圧ポンプ81から吐出された作動油によって駆動される。油圧モータ82は、左リンク機構39を介して左駆動輪16に接続可能である。油圧モータ82は、右リンク機構43を介して右駆動輪17に接続可能である。油圧モータ82は、油圧ポンプ81からの作動油によって駆動されることで、左駆動輪16と右駆動輪17とを増速する。
【0025】
(ステアリング機構36)
図4は、ステアリング機構36の構成を示す油圧回路図である。ステアリング機構36は、HSS(Hydrostatic Steering System)である。ステアリング機構36は、油圧式操向装置61と、補充油路62と、チャージポンプ63(定容量形ポンプ)と、排出油路64と、シャトル弁65と、チャージリリーフ弁66(排出弁)と、チャージセーフティー油路67(第2バイパス油路)と、チャージセーフティー弁68(安全弁)と、バイパス油路69(第1バイパス油路)と、可変リリーフ弁70(制御弁)と、を有する。
【0026】
油圧式操向装置61は、上述した油圧ポンプ81(操向ポンプ)と、油圧モータ82(操向モータ)と、油圧回路83と、を含む。油圧回路83は、第1油路83aと、第2油路83bと、を含む。第1油路83aは、油圧ポンプ81と油圧モータ82とを接続する。第2油路83bは、油圧ポンプ81と油圧モータ82とを接続する。油圧ポンプ81と第1油路83aと油圧モータ82と第2油路83bとは、閉回路を構成する。
【0027】
補充油路62は、作動油が貯留されている作動油タンク71から油圧式操向装置61に作動油を補充する。補充油路62は、第1補充油路62aと、第2補充油路62bと、第3補充油路62cと、を有する。第1補充油路62aの一端は、第1油路83aに接続されている。第1補充油路62aの他端は、第2補充油路62bの一端に接続されている。第2補充油路62bの他端は、第2油路83bに接続されている。第3補充油路62cは、第1補充油路62aと第2補充油路62bの接続点と、作動油タンク71との間を接続する。
【0028】
チャージポンプ63は、補充油路62の第3補充油路62cに配置されている。チャージポンプ63は、定容量形ポンプである。チャージポンプ63は、例えば容積固定のギヤポンプである。チャージポンプ63は、エンジン31の回転に応じて駆動し、補充油路62を介して油圧式操向装置61に作動油を補充する。第3補充油路62cのチャージポンプ63の下流側には、フィルター84が配置されており、作動油内の不純物を除去する。なお、第3補充油路62cのフィルター84とチャージポンプ63との間と、作動油タンク71とを接続するフィルター用リリーフ流路75が配置されている。フィルター用リリーフ流路75には、リリーフ弁76が配置されている。フィルター84の目詰まり等によって高圧になるとリリーフ弁76が開放され、チャージポンプ63から供給される作動油はフィルター用リリーフ流路75を介して作動油タンク71に戻される。
【0029】
第1補充油路62aにはチェック弁85aが配置されている。チェック弁85aは、第3補充油路62cから第1油路83aに向かう作動油の流れを許容し、逆向きの作動油の流れを阻害する。第2補充油路62bにはチェック弁85bが配置されている。チェック弁85bは、第3補充油路62cから第2油路83bに向かう作動油の流れを許容し、逆向きの作動油の流れを阻害する。ステアリング機構36は、リリーフ油路86aと、リリーフ弁87aと、リリーフ油路86bと、リリーフ弁87bと、を有する。リリーフ油路86aは、第1補充油路62aのチェック弁85aの上流側から分岐してチェック弁85aの下流側で合流する。リリーフ弁87aは、リリーフ油路86aに配置されている。ステアリング操作が行われ、第1油路83aの油圧が所定圧以上になった場合に、リリーフ弁87aを介して、第1油路83aから第2油路83bに作動油が流れる。リリーフ油路86bは、第2補充油路62bのチェック弁85bの上流側から分岐してチェック弁85bの下流側で合流する。リリーフ弁87bは、リリーフ油路86bに配置されている。ステアリング操作が行われ、第2油路83bの油圧が所定圧以上になった場合に、リリーフ弁87bを介して、第2油路83bから第1油路83aに作動油が流れる。
【0030】
排出油路64は、油圧式操向装置61から作動油タンク71に向かって作動油を排出する。排出油路64は、第1排出油路64a、第2排出油路64bと、第3排出油路64cと、を含む。第1排出油路64aの一端は、第1油路83aに接続され、他端はシャトル弁65に接続されている。第2排出油路64bの一端は、第2油路83bに接続され、他端はシャトル弁65に接続されている。第3排出油路64cは、シャトル弁65と作動油タンク71とを接続する。
【0031】
シャトル弁65は、第1油路83aと第2油路83bの圧力差によって弁体が移動し、第3排出油路64cを第1排出油路64aまたは第2排出油路64bと接続する。また、補充油路62の第3補充油路62cとシャトル弁65の間を接続する接続油路72が配置されている。第1油路83aと第2油路83bの油圧が等しい場合、シャトル弁65の弁体が移動せず、シャトル弁65は接続油路72と第3排出油路64cを接続する。
【0032】
チャージリリーフ弁66は、第3排出油路64cに配置されている。チャージリリーフ弁66は、入力される油圧が所定のリリーフ圧力値未満の場合、第3排出油路64cを閉じ、入力される油圧がリリーフ圧力値以上になると第3排出油路64cを開く。
【0033】
ステアリング操作によって第1油路83aと第2油路83bのいずれかの油圧が高くなり、シャトル弁65が移動し、チャージリリーフ弁66のリリーフ圧力値以上になると、圧力の高い側から作動油タンク71に作動油が排出される。
【0034】
チャージセーフティー油路67は、補充油路62の第3補充油路62cと、排出油路64の第3排出油路64cとの間を接続する。チャージセーフティー油路67の第3補充油路62cからの分岐部は、接続油路72の第3補充油路62cからの分岐部よりも下流側に配置されている。
【0035】
チャージセーフティー弁68は、チャージセーフティー油路67に配置されている。チャージセーフティー弁68は、チャージポンプ63による油圧が高くなりすぎて油圧式操向装置61が損傷することを防ぐための弁である。チャージセーフティー弁68は、入力される油圧が所定のリリーフ圧力値未満の場合、チャージセーフティー油路67を閉じ、入力される油圧がリリーフ圧力値以上になるとチャージセーフティー油路67を開く。チャージセーフティー弁68のリリーフ圧力値(第1圧力値)は、チャージリリーフ弁66のリリーフ圧力値(第2圧力値)よりも高い。
【0036】
バイパス油路69は、補充油路62の第3補充油路62cと、排出油路64の第3排出油路64cとの間を接続する。バイパス油路69の第3補充油路62cからの分岐部は、接続油路72の第3補充油路62cからの分岐部よりも上流側に配置されている。
【0037】
可変リリーフ弁70は、バイパス油路69に配置されている。可変リリーフ弁70は、入力される油圧が所定のリリーフ圧力値未満の場合、バイパス油路69を閉じ、入力される油圧がリリーフ圧力値以上になるとバイパス油路69を開く。可変リリーフ弁70のリリーフ圧力値は、後述するコントローラ51からの指令によって変更することができる。可変リリーフ弁70は、例えば閉じる方向に弁体を付勢するバネと、バネの付勢力を変更するソレノイドを有している。ソレノイドを移動させることによってバネの付勢力を変更し、リリーフ圧力値を変更することができる。本実施形態では、ステアリング操作が行われて車体11が旋回しているときに、第1リリーフ圧力値に設定され、ステアリング操作が行われず車体11が旋回していないときに、第2リリーフ圧力値に設定される。第2リリーフ圧力値は第1リリーフ圧力値よりも小さい。第1リリーフ圧力値よりも第2リリーフ圧力値に設定した方が、低い圧力でバイパス油路69が開かれる。第1リリーフ圧力値は、ソレノイドによるバネの付勢力を変更せず、単に可変リリーフ弁70を閉じた状態も含むものとする。例えば、コントローラ51の指令によって可変リリーフ弁70に出力する電流を0mAとすることによって、可変リリーフ弁70を第1リリーフ圧力値に設定することができる。また、コントローラ51の指令によって可変リリーフ弁70に所定値の電流を出力することによって、ソレノイドを駆動して可変リリーフ弁70を、第1リリーフ圧力値よりも低い第2リリーフ圧力値に設定することができる。
【0038】
第1リリーフ圧力値は、チャージセーフティー弁68のリリーフ圧力値よりも高く設定されている。第2リリーフ圧力値は、チャージリリーフ弁66のリリーフ圧力値よりも低く設定されている。なお、第2リリーフ圧力値は、0kg/cm以上10kg/cm以下が好ましく、0kg/cm以上5kg/cm以下が更に好ましい。
【0039】
(制御システム3)
制御システム3は、コントローラ51を含む。コントローラ51は、作業機械1を制御するようにプログラムされている。コントローラ51は、RAM及びROMなどのメモリと、CPUなどのプロセッサとを含む。コントローラ51は、SSD、或いはHDDなどの補助記憶装置を含んでもよい。コントローラ51は、作業機械1を制御するためのプログラムおよびデータを記録している。コントローラ51は、プログラムおよびデータに基づいて、作業機械1を制御するための処理を実行する。例えば、コントローラ51は、運転室4内に配置されている。コントローラ51は、少なくともステアリング機構36と信号線(L)を介して接続されている。
【0040】
詳しくは後述するが、コントローラ51は、非旋回時の制御として、非旋回時に可変リリーフ弁70のリリーフ圧力値を、旋回時の第1リリーフ圧力値よりも低い第2リリーフ圧力値に設定する。
【0041】
制御システム3は、操向レバー52(操作部材)と、レバー位置センサ53(操作検出部)と、キーシリンダ54と、回転センサ55(稼働検出部)と、を含む。
【0042】
操向レバー52は、車体11を左右に旋回させるために、オペレータによって操作可能である。操向レバー52は、運転室14内に配置されている。操向レバー52の操作によってステアリング操作が行われることになり、車体11が旋回する。操向レバー52は、レバーに限らなくてもよい、スイッチなどの他の部材であってもよい。
【0043】
レバー位置センサ53は、操向レバー52の操作位置を検出し、操作位置情報を含む操作信号をコントローラ51に出力する。レバー位置センサ53としては、例えばポテンショメータを用いることができる。コントローラ51は、操作位置信号に応じて油圧ポンプ81を制御して、油圧モータ82を駆動し、旋回を補助する。
【0044】
キーシリンダ54は、エンジン31を駆動するためにキーが差し込まれ、回転される。キーシリンダ54は運転室14に配置されている。キーシリンダ54にキーを挿し込んで回転させると、回転の段階に応じて順にアクセサリーキーオン、イグニッションキーオン、クランキングオンの状態となる。各々の段階において、キーシリンダを含むスタータユニットからコントローラ51に信号が送信される。キーをアクセサリーキーオンの位置に回転させると、スタータユニットからアクセサリーキーオン信号がコントローラ51に送信される。キーをイグニッションキーオンの位置に回転させると、スタータユニットからイグニッションキーオン信号がコントローラ51に送信される。キーをクランキングオンの位置に回転させると、スタータユニットからスタートクランキング信号がコントローラ51に送信される。本実施形態では、キーシリンダとキーとを構成に含むイグニッションキーで説明したが、これに限らず、キーを使用しないロータリースイッチや、プッシュスイッチ等、他の構成でもよい。
【0045】
回転センサ55は、エンジン31の回転数を検出する。回転センサ55は、検出したエンジンの回転数の情報を含む回転数信号をコントローラ51に出力する。また、回転センサ55はエンジン31の回転数に限らず、駆動力伝達系統における回転数を検出し、その回転数の情報を含む回転数信号をコントローラ51に出力してもよい。
【0046】
コントローラ51は、回転センサ55からの回転数信号と、レバー位置センサ53からの操作信号またはキーシリンダ54からのキーオン信号と、に基づいて、旋回時であるか否かを判定する。コントローラ51は、非旋回時と判定した場合、可変リリーフ弁のリリーフ圧を第2リリーフ圧に設定する。コントローラ51は、旋回時であると判定した場合、可変リリーフ弁70のリリーフ圧を第1リリーフ圧に設定する。
【0047】
(作業機械の制御方法)
次に、作業機械の制御方法について説明する。図5は、本実施形態の作業機械の制御方法を示すフロー図である。
【0048】
ステップS10において、コントローラ51は、エンジン31が稼働しているか否かを判定する。具体的には、コントローラ51は、エンジン31の回転数または駆動力伝達系統における回転数を検出する回転センサ55からの回転数信号に基づいて、回転数が所定閾値以上の場合に、エンジン31が稼働していると判定する。エンジン31が稼働していると判定された場合、制御はステップS11に進む。
【0049】
ステップS11において、コントローラ51は、操向レバー52が操作されたか否かを判定する。具体的には、コントローラ51は、レバー位置センサ53からの操作信号に基づいて、操向レバー52が所定量以上操作されたか否かを判定する。ここで、所定量は、ステアリング操作されているか否かを判定する値であるため、例えば操向レバー52の遊び量に設定することができる。また、所定量は、油圧式操向装置61の油圧モータ82が動作を開始する量に設定してもよい。操向レバー52が所定量以上操作されない場合、コントローラ51は操向レバー52が操作されていないと判定し、制御はステップS12に進む。このように、エンジン31が稼働し、操向レバー52が操作されていない場合に、コントローラ51は、車体11が非旋回時であると判定する。ステップS10、S11は、判定ステップに対応する。なお、ステップS11において、コントローラ51は、誤操作や振動等のノイズに起因する操向レバー52の動作に基づいて、オペレータの意図に反して、操向レバー52が操作されていないと判定されることを防止するために、操向レバー52が操作されていない状態が所定時間以上維持されている場合に、操向レバー52が操作されていないと判定してもよい。
【0050】
ステップS12において、コントローラ51は、可変リリーフ弁70に操作信号を出力し、可変リリーフ弁70のリリーフ圧力値を第2リリーフ圧力値に設定し、制御が終了する。非旋回時では、第1油路83aと第2油路83bの圧力差がないため、シャトル弁65は中立位置となり、接続油路72と第3排出油路64cを接続する。ここで、第3排出油路64cに配置されているチャージリリーフ弁66のリリーフ圧力値よりも、可変リリーフ弁70の第2リリーフ圧力値は低いため、チャージポンプ63の駆動によって油圧式操向装置61に向かって供給される作動油は、油圧式操向装置61を通らずにバイパス油路69に流れ込み、作動油タンク71に戻される。ステップS12は、制御ステップに対応する。
【0051】
一方、ステップS10において、エンジン31が稼働していないと判定された場合、コントローラ51は、可変リリーフ弁70に操作信号を出力し、可変リリーフ弁70のリリーフ圧力値を第1リリーフ圧力値に設定し、制御が終了する。
【0052】
また、ステップS11において、操向レバー52が操作されたと判定した場合、ステップS13において、コントローラ51は、可変リリーフ弁70に操作信号を出力し、可変リリーフ弁70のリリーフ圧力値を第1リリーフ圧力値に設定し、制御が終了する。エンジン31が作動し、操向レバー52が操作されている場合、コントローラ51は車体11が旋回時であると判定し、可変リリーフ弁70のリリーフ圧力値をチャージリリーフ弁66のリリーフ圧力値よりも大きく設定することで、チャージポンプ63から供給される作動油を、バイパス油路69を通過せず油圧式操向装置61に供給することができる。なお、余剰な作動油は、シャトル弁65の移動によって第3排出油路64cを介して作動油タンク71に戻される。また、ステップS11において、誤操作や振動等のノイズに起因する操向レバー52の動作に基づいて、オペレータの意図に反して、操向レバー52が操作されたと判定されることを防止するため、操向レバー52の操作が所定時間以上維持されている場合に、コントローラ51は、操向レバー52が操作されたと判定してもよい。
【0053】
(特徴等)
本実施形態1の作業機械では、コントローラ51は、チャージポンプ63から吐出された作動油が、非旋回時に、旋回時よりも低い圧力値でバイパス油路69を通過可能となるように可変リリーフ弁70を制御する。
【0054】
このように非旋回時に可変リリーフ弁70のリリーフ圧力値を低くすることによって、チャージポンプ63から供給される作動油を、油圧式操向装置61を通さずにバイパスして作動油タンク71に戻すことができる。このため、ロス馬力を低減し、燃費を向上することができる。また、チャージポンプ63に定容量形ポンプを用いているため、コストを低くでき、耐久性を向上することができる。
【0055】
本実施形態1の作業機械は、排出油路64に配置されたチャージリリーフ弁66を備えている。非旋回時に可変リリーフ弁70に設定される第2リリーフ圧力値は、チャージリリーフ弁66のリリーフ圧力値よりも低い。
【0056】
操向レバー52によってステアリング操作されていないとき(非旋回時)は、油圧式操向装置61において作動油が流れないため、シャトル弁65は接続油路72と第3排出油路64cとを接続する。このため、仮に、バイパス油路69および可変リリーフ弁70が設けられていない場合、チャージポンプ63から吐出される作動油は、接続油路72および第3排出油路64cを介して作動油タンク71に戻されるが、チャージリリーフ弁66のリリーフ圧力値に応じたトルクが必要となる。対して、本実施形態では、非旋回時において可変リリーフ弁70のリリーフ圧力値をチャージリリーフ弁66のリリーフ圧力値よりも低くしているため、チャージポンプ63から吐出される作動油は、バイパス油路69を介して作動油タンク71に戻される。このように、チャージリリーフ弁66を通さず、可変リリーフ弁70を通して、チャージポンプ63から吐出される作動油を作動油タンク71に戻すことができるため、ロス馬力を低減し、燃費を向上することができる。
【0057】
(実施形態2)
次に、本実施形態2の作業機械1について説明する。本実施形態2の作業機械1は、実施形態1と制御システムの構成が異なっており、低温始動時に、可変リリーフ弁70のリリーフ圧力値を第2リリーフ圧力値に設定する。そのため、本実施形態2では実施形態1と異なる構成について主に説明する。
【0058】
図6は、本実施形態2の作業機械の制御システム3´およびステアリング機構36を示す図である。図6に示すように、本実施形態2の制御システム3´は、実施形態1の制御システム3と比較して、外気温センサ56(低温検出部)と、作動油温センサ57(低温検出部)と、を更に有する。
【0059】
外気温センサ56は、車体11の外気温を計測し、外気温の情報を含む計測信号をコントローラ51に出力する。外気温センサ56は、車体11に配置されている。
【0060】
作動油温センサ57は、作動油の温度を計測し、作動油の温度情報を含む計測信号をコントローラ51に出力する。
【0061】
コントローラ51は、回転センサ55(始動検出部)からの回転数信号と、外気温センサ56からの計測信号および作動油温センサ57からの計測信号と、に基づいて、低温始動であるか否かを判定する。コントローラ51は、低温始動であると判定した場合、可変リリーフ弁70のリリーフ圧を第2リリーフ圧力値に設定し、低温始動ではないと判定した場合、可変リリーフ弁のリリーフ圧を第1リリーフ圧力値に設定する。
【0062】
(低温始動時の制御方法)
図7は、本実施形態2の作業機械の制御方法を示すフロー図である。
【0063】
はじめに、ステップS20において、コントローラ51に、キーシリンダ54を含むスタータユニットからイグニッションキーオン信号が入力される。イグニッションキーオン信号は、イグニッションキーがオンされたとき若しくはイグニッションキーオン状態であることを示す。
【0064】
次に、ステップS21において、コントローラ51は低温であるか否かを判定する。コントローラ51は、外気温センサ56の計測信号と作動油温センサ57の計測信号に基づいて、低温であるか否かを判定する。コントローラ51は、外気温センサ56の計測値が所定閾値温度以下、且つ作動油温センサ57の計測値が所定閾値温度以下の場合、低温であると判定する。具体的には、例えば、外気温センサ56の計測値が-5℃以下、且つ作動油温センサ57の計測値が-5℃以下のときに、コントローラ51は低温であると判定する。低温であると判定された場合、制御はステップS22に進む。
【0065】
ステップS22において、コントローラ51は、エンジン31の始動(クランキング)が実行されているか否かを判定する。コントローラ51は、エンジン31の回転数を検出する回転センサ55からの回転数信号に基づいて、エンジン31の始動が実行されているか否かを判定する。例えば、エンジン31の回転数が0rpmではない場合、コントローラ51はエンジン31の始動が実行されていると判定する。また、エンジン31の回転数が0rpmの場合、コントローラ51はエンジン31の始動が実行されていないと判定する。また、これに限らず、コントローラ51は、例えば、エンジン31の回転数が50rpm以上の場合、エンジン31の始動が実行されていると判定し、エンジン31の回転数が50rpmより小さい場合、エンジン31の始動が実行されていないと判定してもよい。エンジン31の始動が実行されていると判定された場合、制御はステップS23に進む。
【0066】
ステップS23において、コントローラ51は、エンジン31の稼働不可・始動中止を判定する。コントローラ51は、エンジン31の回転数を検出する回転センサ55からの回転数信号に基づいて、エンジン31の稼働不可、もしくは始動を中止することを判定する。エンジン31の稼働不可・始動中止の判定は、ステップS22におけるエンジン31の始動後に回転数が0rpmとなっている場合、または所定回転数以上になっていない場合に行われる。
【0067】
具体的には、エンジン31の回転数が0rpmではない場合、コントローラ51はエンジン31が稼働されており、始動を中止する必要がないと判定する。また、エンジン31の回転数が0rpmの場合、コントローラ51はエンジン31が稼働されていないため、エンジン31が稼働できず、始動を中止すると判定する。
【0068】
また、これに限らず、コントローラ51は、例えば、エンジン31の回転数が50rpm以上の場合、エンジン31が稼働されており、始動を中止する必要がないと判定し、エンジン31の回転数が50rpmより小さい場合、エンジン31が所定回転数以上になっていないため、エンジン31を稼働できず、始動を中止する必要があると判定してもよい。
【0069】
また、コントローラ51は、エンジン31の回転数が0rpmでない、若しくは所定回転数以上(例えば50rpm)であるが、後述するステップS25の条件を満たさない状態で所定時間が経過すると、エンジン31の始動を中止すると判定してもよい。
【0070】
エンジン31が稼働しており、始動中止の必要がないと判断された場合、制御はステップS24に進む。ステップS21,S22、S23は、判定ステップに対応する。
【0071】
ステップS24において、コントローラ51は、可変リリーフ弁70に操作信号を出力し、可変リリーフ弁70のリリーフ圧力値を第2リリーフ圧力値に設定する。これにより、低温始動時に、チャージポンプ63の駆動によって油圧式操向装置61に向かって供給される作動油を、油圧式操向装置61を通さずにバイパス油路69を通って作動油タンク71に戻すことができる。ステップS24は、制御ステップに対応する。
【0072】
次に、ステップS25において、コントローラ51は、回転センサ55からの回転数信号に基づいて、エンジン31の回転数が所定値以上になったか否かを判定する。回転数は、例えば300rpmに設定することができる。回転数が所定値未満の場合は、制御はステップS22に戻り、可変リリーフ弁70のリリーフ圧力値は、第2リリーフ圧力値に維持される。一方、エンジン31の回転数が所定値以上になると、制御はステップS26に移動する。ステップS26において、コントローラ51は、可変リリーフ弁70に操作信号を出力し、可変リリーフ弁70のリリーフ圧力値を第1リリーフ圧力値に設定し、制御は終了する。
【0073】
一方、ステップS21において、低温ではない判定された場合、ステップS26において、コントローラ51は、可変リリーフ弁70に操作信号を出力し、可変リリーフ弁70のリリーフ圧力値を第1リリーフ圧力値に設定し、制御が終了する。
【0074】
また、ステップS22において、エンジンの始動が実行されていないと判定した場合、ステップS26において、コントローラ51は、可変リリーフ弁70に操作信号を出力し、可変リリーフ弁70のリリーフ圧力値を第1リリーフ圧力値に設定し、制御が終了する。
【0075】
また、ステップS23において、エンジン31の稼働不可、もしくは始動を中止すると判定した場合、ステップS26において、コントローラ51は、可変リリーフ弁70に操作信号を出力し、可変リリーフ弁70のリリーフ圧力値を第1リリーフ圧力値に設定し、制御が終了する。
【0076】
(特徴等)
本実施形態2の作業機械は、定容量形ポンプから吐出された油が、低温始動時に、低温以外の始動時よりも低い圧力値でバイパス油路69を通過可能となるように可変リリーフ弁70を制御する。
【0077】
このように低温始動時に可変リリーフ弁70のリリーフ圧力値を低くすることによって、チャージポンプ63から供給される作動油を、油圧式操向装置61を通さずにバイパスして作動油タンク71に戻すことができる。このため、チャージポンプ63への負荷を減らし、燃費を向上することができ、さらに低温始動性を向上することができる。また、チャージポンプ63に定容量形ポンプを用いているため、可変容量形ポンプを用いた場合と比較して、低温始動時に駆動トルクを小さくすることができる。更に、チャージポンプ63に定容量形ポンプを用いているため、コストを低くでき、耐久性を向上することができる。
【0078】
(実施形態3)
上記実施形態1、2では、駆動装置32に旋回を補助するHSSを用いているが、本実施形態3の作業機械では、駆動装置232としてHST(Hydro Static Transmission)を用いる。
【0079】
図8は、HSTである駆動装置232を示す図である。駆動装置232は、2つの油圧式操向装置161、261と、補充油路162と、チャージポンプ163(定容量形ポンプ)と、排出油路164と、シャトル弁165、265と、チャージリリーフ弁166、266(排出弁)と、チャージセーフティー油路167(第2バイパス油路)と、チャージセーフティー弁168(安全弁)と、バイパス油路169(第1バイパス油路)と、可変リリーフ弁170(制御弁)と、を有する。
【0080】
油圧式操向装置161は、油圧ポンプ181(操向ポンプ)と、油圧モータ182(操向モータ)と、油圧回路183と、を含む。油圧回路183は、第1油路183aと、第2油路183bと、を含む。油圧ポンプ181は、エンジン31によって駆動する。油圧モータ182は、左駆動輪16に接続されており、油圧モータ182の駆動によって左駆動輪16が回転する。第1油路183aは、油圧ポンプ181と油圧モータ182とを接続する。第2油路183bは、油圧ポンプ181と油圧モータ182とを接続する。油圧ポンプ181と第1油路183aと油圧モータ182と第2油路183bとは、閉回路を構成する。
【0081】
油圧式操向装置261は、油圧ポンプ281(操向ポンプ)と、油圧モータ282(操向モータ)と、油圧回路283と、を含む。油圧回路283は、第1油路283aと、第2油路283bと、を含む。油圧ポンプ181は、エンジン31によって駆動する。油圧モータ282は、右駆動輪17と接続されており、油圧モータ282の駆動によって右駆動輪17が回転する。第1油路283aは、油圧ポンプ281と油圧モータ282とを接続する。第2油路283bは、油圧ポンプ281と油圧モータ282とを接続する。油圧ポンプ281と第1油路283aと油圧モータ282と第2油路283bとは、閉回路を構成する。油圧式操向装置161によって左駆動輪16が回転され、油圧式操向装置261によって右駆動輪17が回転される。左駆動輪16の回転速度と右駆動輪17の回転速度を変えることによって、車体11を左右に旋回することができる。
【0082】
補充油路162は、作動油が貯留されている作動油タンク171から油圧式操向装置161、261に作動油を補充する。補充油路162は、第1補充油路162aと、第2補充油路162bと、第3補充油路162cと、第4補充油路162dと、第5補充油路162eと、を有する。第1補充油路162aの一端は、第1油路183aに接続されている。第2補充油路162bの一端は、第2油路183bに接続されている。第1補充油路162aの他端は、第2補充油路162bの他端と接続されている。第3補充油路162cの一端は、第1油路283aに接続されている。第4補充油路162dの一端は、第2油路283bに接続されている。第3補充油路162cの他端は、第4補充油路162dの他端と接続されている。第5補充油路162eは、第1補充油路162aと第2補充油路162bの接続点と、第3補充油路162cと第4補充油路162dの接続点と、作動油タンク171との間を接続する。
【0083】
チャージポンプ163は、補充油路162の第5補充油路162eに配置されている。チャージポンプ163は、定容量形ポンプである。チャージポンプ163は、容積固定のギヤポンプである。チャージポンプ163は、エンジン31の回転に応じて駆動し、補充油路162を介して油圧式操向装置161、261に作動油を補充する。第5補充油路162eのチャージポンプ163の下流側には、フィルター184が配置されており、作動油内の不純物を除去する。
【0084】
第1補充油路162aにはチェック弁185aが配置されている。チェック弁185aは、第5補充油路162eから第1油路183aに向かう作動油の流れを許容し、逆向きの作動油の流れを阻害する。第2補充油路162bにはチェック弁185bが配置されている。チェック弁185bは、第5補充油路162eから第2油路183bに向かう作動油の流れを許容し、逆向きの作動油の流れを阻害する。駆動装置232は、リリーフ油路186aと、リリーフ弁187aと、リリーフ油路186bと、リリーフ弁187bと、を有する。リリーフ油路186aは、第1補充油路162aのチェック弁185aの上流側から分岐してチェック弁185aの下流側で合流する。リリーフ弁187aは、リリーフ油路186aに配置されている。ステアリング操作が行われ、第1油路183aの油圧が所定圧以上になった場合に、リリーフ弁187aを介して、第1油路183aから第2油路183bに作動油が流れる。リリーフ油路186bは、第2補充油路162bのチェック弁185bの上流側から分岐してチェック弁185bの下流側で合流する。リリーフ弁187bは、リリーフ油路186bに配置されている。ステアリング操作が行われ、第2油路183bの油圧が所定圧以上になった場合に、リリーフ弁187bを介して、第2油路183bから第1油路183aに作動油が流れる。
【0085】
第3補充油路162cにはチェック弁285aが配置されている。チェック弁285aは、第5補充油路162eから第1油路283aに向かう作動油の流れを許容し、逆向きの作動油の流れを阻害する。第4補充油路162dにはチェック弁285bが配置されている。チェック弁285bは、第5補充油路162eから第2油路283bに向かう作動油の流れを許容し、逆向きの作動油の流れを阻害する。駆動装置232は、リリーフ油路286aと、リリーフ弁287aと、リリーフ油路286bと、リリーフ弁287bと、を有する。リリーフ油路286aは、第3補充油路162cのチェック弁285aの上流側から分岐してチェック弁285aの下流側で合流する。リリーフ弁287aは、リリーフ油路286aに配置されている。ステアリング操作が行われ、第1油路283aの油圧が所定圧以上になった場合に、リリーフ弁287aを介して、第1油路283aから第2油路283bに作動油が流れる。リリーフ油路286bは、第4補充油路162dのチェック弁285bの上流側から分岐してチェック弁285bの下流側で合流する。リリーフ弁287bは、リリーフ油路286bに配置されている。ステアリング操作が行われ、第2油路283bの油圧が所定圧以上になった場合に、リリーフ弁287bを介して、第2油路283bから第1油路283aに作動油が流れる。
【0086】
排出油路164は、油圧式操向装置161、261から作動油タンク171に向かって作動油を排出する。排出油路164は、第1排出油路164a、第2排出油路164bと、第3排出油路164cと、第4排出油路164dと、第5排出油路164eと、第6排出油路164fと、第7排出油路164gと、を含む。第1排出油路164aの一端は、第1油路183aに接続され、他端はシャトル弁165に接続されている。第2排出油路164bの一端は、第2油路183bに接続され、他端はシャトル弁165に接続されている。第3排出油路164cの一端は、シャトル弁165に接続され、他端は、第7排出油路164gの一端に接続されている。第7排出油路164gの他端は、作動油タンク171に接続されている。第4排出油路164dの一端は、第1油路283aに接続され、他端はシャトル弁265に接続されている。第5排出油路164eの一端は、第2油路283bに接続され、他端はシャトル弁265に接続されている。第6排出油路164fの一端は、シャトル弁265に接続され、他端は第7排出油路164gに接続されている。
【0087】
シャトル弁165は、第1油路183aと第2油路183bの圧力差によって弁体が移動し、第3排出油路164cを第1排出油路164aまたは第2排出油路164bと接続する。シャトル弁265は、第1油路283aと第2油路283bの圧力差によって弁体が移動し、第6排出油路164fを第4排出油路164dまたは第5排出油路164eと接続する。
【0088】
チャージリリーフ弁166は、第3排出油路164cに配置されている。チャージリリーフ弁166は、入力される油圧が所定のリリーフ圧力値未満の場合、第3排出油路164cを閉じ、入力される油圧がリリーフ圧力値以上になると第3排出油路164cを開く。チャージリリーフ弁266は、第6排出油路164fに配置されている。チャージリリーフ弁266は、入力される油圧が所定のリリーフ圧力値未満の場合、第6排出油路164fを閉じ、入力される油圧がリリーフ圧力値以上になると第6排出油路164fを開く。
【0089】
チャージセーフティー油路167は、補充油路162の第5補充油路162eと、排出油路164の第7排出油路164gとの間を接続する。チャージセーフティー弁168は、チャージセーフティー油路167に配置されている。チャージセーフティー弁168は、チャージポンプ163による油圧が高くなりすぎて油圧式操向装置161、261が損傷することを防ぐための弁である。チャージセーフティー弁168は、入力される油圧が所定のリリーフ圧力値未満の場合、チャージセーフティー油路167を閉じ、入力される油圧がリリーフ圧力値以上になるとチャージセーフティー油路167を開く。チャージセーフティー弁168のリリーフ圧力値は、チャージリリーフ弁166、266のリリーフ圧力値よりも高い。
【0090】
バイパス油路169は、補充油路162の第5補充油路162eと、排出油路164の第7排出油路164gとの間を接続する。バイパス油路169の第5補充油路162eからの分岐部は、チャージセーフティー油路167の第5補充油路162eからの分岐部よりも上流側に配置されている。
【0091】
可変リリーフ弁170は、バイパス油路169に配置されている。可変リリーフ弁170は、入力される油圧が所定のリリーフ圧力値未満の場合、バイパス油路169を閉じ、入力される油圧がリリーフ圧力値以上になるとバイパス油路169を開く。可変リリーフ弁170のリリーフ圧力値は、実施形態1,2と同様にコントローラ51からの指令によって変更することができる。
【0092】
低温始動時の制御方法は、実施形態2と同様であるため、説明を省略する。
【0093】
以上の構成において、低温始動時に、可変リリーフ弁170のリリーフ圧力値を第2リリーフ圧力値に設定することで、実施形態2と同様に、チャージポンプ163から供給される作動油を、油圧式操向装置161、261を通さずにバイパスして作動油タンク171に戻すことができる。このため、チャージポンプ163への負荷を減らすことができ、低温始動性を向上することができる。
【0094】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0095】
(A)
上記実施形態1では、エンジン31の回転数または駆動力伝達系統における回転数にもとづいてエンジン31の稼働を判定しているが、これに限らなくてもよい。例えば、エンジンの吸排気の流量または圧力、エンジンのクーリング系統の流量または圧力を検出して、エンジンの稼働が判定されてもよい。また、エンジン31の回転数と駆動力伝達系統の回転数の双方の回転数に基づいてエンジン31の稼働を判定してもよい。また、コントローラ51は、キーシリンダ54からのキーオン信号(例えば、クランキングキーオン信号等)に基づいて、エンジンが稼働していると判定してもよい。
【0096】
(B)
上記実施形態2では、外気温センサ56の計測値が所定閾値温度以下、且つ作動油温センサ57の計測値が所定閾値温度以下の場合、低温であると判定しているが、これに限らなくてもよく、いずれか一方の条件を用いて、その条件を満たす場合、低温であると判定してもよい。なお、作動油温が高い場合は負荷が高くならないため、作動油温センサ57の計測値が所定閾値温度以下の場合という条件を少なくとも用いて低温であるか否かの判定を行った方が好ましい。
【0097】
(C)
上記実施形態2では、外気温センサ56の計測値の閾値温度と、作動油温センサ57の計測値の閾値温度は同じであるが、異なっていてもよい。
【0098】
(D)
上記実施形態2では、コントローラ51は、エンジン31の回転数に基づいてエンジンの始動が実行されているか否かを判定しているが、これに限らなくてもよく、スタータクランキング信号に基づいてエンジンの始動が実行されているか否かを判定してもよい。キーシリンダ54にキーを挿し込んでクランキングオンの位置まで回転させると、スタータユニットからスタータモータへスタータクランキング信号を送信されると同時に、スタータユニットからコントローラ51にスタータクランキング信号が送信される。コントローラ51は、スタータクランキング信号が入力されると、エンジンの始動(クランキング)が実行中であると判定し、スタータクランキング信号が入力されない場合、エンジンの始動が実行されていないと判定することができる。
【0099】
また、コントローラ51は、エンジン31の回転数とスタータクランキング信号の双方が条件を満たす場合、若しくは一方が条件を満たす場合に、エンジンの始動が実行されていると判定してもよい。
【0100】
(E)
上記実施形態1、2では、チャージセーフティー弁68と可変リリーフ弁70は分けられているが、可変リリーフ弁70がチャージセーフティー弁68を兼ねていてもよい。チャージセーフティー弁68とチャージセーフティー油路67が設けられておらず、可変リリーフ弁70がチャージセーフティー弁68の機能を兼ねる場合は、可変リリーフ弁70の第1リリーフ圧力値は、チャージセーフティー弁68に設定されるリリーフ圧力値に設定される。
【0101】
(F)
上記実施形態1、2では、バイパス油路69に可変リリーフ弁70が配置されているが、可変リリーフ弁70に限らず、開閉弁が配置されていてもよい。開閉弁は、非旋回時または低温始動時に開放され、旋回時または低温以外の始動時に閉じられる。開放した状態を、開閉弁を第2リリーフ圧力値に設定したといえ、閉じた状態を、開閉弁を第1リリーフ圧力値に設定したといえる。
【0102】
(G)
上記実施形態1、2では、可変リリーフ弁70に電流を出力することによって、第1リリーフ圧力値から第2リリーフ圧力値に変更しているが、これに限らず、パイロット油圧を用いて可変リリーフ弁のソレノイドを移動させることで、第1リリーフ圧力値から第2リリーフ圧力値に変更してもよい。図9に示すように、コントローラ51はEPC(Electromagnetic Proportional Control)弁79の開閉制御を行い、EPC弁79の開度を調整することによってPPC圧(パイロット油圧)をPPCリリーフ弁370のソレノイドに供給し、PPCリリーフ弁370のリリーフ圧力値を変更することができる。なお、PPC圧を供給するポンプは、チャージポンプと別に設けられていてもよいが、チャージポンプと兼ねられていてもよい。
【0103】
(H)
上記実施形態1、2では、可変リリーフ弁70のリリーフ圧力値を、第1リリーフ圧力値と第2リリーフ圧力値の間で変化させているが、リリーフ圧力値を段階的に変化させてもよい。これにより、ウォータハンマーや配管振動を抑制することができる。
【0104】
(I)
上記実施形態1~3では、非旋回時に可変リリーフ弁70のリリーフ圧力値を第2リリーフ圧力値に設定し、低温始動時に可変リリーフ弁70のリリーフ圧力値を第2リリーフ圧力値に設定すると述べたが、非旋回時と低温始動時とで、異なるリリーフ圧力値を設定してもよい。
【0105】
(J)
上記実施形態2では、ステップS23において、エンジン31の稼働ができず、始動を中止すると判定された場合、制御はステップS26に進んでいるが、これに限らなくてもよい。ステップS23において、エンジン31の稼働ができず、始動を中止すると判定された場合、制御がステップS22に進んでもよい。この場合、再度キーオンを行わずに、クランキングからエンジン31の始動をやり直すことができる。また、この場合、所定時間または所定回数ステップS22とステップS23を繰り返してもステップS23の条件を満たさない場合に、制御がステップS26に進んでもよい。
【0106】
(K)
上記実施形態の作業機械としてブルドーザを挙げて説明したが、フォークリフト、ホイールローダおよび油圧ショベル等の他の作業機械であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本開示の作業機械および作業機械の制御方法によれば、コストを抑え、ロス馬力の低減を図ることが可能な効果を有し、ブルドーザ等において有用である。
【符号の説明】
【0108】
1 :作業機械
51 :コントローラ
61 :油圧式操向装置
62 :補充油路
63 :チャージポンプ
64 :排出油路
69 :バイパス油路
70 :可変リリーフ弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9